仙 岳美
548 件の小説叫び
叫び 夕方、空に薄らと怪妖しい紫の色が差し入る秋空に僕は橋の上からゴミだらけのそれは人間がいる限り改善する事の無いドブゴミ川を見つめていた。 川には様々なゴミが浮いていた。 飽きて捨てられた蒼いロボット。 誰も見られぬ事に絶望し川に投げ捨てたと思われる絵が描かれているキャンパスと散乱するその絵具。 枕 腐れ枯葉。 和綴じの本 腐った蜜柑。 壊れたライダーベルト。 散らばった数枚の狐面。 ボロボロな木の如来像 まだ生きている様に思っている様な鶏の生首。 封筒が沢山入った迷彩袋。 僕は吹き溜るそれらの夢骸に嫌気が差し、ペッと唾を吐いたその川を見つめていて自分が馬鹿な事に気付いた。 でもそれは違かった。 僕は阿保の方だった。 何故なら馬鹿は気付けば治る、薬は要らない。 僕は相変わらずにブラブラしている、様は阿保は治らない。 僕は治らないから阿保なのだ。 阿保だからブラブラし川に八つ当たりで唾を吐いているのだ。 僕はその現実に恐怖し両頬に手を当て口をOの字に開き叫ぶ、するとグニャりと渦を巻く様に目の前が歪んでいった、それは、『阿保が飲む薬の副作用だ』と思ったんだ。 [終] お題・薬
アリスと風の塔
アリスと風の塔 アリスは塔の外壁の内側に時計周りに螺旋に着けられた石階段を上がっていました。 なぜそんな事しているのかと言うと、森で見かけた青い小鳥を追って来たら、行き着いた塔の窓にその小鳥が入っていたからです。 その鳥は青い空が見える筒状の塔の中央を飛んでいて、階段から手を伸ばしても届きそうに無く、また上へ飛んで行ってしまいます。 アリスはその鳥を追いかけて階段をグルグルと上がって行きます。 でも駆け上る事は出来ませんでした、何故なら、その階段には手すりが無く、上がれば上がる程に落ちたら一巻の終わりだからです、だから上がれば上がる程にアリスは足がすくみ、アリスはそのうち這う様に階段を上がる感じになってしまいました。 そして階段も上がるに従い古くボロボロになって行きました。 でも小鳥は、さらに上へと上がって行きます。 アリスは堪らなく声を上げます。 「ちょっとま、待ってよー」 その声が届いたのか、小鳥は空中で留まります。 でも少し経つとまた上へ飛んで行ってしまいます。 空は夜に成り、空気も冷めたくなって行きました。 アリスは片手を上げて叫ぶ様にお願いしました。 「小鳥さん、一回でいいからこの手に留まって!」 そう言うとすんなり小鳥は戻って来てアリスの人差し指の指先に留まってくれました。 その鳥は青く、頭の天辺から尾にかけて金色の毛線が入っていてそれはとても見事な小鳥でした。 その毛はとても暖かくアリスはホッとしました。 でもアリスは焦り、下げている方の手で小鳥を捕まえようとしてしまいました。 その瞬間、鳥は飛び立ち、アリスは、その拍子に片足を滑らせ階段を踏み外し、下に落ちて行きました。 アリスは落ちながら両手を上へ伸ばし「待て! 行かないで!」 と呟いたその時、塔の中の時間が止まり、アリスの身体も空中で停止しました。 鳥が喋りました。 「アリス~、君も狡い大人になってしまったんだね」 「私はもう19よ、当たり前よ」 「だね……さよなら~」 「さようならですって?、あなたなんかとっくに〇〇でいるじゃない!」 「認めたね偉い偉い、そうさ、僕は既にアリスの手に入るものじゃないのさ、出逢うのが少しばかり遅かったね、でもアリスの時間はまだ沢山残ってるから絶望しないで頑張れー、じゃあ本当のさよならー」 時間は再び動き始めます。 アリス落ちて行きます。 今度は階段が逆時計回りに見えます。 ドスン! アリスは目を覚ましました。 見上げると少し高い木の枝に引っ掛かる錆びた鳥籠がぶら下がっていました。 その中には、干からびた鳥の死体がありました。 アリスは散歩中に発見し不意に見てしまった、誰かが認められなかったと思う、放置したその時の悲惨な現実の様を忘れようと久しぶりに空想の世界に浸った事を思い出しました。 そして今度は目を背けずに冷静にその鳥籠を下ろすとそこでアリスは籠の扉の部分が外されている事に気付き少し考えました、でもすぐにそれはもう無駄な事と思い考えるのを止め、鳥を素手で掘った木の根元に埋め、その上に獲ったお花を添え祈るとアリスは風が上がって行くの感じました。 その風を便りに見上げた夜空にアリスはさっきの青い小鳥を見た様な気がしました。[終]
