ヒューマ

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ヒューマ

不定期で投稿しています。 表紙は生成AIやアイコンメーカーです。 感想等していただけるとモチベになります。 よろしればお願いします

旧世の書庫の管理人

5話 夕暮れ影を映す 夜…イリアが寝静まった後のこと。 空はシャープペンを手に取りノートを広げ今回の件を書き起こしていた。 【怪事件。  ここ数ヶ月やたらと救急車を襲撃する事件が発生していた。  中に乗っていた患者は今のところ全員死亡。  それが原因で救急車はお金を払わないと使えない様になった。  今思ってみると今回の件と類似する点がある。  それは、傷だ。  今思うと救急車が襲撃された時の救急車についていた傷と飯塚沙織さんの部屋中にあった傷似ている気がする。  それに、警察が教えてくれた情報も類似する。  事件現場には必ず何かの影を見た人がいる。  僕も実際に見たから間違いない。  この2点。 時間帯はバラバラ。  同一犯の犯行と見ていいと思う。】  本当は事件のことは警察に任せて解決を待てばいいのだが、依頼者が亡くなったこともあり空は気になって仕方がなかった。  スマホの画面を開くと時刻は深夜2時を回っていた。  (イリアと買い物に行く予定だからな。流石に寝るか。)  空はペンを置きノートを閉じるとベッドで横になる。  次第にやってきた眠気が空を夢の世界に誘った。  ______  1月21日  翌日、空はスマホのアラームで目を覚ます。 「んー……あー朝か……」 と体を起こす。 隣ではイリアが寝ていた。  スマホに手を伸ばしアラームを止める。 すると、イリアはもぞもぞと動き出し起き上がった。 「おはよ……空……」 と目をこすりながらイリアは言う。 「おはよう、イリアよく眠れた?」 と空は笑顔で聞く。 「うん。」 とイリアは笑顔で答える。 「それは良かったよ。朝ごはんの準備をしてくるから着替えたら顔洗っておいで。」 と空はベッドから降りてリビングに向かった。 そして、空が朝食を作り終えてテーブルに置いた頃、顔を洗い終え身支度を整えたイリアがリビングにやってきた。 「イリア、座って。朝ごはんできたよ。」 と空は席に着くよう促す。 「うん!」 と言ってイリアは椅子に腰をかけた。 2人は手を合わせていただきますと言い朝食を食べ始めた。 そして、食べ終わると出かける支度を整えた2人は再びリビングに戻ってきた。 「じゃあ行こうか。」 と空はイリアに言う。 「うん!」 嬉しそうに答えるイリアに空は微笑む。 2人は玄関で靴を履き家を出る。 空が鍵を閉めるのを確認したあと歩き出す。 イリアは空の手をしっかりと握っている。 2人は近所のショッピングモールに向かう。 服屋に入ると空は適当に服を選ぶ。 「イリア、これとこれどっちがいい?」 と空が聞くとイリアは2つの服を交互に見比べる。 そして、 「どっちも!」 と返ってきた答えに空は思わずくすっと笑う。 「じゃあ、両方買おうか。」 空は服をかごに入れると、 「ほかにいいのがないか見ておいで。僕ここにいるから。」 と言った。 「わかった。」 とイリアは素直に答えた。 空がイリアを待っていると、 「誰です、さっきの子。」 背後に一人の声が聞こえた。 「いきなりなんだよ。ってお前か。」 と空が振り返るとそこには、 「久しぶり。」 高科亜蘭がいた。 「何でお前がいるんだよ?」 と空は尋ねる。 「偶然ですよ偶然。」 と亜蘭は答える。 ______ 『高科亜蘭(17歳)男性。 日本人の高校生。 コンピュータをいじるのとオカルトが好き。 空に依頼をしたことで接点を持つ。 空に憧れているらしく、出会う度に何でも屋に入れてくれと懇願して来る。 毎回断る。 空的にはいいやつだとは思うが懇願してくるのはうざい。』 ______ 「偶然か?」 と空が尋ねると、 「まぁ細かいことはいいじゃないですか。」 とはぐらかされた。 「で、ここで何してるの?」 と亜蘭は聞く。 「見てわかんねえのか?服選んでんだよ。お前こそなにしてんの?」 と空は答える。 「この前の事件見ました?女性の殺害事件。」 と亜蘭は聞く。 「見たよ。というか見たも何も被害者の飯塚さん、依頼者だったんだよ。」 と空は答える。 「そうでしたか…。それでなんですけどねその飯塚さんの家調べたんですよ。」 と亜蘭は話を続ける。 「で?」 と空は相槌を打つ。 「調べたら結構面白いこと分かりまして……まぁ詳しくはこれを見てください。」 と言って亜蘭は1枚の写真を渡してきた。 家の部屋の一部だと思われる写真だ。 だが、写真のに写る部屋は大きな爪痕のようなもので傷だらけで原形をとどめていない。 「これ飯塚さんの部屋です。」 