T.I

25 件の小説
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T.I

はじめまして。T.lです。

家族

家族って、一種の宗教みたいなもんだ。 家族でいるために、自分を犠牲にしてまで努力をする割に、一瞬で切り捨てようとする。 …子供は親を殺せないけれど、 親は子供を殺せる。 皆一度は見たでだろう、残酷なニュース 児童虐待により子供死亡。 歌舞伎町にいる未成人の子供。 今日も逃げ出したいと心のどこかで思っている私たち。 ほぼほぼ、一緒ではないだろうか。 何度でも言える。 子供は親を殺せないけど、親は子供を殺せる。 親は孤独に弱い。 子供が親を突き放そうとすると、“選ばないの?“ 子供はそれを悲しく思う。そして一緒にいたいと思う。 愛があったから。 愛があったらから、 私たちはこうなんだ。

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家族

救いの手

誰か、助けてくれよ… なぜ、自分にはあたたかい手が来ないのだろうか。 おとぎ話のような、王子様、運命のキス、愛、幸せに暮らしましたとさ…もう聞き飽きた。 そんな奇跡、起きるわけがなかった。 これが現実だ。 ああ、現実というのはなんて無惨なものだろうか 毎日毎日、がんばった。 がんばったのに。 救いの手はなかった。 いくら天を仰いでも、天使は私たちの元に降りてこない。 神は助けてはくれない。 …今日も、日が昇った。

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救いの手

逃げないで

ねぇ…なんで、逃げるの? 螺旋階段を素早く降りて行く彼女をみて、僕はそう言った。 あっちはダメだ。 あっちは危ない。 お願い。行かないで。 僕をひとりにしないで。 彼女がいつもつけている太いネックレスが、走っている時に外れてしまった。 彼女の首から、痛々しくて、目を逸らしてしてしまうほどの傷があった。 僕が、絞めたから。 昔から自分の守りたい人が、一瞬の快楽に溺れて我を忘れるところを見ると、とっても、とっても辛くなる。 それが終わったり、なくなったりしたら苦しむのは君だよ? なのに、どうして… 手に持っていたカッターを僕は自分の首に押し付けた。 彼女が身震いをし、こちらを振り返る 泣いていた。 大粒の涙を、ボロボロとこぼして泣いていた。 美しかった。 儚くて、そのままいなくなってしまいそうな透明感… 離れられない。 これは、歪んだ愛だ。 ドロドロに腐っている。 だからもう、終わりにするべきだ。 だから。 キミが幸せならそれでいい。

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逃げないで

リレー小説をやりたいんです!

こんばんは、T.Iです。 近頃流行っている(?)リレー小説というのをやりたいなと思いまして、流行りに便乗したいと思います! 私はよくホラーやミステリー小説を書くのですが今回、参加してくださる方にはホラー小説を書いていただきたいです! タイトルの所には“廃墟アパート“で投稿してくださいな♪ とある廃墟アパート、その部屋の背景とは…

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リレー小説をやりたいんです!

