ねぐせ
99 件の小説ふわり
こたえなんかわからないまま ふわりふわり夢を彷徨うの どこかどこかで分かるのならば おてて繋いで歌えたらいいな つらいのつらいの消えなくて 寂しい寂しいがいえなくて でもでもいいことあるからさ…… ほらまた言い訳ついてにげるんだ 夜の体温ちょっぴり暖かくって ほおをほおをつたうんだ 喉に詰まらせた勇気そっと 風に乗せるそれだけでいいよ できないできないダメな子なのに 優しく優しくしてくれた コットンは染みて痛くて 焦る焦るがぐるぐるり たのしいたのしいもあって でも隅に残る不安は消えなくて このまま歩いていいのかな? そんなこと考えちゃう僕だ 朝がこわくて震えるから すこし夜にしがみついてみるの 喉に詰まらせた勇気そっと 風に乗せて歩いていいよ
ちょいイラスト
最近あまりここに来ておりませんが元気です。 気持ちの浮き沈みが大きくて、家に帰ると電池切れのように眠ってしまうのでなかなか書いたり読んだりする機会に会えず…。 ゆっくりお話は書きますのでよろしくお願いします。 とりあえずは、安定している今のうちに投稿してしまおうかと。 今回は予告の通り、「学校生活は前途多難?」シリーズ(略語は「学たな」にします。がくたな、と呼んでもらえると嬉しいです)より、赤築竜夜くんを描きました。 今回もイメージソングが参考になっております。 ここでは曲名上げませんが、今まで描いた二人と同じくボカロがモチーフです。 黄色っぽい色とと青っぽい色しかないのはそういう曲だからで、塗り忘れではないのでご安心ください。ちなみに仕様上塗っておりませんが、この子の瞳は赤色です。 今回も生暖かい目で見てください…自信がないので…。
交差点
私の通学路の交差点には、いつも祠がポツンと立っている。 夏の夜は蒸し暑いのでそこら中でカエルが鳴き、冬は沢山の雪が降って一面の銀が見られるような田舎。 これは数年前、私がまだ小学校に通っていた頃のお話だ。 「あら真里ちゃん、また祠のお掃除かい?えらいわねぇ」 「うん!」 毎日日課としてこのお地蔵さんのお掃除をする私。いいねと言ってくれる人も不思議がる人もいる。 でも私は、ここに住んでいる者に話しかけるのが好きだった。 「…小娘よ、飽きないのか?毎日私のところに来て話そうなど。周囲から馬鹿にされているのを見かけるが…」 「いいのよ、そんな奴は放っておけば。こっちの方が数億倍大事」 “まつり”という名のお姉さん。黒い和装束を着ていてとても美人だけど、霊という…人には目視できない存在らしい。ぶっきらぼうなのに優しくて、そんな彼女と話せるのが、とても楽しみなことだった。 「ここの守りなど、私がやっておけばよい。小娘が私のせいで馬鹿にされているのは不毛だ」 「いやよ、好きでここにいるんだから。人間なんか話が通じるとも思えないし、あなたとお話する方が楽しいの」 遠くからのサイレン。五時の合図とともに、街の方から夕飯の匂いがたちこめてくる。 「ふう。だいたいこれくらいにしようかな、まだ時間あるけど」 うっかり、ぐう……とお腹が鳴ってしまった。 「小娘、また何も食べてないのか?」 返答に困っていると、 「女将さんの所へ行くぞ」 まつりさんはそう言って、私の手を取り歩き出した。 ある路地裏の子供が入れる程の鳥居。くぐるとそこに、別の世界が広がっている。 「またあんたかい。ま、ゆっくりしていきな」 “女将さん”がお出迎えしてくれる。ふっくらしていて肌は真珠の如く白く綺麗だ。 「おー、まり!