と亜蘭は言う。 「お前家に入ったのかよ!?」 と空は驚く。 「人聞きが悪い、ドローンで撮ったんですよ。」 と亜蘭は答える。 「で、この傷。これ猫又だと思うんです。 」 と亜蘭は言う。 「猫又?」 と空は聞き返す。 「昔から本に出てくる妖怪です。」 と亜蘭は答える。 『猫又:日本各地に伝わる妖怪。 猫が年を経て尾が2つに裂け、人の言葉を理解し話すようになり妖怪となると伝えられている。 山に住み里に降りてきては人間を喰うとされていた。』 「その猫又ってやつが犯人とでも言いたいのか?そんなわけないだろ。オカルトの見過ぎでおかしくなったのか?」 と空は言う。 「そこまで言う必要ないでしょ。でもまぁ猫又はいると思うよ。だってこの写真は明らかに人がつけたもじゃないし。」 と亜蘭は言う。 「まぁ、この写真は貰っておくよ。」 と空は言い亜蘭から写真を受け取った。 「で、空さんの隣の人は?彼女さん?」 と亜蘭は尋ねる。 いつの間にかイリアは服を数着持って空の隣に立っていた。 空がイリアの方を見るとイリアは首をかしげる。 「お前には関係ないだろ。」 と空は答えるが、内心焦っていた。 (別にバレてもいいか)と考えつつもバレたら面倒なことになりそうだったので一応誤魔化しておいた。 「ふ〜ん。まぁいいけどね。あ、すみません用事があってそろそろ僕帰りますね。また今度!」 と言って亜蘭は去っていった。 イリアが選んだ服を買い物かごに入れ、レジで会計を済ませて外に出る。 「ふぅ、結構買ったな。」 と空は呟く。 「ねー早く帰ろ!」 とイリアは空の手を掴んで引っ張る。 「わかったから、そんなに引っ張らなくてもいいって。」 2人はショッピングモールを出ると昨日の依頼を済ますと帰路につくのだった。 帰り道、空はスマホに表示される時間を見ながら思う。 (すっかり日が暮れちゃったな。) 辺りが夕焼けで赤く染まっており、そろそろ日が沈みそうだった。 「イリア、暗くなりそうだし急ごう。」 と空は言う。 「うん。」 とイリアは答えた。 家に到着した空は玄関にまで漂う異臭に気づく。 「イリア、そのままここにいて。」 と空はイリアに言って家の中へ駆け込む。 リビングの扉を開けるとそこには、昨日見かけた何かに酷似している生物がいた。 いや、今ならわかる。 二足歩行の2m近い身長、焦げ茶色の体毛、広い肩幅と獣の耳、そして何より二股に分かれた尻尾。 (猫又…) こんなすぐに遭遇するなて思っていなかった、それどころかいると思っていなかった。 さらに空は目に映る猫又に一匹の猫を思い浮かべた。 (おこげに似てる。) 空は猫又に警戒しつつも近づき声をかける。 「君は一体?どこから来たの?」 と問いかけるが返事はなく空のことを睨みつけるだけだった。 そして、その次の瞬間いきなり飛びかかってきた。 「うわっ!」 と空は驚きつつも咄嗟に横に飛んで回避した。 (あっぶない……) と思ったのも束の間で猫又はまた飛びかかろうとしていたので今度は避けることができずに押し倒されてしまった。 「ちょっ!?まっ!」 と空は声をかけるが猫又は止まらず空の肩に噛みついてきた。 「痛っ!!」 という声と共に激痛が走る。 空が痛みで怯んでいる隙に猫又は空の右腕に爪を立てる。 「ぐぅっ!」 今度は腕を切り裂かれた。 焼けるような痛みに空は顔をしかめる。 空は耐え切れず地面に転がりながらどうにか抜け出した。 「空!」 とイリアは叫び、空の元へ駆け寄る。 「大丈夫!?」 と心配しながら猫又を警戒して睨む。 「イリア、待っててって言ったでしょ。」 空は痛みに耐えつつなんとか立ち上がる。 腕を見ると切られた場所から血が出ていた。 傷口はとても深く明らかに重症だ。 猫又は唸り声をあげながらゆっくりと近づいてくる。 (まずいな……血が出てるしもうそんなに長くは持たないぞこれ……) そんなことを考えていた矢先、突然猫又の動きが止まるとじっとこちらを見つめている。 その目線はイリアを示していた。 イリアは向けられる視線に嫌悪感と既視感を覚える。 そして、猫又は突如姿を消した。 「消えた……」 空は呟くと同時に地面に倒れた。 「空!空!」 イリアの呼びかけに応じることはなく空は完全に意識を失った。

