ゆぽ
7 件の小説理想の彼女
俺の幼馴染の玲奈は可愛くて、優しくて、器用で、まるで理想のような女性だ。 そんな彼女と去年から交際している。 毎日が充実していてとても楽しい。 だが幸せはそう長く続かない。 玲奈は今日自殺をした。 自室で首絞め自殺をしている所を母が見つけて死亡が確認されたらしい。 葬儀に出た後、玲奈の母から声を掛けられた。 「これ、あの子が貴方にと遺した物です。どうか読んであげてください…」 どうやら玲奈が俺に書いた封筒に入った遺書があるらしい。 母が去ってから封筒の中を確認してみると、ただ一言書いてあった。 大好き、と。 俺は愛されてたんだなと理解して涙を零す。 そして封筒の底に一輪の花が入っていた。 後から調べて見るとクレマチスという花のようだ。
百合の咲き頃
タッタッタッタ。 地面を足で力強く蹴り、爽快に田んぼ道を走る音が聞こえる。 その音を鳴らしている少女は真っ直ぐ、笑顔で私に手を振りながら向かってくる。 ああ、こんな幸せな時間がずっと続けば良いのに。 『幸せは続かないよ。壊したのは、××ちゃんだよ』 パリン。 そんな声が、音がして走っていた少女はこちらを睨んでいた。 目が覚めると、全身汗だくになっておりおかしくなりそうな程心が苦しかった。 また、あの夢を見たんだ。 私は重い体を起こし身支度を始めた。 寝間着から会社の制服に素早く着替え、テーブルに置いていたパンを黙々と食べる。 パンには全く味がせず、食べ終えるとシャカシャカと音を立てて歯磨きをする。 これらを終えると同時に私は急いで家を出る。 別に遅刻する訳でもないし、用事がある訳でもない。ただ、早く家を出たい。 家近辺の信号をぼーっと待っていると、後ろからキィ…と音がし、『あの、もう青になってますよ?』と声を掛けられた。 私は聞き覚えのある声に動揺し、直様後ろを振り向く。 後ろには20代の茶髪ロングの女性がおり、車椅子に乗っていた。 思わず足がすくんでしまう。信号はもう赤になっていた。 『…どうかしましたか?』 私『…いえ。お一人で渡れないのなら、お手伝い致します』 『お気遣いありがとうございます。正直、段差があって困ってたんです。』 私『いえいえ』 私は愛想笑いをし、青になるタイミングでゆっくり車椅子を押す。 そして、昔の事。あの夏の事が鮮明に思い浮かぶ。 私は田中紗良という名前でごく普通の家庭に生まれ、田んぼがそこらじゅうにあるような田舎で育った。 周りは虫が大好きで女の扱いが分からない少年ばかりで、女は私しかいなかったからあまり楽しくなかった。 だが小学校1年になった時、こんな田舎でも一人だけ少女が引っ越してきた。 百合花『私、如月百合花って言います!東京から来ました。よろしくね!』 彼女は本当に名前通り、百合の花のように美しく私なんかが近づける存在じゃなかった。 だが転機は訪れた。 百合花『紗良ちゃん?だよね!私、席隣だよ!』 紗良『そう、なんだ。よろしくね。』 百合花『うん!仲良くしよ!』 私は彼女と隣になり、次第に距離が近づいていった。 都会で暮らして時の事、次の時間割、給食。どんなくだらない話でも、一つ一つが煌めく宝石のように輝いていた。 紗良『百合花、大好き!』 百合花『私もだよ、紗良。』 百合花は明るくて、優しくて、話もとっても上手で私にとって一番の親友となった。毎日が凄く楽しくなった。 あの事件が起きるまでは。
人間廃棄システム
この世には法で裁けないような要らない人間が多すぎる。 自分を棚に上げて他人を批評するゴミ、虐めをして承認欲求を満たすクズ、すぐ浮気する癖に街中でラブラブを見せつけてくるバカップル。 今すぐ消えてほしい人種ばかりだ。 だから俺は人間廃棄システムを国に提案しようと思う。 このシステムは社会を汚している奴が排出され、選ばれた人間はゴミと同等、廃棄だ。そうする事によって日本が綺麗になっていく。 人口が減る?善良な人間ばかり残るなら別に人口が減ってもいいだろ。デメリットを見出すよりメリットを考えろ。 それにしても、我ながらこのシステムはなんて良いんだろう。国にシステムを提案したらどんな賞賛が返ってくるか。楽しみだ。 そんなことを頭の中で巡らせていると、ガチャと音がしてドアが開いた。 母『あんた、40にもなってなんで一度も就職出来ないのよ‥どうしてそんな親の脛を齧る子になっちゃったのかしら。』 俺『あ゛!?黙れよババア!さっさと飯作って働けよ!!』 もし人間廃棄システムが実施されたら真っ先に選出されるのはこの男だろう。
