アズミオ

21 件の小説
Profile picture

アズミオ

基本的にTRPGのリプレイ小説とファンタジー小説を書く予定、執筆初心者で国語力は高くないです。一応中学生、厨二病はもう過ぎました、多分。序盤は思いつくのにそこから先が永遠と出てこない、無理にシリーズ物書こうとするからだろうけど。 じゃんじゃん話しかけてくれると嬉しいです。 もう単発書こうかな。 アイコン:五百式カットインメーカー

第1話劣等生が覚きるまで

今から二百年前、突如この世界に“異能力”と呼ばれる力が、一部の人間に宿るようになった。 火を噴いたり、体を硬質化させたり……異能力は多種多様だった。 いつしか異能力を宿した人間を異能力者と呼び、異能力を手に入れることが出来なかった人間を無能力者と呼ぶことになった。 そして、超常の力を持つ異能力者によって、持たざる無能力者は支配されてしまった。 そんな状況を変えたいと思った一人の異能力者は、他の四人の異能力者と協力して一つの島を作り、その島に全異能力者を閉じ込めた。 それがこの世界、異能力者と無能力者が隔絶されて暮らす世界。 ……そして俺、久城ムツキ(くしろむつき)はある日異能力者であることが判明した。 昔は知らないけど、今の無能力者からしたら異能力なんてファンタジーな力が自分にあると知って喜ばないわけが無い……と思う。 まあ、そんな気持ちは既に消えてしまった気もするが。 「ゴハ!」 月明かりも見えない深夜。 俺は膝蹴りをみぞおちに受けて後ろに転がると、大の字になって倒れた。 地面のそこかしこに付いた小石が肌に押し付けられ、微かな痛みが身体中に走る。 俺を蹴った男はそんな俺に見下すような視線を送ると、 「ハ! テメェみたいな奴はそうやって地面を這いずってればいいんだよ!」 と、嘲笑うように言ってここから去っていった。 しばらく経つと俺は立ち上がり、身体中に着いた砂埃を払って伸びをする。 「アー痛ってぇ……。今日はもう寝るか」 異能力学園のFクラス最弱、それが今の俺の立場だった。 そんなことになってしまった理由は簡単で、異能力者なのに異能力が使えないから。 異能力は強力なものであればあるほど代償が酷かったり、発動条件が厳しかったりするらしいが……俺の異能力はどんだけ強いのか、二ヶ月間色々試してみたのに何も変わらないままだった。 これだけ何も無いと本当に自分に異能力があるのか疑ってしまう。 「あの……。大丈夫でス?」 自分の異能力について色々考えていると、誰かを呼びかける可愛らしい声が聞こえた。 ……他に人は……いないし、俺? そう思い、俺は声が聞こえた方へと振り返る。 そこに居たのは美しい少女だった。 淡く光るふわりとしたセミロングの金髪と、太陽のような丸くて幼げな橙色の瞳が特徴的で、体型は少し小柄、身長は目測百四十センチほどに見える。 白を基調としたオーバーサイズの服装には金色に輝く華美な装飾が施されており、それが彼女が高貴な家の出だということを伝えてくる。 月明かりに照らされている訳でもないのに、彼女の周りには光が集まっていた。 俺がその姿に見惚れていると、少女は肩にかからないギリギリの長さの髪をゆらゆらと揺らしながら俺に近づき、 「見ちゃったんでスけど……イジメでスか?」 首を傾げて、俺の目を真っ直ぐ見つめながらそう言った。 「……いヤっ、大丈夫。もう慣れたし、ていうか学園で見かけたことないんだけど……誰?」 こんな少女、一度見たら忘れない気がするんだが……。 「陽八メウ(ひばちめう)でス。学園には今日到着シたんでスよ」 「今日到着……? 転校生かなにかか?」 「アァ……まあだいたいソんな感じでス」 珍しい、この学園に転校なんて……いや、もしかしたら俺が知らないだけで転校とかはよくあるのかもしれない。 異能力者だと分かった瞬間、この島に家族とも引き離して放り込む奴らだ、年一の検査以外でも何かしらがあればこの島に放り込んでもおかしくない。 ……ただ、なるほど。 転校生だから俺に声をかけたのか。 「それで。虐めを受けていた俺のことを心配してくれたのは嬉しいけど……俺と関わるとお前も虐めの対象になってしまう可能性がある。だから気にしない方がいい。」 そう言って俺はその場を去ろうとする。 「……? 待ってくだサい……。助けて欲シいとか、思わないんでスか?」 「思わないな」 即答する俺に少女は目を見開いた。 「この虐めは俺が無能だから起きている事だ。俺自身が原因なんだから、助けて欲しいとかおこがましいだけなんだよ」 俺は呆然としている彼女の傍を通り過ぎて、 「これ以上関わってこないことをオススメする。俺は自分の性で誰かが不幸になるのは嫌いだから」 そう言って、俺は今度こそこの場を立ち去った。 次の日。 俺がいつも通り教室の自分の席に座って異能力について考えていると、 「今日のホームルーム……の前に。報告がある」 担任の……名前も忘れた教師が、生徒全員に聞こえるように喋り出す。 今日の担任なんか真面目だな、いつもてきとうなのに。 「今日から学園に通える年齢になったこの島出身の異能力者がFクラスに入ることになった。入って来い」 「へぇ……ん? まさか……」 次の瞬間、勢いよく教室の扉が開いた。 そこからは見覚えのある少女の顔が見えて、 「初めまシて、陽八メウでス! 今日からこのクラスに入りまス。ヨロシク!」 昨夜、俺の目の前に現れた少女は再び現れ、元気よく挨拶をした。 寝る前にもしかしたら……とか考えたけど、本当にこのクラスに入ってくるのかよ! 俺がどんなリアクションを取ろうか困っていると、 「それじゃあ陽八は……そこの席に座れ」 担任はそう言いながら、俺の隣の席を指さした。 おいおいまじかよ。 陽八は俺の席に近づき、担任に言われた通り隣の席に座る。 「ヨロシクお願……アァ! ……えと……」 「……ムツキ、久城ムツキだ」 俺は額に手を当てながら、俺のことを見るなり声をかけようとする陽八に自分の名前を教える。 「ハイ、ムツキ! ヨロシクでス!」 そう言いながら、俺の手を握りブンブンと握手をしてきた。 ……こいつこの先大丈夫か? その後、軽い自己紹介を終えると、次の授業が始まるまでの十五分休みが挟まる。 「ムツキ、雑談シマショ! ヒマなので」 「……俺は関わるのをオススメしないと言った筈だが、陽八……さん」 「あくまでオススメシないだけでスよね? あと、陽八サンは辞めてくだサい。メウでいいでス」 「ほぼ初対面なんだが……」 と、俺とメウがそんなことを言い合っていると、 「メウちゃん、だっけ? こんな奴と関わってると悪い噂ばっか流されちゃうよぉ〜?」 少しウザいイントネーションで、俺のことをよく虐めてくる男が馴れ馴れしくメウに話しかけていた。 「ウワサ? なんで」 「もしかしてメウちゃん知らない? こいつは異能力者のくせに異能力が使えない無能なんだぜ? そんな奴と仲良くなんてしてたら格が落ちて悪目立ちするんだよ」 そう言いながら、男は俺の顔面目掛けて拳を振る。 俺は避ける気もないので、その拳は俺の顔面にクリーンヒットした。 俺は少し後退し、ふらつく足を押えて殴られた箇所を拭う。 「こいつはこういう扱いをしてたらいいんだよ。それでメウちゃん、こんな奴ほっといて俺と一緒に遊ぼうぜ」 男はメウの肩に触ろうとして……。 触る直前、メウは男の手を薙いだ。 「ムツキと関わった程度で落ちる格は持ってないでス。……なんなら」 と、メウは一拍を置いて、 「あなたと関わった方が格が落ちソうでスね」 鼻で笑いながらそう言った。 「……! テメェ!」 その対応に怒ったのか、顔を赤くした男はメウに殴りかかった。 メウはその拳を軽々避けると、男の空いた左手首を握る。 「ソうやってスぐ手ェ出ソうとスる人と遊びたいって思うわけが無いんでスよねェ……」 メウはそう言いながら男の手首を握る手に力を込める。 「ガ……! あァ!」 男は少し引きつった顔をすると、メウの手を必死に振り払った。 「弱いね。簡単に折れちゃったァ……。ソれで」 メウは右手を少し上げる。すると右手の平に赤く光る炎が出現した。それを確認したメウは微笑を浮かべると、 「何?」 挑発的な態度で男に向かってそう言った。 「ッ! クソが! 後悔させてやるぞ!」 三下が言いそうな言葉を吐き捨てて、男は教室を飛び出して行った。 周りの視線が一斉にメウへと向かう。 「……これでヨシ! ムツキ、邪魔は無くなりまシた。雑談シマショウ!」 「……すげえ強いんじゃないのか? なんでこのクラスにいるのか疑問なくらい」 「確かに、ワタシは確実にBクラス以上の力を持っていまス。