病葉
320 件の小説病葉
SF、ファンタジー、ミステリー、コメディが好きで、本、映画、ドラマ、どれをとっても鑑賞範囲が狭くて 自分好みな話を好き勝手に書いてます でも、読んでくれたらとても嬉しい 水瓶座 宜しくお願い致します
馬鹿者たち
小野豆腐君が明日遥か天竺への一万里の旅に旅立つというので前夜に様子を見に行くと、四斗樽を前に右手に柄杓左手に大杯を持って呑んだくれていた その様子を見て思わず口づさむ 君の行く道は果てしなく遠い だのに何故なにを考えて 君は呑むのか、アテもないのに 豆腐はどんよりとした目を彷徨わせる 「アテはない、明日、万里の旅に出るから、置いてけないので全部食っちまった。その後で馬鹿な安麻呂が旅立ちの景気付けに呑めと、この四斗樽を送ってきたんだ。持っていけないし、置いてくわけにもいかない、呑むしかねえなと呑み始めたが、なかなか底が見えてこない。困り果ててる処へ君が来てくれた。天は吾を見捨てず、とにかく飲んでくれ」 私に大盃を差し出した 「うーん」 呻きつつ呑み始める しかし、四斗樽、この時代には未だないが、2リットルペットボトルで36本になる 今夜中に呑める訳がない そう知りながらも我らは呑み続けた そして酔い潰れ、倒れ込んで、気づけば、荷車に小野豆腐と並んで横たわっていた 「どうなってる?」 荷車を引く者押す者にきくと、彼らは笑った 「天竺まで行くんだろ? 次の宿場まで送ってくから、あとは勝手に行ってくれ」 「いや、おれは行かないんだが」 「細かい事を気にするんじゃない」 なるほど…… と、そういう訳で、私は豆腐と天竺へと旅立つ事になったのだった あとがきです サムネはホール・セリュジエの模写 絵がちっこくなって寂しいな まあ、下手な絵故、相応な気も致しますが
李白と白居易のお相撲
李白と白居易が相撲をとった 両者もつれるようにして土俵を割ったが僅かに李白の方が有利に見えた しかし、行司は白居易に軍配をあげた 「なぜだ?」 物言いをつけた審判がきいた 行司、答えて曰く 「いや、だって、白居易残った残った、って ……」 あとがきです サムネは李白のつもりです😛 お相撲を知らない人には、なんのこっちゃ、かな 気にしませぬ
くらがりで一首
先日、何年かぶりにくら寿司に行きました ガリが生姜じゃなくて大根だったのに吃驚😧 しょうがじゃねえのかしょうがねえな とブツクサ言って 次いでに和歌をひとつ詠んだ 大根を ガリと称する くらがりの 化けても所詮 大根役者
時のスペル
「時間旅行の呪文って、あったよな?」 俊介が憔悴しきった面持ちできいてきた 「あるが、でもなぜ?」 ぼくが問うと 「麻衣子が死んだんだ」と答えた 麻衣子は俊介の婚約者である…… いや、あった、と言うべきか 「昨日の夜、酔っ払い運転の車に轢き逃げされた、助けに行かねば…… 呪文を教えてくれ」 「いや、あれは碌でもない呪文だぞ。不都合な事が起こったから、時を戻して無かった事にしようなんて考えは間違ってる、失敗したら戻ってやり直せばいいなんて安易すぎるだろ」 彼は首を激しく振った 「起こった事が間違いなんだ、間違いは正さねばならないだろう 教えてくれ」 うーん、言って聞く俊介ではあるまい、教えるしかないだろうと書庫の奥にある時の呪文の冊子を持ってきて渡した 「使う気が無いから、調べた事がないんだ。自分で覚えてくれよ」 俊介は冊子を開いて唸った 「漢文じゃないか? 読めねえ」 「いや、万葉仮名らしいよ、ひと目では読めない様になってるけど、その気になればそう難しくないってね」 「なるほど」 俊介は冊子を持って机に座るとタブレットで万葉仮名を調べながら呪文を解析していった 数時間の後「よしっ」と叫んで立ち上がった 「理解したぞ、行って来る」 「何処へだ?」 「昨日へさ」 そう言って、ブツブツと低く呪文を唱えると、ぼくの目の前から消え去った どうなったものやら、気になりつつも、仕方なく酒など呑んで、さて寝るかと思っている処に俊介がふっと現れた 「やったぞ、酔っ払いの車をパンクさせてやった。あの馬鹿は運転できず、酔っ払っているから警察にも言えず、途方に暮れてやがった、ざまみろだ、未遂の殺人犯め。麻衣子は無事に家に帰ったし、万事OK」 嬉しげに叫んでいる 「しかし、帰ってきたのか?」 と、ぼくが呟く 「当たり前だろ? 麻衣子を救って無事帰還だ。