仙 岳美

493 件の小説
Profile picture

仙 岳美

現在、下記サイトでも活動中。     記    ・小説家になろう  ・アルファポリス  ・カクヨム  ・X

一生物の古時計

 夕刻の工場地帯の一角に古い時計屋があった、そこにひとりの何か落ち着きの無い、工員の青年が訪れる。 「頑丈な一生物の時計が欲しいですが」 時計屋の店主はルーペで時計内部を見る様にその青年を見定め。 「あるよ、お金はいらないよ」 と奥から持ってきた時計は小さく古く今にも止まりそうな時計だった。 「こ、これは?!」 「町中で倒れていた、吟遊詩人が持っていた時計だ、皆で埋葬料の代わりに、詩集と琴は楽器屋、化粧品と服は服屋、帽子は帽子屋、靴は靴屋、宝石は役人、私は時計屋だからこの懐中時計とオマケで手鏡を拝借した」 当然に青年は不可解に感じ、声を荒げる。 「あのー! 一生物の時計が欲しいんですが!」 「だから、これで充分」 「何故ですかー!?」 「それは、このまま行けば、あんたの命はこの時計より短いと言う事なんだよ」 「し、失礼な!」 店主は懐から取り出した丸い手鏡を青年に向ける。 「……」 「これは化粧鏡、映る者を生き生きと見栄え良く映し自信を与える鏡だ、だがこの鏡をもってしても、あんたの顔は、もう死んでいる」 「……」  その時計を黙って受け取り、店を出た青年が見上げたその赤焼けな空の下には、無数の煙突が黒い煙を黙々と吹いていた……のだった [終]

1
0

外伝17 辺境半島の日々

辺境半島の日々 ⑦辺境半島の乱の続き。 お題・魚  あのナイフ騒動から縁を持った女王様の経営する弁当工場で働き、その女王様の住まいに入り浸りになっていた、その理由は今でもよくわからない、何か居心地が良かったのであろう、その女王様の住まいは迷宮の最下層の角のエリアにひっそりと質素に建っていた。ちなみに俺は弁当工場の中にある一部屋を借りている。 そんな仕事終わりと言っても、まだ午後の三時、その帰り際に社長女王に釣りに誘われる。 「釣りですか?」 「そう釣り」 「地上に出るんですか?」 「ううん、釣り堀あるよ」  ゴブリン君と俺を乗せたロバの手綱紐を女王様は引き歩く。そんなやや恐縮する感じで、同僚のゴブリン君と連れて行かれた場所は、下層エリアに作られた正しく釣り堀だった。 天井に無数の鍾乳石が垂れている。 釣り人はポチポチといる。 その釣り堀の中央にある青い瓦屋根なやや中華風建物の中に入ると、左右に数台の自販機が置かれていた、奥の壁際の角には小さい台所と炭酸飲料水の看板ベンチが置かれていて、そのベンチに麦わら帽子を腹に乗せた老ドワーフがいびきを立て寝ていた。 そのドワーフ見て女王様は言う。 「またサボってる〜」 「このドワーフは?」 「ここの管理人、でも鬱でアル中なの」 「起こしますか?」 「ほっとこ」 「……」 俺は『こんな事で良いのか』と思いつつ自販機の方に目を移す。 自販機の種類は、弁当、飲料、酒、煙草、カップラーメン、惣菜パン菓子パン、駄菓子やや高級な菓子、子供向けの玩具、それに当然ながら釣り餌の販売機などである。 「色はどれがいい」 と言う女王様の前にある販売機の中には、リールと竿がセットになった袋が縦に吊るされていた。 どんやら買ってくれるらしい。 「どれが良いのかな」 と俺が聞くと。 「性能は同じだけど、やる気出すには赤かな、落ち着いてやりたいなら青、それ以外は好みと言うか適当」 俺は適当に黒を選ぶ、ゴブリン君は緑か黄色にするか悩んで黄色を選ぶ。 次は餌である。 餌は、爆蛹、並赤、渋翁、通魂と四種あり、全ては練り餌だった。 これもよくわからないので、おそらくこの釣り堀の経営者である女王社長に聞く。 「これもどれが良いのかな」 「爆は良く釣れる、並は普通、渋は昔ながらの作り方の簡素な餌だから当たりは、やや渋い競技用、通は全て天然素材だからその日の魚の気分や天候によって釣果にバラツキが出るマニアックな餌かな」 俺とゴブリン君は無難に並を選ぶ。 女王様は通を選ぶ、その餌を見比べて見ると、色が少し違う様に見て取れるが、カラシなどのチューブタイプの容器に入れられた練り餌である。 生き餌が少し苦手な俺にはありがたい。  何ともあれ、適当な場所で釣りを始めると少しして俺の竿が引く、その引きは中々で、その引きを楽しみながら釣り上げると変な見た事ない魚が釣れる。 それは頭が豚の様な型をしている。 「やったね、それは豚魚だよ」 「豚? 確かに鼻が豚だね」 そのあと少し離れて釣りをするゴブリン君も釣る、見るとその魚もクチバシがついており、その名も鳥魚だそうだ。  二時間程で皆んな順調に様々な見た事無い魚を釣る。 それを先程の管理小屋の流しでエラと内臓を外し、オーブンで焼き、自販機でライスと即席の味噌汁を買い、それらと焼けた魚を乗せた皿をお盆に乗せ、外にあるテーブルに座り食べると……不意を突かれた感じな味覚が口の中に広がり、思わずに俺は声をあげる。 「こ、これは、肉だよ、豚肉そのものだ、匂いも豚肉だ」 「良かったね」 と社長は笑顔を浮かべる。 「コレは良いね」 「でしょう、魚を釣るのは好きでも、肉の方が好きって言う人が結構多いから、その違和感を無くせないかなーと思って作ったお魚さん」 「凄いね」 「餌も釣れ加減をコントロールできるように試行錯誤を繰り返したのよ、ボウズはとても寂しいからね」 「生態系のバランスは乱れないのかな?」 「それは大丈夫、全部生殖機能は取り除いてある宦官魚」 と女王様はやや含み笑みを溢す。 俺は少しブルっとし、気持ちを入れ替え様と釣り堀を見渡すと、遠くで、先刻に酔い潰れていたドワーフが脚立と植木バサミを持ちウロウロとしていた。 「堀長ー、負けないでー!、頑張れー」と女王様はそのドワーフに叱咤を飛ばすと、答えるように手を振るも、またその場で酒を呑み始め、あげくのはてに、またそこで寝てしまう。 その姿を見て女王様は両手を折り上げ一言呟く。 「オッノー、ダメだ、ありゃ」 俺とゴブリン君はその仕草に思わず吹き笑う。 ……そんな平和な日々もあったのである。 [終] ※ボウズ(一匹も釣れなかった事。界隈用語) ※ドワーフ  背は低くも屈強な筋肉を持つ人種、性格も勇敢で戦士として優秀である。ただその種族の社会的方向性である傭兵稼業が合わずに心が病んでしまう者も稀にいるのである。(想像上の生き物) ※宦官(かんがん)  女官との面倒な色事が起きない様に去勢された宮廷に使える男官。 ※サイ(動物のサイの事では無く、地下迷宮で獲れる、成分が鉄に近い鉱物) 登場人物紹介 女王様  種族 ダークエルフ  名 シェル  信仰心 高い  武器 サイの蛇矛     サイの長刺剣  持ち物 サイの中華包丁      サイのホーリーブックカバー      狡猾なロバ 伝  半島北部全域を支配していた麗国の元女王、妾の子、家臣に反乱を起こされ、ロバと側近のゴブリンと古の国の廃遺跡地下迷宮に逃げ込み、そこで再起をはかり、今に至る。エルフ特有の羽は一応は生えてるも、短く形もヘンテコリンで上手くは飛べない。 ゴブリン君  種族  ゴブリン  名   ゴズ  信仰心 仕える主人に準ずる。  武器  サイの短刺剣      サイの刃ブーメラン  持ち物 サイの包丁 サイのロックピック 伝  麗国の元斥候、身体は普通のゴブリンより小さく背は生まれ付き背虫、仕える女王とは、いつからかのお友達。    堀長  種族  ドワーフ  名   バルガス   信仰心 無から女王様に洗脳され高くなった。  武器  サイのマサカリ  持ち物 サイのパワーバングル         サイのドラッグケース 伝  迷宮の釣り堀の管理を女王に任されているドワーフ。元々は女王より先に廃迷宮に居た先住民。少し心が病んでいる。

