ららら
41 件の小説ららら
はじめまして、小説が大好きな学生です(>ᴗ<) Noraの方でも同じものを投稿しています(*´∀`)人(´∇`) フォロー♡𝐓𝐡𝐚𝐧𝐤 𝐲𝐨𝐮♡ 基本的に返します(* 'ᵕ' )☆ お話の世界ににどっぷり入り込みたい方におすすめです*ˊᵕˋ* 主に恋愛やファンタジーなどの不思議なお話投稿してます💭💓 現実逃避にもどうぞ。 一度削除した連載、小説の再投稿は受け付けません🙅🏻♀️💦 私の作品の続編や二次創作などを制作する時は、コメントなどで確認させて下さい🙇♀️ 完全なるパクリや無断転載は通報させて頂きます❌ 作品の一部参考にさせて頂く場合があります💦 コメント全部みてます!! フォローしている方の投稿は定期的にチェックしてる✨️ 私の作品が、少しでもあなたを癒すことができますように🍀*゜ ❥𝑠𝑡𝑎𝑟𝑡❥2025.1/1
桜の魔法
病院の302号室。 とある老夫婦が、窓から桜を眺めていました。 「私もいつかはこの桜のように、跡形もなく散ってしまうのだろうか」 お爺さんはベッドに横たわりながら、ぽつりとつぶやきました。 お婆さんがむっとして言い返します。 「そんなこと言わないの。悲しくなっちゃうでしょ?」 「ははっ、それもそうだな」 二人は静かに微笑んでいました。 開いた窓から風や花びらが入り込んで来ます。近くの桜の木でよく見えないけれど、外からは子供たちが元気に遊ぶ声が聞こえてきました。 二人はただ、その声にじっと耳をすませています。 ある時、風が一段と強く吹きました。 「こりゃあすごい。体が冷えてしまいそうだ」 お婆さんが窓を閉めようとすると、その隙に花びらが入ってきてしまいました。 その花びらは、お爺さんの布団の中にしゅうっと入っていきます。 二人は顔を見合わせて、ははっと笑いました。 なんだかその花びらがやんちゃな孫のようで、とても可愛らしく思えたからです。 お婆さんが、布団をくいっと引っ張ってやりました。 「そんなに寒かったのでしょうか。爺さん、暖かくしてやりなさい」 花びらは嬉しそうにひらひらと動き回ります。 二人はその花びらに「ジン」という名前を付けました。 たった三の頃に亡くなってしまった、わんぱくな孫の名前です。 「ジン、そんなに奥へ入ったら、じいちゃん踏んづけてしまうぞ」 とくにお爺さんなんかは、その花びらをまるで本当の孫のように可愛がってやりました。 その間にも、桜の木についた花びらはちらちらと散っていきます。 お婆さんはふと、若い頃の記憶を思い出しました。 ちょうど今くらいの季節、四月の始まりに爺さんと行った公園のことを。 白髪一つ無かった時代、変に格好を付ける爺さんを思い出しては少し笑ってしまいました。 その笑みは幸せなもののはずだったけれど、何故か涙が零れてきます。 分かっていたけれど、それは可笑しさの涙だって思うことにしました。 そんなお婆さんを見て、お爺さんはにっと笑顔を見せました。 「なあに泣いてんのさ。もし私という花びらが散っても、ジンとお前は覚えてくれるんだろう?」 それがお爺さんの最後の言葉でした。 お婆さんは可笑しさの涙をぎゅっとこらえて、お爺さんの手をぎゅっと握りました。 「忘れるもんかね」
私だけのビスクドール
今日はニナの、六歳の誕生日です。 お母さんからは可愛らしいワンピース、お父さんからは小さなリュックを貰いました。どれも嬉しい誕生日プレゼントでしたが、ニナが一番気にいったのは、たった一つの人形でした。 「とっても可愛い…」 それは、叔父さんがくれたビスクドールです。外の国から来たもので、とても珍しく高額だと言います。 陶器でできた肌は透き通るように白くて、薄く染められた頬は見事です。桃色のドレスとボンネットには、綺麗な刺繍が施されていました。 そしてなんとも美しい、艶がある金色のロングヘアといったら! 「私、ずっとこの子を大事にする!!」 ニナは心に決めました。 それからというものの、ニナは肌身離さず人形を持ち歩いていました。 リリーと名付けられたその人形は、何時も変わらず優しい笑みを浮かべています。 叔父さんは顔をくしゃくしゃにして照れくさそうに笑いました。 「こりゃ参った。ニナがあんなに大切にしてくれるとはな。