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4話 猫と爪 1月20日 (僕には最近悩みができた。 この世に生まれて20年、恋愛をしたことがないわけじゃない。 中学校の時はそれなりにはモテていたからクラスの女子から告白されたことだってある。 高校生になってからは彼女がいたこともある。 それに、僕はゲームが好きだ。 ジャンル問わずいろんなゲームに手を出している。 もちろん恋愛ものもいくつもプレイした。 僕は男である以上、同人誌だって読んだことがあるし時にはそういう動画だって見たことがある。 たがら、女の子との接し方はそれなりにはわかっているつもりだ。 いや、つもりだった。) スマホのアラーム音が部屋に響き渡り朝を知らせる。 ぬくもりを感じる布団から手を伸ばし手当たり次第にスマホを探す。 やっとの思いでスマホに触れたのを感じるとアラームを止めた。 寒いのを我慢して体を起こしスマホを手に取る。 「今日は土曜日か。もうちょっと寝よ。」 とここで違和感を感じる。 下半身に感じる妙なぬくもり。 空は察しがついていた。 掛け布団をめくると心地よさそうに寝ているイリアがいた。 (まぁた僕のとこで寝てる。 まだ約5日だよ!?兄弟だとか同棲しているカップルだとかが一緒に寝てるのはわかる。 でも、僕の場合はそうじゃない! 数日前に倒れていたところを助けただけでなんの接点もないのに 堂々と僕の側で寝てるんだよ。 イリアには空き部屋を貸してあげてそこに布団も用意したよ。 でも、朝になったらここにいる。 わけがわからない。 まるで、ハンバーガー屋に言っておにぎりを頼むくらいわけがわからない。 それに、考えてみればイリアになんの了承も得ずに僕の家で過ごさせている気がする。 それは後で聞くことにしよう。 それにしても、心地よさそうに寝るもんだよ。 寝顔が可愛いからここ数日の僕は完全にイリアが僕の側で寝ているのを気にしていない。 ロリコンではない。 説得力の欠片もないが、ロリコンではない。 可愛いものは好きだ。 推しだっているしアイドルのライブにも行く。 それに犯罪を犯そうなんて思わない。 未成年に手を出して捕まった奴らを散々と見てきたからな。 だから、もう一度言おう、説得力の欠片もないがロリコンではない。 ロリコンではない。 大事なことだから何度でも言えるぞ。) 空はアラームを設定し直すと再び夢の世界へと入っていた。 ハハッ。(某ネズミ感) イリアが目を覚ましたのは空が起きる少し前だった。 「ん、ふぁぁー」 と大きな欠伸をすると体を起こした。 そして、自分のいる場所を確認するように周りを見渡す。 空のスマホからアラームの音が鳴っている。 「ん、んんー」 と空が目を覚ましスマホをいじりアラームを止める。 「おはよう、イリア。よく眠れた?」 空は寝ぼけながら言う。 「お、おはよう。空。うん。」 イリアは顔を赤くしながら言う。 「うん。ならよかったよ。」 そして、スマホの画面で時間を確認する。 「9時か。朝ご飯作るか〜」 空はベッドから起き上がり伸びをしながら言う。 「私も手伝う。」 イリアもベッドから立ち上がり元気よく返事をした。 「ありがとう。」  と空が言い2人でリビングに向かった。 2人は朝食を済ませたあと、ソファでくつろぐ。「ねぇイリア。」 と空が口を開く。 「なに?」 とイリアが返事をする。 「イリアはここにいたい?記憶が戻るまでか両親が見つかるまでか、いつまでかはわからないけど。そのことを聞かずにいたから本当は嫌なのかもしれないと思って。」 と空がイリアに聞く。 「嫌じゃない。空、優しい。一緒にいると安心。」 とイリアは即答する。 「なんか、そう言われると恥ずかしいな。」 と空は照れる。 (たった5日でここまで慣れるとは思ってもなかったな。思ってみれば助けた日も警戒心しかありません!って感じてはなかった。両親から嫌われてはなかったってことなのかな。) 「わかった。じゃあ、これからもよろしくね。」 と空はイリアに言う。 「うん!」 とイリアは元気に返事をした。 (やっぱり可愛いな〜小動物みたいだ。) 「あ、そうだ。」 と空は立ち上がり棚を漁る。 「イリア、これ。」 空は棚から取り出してきたスマホをイリアにわたす。 「これ本当は仕事用だけどイリアにあげるよ。」 と空はイリアに言う。 「いいの?」 とイリアは不思議そうに聞く。 「うん、いいよ。」 と空は答える。 「ありがとう。」 とイリアは嬉しそうにスマホを抱きしめる。 ((꒪ཀ꒪*)グフッ) 空はイリアに使い方を説明する。 イリアは1度でスマホの使い方を覚えた。 「空、ありがとう!」 「どういたしまして。」 ((* ́ω`*)) 最新型にもなると機能が増えたこともあり気づいたらお昼を回っていた。 「あ、もうお昼か。イリア何か食べたいものある?」 と空は聞く。 「空が作るものならなんでも美味しい!」 とイリアは元気よく答える。 ((* ́ω`*)) 2人は昼食を済ませるとソファに座りテレビを見ていた。 「ねぇ、イリア。」 と空はイリアに声をかける。 「なに?」 とイリアは答える。 「一緒に買い物行かない?一応買ったは買ったけどそれだけだと足りないし。服とか他にも必要な物を買いに行こうよ!」 と空は提案する。 「行く!服欲しい!」 