万事めでたし」 「いや、ここでは麻衣子さんは死んでる。死んだと君から聞いたから、確かだ。死んだと言う認識は消えてない。大体、彼女が死んでなきゃ君が過去に行く理由がそもそもないから」 「しかし、おれは麻衣子を救ったぞ。だから、麻衣子は生きてる」 「うん、昨日の世界では…… だろ? しかし、今日の世界では死んでるんだ だから、君は帰ってきてはいけないんだ 昨日にとどまってなきゃ」 「しかし、昨日の世界にはもうひとりおれがいるぞ」 「彼は昨日の明日に昨日に旅立つだろ?」 「いや、おれが彼女を救ったから、もう一人のおれには旅立つ理由がもうない」 なるほど、とぼくも頷く 昨日には俊介二人に麻衣子一人、今日には俊介一人に麻衣子ゼロ 「もう一人の俊介を殺して、代わりに居座るとか?」 言ってみたが、俊介は首を振った 「自分は殺せないよ。それに、昨日のおれが幸せなら、今日のおれが不幸でもいいって気もする」 「昨日も今日も同じ君だからねえ、幸不幸の両極端だが」 「しかし、昨日はやがて今日になるから」 「昨日が今日になれば、今日は明日になるだろうさ。昨日は決して今日に追い付けない」 「アキレスと亀のように?」 「違うと思うけどね」 あとがきです サムネはガブリエレ・ミュンターの雑で下手な模写です 暑いですねえ 今年の夏は涼しくなるの予想していたのに大外れ 北半球が全体的に暑いらしい これは何かの予兆か 単に暑いだけか 知らないけど
ホットケーキ毒入り
近所のおばさんからホットケーキを頂いた 「美味しいですよ」 と近所に配っているらしい 暫くして、救急車のサイレンが鳴り響き、さらに暫くして、パトカーのサイレンが鳴り響いた なんだろうと外を覗くと近所の人が次々に救急車に乗せられている ピンポーンとチャイムが鳴って、開けると二人の刑事さんが立っていた 「大丈夫ですか?」 「はい、でも何事です?」 きくと、先ほど貰ったホットケーキに毒が入っていたらしいのだ 食べた人が次々に倒れて、生死に関わるような重症の人が多いらしい 「食べなくて良かったですねえ」 「ええ」と笑い、緊張の余り、変なギャグを飛ばしてしまう 「うちのほとけが、ほっとけーき、喰うな、ほっとけー、とか言うものですから」 「信心は大事ですか」 刑事が苦笑いを浮かべた しかし、その時、もう一人の方の刑事が「変な匂いがする」と鼻をピクつかせた 「うん、そういえば……」 と家に入ろうとする 外国のミステリーでは、令状が…… とか言って追い返せるのだが、日本ではどうなのだろう そんな私の思いにお構いなく、刑事二人はさっさと入って来る 図々しい奴らである 奥に入りクローゼットの前で立ち止まる 「あっ、そこは我が家の仏壇、いや、私物が入ってますから、勝手に開けないで…… 」 ひとりが、止めようとする私の肩を押さえて動けなくし、もうひとりが扉を開けた 其処にはかっての恋人、いま我が家のほとけが、ビニール袋に入って座っていた 「ホットケーキ、食べた方が良かったかも」 耳元でほとけの囁きが聞こえた あとがきです ポーの黒猫的な雰囲気を出したかったけど、全然でしたね まあ、そんなものでせう
安眠まくら
K博士より電話があって 「安眠まくらを発明したぞ」 と言う 「また、らしくないものを作ったんですね」 「とにかく寝に来てくれ」 そういう訳で研究所を訪ねると、部屋の真ん中に布団を敷いてあって、そこにありふれた感じの枕があった 「本気で寝てみてくれ」 本気で寝るには明る過ぎるし、様々な機械の音が煩いぞと思いつつ、横になり、枕に頭を乗せると、途端に暗く静かになった えっ、と頭を起こすと元の明るく煩い室内である 驚いていると、博士が得意げに笑う 「枕に頭を乗せると、光線と音波を遮断するバリヤーが張られて暗く静かになる、名付けて、まっくらまくらじゃ」 ネーミングは兎も角、確かにこれならどんな環境でも眠れそうだ 素晴らしい 「売れそうですね」 しかし、博士は残念そうに首を振った 「材料費が百万ほども掛かったからなあ、百何十万するまくらなんて、誰が買う?」 「なるほど、お先もま…くらですか」 あとがきです サムネはポール・ランソン(Paul Ranson, Paul-Elie Ranson, 1861年3月29日[1] - 1909年2月20日、フランスの画家 ナビ派の一員)のいい加減な模写です 昔から枕には凝る方でねえ 低め、柔らかめのが好きなんだけど、頭を乗っけてるうちに、もう少し低い方が良かったかな、高い方が、もうちっと硬い方が、柔らかな方が…… なんて考えてしまって別のを買ってしまう 頭を乗っけて、一晩でクビにするのもあってね、でも枕って案外と高いんですよ 同じような安物の服ばかり着て、枕に金使ってる私です
