仙 岳美

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仙 岳美

下記活動サイト    記    ・小説家になろう  ・アルファポリス  ・カクヨム  ・X  ・web小説アンテナ

コインロッカー

コインロッカー  鉄道職員は一年程放置されたコインロッカーを規約に乗っ取りマスターキーを使い開けると中には飾りっ気の無い小さな黒いポーチが一つ入っていた。 そのチャクを開けると中には沢山の化粧品が詰まっていた。 駅員はそれらが宝物に見えた。 そして……口紅を一つポケットにそっと落とす……。  深夜、洗面台の前に立ち、口紅を唇に塗って見ると何か心がスッキリとし開放された気分になる、それは何処まで行って暗い闇の髑髏路を彷徨いやっとこさ扉を見つけ、光りを見たに等しい快感だった。 [終] お題・コインロッカーにて筆

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09 志摩長の不覚ノ巻

09 志摩長の不覚ノ巻  夜分に島長である志摩長は研究室で回収した猿の遺体と、その持ち物を調べていた。 遺体は調べると普通の猿、喋ると聞いていたが声帯を調べると、やはり普通の猿の声帯だった、いわゆる人間の声を発するには不可能な構造だった。 そして遺品は三点、王冠、マント、サーベル、それらを調べてみると、全て質が良く一般的な物であったが、サベールにだけ何か異様な物を感じ、同時に島民である一馬から聞いた猿の言葉を思い出す。 『仇は女王様が取ってくれる』 女王と聞いて半島の森羅が思い当たり、帝国の外交ルートを通じ問い合わせるも、森羅の返答は『そんな猿は知らない、使った覚えも無い』それだけだった。 島長はその返答はまず間違い無いと見た、その根拠は猿の持っていたサーベルである、それは秘に仕入れた森羅の武器リストに載っていたなかったからである、ならば新型と考えてみるも志摩長は首を跳ねる、それをなんの責任も持たない猿にまず貸す事などはありえない事だからである。  それから数日後に猿は水葬し、さらに数日後の夜も志摩長は研究室の自室に閉じ籠り、その謎を踏まえ、今迄の出来事を考えていた。 そして何か漠然とした不安にかられ安堵ができなかった。 猿が残したサーベルを手に取り再び思考にくれる……どう見ても普通の鉄剣、触れて見ても質感は冷んやりとし、鉄もしくは玉鋼と感じる、顕微鏡でその表面を見てみるも同じ、しかし長年の培った何か勘の様なものが引っかかっり、心の底にドス黒く暗くもっさりとゆっくりと重くのしかかる。 そして一つ気づく、それは猿刀は軽かった、とは言え軽過ぎず適度な重さであった、それは帝国の武器に搭載されているバランサーシステムに酷似していた事から、試しに自国の剣の刃と猿刀の刃を当てて見ると……自国の剣の刃は欠けてしまう、一方の猿刀の刃には欠け無し、それは単純に脅威だった。 次に自分の霊剣を出し猿刀と刃を交えてみると……霊剣はその特性を発揮し猿刀の刃をすり抜ける、そして受けようと念じると猿刀の刃を受ける事が出来た、その事に少し安心すると、研究室の入り口に設置してあるモニターカメラが起動する。 こんな時間に誰かと思う。 そのわけは、平和になってから志摩長は回りに尊敬されると言うよりも、やや恐れられていた。 モニターには、見覚えのあるひとりの女性が映っていた。 すぐに錠を外し、マイクで伝える。 《入りなさい、B8で降りて真っ直ぐ進み、突き当たりのドアを開けなさい》 そしてノックが聞こえる。 志摩長は、ドアを開け出迎える。 「島長さま、お久しぶりです、そしてこんな時刻にすみません」 「いえいえ、まあ、入りなさい、先生あれから体調はどうですかな?」 「はい、おかげさまですこぶる良いです、妹もお世話になっております」 「それは何よりです、妹さんは実に筋が良い」 「ありがとうございます、これは、つまらない物ですが」 とその女性は手にぶら下げた紙袋から菓子の箱を取り出し志摩長に差し出す。 箱を抜けて漂って来る、好物のカステラの匂いに志摩長は笑みをこぼす。 「で、今日はこんな老いぼれに何用で?」 「はい、実は夫の事で」 「一馬君だったかな」 「はい」 「その一馬君がどうした? 