仙 岳美
580 件の小説双極竜の渓谷。
双極竜の渓谷 登場人物 鬼 名はウミウシ ただの釣り人。 地獄の鬼は釣った魚から抜き取ったハラワタである生ゴミをいつもの崖下に捨てていると崖の下から睨む様な目線を感じる。 鬼は目を懲らし崖下を見ると草に目を貫かれた髑髏を見つける。 しかし鬼は思った。 『底に落ちて、そこに居て、そこから物事を見ている、お前の問題』 鬼は気にせずに、ハラワタをいつも通り捨てて、家に帰ったのだった……。 [終] 双極竜の渓谷。 そのゴミ捨て場の名の由来は二つあり、一つは遥か昔その谷底には竜宮城が存在したと伝わる、もう一つは二匹の天竜が争いの極末に絡み合いながら底へ落ちていったと伝わる。 吹き溜まり そこの底に落ちた者の声に耳を貸す場合は注意が必要である。大抵は心底腐った亡者で努力して底のそこから這い上がると言うよりかは、引き込もうとそれだけをかんがえている。地獄の掃除屋である蛆虫達も呆れて相手にしない。 イラスト 底の字 iOSアプリ字習を使用−
端の鬼
その理由は今は忘れてしまったが同級生達より一回り身体が小さかった私は小学校に行かなくなり、その事が親に恥と言われ、それから私は部屋に篭り、筆で端の字を墨汁が切れたら墨まで擦り、ひたすら書いていた、(最初はそのまま恥の字を書いていたものの書きづらいから端に変わったのかもしれない) それは親に対して当てつけなのか、それとも何か自分は端にいるべき人間の様な、そう生きたいという願望が親に言われた恥の言葉で気づいたのかもしれない。 なにはともあれ、私は親が作って置いていってくれた弁当を食べる事とトイレ以外の時間は、日が落ちるまで、ひたすら、それは悟りを得る修行の様に、半紙に端の字を筆で書き続けていた。 そんなある日、陽も落ちかけ、部屋に夕陽が差して周囲が赤く染まった時、部屋の隅の陰になった所で何かうごめくものに気づく。 その動くものは立ち上がり、私の文字を覗き込む。 そして話をしだす。 「なんだ今時熱心に写経をしているのかと思ったが違うのか」 「……」 「しかし、うぅん、これは中々良い端の字だ、数百年人の書く文字を見てはいるが、此処まで書ける者は中々にいない、気が通り微かに道教の香りも感じる、左利きというのもまた良い」 「あなた誰?」 「今は鬼門の鬼と言われている系統のもののけになるのかな、まあ角は生えていないがね」 「私になにか用なの?」 「君を食おうと思っていたがやめた」 「やめたの?」 「ああ、食うには惜しい、どれ」 と鬼は私が後の楽しみにあえて残していた玉子焼きを弁当箱からつまみ出し口に放り込むと、咀嚼しながら私の左手首をギュッとつかむ。 すると私の筆を持つ左手が一瞬波を打ち、肘から指先にかけて骨だけに成り、やがて元に戻り、私はホッとする。 「君は親に字を習いたいとお願いすると良い、ちょうど此処から南西裏鬼門の方角に私の流れを遠くも汲む者が字を教えている、そののちは事は上手く運び、やがて学校にも行ける様になるだろうよ、身長も少し分けてやる」 そんな夢を見た私が起きると部屋には夜のとばりが下りきってすっかり暗くなっていた。 部屋の電気を点けると部屋の隅には当然ながら誰もおらず、そして翌朝起きると身体中に力がみなぎっている感じを受けたのだった。 [終] あとがき 鬼門・写経と言う言葉を知らない子供の頃に確かに鬼門・写経と言う言葉を聞いた記憶があることから、夢ではなかったのかもしれない。 25.2 筆 26.5 加筆訂正に合わせてAI構成。 表紙添え文字の[端]を書くのに使用したアプリ・字習(IOS) 古風加工はXグロック 参考資料 臨書・張瑞図(ちょうずいとう) 内容はフィックション。
手
登場人物 鬼 名はウミウシ ただの釣り人。 金の日の夕刻、美しい夕日が沈んでいくノスタルジックな地獄の浜辺に、何かを掴もうと彷徨い、もがく腐った呪いの毒手。 その手は心である本体から何者かの手により無惨に千切られた手。 その手を鬼は見て思う。 『もう神、いや、悪魔さえ、救う事は出来ないだろう』と。 心の無い者は悪魔にさえ救う価値も利用価値も無く、死すらない、即ち完全なる生塵である。 鬼は「いや〜釣りとは、暇人には本当に良いものですねww」とカラカラ笑うと竿を仕舞い、その触手を後にしたのだった……。 [完]
プリン録(ホラー)
お題・メモリ 序 だからその夜のご飯は自分で作るしかなくなったんだ……。 一 その時が何時だったのかは、わからない、暗い台所で僕は二個目のプリンを食べたその空容器を見つめていたんだ。 ニ 罪悪感は今も無い、その時、その瞬間、僕には心を癒す二個目のプリンがどうしても必要だったんだ…… 幕 僕のささやかなそのたった百円玉以下の癒しを邪魔した母さん全て悪いんだ。 [終]
06 再び魔剣を手に
