Brave

9 件の小説
Profile picture

Brave

よろしくお願いします 特撮(仮面ライダー)の小説が多いと思います 頑張って1日1投稿出来る様にします

第9章:崩壊の星界(アストラル・エンド)

星霊セラフィスとの激闘の末、アストラルとノワールは奇跡的に勝利を収めた。しかし、セラフィスの消滅と同時に、「星界」と呼ばれる異空間が崩壊を始める。 光と闇のバランスを保っていた星の核が砕け、夜空の星々が次々と墜ちていく。 アストラルの胸に輝く“星核ドライバー”が悲鳴のような光を放つ。 「玲央(アストラル)、聞こえるか? 星界はもう限界だ。ここに留まれば、すべてが消える!」 ――ノワールの声がヘルメット越しに響く。 だが玲央は動かなかった。 崩壊の中心に、まだ“ひとつの影”が残っていたのだ。 セラフィスの力を取り込んだ残骸――「アストラル・ダークネス」。 それは玲央の“もう一つの心”が実体化した存在。 彼がかつて捨てたはずの「怒り」「絶望」「破壊衝動」そのもの。 「……お前も、俺の中の星だったんだな。」 「違う。俺こそが、お前だ。」 2人のアストラルが剣を交える。 光の刃と闇の刃がぶつかり、星界全体に閃光が走る。 その衝突は、現実世界にまで影響を及ぼすほどのエネルギーを放った。 ノワールは崩壊の中で立ち尽くす。 玲央の覚悟を知りながらも、手を伸ばせない。 星の輝きが、ふたりを包み込んだ。 「……ありがとう、ノワール。次に会うときは――本当の夜明けを見せてやる。」 その声と共に、星界は静かに消滅した。

0
0
第9章:崩壊の星界(アストラル・エンド)

仮面ライダーアストラル 第8章:審判の星霊

空が裂けた。 その裂け目の奥から、天の光が降り注ぎ、 白銀の翼を広げた存在――セラフィスが舞い降りる。 その姿は、神話に描かれる天使のようでありながら、 眼差しには冷たく正確な“判断の光”が宿っていた。 「星霊の均衡を乱した者たちよ…… 光も闇も、等しく裁かれねばならぬ。」 セラフィスの声が響くと、街全体が静止したかのように時が止まった。 瓦礫も、風も、人々の悲鳴さえも――凍りつく。 翔真は息をのむ。 ノワールが一歩、前に出た。 「……セラフィス。お前が、星霊たちを“消した”のか?」 「消滅ではない。調和のための“帰還”。 彼らは、過剰に干渉した。ゆえに“回収”しただけだ。」 「……ふざけるなッ!!」 翔真が叫び、アストラルメモリアフォームの剣を構える。 「彼らは……生きていた! 感じて、想って、戦ってた!  それを“データの修正”みたいに扱うな!!」 光が弾け、翔真の身体を星霊の記憶が包む。 過去に出会った星霊たち――ルナ、オリオン、ペガス、アクエラ。 彼らの声が重なり合い、アストラルの胸に流れ込んでいく。 『翔真……私たちは、あなたと共に戦った。 でも今度は……あなたの中で、生きたい。』 翔真の瞳が燃える。 星光がさらに強く輝き、アーマーの紋様が青から白銀へと変化する。 新たな姿―― 仮面ライダーアストラル・エクリプスフォーム。 その力は、光と闇の融合。 ノワールの闇エネルギーが、翔真の星霊波動と共鳴し、 二人の間にかつてない調和が生まれる。 ノワールが微笑んだ。 「……やっと、俺の研究が意味を持つ日が来たか。」 セラフィスが羽を広げ、純白の剣を掲げる。 その光が空を裂き、全てを焼き払おうとする。 「では――審判を始めよう。」 翔真とノワールは同時に叫んだ。 「変身――共鳴(レゾナンス)!!」 二つのドライバーが共鳴し、光と闇の旋律が重なり合う。 空間が歪み、宇宙のような舞台が広がる。 そこは――“星霊の審判空間”。 セラフィスの剣が閃き、翔真とノワールは左右に分かれて受け流す。 衝撃で空間が砕け、無数の星片が散る。 ノワール:「アストラル……お前、迷ってるな。」 翔真:「俺は……“正しさ”より、“守りたいもの”を信じる!!」 翔真が星影剣アステリオンを掲げる。 七つの星座が輝き、エネルギーが一点に収束。 「フィニッシュ・ブレイク――スターダスト・リミット!!」 光の奔流が、セラフィスの羽を貫いた。 天使のような存在がわずかに微笑む。 「……なるほど。人の心、それが“星霊の核心”か。」 爆光の中、セラフィスが消えていく。 だが同時に、翔真の体からも光が抜けていった。 「……翔真!? おい、しっかりしろ!!」 ノワールが駆け寄る。 美琴の声が遠くで響く。 「翔真――!」 崩れゆく世界の中で、翔真は静かに微笑んだ。 「……俺は、大丈夫。星たちは……まだ、ここにいる。」 空の裂け目が閉じていく。 夜が戻り、星が再び輝きを取り戻す。 そして、地平の向こうで―― 誰かが、その戦いを見つめていた。 黒いフードの影が呟く。 「次の星霊は、“創世”の名を持つ者。 仮面ライダーアストラル……お前の運命は、まだ終わらない。」