相思相愛
莉愛は今日こそ瑠璃に告白しようと思っていた。 名前の通り、告白する相手は同性だ‥。 幼馴染でいつも一緒にいる仲だが、それはあくまで友達としてだろう。 でも私は瑠璃の冷静な所や、たまに出るおちゃめな所が恋愛的な意味で大好きだ。 正常を装いながら、瑠璃に口を開く。 莉愛「あっあのね‥瑠璃。突然だけど‥私と付き合ってくれないかな?」 瑠璃「‥いいよ」 私は思わず目を丸くする。 莉愛「いいの!?同性だよ‥それでも‥いいの?」 瑠璃「愛の形は人それぞれだし、私も莉愛が好き。」 瑠璃は微笑みながらそう答えた。 莉愛「やった!!」 莉愛は陽々とした気分で帰路を歩いて帰った。 ー瑠璃の部屋。 瑠璃(やっと莉愛に告白された‥嬉しいなあ。ずっとアプローチした甲斐があった。これからはもっと色んな莉愛の顔が見られるんだよね。でも‥) 瑠璃『やっぱり監視はやめられないな‥♡』 ベッドで嬉しそうに抱き枕を抱いて寝ている莉愛を見ながら、瑠璃はそう呟いた。
親友への祈り
私には幼稚園からずっと仲良しの親友がいる。名前は高原茜。成績優秀で、可愛くて、絵も上手くて、自慢の親友。 中学生になった今でも私達は同じ通学路を一緒に歩いている。 由美「茜、最近コンビニで新作の肉まん出たらしいよ」 茜「え、まじ!?食べたーい」 茜は普段は内気だが、私には心を開いてくれている。 由美「あーでも私ダイエットしてるんだよね、もう羊羹しか食べてない」 茜「それは食べられないね…って羊羹もスイーツやんけ!」 由美「ふふっ、バレちゃった」 何気ない会話で笑って、愚痴を言い合って、時には弱音を吐いて。 そんな仲がずっと続くと思っていた。 中学1年生の冬から突然茜が2週間も学校を休み続けた。 最初は風邪かと思っていたが、それなら連絡してくるだろうし、何かがおかしい。 ずっと茜の下駄箱に靴がないのが不安で仕方なかった。 私は心配になって茜の家に訪ねた。 ピンポーンとインターホンが響き渡る前に茜の母が出てきた。 茜の母「あら、由美ちゃん。ごめんね。今茜出れる状況じゃなくて。」 由美「あ、大丈夫です。これ、お見舞いの苺です。良かったらどうぞ…」 茜の母「まあ態々ありがとう。茜に渡しておくわ。」 そう言ってガチャと扉を閉めた。 さっきの茜のお母さんの言葉で違和感が膨らんだような気がした。何か引っかかる。 この頃から私は目を逸らして居ただけで気づいていたのかも知れない。 1週間後ー。 茜がいない通学路に寂しさを感じながら通学路を歩いていると、後ろからトントンと肩を叩かれた。 振り向くと茜がいた。 茜「心配させちゃってごめんね、由美。」 私は抱きつきたい気持ちを抑えながら「茜…!」とだけ言った。 3週間、という時間がこんなにも重いことを知らされ、私は感極まり涙が一粒流れた。またこれから一緒にいられるんだ。 茜「もう、心配しすぎだよ。」 そう言った茜の表情は全く笑っていなかった。 それから茜は学校には来るようになったが、ぽつぽつ休む日が増え、最近では休む日の方が多くなってきていた。 それ程病弱になっていたのか、と茜に声を掛けたかったがもしそれが傷付けてしまう言葉になったらと考えると言えない。 ある時、茜から口を開いてくれた。 茜「私ね、病気とかじゃなくて、原因不明の心の病なの」 持っていた鞄がドサッと落ちる。 由美「そう、だったんだ…」 薄々は気付いていた、分かっていた。だが事実を突き付けられるとそれは重すぎて、もう持たない。 涙目になっている私に茜が「もう由美が泣いてどうするの」と声を掛ける。 私が慰めてあげなきゃいけないのに…。苦しんでいる筈なのに…。 私はこの時から茜に心身に寄り添おうと誓った。 その事実を話してから茜は病んでるような言葉も多くなり、その度に改善法を見出したり、共感したりした。 心の病の原因は不明のままだった。 そうすると茜も笑ってくれたり、泣いてくれたりと感情を見せてくれるようになった。 学校に来る日も増えた。偉いって沢山褒めた。 またいつもの日常が戻ってくるかもしれない。 だがそう上手くは行かなかった。 2年生の春。 茜は始業式だけ来てずっと休み続けていた。