序 忘れた頃に僕は現実と言う名の悪夢を再び見させられてしまっていた。 そして今回は救いの手は無い。 二度ある事は三度あると誰かが言った言葉を思い出すも、奇跡は二度と起きないと言う言葉も思い出す。 どっちなんだ? *** 数刻前 ノウスは地下要塞の入り口である大扉にサイの板を当てる……扉の施錠は解除され上へとあがって行く、『たわいもない』と感じ、兵達とその門を潜った時、気を感じ、頭上から飛びかかって来た者の剣を指揮刀で受ける、ガッキーン! ノウスはその敵と目が合い何か力が抜き取られる感じを受け片膝を着く。 そして縦に折れたと思った相手の剣がそのまま短剣に早変わりしノウスの左鎖骨に当たり、そこから青い火花が散る、ノウスの刀は既に奇襲をかけて来た女性兵の腹を貫いていた。 ヒヤリとさせられたノウスは口を開く。 「気配を完全に消しての奇剣による奇襲、見事、勝負ならお主の勝ちだ、私はノウス、名乗られよ」 「杏里……ノウスさん、けして逃さないわよ」 そう言うと目を瞑る…… ノウスはゆっくりと杏里を下ろし、道の端に寄せる。 そして少しの疲労感を感じるも先を急ぐ。 *** 「一馬気持ちはわかるけど、行っても無駄死にするだけよ、お母さんもきっと……」 僕は麻美のその言葉に苛立ち叫ぶ。 「いつもうるさいよ!」 * * * そして先生も麻美もかつてのクラスメイト達も僕を必死に引き留めた。 そして僕は根負けして言う事を聞き地下の避難所に留まり、麻美に気休めの様な慰めの様に渡された、、それは前に円空との戦いの時に借りた大サーベルを肩に立て抱え、あぐらをかき、ただ避難所の薄暗い床を見つめていた。 時折、数刻前に見た、敵に殺され横たわる母さんの姿が僕の脳裏をかすめる。 僕は自問自答した。 「攻撃が効かないだって……」 「……僕の突きは間違いなく敵の腹を刺した」 「あれはまぐれだったのか?」 「いや違う、赤坂さんは間違いなく敵を殺した、攻撃が効かないなんて嘘だ」 最初はそう思った。 でも強い母さんが殺された事を考えると、それは間違いない様に思えた。 その時僕は赤坂さんに渡された左腕の黒いブレスレットを思い出す。 そして僕は確信した。 「これだ! このブレスレットの効果だ!」 僕は周りを見る、先生も麻美もクラスメイト達も疲れ果てて寝ていた、それはチャンスだった……。 『父さんはもういない、母さんの仇を僕が取るんだ! そして侵略者なんか全員僕が殺してやる』 そう思った時、僕の心の底の地に埋もれたドス黒い徒花がやっと咲いた気がした。 そしてあの狼の声が久しぶりに聞こえた。 「我らの神が宿るその剣を手に縄張りを犯す敵を殺せ! お前ならできるはずだ」 僕は言葉を返す。 「君はあの公園にいた白い子狼かい?」 返答は無かった、でも否定もされなかった。 僕は頷き、その幻聴の様な心の声の様な言葉に再び勇気をもらい、忍び足で避難所を後にした。 [続] 解説と解釈 心の声 それは間違いなく悟りの根源である。 エンブリオンの剣(つるぎ) その名の剣は淡国の女王その妹の杏里が使用していた仕込み剣 本体の剣に短剣がはめ込まれている。短剣は外見から目視する事は難しいほどに本体である剣の表面に馴染んでいる。 瞳噛み・神改 それは瞳から瞳で敵の体力を奪う王族秘伝の技である。そして杏里の転生により、その技は憑依呪術的に進化を遂げる。 サイの栞 その板状の栞は、塞の女王が傀儡神と接触した時に得たその情報を元に、サイのマザークリスタルが解読した情報を持ち主に知らせ、淡国の地下迷宮的な要塞通路の道標となり一光線を発し、時にはセキュリティーの鍵にも変わる。そしてそれは基本正確ではある、が、コンピュータウイルスの様なそれは霊的な何かが、妨害的目的で侵入し簡要した場合は、その限りでは無い。
05 中八ノ巣加茂井戸病院
05 中八ノ巣加茂井戸病院 あれからカムは部下達は陣営へ返し、言う事を聞かない副官のマヤだけをしょうがなく連れ、清次の部屋で処方薬の袋に記されていた住所を手がかりに、島から少し離れた離島の精神病院を目指すも、砂浜から目に見える島へ渡る手立てが見つからなかった。 「隊長、この辺で戻り、タツマ様に報告した方が」 カムは返答せずに煙草を一服し黙って辺りを見渡す。 そして微かに山側の薮の草の丈が短い茂みの一角を感じる。 「こっちだ」 カムは草を掻き分け進むと岩の表面に鉄格子の扉を見つける。 「あったな、おそらくここから離島に渡れるはずだ」 カムはサイのピックを取り出す。 キーキー ライトを点灯させ暗い下り道の洞窟を二人は進む。その途中にマヤはポツリと尋ねる。 「隊長は女はいるんですか?」 「いない」 「……そうですか、募集中とか?」 カムは背中で返答する。 「この戦争が終わったら、ボチボチな」 「えっ! じゃあ、私、立候補しようかな」 カムは黙って進む。 「なんか言ってくださいよ、もしかして私フラれた?ね、ね、ね」 「言ったろ、全てはこの戦争が終わったらだ、俺たちは明日もわからない命だ、分かるな」 「明日もですか? 地下に突入したノウス様が案外もう全でサクと終わらせてるかもしれないですよ」 「どうかな」 「隊長は基本後ろ向きのマイナス思考ですよ、そんな事だと、ただ無駄に歳取って人生終わっちゃいますよ」 「ただ無駄に歳か、確かに給料は全てカードか煙に変えてしまってはいるな」 「そうですよ、それになんでそんな清次さんに執着するですか?」 