0
0
仮面ライダーアストラル 第8章:審判の星霊

🌌仮面ライダーアストラル 第7章:星影の記憶

夜空を覆う黒雲の中、ひときわ強い閃光が走った。 裂け目が再び脈動し、街を包む空気が重く歪む。 そこから漏れ出す光と闇の粒子が、まるで生き物のように絡み合い、 アストラルのスーツ越しに翔真の体を締めつけた。 「……まただ。星霊が、暴れてる……!」 膝をつく翔真。 その腕の中で、美琴が震えながら彼を支える。 「翔真、もう無理よ! さっきの戦いのダメージがまだ……!」 「……俺が止めなきゃ……あの裂け目が広がったら、もう……」 彼の胸部装甲が淡く光る。 アストラルドライバーの中心、星核(せいかく)ユニットが激しく鼓動していた。 星霊たちの声が、脳の奥で重なり合う。 “運命に抗う者”── “光を選んだ愚か者”── “お前は、どちらの星に堕ちる?” 「黙れ……! 俺は、俺の意志で戦うッ!」 翔真の叫びと同時に、ドライバーが眩い光を放つ。 新たなライドカードが浮かび上がった。 そこには―― 《ASTRAL MEMORY》 の文字。 『覚醒せよ、記憶の星々よ。光と闇の狭間に――星影(ほしかげ)を刻め!』 「変身ッ!!」 星光が渦巻き、翔真の姿が包まれる。 黒と銀のアーマーが交錯し、背中に浮かび上がる七つの星座。 それは、彼がこれまで戦いの中で出会い、消えていった“星霊たち”の記憶だった。 仮面ライダーアストラル・メモリアフォーム。 彼の瞳が、淡い青白い光を放つ。 その視界に、ゆらりと立つノワールの影。 「……その力、星霊たちの記憶を喰らって生まれたものか。  面白い。だが、同じ過ちを繰り返すなよ、翔真。」 ノワールの声には、かすかな哀しみが混じっていた。 その表情に、かつて“黒瀬隼人”だった頃の優しさが一瞬だけよぎる。 「過ちを犯したのは……あなたじゃない。  星霊を、ただの力だと思った“人間”だ!」 アストラルの手に、星光を帯びた刃が形成される。 “星影剣(せいえいけん)アステリオン”。 振るうたびに、過去の記憶が閃光となって空間を切り裂く。 ノワールが反撃。闇の波動を纏った掌を突き出す。 二つの光と闇がぶつかり合い、巨大な衝撃波が街を貫く。 崩れゆく建物、光る星霊の残滓、そして空の裂け目が一瞬だけ開き―― そこから、何かが降りてきた。 白銀の羽を持つ、ヒトのようでヒトでない影。 それは、天界の守護星霊―― 「セラフィス」。 「選ばれし者、アストラル…… 星霊の均衡を乱すなら、お前もまた滅びの星と化す。」 翔真は立ち上がる。 ノワールもまた、無言で構える。 「……どうやら、ここからが本当の“審判”だな。」 星空が裂け、三つの光―― アストラル、ノワール、セラフィス。 三者が交錯する、新たな戦いの幕が上がった。