1
2

魚(ホラー)

序  ゴトリ  と、目の前に魚の煮付けが盛られたやや重ゴツい、皿が置かれる。 その音は心の上に重しとし置かれた気がした。    その魚は酒の肴であるが、それは此処で長いする為に注文した料理、正直今の僕に記憶を薄める酒があれば良い、そんな心を見透かしたように、僕を見る魚の目は白く、僕をその白い目で見ている…… その目を観て、僕は過去のたった一度の過ちで流してしまった過去と、流れた涙を思い出し…… 酒を口に運ぶ…… …… … 「冷めないうち」 女性の店員さんは、優しく促す様に僕に勧める。 …… … 「温め直しますよ」 僕は手を横に振る。 …… … それから、どのくらい経ったのだろうか、その煮付けは時間が経つ事で水分が蒸発し、身の方の塩梅が濃くなってしまい、「それ見ろ」と言ってる様に思える魚を見つめていると、その視界の横から、コトっと、やや大きめの茶碗に盛られた茶漬けが細く白い手を介し差し込まれる。 「マスター(店主)からのサービスです、合うと思いますよ」 僕は思った、歪に変わってしまった過去は、何か添える事で薄まり、活かす事もできるのかな、と…… 骨と皮だけの老店主は、暖簾(のれん)を仕舞うと、そのまま外に出て小雨の中、電子タバコを吹かし、広大な霊園の方を眺めている。 僕は、 『ああ、そう言う事かと思った』 僕は見上げ、店員さんと目を合わせ、『やはり似ている』と思い、手を握る。 幕  その晩、僕はその白い手に夢中でそれは、先刻前の、魚の、中骨の様に、むしゃぶりついた…… そう、もう、一回壊した骨格の無さない世界に遠慮なんて…… 後は…… 骨の髄迄喰い尽くす迄だ。 [終] お題・魚 題材・魚々骨眼(ギョーコツガン)  捨てられた生ゴミの中のその目と偶然に目が合ってしまうと、それは、吉・凶のどちらかの前触れと言われている、博打を打つ理由が無ければ、その魚眼に塩を振る事が無難とされている。

1
2

香水

 あえて人に語る迄も無い遊びがその理由な、徹夜明けの朝方、クシャクシャの味噌汁のクーポン券を置き「あと並で」 ……    牛丼の残りの飯に味噌汁をかけ、それを胃にかき込み終えると、その帰りの足で日々微妙に、それは過去を洗浄するかの様に変化していってしまう街並に微かな怒りを覚えつつトボトボと歩いていると、また……そうまた、知ってる香水の匂いをし、振り向くとその姿はまた赤の他人だった……  その人と目が合ってしまい、軽く会釈をすると、その女性は優しい声で挨拶をくれた。 「おはよう」 でも僕は色を付けずに、そのおはようをすぐに返す。 「おはよう」 そしてサッサとその場を後にする。 何故なら、周りがいくら変わろうが、永久に人の代わりなんて、僕の中であり得ないからなんだ…… [終] お題・香水

4
0
香水

49 使命鳩……ノ巻 転生聖斗手懺記(中)