買ったかいがあったの」 両親も頷きました。 ところが、ある日のことです。 いつも通りニナがリリーを可愛がっていると、八歳の兄、ルイがリリーのことをからかいました。 「ちょいとお嬢さん、その長い髪、邪魔だから切ってくれないか?ついでにそのでかいぼんなっとう?もさ」 「なんですって!!」 ニナはついかんかんになって、ルイの頭を殴りました。 それを見ていたお母さんは、二人のもとに駆け寄りました。 「ニナ!!なぜルイを殴るのですか!」 ニナは涙目になってうつむきました。悔しさで胸がいっぱいです。ニナが拗ねて黙っていると、とうとうお母さんが言いました。 「ニナ。今日一日、お母さんは何されても知りませんからね」 お母さんは、ルイが大変な悪戯好きで手のかかる子だということをよーく知っていました。そのため、殴ったニナが仕返しに何をされても庇ってくれないということです。 ニナはついにたまらなくなって、リビングを飛び出しました。しかし焦っていたあまり、リリーを置いていってしまったのです。 お母さんがルイのもとを離れると、ルイはにっと笑いました。 (仕返ししてやろう) ルイはよく出る油性のマーカーで、リリーの顔や体のいたるところに落書きしました。ついでに美しい金色の髪を引っこ抜いて、ぼさぼさにしたりしました。 もちろんニナはそんなこと、知る由もありません。自分の部屋にじっと、うずくまっているだけでした。しばらくして、大事なことに気がつきます。 (リリーが居ない!!) ニナは自分の部屋を抜け出して、リビングの扉を開きました。 「え…」 床には色とりどりのマーカーと、リリーの髪の毛がぼろぼろ落ちていました。辿っていくと、そこには顔や手足がカラフルで、髪の毛がぼさぼさのリリーが座っていました。 ルイの仕業だと、ニナにはすぐに分かりました。 「っひどい…!お兄ちゃんなんか、大っ嫌い!!」 殴った時とは比べ物にならない、強い怒りがこみ上げてきます。 お母さんがこれを見ても、きっと私が悪いと知らんぷりするんだろう。 もう、そのことがはっきりと分かっていました。 ニナは玄関の扉を開け、リリーを抱えて家を飛び出していきました。まだ六歳の幼い少女に、行先などあるはずがありません。 ニナは泣きながら住宅街に走っていきました。 その時です。 目の前に一つ、黄色い光が見えました。難しい漢字で読めないけれど、どうやらなにかのお店のようです。ニナは吸い込まれるように入っていきました。 「いらっしゃいませ」 黒髪の女の人が、ニナを優しく出迎えます。ニナは安心して、わんわんと大声で泣いてしまいました。 「大丈夫?…あ、その人形さん…」 いつものニナなら自慢げに見せるはずですが、今は違います。こんな姿のリリーを大人に見せるなんて、恥ずかしくてとてもできません。 リリーを隠すようにぎゅっと抱え込むと、女の人は優しくニナに言いました。 「そのお人形さん、とても綺麗な髪をしているわね。見事なビスクドールだわ」 ニナははっとして女の人を見上げます。 ええ、そうよ。リリーは世界一綺麗で可愛い、私だけのビスクドールなのよ。 ニナはちょっと嬉しくなって、少し口角をあげました。女の人は笑って話を続けます。 「ここはお客さんの大切な物を直すお店なの。そのお人形さん、私になら治せるわよ」 ニナの表情がぱあっと明るくなりました。こんなリリーを見られたのは確かに恥ずかしかったけれど、それよりも嬉しさが勝ったのです。 「本当に治してくれるんですか!?この顔も、体も、お洋服も!?」 「ええ、そうよ。とっても綺麗にね」 店主は小さな手から人形を受け取ると、さっそく奥の方へ入って行きました。 「…できましたよ」 店主の元気な声に、ニナははっとして顔をあげました。 どうやら寝てしまっていたようです。 店主は笑ってリリーを差し出しました。マーカーの落書きも、びりびりになったドレスも嘘のように無くなっています。 ニナは嬉しくて、少し泣いてしまいました。 リリーはいつものように、優しい笑みでニナを見つめます。 「あっ、ありがとうございます!!…」言葉を詰まらせるニナに、店主が言います。 「お代はその子が満足しているかだよ。お母さん、リリーちゃんは喜んでいますか?」 ニナは顔を赤らめながらも、リリーの方をじっと見つめました。そして、元気に笑顔で言いました。 「とってもまんぞくしたみたいです!」 小さなお母さんは、にっこり笑って帰って行きました。
