シャイニー

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シャイニー

こんにちは。いろんなジャンルを書いていきたいと思います。

出会い、そして別れ

 春——出会い、そして別れの季節。  わたし——遥は、受験が終わってホッとした気持ちと、もうすぐ卒業が来ることにどこか郷愁に駆られる気持ちが混ざっていた。 「出会いと別れの表し方って何だと思う?」  合格祝いに親友の咲良と行ったカフェで、咲良は聞く。 「わたしは春——今の季節のことだと思う」  ふと、わたしは涙がこぼれる。  咲良と、別れたくない。——別れたくない。————別れたくない。  そんなことを思っても、時間は許してくれなかった。ただ、不可逆的に進む一方だった。  わたしは涙ぐみながら言った。 「ねぇ、わたしたちって、出会わなければ別れずに済んだんだよね……? 出会わなければ、こんなに悲しまずに済んだのかな…………?」  わかってる、そんなことを言ったらいけないことだってわかってる。でも、わたしにそんな疑問が消えることはなかった。  咲良は、わたしの目線に合わせてゆっくりと言った。 「逆だよ。別れがあるから、出会いをより大切にする——だから遥と出会えて私は嬉しいんだ」  その言葉に、わたしは泣いた。悲しさと、嬉しさが混ざった涙。咲良は続ける。 「私はね、出会いと別れの表し方は『絆』だと思うんだ。別れても、どこかでまた出会う——そんな奇跡を望む。それは、私たちの間に絆があるからだと思うんだ」  出会い、そして別れ——また出会う。これが——『絆』なんだ。  わたしは笑顔でこう言った。 「わたしも、咲良と出会えて嬉しいよ」

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燃えない手紙

 その手紙は燃やしたはずだったのに、翌朝、自宅の郵便受けに何事もなかったように入っていた。俺は不審に思い、家に入ってからその手紙を確認する。開封済み、シールの破れた後まで再現してある。 「いったい誰が——それともほんとにこれはあの時の手紙なのか?」  手紙の中身を見る。あの時、靴箱で見たクラスメイトからのラブレターで、筆跡もそのままそっくりだった。 「まさかタイムリープしたわけでもないし——」  そんな時、玄関のチャイムが鳴る。 「お届け物です〜」  そう言われて、俺は荷物を手に取る。中身を見て俺は戦慄した。俺の写真が山ほど入ってある。そして、その中に一枚の手紙が入っていた。その手紙には、こう書かれてあった。 『手紙、読んでくれましたか?  なくしたりしたらまた言ってください。  秒で届けますんで。  お返事お待ちしております。  監視をしていますので、逃げることのないようお願いします。』  俺は強い恐怖を覚えた。やってることはストーカーと同じだった。手紙を何枚も用意しているとのことだ。  俺はその手紙を置き、郵便受けに入っていた手紙を再度手に取る。俺は確かに手紙を燃やした。灰になるところを確認した。間違えて別のものを燃やしたということはないだろう。つまり、この手紙は完全に俺が燃やした手紙を再現したものということだ。印刷をしているわけでもなく、手書きで。だとすれば相当の根性だ。俺はその手紙を破った。そして、あることに気づいた。 「監視、つまりこの手紙に何か仕掛られてるのか?」  俺は破った手紙をじっくりと見る。そして、小型のカメラを見つけた。すなわち、この送られてきた大量の写真はカメラを通して撮られたということだ。  秒で届ける、という言葉が脳裏によぎる。すなわち、この手紙が破れたということは彼女は近くに来るということだ。俺は戦慄する。そして、チャイムがまた鳴った。 「お届け物です〜」  この時、俺は衝撃の事実に気づいた。やけに、嬉しそうに言ってたのはそういうことだったのか。彼女は、配達員に紛れて俺の玄関の元に来ていたのだった——

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「世界」と「社会」と「国民」と

 その日、駅前の時計は止まってるのに、世界だけが先に進んでいた。世界、とは私の名前だ。群衆は誰一人として止まってるのに私だけ先に進めるのは不思議な感覚だ。私には時を止める超能力があるとでも言うのだろうか? 「ねぇ、あなた、世界だよね?」  突然、背後から声がする。振り向くと、そこには社会がいた。 「うん。あなたは社会だよね?」 「そうだよ。あなたは止まっていた。だけど、私があなたを動かしたんだ」  社会が世界を動かす。逆に言えば社会がなければ世界は動かない、ということだ。 「じゃあ他の人はなぜ止まってるの?」 「社会は世界を動かすことができる。だけどね、世界を動かしても国民は動くとは限らない」  私は彼女の言う意味がよくわからず、聞き返す。 「どういう意味? あなたが私を動かせるなら、国民も動かせないの?」 「そう。私は世界を動かすことができるけど、国民は動かすことができない」  しばしの沈黙、そして私は聞いた。 「じゃあ、どうやったら国民が動くの?」 「それはね——」  社会は間を空けてから言った。 「あなたが動かすんだよ」 「私?」 「そう。社会は国民を動かせない。だけど、世界なら国民を動かすことができる」  彼女の目は輝いていた。私は言った。 「無理だよ、私には」 「できる。世界は国民を動かすことができる」  彼女の言葉にはどこか大きなものを感じる。そして、彼女は続ける。 「直に私も動かなくなる。その前に、国民を動かしてほしいの」 「どういうこと?」 「私は国民によって動かされるから。このまま国民が止まると私は動かなくなり、あなたも直に止まる。だから、その前にあなたが国民を動かす必要があるの」  社会が世界を動かし、世界が国民を動かし、国民が社会を動かす。そうやって循環する世の中に、私は不思議と考えさせられる。 「わかった。動かすよ、国民を」 「お願い。あなたが希望だから——」  そう言い残し、社会は止まった。そして、私は国民を動かしたんだ。国民が動き、また社会を動かす。そして、私は社会によって動かされる。そうやってこの世界はできていて、私もまたその一部としてあるのだった——