リンク作品  [蝉と少女] 序  暗く常に雷雨が鳴り注ぐ現世の間の夜空を白き鳩は飛びゆく、やがてその姿は、嗅ぎつけた闇の翼を持つ複数の追っ手に追い付かれる、鳩はクチバシに咥えた綿毛を振り飛ばす、すると宙にばら撒かれた白い種子は鳩の形に膨らみ、その追ってから鳩の姿を一時眩ませるが、時期にその効力は薄れてゆき、その身は切りつけられ、いたるところから血が吹き出す。  主は僕(しもべ)の危機を察知し、手に持つ錫杖をかかげ、両眼、額の三の目、心眼、さら両手足親指の仏眼も開眼させ、八の目で全集中し、近くに救済者を探す……すると、とても高貴で広く穏やかな心を持つ、強力な分派、それも同じ開眼者を感じ、すぐに救援のシグナルを飛ばす。 《仲間がとても危ないの、お願い!》 直ぐに爽やかな奥ゆかしい応答が入る。 《御意》    トドメの一突きを受ける間際に鳩の頭上に縁だけ青く光る暗い月が昇り現れ、その月から湧くように現れた蝶蛾混ざった群に鳩が包み込まれると、すぐにその蝶蛾達の羽から複数の七色の閃光が発っし、それは湾曲し、八方に走り飛び、闇の翼を全てを追撃し切り裂く…… そのおかげで、赤い糸をその足に繋がれてた鳩は、なんとか逃け切り、再び新たに設けられた運命の分岐点、その場所へと向かう。 少しし、主の身体は透けてゆく、声が聞こえる。 「「「さよならです」」」 「短い間でしたが、お世話になったご恩はけして忘れません、そして勝手をお許し下さい」 「『お師匠さま、だから言ったじゃ無いですか、この者はとても強い未練があると、恥をかかされるだけですよって」」 「「「舎利子、黙りなさい」」」 「「!……、それにしても、私達も知り得ない宇宙の未知は、何故に転生術なんか授けたんですかね? その為、一つだった下世界も二つ分かれてしまって、紛らし事」」 「「「舎利子!」」」 「「……」」 「「「……一つだけ持ってお行き、でも諦めませんよ、時が来たら……その貴方のお弟子さんと一緒にまた楽しくやりましょうね」」」 その声に頷き、授かった錫杖は石に立てかけ、脱いだ神服をたたみ、その下に置き、続けて、同じく授かった経典の巻物、三食の神器フォーク、スプーン、ナイフ、そのナイフだけは、服の上に置かずに手に握り祈りに入る…… * * * 「おじいちゃん! 助けてー! 帝都の偉い人と知り合いなんでしょ! なんとかして……頼む……よ……」 「麻美さん……」 * * * 「だとしても! 島長! 頼む! ただ頼む! 無理ならワシ単独で宮殿に忍び込み、盗む!」 「やめとけ、転生の能力者のお前でも聖域である宝殿に入る前に死ぬ、そして帝国との同盟に亀裂が生じる、それは護国存亡の危機を招く事だぞ、わかってるのか」 「そんな事は後で考えればよいじゃろ! 万人の民よりワシは子供の未来を選ぶ、そして何がなんでも、五臓六腑、体から飛び出ようとも転生薬を持ち帰る!」 「今、何がなんでもと言ったな……別の次元から来たお前は、相変わらず馬鹿で熱いな……わかった、後は任せろ」 * * * バタバタと旗がひるがえり、夕刻の赤い日差しに照らされている帝都。 その皇帝の間……  帝国のシンボルカラー漆黒の黒幕の前の玉座、そこに皇帝である老人が鎮座し、その左には、銀髪でスラット背が高く盲目ではあるが、心眼、悟りを開いたと言われる程、優秀な孫であり、後継者の王子が立ち、右には、末子で内大臣である、白髪の初老が立つ、その三公の前に志摩長は平伏していた。 皇帝である、その老人は口を開く。 「なるほど、志摩長に泣きついた古い友人の息子の若くして亡くなった嫁を生き返らせたい、故に、朕に献上したもはや唯一無二の転生の秘薬を返還せよと言う事だな」 「はっはー 無礼極まりない事は重々承知の上で志摩長、一生のお願いとし、申し上げる次第で御座います、その心は子が親に助けを求める気持ち同等であります」 そう言い終えると志摩長は脇差し抜き前に置き、ダメなら腹を切る覚悟を示す。 皇帝は沈黙している。 そして皇帝の横に立つ大臣が口を挟む。 「志摩長公、その薬は、まもなく先帝復活に使用する故に」 皇帝は大臣に手制し、また少し沈黙し、立ち上がり壁窓から空を見上げる…… 王子は、左右それぞれの親指と人差し指を着け、円作り、その右手の円を腹に当て、左手の円は頭上にユックリと掲げる、するとどこからか一羽のそれは猛禽類に襲われたのか血だらけの白鳩が皇帝が立つ窓際に降り立ち、ヨロヨロと何かを訴える様に窓に近づくとオデコを窓ガラスに数回擦り着けるとそのまま横に倒れ込む、その目は、なおをもまだ閉じずに皇帝を、見つめ続ける、それを見て皇帝の心は動く、「訪れたのは、決死の平和の使者か……うんうん」と相槌打ち口を開く。 「わかった、返そう」 すかさず大臣が「皇帝陛下!」 と反対とばかりに叫ぶ。 「良いのだ、それにあの……|戦《いくさ》馬鹿……いや、武神と言われた親父を生き返らせたりしたら、また戦乱の世に後戻りするやも知れん、死ぬ間際に名誉を挽回したいと言ってはいたが、親父は人の恨みを、それは果てしなくけして取り返せない程に背負ってしまった、悪いが役目は終わりだ永遠に、ただし条件もある」 「はっ」 「その見返りに、そちが朕と碁を打つ日を週一回増やす、以上」 「はっ!……へっ?! それだけで良いのでしょうか?」 「最近流行りおった、あの宇宙から来た未知のウィルス、そして意を合わした様にして突如異星の商人が持ち込んで来たウィルスワクチン、どうも使用できんかったのでな、使用を遅らせた朕にも原因の一端はある、それに死ぬ前に、朕も一つくらいは、良い事もしたいとちょうど思っていたのだ、ただそれだけよ、あ! 後一つ」 「はっ、何なりと」 皇帝はニヤリとし。 「お前たまに手加減するだろ、アレは辞めてくれんか、何気に傷付く」 「はっはー」 平伏しながら横目に見た盲目の王子は、誰が見ても心が安らいで行く様な笑みをただ浮かべていた。 それを見た志摩長の目に一筋の涙が流れた……。  そしてこの事により、皇帝はワクチンを使用許可の勅令を下々に緊急でその日に下す。 それはバタフライエフェクト…… 歴史が実は大きく変わり世界も次元も分離し別れた時だった…… それは、誰にも知り得ない。 また実感も無い。 [続] あとがき  小さくも切なる思いは、人々に伝達する事で増大し、世界やがては、創造主すら、動かすものなのかも知れない。 付録設定資料(よろしければ) 新規・登場人物 皇帝 六十歳  武器 ブラックソード[玉蟲]  極技 帝流・レインボートルネードセンターアサルトスターキック        レインボー逆L型ソロウォールバリア     蝶蛾流 基礎四級・一光線投剣術 大臣 四十歳・皇帝の末子  武器 ブラックソード[ネオ]  極技 帝流・レインボー七分身サークル残刀リンチ陣        レインボービットドームバリア     蝶蛾流 三級・手刀斬 王子 皇帝の孫・後継者  武器 ブラックソード[居合]  極技 帝流・レインボー幻列残光マッハ一閃切り        レインボーテラドームバリア     蝶蛾流冥派・究極奥義・輪廻蝶蛾乱行八光全殺陣 ※ブラックソード    帝国が開発し生産している剣の名称。メイン機能は、剣にかかる重力を使用する者の腕力に応じ、程よく調整し、軽快に使用出来る様にするAIアシスト機能が特徴。  形状も様々なタイプの物が生産されている。その中でも皇帝の所有する剣は、ほぼ実戦に用いられる事は無い事を踏まえ、剣帯が楽な事に重きを置かれ、刃渡りは二尺と短めに軽量作りとし、その刀身は代々受け継がれた玉蟲の殻が散りばめられた鞘におさめられている。 余談として、後に日本帝都から海を隔た、北東の多種多様な種族が混在する半島で、人の潜在能力を呼び起こすとされるサイと呼ばれる未知の鉱物で生産された武器で武装した新興勢力が半島を統一し台頭する、その国はその国名も[塞](さい)と変え、後方の中華大帝国と手を結び、日本帝国に戦線布告をする、その奇跡の武器と唯一渡り合える武器とし、帝国の武器テクノロジーは発展し、やがては、その新興勢力を撃退し、滅亡させる事に成功する。 ※八芒星宙速多次元粒子算出般若法術   それは八の目、全てを開眼に成功させた仙者がおこなえる、叡智の悟り。 ※闇の翼の者達  その者達は、見る事を辞め、目は退化するも、だからと言って心眼を開く努力もせず、ただその濁った目に映る人や動物を目的も無く理由も無く襲いかかる。 ※開眼  それは心の目、そして、その目は、現の世界であっても、開く事ができると、伝説の天人、三眼法師は説く。