遊んでけろ、遊んでけろー」 とととっ、と奥から幼稚園児くらいの背丈の女の子が走ってきた。 「わらしさん、こんにちは♪和服だから転ぶと危ないよ」 「わかったー!」 パタパタと奥の部屋に入っていく。わらしさんはちょっと忙しない子だ。 「……女将さん、すまないが料理を出して頂けないだろうか?また真里のやつ、何も食べてないみたいだ」 「喜んで。なら、まつりさんも一緒にどうかい?」 「いいのか⁉︎ありがたい!」 私もまつりさんも、女将さんの料理が大好きだ。 ◇◇◇◇◇ 「ただいま…」 勿論返事はない。あるはずもないか。 私を産んでくれたお母さんは体が弱く、写真でしかその姿を知らない。 塞ぎ込んでいた父さんもとうとう再婚したけれど、継母からは険悪にされて家族仲がいいとは言えない。 「また柚花は寝ているのね…布団くらいかけないと風邪引くのに、母さん」 腹違いの妹と母さんにそっと布団を掛けると、その場を後にした。父さんは夜勤でいない。 (こぶ、であり…邪魔だから、ね) 高校からは行きたくもなくて。どうせまた鞄に落書きされるし、靴は隠されるだろうから。今回の転校だってそう。私のせいなのに父さんは何度も謝った。また二人の邪魔をしたから、謝るのはこっちなのに。 「さて、洗濯物しなきゃ」 ◇◇◇◇◇ ガシャーン‼︎ 派手に音を立ててガラスが割れた。投げ込まれた石。校庭を見るとゲラゲラ笑う男子が数名居た。 「真里さん駄目でしょ、またガラス割って!」 私じゃないけど、ごめんなさいと言おうとした時だった。 「先生それは違う。見てよ、内側に石が」 「見てたぜ、おれは!これ隣のクラスの奴!」 おとなしそうな子と、ガタイのいい子が仁王立ちして先生を睨みつけていた。 「瀬川くん、庄司くん!前回の件、あなたたちちょっと職員室来なさい!」 「やっべ、逃げろー!」 「あっ、置いてくなよ」 つむじ風のように二人が去る間際、おとなしそうな方と目が合った。 「……言いたい時は言い返せよ」 「困ったらおれらン所来い、アデュー!」 背中越しにもう一人の声がした時には、廊下はもぬけのカラになっていた。 「もう、逃げ足だけ速いんだから…!」 先生の悔しそうな声は虚しく響いた。 「ははっ、その二人は大物だな」 「でしょ?まつりさんもそう思うかー」 数年後本当にその二人が…大勢に問題児、一部にはヒーローとして名を轟かせているのを風の噂で聞く。 「私が学生の頃にも、そういう奴がいて欲しかったな。何かちょっと楽しそうだ」 面白そうに笑うまつりさん。そう言う彼女は、人だった時の記憶が曖昧らしく、あまり明確に少女時代を聞いたことがない。 「小娘、お前の話は面白い。困ったことに、最近は放課というものを待てないくらい……声を聞きたくなる。お前にこちら側はまだ早いから、あまり言えないが」 突然真剣な表情でそんなことを言われた。 でも当時の私にはそれがどういう意味なのか、よく分からなかった。多分あっちも、それがどういう感情かは分からなかっただろうけど。 「たくさん来るよ、できるだけ。いっぱいお話ししよう?」 「ふふ、そうだな」 淡くキラキラしたようなそれは。長くは続かず、突如として終わりがくるのだった。 ◇◇◇◇◇ 「……り、……まり‼︎」 「母、さん……?あれ、私……」 真っ白な天井が見えた。カーテンがあるから、保健室かな? 強く抱きしめられて記憶が戻ってくる。 いつもの交差点に向かう途中、信号無視の車に……。 「……!」 そうだ、ここ病院だ。 「私…あなたに距離を置いてしまってた!何も悪くないあなたを…!」 