0
0
🌌仮面ライダーアストラル 第7章:星影の記憶

仮面ライダーアストラル 第六章 影に潜む真実

ノワールとの初めての激突の後、街は不安と混乱に包まれていた。  人々は「二人の仮面の戦士」を見たと噂し、どちらが味方でどちらが敵なのか、誰にもわからなかった。  翔真は美琴を守り抜いたものの、体の疲労は限界に達していた。  アストラルドライバーを外した瞬間、視界がぐらりと揺れる。 「翔真!」  駆け寄る美琴が肩を支える。翔真は苦笑を浮かべた。 「大丈夫……まだ、立てる」  だがその言葉に、自分自身が一番説得力を感じていなかった。 ⸻  夜の路地裏。  ノワールは一人、漆黒の装甲を解いた。  姿を現したのは若き研究者、黒瀬隼人。 「やはり……この力は俺の体を蝕むか」  掌には黒い星座模様が浮かび、皮膚を焼くように広がっていた。  彼はかつて星霊エネルギーの研究に携わっていたが、事故によってその力を取り込み、歪んだ形でライダーへと変貌したのだった。 「翔真……お前がその力を受け継いだのも、俺の計画の一部だ。必ず取り戻す」  彼の赤黒い瞳が、夜空に浮かぶ星を射抜く。 ⸻  一方、翔真は美琴と共に天文台を訪れていた。  星霊エネルギーを解析する古文書が、そこで保管されていたからだ。  資料に描かれていたのは、二人の戦士の伝承。  一人は「光の星を導く者」。  もう一人は「闇に堕ち、星を支配する者」。 「……まるで、俺とノワールのことだ」  翔真がつぶやくと、美琴は不安げに彼を見つめた。 「じゃあ、この戦いは……運命なの?」  翔真は首を振る。 「運命なんて関係ない。俺はただ……守りたいものを守るだけだ」  その言葉と同時に、ドライバーの結晶が強く輝き出す。  青白い光に混じって、金色の星屑が一瞬だけ走った。 「これは……新しい力?」  未知の輝きが、翔真の胸に宿り始めていた。 ⸻  その頃、街の裂け目がさらに広がり、異形の怪物が次々と現れ始めていた。  そしてその中心に、黒瀬隼人――仮面ライダーアストラル・ノワールが静かに立っていた。 「光よ……闇に呑まれる時が来た」  次なる決戦の幕が、静かに上がろうとしていた。

0
0
仮面ライダーアストラル  第六章 影に潜む真実

仮面ライダーアストラル 第五章 光と闇の激突

 夜の街を照らす街灯の光は、怪人シャドウリザードが影を喰らうごとに次々と消えていった。  残された闇の中、二人のライダーが対峙する。  青白い星座の輝きを纏う仮面ライダーアストラル。  漆黒の星霊を支配する仮面ライダーアストラル・ノワール。 「翔真……」  後ろで震える美琴の声が聞こえる。翔真は拳を握り、前を見据えた。 「俺は守るために戦う。お前には負けない!」  ノワールは薄く笑みを浮かべ、構えを取る。 「光は闇に呑まれる。それを教えてやろう」  次の瞬間、二人は地を蹴り、激突した。 ⸻  アストラルの拳が青白い残光を描き、ノワールの蹴りが赤黒い残滓を撒き散らす。  衝突のたびに火花のような星屑が舞い、街路樹が揺れる。  翔真は渾身の連撃を叩き込むが、ノワールは片手で受け流し、反撃の掌打を胸に突き刺した。  衝撃でアストラルは壁に叩きつけられる。 「くっ……強い!」 「星霊の力は本来、俺のものだ。お前ごときが扱えると思うな」  ノワールの言葉に翔真は歯を食いしばる。胸の痛み以上に、心を抉られるようだった。 ⸻  その時、シャドウリザードが美琴へと迫る。 「美琴!」  翔真は立ち上がり、痛みに耐えて駆け出した。  星座のラインが胸で強く輝き、力が溢れ出す。 「俺は……絶対に守る!」  アストラルはシャドウリザードの爪を掴み、渾身の力で投げ飛ばす。  その隙にノワールが背後から迫り、蹴りを叩き込もうとする。  振り返ったアストラルの瞳に、決意の光が燃えていた。 ⸻ 「光は……闇に呑まれたりしない!」  翔真の叫びとともに、星座の紋章が眩く弾ける。  その輝きに一瞬たじろぐノワール。  二人の拳が、夜空を裂くようにぶつかり合った。  衝撃で地面がひび割れ、街灯が吹き飛ぶ。  美琴が思わず目を覆ったとき、二人のライダーは再び間合いを取った。  息を荒げる翔真と、余裕を失わないノワール。  戦いはまだ始まったばかりだった。