2
0

外伝16 ただひとりの解脱者

外伝16 ただひとりの解脱者  王宮最上階に突入した安倍乃太郎と妖國の女王との戦いの最後は、一体一のお互いに身体から放出する気を形にしたエネルギー砲による押し合いになっていた。 女王が手に持つのは代々受け継がれる大杖、太郎も代々受け継がれた念珠を手に絡ませ、印を組み、その手をから気功を放出する。 やがて対峙する二人は限界を感じる領域に突入する。 太郎は心が折れそうに何回もなったが、左右に転がる此処まで苦労を共にした仲間の遺体を目にするたびに踏ん張る事ができた。 一方の女王も倒れ尽きた親衛隊達を見て、少し此処が揺らぐも、『使命を真っ当し』、思うのは、そこ迄だった。 その僅かな心の差が勝敗へと繋がる。 遂に太郎の放つ緑色の光線が赤い光線を押し切り、女王を跳ね飛ばす、 と同時に太郎も脱離感を感じ、その場に倒れ込む。  服と軽具足は飛び散り脱げ、裸で床を手先の力だけで這う、妖國の女王、その後を、精神も身に纏う水干もボロボロになった、太郎は四つん這いで追う。 女王は玉座の裏の奥の間の部屋に入る。 太郎も入る、太郎は残り力を全て振り絞り、八枚の札を女王を囲うように吹き撒く、その角に札を張り作り出した、八芒星の封術陣の中央に這う女王が入った時、呪を唱える……間の床を光の線がほと走り八芒星が刻まれると女王の身体は宙に浮かぶ八本の光の縄で絡め捕らえられ、吊し上がる。 「こっ!これは? きゃっあああああああああ!、し、締まるっうう、はぁ~、痛い……」 女王は呻めき声をあげる、が、やがて、全身の力が抜けた様にだらんとし、スッキリとした顔に成り、太郎に話しかける。 「見事です……ただ貴方の思い描く勝利はこの先にありえません……」 「その理由は」 「ただ感じるのです、人には遅かれ早かれ最後行き着く定めがあります、貴方はその定めに必要以上に早く向かっている気がしてならないのです」 「それは薄々感じております、女王よ」 「……なら、もう何も言う事は、逢ってみなさい……真の女王に……そして」 そう言うと女王はやや不気味な笑みを溢し口を結び目を閉じる。 太郎は近づき懐から細長い二枚の黒い紙札を取り出し一枚は横に女王の目を隠す様にその上に張り、もう一枚は、秘部に張りつけ、呪を唱える、と、女王をの、その身は光り輝いてゆく……閃光と共に床に一つ白い種豆だけが転がり残る。 太郎をその豆を拾い、懐から取り出し和紙に包み、懐に仕舞い、すぐに辺りを見渡す……そして二つの真珠を繋ぎ張り合わた、それは瓢箪の様な形をした真珠が金の台座に嵌め込まれた指輪を見つけ、その指輪も拾い、己の手に嵌め少し安堵する。転がる女王の杖も手に取る、見た目は、ただの古い木である事が解るが、その紫な色に異様を感じ呪を唱えその効力を調べると、持つ物の魔力も増幅させる効果があると知り、持ち帰る事にする。 そして太郎は、その杖を片手に持ち、床に大の字に寝転がり、目を閉じ体力の回復を促す瞑想に入り、少し体力が戻ると女王の間を後にする……  全て戦後処理が終わり、島に古くから根を張る大樹の前に太郎とその横に白拍子が佇む…… 太郎は、その白拍子の手に、女王の杖を渡し待たせ、言付け語る。 「この先は占や書では解読し切れなかった、いや、その目で確かめる事しかない未知の道であり、私が戻れぬ事もある、ひと月たち、私が戻らぬ時は、お前が私に化け、病死をしたフリをし……この件は全て最初から無かった事とし、終わりにするのだ、故に、そなたに名と過去を与える……静、そなたは、いにしえの静御前と成りすまし、信仰され、この地に残り、後を監視しするのだ、良いな」 そう言われると、肩に黒い猫を乗せた白拍子の姿をした式神は薄っすらと笑みを浮かべ頷く。 太郎はそう言うと呪で豆に変えた女王、その豆を握った手の人差し指を大樹の根に刺しそのまま、その穴に豆を落とし埋め込み呪を唱える…… そして続けて、中指に嵌める真珠の指輪に口を当て、呪を唱える…… すると空間は歪み……… 一面の銀世界に場面は変わり…… フェーズ1    目の前に氷の様なそれは玉座と言うに相応しく無く、飾り一つなく、左右の肘掛けは、斜め上へ、その先の角は鋭く突き出る様に伸び、上へ伸びる背もたれは長く天井に着いてしまっている、その玉座に一人の女性が鎮座していた…… ただ、その姿は透けていた、そしてその顔を氷の様に冷めている様に太郎は感じ…… 「メガタ女王よ、私は安倍乃太郎、この世界の真理について伺いたく、少々手荒ながらも人事を尽くし天命を勝ち取り、参りました……」 女王は応答しない…… 太郎は懐から式神となり得る札を一枚取り出し、それを素早く鶴に折り、女王に向け飛ばし反応を見る。 鶴はスーと飛び、女王の顔をすり抜け、玉座に当たり下に落ちる。 太郎は感じる取る。 『実体が無い』 そう感じた時、氷を回している様なカラカラとした音が聞こえ、玉座の背壁に上部に揺ら揺らと揺れる様に光の大輪が浮かび上がり、その輪が回り出すと同時に、外壁の繋ぎ目の溝溝にクランクに光りが走り飛び、周囲に奇妙な、それは例えるとガラスの太鼓の様な高音低音が一定の波長で交互にリズミカルに鳴り響くと、女王の透き通る片手が上がり、その手に筆らしきものが握られ、目の前の空間に文字を書く様な動作をする。 フェーズ2  太郎は、自身の鶴を飛ばした指先も女王の様に透けている事に気づくと、外壁が高速に上下確認できないほどに動いている事に気づき、意識の中に様々な見た事の無い風景や人物、未知の文字が浮かあがり、その介入速度は早く、脳の中の処理が追い付かずに気が狂いそうになり、太郎は慌て、対処の為、呪を唱える、太郎の周りに無数の光の珠が浮かび上がり回転を始め、太郎に注ぎ込まれる光の波の流れを調整する様に、その光水を弾き初める、それと同時に太郎の視界を囲むように光の帯が回り……やがて、呪を介しその文字も理解して解読できる様になると女王の唇が少し微笑んだ様に変わる感じがし、太郎は一息つき、冷静に文字を読み始める。 ……やがて女王の間は一つの折り鶴を残し、再び静寂に包まれる淡々と淡々と時を刻む様に…… [終] 『これは!なんの小説の結末?』 そう読み、不安になり瞬きした太郎の視界の下には、円海が広がり、頭上左右周辺には夜空が見え、太郎は感じ得る。 『こっ! コレは、……宇宙空間』 そして円海から、先が尖る無数の結晶石の様な柱が伸び上がり、視界の左右を突き抜けて行き。 その柱の中に無数の蠢く人影を見、太郎は悟る。 『コレは住居、そして未来の祖国?』  フェーズ3 女王の声が響く。 《貴方はその蓄えた知識と共に私の一部と成るのです、理の理由はありません》 その言葉に太郎は自分ひとりだけ他の者より超越した能力を持ち、歩んだ人生を振り返り、悟る…… 『なんだ、私も落星であり、物語を構築する為、為だけの人形、いや文字だったのだ……そしてこれからも……目の前の……全ては決まっていたのだ……足掻く事も此処に来る事も……恐らく閣下さえも……この星は紙……そう! 神の世界だったのだ……」 最後に、この場に早く来すぎてしまった事を考え少し後悔するも、一つの物語としての役目を終えた太郎は目を閉じる……その身は浮き上がり、上下左右に回り、足元から包む様に現れた銀色の壺に包まれて、いったのだった…… その悟りを共有し知る者はいない…… フェーズΩ…… やがて女王の間は一つの折り鶴を残し、再び静寂に包まれる淡々と淡々と時を刻む様に…… [終] あとがきに代えましての簡単な解説。 宇宙流木  宇宙を漂う流木、その木はやがて、どこかの惑星の大地に降り立ち、その超常的な力で新たな世界の形成を始める。 ムーンプリズムクラスタービーム  月の光りと引力を源とし放射する光線術、それは代々王族に伝わる杖を使用しおこなう秘技でもある。 引き潮の時は細く鋭く、上げ潮の時は広く太くなる、どちにせよ、身に受けた者、ただでは済まない。 蝶蛾流・陰陽派・気功竜鳴砲  気功砲、それは身体の気を練り、形として放射する光線術。それは数多の流派に流用され、形を変える。当然ながら個々の修練により、その威力は変動する、そして気を形にできる者は数少なく稀である。 蝶蛾流・陰陽派・種式封印術  それは、殺す事の出来ないまた、時間の経過と共に再び再生してしまう不死である相手への対処に使われる方法。 不死の物は基本その多くは再生力の高い植物に近い遺伝子を多く持っていると言われている。 その仕組み利用し、その対処者をまずは弱らし、免疫耐性が落ちた時の遺伝子的歪みへ、性器や目などの粘膜から術を着け込ませ、対処者を封印しやすい種などに変化させてしまう術である。  種とした、その受け入れ先には、その地に長く居座る物への生け贄の形とし、封印する方法が一番安全と言われている。また、この封印術と相性の良い場所として、大石の下や神木の根本が良く選ばれる。 大石の下に封じる理由は、永久発芽封じい、即ち、永久に地の中に封じる事である。 木の根に埋め込む理由は、接木の原理で種を木の一部にしてしまう形で永久に木とし封印してしまうのである。 マーズーンダラスラスタービーム  宇宙を走る伝説の光線、その正体は謎である。 蝶蛾流・陰陽派・光珠盤速弾算整理術  それは、意識に介入してくる、呪術に対応する術である、この術は古の呪文に頼る形になるが、使いこなすには、日頃から数字に対しての鍛錬も必要不可欠でもある。また、この呪の開発理由は、精神に取り憑き、人を惑わす狐祓いとも伝わる。 呪  それは、様々な意味を持つ。悪口などは人の感情を揺さぶる呪の一種でもある。 呪札  それは事前に呪文が書かれている事から、呪文の詠唱時間をはぶく事ができ、実戦に置いての呪文の弱点を克服し、使用しやすくする事を可能にした。 式神伝書  式神、それは、ある一定の超常的方式により作り出した操り人形であるが、活動となるエネルギーは作製者から得ている、即ち、ある意味で信仰されている形となる。また作製者が他界した場合、式神は、他の者に信仰される事により、その存在を維持できるものであるとされている。 素材によりけり、様々な式神が誕生する。 その素材に人の遺体、中でも赤子の遺体を使用すると従順で自己成長能力を持つ、優秀な式神ができると言われている、ただそれは自己動力を成した未知の制御不能に落ち入る怪物を作り出す可能性もあり、大変危険である事と複数の懸案を上げ、伝える術者の意見もある。その懸案の一つに、放たれた式神が独自の世界を形成創成し、しまいに自身が神であると思い込み、その世界の前存在者ら洗脳し、世界を作り変える事とであると言われている。その理の暴走を止めるには、その式神を封じ、更に厳格なる人格者を複数人、定め、その番とし、その後は全ての者が関わりを一切立つ事、以外にあり得ないと書かれている一方、その最後の行には、『番人が生身の人である以上、世代が引き継がれてゆく過程でいつかその体制は式神の超常的な力に魅了され取り込まれ崩壊し、その世界に式神と共に牙を向け始めるものであると……』と、根本的に解決法は無い様に濁され、その後は対策法の加筆なのか、結末なのか、は、不明確に、筆跡が代わり、途絶える様に『……造開設他次元、もしくは遠く宇宙の果ての賢者へ、その禍は託され解決されると決めつけ、その先でも起こる災をかえりみず、この事の記録書と、せめてもの助けと思いて、知的機認証封をした、超我流全派技結集の書及び転生奥義の書を分離させた領域に共に紛れ込ませ、そして追いやる』と書かれその記は〆られている。