何をいまさら。という言葉が、喉まで出かかった。 「気づくのが遅くなってごめんなさい。あなたも父さんとの子よね。そのことを気づかないで、柚花ばかりに構って…何故倒れてから気づいたの、私…!」 ふと「言いたい時は言い返せよ」。おとなしそうな子がそう言っていたのを思い出した。 「言葉だけじゃ、信じられない。だから、お母さんとももっとお話したい」 目を見て話すと、お母さんは無言のままもう一度私を抱きしめた。 その後、駆け込んできたお父さんから泣きながら猛烈なハグを受けたのは言うまでもない。 後日。例の交差点に行くと、祠は崩れていた。 「やっぱり」 ほぼ無傷で目覚められたあたりで察しはついた。まつりさんが命懸けで守ってくれていたからこそ、大事には至らなかったこと。 元々ここにまつりさん以外の気配がなかったから…本来居たであろう祠の主はとっくに去り、まつりさんが消え、役目を終えた祠は力尽きて崩れたんだ。 「んー?どしたん?」 振り向いてみると、例の二人組がいた。 「いや察し悪いな、あっきー。ここ祠あったよ?」 「そうだっけか?しょーちゃんほど記憶力無えからなー」 私はおとなしそうな子に言った。 「少しは言えたよ、言いたいこと」 「そっか」 返事はそれだけだった。 「すまんなー、こいつ素っ気ねーのよ」 「……耳引っ張んな」 二人の茶番劇に思わず笑うと、本人達は驚いていた。 「なんだ、そんな面白いかこれ?」 「まあ笑わせられるんなら結果オーライなんじゃね?」 駄菓子屋行こーぜ、ああ賛成、と言った具合でまたつむじ風のように二人は去ってしまった。 それからというもの、いじめはぱったりと無くなっていた。 例の二人に問い詰めると「そもそもカチコミたかった連中だから気にするな」と返ってきた。やっぱりこの人達か。 そしてもう、路地裏の鳥居をくぐっても何も起こらなくなっていた。女将さんやわらしさんに会えないのは寂しいが、「もう大丈夫」と背中を押すような声が聞こえた気がした。 あれからもう一度仕事の都合で転校した。あの二人は元気しているだろうか? こっちは家族みんなで楽しくやってるよ。 もう何年も前の、不思議なお話。
キャンプ
町外れのキャンプ場。時計の短針は九をさしていた。 山の方にあるからかあまり知られていないけど、それでもちらほらと客がいる。子連れの家族は僕たちと、お隣にキャンプしている田中さん一家。 「わー、綺麗!みちる、星がたくさんだよ!」 「かける兄ちゃん、もう寝てる人居るから気をつけなよ」 みちる…が僕の名前で、かけるが兄ちゃんの名前。双子で生まれたのに見た目も性格も、全然違う。それでも僕たち兄弟はいつも仲良しだ。 「ごめんごめん、田中さん家の赤ちゃん寝てたもんね」 「赤ちゃんの夜泣きは大変らしいよ…お母さんが言ってた」 片方が泣きだすともう片方も泣き出して大変だったわ、とお母さんは時々言う。することやることはバラバラなのに、泣く時だけは同時だったらしい。母は偉大だ。 「ところで…こっそり抜け出して来たけど、大丈夫なの?」 僕が訊くと、兄ちゃんは首を横に振った。 「知らなーい。ただお前と一緒に星を見に来たかっただけだし」 呆れて兄ちゃんのほっぺを抓る。 「ひへへへ、ほんふぉうひひひはほうひゃははいは(いててて、本当に君は容赦がないな)」 「怒られても僕知らないからね」 ぷい。とそっぽを向いてみせると、目の前にお菓子の小箱を差し出してきた。 「そんなつれないこと言うなよー。ほれ、甘いものでも食べな?」 「…くすねてきたとかないよね?」 「んな訳ないない。