浮気でもしたか」 「いえ、そっちの方は心配無いと思うんですが」 「確かに先生より美人の女性はこの島おろか帝都にもいない!……はっははは、こ、これは失礼」 「いえ、実は」 「実は?」 「私の考え過ぎなのかもしれませんが、凄く不安なんです」 「不安?」 「どこかの国と戦争になったら夫は生き残れるのか……」 志摩長は目を瞑り腕を組み考える。 そして答える。 「私も長年戦場を渡り歩いて来たが、こればかりは、運も相当に作用する故になんとも言えん」 「……ですよね……」 「ただ、やはり生き残るには最低限は身に着けておかなければいけない基本もある」 「……」 「よろしければ今度一回、一馬君を連れて来なさい」 「はい、どうぞお願いします」 「……コーヒーでも飲んでいかんかね、私の悩みも少し聞いてくれんか、なぁーに、ただ聞いてるだけで良い」 「はい、私でよろしければ」  夜はふけてゆき、島長は話し込む程に身近に置く参謀兵士に欲しいと思い、なんとなく猿の残したサーベルを、その経緯を伏せ見せてみる。 「まあ、綺麗な鏡の様な剣」 島長、その鏡と言う言葉にピンときって霊剣を再びサーベルに当ててみると……サベールが霊剣を受け止めていた、そしてそれは即ち、もう霊剣の特性は無力化されている事に気づき思わず口走る。 「せっ! 先生も霊剣をお持ちでしたな!」 「ええ、はいでも私のは剣と言うより、ナイフですが、でも小さいから普段使いにとても重宝しておりますわ」 「す、すまんが!、その先生のを、このサベールの刃に少し当ててくれまんせかね」 「お安い事ですわ」 「えい!」 とその掛け声と同時に手の中に小さいバターナイフの様なナイフが飛び出し、手の中で生きている様にクルクルと回る、それを慣れた手つきで握り、要望通りに猿刀に当ててくれる、するとナイフの刃はスリ抜ける、そして少ししまた当てもらうと……もうナイフはすり抜け無くなっていた…… 「島長さん、思うにこの子は、学習してるみたいですわ」 「学習?」 「ええ、その刃を交える度に、何か上手くなってる気がするのです」 「上手くですか……」 「……はい、少し、はしたない表現かも知れませんが、情を交わすかのように……」 「情とな」 志摩長は突然その口からでたセリフにゾクリとする。 「はい、そう感じるのはこの身から出した霊剣のせいなのかも知れませんが、それは最初は手玉に取っていたつもりがだんだんとツボをとらえられていってしまう様な……そんな様な感じがします……」 そこまで言って口を結び胸元を隠す様に両腕を交差させ両肩を掴むその仕草と、その唇に凄まじい艶を感じ志摩長は思わず息を呑み、その一連の言葉に島長は、再びピンと来て確信する。 『してやられた』 様はこのサベールは記憶媒体で敵の計略だったのだ、わざと敵地に残し、その敵の武器を学習させ、対応する様に変化する。 そしてこのサベールが敵である島長の手元にあるという事を踏まえ考えれば、最悪、いや、ほぼ他の武器にも志摩長の霊剣の情報は共用されてしまった様に考えるのが普通であった……  志摩長は、自分の愚かさを感じ同時に老いを感じる、しかし志摩長は島の長である、とりあえず島民の前で狼狽えるわけにはいかずに、平然を装い、心の癒しを求め切り分けたカステラを口に運ぶ、その味は当然ながらカステラの風味であり味わいである、ほろ苦く甘かった、ただそのほろ苦さをその日は特に強く感じた志摩長だった…… [続] ※神の器   その憑依に選ばれた器である勇者は、その憑依中は強く、不死に近い状態に成る事ができる。

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たこ焼き🐙

 私は、なんかやな事あった日は、たこ焼きを作る。 プレートで焼く。 失敗しない方法は一つだけ、専用の生地粉を買う事。 揚げ玉は手に入りにくいので、代わりにベーコンを入れる。 味付けはソースとマヨネーズがあれば良い。 あくまで使い回しの効く材料で作る。 即ち無理にカツオ節や青海苔・紅生姜などを買い求め、入れる事にはこだわらない。 まあ、こだわる人はこだわっても良い。 そしてピックで円を描く様に生地を焼き回しながら頭の中で夏祭りの情景などを想像する、するといつの間にか、やな事は忘れている。 不思議な調理法、たこ焼き禅。◯ [終]