八岐大蛇
「星降る街か、ロマンチックじゃないなあ」 稲村君が空を見上げて言った 僕も空を見上げ、落ちてきた星をひとつかわしながら 「まったく」 と答えた 今夜、数百の小隕石がこの街に降る その中にひとつ大きめのがあって、中から八岐大蛇が出るというのである 八岐大蛇はかっていちど現れ、その時は素戔嗚尊に退治された ぼくと稲村君は、今回、二千年ぶりに地に降り立とうという八岐大蛇の退治を依頼されてこの地にやって来たのだ どうやっつけるのかというと、前回と同じに、酒を飲ませて前後不覚になった処で首を切り落とすんだそうである その為に何でも切れるという鉈を二振りと、酒の素という赤い丸薬を預かっている 鉈を小次郎ばりに背中に背負い、降る星を避けながら、八岐大蛇を待ち構えた 「ボチボチかな、数キロ先辺りに落ちるらしいが」 「待機位置として、此処は遠過ぎやしないかい?」 聞くとにゃっと笑われた 見ていると、ひときわ大きいのが燃えながら落下してきて地面に激突すると地響きと共に凄まじい火柱が上がった なるほど、近いと危険だなあ、と納得した 「行くぞっ」 「うむ」 近づいて見ると、三本足に胴体、その上に八つの龍頭を生やしたのがいた 香炉の蓋に八匹の龍を生やしたような感じだ 案外小さい キングギドラばりに百メートルくらいはあるかと思っていたのに十メートルくらいしかない ただ鼻から熱風を出すのが迷惑な 辺り一面火の海になっている 「どうすんだ? 近付けない」 「こっちだ」 と稲村君が走り出す 十分ほど走ると、周囲百メートル程の小さな池の端にでた その池に、下げて来た西瓜大の赤玉を投げ込んだ すると、池の色が黒からワインレッドにかわる 赤ワインのいい香りが、辺りに漂った その香りに誘われて、八岐大蛇が三本脚を器用に進めてばたばたと池の端に走り寄り、八本の龍頭を池に突っ込み、ガバガバと飲み始めた みるみる池の水位が低くなり、底が見えるほどになった 「ヒック、ヒック……」 と息を八回ついて、頭を地面に付け、八岐大蛇は眠り込んでしまった 「寝てくれたようだ。一首づつ落とそう」 「ひとつ目を鉈で切り付けたら、他が目覚めたりしないかね?」 「他の首と感覚を共有していないんだってさ。時々、首同士で喧嘩したりもするらしい」 なるほど、しかし……、と疑問を感じる 「なら、足はどう動かしてる? 船頭多くして……」 「知らん、とにかく首を落とそう」 「酔っ払いの寝首を掻くなんぞ、主義に反するがなあ」 「じゃあ、目覚めを待つか? 日本中が火の海になるが」 「いや、大急ぎで寝首を掻くとしよう」 バキバキと、汗だくになりながら、鉈で首を落としていった 数時間掛かったが、酔っ払い八岐大蛇は目覚めず、最後の首が落ちて、八岐大蛇は死んだ 「なんか気の毒な」 ぼくが言うと稲村君も頷いた 「しかし、しょうがないよな」 「しょうがないのは分かるけど、何だってこんなのが星の中に詰まってて地球に落ちてくるんだろう?」 「不思議だよね。地球を滅ぼそうという連中と守ろうという連中が居て、やり合ってるのかなあ。我らは護る側の戦士か」 うーん、と思う 「確かに護ってる側だろうけど、戦士というのには、ちっとも戦ってない。作業員て感じばかりだ」 「確かにね」 そう言いあって、ぼくらはため息を吐いた あとがきです サムネはポール・ランソン(Paul Ranson, Paul-Elie Ranson, 1861年3月29日[1] - 1909年2月20日、フランスの画家 ナビ派の一員)のいい加減な模写です もう六月、運命の七月が近い 何もないかもだけんど、なんか、中東も、欧州も、極東もきな臭い アメリカはあれだし 中国も、YouTubeを見てる限りでは天災他でごった返してるし 日本も難だし 七月、天変地異? 戦争? 何にも起こらない? どうなんでせうね どうなるんでせうね どうもなんもないんでせうか 未来を深く悩みつつ、土日は競馬に没頭している私です
着陸船レジリエンス、月に着陸せむとす