ちゃんと俺のものだし」 「じゃ、チョコに免じて許す」 ちょろいのは分かってる。チョコの誘惑ってつよつよだからなぁ、僕じゃ勝てない。 「あらあら、かーわいい♡」 「……からかわないでよ。」 もぐもぐ頬張っているとすぐ調子にのる。兄ちゃんはこういう人だ、まったく。 「だいぶ歩いたね」 「もうちょい先だからね〜、疲れたらおぶってあげるヨ♡」 疲れてないし、と軽くチョップを入れた(僕の方が背は高いから手が届く)。 なんだか、海が近くにあるのかな?さっきからずっと磯くさい香りが漂ってくる。 「この洞穴の先にいい場所あるんだー」 (本当かな、すんごく胡散くさいけどなぁ) 「……待って、誰かいる」 「あばっ」 突然、兄ちゃんが歩みを止めた(それにぶつかった)。 しく、しく、しく。 泣き声だけが洞穴に反射して響き渡ってくる。……子供? 目が慣れてくると、確かに子供がいた。僕たちより二つか三つくらい年下の子。 しかし、この世界の子供ではないのがなんとなくわかった。顔も服も、洋画に描かれる天使みたいだ。気配も人とはまるで違う感じがした。 「どうしたの?言ってごらんよ」 兄ちゃんが声をかけると、しゃくりあげながらその子は話してくれた。 「雲の上を歩いていたら…っ、落っこちて…。兄様と、離れ離れに…なっちゃったのです」 「怪我はないの?」 僕が訊くと、その子は首を横に振った。 兄ちゃんと顔を見合わせる。 「今回ばかりは考えること、一緒みたいだね」 「うん」 洞穴を抜けた先。歩ける程の浅い海の上に浮かぶ、小さな小さな岩の島。 「ここは何処なのです…?」 「俺のとっておきの場所だよー。キャンプ場でみちるが昼寝していてさ、暇だった時に親父が連れ出してくれたんだ」 僕は知らない場所でワクワクした。天使の子も泣き止んでいた。 くりっと、その子はと大きな目をこちらへ向けてくる。 「……あなたたちも双子ですか?」 「うんうん♪俺が兄のかける。そっちのは弟のみちるだよー」 どさくさに紛れて頭よしよしすんな…とは言えず、曖昧な笑顔で会釈をした。 「ふふ、仲良しなのですね」 いやブラコン過ぎてありがた迷惑だけど。 「えっへへー♡」じゃないよ兄ちゃん。 「兄様…今頃心配してらっしゃるでしょうか?」 ぼんやり雲がかってきた空を見上げて、その子は呟く。 「私たちは、おそらくあなたたち人間のところで言う…神話に登場する者です」 −−−−私は馬術に優れた不死身の者でした。兄様は剣術に優れた人間でしたが、私は兄様を慕っていたのです。 戦場を駆け巡り、数々の戦功を立ててきた我々でしたが…ある時兄様と死別してしまいました。そこで私は、大神様に強く懇願しました。 「私は生まれた時から兄様と一緒なのですから、亡くなる時も私は兄様と一緒でありたいと願っておりました。ですので、私の不死を解いていただけないでしょうか」と。 そうして天に昇った我々は、天界と冥界を行き来する身になったのですが………。 「道中うっかり足を滑らせた、と?」 「はい」 少しばかりバツが悪そうに答えてくれた。 「人間の世界はこんな感じなのですね」 兄ちゃんは何処か誇らしげにした。 「天界や冥界…は俺ら分からないけど、人間の世界も悪くはないでしょ?」 その子は穏やかに笑いながら言った。 「ふふ、そうですね」 あとはゆっくりとさざなみの音が響いた。 「おーい」 遠くからの声。弾かれたようにその子は顔をあげた。 「おーい」 その声は次第に大きくなってゆく。 「兄様……!」 「探したよ、無事?」 「はい…!」 