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8 件の小説連続 5章
嫌な気分で辿り着いた羽田空港は、 福岡空港よりも断然人が多かった。 日本語より中国語、英語、イタリア語、の方が多く飛び交っている。 数年前COVID-19(新型コロナウイルス)がパンデミックを起こし、長い年月世界を苦しめた時期に比べたら、とても良い時期になったと思っている。 羽田空港の椅子に座っている人の新聞が目に入った。 「殺人放火魔。被害を北へ。福岡から北へ移動中か。山口、広島、兵庫、殺人放火。死亡者数12 重症者数5 」 最近メディアで話題になっている殺人放火魔。 原因不明の放火が一致している所から、 同一人物の放火ではないかと疑われている。 ただ、原因不明というより、燃やした物が残っていないところから、煙草を使っての放火の可能性がたかい。というのが警察の見解となっている。 また、目撃情報も無いことから普通の服装をしている可能性が高い。 また警察出動時間が深夜帯ということであり、目撃情報が少ない。 各県の警察は深夜帯の巡回を増やし、警戒してるいるが事件は起きてしまっている。 羽田空港から出て、タクシー乗り場に行くと笹木家で雇われている運転手が待っていた。 眼鏡をかけていて、スーツが似合う人物だ。 白髪があるが、その白髪が余計紳士さをら引き出してる印象を受ける。 「こんにちは。華穂さん。そちらはお友達の塔野さんですね。私は、虹元と申します。2人を安全にお運びします。よろしくお願いします。」 虹元さんは深くお辞儀をした。 それに対して僕も深いお辞儀した。 「それでは、さっそく別荘に向かいます。塔野さん、どうぞ。」 そう言って、虹元さんは後ろ席の右側のドアを開く。 「失礼します。」 フカフカの座席に座る。 「別荘に直行でよろしいでしょうか。」 「どうする?翔哉?一旦別荘行く?」 「うん。そうしようかな。よろしくお願いします。」 バックミラーで僕たちを見ていた虹元さんは 「分かりました。」 と言ってアクセルを踏み、羽田空港を後にした。 2人きりじゃ無くなったから会話も減ってきた。 少し揺れる車の中、ふと眠くなった。 目を閉じた…。 「翔哉!翔哉!!」肩を大きく揺らされる。 どうやら僕は寝てたみたいだ。 「ねぇ。翔哉やばい。やばいよ!!」 泣き声が混じった華穂に僕は車から引っ張り出された。 笹木家の東京別荘が赤い炎に包まれている。 虹村さんは仁王立ちしか出来ていなかった。 大きい豪邸を見上げることしかできない事が悔しいのだろうか。 僕は急いで走り出す。 「翔哉!!」 そう言われた時には遅かった。 僕は一目散に笹木家の敷地内に走り込んだ。 木造の玄関も燃え尽きている。 ドアを蹴飛ばして中に入る。 どこだ。何処にいるんだ。 僕は必死に探す。懸命に。 「なるほどね。」 内心は驚いていたが、どこか冷静だった。 ガラス張りの床に横たわっていたのは。 血だらけになっているのは。 侵入されたんだろうか。割られたガラスで首元の動脈を切られている。 黒煙が遠のき視界が少し晴れた。 僕のミッションは変わった。大きく。 だから僕は挨拶まともに出来なかっんだ。 見えたから。
一体。
