きり。
4 件の小説ヒーロー。(ボカロ二次創作)
ヒーローになりたい。 そう願ったのはいつだったか。 父さんは言っていた。 「今は誰かに頼って、助けられていても、いつか人の役に立つんだよ。」 子どもの頃、そう言っていた。 けれど僕は駄目だった。 沢山失敗して、立ち上がって、失敗して、立ち上がって、それでも何も出来なかった。 期待されることも、何かを頼まれることもなくなった。 周りからも、見向きもされなくなった。 失望された。 周りはもう「頑張れ」の言葉も言ってくれなくなった。 でもそんなことはどうでもよかった。 僕は僕が1番許せなかった。 この体たらくで、何がヒーローだ。 きっと僕に一番失望してるのは、ガッカリしてるのは僕だろう。 それでもヒーローになりたかった。 誰かの英雄に、誰かのヒーローに。 諦めきれなかった。 まだ自分はできるんだって。 だからまた無駄かもしれないけど立ち上がる。 だってヒーローはいつだって最後に立っていた方だから。 ヒーローになりたい。 小さい頃に願っていた。 母さんが言った。 「望まれて生まれてきたんだから、いつも自信を持っていなさい。」 確かにそう言われていた。 見向きもされなくなって、でも自分に期待するのはやめられなかった。 失敗しても次は大丈夫だと笑う。 きっとできるんだって笑う。 だってヒーローはいつだって笑っているから。 自問自答の中に必ずある問い。 「ヒーローになって、何がしたい?」 「ヒーローになって、何を救いたい?」 そう言われても思い浮かぶのはたった一つ。 命でも世界でもなくて。 そんな何よりも救いたいもの。 それは─。 僕の世界の中で、一番苦しんでいる、僕の人生の一番の被害者。 紛れもなく、僕自身だった。 だから僕は、僕のヒーローになりたかった。 昨日も 今日も 明日も もう頑張ろうなんて、やってみようなんて、進もうなんて思えなかった。 でも僕は、自分を諦めきれなかった。 だってヒーローはいつだって 自分を信じて歩くから。
記憶
記憶とは、なんだろうか。 色んな答え方があると思う。 例えば「思い出」そんな答え方をする人もいるのではないだろうか。 言うなれば、自らを作り、自らを自らたらしめる。過去の履歴にして存在の証明。 では、それを失えばどうなるのだろうか。 「当然、何も残らないよ。」 「じゃあね、さようなら。また今度、初めて会おう。」 消えればそれまで…ログも残らずに。
夏
夏は、苦手だ。 眩しくて、いっそ苦しいと思えるほどに暖かくて、燦々と青が輝く季節。 梅雨明けの七月。これから最盛を迎えようとする夏を前に、学生達は向かい来る長期休暇の予定を話し合う。 そのいっそ何も考えていないとも取れる会話を後目に、ただ時間を浪費しながら空に浮かぶ白い雲を眺めている。 日の陰で涼みながら、思考を手放して騒々しい夏から切り離された憩いの時間。 流れる雲を見ながら延々と時間を浪費し続ける。 ふと手元にあるスマホを見ると、既に時刻は17時を過ぎていた。 「もう時間か…。」 ため息をつきながら僕は夕方にしては明るすぎる青の下で手元にある古ぼけた鞄を持ち上げて家路についた。
魔力ゼロの魔法
僕は魔法が好きだった。現実に起こりえない事象を無理にでも引き起こせる。 多少強引でもそれらが織り成す現象が、引き起こした全てが、幼い頃の僕を完全に魅了した。 この世界には、魔法がある。みなが当たり前のように大小様々の魔法を使う。 だから僕も、大人になれば当たり前のように使えるのだろう。そう思っていた。 ただその憧れも容易に砕かれることになる。 「魔力ゼロ」 それが僕に下された結末。 ただそれでも僕は魔法を諦めきれなかった。 毎日家に引き篭もり、ひたすら魔法を望んだ。 別に魔力ゼロだから虐められたりとかした訳ではない。むしろ皆助けてくれた。 そしてひたすら考えた。その結論にたどり着くのは早かった。 「ないなら、作ればいい。」 そして数年の時が経過する。 窓のカーテンから差し込む陽光で目が覚める。かけた毛布をひっぺがして大きく伸びをする。 「ん〜…」 部屋に置かれたあらゆる魔道具達に目を向けて今日は何を研究しようかと脳がインスピレーションを湧き出させる。 そんな時下の階から声が響く。 「兄様〜!お母さんが朝ごはんできてるってー!」 そう叫ぶ声の主は妹だろうか。 「今行くよ!」 そう返して部屋から出る。 朝食を終えると僕はいつも研究に励む。 魔法とは魔法陣やその他の媒介をもって行使される奇跡だ。そして、魔法陣を自在に操り生身一つで魔法を行使する人々を魔法士と呼ぶ。ただ魔法は魔法陣の他にも重要なものがある。 それが想像力だ。たとえ魔法陣がいかに正確であろうと、その過程を、その結果を具体的な想像として起こせなければ魔法は起動しない。 僕の研究はそこにある。人の魔力を使わない、空間の魔力だけでの発動。それが僕の研究。 それが魔法と呼べるのかは甚だ疑問だが、現に、魔法と呼んで差し支えない現象を僕は一度起こしている。そしてそれは再現性のあるものとして、今尚何時でも再現可能だ。 「(その現象も、火種なしで形成した小さい火なんだけどね…。)」 魔力のない僕にとって空間の魔力を操るなんて事は至難の業だ。さらに言えば空間の魔力は自身の魔力やその他の魔力と性質が異なる。故にそれ独自の術式を組まなければいけない。 そこが難点だったのだが、僕はある仮説に辿り着いた。 『魔力そのものに属性の性質を乗せて放つ』 空間の魔力そのものを操ること自体には成功しているのだから、術式に魔力を流すのではなく魔力に術式を載せれば関係は逆だが結果的に引き起こされる現象は変わらないはずという仮説。 そしてそれは結果的に成功した。 僕の手には今、大きく燃え盛る炎が握られている。 「…やった。成功…した。」 それは僕の積年の望みが叶った、そして今のこの世界においておそらく初であろう自身の魔力を媒介としない魔法発動の瞬間だった。