二人して抱き合うと、“兄様”はこちらを向いた。 「人の子よ、世話になったね。我々は帰るけども、今回のことはあなたたち以外の人間に口外しないでもらいたい」 僕たちは黙って頷いた。 それからまばゆい光がその二人を包み…消えた頃には二人の姿は見えなくなっていた。 ◇◇◇◇◇ 数十年後。僕たちも家庭を持っていた。 でもこの時期になると、両家族共にこのキャンプ場に泊まる。 あのことは、墓場まで持ってゆくつもりだ。その時は……叶うならば兄さんと一緒に星になりたい。あの二人のように。 「バーベキューするよー!手伝ってー!」 妻の呼びかけに返事をして、僕は歩きだす。 昼前の青い空には、猫の爪のような細い三日月が浮かんでいた。この空のどこかに、あの二人もいるのだろう。
あなたとの出会い
ずっと鉄の四角に閉じ込められていた。 来たばかりの可愛いあの子は連れていかれた。 醜い私はきっと振り向いてすらもらえない。 私たち仲間の中でも一番年上になった頃だった。 あなたと家族になれたのは。 これまでより少し広い四角の部屋。 朝と夕方、決まってあなたとデートする。 ほとんど誰もいない道。 長い長い枝を拾ってワクワクして、年甲斐もなく走り回っちゃった。 おっちょこちょいな私は時々粗相をした。 嫌な顔一つせず、拭いてくれたあなた。 私の具合が悪い時は、病院へと連れてってくれた。 迷惑かけてごめんね?いつもありがとう。 あなたの気持ちはなんとなくわかっていたよ。 嬉しい時は私も嬉しくなるんだよ。 辛い時は甘えてもいいんだよ。 言葉は伝わらなくても、あなたはわかりやすいもの。 あなたの真似をすると笑って撫でてくれたなぁ。 たくさんお菓子もおもちゃもくれたなぁ。 私まだあなたに何も返せてないのにね。 あなたの膝の上。酷く眠かった。 なんとなくもう、起きられないと思うんだ。 でも、さよならは笑ってしなくちゃね。 おやすみなさい、私の愛しい人。 いっぱいの「あい」をありがとう。
欠陥
ありのままってなんだっけ? いつしかそんなこと忘れて 求められることだけを こなしているつもりでいた でもそれだけじゃいけないよな 失敗ばかりだよ、一生懸命だけど 諦めたって終了できない試合を 淡々と淡々と浪費する 見られるのは外装であり結果だから 期待通りにはどうもいかないみたいだ 演じられない大根役者の僕は いつか捨てられてしまうだろう 個性や多様性は結局建前なのかな? 大切なんだと押し付けといて 皆んなに合わせた奴だけが声高らかに笑ってる 若干違うエラー達は隅に弾かれていくんでしょう? じゃあ、合わせられなかった僕もエラーなんだな いくら時が変わろうとしたって 良くも悪くも人は変われないものかもしれない 仲間はずれ?言わせるなよ そもそもお互いが仲間だと認めていないわけだし そんな連中と関わるのは疲れただけさ
罰
テスト期間真っ盛りなのに「部屋片付けろ、でないと重い罰を下す」と脅されて今に至る。 正直片付けられる気力も、片付け出来そうな自信もない。 「部屋片付けると心の整理がついてスッキリする」とかぬかす人の気がしれない。ストレスでしかないだろあんなの。 自分の部屋の散らかり具合に嫌気は差すわ、お腹が痛くなるわ散々で、あんなののどこがいいんだろうか?解せない。こんな奴が主でごめんよ、自分の部屋。 テストも駄目だろうな…休んだ期間が長すぎて。 どっちを取っても、報われないな今更。 という訳で、自分は重い罰を受けます。ほぼ確定です。「諦めずに頑張れ」とか受けつけません。もう無理です。しんどい。 ケータイは没収されるでしょう。期間も相当長いはず。当分また、お別れになりますね。 こんな愚痴に付き合ってくれてありがとうございました。 それではまた会えたら。