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08 円空の乱・何も変わっていなかったノ巻

08 円空の乱・何も変わっていなかったノ巻 「やっぱり一馬は私がいないと駄目ねー、勝ってたらこっそりと帰ろう思ってだけど、見てられなかったわ」 「……」 僕は現状的に反論出来なかった。 「麻美、このサーベルは?」 「島長が貸してくれたの、折られないでね」 と言う麻美は、背中に長い日本刀を引っ下げていた。 そして猿の姿が見当たらない事に僕は気づく。 「麻美、気をつけて」 「逃げたんじゃ無い」 「シツコイからまだきっと近くにいるよ」 * * * 塞国・大翼ノ間・司令室  女王の横に座る参謀のノーム・ノウスは呟く。 「対峙している青年は、まあ雑魚、ただ援護に来た女性兵士は将の器、猿……円空閣下には荷が重いかと」 「……」 「死にます、使い捨てじゃないのなら、ここらで引かせた方が良いかと」 女王は自分の前に自慢の宝を並べ誇らしくしている円空を思い出す…… ……そして決断する。  まず女王は女性兵士よりも、円空の瞳を通して見える灰色のサーベルにとてつもなく異様な闇を感じ眉を歪める、そして直感に従い左腕の人差し指を米神に当てて呟く。 《聞こえますか?、円空》 《へっ女王様?、どこですか?》 《遠くから見ていました》 《それは、どうも》 《円空》 《はい》 《一旦そのまま逃げなさい》 《尻尾切られただけです》 《流れが良くない方に変わったようです、だから、お逃げなさい!》 《…………》 《いいから、戻って来なさい!》 《逃げる? 戻る? はて? 俺がこの島の王なんだが》 《言う事を聞いて!》 《…………》 《円空!》 * * * 「ああ、いるぜ」 猿が僕を六時、麻美を三時の位置とし中央の間に降り立つ、尻尾は羽織ってるマントの一部を破りそれで止血手当をしていた。 「やってくれたな、そのスケは、いい女だ……お前ふざけるなよ、嫁いてさらに愛人とか……もう本当死んでくれよ」 「僕は死なない!」 僕は借りたサーベルを構える。 * * *  女王は円空の意思を完全に操ろうとするも、その嫌なサーベルに視線を感じるとすぐに瞳に牙を刺し込まれた様な鋭い痛み感じ、「あっあー!」と声を上げる。 ノウスも両目を手で押さえ「あっおーーこっこれは!」と声を上げもがく、そして室の照明がイキナリ落ち暗くなり、少しして補助電源が入り室は赤色に染まる。 そこからノウスと女王も円空との通信が何者かに遮断された様に取れなくなってしまう……。 * * * 「獣の感がビシビシ感じるぜ、そのサーベルは唯一無に半端無い妖魔剣だ、お前が持つには過ぎる、王である俺がもらってやる、嫁とスケ諸共な!」 「先生だけは渡さない! 絶対に!」 僕がそう言った時、ドーンと爆発音が鳴り、猿の腹から血が吹き出す。 僕は、その想定外の事に唖然とする。 さらに続けて爆音が鳴る、その二発目でそれが銃声だと言う事に僕は気づき、反射的に麻美に視線を移すと、麻美がバレルの長いピストルを構えていた、その足元に薬莢が転がっていた。 猿は撃たれた腹を抑えながらうめく様に呟く。 「イテーなんで女が、あんな銃を……」 僕は気づく、尻尾を切った後の猿の毛質が変わっている事に。 僕も片手で拳銃を抜き、素早く猿に一発放つ。 「グっ!」 血だらけでどこに当たったかはわからないが予想通り銃が効いた。 「力抜ける……」 そう呟くと猿はその場にうずくまる。 麻美が僕に叫ぶ。 「先生だけは渡さないって、それってさー、私は猿にあげても良いって事なの?」 「いや、そう言う事では」 「頭に来て撃っちゃたじゃない」 「……」 「ほら、さっさと猿の首を落としなさいよ」 「……」 「なに! してんの!?」 麻美が僕を急かす。 「……この猿は誰かに利用されただけだよ」 「だからなに!その猿は一馬を殺そうとしたのよ、もう同じ土俵に立ったのよ、情けはいらないわ」 「でも……」 僕には正直無理だった。 麻美が背の太刀を肩にソリをかけながらスラリと抜く。 「え、麻美がやるの?」 「ええ、間抜けの代わりにね、いつまでも高校生やってんじゃないわよ!」 猿が話し始める。 「そのスケ本当に良いな……俺の負けのようだ……でもな、俺の仇はきっと女王様が取ってくれる、精々つかの間の平和を楽しんでいやが……れ……クソやろ……が……」 「麻美!、もう死んでる首はいいよ」 麻美は僕を無視し太刀を振り下ろす、そして猿の首ギリギリの位置で刃を止める。 「そうね」 * * * 塞国・女王の間 『円空君、やられたかい』 と呟き女王は窓際に立つ、当然地下王国に見上げる空は無い事を知るながらも、苦笑い浮かべ、花瓶の薔薇を一本抜き、頭上に掲げ、床に落とす、それを三回繰り返し花瓶に戻す。 「なんで言う事聞いてくれなかったの?」 「利用されているって気づいてたから?」 「そんなのお互い様じゃない……じゃない……」 そこ迄自問自答し女王は気づく、円空を自分と同等の王に任命した事を、そして口を抑える。 * * *  マントに包んであげた猿の遺体と王冠とサーベルなどの遺品は島長が来て引き取ってくれた。 その時に知り得た事は全て島長に話し、僕は借りたサーベルを島長に渡す。 島長はサーベルを受け取ると、一言僕に言う。 「まあ、お前さんには、まだ早いかな、何ともあれご苦労さん」 「……」 そう言われた僕の後ろから麻美が僕の左肩に手を置いてくれる、僕は空を見上げ思う…… 『何も変わっていなかったんだ……僕だけは……』 幕  数日後の夜、沖で一艘の小さい木舟が燃え、やがて淡い夢と共に底に沈んでいったのだった…… [円空の乱・完] 解説 ※麻美のマグナムピストル  それは麻美が務めていた拳銃工場から退職の際にこっそりと拝借し島に持ち帰ったピストル。限界迄強化改造されたその威力は、象をも倒す。 ※沙羅曼蛇  それは麻美が島長から皆伝の証に授かた長太刀、現代刀ながら蛇がウネル様に浮かび上がった刃紋は優美華麗であり、中々の業物。 ※尻尾  それも持つものは、それを切られるとショック状態になり、一時的にあらゆる力を失う事がある。