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「ごめんね」よりも「ありがとう」を

「ごめんね」  その言葉に、わたしは些か戸惑いました。わたしは、彼が落としたシャーペンを拾っただけです。謝られる筋合いはないし、むしろここは「ありがとう」と言うべきだろう。  わたしが少し落胆していると、彼はそれに気づいたのかわたしの目を見て言いました。 「ここは、ありがとうって言う方が正しいね。ありがとう」  彼の真っ直ぐな姿勢に、わたしは自然と心が奪われました。彼の言葉は、まるで生命のように鼓動を刻んでいました。わたしは、笑顔でこう言いました。 「どういたしまして」  それからわたしは彼とよく話すようになりました。彼とはよく趣味が合い、わたしも話していて楽でした。他愛のない雑談をしたり、授業の先生の愚痴を言い合ったり——そんな何気ない会話が、わたしは楽しかったのでした。  とある日、わたしは部活の先輩に恋をしたということを彼に話してみました。彼は些かたどたどしい様子でしたが、すぐに笑顔を繕ってわたしの話を聞いてくれました。彼はただ一言、応援してるとだけ言って去っていきました。  あくる日、わたしは部活終わりに、その先輩に告白しました。 「好きです、付き合ってください!」  ラブレターを差し出し、目を瞑る。刹那の沈黙が続き、先輩は一息置いてからこう言いました。 「まずはありがとう」  この言葉の意味が「ごめんね」だということは馬鹿なわたしでもわかっていました。わたしは、彼のその後の言葉も聞かずに、その場を走り去りました。  その後、わたしが公園のベンチで落ち込んでいると、ふと声が聞こえてきました。 「大丈夫? なにかあった?」  見ると、そこにいたのは彼でした。 「わたし……わたし…………フラれたの………………」  わたしは俯いたままそう言いました。  わかってたんだ。ほんとはわかってたんだ。先輩がわたしのことを好きじゃなかったことなんて。  そんな声にならない言葉が、わたしの脳内を彷徨う。だけど、彼はわたしに手を重ね、言ったんです。 「辛かったね——もう、無理しなくていいからね」  その言葉を聞いた途端、堰を切ったように涙が溢れ出たんです。子供のように、声をあげてわんわんと泣いたのです。  泣いて——泣いて————泣いて——————涙が枯れ果てるまでずっと。  気づけば、夕日が差し込んでいました。わたしは、彼がずっとわたしのそばにいてくれていたことに気づきました。わたしは、彼に言いました。 「ごめんね」  その時、わたしはすぐに何かに気づき、言い直しました。 「ここは、ありがとうって言う方が正しいね。ありがとう」  彼は、笑顔でこう言いました。 「どういたしまして」  それからわたしは前よりも彼とよく話すようになりました。気がつけばわたしは、失恋の痛みも消え、いつもの日常に戻っていました。そして彼との関係も近くなり、彼と一緒に帰る機会も増えました。  失恋から三ヶ月が経った頃、彼はあの時の公園にわたしを呼びました。そして、彼は周囲に誰もいないことを確認してから言ったのです。 「好きです! 付き合ってください!」  わたしは状況を理解するので精一杯でした。今思えば、彼の言動に妙なところは多々ありました。それなのに、どうしてわたしは気づかなかったのでしょう? わたしは、震える唇で最低限の言葉を発しました。 「——ごめんなさい」  わたしはそう言ってその場を走り去りました。辛くて、痛い——。自分がフッたにも関わらず、わたしは胸が痛くて堪らなかったのです。それは、失恋の時の痛みを遥かに凌駕するものでした。  ごめんね——ほんとにごめんね————許してください。  ただ、切実にそう思う。こんなこと言っても許されないのはわかってる。——わかってるのに。  何故だろう、涙が流れる。わたしは、袖で目を拭いながらただ一心に走る。もう、わたしには逃げるしかないんだ——  家に着き、わたしは手洗いもせずにベッドに仰向けになりました。わたしは、さっきの出来事を反芻しながら考えました。  わたしは——たった一人の親友を失ったんだ————  その一言だけが真実だった。もう、わたしには何もない。  わたしは、ただ泣いた。ひたすら泣いた。それしかできなかった。涙が頬を伝い、布団に滴り落ちる。フラれるときよりフル方が辛いとよく聞くが、そういうことなのだと実感する。  その時、メールの着信音が聞こえました。彼からでした。  ——きちんと伝えてくれて、ありがとう。フラれた僕がこんなこと言うのも何だけど、これからもいつも通り友達として接してくれたら嬉しいです。  その言葉を見た時、わたしは涙を流しました。それは悲しさからではなく、嬉しさから生じたものでした。  彼はこんな最低なわたしにも、「ありがとう」と言ってくれたのだ。思えば、先輩もわたしをフル時に「ありがとう」と言っていた。わたしは、彼が勇気を出して告白してくれにも関わらず、ただ謝ることしかできなかったのに——  気がつけば、わたしは彼に電話をかけていました。彼はすぐに、わたしの電話に出て言いました。  ——どうしたの?  わたしは必死に涙を堪えながら言いました。 「ごめんね……ごめんね…………あなたが勇気を持って告白をしてくれたというのに『ありがとう』って言わなくてごめんね………………」  それから、わたしは涙を払拭しながら言い直したのです。 「ここは、ありがとうって言う方が正しいね。ありがとう」

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