本の少女#6

現場はかなり、荒れていた。 叫び声が聞こえ、飛び出すように部屋を出た私達はこの城のドローイングルームへ向かった。 この胸にある、確かな不安と興奮。 橋場恭子ははっと短い笑いをあげた。 たくさんの人に囲まれたシェール夫人の遺体は、バラバラに切り刻まれていた。 首、胴、腕、脚…どれも無惨だ。 専門家らしき、特徴的な髭を生やした男は“夫人の肺のみがない“と言った。 「本当か。それはどういう…」 雪菜の父が尋ねる。 「みてわかる通りこれは殺人です。 かなり残酷な…ね。 そして、これを…」 髭の男は羊皮紙を出した。 まだまだこれからだ。覚悟しておけ。 現場の雰囲気が一気に慌ただしくなり、一同が混乱しているのが感じられた。 「おそらくですが犯人はこの中にいるでしょう。 この城の外には護衛が何十人もいますし、村の民はここにはこれないはずです。 となれば。やはり…」 「いや、ちょっと待ってくれ。 この中の誰かが犯人なのか? それでは… 夫人の今日の行動を誰か教えてくれないか。できるだけ細かく、正確に。 まず夫人はどこで何をしていた? 婦人と今日会話をした人は教えてくれ」 雪菜の父は、できるだけ大きな声で、必死に頼んだ。 城の人間がお互いの顔を見合い、困ったように眉を下げている中、1人の女性だけは違った。 「わ、わたくし、婦人とお話をしましたわ」 髪や服をゴテゴテに着飾っているが、自信のなさそうな目付きが妙に好感を与えた。 「舞踏会が終わった後、夫人にお茶でもしましょう、と言われてドローイングルーム…この部屋に呼ばれて… 夫人は何かと焦っているようでした。 そして、私に誰かにつけられている気がするの。 いつか詳しくわからないけれど多分、今日よ。今日、不思議なことが起こるわ、っておっしゃったんです。 その後夫人は、思い出したように書斎に向かって…何をするのですのと尋ねたら、あの本の通りになるかもしれない、なんて仰って私のこと置いて行って… 本当に嵐のように去っていきましたわ」 …。 正直これだけの情報では何もわからないと恭子は思った。 しかし、夫人がいったあの本の通りになるかもしれない、というのはやはり気になる。 とりあえず、書斎に向かってみてはどうだろうか。 自分の勘がそう呟いた。 「…わかった。 それでは、何か案のある人はいるか?」 「はい。書斎に行くのはどうでしょう」 即座に髭の男が応えた。 その意見に同感だ。 * 書斎に向かう前、城に来ていた貴族たちはみんな恐れて飛び出すように城から出て行ってしまった。 城の雰囲気が一気にしんと静まり返った。 これで、被害を受ける人数は少なくなるが自分が狙われる可能性は高くなる。 サイコパスな殺人犯に。 雪菜の父…自分から見る限り、この中で一番権力を持っているであろう人物はご立腹の様子だった。なんて無責任なんだ。アイツらは、と小声で呟いたのをこの耳でちゃんと聞いた。 今、この城にいるのは 雪菜の父、髭の男(探偵?)、私(橋場恭子)、川橋瑠奈、宮原美緒、鈴木智博、佐藤卓也、そして… あれ?後1人は誰だ? その時恭子ははっとした …雪菜っ! 「すみません!雪菜は大丈夫でしょうか。雪菜はどこにいるんですか?」 早口で雪菜の父に告げる。 だが、思いの外雪菜の父は焦った様子もなく雪菜は…大丈夫だ、そう言った。 「でも、わからないじゃないですか」 「いや、安心してくれ恭子さん。 雪菜は、向こうにいるから」 そう言っているうちに、私たちはもう書斎の前に着いていた。 髭の男が代表して、書斎の扉を開ける。 …は? 書斎の中は、空っぽの本棚だけが残されていた。

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本の少女#6

思い出ケーキ T.I版

こちらの作品は「鴉君。」様の リレー小説となっております。 私はこの小説の一部ですが、 ぜひぜひ、お楽しみください。 「ここ…どこ?」 目を覚ました私は、自分が全く見覚えのないベッドの上にいた。 甘いケーキの香りが私の鼻口を掠める。 …ケーキ…? そう思い体をあげ、ベッドから出ようとするとこめかみの辺りがズキンと痛んだ。 痛さのあまりにこめかみに触れると、絆創膏が貼ってあった。 手当がされている… すると、ベッドの隣から 「あれぇ、起きちゃった? ダメだよ。 まぁだ安静にしてないと」 少し高めの男性の声だった。 驚きの余り、跳ねるように起き上がると男はふふっ、と笑った。 「元気そうだね。 俺は秋紀(アキ)。 女みたいな名前でしょ?」 「…そう…ですね。 あの、私…」 「ああ、説明してなかったね。 君、この店の前で倒れてたの。 結構傷が多かったし、夜に女の子危ないなって思ってここに連れていた。 誤解しないで! 変なことはしてないから!」 秋紀さんは、色素の薄い綺麗な肌を少し赤らめて言った。 「大丈夫? 家まで送るよ。 ごめんね。 急にこんなところに連れてきちゃって」 その瞬間、頭の霧が一気に晴れた。 そうだ、私はアイツに性暴力を受けそうになって… 抵抗しても殴られる。 “綾音には、強くなって欲しいの“ いつしか、私を置いて家を出て行った母の言葉を思い出した。目頭が熱くなる。 そう思うと涙がボロボロと溢れてしまった。 止めないと、止めないと ああ、無理だ… なんで惨めなのだろう。 「…家には、帰りたくない?」 多分、この人はわかってくれる。 そう思いたかった。 「そうだ、まだ売れ残りのケーキが残ってるんだ。 食べよ?俺持ってくるね」 秋紀さんはそう言ってスタスタとどこかへ向かってしまった。 「わぁ!久しぶり! …あれ?名前なんだっけ。」 「…綾音です。 あの日、私のこと助けてくれて、 どうもありがとうございました」 その後、私たちは余りのフルーツタルトとショートケーキを秋紀さんが作ってくれた紅茶でいただいた。 優しい味だった。 あの日の、私にとっての救いがあって 私は希望を少しだけ持つことができた。 でも、私の人生はまだまだ地獄だろう。 そうなったら、この店に来よう。 彼ならきっと受け入れてくれるはず。 「あの、またあんなことになったら、 寄ってもいいですか?」 言い終わると同時に、相手に自分の弱みを見せてしまった気がして、あまりいい気はしなかった。が、彼は今にも泣きそうだけれども、心の底から嬉しいような笑顔をしながら 「うん。もちろん」