まぁだからといってEクラス以上でスタートできる訳じゃないんでスけどね」 「Bクラス……マジか。てことは異能力の引出し方のコツとか分かったりするか?」 「コツ? サぁ、人によって異能力は変わりまスシ……」 メウは少し困った顔をして、しばらく考える素振りをすると。 「手当り次第試シてみるとかでスかね?」 「あ〜……やっぱそれしかないよな」 そう言って俺は頭を掻きながら机から教科書類を取り出す。 「そろそろ授業だろ、準備しろよ」 「ンア? ソうでシたね」 メウは近くに置いていたカバンから教科書を取り出すと、 「ソれじゃあ改めて、セイハロー。ムツキ」 はにかみながらそう言った。 「相談したいことがある」 メウがこのクラスに来てから一週間が経過した。 あの男が威張って統治することもなくなり、俺の虐め以外の問題もメウがこのクラスに来たことでなくなった。 「ソウアン? アンエスカ?」 昼休み。 口いっぱいに唐揚げを頬張ったメウは、俺の机に座り、足をぶらぶらさせながら、俺の方へと振り返って返事をした。 「……とりあえず口の唐揚げをなくそうか」 俺がそう言うと、メウは急いでそれを飲み込もうとする。 「ンモッモッモ……ケホ! ケホ!」 「お、おい。大丈夫か?」 「ング……大丈夫でス。ソれで相談ってなんでス?」 「あーえっと、異能力についてなんだけど」 俺はそう言いながらノートを取り出す。 「あれからも色々試してみたんだけど……やっぱり異能力が使えないんだよ。だからちょっと手伝って欲しいことがあって」 「ふーむ。ワタシは異能力の相談をサれてもあまり力にはなれないんでスけど……」 そう言うメウに俺はノートを手渡す。 「ん? なんでス? これ」 「ここに俺が試してみたことを全部書いてある。これを見てまだ俺が試したことないのを言って欲しいんだけど……」 そう言うとメウは手に取ったノートを開く。 「……スゴい」 ボソリとメウは呟いた。 「いや、そんな凄くないだろ。俺が出来る最低限のことをやっただけだし」 「ソんなことないでス、これはスゴい。少なくともワタシは出来ないでス」 そう言いながらメウはノートをじっくりと読んでいく。 「……炎のイメージ、木に触れる、念じながら殴る、藁人形に釘を打つ……ほんとに色々やってまスね。シかもどうやって試シたか、何を使ったかをこと細かく書いている。本当スゴいでスよ」 そう言いながら、メウはじっくりとノートを読み進めていく。 「出来る限りのことを全てやり終えてまスね。あと残っているのは……」 メウは考えるような仕草をする。 「……欲望や感情に関連する異能力がまだでスね。何か今まで感じたことの無い感情や欲望はあるでスか?」 「欲望や……感情?」 「ソうでス、日によって出力が変わるかなり珍シい異能力なんでスよ」 「ふーん……確かに試したことなかったな。というか知らなかったし」 今まで無い感情……欲望……? 「……独占欲とか?」 「アー、確かになサソうでスね」 「あとないのっていえば……なんだ?」 「どちらかといえばムツキは謙虚な方でスシ、全く発動シないのなら、ソの反対のものとかでスか?」 謙虚の反対…… 「……傲慢?」 「ソれ、欲望でも感情でもなくて性格じゃないでスか?」 「あーだよなぁ。じゃあ別のやつも考えてみるか」 「……」 他は……なんだ? 強欲みたいな。 「いや、一度試シてみてもいいか」 「……? どした?」 「アァ、ムツキの中に眠る傲慢を解放シたり出来るのでワンチャン賭けてやってもいいのかもと思ったんでスよ」 「え? そんなこと出来んの?」 「ハイ、ワタシの異能力、魔改忍天日花(ダンデライオン)は色々出来ますから。ソれじゃあ早速やっちゃいまス?」 「おう、よろしく」 俺がそう言うと、メウは俺の両手を包み込むように握り、口を開く。 「『花言 密かな愛(フラウ・ミステリー)』……!」 次の瞬間、メウの背後に橙色に光り輝く7輪の花の文様が浮かび上がり、突然白色に強く光ったと思うと、そこにあったはずの文様は消えていた。 俺の中の何かが産声をあげるかのように、全身に力が駆け巡る。 「……これで」 メウは包み込んでいた両手を離す。 「おぉ! なんかよくわからないけど成功した気がする!」 俺は自身の両手を見つめながら開いたり閉じたりして身体の調子を確認する。 「……なら良かったでス。ソれで、いつ試スんでスか?」 「ん〜そうだな……」 と、俺は考える仕草をして、 「せっかくなら、あの野郎に一泡吹かせようか」 その日の夜。 俺は海岸沿いの道をゆっくりと歩いていた。 白く輝く三日月の光が、荒波に揺られる海に乱反射する。 反射した光は当たりを照らし、夜なのにも関わらず周囲はくっきりと映し出されていた。 ……いい気分だ。 昼頃はなんともなかったが、時間が経つ度に気分が高揚していく。 今まで溜めに溜め込んでいたものを解放したせいかな? 「おっすー」 俺がそんなことを思っていると、後ろから肩を叩きながら声をかけられる。 俺が振り返ると、そこにはいつも俺のことを虐めてくる男がいた。 「今日も虐めに来てやったぜ〜」 「……そうか」 俺は肩に置かれた手を退けて、1歩前へ踏み出して後ろへ振り向く。 「やるなら早くこい、面倒だ」 「ア? なんだお前、ナメてんのか? アァん!」 男はそう言いながら、胸ぐらを掴んでくる。 「……ナメてるか……そうだな、どちらかといえば……」 と、一泊を置いて、 「ナメてる」 俺がそう言うと、その男は真っ赤な表情をして俺の顔面を殴ろうとして……。 俺はそれを左手で受け止めた。 「なぁ……。今の俺はどう見える?」 少しずつ、視界が広がっていくのを感じる。 「お前……異能力を解放したのか……!」 「そうそう、今の気分は最高だよ?」 俺はそう言いながら、持っていた拳を下に捻る。 「〜〜〜ッ!」 男は声にならない声を上げて後退した。 「それじゃあ……そうだな。異能力のお試しといこう」 俺はそう言って、右手に軽く力を込める。 ジャラリという音と共に、服の裾から黄金の鎖が伸びてくる。 「ふーん」 傲慢であればあるほど身体能力が向上して……出来ることも増えるって感じかな? シンプルだけど、俺との相性は最悪だな。 俺が傲慢になってる状態も長くても明日の朝には終わってそうだし、出来るだけ早めに切り上げよう。 俺は目の前の男に視線をやると、裾から伸びた鎖を男に投げつける。 男はそれを回避しようとするが、鎖は避けた先に伸びていき、男の胴体に腕ごと巻きついた。 へぇ、自分の意思だけで伸ばしたり、縮めたり、上下左右に動かしたり可能……便利な鎖だ。 「クソ……! 離せ!」 男は巻きついている鎖から抜け出そうと必死に抵抗する。 「ん〜、その鎖がどのくらいの強度なのかは知らないけど、今のお前程度の力じゃあ、抜け出すのは無理じゃないかな」 俺はもう一度右手に力を込めて、服の裾から数本の鎖を出す。 「一二三……4本が限界かな?」 俺は残りの鎖を使って男の足を拘束する。 「なぁ、お前が俺のことを虐め初めて一ヶ月と2週間が経過してるんだが。お前は俺のことを何回殴ったか覚えているか?」 「は? そんなの覚えてるわけが……」 「一万四千五百二十三回、お前は俺を殴っている」 そう言った瞬間、男の顔が青ざめる。 「お前……なんで覚えてるんだよ。それも能力か!?」 「いーや、能力じゃない。虐められた側ってさ、結構色々覚えてたりするんだよ……それで」 と、俺は一泊を置いて、 「“覚悟”は出来てるんだよな?」 そう言いながら、俺は男の方へと歩み寄る。 「来る……な……」 「お前は俺を一万四千五百二十三回殴ったんだ。だったら一万四千五百二十三回殴り返される覚悟は当然持っていないといけない」 俺はさらに男に近づく。 「こっちに来るな……」 「いやー楽しみだなー。お前がどんな顔をしてくれるのか」 俺は男の目の前に立つ。 「来るなぁー!」 「うるせぇ、黙って殴らせろ」 俺は冷徹に言い放ち……そして。 「……意外と疲れた」 あの後、三十分ほどタコ殴りにしてボロ雑巾のようにしたあいつにトドメを指そうとしたところで傲慢解放の効果が切れ、俺を支配していた欲が消え失せた。 それと同時に異能力の効果も切れて、鎖から開放された男はあさっての方向に逃走、追いかける気もなかったので、俺はその場で立ちつくしていた。 「あ〜、今日はもう寝るとして。明日メウに成功したって伝えないとな」 異能力も得た、後は……。 「……学園最強」 学園最強として卒業した人間には、特別に無能力者の住む島に行ける。 ただの噂でしかないけど、もしこの噂が本当なら……。 「目指すしかないな」