「感かな、奴は何か捨てといてはいけない、いや、切る迄忘れてはならない、二枚のジョーカーの内の一枚に思えるんだよ」 「ジョーカーですか、ならどうにもならないんじゃないですか?」 「……」 「あ、隊長が弱いとかじゃなくて……あ、そうだ! ジョーカーに勝てるカードが一枚ありますって!」 「スペードの3か」 「はい!隊長こそ真の切り札です!そう思います!」 「おれがスペードの3か、それは傑作だ」 そう言うとカムは二の腕のポケットから清次の部屋から拝借してきた、表面が半立体的な髑髏造りのオイルライターを取り出し手の中て転がし、少し緊張を解いた様に微笑む。 その表情にマヤも安心する。 そんなやり取りをしていると道は上がり坂になり、そして月の光が隙間から差す鉄格子の扉に突き当たる。 外に出ると目の前にある意味で巨大な大砦の様な大きな病院がそびえて建っていた。 二人に洞窟にいたので外が一瞬昼間の様に明るくなり戦況が大きく動いた事は知りえない。 「此処だろう、だが残念だ、ここはもう廃墟だ」 「ですね、帰りますか?」 「イヤ、奴のカルテを探そう、きっとあるはずだ、気の病なら診察中の会話が細かく記されてはずだ、それは何かしらの手掛かりにはなる」 「流石隊長、前から思ってたんですが、元は刑事とか?」 「探偵に毛が生えた程度の仕事だ、硬い組織は、どうも駄目でね、まあ軍も硬いが塞は少し揺るい所があって良い」 「確かに此処は少し緩くで良いですね、私も渡り歩いた場所で居心地は一番良いかもです、それにしてもやっぱり気が合いますね私達」 「お前は今調子を合わせてただけだろう」 「それは、好きですから、とても」 「……入るぞ」 とカムは言い、吸ってる煙草を足で踏み消すとサッサと中に入って行ってしまう。 マヤは唇を噛み、後を追いながら尋ねる。 「えっえっ、今フラれたの?」、「血に滲んでるぞ」「あっ!」 カムはマヤの唇に唇を合わせる。 そして唇を離した二人の前には暗く長い何か寒々と感じる病棟の廊下が伸びていたのだった…… [続] 解説と解釈 スペードの3 そのトランプカードは最弱である、しかし大富豪と言うゲームでは、ローカルルールながらジョーカーに勝てる唯一のカードでもある、その意味は、何事にも、何か打つ手は必ずあると言う先人の言伝なのかもしれない。
鬼と茶会
※AI校正 ※内容はフィックションです。 一の巻、鬼と茶会 序 豊臣家が滅ぶ戦い大阪夏の陣からさかのぼる事28年前、豊臣秀吉がその身分及び種族を問わず参加を許す、野点の大茶会がひらかれるという噂は山奥にひとりでボンヤリと暮らす、その姿、鬼としては小さいはぐれ鬼の耳にも入る。 その鬼はかねてより人間と仲良くしたいと思っていた、というより、人間になりたかった事からその茶会の話を聞くと居ても立っても居られず、参加しようと決める。 しかし茶器を持っていないから、鬼と知っていても生活道具を売ってくれる唯一の商人の元を訪ねる。 商人には、用のあるときは店の裏口から声をかける様に言われていた。なので裏戸を叩く。 中から商人の翁が出てくる。 その顔は少し薄ら笑みを含み、それは鬼の来店を予想していた様だった。 「茶器かな」 鬼は頷く。 「ワシの作った茶器は少し値が張るぞよ」 鬼は傭兵で稼いだ甲州の金が入った巾着を懐から取り出し見せる。 商人は巾着の中を見てニコリとし、「よかろう中へ」 道具は適当に商人が見繕ってくれた。 というより「これも良いぞ買うだろう」と一つだけで良いと思っていた椀を三つも買わされてしまう。 商人は途中で金の数を数える。 「ふむ、お前は茶の点て方を知っているのか?」 鬼はなんとなく知っていたが首を横に振る。 「なら教えてやる」 と最後に茶の点て方も教えてくれた。 ただ指南代と言う事で残りの甲州金は全部取られてしまった。 甲州だけに(講習) 鬼は少しボンヤリした後、何はともあれ鬼は秀吉の茶会へと向かう。 鬼が茶会の場所である天満宮に近付くにつれて左右に杉の大木が並べて植えられている杉ノ大路にも同じ目的の者の姿をゾロゾロと見える様になって鬼の気分は踊る。 天満宮に着くと鬼は早速自分の道具を空いている席に広げ、商人から買った着物に着替えようとすると、ふんどしを着けただけの身なりの者が前に座る。 鬼は着替えは後にし、とりあえずその者にお茶と茶菓子を出す。 「ほう、この椀は良い志野だ、その横の織部・唐津とどれも見立てが良いね、羨ましい」 そう言うとふんどし者は菓子を齧り、ゴクゴクとお茶を飲み干す。 「これは菓子も茶も特級品だ、さぞ高かっただろうに茶を見せてくれ」 そう言われた鬼は茶入れを渡す。 「またこの茄子(茶入れ)も良い、転売も利く……ところでお前さんは太閤殿下の金の茶室は見たかね?」 鬼は首を横に振る。 「じゃあ見て来なよ、この場所は俺が取っておいてやるから」 鬼は金の茶室を見に行く、鬼は輝く極楽の世界の様な茶室を見ていたく感動する、中に服を着た言葉を喋る猿がいて、その仕草さはもなんとも見てて楽しかった。 