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思い出ケーキ T.I版

でも、ショートケーキは蜜の味

ショートケーキを学校の帰りに買った。 甘ったるいクリームと、甘酸っぱいいちごのケーキが俺は一番好きだ。 帰ったら、お母さんと一緒に食べよう。 あの人も甘いものは好きだから、喜んでくれるはず。 父親には、あいつには決して食べさせない。 全部、 全部あいつのせいなのだから。 伊藤あやね。 俺の今は亡き姉。 1人の人としてはあまり立派ではなかったが、姉としては本当に完璧な姉だった。 まだこの家が平和だったとしよう。 そうだ。今と比べたらよっぽど平和だ。 その時姉が同じようにこの日にショートケーキを買ってきた。 その日だった。 この一家が狂ってしまったのは。 正確にいえば父親だけだが。 「おおーい。風呂沸いてるかぁ?」 呑気な声が玄関から聞こえてくる。 ああ、まただぜ? 姉と目を見合わせて、母に先に風呂に入ってきて。大丈夫だから。と指示した。 「むっちゃ可愛いだろ?この秘書。 俺の新しい秘書だよ」 「失礼します」 整形顔の女がこちらにやってきた。 大体、ホステスのような服装で整形顔と言うのは危ない女ばかりだ。 父親が会社で偉い立場になってからこう言うのがわかるようになってきた。 人というのは、欲が強いから。 こうなるんだ。 「ねぇ、あなた…?」 突然、浴室から母親の声が聞こえた。 ああ、まずい。 「なに、なにをしているの? 子供が目の前にいるのよ! こんな…クリスマスの日に…」 「お母さん。大丈夫だよ。私がなんとかするから。大丈夫」 姉の優しい声が聞こえ、母親は正気を取り戻したかのように、素直にまた浴室へと戻っていった。 この後の記憶は曖昧だ。 「お父さん。 ふざけないで」 「はぁ、なんだと! 父親に向かってそんな口を聞きやがって」 「いやぁ!」 この会話しか覚えていない。 そのあとは、涙がもう出て来ないんじゃないかと疑うぐらい沢山泣いた。 姉が、父親に殴られてタンスの角に頭をぶつけて死んだ。 あたりどころの悪いとはこの事だろう。 その後、家の死んだような空気感の時に俺の誕生日が出てしまった。 「ねぇ、和彦。お誕生日おめでとう。 …お姉ちゃんがあの日買ってきてくれたショートケーキだよ。まだ1日しか経っていないから、食べても平気だと思う」 いやいや口に入れたショートケーキは、甘くて、涙の味がした。 多少、クリームが油っぽくなっていたのは忘れることにした。 「おいしいよ。お母さん。 食べようよ、ショートケーキ」