とイリアは即答する。 「じゃあ明日行こっか。」 と空は提案する。 「うん!」 それから1時間ほどが過ぎた頃、空のスマホに電話がかかってくる。 空はスマホを手に取り電話にでる。 「はい、もしもし。」 『何でも屋さんの電話であっていますでしょうか…』 と電話の相手は言う。 「はい、そうですよ。依頼でしょうか?」 と空は聞く。 『はい、そうです。依頼をお願いしたいのですが……お時間の方はよろしいでしょうか?』 「大丈夫ですよ。」 と空は答える。 『ありがとうございます!では早速なんですが……』 それから1時間ほど空たちはその依頼主の依頼内容を聞いたりしていた。 「なるほど、わかりました。明日までに準備しておきますので明日の昼頃にまた連絡しますね。」 と言って電話を切る。 そして、イリアの方を向き言う。 「ごめん、イリア少し用事が…。」 と空は言葉が詰まった。 テレビのニュースの放送に意識が持っていかれてしまった。 それもそのはず、 『今日未明、東京都の住宅で遺体が発見されました。死亡したのは東京都在住の飯塚沙織さん26歳。…』 ニュースキャスターの言葉と目に映る警察と鑑識、ブルーシートの光景に 「は、」 と、こぼしてしまった。 イリアはテレビに目を向けニュースキャスターの言葉を聞く。 『被害者の飯塚沙織さんの遺体には大きなひっかき跡のような傷がいくつも見られ警察は熊手のようなものによってつけられたのではないかということです。』 「ねぇ、空……これどういうこと?」 とイリアが聞く。 「ごめん!なんでもないから気にしないで!」 と言って空は自室に向かう。 (なんで、どうして!?) と頭の中で疑問を浮かべる。 そして、すぐにハッとなり頭を左右に振る。 (今はそんなこと考えている暇はない!早く準備しないと!) 空は部屋着から外着に着替えてリビングに戻る。 「イリア、僕ちょっと出てくる。」 と空はイリアに言う。 「うん。わかった……」 とイリアは答えるが納得いかないような顔をしていた。 「何かあったらすぐに連絡して。」 と言って空は家を出た。 空は足早にとある場所へ向かう。 向かった先は亡くなった飯塚沙織さんの自宅だった。  沙織さんの家では警察が捜査をまだ続けているようだ。 空は警察の人に声をかける。 「すみません…」 と空を訪ねてきた刑事に尋ねる。 「何かご用ですか?一応今は捜査中ですので……。」 と声をかけられる。 (まぁそうなるよね……) と思いながら空は答える。 「何でも屋を営んでいる空・テトラトと言うものなんですけど。」 と空は警察に向かって言う。 「あ〜君があの何でも屋さんね。話は聞いているよ。ちょうどこのあと君のところに事情聴取しようかと思っていたところでね。捜査協力してくれるかい。」 と警察は言う。 「ええ。もちろん。」 2時間ほどが過ぎた頃、空はある情報を聞き出すことができた。 (これで少しは進展したかな。あとはこれをどうするかだけど……今は考えても仕方ないし一旦帰るか……イリアにも心配させちゃったし早く帰ろう) 警察に提供できそうな手がかりがないか気になり、帰りにもう一度沙織さんの自宅へ戻った。 不法侵入になるかもしれないと思いつつも敷地へ足を踏み入れようとする。 すると、屋根の上に何かが立ちすくんでいるのが見える。 夕日ではっきりとは見えないが人とはどこか違う何かのように見える。 空は見間違いかと思い目を擦り再び目を開けると既にその何かは消えてしまっていた。 「なんだろう。見間違いかな……」 と不思議に思いながらその日は沙織さん宅を後にした。 イリアの待つ空の家に到着した空は鍵を使い扉を開ける。 「ただいま〜。」  と空は玄関で靴を脱ぎリビングへ向かう。 「空!おかえり!」 とイリアは嬉しそうに空の帰りを出迎える。 そんなイリアの腕の中には一匹の猫がいた。 「イリア。その子はどうしたんだ?」 と空はイリアに尋ねる。 「あそこから入ってきたの。それで一緒に遊んでた。」 とイリアは窓の方を指差す。 「そっか…」 と空はリビングに向かった。 (どうしてこんなところに猫が?この家の付近は見ることないのに。) と空は思う。 「野良猫はどんな病気を持ってるか分からないから可哀想だけど逃がしてあげて。その後、手を洗うんだよ。」 と空が言うと「はーい、」と少ししょんぼりとしながら答えた。 「じゃあね猫さん。」 イリアは窓に猫を置くと猫はそそくさと去っていった。 「ごめんなイリア。今日は美味しいもの作ってあげるから。」 空はイリアの頭を撫でながら言った。