2
6

小公女

①  風荒む中、落ちぶれ貴族のセーラーは、井戸に水汲みに行き、水が入ったバケツを井戸から引き上がる時、パリっと赤切れした手の傷が開いた痛みを感じた。 「痛った……」 だからポケットからハンドクリームの缶を取り出し開けるともう薬は角の方にわずかしか残ってなかった。 最後のひと塗りした時にセーラーは思った。 「あー もういやー こんなメイド奴隷生活!」 とセーラーはキレ、荒んだ目で辺りを見渡すと、いつも自分に卑猥な言葉を浴びせてくる、嫌なルンペンが、スキットルを咥え、壁を背に、それは油断した獲物の様にスヤスヤと寝ていた。 そのルンペンを見て。 『私が変わるのにちょうどいいわ』と思い、何かを吹っ切る様に、そのルンペンに水が並々と入ったバケツを投げつけ、「グワッハ!」と飛びおきたところにすかさず追加で《ボッコ!》と腹にケリも入れ、母の形見の古びた髪留めを外し、髪を振り解いたら、「交換」と言い、それを、思わなぬ小公女の襲撃にわけもわからずに地にもがいてうめいているルンペンのケツに刺す、「おっ! ギヤッヒ! うおっおおお……ワシはこう見えても元は騎士……」 「そう、だからなに、お前、暇なんでしょ、従いなさい、あなた今を持ってして私の奴隷騎士です、光栄に思いなさい!」 そう吐き捨てると、スキットルを拾い、それを咥えながらそのまま主人の家に戻らず、遊楽街に下った……。 「ちょとそれ返して親父の唯一と形見なんだ……」 元貴族の肩書きは大人気だった……。 [終] お題、ハンドクリーム ※スキットル  それは小さく可愛い水筒。ただサブスクの影響なのか、それを持つ物のイメージは良くない。 ② パン!「ひー」パン!「ひー」 ショーは終わりました。 「上で休んでなさい」 あれから小公女はショー酒場で働いていました。 客層はあまり良くありません、世界の為に早く死んだ方がいいクズばっかりです。 その日も、客が注文した料理を、作ります。と言っても丸いクラッカーの上にチーズとサラミを乗せただけのものです。 それが完成すると貯蔵室にワインを取りに行きます。 頼まれた年式のワインを探しますが、ちょうど在庫が切れていました。 なので、その指定された年式より、少々損失は出ますが、古いワインを持っていきました。 二人の客はもうすでに他の酒場で呑んで来た見たいで、もうすでにクズに仕上がっていました。 オマケに強面の店主のマスターも不在です。 「お待たせしました、サラミチーズクラッカーと、在庫切れておりましたので代わりに二十年物のワインをお待ちしました、お代は同じで大丈夫です」 と小公女は営業ニコリをします。 「うぃ〜本当に待ったよ、って、知ってんなら早く来いアホ、それに二十年物だと! 俺は女もワインも十六年物って決めてんだ!」 「……」 もう一人の客が小公女のお尻を触りました。 小公女はキレました。 客の腰のピースピストルを素早く抜き取りバン! 「はっぎょうーーー 胸を撃たれた客はその場に倒れ込みます。 もう一人の客は店の外へと駆け出します。 すぐに仲間を連れて戻って来ました。 小公女は裏が鉄板張りのテーブルを蹴り倒し、それを盾にします。 騒ぎを聞き、二回の部屋でケツを休めていた、相棒のトミーが駆けつけると。 パンー!パーン!パン!パン! もう銃撃戦になってました。 小公女はテーブルに隠れながら言います。 「マスターが四段目の二番のジャクダニエルの裏にコルトと弾箱、隠してあるから、それであなたも!」 トミーはビビり言いました。 「ひー、無理ですー、人なんか撃った事なんかありません、それにまだケツが」 「撃たなきゃ、私がアンタ撃つわ」 「で、でも、おいら、パン !」 本当に撃って来ました。 トミーは慌ててコルトを取りカウンターから手だけを出すように応戦します。 「弾半分抜いて、こっち投げて!」 トミーは弾箱を投げます。 小公女は素早く空薬莢を床に捨て弾を入れ替え、ワインをラッパ飲みし。 「キヤッハハハハハハハ」 パン!パン!パン! チューインキューイン チーン! 「あーもう! このピースポンコツ! このままじゃらちあかないわ、突撃よ、いくわよ」 「ヒィィー!」 そして二人とも捕まりました。 [終] お題・チーズ