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07 円空の乱・対峙ノ巻

07 円空の乱・対峙ノ巻  翌夜、僕は夜の学校へひとりで向かった。  学校の屋上に出ると、いたのはやはり同じ猿だった。 しかしすぐにその場は異空間に変わった。 それは王冠と赤いマントをした以外にその姿は変わらない猿が喋ったからだ。 「よおー、逃げだかっ、と思ったぜ」 「猿が喋ったー!」 僕が思わずそう叫んぶと、すぐに猿は反応する。 「猿って言うなー俺は人間になったのだ、そして積年の恨みを晴らす」 「恨み、僕が君に恨まれる覚えはないけど」 僕がそう言うと円空はフットした表情なり、経緯をボツボツと喋り出す。 ……… …… … 「なるほど、僕の母ちゃんに牙を折られたのを恨んでるわけだ、それなら今から母ちゃんに電話して呼んであげるよ」 と僕はがスマホ取り出すと円空は叫ぶ。 「まっ、待っていー、あのキチガミいや、お前の母ちゃんの事は、もうどうでもいい、だから電話するな」 僕は応える。 「その気持ちはわかるよ、じゃあ、コレで」と僕が手を差した出すと円空も手を出した瞬間に手を引っ込め叫ぶ。 「ち、ちがーうわー」 「違うの?」 「ああ」 「じゃあ電話するよ」 「ち、ちょっとやめろーお馬鹿ー」 「どっちなのよ」 と僕は促す。 「……お前にも文句がある、こないだいきなり俺に殴りかかっただろう」 「……そうだっかな、まあ、ごめん」 と僕が頭を下げる。 すると円空は「素直だな、よし、もうその事は良い、そしてお前の嫁をかけ俺と勝負しろ!」 僕はやっと理解した、『ああ、嫉妬か』と同然申し出を断る猿の相手なんかしてられない。 「断る」 「俺が怖いのか?」 その言葉に僕は少しイラッとするも無視で帰る事に決め、背を向けると凄まじい殺気というのか、何かゾワリとした物を背に感じ思わず振り向くと、猿が剣を僕に向けて振り下ろす瞬間だった、僕は横に身体を捻り地に受け身を取り転がる。 見上げた猿の目は本気に感じ。 そして猿は言う、 「今の軽い挨拶よ、抜けよ、腰の剣は飾りか」 僕は遂にサーベルを抜き構える。 猿の目が鋭くなったのを僕は感じ取り、上段で飛び込んで来る猿に向けて袈裟にサーベルを切り上げる。 猿のサーベルと僕のサーベルが打ち打つかる衝撃受けると思っていた僕は目を疑う、それは、僕のサーベルは猿のサーベルにそのまま切られ、刀身の半分から上が月宙に舞っていたからだ。 でも僕は背に回った猿の方に素早向き直り、折れてしまったサーベルを再びポーカーフェンスで構える。 場に睨み合の少しの間が入り、猿は言う。 「痩せ我慢しないで抜いてもいいんだぜ、腰の虎の子もよ〜」 虎の子それは、拳銃の事だ。 僕は戦いの本質は理解している、勝てば良いのだ、拳銃を持つ僕と知って目の前の猿は挑んで来たのだ、遠慮無く抜いて脇を締め、僕は構え、一応の警告をする。 「前みたいな、脅しじゃないぞ」 「撃てよ」 僕は猿の胸に目がけて銃の引き金を引く。 パン! そして僕は唖然とした、なんと、猿が弾をサーベルで跳ね返したのだ。 僕は、ならと、連射をする。 パン!パン! 連射も跳ね返され、僕は二連を跳ねかせるのなら、おそらく三連も同じだろうと悟り、僕は積み歯ギシリをすると、猿はニヤリとし言う。 「当てていいぜ、当たってやるよ」 猿がそう言い終わる同時に僕は、躊躇無く引き金を引く。 パン! 弾は少し猿の胸に留まり下にポロっと落ちるのを目にする。 猿の胸は無傷だった。 猿は笑う。 「クッククク、でも少し痛かったぜ、さて、お前を今から処刑する」 僕はダメ元で警棒を構える。 「デェテティー!」 と猿が口遊むながら飛び込んで来る、僕は横に飛びかわす、それにすぐに猿が追いついて来て僕に斬撃を放つ、僕はかわす、それを繰り返しているうちに猿が遊んでいる事に気づき僕は腹を括る、捨て身で猿を羽交締めにし、その首元に折れたサーベルの先を力任せに押し込んでやる……と思ったとき、一瞬僕は猿以外の何か恐ろしく跋扈するそれは狼のような鋭い気配を感じ、思わず受け身を取る、猿も異変感じ辺りを見渡し叫ぶ「な、なんだ!、何を召喚した!」そして不意にその目の前の猿は空に飛び跳ね、入れ替わる様にして僕の前に何か飛び込んで来た。 僕も反射的に横に飛びかわそうと思うと、知った者、麻美の声が周囲に木霊する。 「一馬ー!その剣で!」 僕はその言葉につられ飛び込んで来るその狼の様な物に素早く手を出し、バチりと掴む。 見ると僕の手には、灰色のギラギラとした、それは見ているのも恐ろしく成る凄みが差した重厚重圧なサーベルが納まっていた…… それに加え、目の前に切断された猿のクネル尻尾も転がっていた…… 「続く」