0
0
仮面ライダーアストラル  第五章 光と闇の激突

仮面ライダーアストラル 第四章 揺らぐ絆

 流星の力を手に入れた翔真は、その代償を痛感していた。  ステラーフォームの戦いから数日後、彼は体の芯が焼けるような倦怠感に襲われていた。 「……これが、力の代償ってやつか」  変身の反動は肉体だけでなく精神も蝕む。授業中も気を抜けば意識が飛びそうになる。  それでも翔真は、街を覆う“裂け目”と怪人の存在を無視できなかった。  夜、自室の窓辺でアストラルドライバーを握りしめる。  その結晶は淡く瞬き、まるで問いかけるように脈動していた。 「俺は……守れるのか? 本当に」  弱気な声が闇に溶けたその瞬間、街の遠くから悲鳴が響いた。  市街地に現れたのは怪人シャドウリザード。  黒い鱗に覆われた巨体が、街灯に伸びる影を喰らうたび、人間たちは存在を失い、声も残さず消えていく。 「やめて……! みんな逃げて!」  人混みの中で叫ぶのは翔真の幼なじみ、美琴。  友人を庇いながら震える彼女の背後に、怪物の爪が迫る。 「翔真……助けて!」  その声が、翔真の胸を突き刺した。  翔真が駆け出そうとした時、先に現れた者がいた。  闇の中から歩み出る長身の男。黒いコートを纏い、手に持つのは漆黒のベルト。  男はゆっくりとベルトを装着する。 『UMBRAL NOIR! ――DOMINATE THE CONSTELLATION!』  闇が爆ぜ、漆黒の装甲が組み上がっていく。  赤黒い複眼が光り、星座のようでいて歪んだ模様が胸を走る。  その姿は、まさしくアストラルの影。  ――仮面ライダーアストラル・ノワール。 「星霊の力……お前が守るために使うというのなら、俺は支配のために使う」  ノワールは腕を振り下ろし、シャドウリザードが恭しく跪く。  怪人を従えるその姿に、翔真は言葉を失った。 「どうして……同じ力を持つのに、人を守らない!」  翔真の叫びに、ノワールは冷笑で答える。 「守る? 無駄だ。人は弱い。ならば、恐怖ごと俺が支配する。それが秩序だ」  怪人が暴れ、美琴の悲鳴が再び上がる。翔真は震える手でドライバーを握りしめた。 「体が……まだ重い。でも……俺がやらなきゃ!」  結晶が光を放ち、心臓の鼓動が高鳴る。  翔真は深く息を吸い込んだ。 「――変身!」  光の星座が翔真を包み、再び仮面ライダーアストラルが現れる。  その瞳に宿るのは、迷いを超えた決意の輝きだった