0
0

第一章魔剣士学園篇1話勇者は廻り踊る

「これで終わりだ! 魔王グラディアム……!」 血濡れた視界、朧気な意識の中僕、アズリア・レヴルドは魔王の心臓に剣を突き刺した。 「グォアアアアア! 馬鹿な……この我が!」 醜い漆黒の身体は朽ちていき、魔王の魔力によって形成されていた城は崩れていく。 僕は魔王に背を向けて走り出そうとする。 魔王討伐を喜びたいけど、先に皆と合流しないと! 「タダでは終わらんぞ!」 「?!」 魔王から黒い瘴気のような何かが放たれて、僕の体へと吸い込まれていく。 「これで貴様も道連れだぁぁぁぁ!」 そう言って魔王は膨大な魔力を周囲へ解き放ち死亡した。 その後、僕は下の階に置いてきた仲間達と合流して城を脱出、世界には平和が訪れた。 僕は祖国であるレヴルド王国にて魔王を討伐した伝説の勇者として祭り上げられた……だけど、魔王が死の間際に放った呪いによって、僕の体は蝕まれていった。 「うぅ……! うっヒぐ……ぅう!」 ベッドで横たわる僕の近くで、腰まで伸びた美しい銀髪と透き通るようなおっとりとした青い瞳が特徴のエルフの少女、フェルが泣いていた。 「泣くなよ、フェル」 僕はそう言ってフェルの頭を撫でる。 フェルと会ったのはもう5年前の事になるのか……時の流れは早いな。 「うぅ……だっで、だって……!」 「大丈夫、僕は少しの間遠い所に行ってくるだけだから」 「……帰ってきてくれる?」 「うん、約束するよ」 そう言うとフェルは鼻水をすすり、涙を服の裾で拭う。 「絶対だよ! ……絶対、帰ってきてね! 約束破っちゃダメだからね!」 フェルは僕の眼を見ながら、声を大にして叫ぶ。 「……大丈夫、絶対に、約束は、守……る……」 そう言い残して、僕の意識は途絶えた。 思い返してみるととんでもない人生だった気がする。 レヴルド王国の第一王子として生まれて、天才魔剣士として名を馳せて、十六歳になったら魔王討伐へと旅立って、大切な仲間達と出会って、こんな可愛い弟子も出来て、魔王を倒して、呪いで死んで……あぁ、自由と呼べるような時間はあまり無かったようにも思えるな、ずっとトラブル続きだったから、僕まだ二十二歳なんだけどな……フェルには無理な約束をしちゃったし、もし生まれ変われるなら、また…… 「……?」 僕は目を覚ました。 なんだ……何がどうなってるんだ? 僕は確かに死んだはずだ、ならここは死後の世界というやつか? 僕は周囲を見渡そうとするが、 身体が思うように動かない? それにいつもより目線が低い気もする。 しかも……これは木の柵? 「あら、起きちゃいましたか」 ビクンっと僕の体は反応する。 声が聞こえた方向を見ると、そこには茶色の長い髪と茶色いタレ目のメイドの姿があった。 「うるさかったですか? もしそうだったらごめんなさいね、まだ朝の五時ですからサン様はまだ寝てて良いですよ」 そう言いながら茶髪のメイドは僕の体をヒョイっと持ち上げて、木の柵に囲まれたベッドに乗せると布団を掛けて近くの椅子に座る。 いや待て、なんで僕の体をそんな軽々しく持ち上げられる、二十歳超えた男の体だぞ、しかも対応が完全に赤ちゃんの世話をするメイドのそれ…… そこで僕は気づいてしまう、その信じようとしても信じれないような馬鹿げだ事実に。 僕の体……赤子になってる。 加えて魔力保有量が増えていて、何故か鮮明に思い出す事が出来る過去の記憶。 魂に記憶を転写して別の肉体に移された、これしか考えられない。 ……僕はやっぱり死ねないんですね、神様。 とりあえず今は寝よう、この体になれて情報収集をしないと。 そして僕はもう一度目を閉じた。 僕が転生してから数年が経過し、僕は十四歳になった。 あれから調べて色々分かった事がある。 まず、この世界は僕が魔王を討伐してから五百年後の世界で、僕はレヴルド王国のアルグレム家という代々魔剣士を排出している辺境の地の下級貴族の息子として生まれてきたらしい。 そして悲しい事に、五百年後の世界はかなり危険に満ちていた。 魔王が死に間際に放った魔力によって二百年前から強力な人型の魔族が生まれるようになってしまい、その中でも別格の個体は魔王と名乗り暴れ回っているらしい。 元となった魔王よりは劣るものの現代の人間じゃ全く歯が立たたない程強く、その魔王の数は十体とかなんとか。 「折角命かけて魔王倒したのになぁ」 まあ嘆いても意味は無い、とりあえずもう一度鍛え直して十大魔王とかいう魔王の残り香を倒しに行こう。 僕は手に持っていた本を元あった場所に戻す。 「サン様ー、サンさ……あ、居ました、サン様、ルナレア様が探しておられましたよ」 そう言いながら僕の近くに茶髪のメイドがやって来る。 彼女の名前はブラン、僕の事を昔から世話してくれているメイドさんだ。 ちなみに今世での僕の名前はサン・アルグレム、最初は名前が変わった事で困った事もあったけど、今ではすっかり定着していた。 「姉さんが?」 「はい、『そろそろ稽古の時間なのにどこで遊んでるんだー』って」 「あっ、そういえばそうだった……!」 僕は急ぎ足で姉さんが居るであろう場所へと向かう。 この家には僕以外に父、母、メイド達に加えて、姉と妹が居る。 そして姉には剣術の才能があり、期待の後継ぎと言われている。 僕が中庭に着くとそこには、ポニーテールの赤髪に、キリッとした赤眼の姉さんが居た。 「……あ、遅い!」 そう言いながら僕の元へと姉さんが向かってくる。 「あはは、ごめんなさい」 僕は頭を掻きながら姉さんに謝った。 「まったく、時間はちゃんと守りなさいよ……ほら、こっち」 そう言って姉さんは僕の手を取って早歩きをしだす。 僕は姉さんのスピードに合わせて歩いた。 少しすると、緑色の庭の中に、土で出来たそこそこ広い長方形のスペースがあった。 「……よし、それじゃあ始めましょう」 そう言って姉さんは僕の反対側に立ち剣を構えた。 「この木刀で相手が降参、もしくはこのスペースの場外に出たら勝ち、魔力の使用は禁止、まあいつもの模擬戦のルールよ」 「了解」 僕はそれを聞き終えると剣を構える。 前世ではシルグレイド流とレヴルド武神流をベースに様々な流派を掛け合せた我流の剣技を使っていたんだがどうやらベースになった二つの剣技はとっくの昔に消えているらしく、今は勇王流という剣技を習っている。 消えたレヴルド武神流の技を何とか継承しようと著名な剣士達が編み出した現代の様々な剣士達が使う流派っぽいが半分未満しか継承出来てない。 だからといって昔の剣技を扱う訳にもいかないので、僕は渋々勇王流で戦う事にしている。 「行くわよ」 そう言うと、姉さんは僕の目の前まで来るとその木刀で腹を斬りかかる。 ここから取れる行動で勝利出来るのは何千とあるが……それをするとバレる可能性が高い、受け止めるか。 僕はその攻撃を受け止めた。 あ、威力結構ある、今の筋力的にこのまま流せば良いんだろうけど……うん、多分バレないだろうしいっか。 僕は攻撃を耐えきれないと判断してそれを受け流すと、そのまま姉さんの首に剣を突き刺そうとする。 姉さんはそれを受け止めて僕の剣を地面に向けて叩きつけた。 僕の剣は手元を離れてがら空きとなる。 そのまま姉さんは僕の胸目掛けて木刀を突き刺した。 が、特殊な訓練用の木刀の為、僕には突き刺さる事は無く、場外へと吹き飛ばされた。 「イッてて……姉さん! 少しは手加減してよ!」 魔力が使えない影響が出たな、もう少し筋力を鍛えないと。 「……」 「姉さん?」 僕は起き上がると姉さんに近づいて顔を覗き込む。 「いや、なんでもないわ、それより、もう一回やりましょ」 「うん、わかった」 そう言って僕はもう一度剣を構えた。 「勝てなかったし、流石にちょっと疲れた」 僕はベッドに寝転んでそう呟く。 「勇王流ねぇ……レヴルド武神流に無い良さもあるけど、もうそれも習得しちゃったから、その良さを取り入れた我流を練習したいんだけど……」 僕は窓の外をチラッと見る。 時刻は夜9時を回った頃か、暗色に染まった街は僅かな明かりと月光によって照らされていた。 「……よし、抜け出すか」 この屋敷の警備もついでに調べておいて良かった。 行先は……近くの森にしよう、そこなら魔獣が沢山いるはずだ。 「あと、見つかった時ように対策は……」 僕は近くの棚から紙袋を取り出すと穴を2つ開けてそれを被る。 「よし、これで見つかってもバレないだろ」 僕は窓を開けるとそこから飛び降りる。 三階の窓から人が出てくるなんて誰も思うまい。 僕は中庭の上を飛び、塀を越えて森へと入る。 「あ、戻る時の事何にも考えて無かったけど……なんとかなるか、警備体制は全部把握してるし」 僕は森の中を突き進み、数分歩いた所で腰に携えた剣を抜いた。 木と茂みに囲まれた僕は真っ直ぐその方向へ向くと、 「……居るんだろ?」 と言って剣先を向ける。 それで観念したのか、茂みは音を立ててその姿を現した。 そこに居たのは一人の少女だった。 長く美しい黒髪と、猫のような鋭い赤眼は月光によって輝き、背中には蝙蝠のような翼を携えて、夜闇に溶け込むような黒装束を纏うそれは、銀白色の牙を怪しげに光らせていた。 「……吸血鬼か」 「おっ正解、知ってるんだね」 「魔族の種類は網羅してるつもりなんだ、知らない人も居るだろうけど別にマイナーな種でもないしね」 「ふーん、まあ私には関係無いか」 そう言って吸血鬼は僕の目の前まで来ると血を纏った鋭く長い爪を僕の顔に突き刺そうとする。 僕はそれを剣で弾くとそのまま突き出された腕を斬りつけた。 「なっ……!」 吸血鬼の腕は切断され、辺りに血を撒き散らす。 吸血鬼は後ろへ飛んで距離を置こうとするが、僕はそれに追いついてそのまま両足を切断し、回し蹴りをした。 吸血鬼は弾丸のように吹き飛び、辺りには土埃が舞う。 「ゴホァ!」 背中を木に打ち付けた吸血鬼は吐血して、その場でへたり込む。 「さて、終わりかな」 「まだ…!」 吸血鬼は翼を使って空を飛ぼうとする。 「逃がさない」 僕は吸血鬼へ急接近し翼の付け根を切断すした。 「?!」 そのままの流れで僕は残るもう片方の腕も切断する。 「さっきまでの威勢はどうしたんだ?」 そう言って僕は吸血鬼を挑発する。 「はァ、はァ、なん……で」 「なんで? 君が僕よりも弱かった、それだけの事だよ」 「クソ……私はまだ、死にたく……無い……!」 「先に戦闘を仕掛けて来たのはそっちでしょ、命乞いのつもり?」 「そう……だね、私から、仕掛けたんだった……ゴホァ!」 吸血鬼は口から透明な液体と血の混じったものを吐く。 ……あ、良い事思いついた。 「お前、名前は?」 「……? クロア」 「よしクロア、“契約”だ」 そう言った瞬間クロアの目は丸くなる。 「お前……吸血鬼に契約って、分かってて言ってるのか?」 「あぁ分かってて言ってる」 そう言って僕は紙を取り出し、魔力を流し込んで文字を書く。 「契約魔紙か」 「そう、この契約に従ってくれれば君を生かしてあげる、僕もやりたい事があったから一応助かりはしてるんだよ」 そう言って僕はクロアの眼前に紙を突きつける。 伝説の勇者なんて言われて今の世界じゃすごい美化されてるが、別に僕は性格が良い訳ではない、その辺は仲間達しか知らなかったし僕も他人には猫被ってた事もあったから、そうなってもおかしくないけど。 「それでどうする? 契約を断って死ぬか、契約を受けいれて生きるか」 「……わかった、契約はする、ゴホァ!……早く血を寄越せ!」 クロアがそう言ってくるので僕は自分の指をクロアの口元に近づける。 「『サン・アルグレムの名を持って血の契約をここに交わす』」 そう言うと紙に書かれた魔法の文字が僕の指に吸い込まれていく。 「『クロア、の名を持って、血の契約を……こ、こに……交わす!』 そう言い終えると、クロアは僕の指をかじりついた。