私はお見舞いに行ったり、手紙を送ったりしたが彼女の席は永遠に空席だった。 たまにスクールカウンセリングで見かけることがあったが、いつも避けられていた。 いつしか私が原因で彼女が来ないようになったんじゃないかと思うようになり、怖くて連絡もお見舞いも何もかもしなくなった。 結局彼女は一学期丸々来なく、私は別の友達と一緒に時を過ごしていた。 でも私の心はいつも茜の事を考えていて、彼女が来てほしいと毎日願っていた。私が嫌なら嫌と言ってほしい、全力で避けてくれてもいい。 だから、もう一度茜に会いたい。彼女の声を聞かせてほしい。 この続きがハッピーエンドになる事を私は願っている。
Memory Rain
俺の母は雨が大好きだった。 理由を聞くと、父と出会った時雨でびしょ濡れだった見ず知らずの母に傘を渡してくれたのだとか。 よく分からないがそれが忘れられなくて雨が好きになったらしい。 だからよく雨の日は空を見つめて、和かに思い出に浸っていた。 俺にとってはそんな母が微笑ましかった。 そんな母が去年死んだ。梅雨真っ最中の時だった。 雨でトラックが母に気付かずそのまま轢かれた。 今日は母の命日だ。 複雑な気持ちで俺は母の遺影を見ていた。 外では絶え間なく音を掻き消す程の雨が降っていた。 そんな時、ふと窓を見ると雨の中一匹の猫がいた。 猫は雨を嫌うのにな‥と疑問に思っていると猫が空を見つめはじめた。 その表情は、なぜか微笑んでいるように見えた。 俺の目からは大粒の涙が溢れていた。
違和感
世間話をして笑い合ってる学校の生徒達、テレビを見て突っ込みを入れてる家族、人に溢れた街中。 何気ない日常。 そんな中に、違和感を感じる。 田中鈴13歳。 鈴は中学に登校中で、友達の篠木彩芽の世間話を聞かされていた。 彩芽とは周りから一人と思われたくないがために、友達になった。 今流行りのファッション、駅前のスイーツ‥どれも興味が湧かないから相槌を打って誤魔化している。 彩芽『でさ!そこのケーキめちゃ美味しかったんだよね〜』 鈴『へえ。私も行ってみたい。』 彩芽『今週の土曜日にでも一緒に行かない?』 鈴(面倒臭いなぁ‥) 鈴『ごめん、今週は用事があって‥』 彩芽『ふーん‥』 鈴(返事素っ気なさすぎでしょ。) 話している内に、学校の門まで来ていた。 そこからは、話題が無くなったのか沈黙で下駄箱まで来て階段を登り、教室に来た。いつもこんな感じで全く身勝手なものだ。 彩芽『じゃ、私こっちのクラスだから!』 と言って、1ー2に走っていった。 はぁと一つため息をつき、席に座った。 私はこの頃からどことなく違和感を感じていた。 別に虐められてる訳でもないし家族が毒親でもない。 でもこの何気ない日常が私にとって違和感でしかない。 それが拭えなくて鈴は不思議な気持ちになっていた。 そんなことを繰り返し考えている内に放課後になっていた。時が経つのが早い。つまらないと感じているから?いや、それなら反対か。 隣のクラスの彩芽が『一緒に帰ろー!』と言い駆け寄ってくる。 廊下を歩いている時はずっと彼氏との惚気話を聞かされていた。 彩芽『それでねー、蓮くんがさ!ストラップのプレゼントくれたの!もう毎日付ける笑』 そう言って鞄に付いているストラップを見せつけてきた。 うざい。黙ってほしい。 そう思いながら下駄まで行き校門に来た。 その時彩芽が『あ!忘れ物した』と言い鞄を私に投げて下駄箱に走って行った。 私はチャンスだと思った。普段の惚気話の鬱憤を晴らしたかった。 ただそれだけ。 だから彩芽の鞄についているクマのストラップを強引にちぎり私の鞄にしまった。 最初は優越感に浸っていたが、相手の感情とバレたらどうしようという罪悪感と懺悔が襲ってきた。 私が戻そうか葛藤している内に、彩芽が帰ってきて戻せなくなった。 彩芽『でさー、まじ楽しかった!』 彩芽はまだ気付いていないようだ。 どうしよう。言おうか。 私は頭が真っ白になり、少ししたら考えることも放棄した。 彩芽は結局気づかなかった。 私は自分の枕に顔を沈め、葛藤していた。 マスコットくらいなら返せば良い話だし‥こんなに悩まなくてもいいのに。 それに気付いてないって事はそんな大事に思ってないんでしょ。 と鈴は自分に言い聞かせていたが実行してしまった罪悪感に溢れかえっていた。 