0
0
仮面ライダーアストラル  第四章 揺らぐ絆

仮面ライダーアストラル 第三章 星霊覚醒

 夜空の裂け目は日ごとに広がり、ナイトメアの出現も増えていた。  だが遼は昨日の戦いで、自分の力がまだ不完全だと痛感していた。アンブラとの衝突――あの圧倒的な力の差が脳裏から離れない。 「俺は……このままじゃ勝てない」  放課後、誰もいない屋上で遼は拳を握る。アストラルドライバーの中央にある星の結晶は、淡く瞬いていた。  そのとき、再び声が聞こえた。  前と違い、今度は温かく、導くような声。 『お前の心の中にある“星霊”を解き放て。光も影も、すべてを受け入れるのだ』  遼の視界に、星空が広がった。  その中心に浮かぶのは「小さな白い星霊」――幼いころから彼が見てきた存在だった。 「お前……ずっと、俺のそばにいたのか」  星霊は頷くように輝き、遼の胸へと溶け込む。  アストラルドライバーの結晶が強く光り、眩い星座の紋様が浮かび上がった。 『ASTRAL STELLAR FORM! ――UNLEASH THE CONSTELLATION!』  流星の雨が遼を包み、装甲が変化する。  黒と銀のスーツに、蒼い星座を描くラインが浮かび、肩と胸には光の星屑が漂うような輝きが宿った。  新たな姿――アストラル・ステラーフォーム。 「これが……俺の新しい力!」  その瞬間、空の裂け目からナイトメアが飛び出す。  巨大な獣のような影を前に、遼は迷わず駆け出した。  ステラーフォームの力は、今までとは桁違いだった。  拳を振るえば、軌道に光の星座が描かれ、蹴りを放てば流星群のごとき衝撃波が走る。 「これなら――勝てる!」  最後にベルトが共鳴し、必殺の音声が響く。 『STELLAR FINISH! ――CONSTELLATION IMPACT!』  夜空の星座を繋ぐように光が収束し、巨大な星図が描かれる。  その中心から放たれた光の一撃が、ナイトメアを貫き消し去った。  戦いを終え、遼は夜空を見上げる。  だがその瞬間、聞き慣れた声が背後から響いた。 「力を手に入れたようだな……アストラル」  振り返ると、闇に浮かぶ赤い複眼。  仮面ライダーアンブラが、静かに立っていた。 「その星霊の力――俺が奪ってやる」  光と闇の戦いは、再び動き出そうとしていた。

1
0
仮面ライダーアストラル  第三章 星霊覚醒

仮面ライダーアストラル 第二章 闇より生まれし影

翌日。  昨夜の戦いを終えた遼は、普段通り学校に向かっていた。だが胸の奥はざわめいている。  ――本当に俺は、ライダーになってしまったのか?  ――あれは力なのか、それとも呪いなのか?  問いかけに答える者はいない。ただ、腰に残るベルトの感触が現実を示していた。  放課後。  帰路につく遼の前で、空が再び裂けた。  歪んだ亀裂から流れ落ちる黒い光。現れるナイトメア。昨日と同じ光景――だが、今日は違った。  ナイトメアを前に、すでに一人の青年が立っていたのだ。  長身で、漆黒のコートを羽織った青年。鋭い瞳が遼を射抜く。 「……お前が、昨夜の“星の戦士”か」 「誰だ、お前は……!」  青年は無言でベルトを掲げた。  それはアストラルドライバーに似ていたが、中心のコアは深紅に濁り、光ではなく影を宿している。 『UMBRAL! ――DESCEND INTO DARKNESS!』  闇が渦を巻き、青年の身体を飲み込んだ。  漆黒の鎧に深紅の紋様、禍々しい複眼。  現れたその姿は、まるでアストラルを反転させた存在。 「仮面ライダー……アンブラか」 「正解だ。俺は仮面ライダーアンブラ。星霊を守る? 笑わせるな。  星霊は人の恐怖と絶望から生まれる。ならば、それを利用するのが当然だろう?」 「人の心を……お前は踏みにじる気か!」  アストラルとアンブラ、二人のライダーが睨み合う。  次の瞬間、地を蹴ったアンブラが先に仕掛けた。  黒い残像を引く高速の蹴り。アストラルは辛うじて腕で防御するが、凄まじい衝撃で吹き飛ばされる。 「くっ……強い!」 「お前はまだ“星霊”の力を使いこなしていない。ただの半端者だ」  アンブラの拳が闇を纏い、アストラルを打ち据える。  重い一撃に地面が砕け、遼の意識が揺らぐ。  だが、彼の胸奥から声が響いた。 『恐れるな。お前の中にも光はある。立ち上がれ――アストラル』 「……ああ、負けられない!」  再び立ち上がるアストラル。  星の光が身体を包み、拳に流星の軌跡が宿る。  闇と光。両極の力を纏ったライダーが激突する。  だが、決着はつかなかった。  アンブラは冷笑を浮かべ、夜の闇に溶けて消えていく。 「また会おう、星の戦士。お前が本物かどうか……確かめてやる」  残された遼は、夜空の亀裂を見上げ、拳を握りしめた。 「敵は……俺と同じ力を持つライダー……。  俺は、本当にこの戦いに耐えられるのか……」  不安と決意が交錯する。  夜空の裂け目は拡大を続け、運命の歯車はさらに加速していった。