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3話 白銀の少女Ⅲ 1月15日 翌朝空はベッドの上で朝を迎える。 (今日は依頼あるし早く準備しないとな~) 起きようとした時、ベッドに重みを感じて起き上がることができないことに気づく。 (なんで重みが……) 恐る恐る視線を横にするとそこにはイリアが空の腕を枕にして眠っていた。 空はイリアを起こさないようにそっと腕を抜こうとするが、がっちり掴まれていて抜けない。 (起きてる?) 空はイリアを起こさないように頭を撫でると気持ち良さそうに頬笑む。 (可愛いな……) しかし、いつまでもこうしている訳にはいかないのでイリアを起こすことにする。 「イリア起きて~」 空は小声で呼びかけるとイリアは目を開く。 「あ、起きたね。」 空が声を掛けると寝ぼけた顔で空を見つめる。 そして状況を理解したのか顔を赤らめて急いで起き上がる。 「ご、ごめんなさい!」 「いや、大丈夫だよ……」 昨日、お風呂に入れてあげることを忘れていた空はイリアに朝風呂を入れてあげる。 その後、朝食を食べ終え、身支度を整えると空は玄関で靴を履いていた。 「それじゃあイリア、僕仕事行くからここで休んでてね。」  空はドアを開けようとするとイリアは空の服の袖を掴む。 「どうかした?」 空は屈んでイリアに視線を合わせるとイリアは口を開く。 「空さん……私と一緒にいてくれませんか?」 「え?」 突然の頼みに空は固まってしまう。 「私、一人は不安…」 (そうだよな……かと言って依頼があるし…) 「わかった。でも、僕も仕事があるからついてくる?」 空がそう言うとイリアは嬉しそうな表情を浮かべる。 「ありがとう。」 (まぁ、家に1人置いていくのも心配だしな) 「それじゃあ、行こっか。」 空はイリアに手を差し出すとイリアはその手を取る。 (流石に服1枚は寒いよな。服屋でイリアの為に何か買うか) 空はイリアの手を引いて歩き始めた。 「ここがこの街で一番大きい服屋だよ。何か欲しいものがあったら言ってね。」  空はイリアに服屋の中に入るよう促す。 「は、はい。」 イリアは返事をした後、空と店の中に入る。 服屋の中に入った空とイリアは服選びを始めていた。 「イリアどれが似合うかな~」 空はイリアに似合いそうな服をいくつか持ってきてはイリアに尋ねる。 「これなんかどうかな?」 空は黒い長袖のシャツを見せる。 すると、イリアは気に入ったのか頷く。 「じゃあ、これと……」 (喜んでくれるなら良いんだけど) 空は服を何着か持ってくると試着室に入って着替えてもらう。 「どう?苦しくない?」 「うん、大丈夫です。」 試着室のカーテンからイリアの声が聞こえる。 (少しサイズが大きかったかな?) 空のコーディネートは全てがサイズが大きい服になってしまった。  (まぁいっか、服のセンスはそんなに無いし……) そんなことを考えていると着替え終わったのかイリアが出てくる。 (おぉ、似合ってるな。) 黒のシャツの上に着る白のパーカーはイリアにとっては少し大きくズボンが隠れている。 「気に入った?」 「うん。」 イリアは嬉しそうに返事をすると空は近くにあったTシャツを数枚買うことにした。 (買い物って楽しいな~) そんなことを考えているとイリアが話しかけてくる。 「これ、ありがとう……」 イリアが空の服の裾を掴む。 「どういたしまして」 (喜んでくれて何よりだ) 会計を済ませて洋服屋を出るとイリアは空に話しかける。 「あ、あの……ありがとうございます。」 「気にしなくて良いよ。それじゃあ僕の仕事に取り掛かるわけだけど1日かかると思うけど大丈夫?」 空が尋ねるとイリアは頷く。 「うん。」  空はイリアを連れて本来の目的の飯塚沙織さんの依頼である、沙織さんの飼い猫『おこげ』の捜索に取り掛かった。 「うーん……いないなぁ……」 地図で目星をつけたあたりを2時間ほど探し回ってもおこげは見つからなかった。 「ここじゃないか…」 空は辺りを見渡して肩を落としている。 (さて、どうしようか……) 空は腕を組んで考える。 「空さん。」 空が悩んでいるとイリアが話しかけてくる。 「ん?どうしたの?」 「そろそろお昼の時間。」 (あ、もうそんな時間か……) 空がイリアに言われて空を見ると太陽は真上まで昇っていた。 (確かに腹減ったな……) 「そうだね。どこで食べようか……」 と、考えていると丁度良いところにパン屋があった。 「あそこで買って公園で食べよっか!」 空はイリアの手を引いてパン屋に入る。 パンを買うと空はイリアと一緒にベンチに座ってパンを食べ始める。 「美味しいね。」 空はパンを食べながらイリアに尋ねる。 「どう?」 イリアは頷いてパンを一口食べると幸せそうな表情を浮かべる。 (気に入ってくれたみたいでよかった~) 昼食を終えイリアと話しながら地図と写真を見返す。 (目星をつけたところにはいなかったな…) 空はため息をつく。 「さて、どうしよう……」 空が考えているとイリアは空の服を引っ張る。 