そして適当な所で場所に戻ると自分の場所には行列が出来ていた。 しかし場所を任せたふんどし者には知らんぷりされる。 自分が着ようとしていた着物もそのふんどし者が身に付けている。そこで鬼は場所も茶道具も取られてしまった事に気づく。 幕 鬼は会場から少し外れた場所で夕焼けに染まる山を少しボンヤリと見つめ、『でももう楽しんだから良い』と思い、山に帰っていったのだった。[続] 登場人物 鬼 自給自足生活、たまに傭兵で遊ぶ金を稼ぐ鬼。武器・六角棍棒 梠山人 陶芸家兼闇商人、上客の鬼からいつもぼったくっている。 ふんどし者 その茶会の帰りに、鬼からかすめ取った茶道具に目を付けた山賊に襲われてしまう。それは『身に過ぎた果報に災いあり』であった……完 山賊 その元締めは闇の商人らしい。 解説と解釈 甲州金 それはその名の通り甲州(山梨)が産地の金塊で製造された純度が高い価値の有る硬貨であった。 野点(のだて) 野外で抹茶を点てる事。またその茶会。 南蛮菓子 それは現代のチョコレートに似た菓子もあったと伝わる。 あとがきにかえて…… 抹茶の入れ方 大きめのお椀(小丼可)に抹茶をティースプーンに軽く一盛り入れる(2g) 沸かして少し冷ましたお湯を70ml入れて茶筅で点てて完成。 専門的に最低限必要な物は抹茶と茶筅(百均で良い)。 二の巻、小田原攻めと鬼 収穫を楽しみにしていた茄子の畑は何者かの嫌らがせを受け荒らされていた。 それがショックでしばらく鬼はボンヤリと日々を過ごしていると、秀吉が関東を攻める故の兵を集めている事を知る。 鬼は畑を荒らされた怒りを戦にぶつけようと思っていたら、なんの苦も無く、空に雲も無く、その下、大軍の味方は敵の本城小田原城を包囲していた。 いわゆる手柄無しであった。 唯一敵将と思われる者と至近距離で出くわしたが、どこからか踊り出て来た、その戦の最中にもキセルを持ち片手では槍を操り、黒い大きな馬に乗った、へそ曲がりの様な変なヘチマ顔をした武将に首を取られてしまった。 翌日には、この先の戦法は兵糧攻めに決まったと聞く。 そして包囲陣の中に敵へ当て付けの様に遊廓が作られた。その遊廓に出入りする遊女を見て鬼はムラムラしたまらずに入るが捨て足軽の身分の鬼はその持ち銭の料に関係無く門前払いをされてしまう。 鬼はボンヤリと何か霞んで見える小田原城の店主を眺め、今中のお殿様はどんな気分なんだろうと考えると、自分には自由がある、命もあると思い。気を取り直し。 わずかにもらった給金で帰りに市場で関東の小ぶりな茄子を買い、山に帰ったのだった…… それは大阪夏の陣の25年前の初夏の日である。[続] 参考資料 花の慶次(漫画) 三の巻、高麗茶碗と鬼 遂に秀吉は狂い、隣国朝鮮半島に出兵する。 そして敗れ。 その戦(いくさ)に参加した鬼も命からがら山に戻る。 そして戦恐怖症になり引きこもり、何も考えずに煮芋を食べたら寝るだけのボンヤリとした日々を過ごしていた、そんなある日、そんな治療方法を指導してくれた商人から買った高価な漢方薬の効果もあり、鬼は少し回復を感じたので、そのままにしていた戦荷物の整理をしていると、その中に朝鮮の市場で買った桃色の高麗茶碗を目にし、良くぞ引き上げ時の混乱の最中に割れなかったものだと感心し、ふと、自分が生きて帰って来れたのは、この茶碗の運(割れたない運)に乗れたからではないのかと感謝もしそのまま久しぶりにその腕でお茶を点ててみると…… 何かその揺れる深緑の茶面に心がスーと癒された気がした鬼だった。 それは大阪夏の陣迄20年を切った日の事である。 [続] 解説と解釈 運 その正体はもしかしたら、様々なもの運命が絡まった総合的なものなのかもしれない。 四の巻、鬼と冬の陣 バッキキキー! 「はによ!」 と鬼の蜂金が宙に飛ぶ、その折れた角と一緒に……。 鬼は目を回している。 「勝負ありだ……同族、もう山に帰られよ」 *** 秀吉の息子秀頼は徳川家康と不仲極まり、やがては戦になり、大阪城に籠る。 鬼は浪人組として大阪城に入り敵徳川勢に火縄銃を手に応戦する。 しかし最後の方はわざと敵に弾が当たらない様に撃つ。 鬼は本当の所、殺し合いは嫌になっていたからである。 そして徳川と豊臣は和解し冬の陣は終わるも、再び徳川と豊臣は戦になる、それが夏の陣である。 浪人組の翁な大将は鬼を買ってくれた、立派な赤い具足も着せてくれた、嬉しかったのでその大将に付いて行き、やがて大阪城から離れた野原で、槍で刺された腹が痛くなりひとりうずくまっていた。 大将も皆討たれてしまった。 ……もう自分も死ぬと思った、でも中々死は訪れなかった。 『あれ?』と思い藤堂高虎と名乗った大男に刺された腹を見ると血は止まっていた。 傷が浅かった事に安心し、次にオデコを擦ると、うとましかったオデコの一角は根元から折れていて、その事に長年霧のかかったような頭がスッキリした気分になる。 そして腹が鳴る、鬼はそのまま用をたすと腹痛は治る……。 出すもんを出すと今度はすきっ腹が鳴る……。 鬼は少し先の茂みに白骨化した手が握る古い芋がら縄(昔の携帯食)を見つけ、拾いしゃぶると、その年月により良く熟成され、少し土の風味の乗った味わい深い味噌の味に心を落ち着かせ、見上げたその瞳に映った光景は、火を纏った大阪城の姿だったのだ。 [完] 解説と解釈 鬼鉢金 それは戦で額及び顔の縁を守る防具である。 鬼は、その鉢金に最初から取り付けられていた装飾である造り物の角を外し、その空いた穴に自分の角を通し、さも鬼である事を隠し、鬼の参戦が禁止された戦に参加し稼いでいた。