ここから書き始める話は僕と明日を生きる君に捧ぐ。僕の全てをかけて。僕の気が散らないうちに。君が明日を生きるために。 君と出会った日のことは今でも鮮明に覚えている。 芸術大学を卒業して漫画家を目指していた時代。担当編集者とヒット作品をどうしても出したかった僕はただただがむしゃらだった。 でも何故かヒット作品は生み出すことは出来なかった。絵の画力は新人の中で僕の右に出る人は居ない。何故だろう。少年誌向けの内容が描きたくても僕の能力では書くことが出来なかった。 あの日も担当編集者と新宿のカフェで当時作り上げていた漫画について話あっていた。 何時間経っただろう。入る頃は明るかったのに、外に出たら既に月が出ていて。いつもこの通りは仕事帰りの人で溢れかえっているのに。その人混みすらなかった。 どうしようか悩みながら新宿駅に向かう。重い足を運びながら。後ろを見れば重りを僕の足に付けられているんじゃ無いかと思ってしまうくらい重かった。中々気持ちが晴れない。 いつか晴天になる日が来るのだろうか。 「すみません。」 可愛らしい女の子だろうか。 「はい。」やばい。少し感じの悪い返しをしてしまったと思いつつ振り返る。 「あの。漫画家さんですか?」 「どうしてそれを。」 「私、樋口 佳奈っていいます!分かりませんよね…一応あのカフェでカフェオレ運んだのですが。」 「あぁ。すみません。話に夢中でしたから、中々気づかなくて。」 「カフェオレとコーヒー運んだ時に少し見えてしまったんです!もしかしたらこの間の週間少年誌に読み切りで掲載された作品じゃないかって!読み切りだったけど、絵がとても上手で鮮明に覚えています!」 「ハハハ。ありがとうございます。あの読み切り、編集者的にはもう少し内容をアツく描いてほしいらしくて。どうすればアツい展開が描けるか僕には分からなくて。」 そこからその場で2時間も立ち話をしてしまったのも覚えている。内容も。君がぼくに見せた表情も。鮮明に。君が生粋の少年漫画好きというのも分かったし、君が僕の作品は小説みたいな綺麗な内容だとアドバイスをくれたことも覚えている。 少し休憩するね。 また、書き始める。
かき氷を君に
「バンっ!!」 僕が後ろ見た時には既に遅かった。 僕の背後にいた後輩が滑り込んでいたが、惜しくもボールはバウンドしてしまった。 ボードには「25」の数字が刻まれてる。 夏のバレーボール大会。 初戦から優勝候補の高校と熱戦を繰り広げて初戦を突破。いわゆる僕のチームは番狂わせとなるゲームを作ったのだ。 その勢いのまま準決勝まで辿り着いた。 僕の高校では歴代最高の成績になる。 試合は2セットを先取した。ただ相手は3セット目から目を色を変え、戦ってきた。1セット取られてから相手の勢いの渦にのみ込まれ、最終セットの6セット目。23-25のスコアで敗退した。 完敗だ。 …… 悔しい。
花火が広がる頃に。
7/10(日) 1人でいると、こんなに夜が長く辛いと、知らなかった。 今日は彼の誕生日だったのに。 無駄に装飾した部屋が輝いている。楽しい雰囲気だけが残されたこの部屋には私は割に合わない。 ケーキも冷蔵庫に入ったままだし、もう今日はこのまま寝てしまおうか。 私はベランダに出て風を浴びる。 住宅街たちが邪魔してスカイツリーが見えづらい。 せめて住宅街くらいは慰めて欲しかった。 私にと風が吹いてくる。ふわふわとした風だ。 風が私を慰めているようだった。ため息をついてそっと住宅街をみてみる。 今日はやけに妙な雰囲気。 彼とは大学時代の歴史研究会というサークルで出会った。 背が高く、眼鏡をかけている。 スラッとした印象が強い人。 愛読書は「宝石図鑑」。 彼がその本を眺めているをいつまでも忘れていない。忘れるわけが無い。 「香田さんは宝石で例えるとルビーだ。石言葉は情熱、勇気。活力を与えてくれる石だよ。」 彼が何故私を宝石で例えてくれたかは覚えてはいないけど、いつまでも脳にこびりついて離れない。 未だにあの言葉は夢じゃないかと思ってしまう。 そんな思い出に浸っている場合じゃない。 私はスっと我に戻る。 今日はこのまま寝ようとベランダのドアに触れた時、騒ぎ声がした。 それもただの騒ぎ声じゃない。 まるで人間じゃない様な声たちだ。 それがいくつも。 私は慌ててベランダから身を乗り出して下を見る。 信じられないかもしれないけど、私は百鬼夜行に出会った。