沼の怪異
沼の怪異 その昔、現在の神奈川の平塚市北部に岡崎四郎と言う国主あり、その領地内に、その地名を沼目、大島、小島、木島などと言われる、沼地地帯があり、その地帯はその名の通り、広大な沼地に点続きにそれは島の様に浮かぶ陸地があり、その島を繋ぐ様に浅い桟橋がかけられていた。 その橋の上を戌の刻(20時)に四郎その家臣、山中平次は命を受け歩いていた。 そして領民の訴え通り、闇夜に複数体、不意に不気味に光るそれは海月の様な浮遊体が現れ、平次の周りを取り囲み、次々と体当たりをして来る、その様は人を橋から暗い沼地へ落とすものと思いけり。 しかし平次は色白で小柄ながらも肝が座った男であり、口に咥えた草を吐き捨てると、冷静に太刀を振り次々とその海月共を間合い内に的確に捉え、切り捨ててゆく、その足元には砕けた髑髏(こうべ)が転がる。 『これは沼に打ち捨てられた者の怨念か、哀れ』と思い平次は「南!」ガッシャ! 「無!」ガシャ! 「妙!」ガッシャン! 「法!」ガッン! 「蓮華経……」 と念仏を唱えながら切り続けるも切りが無いと思い一時撤退を考えると、群れる海月の中に唯一中央が赤い海月を見つけ、背に背負う短弓を取り出し撃ち放つとその矢は見事当たり、その赤海月は逃げて行く、平次がその海月を追って行くと小さい忘れられた浮島に行き着く。その中に廃れた小さい神社があり、その戸を開くと中に、のたうち回った後に死んだと思われる老猫の死体が転がっていた、その腹には平次の射った青染め羽根の矢が刺さており、そして社の裏側の木には毛で海月の様に吊るされた何者かのミイラ首が風で揺れていた。その死に顔は、世の中の全て恨んでいる様に平次は感じ、またその怨念が猫に乗り移った様に思えた平次だった。 それからその沼の怪異は起きなくなったと伝わる。 [終]
寄生精神虫
「自分の腹にナイフを刺したそうじゃないか、何故そんな無茶な事をしたのかね?] 「先生! 虫が!……虫が中から俺の腹を食い破ろうとしてるんです!」 「……綱川君、薬を変えようか」 「いえ、嘘です、ただ虫が怖いんです、虫が」 「虫は人間の味方だよ、そして君の味方でもある、何を恐れているのかね」 「……正直に言います、最初は虫が好きだった奴が意味も無くきらいだったのです、それがいつのまにか虫自体が」 「その人は本当に虫が好きだったのかね?」 「いえ、なんとなく、そう思っただけです」 「じゃあ今度は、なんとなく虫を好きになってみてはどうかね、自分のペースで、彼らは君を急がせないさ」 「……はい」 しかし患者は今も心も身体も鎖で拘束されている。 「蟲」 「頭が痛い!、奴の放った蟲が寝ているうちに俺の耳の中に入り、脳を食っていやがるうーー!」 「痒い!痒い!痒い、蟲が毒を出していやがる!」 「心臓がピクピクするー、きっと蟲が血管の中を這って移動してやがるんだー! 次は俺の身体の何処で!悪さを開始するんだー!」 「手が足が腰が首が!全部アイツの蟲のせいだー!、うわー」 [終] お題・薬
おばさん