1
0
第一章魔剣士学園篇1話勇者は廻り踊る

第一章5話決着、そして次へ

さて、この状態が長く持つようには思えない。 魔力と気力がぶつかり合って勝手に消えてってる、このまま続けば魔力不足で気絶、気力不足で超倦怠だ。 狙うなら早期決着。 俺は天へと走り出す。 「本当に学ばないのね。」 そう言って天はナイフを取り出し、俺へと切りかかった。 しかしそこに俺はもう居ない、あるのは気配とエネルギーだけ。 「なっ、どこに…!」 『我流 一文字』 俺は背後から鋭い一撃を天に与える。 「がはっ!」 天はよろめき体制を崩す。 『我流 獅子斬り』 俺はそのままの勢いで天へと突っ込み、間髪入れずに叩きつけた。 「ぐぼぁっ!」 さあ、このまま…! 俺は木刀で更に天を叩きつけようとするが、それを天は回避する。 「あまり舐め過ぎると痛い目みるわよ?」 『呪力解放』 その瞬間、天からとてつもない量のエネルギーが溢れ出し、空気を微かに揺らしていた。 「ねえ知ってた?目に自身の覇気と同調した空間の覇気を纏う事で相手の保有するエネルギーを見ることが出来るって。」 「…いや、知らなかったな。」 本当は知ってるけど。 「それでちょっと私の事を見てみてよ。」 「?別にいいぞ。」 俺は言われた通り目に力を込める。 「…は?1万?!」 なんでそんな強いんだよ! 「これが今の私の総合エネルギー量【覇動力】の数値だよ。」 確かこれって自分のも見れるんだよな? 俺は…1288、足りない。 「ここまで追い詰めてくるとは想定外だったけど、今は悔しいとかいう感情よりも興奮が勝ってる、どこまで行けるか試したい…!」 次の瞬間、俺の目の前に天が現れる。 「ねえ、あなたはどこまで行ける?」 「?!」 近い!…っダメだ!集中しろ! 『我流 一文字!』 『幻惑の術』 俺は木刀を天に向かって振りかざすがそれは空を切る。 「気配とエネルギーだけこっちに来てたのか…」 御札が無くても術は使えんのね。 「あなたもやってたじゃない、似たような事。」 確かにやってたけどここまでの完成度じゃねえよ。 「私の能力【最適解を導き出す能力】を解禁したんだからもうちょっとだけ抗って欲しいものね。」 最適解を導き出す?!なんだよそれ、チートじゃねえか。 天は俺に向かって無数の光線を放つ。 「多くね?!」 俺は足に力を集中させて回避に専念するが全ての回避先に光線が放たれており、避けることは不可能だった。 「ごほっ!」 俺は口から血を吐きその場で膝を着く。 「クソ…もう混合覇気も使えない、目眩がしてきた。」 天は俺に近づきナイフを首元に当ててくる。 「決着ね、どれだけ強い力があっても活かせなったらこんなものなのよ。」 「はっ、修行初めて1週間も経ってないやつに言う言葉かよそれが。」 俺はそのまま意識を手放した。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「んあ?」 俺は目を覚ます。 眩しい…!部屋の明かりが目に…ていうか何だこの頭が感じてる柔らかい感触は。 「あ、起きましたか。」 仰向けになっている俺の視界の横からひょこっと天の顔が飛び出してくる。 「あれ?これ、どういう状況?」 「治療を終えましたけど、勝手にあなたの寝室に入ってもいいとは思えなかったのでリビングで膝枕してるんですよ。」 「ファ?!」 俺は天の顔に当たらないようにしつつ飛び起きる。 「えっ、抵抗とかないの?!」 「?テレビ以外何も無いリビングにてきとうに寝かせたりとかしたら身体が痛いじゃないですか、だからせめて頭だけでもって。」 「バッカ!男にはな!それだけで俺に惚れたんじゃとか勘違いする奴も居るんだからな!あんま変な事するんじゃねえぞ!」 「…嫌だったのですか?」 「そういう訳では無いんだけど…」 〜10分後〜 「つまり勘違いされたくなかったらそんなことしない方が良いよと?」 「そうそうそういうこと!」 「なるほど、次から気をつけましょう。」 そう言うと天はポケットから紙を取り出す。 「そういえば、戦う前に話したい事があるって言ってたの覚えますか?」 そう言って俺に紙を手渡す。 俺はそれを受け取って内容を確認しようと紙を見た。 「戦闘遊戯大会…優勝者には伝説の宝石をプレゼント?」 「これに参加するかどうか聞きたかったのですけど。」 「あぁそういう事ね、でも天位強いのが大量に居るとかだったら俺勝てる気しないけど?」 「それは安心してほしい、私は幻魔郷の中でも上位に入るくらいには強い、と言っても私でも勝てない人は居るのだけれど。」 まじかよ…あれで頂点じゃないのか。 いや、でも良く考えればそうか、さっきの天よりまだ姉さんや父さんの方が強く感じる。 世界は広い、1万程度で絶望してたらこの先の壁を越えられる訳が無い。 「分かった、参加する。」 「あら、本当?」 天は嬉しそうな顔をすると、もう1枚の紙を渡す。 「さっきのは新聞を切り取った物、こっちは切り取って無いから読んでほしい、細かいルールとか色々書いてあるから。」 「オッケー。」 「戦闘遊戯大会は2週間後だからそれまでに仕上げましょう、私も手伝うんで。」 「え、いいのか?敵同士なのに。」 「この戦闘遊戯大会はバトルロワイヤル形式、チームを組むのもありなんですよ。」 「なるほど。」 だとしたら頼もしい、俺は知識として戦闘技術を知っている程度、やり方のコツなんてものは分からなかったからそれを天に聞ければかなりでかいはずだ。 2週間…間に合わせる。