「ん?どうかした?」 空はイリアに問いかける。 「あそこ…」 イリアが指をさす先には木の上で寝ている猫の姿があった。 (あの色、模様…おこげだ!色が似てて気づかなかった。) 「ありがと!助かったよ!」 空はイリアに礼を言うと地図と写真をベンチに置くと木に登り始める。 「よいしょっと……」 空はおこげの近くに行くと、おこげの横に降り立つ。 (さて、どうやって捕まえようかな……) すると、眠っていたはずのおこげが立ち上がり威嚇し始める。 空が少し近づくと更に威嚇を強める。 「怖がらなくて大丈夫、こっちにおいで。」 空は両手を広げておこげに話しかける。 しかし、おこげは威嚇を辞めない。 (どうしようか……) するとイリアがいつの間にか木の上に登っていておこげの目の前に来ていた。 (いつの間に!?) イリアはおこげの頭を撫でながら話しかける。 「怖がらなくて良いよ……」 すると、おこげはゆっくりと警戒を解き始めて空の元まで歩いてくると丸くなって寝始めた。 空はそっと抱き上げるとイリアに声をかける。 「ありがとう!」 (イリアがいなかったらどうなっていたことか……) 空はおこげを抱いたままベンチに戻り、おこげを膝の上に乗せて頭を撫でる。 「さて、そろそろ戻ろうか。」 「うん。」  空はおこげを抱きかかえるとイリアと手を繋いで何でも屋へ戻った。 空はその日のうちに沙織さんへ電話をかけ報告をする。 「はい、飯塚沙織です。」 電話口から女性の声が聞こえる。 「依頼されたおこげのことなんですが、無事保護することができました。」 空がそう言うと電話の向こうから喜びの声が聞こえてくる。 「それはよかったです!本当にありがとうございました!」 その声色から本当に喜んでいることが伝わり空は頬を緩ませる。 「いえいえ、それでは僕はこれで失礼しますね。」 そう言って空は電話を切った。 (ふぅー……とりあえず仕事完了だな。) 空は天井を仰ぎ見る。 「今日は本当にありがとう、イリア。」 空は隣に立っているイリアに礼を言うとイリアは首を横に振る。 「困った時はお互い様何ですよね?空さんが言ってた。」 (いい子だな~) 「イリア、楽に話してくれていいし僕のことは空って言ってくれていいよ。昨日出会ったばっかりだけどイリアのお母さんとお父さん見つかるまでは面倒見てあげるんだし。」  と空が言うとイリアは少し間をおいてから 「わ、わかった。そ、空。」 空はイリアの頭に手を置いて撫でた。  後日、飯塚沙織さんがおこげを迎えに来たので依頼は無事完了した。

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2話 白銀の少女Ⅱ 「ただいまー」 玄関で靴を脱ぎ捨て買い物袋を置くと少女をリビングのソファーに寝かせる。 (まずは傷の手当かな……) 救急箱から消毒液とガーゼを取り出すと傷を手当し始める。 (1週間は安静にさせなきゃな……) 傷の手当が終わり少女を空がいつも使っているベッドに寝かせると空はようやく夕飯にありつけた。 (やっぱり鍋は美味いなー) 少女のことが気になって仕方がないが今は腹を満たすことにした。 食事を済ませた空は少女の様子をみる。 傷の手当をした後も目を覚ます様子は無くずっと眠っている。 (……そろそろ風呂入るかな) ******  空が風呂から上がると少女は目覚めていた。 「お、目覚めたんだ。」 空が少女に声を掛けると少女は周りを見渡す。 「ここは……」 空は少女の声に答える。 「ここは僕の家だよ」 と答えると空は少女のいるベッドの脇に座る。 「……ぁ……」 掠れたような小さい声で少女は話す。 (まだ、声がかすれてるのかな……) そう考えていると少女が質問をしてくる。 「あの……あなたが私を助けてくれたの?」 「うん、そうだよ。」 「ありがとう。」 と少女はお礼を言うがすぐに何かに気づいたように少女は問う。 「えっと……その……あなたのお名前は……」 (あっ!名前教えてなかったか!) 空は自分の名前を教える。 「僕の名前は空・テトラト。空って呼んでくれていいよ。」 すると少女も自分の名前を口にする。 「私の名前は……イリア……」 「イリアって言うんだね。よろしく。」 空はイリアに手を出して握手を求める。 イリアも空の手を握ってきた。 (手ちっちゃいな~) 「それで……なんであんなところに倒れていたの?」 空は一番気になっていたことを聞いた。 「えっと……その……」 イリアが話そうとした時、お腹が鳴る音がした。  「あっ……」 イリアの顔はみるみる赤くなっていく。 「お腹空いたのかな。お粥なら食べれる?」 と空はイリアに尋ねる。 「うん……」 空はキッチンへ向かうとお粥を作り始めた。 ****** 「お粥できたよ~」 お粥を作り終えた空はイリアに声をかける。 リビングには夕飯の残りの鍋が置いてある。 (流石にあの鍋は食べれないよな……) 空がテーブルへ器を運ぶとお粥をテーブルに並べる。 お粥を見るとイリアはとても嬉しそうな表情をしている。 (よっぽどお腹空いてたんだな……) 「食べて良い?」 イリアは尋ねる。 「いいよ。」 「いただきます。」 イリアはスプーンを持つと一口お粥を食べる。 「おいしい……」 お粥を口へ運ぶ手が止まらないのかどんどん食べていく。 「お代わりもあるからいっぱい食べてね」 (こんなに喜んでくれるなら作った甲斐があるな……) 2杯目を食べ終わり3杯目のお代わりを食べ終わった時、イリアが口を開く。 「あの……空さん……」 「ん?」 空はおかわりを入れて渡すための器を持って戻ってきてイリアに顔を向ける。 「いろいろご迷惑をお掛けしました…。」 器を受け取るとイリアは頭を下げる。 (律儀だなぁ) 「気にしないで良いよ。困ったときはお互い様だし、それに今はゆっくり休んでて」 (まだ体調が万全ではないし) 空が言うとイリアはスプーンを器に置く。 「あの……私……今何も持っていないんです……」 (だろうな……服1枚だもんなぁ……) 「お粥も食べさせてもらって……何かお礼をしたいんですけど……」 「お礼ねぇ……」 (そんなに気にしなくても良いんだけどなぁ……) そんなことを考えていると空はふと思いついた。 「なら、一つ聞いてもいいかな?お母さんやお父さんは?何であんなところで倒れてたの?」 空が尋ねるとイリアは顔を暗くする。  (聞かないほうが良かったか…) 空はイリアの顔色を見て少し焦る。 「……」 (イリアには酷なことを聞いてしまったのかもしれない……) そんなことを考えているとイリアは口を開く。 「記憶が無くて。自分の名前と…自分の名前しかわからないんです。」 「そう……なんだ。」 (記憶がなくて名前がわかるってよく考えたらすごいな……) とイリアは俯く。 「イリア、休んだほうがいい。僕が悪いこと聞いちゃったね。」 空は器を持って立ち上がるとキッチンに向かおうとした時、イリアが空の服を掴む。 「行かないで……」 (うっ……そんな顔されたら断れないじゃん……) 「わかったよ……」 空はイリアの横に椅子を持ってくると座る。 空は改めてイリアを見る。 長い白銀色の髪、幼さの残る顔、幼い体に似つかわない綺麗な肌、そして空を見つめる青色の澄んだ瞳。 空が見惚れているとイリアは口を開く。 「あ、あの……あんまり見られると恥ずかしい……」 (はっ!) 空はイリアから目をそらす。 「ご、ごめん!」 (まじまじ見てしまった……) 「その……空さんは優しいね……」 (え?どこが?) 思いもよらない言葉に空は困惑する。 すると、突然眠気が襲ってきてあくびをする。 (やっべ、安心したら眠たくなってきたな。) 「ごめん、僕もう寝るね。イリアは僕のいつも使ってるベッドで寝てくれていいよ。」 空が立ち上がろうとするとイリアは空の手を握る。 「あ、あの……私、記憶がなくて不安なんです……」 (うーん、子供とは言え異性だしな~) 「まぁいっか」 空はクローゼットから毛布を取り出すと毛布を持っていく。 「僕寝るときはいつも毛布使ってるんだ。一緒に寝る?」 空は冗談っぽく言うがイリアは頷く。 (…仕方ないか) 空がベッドに入るとイリアも毛布に入ってくる。 空は目を開けて隣を見るとイリアは空の服をしっかり掴んでいる。 (これは朝まで寝れないやつだな……)

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旧世の書庫の管理人

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一幕1話 白銀の少女Ⅰ 西暦2044年12月18日 世界は終わりを迎えた。 12月17日に南極点から発生した大爆発によって瞬く間に地球には赤い空が広がった。 至るところで大火事、大地震、大津波、豪雨、噴火あらゆる天災が同時に発生した。 自然も人工物も動植物も何もかもが失われていく。 これは神の怒りなのだと悟った。 12月19日 果たして本当に19日なのかどうかはわからない。 というのも目の前が真っ白なのだ。 空も地面も前も後ろも左も右もどこを見渡しても真っ白で立体空間にいる感覚が無い。 これが本当の最後なのだと確信した。 ______ 1月14日 日本:東京 「いらっしゃいませー。」 「あのー…ここって何でも屋なんですよね。」 来店してきた1人の女性客は男性の店員に声を掛ける。 「はい。怪しい事以外は基本何でも引き受けていますよ。どうかされましたか?」 と男は聞き返す。 「実は猫を探してほしくて…」 「猫?」 