小悪魔ウィルシュ
こんにちは。 今回は、とある小悪魔のお話をしていきましょう。 切なくて、とても悲しいお話。ぜひ最後まで聞いていって。 とある小さな村のはずれに、悪魔が住むという山があった。 そこは悪魔の里と名付けられ、昔から入っては行けないと恐れられてきた。 ウィルシュはそこに住む小さな悪魔の女の子。 ある日ウィルシュは、暇つぶしに村へ出かけに行った。見つかってはいけないと思い、小屋や岩陰に隠れながら。 ウィルシュはそこで、ちょうど同い歳くらいの子供たちが集まって遊んでいるのを見つけた。とても楽しそうに笑うのを見て、ウィルシュは小屋の裏から飛び出した。 「ねえねえ、私も入れて」 子供たちはウィルシュの姿を見ると、次々にそこを逃げ出して行った。 「で、出たー、悪い悪魔だー!!」 「なんだって!?きゃー!逃げろー」 気づいた時にはすでに、子供たちの姿は見当たらなかった。その場所にはまるで誰もいなかったように、床の砂に描かれた絵だけが残っていた。 ウィルシュはどこか、感じたことの無いようなとても寂しい気持ちになった。 (どうしてみんな、逃げてしまうの…?) たまらなくなって、自分たちが住む悪魔の里へと帰って行った。 家に帰ると、ウィルシュはそこで、お母さんにその話をした。するとお母さんは呆れたように言った。 「ウィルシュ。あのねえ、人間たちは悪魔を悪いものだと考えているの。何かしないと危害は加えないのにね。 だから、あなたが何をしようと人間たち分かってくれないわ。それは仕方がないの。 ほら、あなたにも悪魔の証の角と羽根、尻尾が生えているでしょう?」 すらすらと話すお母さんに、ウィルシュは俯いた。 「………」 しばらく下を向いたあと、ウィルシュは部屋を飛び出して自分の部屋へ行った。 部屋の中で、ウィルシュは念の為に置いてあるナイフを持った。 「私は人の子」 ウィルシュはそう言うと、手に持ったナイフを自分の羽根や角に、次々と刺していった。 「あははははっ」 涙を浮かべながら笑うウィルシュ。彼女の紅い瞳には、悔やみと悲しみが詰まっていました。 それから何時間経ったでしょう。ウィルシュはようやく自分の部屋から出てきた。 「お母さん」お母さんが振り向くと、そこには全身に血を浴びたウィルシュが笑っていた。 「私の羽根と角と尻尾、無くなったよ。 これでもう、悪魔じゃないよね?みんなと仲良く遊べるよね?」 彼女にはもう、立派な角も大きな羽根も、美しい尻尾もありません。 お母さんはウィルシュをしばらく見つめて、やっと口を開きました…… お母さんは血まみれになった娘を見て、何を思ったのでしょう。 娘はじっと見つめるお母さんを見て、何を思ったのでしょう。 考えてみてください。
0日目「ようこそ」
「ビビビビッ、ビビビ…」 「ふぁ〜…今何…じ…」 二亜は眠たそうな目を擦りながら、時計の方へと顔を向けた。 「………六時二十六分!?」 二亜は布団から飛び起きて、大慌てで服を着替えた。「やばい!人狼ができなくなる!!」 洗面台で顔を洗って、シャコシャコ歯を磨く。 ただ前日に事前に準備していたため、思ったより時間がかからなかった。隣の部屋で寝ているママをしばらく見つめてから、二亜はリュックサックを背負って、水筒をぶら下げて家を飛び出した。 家を出たら右に曲がって、そこからかなりまっすぐ進む。布屋のところをまた右に曲がってまっすぐ行けば、すぐさまバジル森林に着く。 「小屋…宿…?」 恐る恐る森に足を踏み入れた後、二亜はしばらくそのままで居た。 左右上下を十分見回した後何も起こらないことを確認すると、二亜は胸を撫で下ろしながら歩き始めた。 進む度に暗くなっていく道に恐怖を覚えながらも、足を踏み出すことを止めなかった。 「怖がっちゃ駄目よ。これから始まるゲームの方が怖くて、スリルまんてんなんだから」 二亜は自分に言い聞かせながら、奥深くへと歩き続けた。と、その時だ。すぐ隣に、小さな小屋のような宿があることに気がついた。 