〜第4章〜
華穂が死ぬのが今日。 福岡空港から羽田空港まで約2時間。 九州の玄関口、福岡の街もよかったが雲の隙間から見る福岡の街の方が綺麗だった。 どんどん福岡の街が小さく見える。 僕はどうすれば華穂が死ななくて済むか、ノートパソコンを開いてWordを起動させ打ち込んでいた。 隣を見ると、ついさっき離陸したと言うのに華穂は寝ている。 どうにかして華穂が寝れる日を続けさせなければ。 って思ったのは良いが我ながら少しダサくて心の中で笑ってしまった。 パソコンの画面に集中する。 【華穂守ろう作戦】 と大きくて太めの文字で打ち込む。 昔からネーミングセンスは0に等しいと華穂も含め色々な人に言われてきたが、自分自身ではそうは思わないでいる。 というのも、撮った写真でコンクールに提出するもの。もしくは、文化祭で展示するのは良く華穂からネーミングセンスのことで笑われた。 でも、全国コンクールで銀賞取った時の作品の名前は未だにいい名前を付けることができたと思っている。 公園で人々が様々な行動をしている写真で、遊具で遊んだり、ベンチに座ってライターで煙草に火をつけようとしていたり、砂場で山を作っている様子を一斉に集めた写真だ。 題名は「連続」。 自分でもしっくり来たし、華穂にもその時だけは認められた。でも、その題名にした理由は何故だか思い出せない。 あの時の華穂の顔は少し怯えていたというか。 弱い小動物が天敵に出くわしたときのよけうな表情だった。 僕はどんどんパソコンの画面に打ち込んでいく。 1つ目。 人が多いところはなるべく避け、人混みの中にはなるべく入っていかない。 2つ目。 移動手段として、公共交通機関を使わない。 3つ目。 最終手段として、僕がs……。。 「何してるの?」 不意にかけられた声に反射的に体がビクッとした。 急いでパソコンを閉じる。 「いや!東京のこと調べようと思って、ネットで情報収集してたんだ。」 自分でも分かるくらい声に動揺が走っていた。 「見せてよ。私も見たいな。」 華穂が僕のパソコンに手を伸ばす。 「バシッ」 華穂の手はのれんみたいに柔らかく動いた。 強く力入れた自分に大きな罪悪感に襲われる。 「ご、ごめん」 「何してたの」 「見せれないよ。東京の楽しみのために…。」 唾をの飲み込む。苦し紛れの言い訳だ。 「翔哉は嘘ついた時に唾を飲み込む。癖だよね」 「もしかして…翔哉。変なの見てた?」 華穂がニヤニヤしてくる。 「見てないよ。誰か女子がいる近くで見るもんか。」 「ってことは居なかったら見るんだ。ふーん。」 「いいから…。もう。」 慌ててバックからアイマスクを出す。 もう寝て逃げてやる。 「起きて!翔哉!」 肩を揺らされた僕はアイマスクを外す。 「見て!富士山!」 華穂は指を窓の外に向ける。 富士山はもっと綺麗なものかと思っていたけれど、この時だけは綺麗とは思えなかった。 〜4.5章〜 もうすぐ離陸する。 飛行機には乗るのは何回もあるけど、今回の飛行機だけは緊張していた。 それに、今日にいたっては寝不足だ。 服選びに相当な時間を費やしてしまい、寝たのは午前の4時だった。 東京に行くのにものすごく嫌な予感もする。 どこか私、翔哉のこと気にしてるのかな。 最近は顔が見れない。言いたいことも沢山あるし。 この機会を気に伝えれたらな。 飛行機がものすごく大きな音を立てて、体で感じれるくらいに中に浮き始めた。 グッと眠気がくる。それに従って目を閉じた。 ………………。 夢だ。 夢の中なのに夢だと分かる。 1度見たことある景色だ。 コンクールに出すための写真を翔哉が撮っている。 ここは、学校近くの公園。 