1
0
仮面ライダーアストラル  第二章 闇より生まれし影

仮面ライダーアストラル 第一章 星影に立つ者

 ――夜空が裂けた。  夏の蒸し暑さが残る夜、街の灯りを押し潰すように、頭上の空に赤黒い亀裂が走る。誰も気づかない。だが、その裂け目から零れ落ちる「異質なもの」を、**天城遼(あまぎ りょう)**の目だけは捉えていた。  光とも闇ともつかない、揺らめく粒子。まるで星の亡霊のようなそれらは、やがて形を持ち始める。  人々の心に巣食う恐怖を吸い寄せ、歪んだ影を象った存在――ナイトメア。 「……やっぱり、俺にしか見えないんだな」  高校二年の遼は、ビルの屋上から街を見下ろしていた。彼には、生まれた時から普通の人間には見えないものが見える力があった。最初は光の粒や影。次第に、人の心の奥底に潜む「星霊」や「怨念」の形まで。  奇妙な力を持つがゆえに、周囲からは避けられ、孤独の中で過ごしてきた。  だからこそ、目の前に現れた怪物の存在を「見えてしまう」のは必然だった。  その時だった。  耳の奥に、どこからともなく声が響く。 『選ばれし者よ――。星霊と人の狭間を繋ぐ者、アストラル』 「……誰だ!?」  声と同時に、遼の足元に光が集まり、地面に紋様が描かれていく。星座を思わせる光の陣。そこから浮かび上がるのは、黒と銀に彩られた変身ベルト――アストラルドライバーだった。  息をのむ遼。  その視線の先で、ナイトメアが咆哮する。黒い瘴気をまとい、通りを歩く人々に触れようとする。人間はそれに気づかない。だが、触れた瞬間、恐怖に蝕まれて壊れてしまう。 「……やめろッ!」  遼は無意識に走り出した。  そして、手に取ったアストラルドライバーを腰に装着する。冷たい金属の感触が腹に食い込み、心臓の鼓動が加速する。  ベルトの中央には透明なコア。そこに小さな結晶――星の欠片のような光が浮かんでいた。遼はそれを掴み、ベルトへ押し込む。  刹那、響き渡る電子音。 『ASTRAL! ――CONNECT TO THE COSMOS!』  まばゆい光が爆発し、遼の身体を包み込む。  漆黒の装甲が層を成して彼の体を覆い、白銀のラインが流星のように走る。胸部には星座を模した紋様。頭部の複眼が夜空を映す群青に輝き、ひときわ強い光を放った。 「……これが、俺の――」  変身を終えた彼は、ただの高校生ではない。  星霊の力を纏う戦士、仮面ライダーアストラルがそこに立っていた。  ナイトメアが雄叫びを上げ、爪を振り下ろす。  アストラルは咄嗟に腕で受け止める。鋭い衝撃が伝わるが、鎧は砕けない。星の力が拳に集まり、アストラルは怪物の顎を撃ち抜いた。  拳がぶつかるたびに、火花の代わりに夜空の欠片――星屑が散る。 「俺は……俺にしかできないことをやる! 星霊の力で!」  アストラルは跳び上がった。  夜空を切り裂くように身体が加速し、流星の尾を引く。 「――アストラルキック!!」  必殺の一撃がナイトメアを直撃した。  怪物は悲鳴を上げ、星屑となって弾け飛ぶ。  静寂が訪れる。  アストラルの姿を認識する者はいない。ただ遼だけが、その戦いの意味を理解していた。 「これは……運命か、それとも――試練か」  空を見上げる。亀裂はまだ、夜空の奥に口を開けたままだった。  戦いは、始まったばかりだった。

4
0
仮面ライダーアストラル  第一章 星影に立つ者