2
0

永遠のキャンプ場

 予定の無いGW、私は急に昔によく行った、山奥のキャンプ場を思い出し、オフロードバイクにキャンプ道具を積み、行くとにした。  到着すると、すぐに管理小山から懐かしい経営者のおじさんが出迎えてくれる。 「こんにちは」 と私は挨拶をする。 「おお、君は、久しぶりだな」 「ヤギは元気ですか?、ヤギのチーズ、まだ売ってますか?」 「ヤギはもういないんだよ」 「……」 「ごめんな、薪だけは、変わらずに、この小屋の裏にあるから使いなさい、ああ、井戸も場所は変わらんから、少し水を流してから使用してくれ、お金は、帰りでいいよ、寄ってくれ、いるから」  私は裏に回り薪を取り、適当な場所にテントを張る……… 翌日、管理小山に入ると……  おじさんは、ぶら下がっていた、ステンドガラス越しの十字の光りが既に白骨化したその顔を照らし続けていた…… 私は口ずさむ 「ラァラララァー、ルゥルルルーゥ…… [終] あとがき  キャンプ場、それは、何かの境界線が曖昧な場所なのかも知れない。 お題・チーズ

3
1

外伝 15 志摩長VS青年将校

外伝15 志摩長VS青年将校  青年将校と対峙し、その気を感じ取り志摩長は思う……コイツは清次以上かも知れん……それ故に残念かな……やはり隠密だったか。 それから数分睨み合いが続き、青年は口を開く。 「中々、仕掛けてこないね、なら僕からいくけどいい」 志摩長は応えない。 不意に青年将校が突きを繰り出す。 想像以上にその突きと飛び込み速度は早く、が、志摩長はその突きを横に払うと、その長剣は瞬時に二箇所二点が折り曲がり、クランクに状に成り、突きとして軌道継続し、そのまま志摩長に襲いかかる。 志摩長は反射的に、その奇剣の内側に巻き込まれてしまった太刀を捨て、鉄甲小手でその剣先を跳ね飛ばし、後ろに飛び距離を取る。 「あれー、今ので終わりと思ったんだけどな~、避けられたのは初めてだよ~、ひょっとしてこの剣の動きも見えました?」 志摩長も自分の反射神経に驚いていた。そして青年の言う通り、常人には見破る事ができないだろうと思われる、研ぎ澄まされた技から繰り出さられる、その剣のカラクリと突きの軌道がスローに感じ見破る事ができた、その認識と手応えに、確かな確信を持ち、志摩長は青年へ向かって言う。 「最後に聞いておくが、再び投降する気はないかね」 「無い、理由は知ってるはずだ、僕にはあなたの首がいる」 「やがて帝都に君の時代が来るのだろう、そうなれば金なんかいくらでも用意できるじゃないか」 「まだ時がかかよ、それに妹の病気はもう待ってくれないんだ」 「その事を太郎に相談できんのか?」 「疎まれてんのさ、ああ見えて結構気難しい人なんだ、それに今まで二人で誰にも頼らず生きて来たんだ、これからもね」 「そうか」 志摩長、歌う。 「かなしくも   うつくしき枷      それ故に       それ守る君         よりほしいかな」 「……悲しい枷なんかじゃ無いさ、僕に与えられた運命の甘美な枷さ、さてと僕も本気になるとするよ、あんた思ったより強いわ、別人だ、ひょっとして副長にワザと負けたの? その場を欺く為とか?、でも本気になった僕なら、まだあんたの腕は格下だよ」 志摩長はニヤリとし、脇差し抜き、構える。 「え、脇差しで戦うの、舐めてるな~、太刀拾っていいよ、そのくらいは待つよ」 「いらぬ、いくぞ」 今度は志摩長から突きを繰り出す。 青年将校は、その突きを余裕で跳ね飛ばし、反撃に出ようとした時、両手首に違和感を感じる、そして手首から血が吹きだし、血の滑りで掴む奇形長剣を落とす。 「あっあ! そ、そんな、つ、突きは、ま、間違いなく弾いたはず……何故に」 すぐに全身の力が抜けそこに膝を着き、前に倒れ込む…… 志摩長は言う。 「トドメだ」 その時、 「志摩長! 待ってよ!」 医務室から戻った姫が青年と志摩長の間に入り、両手を横に広げ止めに入る。 「もう、勝負ついたわ」 「ならぬ、どいてくだされ」 「ダメ」 志摩長は、この三女の姫が国王の後継者に真っ先に外された事に納得した。 『甘すぎる、これでは国がすぐに滅ぶ』 後ろで青年将校が叫ぶ様に言う。 「女にかまってもらい生きるのは、真っ平だ、兄を許せ妹よ……グッフォ」 口から血を吐き青年は、そのまま生き絶える…… 「あっあ!」 それ見て姫は声をあげる。 「舌を噛みおったか」 志摩長は転生した時にその身に授かった、志摩長にしか見えない手に帯びる霊小太刀を体内に仕舞う。そして霊剣の姿が太刀で無く小太刀だった事に悔しも思う。小太刀、故に、危険を承知で敵に脇差しで近づく必要があった。 そして初太刀で勝負を決する必要があった。 それは万が一、クズクズし霊剣の気配を察知でもされたら、剣の達人となれば、気配だけで見えぬ剣が見えるかの様に立ち回る事が可能、そうなれば……全て失う。 姫は青年の胸に顔を伏せ泣いている…… 「うううっう、元々は私が巻き込んだ事だわ」 志摩長は言う。 「違う! その青年は私と清次の勝負を見ていた、そして偶然を装い姫様に近づき利用したのだ、それに、その真の狙いは太古より帝国皇帝の宿願だった不老不死の秘薬、即ち我々の転生技術を盗もうとしたのだ、自分を責めてはいけませんぞ」 「……」 「とわ言え、その青年は最後に姑息な事はせずに立派に戦って死んだのです」 「この子の妹さんをお願い、志摩長」 志摩長は頷き答える。 「これも縁、できる事は全てしましょう」 後日、戦争が終結した後、月の洞窟の氷層に保存された青年は姫の強い意向で転生復活する事になるが、それは、また別の物語でもある……[完] 付録 志摩長の霊剣    志摩長が転生した事で得た霊剣、その姿は小太刀ながら霊剣特有のステレス機能を備えており、その恩恵は計り知れない。 後に志摩長はその霊剣を精神と共に鍛錬し鍛え、自在に変形させる事に成功している。 長刺剣・赤狼梅鳩(ドールウメバト)  帝都の暗殺者ハーゲンが自ら開発し、使用した暗器。 継ぎ目が肉眼ではわからないほどの、その刀身の二箇所が折れ曲がり、宙をクネり敵を翻弄する。 名の由来は、花札に描かれた鶯が留まる梅の木の枝が、この剣の折り曲がる姿に似てる事だと言われている。そして梅鳩の前に着く赤狼とは、諸説あるが、カラクリ仕掛けの剣であることから、人形ドールを連想し、そこを少し捻り、動物ドールを差す赤狼を付けたと思われる。もうお気づきだと思うが、鳩と鶯を間違えてる事からハーゲンは少し天然だったとも伝わっている。 そのハーゲンの最後は冷酷な暗殺者に相応しく無く、馬車に轢かれそうになる子猫を助け、その事故で亡くなる。 その後の長剣の所有者は安定せず、あらゆる人の手に渡り歩く、その理由は、そのカラクリ武器の本来の能力を引き出すのは困難を極める事だったと伝わる。

