本の少女#3

雪菜の家へ向かっていた時の記憶は、正直なぜか曖昧だった。 あの雪の中、体が氷になってしまうのではないかと言う不安を常に抱えながら、雪菜の温かい手を強く握りしめていたと言うことだけは、覚えている。 “気がつけば、家に着いていた“と言うのが一番しっくりくる。 雪菜の家は崖の上にあり、想像していた何倍も豪華で美しく、白雪姫のお城に似ていると思った。 私たちが門の前に立つと、大きな扉がギィ…と音を立てて開いた。 中に入ると、城の中には派手なドレスに身を包んだ貴族らしき人たちが楽しそうに、また、すました猫のようにワルツを踊っているところだった。 雪菜はいきなり“静かに私に着いてきて!“と私に厳しい口調で言ってきた。 息をひそめて雪菜についていくと、雪菜の部屋へと導入された。
T.I
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はじめまして。T.lです。