04 竜人と対峙する光の勇者ノ巻
※AI校正 ※この巻から「蝉と少女」と物語は統合。 04 竜人と対峙する光の勇者ノ巻 序 霊剣を宙に浮かべ足場にし、夜空へ駆け上がった志摩長は、「霊刀斬舞!」下に群がる敵にそう叫び、究極奥義を放つ、も、その空から放った無数の霊剣手裏剣は全て跳ね返されてしまう、それもただの一兵卒達に。 『これはまさに百鬼夜行! 歯が立たぬ……万事休す』と感じた志摩長が全軍地下への撤退令を発する中、霧香はひとり撤退する味方とは逆方向にその人波を掻き分けて走る。数年前に去った恋人と、亡くなった妹を時折思い出しながら…… * * * 塞の女王の指示で淡国を攻めた竜人の将タツマは、ウネる列竜の背から戦場に変わった島の光景を見下ろしていた。 その戦況は予想通り優勢であり。 ふと『味気ない』ただ長きに渡る祖国、超の国の戦争に嫌気も差し『この戦争が終わったら竜帝に願い出て正式に塞の女王に文官として仕えよう』と、そんな事を考えている。と陣中、一箇所空間が丸く光り、その光が数珠の様に連なり陣を駆け抜け自分の方に向かって来る光を目にする。 味方は皆その光に視界をやられ手出しができずにいる。 タツマは横の側近に話しかける。 「アレは! なんだ! 何が起きている!?」 側近は首を傾げる。 そしてその光はタツマの足元まで来ると留まる。 それが人だとタツマは認識すると、その光人は声を発する。 「その姿、敵将と見受ける!」 「いかにも」 「なら降りて来て! 私と勝負しなさい!」 タツマはその光る者が女性と分かると「単独突攻とは面白い奴、是非にその顔を拝見したい」と思い。 列竜の背から赤いマントを風になびかせながら地面に降り立つ。 タツマを前にすると、すぐにその女性兵は叫ぶ。 「私の名は霧香! この国の王族であります! 卑怯な事はやめ、私と勝負しなさい!」 「卑怯とな」 「見たところ竜人と思える、その様な高貴な者が身に包むのは、その優美な鱗だけで充分なはず!」 「ほう」 霧香は双剣を構える。 タツマは槍を構える。 そして霧香が斬りつけた刃をあえて首で受けると、刃と首元の接触面から青い光がほとばしり、刃がそこで止まる。 「卑怯とは、この事かな?」 「いかにも」 「光の勇者よ、これは兵法である、そして其方の目眩しも残念ながら効かぬ、光は竜人にとって癒しでしかない」 「……私が怖いの?」 その言葉にタツマは少し心が揺らぐも冷静になる。 「挑発には乗らん」 霧香は続ける。 「五秒! いえ、二秒!、そのビビりアーマーを解いてくれば、貴方なんか簡単に殺せるわ」 「二秒とな!言ったな!」 「ええ」 「二秒、良いだろう、しかし、それが出来なかった時、当然こちらに見返りはあるのだろうな!」 「全面降伏します、私はこの国の防衛の責任者です」 責任者、その言葉にタツマは、霧香の身に着けている贅沢に装飾を施された金色のマントと白革の鎧、そして品格の漂う容姿に偽りはない事と感じる。 「なるほど、こちらも話はその方が早い、乗った!」 タツマは挑発に乗る、それは戦場に嫌気が差していた事により終わりを急ぎ判断を誤った時だった。 霧香は笑いを堪える。 すぐにタツマのやや紫を帯びた肌の色は、本来の白に戻る。 「勝負!」 霧香はタツマに飛び込む、タツマは難なくその刃を槍先で弾く。 霧香は弾かれた双剣をその反動を利用し腰の鞘に戻し、流れる動作で両手を胸元に当てオームの輪印を組み頭上に掲げた その輪から光が溢れ出す。 タツマの目の前が白くなり。 「おっ!、眩しい、な! わけが……ありえぬ……これはまさしく勇者(竜狩り)の技に似ている……ぬかったわ! せめて!」 「竜人敗れたり!」 霧香は呟く。 タツマは身体中の尖る鱗を一斉に放つ。 タツマと霧香の間から発生した白い光が周囲に広がる。 それは前の大戦でも使う事のなかった、おそらく生涯において使える回数はそう多くは無く、一度使うと数年は使えないと感じていた、転生能力の神技である切り札を、霧香は初めて戦場で使ったのだった。そして上空の神竜さえもタツマを飲み込み葬り去った光を浴びると、その身体のウネりを一瞬止めるのだった。 幕 霧香は光に紛れ込みその場から脱し、市街地から遠く離れた暗い森の道を走り、思い出の場所へと向かう、ただその身体にはタツマが最後に放った無数の鱗が刺さり、各所から血が滲み始めていた。 [続] 解説と解釈 コスモスフラッシュ もう存在しない古き惑星で悪き腐毒な竜帝との戦いに敗れ、純潔を失い、代わりに毒と大怪我を負い敗走した幼い勇者が数年に及ぶ祈りの末に降臨させた花神から完璧な癒しと同時に授かったと言われる小宇宙爆発的決着神技。 