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でも、ショートケーキは蜜の味

本の少女#5

「…まず、1945年のドイツでの出来事。時空の狭間に挟まれていたのはのアロン・ヴァインライヒさん。絶滅収容所から見事に生き残った素晴らしい人だよ。その後のインタビューの時に彼は世界中の人に賞賛されるはずだった。“貴方は奇跡の一つだ“とね。でも彼は、何かと不思議なことを話したの。 …違うんです。僕は、あの場所に入った記憶と出た記憶しかないんです。それまでは僕は、向こうの世界の教会にいました。 僕はユダヤ教を信仰していますが、全く関係のない宗教です。でもなぜか僕はそこにいました。 向こう側で僕はジュリアという女性と出会いました。彼女は、とても優しくて…神父様は彼女を“神に選ばれた子“だと言いました。僕も彼女がとても素晴らしい人だと思いました。僕は彼女を愛していました。平凡な日々がしばらく続きましたが、ある日、その神父様がお亡くなりになりました。死因は不明ですが、教会のみんなは“神がお怒りだ“と怯え、満月の夜に一番優しい彼女がきっと神様の気を落ち着かせられる、神様からお許しをもらえる。となり彼女は生贄に選ばれ、一晩中五芒星の上に立って、何かを唱えていました。本当は嫌がっていました。まだ生きていたい、と。ですが、生贄であることを拒んだら、神様の優しい存在から逃げることになります。彼女はそれを恐れました。僕に最後に告げた言葉は 私たちは、不思議な関係で結ばれている。 そうだ、アロン。 私、あなたに感謝しなくちゃ。 彼を殺してくれてありがとう。 最後のお願い。 ここにいる人たちをこの関係から逃げさせてあげて。 お願い。 どうやって“この関係“を終わらせるのか僕にはわかりませんでした。ですが、あの日、あの日、僕は見つけました。 その正体を見つけて、僕はその関係を終わらせました。そして教会の外に出ると、途端に意識を失ってしまって…気付いたら僕は病室にいて、目の前には何年ぶりに見たか…健康的な食事がありました。 それだけなんです。 それ以外は何も。 僕が覚えているのは。 って話。ぶっ飛んでるでしょう?」 言い終わって気付いた。多分、彼にとってのこちらの世界と向こうの世界とは、絶滅収容所と救いの手ジュリアなんだろうなと。 しばらく誰も話してはいけないような雰囲気が続き、川橋瑠奈が化粧の施されたお人形さんのような顔をあげた。ハッとしてしまうぐらい、やはり綺麗な整った顔だった。 「ねぇねぇ、それってさ。何か関係を壊さないといけないってことなの?あたし、嫌だよ。壊すものなんてないし」 「いや、わからないぞ。美緒の話だと誰かが生贄になった人と殺す人を選ぶということかもしれない」 橋場恭子が艶のある黒髪を撫でながら言った。 「京子の言う通りかもしれないけど、俺は瑠奈の考えを今は考えた方がいいと思う。だってそうだろ。最終的になんの関係というのは定かではない。それってなぞなぞみたいなもんだろ」 鈴木智博が黒い眼鏡を丁寧に拭きながら言った。 「確かに。俺もそう思うな」 佐藤卓也も智博の意見に同意。 もちろん、瑠奈自身も。 そして、私も。 「恭子。これは可能性の話だから、あまり気に止めるな」 渋い顔をしている恭子に智博が言った。 「ああ、わかってるよ」 さて、これからどうするか。 多分私たちは何かとの関係を壊す。ことをしなければいけない。 この城の中にヒントがあるのだろうか。 それともまだこの物語は始まっていないのだろうか。 そう考えて、とりあえずこの城を探察しよう。みんなに伝えない… 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」 今の耳を覆いたくような悲痛な叫び声は私たちの動きと瞬きをするのを忘れさせた。 「だっだれかぁ! シェール夫人が殺されたわ! ああ…ああどうしましょう! 誰か来てちょうだい!」 続けて女性の金切り声が聞こえてきた。 頭が困惑している中、私の中には喜びと恐怖の気持ちが込み上がってきた。 やっと、物語が始まる。