そしてもう一つ、偽りの友達だと思っていた彩芽のことでこんなに悩むなんて‥私も所詮他の人間と同じなんだ。 心底がっかりしていた。同時に、私の中で違和感が膨らんでいく。 自分はこの世に適してないんじゃないか、肉体があること自体が不思議、とか不可解なことばかりを考えてしまう。 枕を涙で濡らしている内に私は寝てしまっていた。 携帯には大量の着信とLINEが届いていた。 目覚めの悪い朝。 重い体を無理矢理起こし、手すりを掴みながら階段を降りる。 ダイニングに着くとトーストにバターが塗られたものが机の上に置いてある。 隣には、口一杯にトーストを頬張る妹の恵那がいて『お姉ちゃんおはよう』と声を掛けてくる。 私は無言で座りトーストを食べ始めた。 今にも吐きそうだった。 こんなに責任を感じる人間だったんだという思考が巡る。 いつもの日常なのに違和感を感じて落ち着いていられない。 私はトーストを半分以上残し、家を出て行った。 恵那は複雑そうな顔で此方を見つめていた。 家を出て直ぐに橋がある。そこを見つめると彩芽がいて、私を睨んでいた。 バレたなら仕方ない精神で橋の前まで堂々と歩いた。足元は震えていた。 彩芽の元まで辿り着くと、いきなり胸ぐらを掴まれた。 彩芽『‥私のストラップどこ?』 鈴『えーと‥ごめん。』 謝ると私が取ったことを確信したことによって私に殴りかかろうとしてきた。 そしてそれを咄嗟に避けてしまった。 それが間違いだった。 彩芽は勢いをつけていたこともありそのまま水深5メートル以上はある川に落ちていった。 落ちた拍子に彩芽は頭部をぶつけ、流血していた。身動きが取れず沈んでいった。 私は怖くなって逃げた。 どうしよう。私が彩芽を殺したんだ。余計なことしなければこんなことにならなかったのに。なんで、なんで、なんで‥。 泣きじゃくって、混乱していた。 違和感が確信に変わっていく。 嫌だ。捕まりたくない。あれは事故‥?なんで殺人なんかしたんだろう。決めつけるのもおかしいのかな。でも私が‥!私が事の発端で‥でも!殴りかかって来たのはあっちだ!ああ、もう‥ ‥殺人? 人を殺めることの何が悪いんだ。 そうだ、私が悪いんじゃなくて皆んながおかしいだけなんだ。私が正常。 鈴の中での歯車がどんどん狂っていく。 開き直ったかのように鈴がその場を立ち去ろうとした時、物陰から音がした。 不審に思った鈴は一歩‥一歩と物、陰に近づき覗き込む。 ー物陰にいたのは恵那だった。 恵那『お姉ちゃん‥今なら大丈夫。未成年だしさ。‥だから自首しよ?』 宥めるような言葉とは裏腹に、震え声で言った。そう、恵那は全てを見ていたのだ。今朝から調子がおかしかった姉を尾けてきていたのだ。 その言葉を聞いた鈴は首を傾げた。 鈴『なんで?私は悪くないのに?』 恵那『でも‥言わなきゃいけないよ』 鈴『殺人の何がいけないの。』 恵那『お姉ちゃん‥おかしいよ。狂ってる‥』 プチンと鈴の糸が切れ恵那を押し倒した。 そして首を掴み、締め出した。 恵那『おねぇ‥ぢゃん‥くるじぃ』 訴えかけながら鈴の腕を掴み、足をバタバタさせながら恵那は鈴の腕を首から離そうとする。 鈴『黙れ』 癪に触ったのか、さらに締める力を強くする。 恵那『お‥ねぇ‥‥ちゃ‥‥』 やがて訴える声も小さくなっていき、バタバタしていた足もピクリとも動かなくなった。 鈴を掴んでいた腕も力が抜けていき腕が下がっていく。 口からは首を絞められて飲み込めなかった唾が垂れている。 恵那は死んだ。 鈴はニヤリとしながらその場から離れようとした時、目撃者がおりそのまま警察に取り押さえられた。 『ー続いてのニュースです。12日、東京渋谷区で女子中学生が同級生女子と妹を殺害する事件がありました。女子中学生は『私は正しいことをしたまでだ』と不可解な供述をしております。この事件について街中でインタビューを行いました。』 30代女性『物騒な事件ですね。ご愁傷様です。』 50代男性『今の若者はおかしい。』 20代男性『ネットのネタにされそうな女だなw』 10代女性『え同年代とかまじ怖いです。これで10代が軽視されることがないのを願いたいです。』 10代男性『『容疑者の気持ち、分かります。自分自身の正義ですから』』 鈴の人生はたったの2日で狂ってしまった。 どんな違和感に阻まれるか分からない。 人はいつ壊れてもおかしくない。 次壊れるのは貴方という可能性だってある。