僕らの日常 第二十一話
「少々手荒だけど、迎えうつ準備をしよう」 かけられた呪いを解く為に、そらさんと僕は作戦をたてることにした。 「…って言ったけど、準備自体はそこまで難しいものじゃない」 カタカタさんと最初に会った河川敷に菱形の模様を描き、その四隅にとあるモノ…を置くらしい。 「とあるモノ?」 「具体的にはね、湯がいて潰したヨモギの葉、イモリの黒焼き一つ、米をお椀一杯、術者の血液少々、この場合私のだね。陣…ええっと、マークを描くのは複雑で難しいから私がやる。君は楓くんと血液以外の材料を集めてくれるかな?分かんなくなったら彼に訊いてみるといいよ」 優しげな声色。まるで先輩から手取り足取り教えてもらっているような。 「……楓くんも、そらさんみたいなことを?」 「いや?私の補助をしてくれているだけで、流石に実戦には参加させてない。もしそんなことして何かあったらと思うと私、おかしくなりそうだし」 あまり多くは語らない人だけど、案外そらさんは心配性なのかも。確かに楓くんに関しては過保護にも見える。 「それから君も、無理だけはしないでね。体調が変だとか感じたら、楓くんに任せてもいいから休んでよ?」 「………何故余所者の僕にそんな配慮を」 疑うだけの僕でごめんなさい。けどそらさんが部外者であるはずの僕にそんな扱いをしてくれるのか…気になってしまった。 「気まぐれ、かな。弟に良くしてくれるよしみとでも思ってくれたらいいんじゃない?同じ呪いをかけられている縁でもあるし」 でも僕を見る目はどこか優しげで。やはりつかめない人だ。 −−ぐつぐつ、鍋が煮える音。 「薬屋『鷹のつめ』の者でーす。楓様ー、もしくはそら様ー、おりますでしょうかー?」 楓くんと材料の準備をしていると、そんな声が外からした。 「ああ、はーい!いま向かいます!ええと、優ちゃんはここで火の番をお願い」 しばらくすると楓くんは戻ってきた。 「いやー、久しぶりに見たけどおじさん変わらないなぁ。元気そうでよかったよかった」 楽しげにしてるその手にはイモリの黒焼き。 「…そっか!イモリは捕まえるのかと思ってた」 「丁度ストック切らしてね。もう少し欲しかったけど在庫は無いんだってさー」 ……よく考えたら、この家どうなってんだろう。いや、細かいことは言ってられないか。 「おじさんって?」 「三角帽子を目深に被ってて、棒みたいに細長い人だよ。肌は炭みたいに真っ黒で、目が三つある。お口もこーんな裂けちゃってさ。そんな見た目だけど、ぼくみたいな子供にも良くしてくれるんだ」 想像したらかなり異形だけど……。楓くんの話し方的にいい人だ。 「真っ白で、とーっても大っきい猫ちゃんも連れているんだ。ぼくの背よりも高くて、毛並みが綺麗な美猫ちゃん。名前は…そうそう、『もふまる』だ」 どうやら“客人”には懐かないみたいで、“おじさん”一筋らしい。 「彼らと出会った頃は兄さんが“おじさん”と話している後ろに隠れてさ……。それくらい、しらない大人は「こわい」って思ってた。もふまるが背中を押してくれて、ぼくも“おじさん”と話せてさ。あの二人には感謝してもしきれないや」 あまりにも彼があっけらかんに話しているから失念してしまうけど、彼もまたいっぱい苦労したんだろう。 「今は………こんなにも幸せで。こんな日々が続いてほしいって」 「うん」 「……それはわがままなんだろうけど……。