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本の少女#5

本の少女#4

「な、なんでもない…」 と雪菜は震える声で抗議するものの、その人物は聞こえてないふりをした。後ろにいた兵士たちをチラリと見て「すまん、戻ってくれ」と雪菜の方を見ながら言った。そして、雪菜と目線が合うように屈むと、 「なぁ、雪菜。また、被害者を出すのか。」 と言った。私たちはその人物の言ったことの理解が追いつかず、反応ができなかった。 “また、“とは? 「違う、違うの…私はただ…」 「パーティーを抜け出してまで、そんなことをする必要が?」 「でもっ…」 「関係ないだろ。今まで沢山の童話を読ませてきた。お前は魔女になるのか?」 一瞬、雪菜が憤慨した顔をしたのを、私たちは見逃さなかった。だが雪菜は“ごめんなさい。父さん“と感情のこもってない声で言う。“その人物“とはどうやら“雪菜の父“らしい。彼女なりの強がりの仕方なのだろう。 雪菜の父は、静かに雪菜の耳元に近づき何か言った。すると雪菜は何かに思いを馳せるような顔をし、立ち上がった。私たちが声をかける時にはもう雪菜が部屋を出た後だった。 後に残されたわたしたちを見て、雪菜の父は 「すまないね。こう言う事よくあるんだ。…そうだ、これも何かの縁だろう。折角だからうちのパーティーに参加してみないかい」 パーティー…か。 いや、それよりも雪菜は…? 私がそれを尋ねる前に、橋場恭子が“すみません。私たちここで少しだけ話し合いをしてもよろしいでしょうか。 まだ頭の理解が追いついていなくて“ はっきりとしたよく通る声音で言った。雪菜の父はもちろん、と言って部屋を後にする。 「…うーん。困っちゃったねぇ」 佐藤卓也が茶色く少しウェーブの入った前髪をかきあげながら言った。 「本当に困った。この状況はあまりにも非現実的すぎる…私たちは夢でも見てるのか?」 恭子が言う。 「皆同じ夢を?そんなことあるわけないよ」 そこからしばらくの間、沈黙が続いた。 私たちは思考を巡らす。 そこで、私はとあることを思いついた。何とも馬鹿馬鹿しくて、ありえないことだと思ったが、今ここに自分がいること自体が馬鹿馬鹿しくて、可笑しいのだ。 「あのさ、あんまりこう言うこと信じたくないんだけどさ。これって“時空の狭間に挟まれた“って感じがしない?」 私は思い切って考えていたことを話し、自分で納得した。一度考えを話せば、あとは楽だった。 「私は、SF系のものが好きだから所々“ぶっ飛んでる“発想になるかもしれないけど、許してね。 まず−−−−−」 ふと、大きな西洋風の窓の外を見る。 窓の外では、最初と変わらず、雪が降り続けている。

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本の少女#4

本の少女#3

雪菜の家へ向かっていた時の記憶は、正直なぜか曖昧だった。 あの雪の中、体が氷になってしまうのではないかと言う不安を常に抱えながら、雪菜の温かい手を強く握りしめていたと言うことだけは、覚えている。 “気がつけば、家に着いていた“と言うのが一番しっくりくる。 雪菜の家は崖の上にあり、想像していた何倍も豪華で美しく、白雪姫のお城に似ていると思った。 私たちが門の前に立つと、大きな扉がギィ…と音を立てて開いた。 中に入ると、城の中には派手なドレスに身を包んだ貴族らしき人たちが楽しそうに、また、すました猫のようにワルツを踊っているところだった。 雪菜はいきなり“静かに私に着いてきて!“と私に厳しい口調で言ってきた。 息をひそめて雪菜についていくと、雪菜の部屋へと導入された。 ** ここを本の世界だと仮定すると、雪菜の部屋の中には現実世界の知り合いが4人いた。 皆、暖炉の前で冷えた体を温めている。 よく知った顔だった。 大事な、人たち。 「あー!美緒もこうなったの?」 と川橋瑠奈が言い、その隣にいた橋場恭子が「まあ、予想はついてたが…」 と何やら意味深なことを言っている。 「宮原。」と鈴木智博がこちらを向き、佐藤卓也が「美緒ちゃんじゃん」と白い歯を見せながら微笑みかけてきた。 自分も暖炉の方へ向かい、挨拶を交わす“みんながいて、本当に助かったよ“と。 すると、後ろのドアの方からからガチャとドアが開くの音が聞こえた。振り返ると、雪菜がものすごい勢いでドアが開かないように抑えるも、容易くドアは開いてしまった。 「雪菜…この方々は誰かね」 と、王冠を被った男が鬱陶しそうに言った。 そして、 ダメなことだと、何度言ったらわかるんだ。 それと同時に、5人の兵士たちが、こちらへやってきた。 なんだか、胸騒ぎがした。

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