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アリスと森の病院

アリスと森の病院  アリスは森を散歩していたら迷ったようでした、いくら歩いても木ばっかりの同じ景色でした、でもそんな放浪にも終わりは訪れ、白い大きな建物に辿り着きました。 入り口の前はホテルの様に丸いロータリーになっていました。 そのロータリーに黒く長い車が入って来て入り口に前に止まりました。 運転席にはミミズクが座っていました。 その後ろの席からは、目の赤い兎が降りて来ました、その顔はげっそりとしている様にアリスは感じました。 その兎は建物の中に入って行きました、アリスも釣られるように中に入りました。 中に入りアリスはそこが病院である事に気付きました。 兎はもう座っていました、そしてソワソワしています。 アリスは可哀想に思ったので、その兎に話しかけました。 「どうしたの具合が悪いの?」 「うん、たまらなく不安なんだ」 「不安なの」 「うん」 「あなたは何に怯えているの?」 「……心臓がいつ止まるか、考えると不安でしょうがないだ、そして最近は僕の方を見る無数の牙が見えるようになってしまったんだ、僕は」 アリスはお母さんの真似をして兎の手をさすりました。 すると兎は少し落ち着いて来ました。 兎は言いました。 「なんか落ち着いて来たよ」 「そう良かった」 そして兎は呼ばれて隣の部屋に入って行きました。 アリスも中に一緒に入って行きました。 中には白衣を着て小さい丸い眼鏡をかけた獏が座っていました。 その獏は兎の話を聴きながら一生懸命、カルテを書いていました。 「要するに僕は死が怖いんです」 「でも怖い死は一瞬だよ、死んだ瞬間に君の怖い死は終わっている、そして死を怖いと思っているうちの君は間違いなく今を生きている」 ……… …… … そして兎が獏に一礼し、診察は終わったようでした、兎はアリスに言いました、「君もついでに観てもらいなよ」 アリスはそう言われて獏先生の前に座りました。 獏はアリスを見て言いました。 「君は籠り人だね」 「籠り人?」 「この森から出れなくなった子の事だよ、たまに来るんだ」 アリスは意味がわからないので首を横に振りました。 すると獏の先生は「あれ」と横の看護師の羊に指示します。すると羊は何処からか一本の注射器を持って来ました。 アリスは注射が嫌いでした、だから叫びました。 「私は病気じゃないわ!」 獏先生はうんうんと頷き「君の名前は」とアリスに聞いて来ました。 アリスは「アリス」そう答えると不意打ち的に腕にプスリとして来ました。 「ああっ!」 アリスは叫びました。 獏は言いました。 「一瞬の痛みはもう終わったよ、もう刺してるから動かないで、動くと痛いよ、動かなけれは、このまま痛くないよ」 アリスの瞳の中と注射器の中で緑色の薬が揺れていました。 ………… …… アリスは注射されたショクで目を覚ましました、どうやら森の中のハンモックで眠り込んでいたようです。 アリスは周囲を見渡すと遠くの茂みから、一匹の赤い目をした兎が見つめていました。 アリスはその兎を家に連れて帰ろうと思い、「おいで、うちに来れば、お母さんがいるから、もう牙に怯える事もないわ」と促しながら手招きすると、その兎はアリスの方に向け一本前に出るも、すぐに回り、背を見せ去って行ってしまいました。 [終]