子供の頃、おそらく小学生低学年の頃、公園の砂浜で遊んでいると同じ学校でもクラスが違う男の子が寄って来ては、私の近くにいた、そしてもうひとり、その子の後ろには、おばさんがいた、そしてその子の背中を叩いたり、グーで頭の両側面をグリグリしたり、肩を掴んで揺らしたり、耳を引っ張ったり、腕を引っ張ったり、足を踏んだり蹴ったり、そんなその子はとても体調が悪そうだった、そしてたまに顔色が良くて元気な時がある、その時はそのおばさんいない時、でも少しするとまたその子に付き纏い、その子に意地悪をしていた。 私は見えないふりをする。 その理由は、そうしなければいけないと感じていたから。 そのおばさんはたまに変な迷彩柄の手さげ袋を持っていた、一回その中身をチラ見すると、沢山の封筒と中身を取り出し後の空の薬のプラ板が沢山入っていた、それはなんか不気味だった。 そんな日々を繰り返していると、ある日に母にスーパーへお使いを頼まれたその帰りの日暮れ時に、その子とその手を引っ張るおばさんと道ですれ違った、その子の目は虚だった、そして私に気づかずにそのまますれ違いフラフラと歩いて行く。 それが私がその子を見た最後だった…… [終] お題・妖精
狐憑きの霊
昔は狐憑きもしくは般若憑きと言われていたその病は今も不治の病であり、多くの人間の希望を潰し、その人間の無念の魂は成仏せずにこの世に彷徨い続けていると言われている。 夜分、墓地の中にある精神病院跡地に差し掛かると不意に生臭い臭気が鼻を突き、目の前の空間が歪み、「生きて」と願い、手を合わせてくる不気味極まる女霊現る。 ただ不快に感じたその偽善霊に僕はハッキリ言う 「僕はお前に言われなくてもちゃんと生きてんだ、お前はとっくに足ねえぞ、そしてお前には何の力も無い、押し付けるな図々しい! 憑き物に魂迄喰われた化け物めー!」 「うらめしや〜」 「野良猫とて、自分で餌を取れなければ消えて行く、なのにお前は人に憑け入り、ただ無駄に人の生を貪り食うお前は野良猫以下だー」 「うらめしや〜人間ですよ〜」 「お、お前が人間なわけあるかー!近づくな!こっち向くな!ばあばあ!」 僕がそう言うとその霊は本性を剥き出した般若の様な顔に変わり、僕を睨め付けて来た。 が、それだけだった。 僕はカラカラと笑いながら手にぶら下げた寿司包みを確認し、家で待つ嫁を思い出しながら墓地を抜けて行った。 [終] お題 回転寿司
外伝30 麗から塞そして碧王
麗を取り戻した女王達は麗に帰り、地下王国に残った先住人であるドワーフのバルガスは、女王達と過ごした日々が過ぎてしまえば、どこかそれは一刻昼にうたた寝して見た夢の様に思いながら女王が忘れてしまっているのか定かでは無いも結果として置いて行ってしまった、それが夢で無かった証拠となってくれる老ロバを管理が任されている釣り堀の階層で散歩させていると空虚な気持ちに成り『結果として迷惑だった』と感じ、そう思ってしまう自分に半場溜息を着くと、何処から現れた黒い鳩がロバの背に留まる。 バルガスはその鳩の片足に取り付けれている細い筒に気付き、その缶の中を調べると一枚の手紙が入っており、開くとそれは女王からバルガス宛の綺麗な手紙だった。 奪還され混乱期が過ぎ落ち着きを取り戻した頃の麗国にバルガスは招待される。 そして煌びやかにかつ歴史を感じる城の中を案内され、そのままある個室に通される。 そこには見た事の無い、良い香りのする料理がテーブルの上に並べられていた。 そして女王も居てバルガスに微笑みかけ、話しかける。 「良く来て来れました、まずは」 と卓上の金杯を取りバルガスに手渡し、女王自らバルガスの杯に手酌をする。 「あ、こっコレは、なんとも恐縮です」 「いえいえ、まずは貴方に謝らなくはいけませんね」 謝る、その理由をバルガスは気づかないフリをする。 「さて何の事か」 女王は一礼し続ける。 「謀り事とは言え、貴方を騙す事をしてしまいました、心よりお詫び申し上げます」 と女王はその場に土下座をしようとする所はバルガスはその下に先に両手を着き潜り入り、見上げながら止める。 「やめてください、私で良ければいくらでも利用して下さい」 「では許してくださるのですか」 バルガスは返す。 