誰ももう…離れてほしくないし、ぼくも離れたくなくて………。どうしたらいいのかわからないんだ…」 「…………うん」 ああ、出会った頃とは違う目だ。 温かさが増して、笑う事が増えたその表情。 だからこそ、必ずいつか来る終わりがきっと恐ろしくて。 「離れなきゃいけない側だったから、こんな感情には気づけなかったんだね。……さ、続きしようか」 「うん…」 僕はその憂いに揺れ動く君に、なにもしてはやれないんだな。 ーーそっと彼の頬に手を添えてみた。 最初の頃はビクビクしてたのになぁ…。 照れくさそうに「えへへ」と笑うのを見ていると、不意に胸がちくりとした。 続く ◇◇◇◇◇◇ このシリーズではお久しぶりですね。 一応書き溜めはあるのですが、納得いかずでして。 かなり頻度は遅くなりますが、どうぞよろしくお願いします。
学校生活は前途多難?♯6
第六話「仕返ししてやる話」 「忘れ物した…教科書持ち帰りの日だった」 今更ながらもう一回自己紹介しておこう。 俺の名前は猫宮徹。今は…忘れ物を取りに行ってる最中。陰キャではあるが、ごく普通のDKだ。 「ああ、あったあった」 「……う」 あれ?てっきり居眠りしてるだけかと思ったら、起きていたのか。 こいつは委員長の赤築竜夜。ってか、具合悪そうだな。 「どうした?」 「頭が、割れるように痛いんだ…もう少し寝てから帰るよ」 偏頭痛持ちだから常にポケットに入れておいて良かった。一錠取り出して渡す。 「ええっとこれ…飲めそうか?カロマールつって、鎮痛剤」 「ありがとう…」 ーーだめか。ぐったりして起きそうにない。 「保健室行けそうか?肩貸すから」 首を僅かに横に振ったのがみえた。 「…行きたくない」 酷く不安そうに震える手で、きゅっと俺の袖を掴んでくる。それだけ頭痛がやばいのか? 「そんなの気のせいだろ、もっとしっかり頑張れ…って。あとどれくらい頑張れば…いい?」 「…………え?」 俺そんなこと言ってない。寝言でもなさそうだし、幻聴? 「お、俺に何かしてほしいこととかない?」 「寂しい。抱っこする」 そう言うなり…俺の首筋あたりに手を回して抱きつき、優しく甘噛みしてきた。 「んっ…あ…ちょっ…⁈」 やけになんか手つきがエロいしっ…いつものこいつじゃない…! 「この匂い、安心する」 「…ふっ……んんっ…」 すんすん嗅いでくるし弱いとこ触られるしで、頭が甘くくらくらする。どうしたんだ俺? パタパタ。 「…?」 ぼーっとする意識の中、こいつの頭上で動く小さな影に気づいた。 よく見ると、犬耳?がついてる。 「い、犬?」 たしかに、今のこいつは犬っぽい。甘えん坊な大型犬…とでも言ったところか? 「ちょ⁈………うわっ」 お、押し倒されるんだけどっ…?力強くないか⁇ 「見つけたぞ‼︎」 スパアアアアン‼︎凄まじい勢いで扉が開いた。 「キリン先生!」 「はあ、はあ…っ…いきなりですまないな。今研究中のお薬が盗まれたんだぞ」 息切れしながら入ってきたのは。理科の教師、彩月 凛先生(生徒間ではキリン先生の愛称で呼ばれている)。「〜だぞ」みたいな口調で喋るので有名だ。 「え?竜夜は物を盗むような人じゃない…」 思わず俺はそう言い返した。 だって竜夜はマジでそんなことしないから。となりにいる俺なら分かる。 「ああ。知っているんだぞ。君みたいな真面目そうな子が愛しのラボ…ゲフンゲフン。理科室に無断で侵入をするとは考えづらい。某(それがし)以外は開けられないような施錠もしたしな。