0
0
第一章5話決着、そして次へ

第一章4話天との戦い

目が覚める。 俺はベッドから起き上がると時間を確認しようと時計を見る。 今の時間は…8時か。 とりあえずシャワーを浴びて着替えよう、あの天って人にいつ勝負をふっかけられるか分かんないし。 だとしてもあの人に勝てるヴィジョンが見えないんだよなあ、まあ札に当たらなければ関係なさそうではあるけどブラフの可能性もあるしな。 …さてある程度浴びたしもういいだろ。 俺は風呂から出ると服を着てリビングに向かう。 「さて今日は魔力操作の練習でもするか。」 俺の戦闘スタイルは近接アタッカーだから魔法の練習しても意味あるように思えないし。 知識だけは無駄にあるんだ扱わないと意味が無い。 『魔力解放』 俺の中から炎のような青い半透明の何かが溢れ出す。 「これが俺の魔力ねえ、気力と真反対の性質持ってんじゃん。」 この状態で更に気力を解放してオーラを通して魔力と混ぜることで【混合覇気】が使えるようになる…が。 「多分俺の場合無理なんだよね。」 魔力量と気力量が俺の扱える範囲を完全に超えてる、それに加えて何故か俺の気力と魔力に明確な属性が付いている、しかも気力が【赫炎(かくえん)属性】魔力が【蒼氷(そうひょう)属性】、混ぜたりしたら大爆発が起きる、やめだやめ。 というかなんでこんな属性が別れてんだよ、今まで気づかなかったけどおかしいだろ。 ♪ピンポ〜ン♪ 「チャイム…誰だ?」 まあ天だとは思うけど。 俺は玄関へと向かい、扉を開ける。 「おはよう、戦いにきたわよ。」 扉の前には予想通り天と後ろには流風が居た。 「おはよ、流風も居るんだな。」 「なんだ?居たらダメなのか?」 「いや、ダメとかじゃないけど、昨日脳天かち割っちゃから、体調とか大丈夫なの?」 「大丈夫だ、【自己再生】持ちをナメるなよ?それにあれは手加減していたんだからな。」 「え、まじで?!」 「えぇ、流風が手を抜いていたのは本当よ、だって魔力ばっかり使って【混合覇気】を使わないし【風操作】以外の能力も使って無かったし。」 なるほど、通りで戦闘経験皆無の俺が勝てたわけだ。 「まあ、私はそんな事するつもりは一切無いから、覚悟してちょうだいね?」 そう言って天は俺の事を軽く睨みつける。 「お手柔らかにね。」 俺は苦笑しながらもそう返す。 「それじゃあ、戦闘場所は前と同じ森だから、【転移の術】を使うわ…それと。」 天は俺と流風に御札を貼り付けながら言う。 「私との戦いが終わったらちょっと話しておきたい事があるんだけど、いいかしら?」 「ん?ああ別に構わないぞ。」 「わかった、それじゃあ。」 『転移の術』 俺の視界が以前の森へと移される。 「お互いベストを尽くしましょう。」 そう言って天は俺に向かって御札を投げてきた。 気力を解放!まずは回避に専念する。 俺は投げられた御札を避ける。 すると目の前から1つの光の玉が目の前に現れた。 弾幕…! 俺はその攻撃に当たり、衝撃で吹き飛ばされる。 俺は何とか受け身を取ると木刀をもう一度構え直した。 口の中に鉄の味が広がる。 やられた、御札を使ってあらかじめ放っておいた弾幕へと誘導された。 俺に1つの御札が投げつけられる。 「いつまでボーッとしてるつもり?」 『爆華の術』 俺に張り付いた御札は大爆発を起こして、俺の体を吹き飛ばす。 くそ、右腕がもうろくに動かない…! こっちが攻めないとやられる。 俺は天へと一直線線に向かい木刀を振り下ろす。 「攻撃が単調。」 天がそう言うと俺の左手を掴み、そのまま木刀を奪って俺を押し倒した。 天の右手には白く光る弾幕がある。 「勝負ありかしら。」 まだだ…まだ! こうなったらもう…使うしかない! 『魔力解放!』 俺は気力を解放した状態で魔力を解放する。 その瞬間俺は大爆発を起こして天を遠くへと吹き飛ばした。 俺の脳天からドクドクと血が流れていく感覚が感じられるがやがてその感覚も薄れていく。 赤と青が混じり、紫色となったオーラがとてつもない勢いで俺の中から流れ出す。 『混合覇気 紫龍』 俺のオーラは小さな爆発を起こし大きく乱れその存在感と威圧感を上げていた。 「やられっぱなしだと思うなよ!」 俺はそのオーラを全身に纏い、天へと駆け出した。

0
0
第一章4話天との戦い

第一章3話流風との決着

「…ねえお父さん。」 黒髪青眼の女性不知火雨音(しらぬいあまね)は自身の父親を呼ぶ。 「どうした。」 「杏寿斗、大丈夫かな?」 「お前が心配する事では無いだろう、今は修行に集中しろ。」 「でもさ、やっぱり不安なんだよ姉として、杏寿斗に何かあったらって。」 「杏寿斗なら大丈夫だ、お前も知ってるだろ?」 「あいつは能力を持たない代わりに、並外れた身体能力と精神力、どんな環境も直ぐに適応する適応力、そして鍛錬しないと習得不可能な気力を元から所持している、いつまでも守られる存在だと思っていたらダメだぞ。」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「君ほんとに良いね!こんなに楽しい戦いは久しぶりだよ!」 流風は興奮気味に語り出す。 「そうかそうか、まだ【練気】の練習をしてから1日も経ってないんだ、あんま期待しすぎんなよ。」 さて次は… 俺は流風からある程度距離を置き様子を伺う。 こいつの能力は恐らく風に関連する事象を操る能力、【風事象操作】とかだろう、風はもちろん暴風の音だけを鳴らすなんて芸当もしていたしな。 ここは慎重に行かないと負ける。 『風波』 瞬間、流風から強烈な突風が吹き出す。 相手を風で吹き飛ばす技か、ここは森だこの突風で吹っ飛ばされた先の木で背中を強打とかがあったら洒落にならん。 俺は風に身を委ねつつしっかりと気力を足に纏い、木の側面に着地する。 さて、【自然影響耐性】がどこまで効くか。 『風牙』 「っち、休ませる気は無いのね!」 流風から俺目掛けて複数の風の牙が放たれる。 なるほど風の抵抗を受けた中攻撃を避けるのは至難の業になるな。 …まてよ、これなら火力不足を補えるかもしれない。 俺は自ら風牙目掛けて飛び込む。 その瞬間少し遠くで見ていた天は少し驚いた表情をしていた。 木刀を風牙に当てて、一気に気力を流し込んで取り込む! 俺は風牙に触れている木刀に気力を流しこみまくり、風牙を取り込む。 『自然喰い』 俺は風牙を取り込んだ木刀で他の風牙を薙ぎ払うと、風の抵抗を全て無視して流風目掛けて一直線に飛ぶ。 「っは、ほんと無茶苦茶するね!」 今だ! 『我流 風牙一文字』 俺は風牙を取り込んだ木刀で流風を叩きつけた。 流風は風牙と気力を纏った木刀の両方を防ぎ切ることは出来ず、そのまま地面へと叩きつけられる。 その衝撃で頭からを血を出し、流風は気絶した。 「あれ、やりすぎた?」 俺は地面に着地して流風に立ち寄る。 「流風は素で自己再生能力が高い、それに私が今から治療する、大丈夫だから安心していいわよ。」 そう言ってさっきまで少し遠くで傍観してた天は俺の後ろから現れて流風の治療を開始する。 「えっと、天…さんだね。」 「天で良いわ、さん付けは慣れないし、流風の事も呼び捨てで良いと思うわよ。」 天はそう言って流風の頬をツンツン触ると右手が光だし、その光が流風の傷へと吸収されていく。 その光はみるみると流風の外傷を治し、ある程度するとその光を消してこちらに近づいてきた。 「さて、次は私と戦うわけだけど準備は良い?」 「いや…さっきのでだいぶ気力も体力も消費したから今日は無理かも。」 そう言うと天寂しそうな顔で 「そう、それじゃあまた別の機会で。」 と言い、俺に御札を貼り付けた。 「家は覚えたから。」 あ、これ1日じゃ終わんないやつか。 『転移の術』 天そう唱えると、俺は家の玄関の前に立っていた。 「…はぁ、疲れた。」 正直俺に体力と【自然影響耐性】が無かったら死んでたかもな。 俺は部屋の扉を開けて中に入ると、2階にある自室へと入る。 俺は木刀をそこらにほっぽり出すとベッドへとダイブした。 本当に疲れた、また明日もあると考えると… 「はあ…頑張るしかないか。」 そう言って俺は目を瞑った。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「おい鷹、熊、調整はしっかりしたのか?」 黒いフードを被った恐らく女性だと思われる者は2人の男女へ威圧的な態度で話しかける。 「わかってる、今回の作戦はヘマしない、というかそんな要因になる奴が居るとも思えない。」 茶髪赤眼の鷹のような羽を生やした女性がそう返事を返す。 「そうやって自惚れた結果が3年前の計画が失敗した要因だったんだろう?もっとクールに行こうぜ、な?」 3mは余裕で超えるほどの体格の男が女性の肩をポンポンと叩く。 女性はその男の手を叩き落す。 「その汚い手で私に触らないで。」 「っけ、相変わらず神経質な野郎だ。」 そう言って男は女性と距離を置く。 「仲間割れはするなよ、今回の作戦はあの最強を殺すためにも成功は必須、絶対にヘマするなよ。」 「「了解。」」 そう言って2人の男女は敬礼をするとその場を去っていった。 「3年前の蛇のようにMURDZ(マーズ)のメンツに泥を塗るような真似をするなよ。」