二亜はそそくさと宿の戸を開けて、中に入っていった。 「わあ……」 何十年もの月日を経てたかのような、古臭い匂い。その匂いはとても良いとは言えないけれど、どこか懐かしさを覚えるものだった。 「ようこそ」 突然、背が高く大柄な女の人が、二亜の前に姿を現した。「こんにちは?」「こ、こんにちは…」 女の人はにっこり笑うと、二亜の肩をぽんぽん叩いた。 「ふうん、こんなにちっちゃな子も来るなんて。あなたの職業は何かしら?」 役職を聞き出そうとしているんだと、二亜にはすぐ分かった。 「私、実は占い師なんです…」二亜は嘘をついて、もじもじと言った。 「…そう。まあ、頑張りましょうね…さ、中へ」 女の人はそう言うと、長い裾を引きずりながら、二亜を茶の間へと案内してくれた。 「あ、こんにちは…」 茶の間にはもう既に、六人が集まっていた。 どうやら 村人が二人、占い師、霊媒師、騎士、吸血鬼、人狼の五職が一人ずつのようだ。 一見全員、普通の人の見た目をしている。だがこの中に吸血鬼や人狼が混ざっていると思うと、二亜は少しぞっとした。 最後の二亜が座ると、奥の方に座っていた男の人が言った。 「…ようこそ、"リアル人狼ゲーム"へ。 皆さん揃いましたので、早速始めたいと思います」
リアル人狼ゲーム
「田口二亜様 宛 はじめまして、二亜様。 突然ですが、"リアル人狼ゲーム"にご招待致します。 カルド村住在の二亜様には、その通り村人として参加して頂きたいのです。 参加しない場合は捨てて貰って構いません。もし可能でしたら、表記されている日付と場所に、時間通りに来てもらうことを願います。 七月八日…バジル森林の奥深く、小屋宿にて…午前六時三十分」 普通の女の子、二亜は、そう書かれた手紙をじっと見つめて、しばらく何度も読み返していた。 ようやく我に返ると、二亜は透き通るように白い頬を赤らめた。 「うそ…これ、本物!?」 そう。最近、二亜が通うカルド小学校で話題になっているのが、"リアル人狼ゲーム"なのだ。突然差出人不明から招待状を送られ、その日時に行くと本物の人狼ゲームができるらしい。 何より占い師や人狼など、本物の役職の人々がたくさん来るという。 証拠や体験談も何も無いけれど、誰が流した噂なのか、学校全体に広まっているのだ。 「本物…よね、やったああ!!」 二亜は跳んで喜び、目を輝かせながら言った。 「七月八日…待って、明日じゃん!?」 明日は土曜日。別に予定は無いけれど、ママに内緒で家を抜け出せるのかが問題だ。それに、バジル森林。 あそこは代々カルド村で、良くないものが潜む森だと恐れられてきた。実際、昔にそこへ遊び半分で入った子供たち四人組が行方不明で、未だに戻ってきていないという話もある。 「…………」 いくら怖い物好きの二亜でも、流石にそこへ入るのは躊躇った。 でも結局好奇心に負け、森林に入る事を決心した。 「…そんなの知らない。私はこの目で、はっきりと見たいんだもん!」 二亜はそう言うと、早速目覚まし時計と荷物の準備に取り掛かった。宿に泊まるなら水筒とか枕とか、そういうのが必要だと思ったからだ。 珍しく自分から荷造りをする二亜に、ママは小声で言った。 「あら、何かあったのかしら」
店主の休息
#3 赤い花のおちびさん 雑貨屋の店主は、そろそろ店の人手が足りなくて、誰か雇いたいと思っていた。 トロにも可愛い使い魔ができたと聞いたこともあり、その考えはさらに深まった。 だがお客様をわざわざ勧誘するのもどうかと思うし、少なくとも無理だろう。 店主は頭を悩ませていた。しばらくずっとそのまま考えていたが、やがてカラスの鳴き声が聞こえると同時に店を閉めに行った。 と、その時だ。 「ぴゅるる、ぴー!!」 シャッターの向こう側から、力強い声が聞こえてきた。 店主は一瞬顔をしかめて、でも元に戻すと小鳥に言った。「おや、貴方様は。赤い花のおちびさんですね」 「ぴー!ぴゅ、ぴゅーぴゅる…」小鳥は少し悲しそうに返事をすると、店主の足元に駆け寄った。 「やはりそうでしたか…ケン様は少々、罰当たりだったようですね」 店主は小鳥の頭を優しく撫でると、とっさにこんなことをひらめいたのだ。 「…もし良ければ、私の店の手伝いをしてくれませんか」
鏡の魔法