「何も怒っておりません」 「嗚呼」 と女王は呻きバルカスの両手を包み込む様に両手に取り、胸元に寄せ、再び問い掛ける。 「本当にですね」 バルガスは手に胸の膨らみの感触を感じ顔を赤める。 「ええ、とは言え私も感情はあるので、少しそのほんの少し、心に波が立ったくらいです、ですが今はとても穏やかです」 「ありがとう」 女王の頬から涙が流れる。 それからバルガスはどれを取っても口に入れるとビックリするほどに美味しい、初めての美味珍味の料理と美酒に夢中に成る。 さらに数刻経ち酔いが少し冷めた頃に女王はバルガスに話しを持ちかける。 「今回の戦の最大の功労者は貴方に決まりました、望む事はなんでも、私に出来る事なら何なりと」 「何なりとですか」 「はい、なんなりと」 そう急に言われてバルカスはふと、揺れる思いを感じるもそれはあり得ないと思い、さらに考えるも何も思い浮かばず、困惑する。 そのバルガスの表情に女王はクスッと笑みを浮かべ窓際に立ち、空を見上げ少し考えた素振りをし鼻先をかくとバルガスに振り向き切り出す。 「王など、どうでしょう」 「えっ、私が王に!」 「はい、あの遺跡の王に、あそこに誰よりも先に住んでいたのは、あなたですし、そして落ちぶれた私に温かい食事と寝床を提供して来れた事を私は生涯忘れる事は無いでしょう」 バルガスは考える。 そして気に成る事をたずねる。 「皆は、特にあの竜人は納得してるのでしょうか?」 「それは心配ありません、ゴズは私から離れたく無く、ガイアは性に合わないとの事、そしてそのタツマとは少し揉めましたが彼には別の恩賞を用意しそれで彼は納得してくれました、それに彼は私と共にまだ数多くの敵と戦ってもらわなければなりません」 バルガスは再び考える、そして答える。 「ありがたい話ではありますが、知っての通り、私は心が病んでおり、気持ちの浮き沈みが激しく、時には底無し沼に落ちた様な気持ちになってしまう時があります、故に、王の重責は勤まらないかと、どうぞ今のままで、私は釣りをしながら、女王様と一緒に作りあげたあの蒼く空の様に澄んだ湖面を見つめ続け、時にその水面で揺ら揺らと揺れる落ち葉を見て風流を感じる心のゆとりがあればそれで満足なのです」 「なるほど……もう貴方は、本当に素晴らしい、そしてもっともあなたらしい、私はますます決めました」 そして最終的にバルガスは説得され王になるが、その体調を踏まえ、事実上運営にあたるのは参謀のノウスが副王と成る形で落ち着き決着をする。 コレを期に女王の統治する麗は塞と国名を変え、またバルガスが王になった地下王国は塞から碧(へき)と国名を変える。 帰るバルガスに窓から手を振りながら女王は『とりあえずこれで背後の備えは良し』と思い、今後の事をさらに考える。 [終]
アリスとモノトーンな世界
アリスとモノトーンな世界 アリスは唐突にお母さんに洋服屋へ連れられシックな腕時計と帽子付きの黒い服を買ってもらいました。 ……その服を着て部屋を出て階段を下り、台所とリビングと順に行って見るも誰もいませんでした。 窓から雨が降っている事がわかりました。そこで世界が白黒になっている事に気づきました。 アリスはその色の無い世界にとてもつまらなさを感じ、色が着いた物を探しましたが何もありませんでした、そして何やら世界には元々色が無い様な気持ちになりました。でも少し考えて自分の髪の色を思い出し、髪を見ようと洗面所に向かいました。そして目の前の鏡に写り込んだ自分の黄色い髪を見て安心し、その鏡の方の世界には色がある事に気づきました。 そして鏡の中の自分が鏡に手を当てました。その顔はとても寂し顔をしていたので、その時計をした手に合わせて鏡に手を着き少し押し当てると、とても懐かしものを感じ、プツンと手が鏡の中に入り、パッと空想世界が砕け去りました。 アリスは洋服棚を開き吊してある黒い服を眺めます。 