その光を浴びた者は、遺伝子の配列が操作され組み替えられ、その場から水の様に蒸発してしまう。 花神は抽(ぬた)と言われる通常の神を超える宇宙神であり、その姿は花に擬態し両手は鎌状になっている狩神でもある。その花神が授けた狩り技は、その受託者が亡くなった後は、次の受託者を探しに、綿毛の様に多次元の空間を彷徨う。 コスモスフラッシュの卵種は、同じ宿命と勇気を持つ尊い星の女性に降り立ったと伝わる。 レンカフラッシュ コスモスフラッシュの応用技、それは全身から光が咲く様に発する神技、その用途は広い。 コスモス(秋桜) 花言葉は、乙女、調和、宇宙、謙虚、終わった恋 カマキリ それは虫でありながら宙の鳥も襲う、その事から勇気の象徴と崇める惑星もある。 宇宙神寄生勇幼虫ガーネス その虫は、目的達成の為なら宿りし者の身体の遺伝子配列から作り変え強化し、筋金入りの勇気をも与え、その一寸先は闇で、血を分たとて食うか食われるの無酸素魑魅魍魎世界の深海、もしくは超越した荒神達が群雄割拠し、各自展開した他次元が歪に重なり合い、そのテリトリーの潰し合いのクラッシュ音が絶えず鳴り響く大宇宙にさえその足を向かわせる。 サイの翻訳機 それは鉱石サイで作られた科学リングである。そのリングは多言語を訳し、骨伝導で伝える、また骨伝導で訳した言葉を声質を真似て発する。 エイリアンバイオテクノロジー それは神の領域を超えた科学力。やがて人類は滅亡寸前で、それに触れる事になり、命、時間、次元、そして神への概念も変わり、西暦は終わりを遂げ、目の前に実在する救世神達と共に、太陽系圏内の惑星連盟に入り、新たな暦、宇宙暦を刻み始めるのである……。
外伝48 半島の乱・後期 シッブヤシティ
AI校正実地26.3.1 外伝48 半島の乱・後期 シッブヤシティ 塞の侵略を凌いだ帝都の王子は、生き残った都民・兵士と共に、帝都の地下に深く広がるシェルター街に移り、そこで親衛部隊を壊滅的に打ち負かした、塞への対抗策を練るのだった。 * * * 帝都の双天守閣の土台であり、元は巨大な渓谷をさらに掘り進め建造された両天守の間に深く地下へ伸びた暗部であるシェルター都市。 都市の名称はシッブヤシティ。 区画区分は地上の帝都とは分けられている。それは即ち裏の帝都でもある。 その都市の一角に用意された皇帝の椅子に鎮座する王子の前でシッブヤシティの最高責任者であり武器エンジニアのゾザックは、黒いドレススーツに身を包み、まずは臣従儀礼を済ませ、王子がにこりとうなずくと話し始める。 「現れた者達は冥派の亡者達に違いないでしょう、かつて旧帝は招き入れた異星の者達を組織し帝都の守りとして重用し、その組織が冥派の起源と言われています、そして古い盟約書には、形を無くしてもその役目は終わらずに果たすと記されています、しかし残念ながら冥派は兵士ではありません、この帝都には何か超常的な盟により地縛されている御霊に過ぎず、外に出ての軍事的目的で活用する事は出来ないと思われます」 各地から帝国に援軍要請の使者が訪れるもそれに応えられない事を歯がゆく思うも、最初からその気のない王子は黙って頷く。 「しかし再び帝都が攻撃された場合、彼らは、手を貸してくれる事でありましょう、そしてこれは今の最大の強みです、対策案を立てる時間が稼げます」 王子は頷く。 ゾザックは話を続ける。 「その戦場に一つも残されていない敵の武器は、我々の科学力を大きく凌駕しているのは確かでしょう、しかしその銃も剣も使用する時には実体がある物ならば、弱点はある様に思われます」 「策はあるのか?」 「はい、数年前の宇宙からもたらされた流行り病の時期に皇帝は私に指示をされました、あらゆる未知への脅威を、先に予測し対策をと」 「では」 「はい、塞の武器に対抗する武器システムは図面ではありますが、ほぼ完成しております」 「おお! 詳しく聞かせてくれ」 「ではお耳を」 ゾザックは王子の耳元で囁く。 「良し! 製造を許可する!」 「あと一つお願いがあります」 「なんでも言ってくれ」 「王子が目撃したその背から兵が降りて来たという長竜、その竜への対策も必要かと、故に地下の宝物殿に封印された聖双剣ロストウィングと、サタンウィングの分解改造及び速やかな量産を推奨します」 「良し! 許可する!」 ゾザックは平伏するも、その心は未知のテクノロジーに対する好奇心でやや不謹慎にも自分の世界に酔い、高揚し、その口元と目元は微かに歪むのであった。 [狼少年バーストに話しは続く] 解説と解釈 ゾ・ザック 普段はそのままゾザックと呼ばれる、先帝の残した重臣のひとりであり、先帝に特別扱いをされていた事から道化とも裏で言われていた文武両道の武器エンジニア。 その耳先は尖り、その名からも祖先は人間ではないのではと噂されている。 携えている武器は彼の自作である理力可変式ペンシルセイバー。 