ミサは双子の女の子。正真正銘の、双子。 そのはずなのに姉のリサとは真逆の容姿で、両親も驚く程だった。 ミサは背が低くてちりちりとした髪なのに比べ、リサは背が高くふわふわとした髪質。それだけでなく、好みの色やセンスも真逆。そのせいでミサとリサは家でもあまり話さず疎遠なのだ。 リサは生まれつきスタイルが良く勉強もできて、クラスでも人気者だ。少し陰気で劣っているミサと違って。 最初は羨むだけだったが、ミサは段々と、リサの事を憎み、妬むようになって行った。 「双子であるはずなのに。リサはいいわよね、完璧で」 当の本人に直接そんなことを言ったこともある。 高校生になったミサには、好きな人ができた。リサのようにすらっと背が高くて、元気で、優しい人だ。 だがミサはひそかに想いを寄せるだけで、なにも出来なかった。ただでさえ友達が少なく陰気なミサだったから、きっと彼も落ち込むだろうと…そう思ったから。 だがそんなある日、机で文房具をひとりいじっていたミサの元に、リサがにこにこ顔でやってきた。 「ミサ。私ね、このクラスの人とお付き合いしたの。その人はね…」 リサがうきうきで発した名前はまさに、ミサの意中の相手だった。リサが細かいことを話し終わる前に、ミサは教室を飛び出した。 「ちょ、ミサ!?」 ミサは休み時間なのにも関わらず学校の階段を駆け下りて、校門を飛び出た。 「ううっ…!」なんて言ったら分からないもやもやとした気持ちになりながら、ミサはただひたすら走った。家やコンビニなんて、寄るつもりがない。 ミサは悔しくて、羨ましくて、妬ましかった。自分が一年もの間恋をしていたというのに、リサがそれを一週間で奪っちゃうなんて。一体あの時のあたしの時間とお金は、なんだったの? 背丈に合わないワンピースも、髪に合わないトリートメントも。 そしてミサは、こんなことを考えたのだ。 「あたしとリサが入れ替われたら」 もちろん出来るはずのない話だったが、ミサは現実逃避をして熱心に考えた… ミサがやっと考え終わった時、空は暗くなっていた。 冬なのもあり、いつもより日の入りが早くなっている。まだ五時だというのに。 ミサの目からは、涙が溢れそうになっていた。でもその涙はうるうるとするだけで、決して溢れ落ちることはなかった。 ミサが住宅街の電柱の傍でひとりたたずんでいると、視界の脇に、ふいに黄色い光が見えた。 どうやら、古びた一軒の雑貨屋さんのようだ。 お金を持っていなかったし、どの店に入っても追い出されると分かっていた。だがその店には言葉で表せないような、奇妙な感じが漂っている。まるでおいでおいでと、ミサを手招きしているようだった。 「……」 覚悟を決め、ミサは電柱の傍を離れて雑貨屋さんに向かった。 『チリン、リン…』ドアに付いたベルの音と共に、店のカウンターから男性がでてきた。 「いらっしゃいませ、お客様」宝石のような目を優しく細めて、その男性はミサにお辞儀した。そしてここが秘密のお店であること、お代は一番大切なものだということを教えてもらった。 話を聞き終わった時にはすっかり涙が消え、ミサは目を輝かせていた。ここの魔法の商品なら入れ替われなくとも、リサへの鬱憤を晴らせるのではないかと。 双子だということもすっかり忘れて、ミサは夢中で商品を眺め続けた。そしてついに、ミサの望み通りのものを見つけたのだ。貴族の館に置いてありそうな、金で縁取られた大きな鏡。ミサが見とれていると、店主が駆け寄ってきた。 「おっとお客様、それはとても危険です。うちの精霊気たちが一部間違えて作ってしまった、入れ替わってしまう鏡ですから!いい作用もひとつあったような気もしますが…今すぐお取り替えします」 どこからか、蝶々のような羽が生えた小さい女の子たちが出てきては、ペコペコとお辞儀をする。 店主が取り替えようと鏡に触れた時、ミサは普段出さないような大声で言った。 「ダメ!!あたし、どうしてもこれが欲しいの。ちょうどあたしが求めていたもの、これしか無いから」 ミサが決して揺らがない頑固な顔をしていたためか、店主は意外とすぐに折れた。 「…承知致しました。ですが十分に注意してください」 ミサがお代に渡すものは、もう決まっていた。