タコの滑り台、シーソーにブランコで遊ぶ子供たち。砂場で山を作っている子供にそれを見る親。 そしてベンチに座って、煙草に火をつけようとしているお兄さん。 背がスラッとしていて、スーツを着ている。 髪型はオールバックだ。 どんな仕事しているのだろう。 そんな場面を翔哉が撮ろうとしている。 そうか。 この後、コンクールに出す写真はこの場面を出したのか。 ネーミングセンスの無い翔哉の題名もこの時は納得いった。なんだったけ。題名。 ハッと目を覚ます。 翔哉がパソコンになにか打ち込んでいる。 その後、何しているか問い詰めたが、頑なに翔哉は教えようとしなかった。 逃げるように翔哉が寝る。 しばらくして私もまた寝た。 どこだろ。まだ空の上だ。 翔哉の方向見てみると、窓の外に富士山が見えた。 見せたいと思って急いで翔哉を叩き起しす。 翔哉は機嫌悪そうにアイマスクを外すして、私が指差す方向に向いた。 富士山を見る翔哉はどこか変だった。 翔哉を叩き起して富士山見せた割には富士山は綺麗に見えなかった。
〜第3章〜
卒業式当日。華穂が死ぬまで6日。 昨日電話では謝ったが直接本人に謝っておこう。 そう思ったのと、 もうひとつ伝えたいことがあった。 それをどうまとめて伝えるか卒業式は頭いっぱいだった。 卒業式が終わり桜がいい具合に咲いている。 友達たちとの写真も俗に言う 「インスタ映え」にもなった。 桜の花言葉。特にここに咲いている染井吉野(ソメイヨシノ)の花言葉は「高貴」「清純」等。 華穂にとても似合う気がした。 (遡ること約半日前…) 翔哉は華穂に電話をかける。いつもは3回目のコールで出るが今日に限っては2回目のコールで出たから少し戸惑った。 「もしもし、どうした?翔哉?」 「あのさ、実は今日の東京行く件なんだけど…。」 「うん。どうした?急用でも入った?」 「あ、いや。別に急用でも無いんだけど。卒業旅行の場所変えないかと提案しようかと思って電話したんだ。誘ってくれたのは華穂の方だし、東京での別荘の準備とかも大変だろうにそれを台無しにして申し訳ないけど変えない?」 静かに僕の話を聞いてくれていた華穂だが、即答で 「どうして?」 食い気味で来られたその質問に思わず「華穂が死ぬ未来が見えた。」と言いそうになった。 我に返って質問を返す。このためにしっかりとしたいい訳を作ってきた。 「せっかく東京に行くのもいいと思うんだけど僕は少し田舎の方で普段見れない景色を見たいんだ。実際僕達は東京民じゃないけど東京はどんなところかって言われたらポッと口に出せるところだと思うけど…。」 いつものように華穂は話を聞いてくれている。 あまりにも静かに聞いているから電話が切れたじゃかと思って焦るが気にせず話を続ける。 「田舎はそんなところじゃないと思うんだ。自然が近いところって何でも型にはまった場所じゃ無いと思うんだ。だからどうだろう。まだ場所はきめてないけど東北の方とか。」 「嫌だ。」 また即答をしてきた。 驚きと怒りと哀しみがある声で否定してきた。 こんな自分の感情を真正面にぶつけてくる華穂は始めてだった。 「私も最初翔哉と同じ考えだったよ。だけど東京じゃ無きゃ行けない理由も聞いて欲しい。」 「…。」 始めてだった華穂の反応に僕は黙っておくことしか出来なかった。 「翔哉。写真部の全国コンクールの前どれをコンクールに出すか机の上に広げてた写真から選ぼうとした時言ってたの私覚えてる。」 それを言われた僕はハッとする。 「もし、東京での写真撮れたら金賞も夢じゃないって。」 そういえばそんなことをさらっと言った記憶がある。そんなことを本気で覚えてたなんて。 「それで結果銀賞だったとき翔哉、後悔してないかなって。だから高校最後の思い出に。後。私…。」 