0
0
第一章3話流風との決着

第一章2話魔境の洗礼

俺は本をパラパラとめくる。 「古い技術書を現代語訳した写本か、古代語読めるのにわざわざこんな事する必要あったか?」 まあ父さんらしいと言えばらしいか。 「セオリー通りにいくなら自分の魔力を感じてうんたらかんたらみたいなのをするらしいけど、俺もう出来るし、【練気】の習得を先にやるか。」 俺は本閉じると自分の中にある気力を感じることから始める。 一般人の言う気力というのは困難や障害に負けずに物事をやり通す強い精神力の事を指すが、【練気】や戦闘の時に使う気力はまた別のもの。 精神との結びつきが強いからこのような名前がついてるだけであり魔力と同じく気力というのは能力に関連するエネルギーだ。 …さてこれかな。 俺は心の奥深くにある燃え盛る炎のような強さを感じるそれに干渉し、解放しようとする。 『練気 気力解放』 俺はそう呟くと同時に俺の中から炎のような赤い半透明の何かが溢れ出す。 これは強い気力に当てられて具現化された俺のオーラだ、これを出している間はある程度強い精神力の持ち主じゃないと戦意喪失する。 自衛にはもってこいの技術だ、有難く使わせてもらう。 「そしてこれの次の技術が自身の武器にこの気力事オーラを乗せる、【覇気継承】てやつだな。」 確か6年くらい前だっけ?俺が11歳の頃。 姉さん、能力は強いのに魔力とか気力の操作苦手だったからこれで苦戦して、俺に愚痴をこぼしてたな〜、でも愚痴だけで2時間拘束は小学生相手にやる事では無いよね。 「…さて、まずはこの溢れる気力を抑えて乱れるオーラを整える。」 「それから最初はゆっくりと武器に流し込んでいくんだっけ?」 俺は右手に気力を集中させてもう片方の手にある木刀を持ち手の部分から撫でるようになぞっていく。 「…あれ、意外と簡単に出来た?」 もしかしたら姉さんよりも気力操作の才能とかあったのかな? 「まあいいや、それで【覇気継承】の精度を確かめたいけど相手居ないし、居たとしても戦いたいわけでもないし、何故か家の地下にあった模擬格闘用のダミー人形でも使うか。」 俺が気力を抑えて地下に向かおうとすると。 『鈴』 俺の家の周囲で嵐が吹き荒れるような轟音が鳴り響く。 「うるっさ!」 なんなんだよ、まさか近くで誰かが戦闘してるとか? そうだったとしたらヤバすぎる、この家はリフォームされているとはいえ余裕で築30年は超えてる、こんな暴風に耐えられるわけが無い。 「流石に文句言いに行くか。」 俺は念の為木刀を持ち、玄関から飛び出す。 そこには家の周りを覆う緑色の結界と、その中心で浮遊する緑髪緑眼の同い年位の少女とその隣で同じく浮遊している金髪金眼の少女だった。 「おい、人様の家何勝手に荒らしてんだよ!」 俺は浮遊する2人の少女に指を指しながらそう言う。 「お、思った通り釣れたぞ!天。」 「そうね、流風の感は良く当たるけどまさかこんな軽い挑発に乗ってくる奴がいるとはね。」 緑髪緑眼の流風と呼ばれる少女の言葉に金髪金眼の天と呼ばれる少女は驚いているようだった。 「いやこんなん軽くねえだろ、地下降りる途中の階段でも聞こえたんだぞ、迷惑にも程がある。」 「あら、そうなの?知らなかったわ。」 「まあ今回の【鈴】は改良版だからな、いつもの3倍位はうるさいぞ!」 うるさいぞ!じゃないんだよなあ… 「とにかく、その音ほんとに不快だし、迷惑だからさ辞めてくんない?」 「ん〜、折角里から離れた辺境の地に来たんだし、ただうるさい音を出して帰るのも嫌だから、私達と戦って勝ったら良いよ!」 「え、てことは2対1か?」 ただでさえこっちは【練気】を習得したばっかりだってのに。 「2対1はフェアじゃないからしないわ、安心して。」 そう言って浮遊していた天は屋根の上に降りる。 「それに連続で2回勝負もフェアじゃない、だから流風と戦った後の傷は私が回復させてあげる、そのへんも気にしなくて大丈夫よ。」 相手に公平さを重視する人がいて助かった。 「私は2対1でも良かったんだけど…まあいいや。」 流風が浮遊を辞め地面に降りると俺の家の周りを覆っていた結界が消える。 これでさっきからうるさかった音も消えた、集中出来る。 「それじゃあ家が壊れても困るだろうし別の場所に移動しましょうか。」 天がそう言うと御札を懐から取り出し自分と流風と俺に貼り付ける。 『転移の術』 天がそう言った瞬間、目の前に広がっていた景色が森へと変わる。 これは…札を媒体とした魔法かな? 転移の術と言っていたし場所を移してくれたんだろう、ありがたい。 『風牙』 俺に向かって複数の風の牙が飛びかかってくる。 『気力解放』 足に気力を纏って脚力強化! 俺は飛んできた風の牙を躱す。 「危ないなあ、少しは手加減してくれよ。」 「手加減?するわけないでしょ、戦闘はいつだって全力じゃないと。」 あぁ、そういえばここは戦闘狂の楽園だったな。 「…やるしかないか。」 俺は木刀を構える。 『覇気継承』 俺は木刀に気力を込めると、流風目掛けて振り下ろす。 それを流風は難なく躱し、少し距離を置く。 『風刃牙』 流風の周りの風が緑色のオーラを纏い、鋭い刃となって襲いかかった。 さっきよりも早い…!けど2発しかきてない。 俺は俺は風刃牙と呼ばれる風の攻撃に向かって木刀で斬りかかった。 するとその攻撃はぐにゃりと曲がり、木刀に叩かれた衝撃であらぬ方向へと吹き飛ぶ。 続けてもう1発も木刀で斬りかかり、吹き飛ばした。 「へえ、やるじゃん私の【風刃牙】をただ気力を纏っただけの木刀で吹き飛ばすなんて。」 「自然系だったからな。」 俺は能力は無くてもそれ以外はある。 それが【耐性】、自然の神の末裔である俺は【自然影響耐性】を産まれた時から持っている。 この耐性を【覇気継承】の応用で木刀に流し込んだ、それだけの事だ。 「今度はこっちから行くぞ。」 俺は木刀を構え直し、一直線に流風目掛けて走り出す。 「ふーん、空も飛べないのにどうやってこっちに来るつもり?」 さっきと同じように気力を使って脚力を強化。 俺は流風にある程度近づくと強化した脚力で流風の前まで飛ぶ。 「…!」 『我流 一文字』 木刀に全ての気力を流し込んで叩きつける! 俺は流風に対して木刀を振ると相手に直撃し相手は仰け反る。 俺はもう一度脚力を強化して地面に着地する。 火力が足りない何かで補えればいいんだが。 俺は木刀を構え直す。 基礎は出来てる、あとはそれを上手く扱う為の応用力だ。 これは魔境の洗礼だ、勝たなきゃこの先やってけない。 この勝負は意地でも勝つ。

0
1
第一章2話魔境の洗礼

第一章1話動き出す時間

「はあ、どうしてこんな目に。」 十分な広さを持つリビングに寝そべり俺はそんな事を呟く。 「家を追い出されてしかもスマホ以外の電子機器も奪われるなんて予想外だったな…」 時は遡る事数日前。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「おい杏寿斗(あずと)、いつまでもそんな風にぐうたらしてないで修行でもしたらどうだ?」 俺が自分の部屋のパソコンでゴッドフィールドをしていると俺の父さん不知火雅(しらぬいみやび)がいつも通り俺に修行をしろと言いに来る。 父さんの言う修行とは戦闘訓練の事。 この世界には一部の人間には特別な力【能力】が与えられる。 そして俺の家系は祖先が自然の神との混血らしく【自然系】に分類される能力が産まれる子供に宿るらしいがなぜか俺だけにはその能力が宿らなかったらしい。 「どうせ無能力者の俺は姉さんみたいに修行しても意味ないよ、そんな事よりゴッフィをやってる方が有意義だ。」 「そんな事はないだろう、能力は無くてもお前が神の末裔である事は間違い無い、とある無能力者は魔力や気力を鍛えて能力者と同等の力を手に入れたらしいしかもただの一般人がだ、一般人がそれだけ努力をしているというのに才能あるお前が努力をする前に諦めるのは失礼というものではないのか?」 確かにこの世界は能力だけじゃ無く【魔法】や【練気】と呼ばれる一般人でも努力さえすれば手に入る能力に近しい技も存在する、けどそんなの極めたって結局能力者に勝てるわけではない。 「いや、めんどくさいし。」 本当に長ったらしくてうざいな、別に俺の事はどうでもいいだろ…まあいつも通り適当にあしらっとけばそのうち諦めて姉さんの所に行くだろ。 俺がそんな風に考えていると、父さんは予想外の行動に出た。 「えぇい!もう我慢の限界だ!杏寿斗、お前をこの家から追い出す!」 「え?いやいやいや、何言ってるの父さん?流石に冗談だよね?」 「これが冗談に見えるか?」 いえ、全然見えません。 「…お前は俺が二十歳の時に修行のため暮らしていた魑魅魍魎跋扈する世界【幻魔郷】に1人で行ってもらう、安心しろ魑魅魍魎跋扈すると言ってもちゃんと人もいるし暮らすための家もある、まあそこに住んでいる全員が能力者で半分以上が戦闘を遊戯として楽しむ戦闘狂の楽園だがな。」 「…」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− さて…この世界の説明をある程度入れていたが理解してもらえただろうか? あの後姉さんや母さんに頼ったが二人共「行ってこい」と言わんばかりの目つき、確かに能力が無いからって修行を永遠にサボってた俺も悪いかもしれないけどさ、ひどく無い?だって戦闘狂の楽園だろ?俺絶対死ぬよ? 一応刀と修行用にって木刀を貰ったから自衛はできるかもだけど、なんで刀なんて持ってるんだよ、あれか?職権乱用か? …こんな状況だし流石に修行しよう、一週間ちょっとやったぐらいじゃ帰れなそうだけどここから生きて帰るためには必要だろうし。 刀以外に貰ったのは…修行用の本と日本円、あとこの築30年は経ってるであろう家だな。 俺は家の柱を軽く揺らす。 軋む音はしない、汚かったのは外観だけだったし中はしっかりとリフォームされててそこそこ広い、父さんがまともで良かったどこぞの鬼師匠みたくボロい雑巾小屋みたいなところに住まわされるかと思ってたからちょっと安心だな。 「よし、修行始めるか何するかなんて知らないけど。」 そう言って俺は修行の本を開くと木刀を握りしめた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「おーい、天(そら)!天は居るか?」 緑髪緑眼の17歳ほどに見える少女は元気な声で叫ぶと目の前にあった家の扉を蹴り飛ばし中へと入る。 「居るから大人しくしなさい、毎回毎回私の家を壊して、これで何度目よ?」 そんな少女と会話をすべく家の奥から金髪金眼の同じく17歳ほどに見える少女だった。 「まあまあそんな細かい事は気にすんなって、そんな事すらどうでも良くなるほどのビッグニュースがきたんだぞ!」 「…そのビッグニュースってなによ。」 「この人外魔境に外からの人が来たんだよ!しかもあの雰囲気、絶対只者じゃねえって!私のカンがそう言ってんだ!」 「ふーんそれで?」 「今からそいつに殴り込みに行くんだけど、お前もどうだ?」 「そうねえ…」 天と呼ばれる少女は少し考えるそぶりをすると。 「私もついていこうかしら、ちょうど暇してたとこだし。」 「おっし決まりだな!行くぞ、天。」 「はいはい、道案内お願いね流風(るか)。」