過去にずば抜けた頭脳を支払った子がいると聞いて、真っ先に思いついたものだ。 「あたしの…この恋心を貰ってください」 店主は少し戸惑ったものの、すぐに切り替えた。「分かりました。成立です。この品物はもうお客様のもの。」その瞬間、ミサはうっすらと、自分から何か抜けていくような感じがした。 『リンリン…』一瞬、小さなベルの音が聞こえたような気がしたが、その考えを遮るように店主が言った。 「重いので、無理しないでください」 店主が手を叩くと、気付けばミサは家の前にいた。外は紺色で、星々がきらきら輝いている。周りには警察らしき人が、『ミサ』という名前を呼んでいた。 「あの…!」ミサが重そうな荷物を抱えて話しかけると、その人達はわっと集まってきた。 「どこへ行っていたのですか!?」ミサは買い物してきたと嘘をついた。ほっとした感じ警察の人達が、不思議なことに、ミサにこう尋ねたのだ。 「お姉ちゃんは見なかった?牧野リサ」 リサは帰ってきてすぐに、家を飛び出したらしいのだ。一人の警察が伝言のメモをミサに見せた。確かにリサの字だった。 「帰ってきてね リサより」 とても短い文章だったが、いつもより丁寧に書かれていた。ミサが何度も読み返しているうちに、遠くからリサが来るのが見えた。その手には、中くらいの包みがあった。ミサが持っている鏡が入った包と、全く同じ柄の。 「ミサ!!どこいってたの!?」リサの目からは、涙が零れていた。 「ママもパパも、私もみんな心配したのよ…急にいなくなっちゃうんだもん」 リサは確かに悲しんでいるようだった。「ごめんね、ミサがあいつのこと好きだってこと、ホントは分かってたの。私、づい浮かれぢゃっで…!」 リサはミサをもう一度強く抱き締めると、今度は笑って言った。 「私、ミサが羨ましかった」 ミサはどきっとした。リサが…あたしに?完璧なリサが? 「ミサが唯一仲良い男子、私の本命なんだ…それにね、お姉ちゃんで背が高いからって、私がなんでも分かってると思われるの。」 ミサははっとした。リサも自分と同じ気持ちだったのだと、気付かされた。 「それ何?」 ミサは鏡を後ろにすっと隠して、笑って言った。 「私、ほんとはね…!」
罰当たりのマグカップ
薔薇崎ケンは、それはそれは我儘な息子だった。 欲しいものは必ず手に入れる事が当たり前で、いらいらすると大声で叫ぶ。なんたって大金持ちの父と母と、妹のクララとたいそう大きなお屋敷に住んでいたからだ。 西洋の貴族のように豪華で優雅な暮らしをしていたケンは、家族の中でもとくに駄々っ子だった。 「この前さ、親父に最新のキャルクノロジー買って貰ったんだぜ」キャルクノロジーというのは、今流行っているお高いシリーズのゲームだ。 屋敷のロビーに友達を呼んで遊ぼうと言っても、口から零れるのは自慢ばかり。 友達はそんなケンをだんだんと憎んで行き、次第に離れていくようになった。 ある日ケンは、父様からお叱りを受けた。 「学校でも自慢ばかりしているって、先生から聞いたぞ。ちゃんと勉強しないとって、何度も言っているだろう…」 ぺちゃくちゃと愚痴を吐く父様に、ケンは腹が立った。そしてこう言ったのだ。 「自慢ばかりして、何がいけないんだ?オレは薔薇崎家の長男だぞ。みんなより偉くて当たり前じゃないか。」 「なに馬鹿げたことを言っているんだ。生まれ育った家だけで、人の身分が決まるわけないだろう」 次々と口から飛び出る文句。父様はついにムキになって、ケンに罰として薔薇崎家の家政の書類を全て、婆様の家へ届けるように言った。そんなに大した距離じゃなかったが、ケンにとってこれほど面倒な仕事は無かった。 「しっかりと反省することだ」 そんな父様の言葉も無視して、ケンはいらいらしながら家を出た。 薔薇崎の名札が貼られた正門を潜ろうとすると、妹のクララが後を追いかけてきた。 「兄様!!その書類、重いでしょう?私も手伝います」 ケンはにっと笑った。クララがこの件に関連すれば、最悪責任を押し付けられるからだ。それにクララはまだ七歳。ただでさえ純粋でぽわぽわしているため、言い返すことは不可能だろう。 「助かるよ。じゃあこれの半分、持ってくれるか?」 「はいっ!」 もう半分は持たないといけないが、これなら負担は軽くなる。