少し華穂は躊躇って 「4月には親の転勤でイギリスにいくから…。その前に幼なじみの翔哉とも行きたかった。これを聞いてもダメかな?東京いくの。明日卒業式終わった頃伝えてくれると嬉しいな。」 益々断りづらい理由を言われた。 ほぼ確実で華穂は死ぬ。 僕は「ごめん」と一言言い放ち電話を切った。 僕はまた昨日のことを思い出しながら華穂がほかの友達と話を終わるのを校門前で見ていた。 ようやく話が終わり、華穂がこちらにやってくる。 「ごめんね。話長くなっちゃって。」 「いいけど…。いいの友達と話さくて」 「いいよいいよ!!会おうしたら会えるし!」「え、でも華穂が海外に行くこと知ってるんじゃないの?」 「そうだけどさ。行く時に伝えればいいかなって。なんか事前に言っとくのあまり好きじゃないし。変な気を使わせてしまうから。」 華穂らしい気遣いの言葉だった。 「ところで決めてくれた?」 「うん。その前に昨日はごめん。どうしても僕の都合ばかり押し付けて。」 華穂はしっかりとした眼差しを向けてくる。 思わず顔が赤くなってしまいそうになる。 「だからさ。東京に行こう。金賞取れたかもしれない東京に。」 隠しているつもりかもしれないが確実に華穂の顔には笑顔が出ていた。 「わかった。ありがとうね。理解してくれて。」 「また日にちが近くなったら色々連絡するから。とりあえず、帰ろうか。」 そう言って高校の校門が遠くなっていく。 それでも華穂は死ぬ。
連続②
〜第2章〜 僕は元々幼い頃から友達が多くいる人間では無い。 幼い頃は親から未来が見えることは信じて貰えず、現に今も信じてもらっていない。 保育園の友達にも信じて貰えずに居たが、そこで唯一僕の話を耳を逸らさず聞いてくれたのが華穂だった。華穂は裕福な家庭での育ちだが、決して威張らず大人だと昔から感じていた。いつの間にか彼女のそんなとこに惹かれたのは義務教育が始まってから高校卒業を明日に控えた今も続いている。 実際僕が通っていた小学校の近所の犬の死ぬ未来が見え、飼い主から虐殺されるという死に方さえも的を得たことさえだってある。 華穂だって信じていなかったはずだ。 ただそれから信じてくれているし華穂が唯一の救いになっている。 人に意見に流されやすく、人が車に轢かれそうだったら庇うような自分のことは二の次人間だ。 と昔からのことを少しだけふと思い出していた僕は羽等坂駅から最寄りの鍋笹駅で降りてバイバイした後家の自室で籠りずっと考えていた。時計を見ると大きい針が6の数字を越そうとしていた。 やっぱり流れで東京に行く予定立ててしまったがどうしたものか。 こんなに冷静で居れる自分が不思議でしょうが無かった。夕日が眩しく、カーテンを閉める。 恐らく東京に行くとほぼ必ず華穂は死ぬ。 それ前提で行くのは違う気がする。 でも向こうには別荘の準備までしてもらってる。 時間がかかる別荘の準備をパーにするのも申し訳ない。 行く先で未来変えることができるのか。 やるしかないのか。 先の見えない所でやるのは不透明すぎる計画だし。何が起こるかわからない。 なら、自分がしっかり計画を練って東京じゃない所に変えよう。ちゃんと行けない理由も正当化して絶対に行くのはやめよう。 と思い、華穂に電話かけた。 「もしもし、どうした?翔哉?」 「あのさ、実は今日の東京行く件なんだけど…。」 いつも通り華穂は僕の話を途中で辞めさせることも無く最後まで聞いてくれた。 ただ、驚きと怒りと哀しみがあった声で僕に話した華穂は始めてだった。
連続。