…が、どういうわけか薬の研究の影響を受けているのは紛れもなく君だ」 先生が入って来た時は警戒(あくまでも警戒のみ。攻撃も威嚇もしなかった)していた竜夜は、苦し紛れに口を開いた。 「ちょっと頭がいい…からかっ、憎まれやすいのさ…ボクは。こ…んかいの…件だって…水筒の水に違和感を…おぼ…えたんだけど」 「水筒?」 「そうとも…。そのあとすぐに…激しい頭痛にっ…見舞われて…」 「わかったんだぞ。もう喋らなくていいから、楽な体制をとらせたまえ。解毒剤を打つんだぞ」 俺は頷くなり楽な体制にさせる。 キリン先生は竜夜の袖を捲ると、力強く綺麗なその腕にそっと注射を打った。でも… 「あれ…?」 アザ?何ヶ所かに見える…。 「あんまり見ないでね…?寝ぼけてうっかり階段から落ちただけだから。ボク寝起き悪くて…えへへ」 バツが悪そうに笑っている。割と顔色が戻っている様子だと、解毒剤の効き目は速いのだろう。 「これとは違うものを作ろうと思ったら、まさか犬になってしまう薬になっていたとはなぁ。一般人まで危害が及ぶとは…」 「い、一般人?」 俺が思わず聞き返すと、キリン先生は曖昧に濁した。 「このことはどうか内密にしてくれなんだぞ…。某はここを離れたくない」 俺と竜夜は無言で頷く。先生は…とばっちりを受けただけなのが理解できたから。 (理科室…監視カメラは置けないんだよな。女子が着替える場所になってるらしいし) 犯人は、もしや女子? (まさかな。女には結構モテるこいつが?) ……竜夜について謎が増えるばっかだな。 後日。いつも通りの晴れやかな屋上。 「ふぇっ⁈と、友達……⁉︎」 「今回のでわかった。お前には誰かしらいた方がいいって。俺で務まるかは知らんけど…名目上友達としてでいいから、隣で警護することくらいはさせてくれ」 頭を突っ込んでしまった義理はある。それ以上に、こいつが放っておけなくなってしまった。 俺はやっぱりどうかしてるな。 「うん…ありがとう」 なんかもじもじしながら竜夜は答えてくれた。 「でも、本当にいいの?先日の件。君に…その…っ」 はっきり覚えているらしく、俺と目が全く合わない。心なしか耳まで赤くて、俺まで照れてしまう。 「あ、あくまで事故だしな?まぁ、仕返しだけさせろ」 俺は背伸びしてちょっと強引に、竜夜の肩に手を回して抱きしめてやった。 「ずるいなぁ」 こいつが「寂しい」と言ったのは、割と本心なんだろうな。 ……とか俺が考えてんの、バレたか。 俺を抱き返している彼の腕に力が入ってくる。 ーーしばらくこいつが離さなかったのは言うまでもない。 (気が向いたら)続く
ハンドクリーム
幼い頃から乾燥肌だった自分。 冬になるといつも、手のひらがじゅくじゅくして痒くなる。 もう痒さに耐えきれず掻いた小さな手。 ばりっ、ばりっ。 肌がダメージを受ける音。でも掻くのをやめられない。 血が滲もうが構わず、掻き続けてしまう事もたくさんあった。 「荒れてるね、これ塗ろっか」 お母さんの優しい手が、ハンドクリームを塗ってくれた。 「…平気だし」 ハンドクリームを塗ってもやっぱり痒いから、 拗ねた自分はそっぽを向いて黙り込んでしまう。 −−でも本当は、お母さん。 あなたがハンドクリームを塗ってくれる時の温もりが、 自分は大好きだった。 あの時より大きくなった手。もうあまり荒れなくなった。 ちょっとは成長したんだな…と、寂しくなる。 もう塗ってくれることはないんだろうな。 リビングで居眠りするその体に、そっとすり寄ってみた。 いつもお仕事お疲れ様。お母さん、ありがとう。