その上着の胸ポケットに差された金無垢仕上げのピンが特徴的なペンシルの、ペン先を目にして生き延びた者は、天才をひとり除いていないと言われている。そしてゾザックはその天才と本気でやり合って唯一生き残っている者でもある。 クロウウィング(電磁石パルス型・飛昇双剣) 半島の役(えき)を予測し、帝都に伝わる聖剣を元にその設計図は完成させていたゾザックの監修の元に半島の役の時代、本格的に量産製造された第三世代の武器である。 その双剣を手にすれば、その安定した空力を発生させるジャイロシステムにより空高く上昇し、空を飛ぶ燕の様に戦う事が可能となる。 また柄に内蔵されたパルスシステムは、兵士達の体内に流れる微量な電力を増幅させ、その左右の手に持つ、プラス極属性とマイナス極属性の双剣の間から人のソウルを取り入れ複雑化させた高次元対難パルス雷磁石波が絶えず自動で発生する。 そのパルスは、当然に耐磁加工された武器さえも、その性能減退を目的とし半島の役では帝国兵全員に配られ、その使用を固定した武器でもあるが、その成果は果たして……。 レブカブ それは帝国軍用の空を飛ぶバイクであるが、半島の役では飛昇双剣にその出番を代わられ使用はされなかった。 理力可変式ペンシルセイバー その万年筆の先から発する香りと閃光の刃は、それぞれのソウルに応じ属性が変化する。 またその香りはソウルが共鳴する味方に良い香りと感じ、様々な恩恵を与える、そして敵には、毒ガスの如く、刃と化す、それは世界戦記史上初の香りを武器とした最悪最強のペルソナ的な武器でもある。 原理核は帝都に伝わる謎の小さい香木木片を部品とし得ているが、詳しいその原理はゾサックでも解明に至っていないのである。 帝都の貴公子ゾザックが唯一無二の武器としてそのペンを身に付け愛用していたが、半島の役の時期にそのペンを分解し、木片を取り出し半分に切り、もう一本制作し、その使用条件に指紋キー(鍵)と、さらに自分の使用するペンには思念起動タイプの自爆装置も取り付け、新たに制作したペンの方には手紙添え、ライバルである清次に送っている。その真意は恐らく万が一に自分がかつてない未曾有の敵に敗れた際の保険であろうと思われる。 裏次元世界 それはパラレルワールドである、故に全ての歴史は表の世界とは異なるものである。
外伝47 半島の乱・後期 静かな半面
AI校正実地26.3.1 外伝47 半島の乱・後期 静かな半面 かつては淡国の神社に偶像とし祀られた白拍子の人形は焼かれ、その身は朽ちて顔の部分の半面だけとなり、藪の中に深く落ちた鳥の古巣の中で地から這い出た木の根に侵食されつつ長い経年劣化の時期を過ごしていた。 その顔は月に照らされ青白く輝き、葉先に溜まった夜露がその頬に落ちると、ひさかたぶりに、ひとまばたきをするのだった。 * * * 塞国・女王の間 正午、玉座に鎮座した女王の前に、次々と帝国各地へ派遣した部隊の勝利報告が上がる中、巨人と精鋭を率い帝都の鎮圧を任され、そして巨人の兜ごと沖に吹き飛ばされ、救出されたトロルのロコは女王の前で額を床に着き、唯一の鎮圧失敗の敗戦報告をする。 「わかりました、もう下がりなさい」 「はっ……あの……私の処罰はどうなるのでしょうか?」 「とりあえず怪我を治しなさい、追って考えます」 「どうぞご慈悲を」 そうロコは呟きヨロヨロと退室する。 女王は呟く。 「黄国(九州)紫国(四国)赤国(中国)は鎮圧成功、でも、やはり帝都(東京)は一筋縄では、と言うわけね」 横に立つノウスは応えずに沈黙する。 少しの間を置き、女王は指示を飛ばす。 「でも相手はもう虫の息ね、戻ったばかりで悪いけどゴズとタツマに再び攻め込ませようかしら?」 腕を前に組みやや下に視線を傾けているノウスは口を開く。 「その案には反対します」 「その理由は?」 「確かに難敵と思われた皇帝とその息子は死にました、が、その不思議な力を持つ王子が気になります、そしてロコの釈然としない敗戦理由も気になります、おそらく帝都には、何か得体の知れない、いにしえの戦士達がまだ何かしらの盟により帝都を守っていると思われます、これらを良く調べずに、駒を送り込めば込むほどに、その者達に殺されてしまう事でしょう」 「……」 「とは言え、南帝の兵をほぼ壊滅させた事を考えれば、目標は達しておりませんが、しばらくの足留めには成功したと考えてよろしいでしょう、このまま南帝はしばらく放置し、予定通り孤立した傀儡神の潜む淡国(淡路)を攻め続けましょう」 女王は頷く。 「後、二点報告があります」 「なにかしら?」 「一つはかねてからの案件である式神を回収しました、とは言えカケラのみです、伝記に記された紫木月の杖は見つかりませんでした」 「見せて」 ノウスは懐から取り出した布袋を解き、中から式神の半分だけになった顔の部分である面を取り出し、女王に手渡す。 女性は手に取って面と目を合わせる。 当然ながらその目の先は抜けており床が見えている。 女王は面にシンパシーを飛ばしコンタクトを試みるも返信は一切無く。 「この子はもうへとへとね」とやや女王は残念そうな表情を浮かべる。 