途中で迷子になって、クララと親父たちに心配かければ…!きっとクララは怒られて、親父はオレに謝ってくるだろう。 くすくすと笑うケンを、クララは不思議そうに眺めていた。 「大丈夫?重くない?」 「思いけど…大丈夫ですっ…!」クララがふらっとバランスを崩した。 「今だ!!」ケンは持ち前の運動神経を利用して、隣の通りへさっと走り去った。 「よし……これで!!」ケンがもう隣の通りへ行こうと、足を踏み込んだ時だ。通りの曲がり角に、ちらりとお店が見えた。こんな所へ寄って行くつもりなんて微塵も無かったが、ケンは妙に、魅力を感じ取った。普通のお店ではなく、どこか謎めいた特別なお店。ちょっと見えただけでも、そのオーラは伝わってくる。 曲がり角の死角だし、おそらくクララにもバレないだろう。ケンはそそくさと店の方へ走り出した。 『チリーーン!!!』 うるさく耳に響くベルの音。それはまさに、買ったばかりの新品の音だった。 「これは失礼しました、お客様。いらっしゃいませ、ここは選ばれた人しか来れない、秘密の雑貨屋です」 ぺこりとお辞儀する店主の瞳は、ちらちらと翡翠のように輝いたミントグリーンだった。その瞳からは、しっかりとした威厳が漂っている。 「秘密の雑貨屋?こんな安そうな店が?ありえない、何らかの詐欺グループだろ。訴えるぞ」 ケンは元々ファンタジーなどを嫌っていた面もあり、雑貨屋の事を全く信じていなかった。「お気持ちは分かりますが、ここは本物です。お客様が惹かれたのも、きっとここの魔法が関わっているからなのです。」 店主はゆっくりと、この店についての説明を始めた。ここの品物は皆持ち主と交換された『一番大切なもの』で、購入するためには自分自身の『一番大切なもの』が必要なのだという。半信半疑だったケンだが、しばらく考えて商品を選んだ。赤い花にとまった小鳥が描かれた、とても色鮮やかなマグカップだ。いきいきとしたその絵の小鳥は、今にもピューっとさえずりそうな程美しい。 ケンはこんなものには興味が無い。売ってお金にするつもりだった。 「そちらは…いかにも美しいですよね。とある画家さんが、花柄のコースターと引き換えに置いていったものです。」 「綺麗ですね、とても。」思ってもいないことを口にしたためか、ケンは無意識にカタコトになってしまった。 「ではお代は……」「この書類で」ケンは即答で言った。 「お客様、一番大切なもの、ですよ?」店主がぎらりと、一瞬ケンを睨んだ。 いくら魔法魔法と言っていても、この嘘は見抜けないだろう。そもそもなぜ一番大切なものじゃないといけないのか? この詐欺グループ、「秘密」を暴いてやる!! 「僕の家の一番大切な家政の書類です。お母さんとお父さんが今にも死んでしまいそうで……僕は、生まれ育ったこの家が、一番大切なものなんです!!」 いかにも物語の悲劇のヒロインが言いそうな台詞を、ケンは嘘として使った。 店主は少し沈黙を作った後、先程とは違う低い声で言った。「分かりました。このマグカップはお客様のもの。しかし、くれぐれも小鳥さんを大切にしてくださいね」 店主がぱちんと手を叩くと、気付けばケンは店の外の、クララと歩いていた通りに出た。 ケンの前で、クララがわんわんと泣いている。どうやら帰り道が分からなくて迷子のようだ。空はいつの間にか黒くなりかけている。ケンは絶好のチャンスだと、クララにそっと話しかけた。 「クララ、ここに居たのか。ごめんな、オレも道に迷っちゃって」 「にいしゃまあ…!ぐらら、こわがっだあ…」ケンの膝に泣き崩れるクララの頭を撫でて、ケンは言った。 「本当にごめん…、帰るよ」早く帰りたかったケンは、無意識にクララを急かすように言った。 クララはちゃんと、山盛りの書類を抱えるように握っていた。あまりにも泣いたあまり、ケンの書類が無いことにも気が付いていないようだ。ケンは作戦通りに、クララの書類をひょいと持った。持った…というか、奪い取ったくらいの強さだった。 「重いだろう?オレが持つよ、ごめんな」クララはにっこりと笑って、ケンと共に家へ向かった。 『ギィ…』 重い屋敷の戸を開けた後、ケンは父様のところに、すぐさま駆け寄った。 「親父、クララが書類を半分、持ってくれたんです」 「……はい!」