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アリスと豚さんのクレープ屋

アリスと豚さんのクレープ屋  夕焼けを背景にクレープ屋がアリスの前にたたずんでいました。 そのクレープ屋の店員は、なんと豚さんでした。 『グー』 とアリスのお腹は鳴りました、から、「クレープちょうだい」 と言いました。 すると豚さんは眉間にシワを寄せ言いました。 「やだね」 「え、なんで」 「商売だからさ、あげれないよ」 「そう言う意味で言ったじゃないわよ」 「……そうかい、なら冷やかしかい」 「冷やかし?」 アリスは人差し指を頬先に当て首を捻りました。 「ただのクレープくださいだけじゃ、わからないだろ、もちろんタダじゃ無いよ、銀貨一枚から二枚はもらうよ」 「じゃあ、バナナクレープください」 「だから……」 「一つ売ってください」 「肝心な事を聞き忘れてたけど君はお金は持ってんのかい? 作った後に無いじゃ困るんだ、食べ物だからね」 アリスはしているエプロンのポケットに手を入れました、出て来たのは映画の半券だけでした。 「ほらみろ」 そこでアリスはお店の横壁に店員募集と貼ってある紙を指差しました。 「私し働くは」 「働くだって、君にクレープなんか焼け無いさ、コツがいるんだ」 アリスは横から強引にお店の中入って行きました。 「あ!、こら、君は本当に」 でもアリスは店員に成るには少しいえだいぶ背が足りなかったのです。 そこでアリスは店内の木の箱の上に立ちました。 するとなんとかなりそうでした。 「さて焼くわ、教えて豚さん」 「しょうがないな」と豚さんは見本を見せてくれました」 アリスは真似をしました、そしてクルクルと普通に生地が焼けました。 豚はそれを見て驚きました。 「君は、もしやプロかい」 アリスは鼻の下を擦りヘヘン とした顔しました。 そしてバナナクレープ作りました。 「豚さんと同じに、で・き・た」 アリスのその少し皮肉な口調に豚さんは苦笑いし言いました。 「……でもその勢いで作ったクレープどうするんだい、お客様はいないよ、君もお金持ってないし」 アリスは言いました。 「今は働いた分このクレープでいいわ」 「なるほど」 「じゃそう言う事で」 とアリスはクレープを咥え、お店を後にしました。 すると少しして豚さんがおかけって来ました。 「ちょっと〜!きっ!君!、少しおかしいだろう、いやだいぶ相対性なんとか並に狂ってるだろう」 アリスも言われて気付きました。 「でも、もうクレープ齧っちゃった」 とアリスは唇のクリームを舐め取り笑って誤魔化しました。 「君はプロの詐欺師かい?」 「あら、ヤナ言い方するわね、家に帰ればお母さんが払ってくれるもん!」 とアリスが少し怒り気味に言うと豚さんは少し反省し。 「そうかい、きっとそうだね、僕は店番しているから、持って来てよ」 「待ってて」 「うん、待ってるよー」 アリスは手を振り豚さんと別れました、豚さんも手を振りアリスを見送ってくれました。  それからアリスは、クレープ屋を見るといつもあの夢で見た豚さんを思い出すのでした……。 [終] あとがき  この話しは、多面的に考える事が出来るように、制作した物語である。豚の店員は最初から決めかかり態度が悪いとか、また、アリスが典型的な困った客とか、まあいろいろ……