「次に、海底に沈められた、円空閣下の遺体も回収しました、そしてこちらは吉報になります」 「吉報?」 「ゴズ様が円空閣下には竜の血が混ざっている感じを受けるので、超国へ送ってみては、との提案をしてくれました」 「まだ生きてるの?」 「深海の冷水に冷やされていたので腐敗は少ないですが死んでると思われます、しかし竜族の魂はしばらく身に留まってるとの事、とは言え復活させるのに何かしら見返りはまた求められると思いますので、女王様のお考えのままに」 女王は少し考えた。 「いいわ、生き返らせて、交渉事が上手い貴方に任せます、ふっかけてこられたら報告して」 「御意」 それから女王は陰陽師が残した式神の面を再び見て、その目である穴を見ていると、「嗚呼」と微かなうめき声とその造り物の目が瞬きした様に感じた時、背に微かに何か細くいやらしく微笑む女の唇を感じる…… 振り向くとその先には参謀のノウス…… 「ノウス」 「はい、なんでしょう女王様?」 「合言葉を」 「合言葉?」 ノウスの反応を感じ取り、すぐに女王はホーリーブックを開き、分厚くページを引き破り、部屋全体に天井に向け撒き散らす。 そしてその宙に舞うページは発する光で連結し網となり、玉座の間を覆う。 女王が胸に当てた拳を握り締めると、その網幅は女王を中心に狭まり、ノウスの後でバッチリ!と何かに引っ掛かり青い火花が散る。 ノウスは一瞬後ろを向くとふらつき、そのまま倒れ込む。 そして『ほっほほほほ』 と部屋に女の笑い声が響き渡り、その気配は消える。 女王はノウスが傀儡神に操られ発言していた事を悟り、「面に憑いて来たんだわ、やるわね、いつぞやのお返しかしら、人形のくせに」と呟くと、取り憑かれたノウスが提案したと思われる方針を変更しようと思うも、自分の考えも踏まえ、裏の裏をかき、とりあえず帝都はそのまま、様子見に留めるのだった。 [続] 解説と解釈 式神・静 それはかつて淡国を攻略した帝国の参謀長であり、裏では、サイのマザークリスタルの使徒である安倍乃太郎が島国に根を張る異星物である傀儡神に対を成すが為、裏で監査役の使命を与え、表では、島の信仰神と仕立て上げるために過去の偉人の名を与え残した霊力を帯びた生人形。 しかし後に、この人形の信仰は島の長である志摩長の流言により忌まわしき過去の戦争の記憶に移し変えられてしまい、島民らの手により式神は燃やされてしまうが、焼き残った部品である面に宿る式神の魂は、近くにいた野鳥に憑依し、持ち去る形でその場から脱出し、反撃の時まで静かに時を過ごす。 そしてサイのマザークリスタルがその式神が発する微力なシグナルを察知し、塞の女王に回収させ、その手へと渡るも、その霊力は時の経過と長い期間月光の浄化光を浴び続けた事から流石に酷く衰え、最終的に傀儡神の呪いの媒体に利用されてしまった事から、女王もその力の衰えを認め、与えられた使命は女王の寝室を見守る事に代わり、役目を終えたのである。 万里列竜(まんりのれつりゅう)メビガロ それは超の国に古くから住む、巨人が乗れるほど横に平たい背を持つ、長く巨大な神竜。その頭と尻尾は未確認である。 超の国と軍事協定を結んだ塞の女王は、この竜を兵隊輸送の手段とし、帝国各地に一斉襲撃を仕掛けたのである。 女の勘 それは男性の嘘を見抜くと言われているが、本来は生存をかけた、男には知りえない女同士の過酷な生存競争の中で培われた遺伝的遺物でもある。 ヒドラ(巨大植物兵器)の種 育ちきった巨人は指示すると一つの種を吐き出す。巨人が何かしらの理由で死ぬとその種は輝き出し、その種を再度育てれば、種を吐き出した時点での記憶を維持し巨人は再生が出来る。ちなみに死ぬ前にその種を育てると巨人を増やす事が出来る。 しかし女王は再び巨人を育てる事は無く、書き留めた手紙と一緒に入れた箱に上から封印紙を貼り、その種を宝殿の奥へと納めたのだった。 その真意はその手紙に書かれていると言う。 円空閣下 何かしらの理由で竜国・超の国の次元壁から抜け落ちてしまったお猿さん。(龍白猿) そして、その落ちた次元の猿の群れには馴染めず、放浪の果て無人島、後の淡国に辿り着く。 しかしそこでも後から島に入って来た人間と馴染めず、半島に渡り、半島の覇者・塞の女王にその才を見出され、淡王に任命され淡国に戻り一悶着の末に麻美に射殺され、水葬にされた。(戦死) 後に円空の遺体は塞の女王の手により深海から引き上げられ、故郷の超の国へ送られ超のテクノロジーにより蘇生される。 そして塞の女王は円空を再び兵士にする事はやめ、資源豊富な小島を一つ与え、そこで生涯何不自由なく暮らさせたと言う。 心の闇 それも心の一部に変わりなく、闇とてなくなってしまうとそこを埋めるものが必要である。故に、心に穴が空いた者は何かに付け入られてしまう状態に、あると言えよう。 巨人 それは古来から多くの王が戦争に利用をしたが、どの王も最終的にはその繁殖を恐れ、また世に存在するそもそもの根拠を疑い、手遅れとなる前に放棄し封をしたのである。しかしどこから再び世に持ち出され、歴史の節目に関与するのものでもある。