3
0
外伝 15 志摩長VS青年将校

外伝14 マシュリア

外伝14 マシュリア  地下研究室の最下層の図書室、そこでマシュリアは、愕然としていた、突如、目の前に降伏兵の青年が腰の剣を自分に向けて抜いたからだった。 「あなた……そう言う事なの?」 「ああ、そうさ、わけは長くなるから話さないよ、でも安心しておねいさんは殺さないから、ただ少し眠っててくれるかな」 「そうは、いかないわよ」 マシュリアは拳を構える。 「だよね、へー、おねいさんの武器は素手かい」 「ええ」 …… 意識を途切れる途切れるの中、マシュリアは笛を取り出し吹き散らす…… 「呼ぶのかい、まあ、行く手間がはぶけるかな、此処の研究室は底無しに広すぎる、まだよく迷うよ」 笛の音を聞きつけた、志摩長と姫は、駆けつけ、その惨状に呆然とする。 倒れているマシュリアに志摩長は駆け寄り、手を取る。 「志摩長さま、すみません……」 「おい、しっかりしろ、傷は浅いぞー!」 「志摩長様、お気をつけて、その者只者では……」 青年将校は口開く。 「心配しなくてもいいよ、急所は外してるから、でも早く処置室に運んだ方いいかな」 志摩長、マシュリアの手をその胸の上に置くと、裏切りの青年将校に影が差す横顔を向けたまま、話しかける。 「貴様は安倍乃太郎の犬か?」 「犬、人聞き悪いな、直属の部下さ、そしてあんた達を逃したお人好しの副長の見張り役さ、まあ、僕も女は殺さない主義だけどね」 姫が青年将校に話しかける。 「全部嘘だったの?」 青年はうつむき答える。 「まあ、九割は嘘かな、ただ志摩長を切った後、姫様が僕のガールフレンドになってくれるなら、喜んで受け入れるよ、ただし転生復活の秘密は全て喋ってもらうよ」 「あなたは何が目的なの? 悪い人には見えないけど」 「……聞くかい、志摩長公がその時間をくれればだけど」 「話してみろ、お互いにどちらが死ぬにせよ、知らんと気持ちが悪い、単純に出世と金が目的なら話しはもうよい」 「出世と金か、まあそうだな……ただ単純と思われるのも癪だから話すのよ……妹が病気でね、治療に莫大なお金がいるんだ、あんたの首を取ればお釣りが来るほどの金が入る、そしてあんたを逃した事が知れた副長は失脚し、カリスマ的な隊長も今回の戦争で戦死した、安倍参謀長も病気だ長くは無い、即ち時期に帝国は僕の天下さ、それだけだよ」 「そうか、この島には帝都程に良い医者はいないしな」 「そう言う事」 「では参る、残念だ、※鍾会気取りな裏切り者の君よ」 志摩長は太刀を抜く。 青年も細身の剣を構える。 「姫さま、聞いての通り、私の客だ、離れていてくだされ、マシュリアを医務室へ……そして私が万が一敗れたら、メガタに、話しはつけてあります」 [続]15へ ※鍾会士季(しょうかい しき)  中華三国志時代の武将、司馬昭の右腕として活躍し、遂には蜀漢平定に貢献する大功を立てるが、彼の地で反乱を企てた後、敗死した。(ウイッキペディア引用)

2
0