お母さんは中々その服を着せてくれませんでした。 なのでその時コッソリ着て見ようと手を触れると、空想で目にした冷ややかなモノトーンの世界を思い出しゾクリとして服から手を離し戸を閉めると聞き覚えのある車の音が聞こえて来ました。 窓から外を見ると家の前にお父さんの小さい赤いルノーが留まっていました。 その後の席からお母さんとしばらく見なかったおばあちゃんが降りて来ました。 そして久しぶりに家族五人で夜のご飯を食べました。 アリスはその時はもう服の事は忘れてしまいました。 アリスは成長し、その黒い服のサイズが合わなく成り、結局袖を通す事は生涯に二度と訪れませんでした。 [終]
迷走列車(ミステリー)
迷走列車 茶のマントコートーを羽織り、その血色の悪い青い顔したひとりの男は電車に揺られ、円形な路線上の各駅に降りてはその駅舎を訪れ、落とし物として届けられている傘を見せてもらう。いつも色々な色、形の傘を並べられる、ただどれも違った。 男は今も揺られ旅をしている傘を探して……。時には同じ駅にも何度も訪れて駅員に飽きられても飽きられても……。 時には気違い扱いも受けてしまう。 そんな中にも心優しい女性の駅員さんに当たり、昔の落とし物リストの中から同じ様な傘を誰かが間違えて持ち出していないかなどを色々と細かく調べてもらったりする。 でも見せられた細いリストの中にそれらしき傘の手がかりは無く、そしてイラつき、優しい駅員さんに声を荒げてしまったりする。 そしてまた列車に揺られる。時には駅前の飲み屋で同じ様に揺れている酔っ払いから得た不明確な傘の目撃情報を、藁を掴む様な心持ちで、本路線駅から少し離れた温泉街へ、ガーガービーと不安気な音が鳴る小さい一両列車に乗り変え、暗いトンネルを抜け向かう。その車内は奥の角席に杖を着き首をカクカクと揺らす老客と、揺ら揺らと灯しが揺れる吊らされた小さいランプ、それにブザーが一つ付いているのみだった。 そうこうして着いた温泉街でもそこでも傘は見つからない。そこで気分転換に温泉に浸かるその湯面も揺れている。 流石に疲労を感じそのままその温泉宿に泊まる事にする。その晩に呼んだあん摩に身体を揺らされながら傘の事を聞くと高い針治療を受ける事と引き変に更に先の町にある薬屋を紹介される。傘の情報を聞くと居ても立っても居られない気持ちになりタクシー呼び深夜に行って見るも傘の手かがりは無く、そこでまた情報と引き換えに高い漢方薬を買わされる。 そしてさらに紹介料を払い違う薬屋を紹介される。 行って見るとそこには複数人の痩せこけた人々が水煙草を蒸し吸っている、聞いて見ても皆んな目が揺ら揺らと虚で話しになら無く、無言で水煙草を勧められるも断り諦めて駅へと戻る。 列車は男の身体を揺らし続ける。 男は酔い止めの薬を飲む。 男の長い旅を続く。 どこで無くしてしまったかもわからない手がかりの無い、身体のバランスを取れる傘を探して…… その最中ふと小さい頃に自分の手を引き耳鼻科に連れて行ってくれた母の事を思い出す。そんな男の頬を冷たいゴーゴーと吹き付ける雨は濡らし続ける。 諦めるその時迄。 [終] お題・傘 あとがき わかる人はわかる話し、とは言え傘を見つけた私には、もう関係無い話しだけれども……。
気遣い
連休の最終日の午後三時に何となくこのままじゃ終われないと言う気持ちに成り、原付きに乗りショートのツーリングに出る。 そして走り慣れた道を走り、陽が落ちて来た頃に小さい商店に寄り、メンチバーガーと缶コーヒーを手に取りレジに持って行くと、店員のお爺さんに「パン温めますよ」と言われる。 私は、コンビニじゃないその小さい商店に最初からそんなサービスな期待も無く、また、そのメンチバーガーは冷めたものとし食べると決め付けていたので何か嬉しく感じる。 そしてその店員さんの小さい気遣いに休日の終わりが心の中で良い感じに腑に落ちた様にも感じた。 [終]