0
0
第一章1話動き出す時間

ホークアイ〈Ⅱ〉

「さて、念の為もう一度言うぞ。」 悪者らしい格好に変装した警察はタバコの交換カートリッジを下に取り付けると一服する。 「ふぅ…まずお前をダーティーラット御用達の奴隷オークションに出品する、そこでダーティーラットにお前を落札してもらって潜入する、以上。」 「そんな雑な感じでいいのか?、それにダーティーラットが俺を選ぶとは限らないぞ?」 「ああ、それならお前の"それ"を使えばいいんじゃないか?」 そう言って、警察は俺の右目を指さす。 「…確かにこれを使えば興味を持たれるだろうけど…奴隷がこれ使って大丈夫か?」 「ああ、それなら全然オークション中に使ってもいいだろ、檻に入れられて何も出来ない奴隷なんて警戒されるわけないしな。」 「まあ…大丈夫なら。」 俺はキャリケースを檻の中に放り込む。 「…お前それを持ち込む気か?」 「当たり前だろ?、もしかして持ち込めないのか?」 「あ〜…全部は持ち込めないな、だけど数個くらいなら行けるんじゃないか?、衣服に忍ばせられればだけど。」 ふむ、それだったら。 俺はキャリーケースの中から拳銃と500発ほどの弾丸、そしてサイレンサーを取り出す。 「最低限、これがあればいいかな?」 「そうか…まあそれぐらいなら上手いこと隠せば何とかなるだろう。」 警察がそういったかのを聞くと、俺は檻の中に入り、服の死角となる箇所に拳銃と弾丸とサイレンサーを隠した。 「おし、準備万端だ、会場に連れてってくれ。」 「了解。」 警察は俺に目隠しをすると、ガタンと音と共に檻の中がカタカタと揺れる。 どうやら会場に向かって歩き出したらしく、車の排気音が微かに聞こえてくる。 俺は"右目"に力を込めて周囲を見渡す。 『鷹の目(ホークアイ)』、とある事情によって手に入れた異能力に類する目。 右目に力を込めることで『透視』、『遠視』、『暗視』、『未来視』、『威嚇』をすることが出来る。 今は透視と暗視を使って外を見ている。 どうやらトラックに乗せられているらしく、見慣れない空中道路を走っていた。 まあ奴隷オークションとかいう明らかヤバそうなイベントを大都会でやるわけないわな、多分この下の東京辺りでやるのか? さて…そういえば潜入した後に何をやればいいかとか聞いてなかったな、確かさっき服を見た時に… 俺は裾の辺りを探る。 そこから1枚の紙切れがポロリと落ちてきた。 俺はそれを拾うと暗視を使って内容を読む。 「※この紙は読んだ後、必ず誰にもバレない場所に隠す、もしくは処分すること。 今回この依頼をした理由はダーティーラットの壊滅を進める、というのが主な理由となる。 依頼内容を説明する時に警察を潜入させることを試み、失敗したと言ったが、実は1度に10人ほど送り込んで1人だけバレずに今も潜入を続けている者が居る、まずはそいつとコンタクトを取ってくれ、そいつが次やることを教えてくれるだろう。」 …なるほどね。 俺は紙を読み終えると、鉄格子に擦り付けて文字をぐちゃぐちゃにした後にビリビリに破いて撒き散らした。 さて、今の内に作戦でも考えておくか。

1
0
ホークアイ〈Ⅱ〉

クエスト〈Ⅰ〉

東暦2051年8月1日金曜日。 時刻は午後3時に差し掛かった所だろうか。 人口浮遊都市『天柳(そらやなぎ)』北部。 ほとんど機械化が進んだ都市の中でも機械化がほとんど進んでおらず、和を感じられる地区である。 最先端の技術によって活気づく街とは裏腹に叶え屋『柊堂』は今日も閑散としていた。 「ふぁあ…眠い。」 俺はソファに座って机に頬杖をつきながら欠伸をする。 「今日も仕事無しかよ…平和なのはいい事だけどさあ…」 そろそろ寝るか?いやまだ3時だし流石に今寝たら生活リズム崩れるよな…?いやもう崩しちまうか? そんなことを考えているとコンコンと1階の扉が叩かれる。 「ふぁあい、今出ますよ〜。」 そう言うと、俺は階段を降りて玄関の扉を開く。 そこには黒いスーツに身を包んだ30代前半ほどに見える男性が居た。 「…警察か?、俺に何の用だよ。」 「あぁ急で悪いが仕事の依頼だ。」 「もう午後3時だぞ?…たく、で依頼の内容は?」 「依頼は世界最大の犯罪組織『ダーティーラット』への潜入だ、もちろん報酬は豪華にしてやる。」 「ふーん…なんで俺に依頼したんだ?」 俺は当たり前の疑問をぶつける。 「警察の人間を送る事も考えてみたんだが犯罪組織ダーティーラットならば素性調査等をされれば直ぐに気づかれてしまう、そこで君のような辺境の地に何でも屋をやっている変わり者、柊颯(ひいらぎはやて)の出番というわけだ。」 なんで名前知ってんだよ… 「まあ確かに警察が行くよりはバレにくいだろうな、だけどあくまでもバレにくいだけだ、辺境の地に何でも屋をやっていたとしても素性調査でバレるだろうし、何でも屋はどちらかと言えば探偵に近しい職業だ絶対に疑われるぞ?」 「それに関しては問題無い、こちらが君に関する極わずかな資料を改変すれば疑われることは無い、ダーティーラットも君みたいな人間1人1人を監視対象にはしてないだろうしな。」 「あ〜…それだったらいけるか、報酬は後払いでいいぞだけど、かなりの金額を請求するがな。」 「ふっ、成功したら最低でも5億の報酬は約束しよう。」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「それで?、この格好はなんなんだ?」 あの以来を受けてから約1ヶ月。 俺の準備は1週間程で終わったが、警察側の準備がかなり難航したらしく、かなり時間が経ってしまった。 「ああ、それは奴隷服だ。」 「…今なんて?」 「奴隷服と言った、お前には奴隷になって潜入してもらう。」 「oh…マジか。」 「マジだ、お前は奴隷としてダーティーラットに潜入してもらう。」