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06 円空の乱・果たし状ノ巻

06 円空の乱・果たし状ノ巻 ピーポーン♩ と、休日の昼頃に家の呼び鈴が鳴り僕は目を覚まし、出ると……麻美だった。 「元気だった?お義兄ちゃん」 「おにいちゃんって」 「じゃあ、お義兄様」 「どっちでも良いよ、ところで」 「用事は無いかな、でもポストに手紙入ってたよ」 と麻美は人差し指と中指で挟んだ手紙をニッとした表情で出す。 「もうさ、人の家のポストを勝手に」 「抜き打ち検査よ」 「なんのだよ」 「浮気の?」 「そんな事しないよ、それに僕はそんなにモテないよ」 「確かにそう言われると相手にしてたのおねいちゃんと私だけだったもんね」 「うるさいな、早く手紙こっちかして」 と、僕はその手紙を麻美からひったくる。 そして開ける…… 一馬殿 『⚪︎月✖️日、前と同じ時刻に天草高校の屋上にて待つ、来ないだの決着を着けたいにて候』                         円空 後から手紙を覗いていた麻美が言う。 「へえー、これ果たし状じゃない」 「果たして状って、それに円空って猿だよ」 「ああーあの悪戯猿か、でも猿が文字書けるわけないじゃん、これ悪戯ね」 「……」 僕が思考沈黙していると麻美が言う、「私も行ってあげようか?」 「来なくていいよ、もう麻美は帰れよ、結婚してんだからさ」 「あら、冷たいわね」 「うん、冷たいよ、男の友情も大事だからね、変な誤解受けたくないんだ」 「そう、でも島長にはこの事は言っといた方が良いと思うな~」 「僕がその相手をぶっ倒せば終わる話しさ」 「あら、ずいぶん大人らしくなったもんじゃない」 「僕は色々な人のお世話になったからね、そろそろと最近思っているんだ、先生にもいつまでも気の弱い旦那のままじゃ悪いしね」 「確かに一馬なんかがさ~女の子を抱く権利は無いもんね普通は」 「……言うね、まあいいよ、見てなよ」 [続]