待った、待ちくたびれた、やっと…… アイスペースの月着陸船レジリエンスが明後日(25.06.06)早朝に月への着陸を決行することになりました 一月に打ち上げてより五ヶ月かかった 同じロケットで打ち上げられたブルーゴーストは二月半ばには月に着いていたと云うのにね これはなるべく燃料を燃やさずに月に至ろうとしたからなんです その為にスイングバイという月と地球の引力を利用して月の軌道に乗る方法を使いました 燃料噴射せずに、月に至ろうとするのは省エネ、低コストの為です 多く噴射するには多くの燃料を積まねばならない 燃料庫が大きいと積む荷物が少なくなる 同じ量を積もうとすれば着陸船が大きくなる コストがかかる どうせ相手は月、急ぐこともあるまい、のんびりでも安価な方がいいだろうの考えです アイスペースは月への貨物輸送をやろうという会社でありますから で、やっと明後日に月に降り立とうとしてる訳です 成功すれば民間企業としてはアジア初 世界でも何番めか 日本での最初はJAXAの月着陸船なんですが、あれは横向いたからねえ まともに四本足で着地すれば日本初になると思うんだけど 無事着陸すると小型月面探査車(ローバー)を出して、月の砂をとりNASA(アメリカ航空宇宙局)に売ります 世界初の月面上での商取引になるそうです 所有権を移すだけで持って帰って渡すわけではないんですが あとローバーに月面をちょこちょこと走らせながらとった映像をテレビ局に売ったりするらしいのでテレビで月の砂漠を見られたりします 前に一度失敗してるけど、今回は是非とも成功して貰いたいものであります かぐや姫やウサギさんが怒らないかと心配ではあるけれど
出雲の恋
出雲で出会った魔女 いつもの恋 魔女の作ってくれたサンドウイッチを食べなかった 怪し過ぎたから 「もう作ってあげない」 言いながらまた作ってくれた 二度目のサンドウイッチ 食べなかったけど 「もう!」 怒りながら作ってくれた三度目のサンドウィッチ 仏の顔もサンドウィッチ 「もうあなたとは付き合えない」 と、恋を放棄して 箒に跨がり飛んでってしまった 見送る思いは心に重い 夜が明ける 日が沈む 月は行ってしまった あとがきです サムネは国貞二代の浮世絵「釈迦八相記今様写絵二十三」の一部の模写 それから本文は一応、詩(?)のつもりかなあ(詠嘆詞) 駄洒落がやめられないけど 何も当たらないけれど ダービーは当てよう ispaceの月着陸が近づいて来ました 月に空気はないけれど、期待、期待
雨降りお月さん
「雨は阿保々々」 変な歌を歌ってる 「降る降る、じゃないんか」 「フールフールだろ、阿保阿保、だろうぜ」 それは如何でも良いが、月に流星雨が降っている ぼくと稲村君は象さん型宇宙船に乗り、月を交わして地球に向かおうとする流星があれば象さんの鼻に内蔵した波動砲で破壊せむと待ち構えていた しかし、流星雨は全て滞り無く月に向かって落ちていく ぼくらはただ見てるだけでいいみたいだった 「さあ、世紀の大パノラマが始まるぞ」 月の裏側なので地球からは見えない 見物人は我らだけである 「地球の幸運は月には迷惑だなぁ」 ぼくが言うと、稲村君は 「小さなアバタが少し増えるだけだろう、月は気にせんさ」 と答えたが、これがびっくりで、そうではなかった 星が集中的に降ってきそうなその辺りに突然真っ黒な穴が幾つか開いたのだ 「なんだ?」 と稲村君が呟く 「月のブラックホールか」 ぼくが答えるのとほぼ同時にブラックホールから光線が出て付近に落ちそうな流星を、片端から粉微塵にした それを見て稲村君が叫ぶ 「うーん、巷間に言われるが如く、月はなんと宇宙人の基地だったのか? 基地が月にあるのか? 月そのものが基地なのか? 大問題になるぞ」 ぼくも答えて、曰く 「ブラックホールからは光も脱出できないと言うが、光線が出てきた これも宇宙論的問題になるよな」 稲村君はぼくをチラッと見て、呆れたように首を振った あとがきです サムネの絵はガブリエレ・ミュンターの模写 アートしてるつもりのあーとがき ふん😤 最近、ツキ、運、等について考えてる ついているとかいないとか 運がいいとか悪いとか 普段の会話で普通に使っているけれど…… これってやはりオカルトなのかなあ 現代科学では説明できない事象であるのは確かなんだけど あるのかなあ? ないのかなあ? 私は『ある』と思っているけどね