「この子なんですけど…」 女性客はスマホに写っている写真を見せる。 見た目はまだ幼くとても可愛らしい。 焦げ茶をベースとした毛並みに所々黒の斑点がある。 「5日ほど前から家に帰って来ていなくて…」 「それで僕に捜索の依頼を…わかりました。その依頼ぜひ引き受けさせてください。詳しい事をお聞きしたいのでこちらへ来てもらえますか。」 と男は女性客を客間へと案内する。 「どうぞお座りになってください。」 女性客は椅子に座ると男が出してくれたお茶を飲む。 「申し遅れていましたね。僕は空・テトラトと言います。ここ何でも屋で店長をしているものです。と言っても店員は僕だけなんですけどね。僕のことは空とでも呼んでください。」 空は女性客の向かいの椅子に座る。 「この度は何でも屋への依頼ありがとうございます。早速ですが、お話聞かせてもらっても良いですか?」 と空が言うと女性客は事の詳細を話し始めた。 ______ 『依頼者:飯塚沙織さん(26)女性 6年前に上京してきたそうで一軒家の1人暮らし。 寂しさを紛らわす為にオス猫を飼い始めたらしく名前は『おこげ』と言うらしい。 おこげは飼い始めた頃から外に出ていく習性があるらしくよく家から居なくなっていたようだ。 それでも、1日もすれば帰って来ることが殆どで、たまに2日帰ってこなかったこともあった。 なので今回の事は沙織さんからすると焦って当然だ。 沙織さんと遊ぶことはとても好きなようで、考えるに飼い主を嫌っている様子は感じられない。 となると死期を悟って出ていったのだろか、これは考えにくい。 写真で見た通りまだ幼いからだ。 とすると迷子もしくは誘拐された可能性がある。 まず、誘拐だがこのあたりは治安がいいとは言えないが誘拐や殺傷が頻繁に起きるほどではない。 誘拐の可能性は低いが懸念しておこう。 次に迷子の可能性。 こちらのほうが可能性が高い。 よく外に出ていくのならば道を覚えていてもおかしくはないが遠出でもしたのだろう。 ならば、まずは聞き込みを優先すべきだな。』 ______ 沙織さんが帰ったあと、空は聞いたことをもとに憶測をノートに書いていく。 空が時計を見ると夕方を過ぎており閉店の時間が迫ってきていた。 「やべ、店閉めなきゃ。」 空は慌てて店閉めの作業に取り掛かる。 電気を消して入口の鍵を閉めると空は2階の生活スペースに戻る。 「今日は遅いし明日からかな。明日は店閉めてかないと。」 空は机に向かうと地図を広げて捜索場所を考え始めた。 ______ ****** 空・テトラト(20)男 身長170cm 体重67kg 趣味ゲーム 京都産まれ東京育ちのハーフで父が日本人で母はわからない。 母は空が産まれた時に亡くなってしまったようで母の出生国を父に聞こうとしたがたぶらかされてしまった。 父は旅行好きで空が成人してからは世界各国を旅しているので今はどこにいるかはわからない。 最近で知っているのはスイスにいたことだけ。 人の役に立ちたいと思い何でも屋を企業。 それなりに客はやってくるため毎年黒字。 ****** ______ 一通りの作業を済ませた頃には時計の針が6時を指していた。 空は背伸びをすると立ち上がりキッチンへ向かう。 冷蔵庫の扉を開けて中を確認したが中はお茶と調味料だけだった。 「買い出し行かなきゃなぁ…」 お茶を一口飲んでから冷蔵庫の扉を閉めると買い出し袋を手に取る。 (今日は何食べようかな~) 玄関を開け階段を降りると夜の街並みの中スーパーへ出かける。 夕飯の献立を考えでいるとあっという間にスーパーへ着いた。 買い物かごを取ると店内へ入っていく。 財布の中を確認しながら野菜、魚、肉、お菓子等をかごへ入れていく。 特売になっていた鍋のつゆをかごに入れレジへと向かう。 「お会計2300円になります。」 支払いを済ませると買い物袋に購入した商品を詰め店を出る。 (鍋〜鍋〜) 握りしめる買い物袋は振り子のように揺れている。 気分揚々と帰る空が路地裏の横を通りかかった時のことだった。 光の当たらない薄暗く気味の悪い路地裏に誰かが倒れているのが見えた。 空は心配になり人が少なくなったのを確認するとその路地裏へ入っていく。 倒れる誰かに近寄ると側でしゃがみスマホのライトを照らすとその先には白銀色の長髪の人が倒れている。 布切れ一枚を着たような服は汚れていて所々擦り傷がある。 服装を見るに女の子だと思われる。 (救急車は…怪事件の影響もあって今は無理だろうな…) 衛生面が良くない場所で倒れている為ほっておくわけにはいかないと思った空は少女をおんぶすると自宅へと連れ帰った。 (これで事件とか巻き込まれたら嫌だなぁ…)

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