1
0
クエスト〈Ⅰ〉

第4話クリティカルを許してはいけないその2

オークションが開始された。 商品の内容はPCにはよくわからないものが大半だろう。古のものの化石、ミ=ゴとイス人の電気銃セット(改造済み)、奴隷用調教済みショゴス、ヘビ人間が作った巨大メカの一部、超高級ミード……。 中には価値のわかるものや使い道が想像出来そうなものがあるかもしれない。それでも出品されているもののほとんどが非倫理的で、理解が出来なかった。 しかもそんな商品をここに参加している客はとんでもない大金を支払って購入しているのだ。 誰一人取り乱すことも、糾弾することもない。皆一様にこれが当たり前であり、価値のあるものだと信じている。 このような冒涜的な状況にSAN値チェック(1d2/1d4) アズミオ「あれ?」 KP「ほらさっさと振りやがれ!、そして死ね!」 凛童SANチェック14→34失敗 1d4→1 アズミオ「ふん、効かないねえ!」 KP「お前本当になんなの?」 沢山の商品が競り落とされるのを見送り、「喋るカブトムシ」が900万円で決着がついた次だった。 パッと、ステージ奥のスクリーンに映像が映る。 そこにいたのは檻の中に閉じ込められている高橋だ。 アインス「世にも珍しいカブトムシの次は、王道中の王道、生きた人間でございます。生贄にするも、実験に使うも、洗脳して信者とするも、ありとあらゆる使い道がある万能商品!」 アインス「今回用意させていただいた人間はごく普通の外見、捕まったあとの態度から察せられる性格も一般的なものと考えられるでしょう!」 映像の中の高橋は見る限り大きな怪我もなく無事のようだ。 アズミオ「そういえばお金はどうしよう。」 アインス「ではこちらも購入希望の方は札をご提示ください。初めは1000万からとなります」 一通りの説明の後司会はそう言った。
高橋を買い落すのであれば札を掲げ、このオークションに参加するしかないだろう。 アズミオ「参加したいけど…このキャラ金がねえ。」 KP「どうする?参加しないって事もできるけど。」 アズミオ「KP、参加者の金を奪います。」 KP「別にいいけど、失敗したらどうなっても知らんぞ?」 アズミオ「いやいや失敗するわけないでしょ。」 KP「それをフラグと言うんだが…」 アズミオ「いやいやKP、今日の俺は…」 凛童隠す15→5 クリティカル 凛童隠れる10→9 成功 凛童忍び歩き10→2 クリティカル アズミオ「絶好調だということを、忘れるなよ?」 KP「???????????????」 アズミオ「さあKP!、大金をよこしやがれ!」 KP「えぇと、それじゃあ貴方は1d100億を手に入れます、振ってください。」 1d100→99億 KP「凛童はw99億を手に入れますw。」 アズミオ「笑いこらえきれてないじゃん。」 KP「お前がクリティカルで暴れるせいだろ。」 アズミオ「それもそうか…それじゃあオークションに参加するぞ。」 KPCの購入希望者はPCを除いて2人だ。合計五人以下になるため即座に口頭での金額提示が開始される。PCは近くにいたスタッフにマイクを渡され金額を宣言することになる。 心理学を使用することでNPCがまだ戦うつもりがあるのかどうか、あるいは諦める寸前なのか、そういった様子がわかるかもしれない。 アズミオ「10億円賭ける、それで一発だろ。」 KP「まあ…1人の人間に10億以上は賭けないわな、はい貴方は見事高橋を落札する事に成功します。」 最後まで札を立てているのは貴方だけだ。客席を確認した司会は改めて貴方の方を見る。
「そちらの方が10億円で落札です!」
その台詞をもって、貴方の高橋の購入が確定した。 その後もいくつかの商品がオークションにかけられ、いつの間にか全てが終了していた。 参加していた客たちは順番にホールから立ち去っていく。 貴方がホールを出て行こうとしたタイミングでスタッフから声がかかる。 購入した商品の引き渡しとして1デッキ貨物室に来ることを伝えられ、購入権利である檻の鍵を渡されるだろう。 またその場で購入手続きが行われる。 支払いを済ませ鍵を受け取り、最下層に向かうため階段を下りればスタッフが立っていた。どうやらオークションの品物を受けてとりに来た客を待っているようだ。
鍵を見せれば貨物室まで案内してくれる。
広い貨物室は衝立のようなもので区切られいくつかのスペースに分けられていた。
ざっと見るところオークションに出されている物品が仕分けし、置かれているようだ。
案内してくれたスタッフは角まで辿り着くとこちらですと衝立をずらして中に入れてくれる。
衝立内部には映像で見た通り檻があり、その中に高橋がいた。 高橋「え?、ちょお前なんでここに…」 凛童「助けに来たんだよ、ほら帰るぞ。」 スタッフ「鍵をこちらに。また、拘束具などはご入用ですか? 手錠、リードなどがありますが。」 凛童「いや、必要ない。」 KP「貴方がそう言うとスタッフは鍵を渡すでしょう。」 凛童「高橋を檻から出すぞ。」 高橋「おお、ありがとうな!」 凛童「なあに礼は要らない、友人を助けただけだこれで今までお前から受けてきた色々はチャラだな。」 高橋「まあ、そうだな。」 凛童「それでそっち目線何があったんだ?」 KP「そう聞くと、高橋は次の事を貴方に教えてくれるでしょう。」 ・連れてこられて無理矢理檻の中に閉じ込められた ・オークションで高値で売られたらしい ・特に怪我などはない ・他に捕らえられている人間はいなさそうである アズミオ「じゃあまじでフィア達がやらかさなかったら良かっただけの話じゃん、クリティカル出してなかったら終わってただろ。」 商品の受け取りが終了した時点で貨物室及び1デッキからの退出を促される。
再びこのフロアは関係者以外立ち入り禁止となるだろう。 スタッフのいないところまでやってきた時点で高橋が凛童に鍵を渡す。
高橋「スタッフが落としたの拾った」 と言いながら差し出された鍵には部屋番号がある。
この番号は確か、スタッフルームとして使用されている部屋だろう。 KP「ここからしばらく高橋と一緒に探索です。」 アズミオ「それじゃあスタッフルームに行くか。」 高橋が拾ったという鍵を使うと簡単に扉は開いた。
スタッフは全員出払っているようだ、誰もおらず荷物だけが置かれている。
机の上には広げっぱなしの本があった。 手書きの文章が書きこまれており、表紙を確認すればdiaryと書かれていた。 装丁もまさにザ日記といった感じだ。
だが中を見ればそれほど熱心に書かれているわけではないようで、最初の数ページこそ奮闘の痕跡があるが途中からは一行しかない日や日付が飛んでしまっている。
記載した人の性格がありありと伝わってくるだろう。 アズミオ「日記を読むぞ。」 『日記』
※重要そうなところのみ抜粋 〇月×日(最初のページ)
日記をつけることにした。日々のクトゥルフ様への信仰や業務についてここに記していけば、完成する頃には魔導書にも等しい日記になるだろう。我々の支部は教団の末席に座する下っ端にすぎないが、それでも我が神への想いは負けていないはずだ。いつの日か我々の活動が実を結ぶことを祈り、これを日記の書き始めとしようと思う。(以下長々と意味がありそうでない文章が続く) 〇月×日
チーム内のコードネームをドイツ語で統一した。我々が最近名乗っているS.D.も、ドイツ語だ。部下たちは格好いいと喜んでいたが、果たして理解しているのだろうか、やや不安が残る。 〇月×日
先日から度々観測された怪電波について、初めは他の邪神を崇拝する者共の企みではないかと考えられていたが、どうやら違うらしい。というのも釣りに行った部下が動画再生中に受信したらしいノイズというものがクトゥルフ様のシルエットによく似ているように見えたそうだ。もしかしたらクトゥルフ様が我々に何かを伝えようとしているのかもしれない。調査を進めねばならぬ。 〇月×日
遂に理解した。あの電波は間違いなくクトゥルフ様の意志である。我々はこの状態のクトゥルフ様のことを「コラジン」と呼称している。クトゥルフ様の精神であり、電子機器への干渉が可能だという。素晴らしいことだ。まさかコラジン様を受信することが出来るなんて。しかし今のところは瞬間的な受信でしかなく、明確な意志を理解するには至っていない。様々な周波数を試し、より強くコラジン様を受信出来るようにならねば。 〇月×日
部下の誰かが言った。「メカのクトゥルフ様を用意してそれをコラジン様に操作してもらえば、それは実質クトゥルフ様なのでは?」と。
天才か? 〇月×日
コラジン様を受信するための周波数は概ね特定出来てきた。海に近いほどにはっきりと受信できることもわかっている。ならば海にメカクトゥルフ様を用意するのが一番いいだろう。この試みが上手くいけば、星辰が揃うのを我慢せずともいいのだ! 天気が悪くて泣き寝入りすることもない!! いけるぞ! 〇月×日
定例オークションが近い。どうにかそこでメカクトゥルフ様をお披露目出来ないかと考えているが、間に合わなそうだ。しかし中途発表という形であれ公開すればより多くの賛同者、もといスポンサーが現れるかもしれない。 〇月×日
メカクトゥルフ様のお傍に近づくための特別な船を作成している。このうちの一つをオークションで出してみてもいいだろう。 〇月×日(本日の日付)
書こうとしたところでやめたのか日付だけが記入してあり空欄だ。 狂信者の日記を読んだことによるSAN値チェック(0/1) アズミオ「あ、これはまずい。」 凛童SANチェック13→40 失敗 KP「やっと発狂したか、不定の狂気表を振れ。」 1d10→3 幻覚 アズミオ「それじゃあ親に怒られる幻覚を見ます。」 アズミオ「発狂ラウンドは…」 1d10→7 アズミオ「7ラウンドか。」 凛童「お願いだあら!、許してくれよそれくらあい!」 高橋「ちょ、お前大丈夫か?」 アズミオ「高橋精神分析持ってる?」 KP「15ならあるぞ。」 高橋精神分析15→6 成功 アズミオ「やったぜ。」 KP「今日のダイスおかしすぎるだろ…それじゃあ発狂は解除されます。」 アズミオ「おけ、それじゃあ置いてある荷物を漁るぞ。」 KP「おけわかった。」 荷物の量を見てもそこその人数分ありそうだ。 アズミオ「目星だな、高橋の分も振るぞ。」 凛童目星25→52 失敗 高橋目星50→49 成功 KP「それじゃあカバンの中から何かの設計図を見つけるぞ。」 設計図 何らかの乗り物のようである。“SKC号”と名付けられていた。 一部バツ印がつけられていて、上手く動かないと走り書きがあるのがわかる。 また『パスワードヒント:S.D.のS』とセキュリティ意識の低いメモが残されていた。 KP「ここで、目星もしくはアイデアを振ってください。」 凛童目星25→75 失敗 アズミオ「高橋は振れないのか?」 KP「ん〜、まあいいぞ。」 高橋目星50→92 失敗 アズミオ「あーらら、まあさっきまでクリティカル祭りだったしこんなもんか、それじゃあ残りの4デッキを調べるぞ。」

2
0
第4話クリティカルを許してはいけないその2