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05 円空の乱・覚醒ノ巻

05 円空の乱・覚醒ノ巻  風の噂を頼りに円空は貨物船に紛れ込み、半島の地に入る。 塞国・謁見の間 「まんま猿だね」 「ですね」 「立派なお猿さんだけど、流石に完全成る獣君は無理かな、愛護団体も最近うるさいのよね」 と女王は呟く。 と言われても白猿円空は女王を見つめ続ける。 その前には猿が持参した無数の骨や缶、機械の部品など広げた風呂敷の上に並べ置かれていた。コレクションで、それが献上品のつもりらしい。 女王は立ち上がりその骨を漁り、「ふーん、これは狼かな、随分大きいね君が仕留めたの?」 と猿に話しかける。 猿は首を縦に数回振る。 「全部私にくれるの?」 猿は再び首を縦に振る。 女王は、その猿に目をしばらく合わせている。 そして…… ガラクタの中から壊れた腕時計を拾い上げ懐中から取り出したルーペで調べる。 「コレはブランド品ね、修理すれば使えるわ……よし、試しに通常の半分で、そしてサイの剣」 と横の側近に指示を出す。 側近は円空の肩に注射針を刺し薬剤をその身体に注入する。 しかし円空に変化は無い。 「もう一本打ちますか?」 「いえ、いったん剣を持たせてみて」 そう言われた側近は円空に剣を差し出す。 円空はその剣を受け取ると目は輝き、みるみるうちに筋肉量が増し、その身体か一回り大きくなり始める。 「おっお」と円空は喉を抑え、うめき始める、そして円空の足元を囲う様に青い丸い光の輪が現れ一瞬放出する感じ光りを吹き放つ。 そして間の空気が一瞬張り詰め。 静寂に成り…… 「我奇跡を得たり、ありがたき幸せ、女王様」 円空は言葉を初めて話す。 女王は冷静に対応する。 「あなたが、ここに来た理由は何?」 「俺は強く頭が良い、俺こそ島の王であるはずだった、なのに後から来た人間に島を乗っ取られ、挙げ句の果てにその人間の女に牙を一本折られ、さらにその女の息子に散歩していただけで棒で襲われ、二回目の挙げ句の果てに、鉄炮で脅された、おまけにその息子には綺麗な嫁もいる! 山奥に追いやられ冷飯食ってる独身の俺には夜の散歩も許されないのか!!……ウッキーキキキギギギ」 「……それは良くないね、所で、あなたの島は、どこにあるの?」 「人間どもは、俺の島にあわじと勝手に名を付け、俺を円空と呼ぶ」 女王は応える。 「……わかったは、その剣はあげるから故郷に戻り、好きにやりなさい、私があなたを今をもってその島の王に任命します」 と言うと女王は玉座の裏に置いてある大きい宝箱を開け、中から赤いマントと王冠取り出し自らその猿に着けて上げ、頭髪もワックスでカッコよく尖らしてあげる。 「できた、あなた中々のイケメンよ」 『猿は涙を流し、一礼してその場を去る、猿だけに……』 そんな事をひとり思い女王は吹き出す……「ぶっぷー!」 側近は進言する。 「女王様良かったのでしょうか、生態系的……」 「助けを求めて来たものに手を差し伸べる事にその理由はないわ、それに流言に乗って来たのは猿だけなんだからしょうがないじゃない、試しよ、猿で様子見、ダメなら殺されるでしょう、そしてそれでも彼には本望でしょう」 * * *  キューキュキューとカモメの鳴き声が響く蒼空の下…… 帰りの船の船首で円空は片足を上げ置く姿勢で腕を前で組み、真紅のマントを風になびかせ、地平線を見つめていた。 そして青空に賜ったサイのサーベルを掲げ思う。 『遂に夢に迄見た言葉を覚えた、もう俺は人間だ……ふふっん〜島の女全部俺の嫁にしたるわ』 その目は輝き希望に溢れていた……。  こうして、島に未曽有の危機が迫っていた? [終] 解説 流言  それは、策意があり、あえて流す情報である。 サイコ顆粒薬(菌)  鉱石サイの表面に湧く菌と人参薬草を配合した薬、それは遺伝子の核に関与し脳神経を覚醒させ、サイの武器の恩恵をその身に宿し、また使用できようになる霊薬、ただし使用は人生において一回のみである。乱用すると、心と身体は崩壊へと向かう。 サイの武器  それは情報を共有する為のテレパシー的な通信機能を持つ。

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押したな

 新しく越して来た市と前に住んでいた市は山を抜いて作った新旧の平行に並ぶ二本のトンネルで繋がっている。 その旧トンネルの方は旧道である、そこは有名な心霊スポットでもある。 でも私は気にせずにその旧トンネルを原付で通る、その理由は原付で新道である国道を走り、長いトンネルの中でトラックに煽られるのは、お化けより怖い、それだけである。  そんなある日、トンネルの出口を出た所にひっそりとジュースの販売機がある、私はその販売機の常連である、私はその日も喉を渇きお金を入れ、『さて何を買うかな〜』と思っていたら不意にガッチャンと音と共にジュースが勝手に落ちる。 アレレと私は廻りを見渡す。 誰もいない。 『押したな』 と私は思うも、今日は『これを飲め』とい言う事かと久しぶりにスポーツドリンクを飲む事にした。 夏は、まだまだ暑いのでにて。 [終]

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