純粋なクララは自信満々に答えた。 「でも残念なことに、クララが持っていた半分の書類をなくしてしまったんです……」 えっ、とクララは青ざめた。「兄様?そんな…クララ、ちが…!」 「なに!?」クララの言葉を遮るように、父様が怒鳴った。 「クララ、思いやりはいいことだ。だが、ちゃんと責任を持ちなさい!!」 おそらく普段温厚な父様が、こんなにもクララを怒ったことはないだろう。クララの顔は青ざめていて、涙が溢れそうになっている。 「まあ!あの書類を、クララが!?」母様も一緒になって、クララを叱りつける。 「あれは私と父様が、一ヶ月を削って作成した書類なのに!!」 ケンは気持ちが良くて仕方がなかった。計画通り、と後ろで泣くふりをして笑っていた。 と、その時だ。 「ぴゅーぴゅるるー、ぴー…」マグカップが入った小包から、小鳥のさえずりが聞こえてきた。きっと描かれた小鳥の声だと、ケンにはすぐに分かった。バレたら危ないと、マグカップをごそごそと奥に入れて、しっかりと包の蓋をした。が、次の瞬間、小鳥がこんなことを歌い出したのだ。 「嘘つきケン、ホントは自ら剥ぎ取った 妹の書類を剥ぎ取った 嘘つきケン、ホントは計画立てていた 店主の約束大やぶり、マグカップもお金のため 嘘つきケン、自分のことしか考えず ぴゅーぴゅーぴゅるり、罰当たり」 その瞬間、ケンは自分の腕がざらざらしているのを感じた。 服の中を覗いてみると、なんと体全体に、魚のような褐色の鱗が広がっていくのだ。 「きゃああああああっ!!」 十一歳の薔薇崎家長男、ケン。自分が一番偉くて賢いと大威張り。 欲に負けて、罰が当たりました。ぴゅーぴゅーぴゅるり、ぴゅーぴゅるる
店主の休息
#2 ちょっと変わったお客様 雨が音を立てて地へ散り着く昼。いつも通り店主が店を閉めようとすると、突然、卵色のレインコートを羽織った少女が駆けこんできた。 「すみません」長い前髪で顔は見えない。身なりや背丈からして十二くらいだろう。 「危ないですよ、こんな時に。トロさん、何の用ですか」 店主はこの少女を知っていた。なにせ同じ秘密の魔法を扱う、数少ない者の一人だからだ。 「雑貨屋さん、ちょいと取引しませんか」前髪の下で、にやっと笑う口が見えた。「突然言われても困りますよ、そういうのはもっと事前に…」店主の言葉も聞かず、トロと名乗る魔法師は傘を置いて、そそくさと店内へと入っていった。 『チリーン』 「このベルもう古いから、変えた方がいいんじゃないの?」 入った瞬間からトロは文句ばかり。これだからと言わんばかりに、店主は顔を手で覆った。 小さな幼い子供の声。向こうは自分よりちょっと年下の数千年生きた魔法師だと言うことを、トロはよく忘れさせる。 「はあ…仕方ないですね、ひとつだけですよ」 トロはレインコートををさっと脱いで、店の奥へと入っていった。 「あ〜!これいい!でもこっちもな〜、あっ、あれも!!」トロが中々帰らないので、店主が声を掛けようとした時だ。 長い前髪をかきわけると、トロはぱっとした表情で言った。 「これだ!!私が欲しかったもの、欠けていたものは!!」 トロが両手でつまみ上げていたのは、小さな水晶がところどころにはめ込めれた、それは見事なブレスレットだった。 「この水晶、持ち主の家族らしき人の優しい怨念が籠ってる…素晴らしいわ」 店主はふと、鼻でふふっと笑ってしまった。あのブレスレットはキャンドルと交換されて、キャンドルは髪飾りと交換されて…髪飾りは確か、ぬいぐるみだったような……そんな事を思い出して、少し微笑ましかった。 「ありがと。お代は明日渡すよ」 満足そうなトロを見て、店主は少しにやけて手を振った。トロを帰す時に開けたドアからは、虹色の光が漏れていた。いつのまにか雨はすっかり止んでいて、空は晴れ渡っていた。 店主はぐーっと伸びをすると、また閉じかけのシャッターをバサッと開いた。 「こんなに気分がいい日はきっと、他にない。ちょっとだけ延長だ」
お知らせ
最近放置気味で、すみません💦 これからは復帰したいと思います!! 今まで作品の更新を待っていた皆さま、すみませんでした(;_;) 明日からは更新するので、是非チェックしてください🙌 これからもよろしく!!