あ、見えた。その1週間後その映像は現像されて僕の目の前に現れる。 〜第1章〜 3月2日 「とうとう卒業式も明日か…」 僕、塔野 翔哉(とうの しょうや)は電車の中でポソって言ってしまった。声が大きかったから一瞬周りから目を向けられる。 「ツギは〜羽等坂(はらさか)、羽等坂です。お手口は右側です。開くドアにご注意ください」 風船から空気が出るような音を立ててドアは開いた。 僕は羽等坂学園高校に通っている。ほんの1ヶ月前くらいに入学したと思ったら、もう卒業式前日だなんて。しかしこの高校生活は特に何も無く、強いて言うなら幼なじみの女子と写真部で活動して写真部で俺が全国コンクールで銀賞を取ったくらい。その女子はまぁ、俺が撮っているところを見ているだけだったけど。 今日は先生の話が少しあって帰る予定だ。 僕はドボドボと学校に足を進める。 チャイムの音がスピーカーから流れてきて皆の「サヨナラ」の声が響く。 明日の為に午前だけで学校は終わったから駅前のカフェで読書しようかなって思ったけど、やめた。1人だし。 カバン持って教室から出ようとしたら肩を軽く指で叩かれる。振り向くとそこには写真部の部員で、幼馴染の笹木 華穗(ささき かほ)が居た。 「翔哉!!今から時間ある?」 「まあ、あるけど。どうした?」 「少しさ、話がしたいからカフェ来ない?いつもの」 「いいよ別に。どんな話なの?」 「ま!そう焦らず!とりあえずカフェに行こう!」 そう言われて僕は彼女に連れられてカフェに向かった。 「あ、いらっしゃい。いつもの席空いてるけど、行く?」 「うん!よろしく!」 元気よく華穗は返事をしていつもの窓側の席へ行く。 「メニュー決まった?」 「んー。今日もアイスコーヒー!」 「はいはい〜。翔哉くんは何にする?」 「んー。僕はいちごオレで」 「これだけでいい?すぐ持ってくるね!」 おばちゃんはスタスタと奥へ入っていく。 「華穗っていつもアイスコーヒーだよな。昔から」 「だっておいしんだもーん!」 高校入学したての頃から、ずっと通いつめたこの喫茶店も今日から行く回数少なくなるかもな。 「ところでさ、最近見えた?」 「いや、別に。」 “”見える“”とは何かっていうと、自分は人が死ぬ瞬間の映像が見える。 最初は祖父だった。小学生の頃お盆で祖父の家に行った時、顔を見た瞬間見えた。苦しむ顔をしながら命を落としてく祖父の映像が。そこから1週間後、突然の心臓発作で祖父は亡くなった。それだけじゃなかった。祖母が病気をして病院に駆け付けた際にも祖母の顔を見た瞬間、祖父と同じように苦し見ながら病気に負けて息を引き取る瞬間が。それも1週間後だった。そこから死ぬ1週間後前の人と会うとその人の死ぬ瞬間の映像が見える。だから街中で人と余り会わないようにしてるし、なるべく病院に行かないようにもしている。 「で、話はそれだけなの?」 「いやいや、これもあったんだけどさ。」 何かまた別の話があるようだ。 「来週の月曜日!9日!卒業旅行として東京にある別荘に行かない?」 「突然すぎるな…」 「だめ?」 「全部話を聞けよ。これから大学入学まで時間あるし別にいいよ別に」 「ほんと?やったー!」 「何あなたたち旅行いくの?」 おばちゃんが絶妙なタイミングで話に入ってくる。 甘いアイスコーヒーといちごオレが置かれる。 「うん!東京に行くんだ!」 「そーかそーか。楽しんで来てねえ〜」 そう言っておばちゃんはまた奥に行った。 「てかさ、今日おばちゃんに挨拶しようよ。ありがとうございましたってさ」 華穗は小声で言っくる。 僕はOKの合図を手で作って、 いちごオレを飲み干す (……あれ? なんか目の前に白い映像が…これいつもの。 これは…華穗!?血…まさか…。顔が見えない…) もうちょいのところで映像は途切れた。 「どうしたの翔哉?」 「いや別に何も…」 絶対にそうだ。今日は2日だし、9日。旅行当日になにかある。 僕はそれが気がかりでおばちゃんにありがとうの挨 拶がまともに出来なかった。