Kasirawa
25 件の小説降臨
1000年に1度の惑星直列の日 「堕天じゃ」 天界の裁判長が滔々と述べる 「〇〇〇〇〇〇、そちは天界から永久に追放じゃ」 (老いてしまったわね、ここも) その日、彼女は大妖として、天界が産み落とした地球に降臨した 中国 殷 パリッと亀甲にヒビが入る 殷の名君、受はそれを官僚である卿士らに伝える 「北方に軍火の兆あり。夷狄どもの侵入の暗示かもしれん、急ぎ防衛を強化せよ」 「ははっ。」 軍長がすぐさま応じ、指示を出していく また亀甲にヒビが入る 「うん?これは妖の兆?なんだこれは…」 受の思考を遮ったのは 「受様、少々政務をとられすぎにございます。」 という声 「それが国王の使命であろう?」 「そうではございますが… 名君たる受様の民からの支持は磐石であり、内乱もそう起きますまい。ここのところまともな休暇を取られていないと聞きまする。しばしお休みになられては?」 琳相国(相国=総理大臣、宰相)が提案した。 「相国がそこまで言うのであれば…」 受は近衛兵団の朱雀団を連れ、寝殿に戻った。 類い稀なる名君、殷の受の即位によって、殷は繁栄の頂点を極めていた。 先代が急病でなくなり、17歳で即位した受は有能で積極的な統治者となった。 受自身も、聡明で弁舌さわやか、行政手腕があり、体力も優れていて、素手で猛獣と格闘できるほどですらあった。 内政では農業や生産力の開発を重視し、社会改革を進め、国力を強盛にし、軍事では特に東南方面への長期遠征を積極的に行い、最終的に勝利し、領土を拡大していった。 この2年間で19歳の王が治めているこの地は、かつてない繁栄を迎えていたのである。 そんな受王の腹心たちが、近衛兵団「朱雀隊」 である。 これは受王の父が、彼が幼い頃から共に研鑽するよう選んだ十数名の同年代の少年たちであった。 その中でも朱雀隊の隊長である雷、副長である雲はそれぞれ18歳、17歳でありながら、逞しい肉体をもち、武勇と智略を誇る名将であった。 「なんか面白そうなところあるじゃん♡♡」 そうやって大妖が降ってくるまでは、殷は栄えていたのである。
狭間
真夜中の道路に立ってみたい 車が走るはずの動 そこには何も無い静 アスファルトの上の生 本来ならおとずれる死 風だけが構ってくれる 君たちが僕を無視する だから連れ出したい 逃げなくてもいい狭間 ずっと不安定な未来 それは真夜中の道路 連れ出された君と 死んでいるはずの僕が 呼吸する場所
孤り
怠惰で単調。 それが浅はかな人生の振り返り。 いつになっても憧れの高校生活なんてやって来ず、その癖に現実にあぐらをかく。 人は待っているだけでは何も得られない。 それが分かっていながら待ち続けていた末路。 またここで無条件で自分を好いてくれる、それでいて綺麗な女子でも現れてくれないか、と頬を指でつついてくれないか、と。 無機質で、無意味で、無価値な妄想 この妄想の原因と結論は「俺が孤り」であるということ。 まだ図書館に残って勉強しているあいつらを思いながら、ため息をついて俺はその事実と向き合った。 活発で順調。 それが手っ取り早い人生の振り返り。 青春の甘酸っぱさを噛み締めながら充実した高校生活を送る。その幸せに酔いしれる。 人生は行動した者勝ち。 それが分かっているから送ることが出来た生活。 またここでなにか涙が少し流れるくらいのロマンチックなことを起こして、さらりと感動的な結末を迎える。 なんて有意義、なんて充足感。 でも私は知っている。 結局孤り。 隣にいた彼の温もりさえ、奪ってしまうような寒さの中で、白い息を吐きながら。
三木和葉の独白
私は、小鳥遊結花さんのことは詳しく知りません。 よく遊んでいたのが椎名さんや、金子さん、水野さんだったくらいで。 私はあまり積極的じゃありませんし、小鳥遊さんもそうだったと思います。そんなに喋ったこともありません。 でも、小鳥遊さんは椎名さんたちとは少し違って、私のことを気にしていないようでした。 私は小鳥遊さんのそういうところが好きでした。私のことを腫れ物とせず、教室というひとつの空間にいる一人として接してくれたからです。 一度だけ、小鳥遊さんとちゃんと話したことがあります。 私がミステリを読んでいた時です。 彼女は私にミステリが好きか聞き、私が頷くと、 「私もミステリは好きだよ。順番が整えられているからさ。」 私がぽかんとしていると、彼女は 「ミステリはその推理劇なり、どんでん返しなりを後半に、メインディッシュとして持ってくる。つまり前半部分は、『メインディッシュの味を一番引き出した』構成なり順番になってるってことじゃん?」 と言いました。そして、 「でもそれならほかの物語だって、構成は練ってるから、ミステリだけを贔屓する理由にはならないって思うでしょ。でもミステリはメインディッシュがちゃんとしてる。だから好き。」 とも。 こんなに饒舌に喋る小鳥遊さんは、その日が最初で最後でした。 私はそのときは、あまりその話を理解できませんでした。 彼女のある意味独断的な思想だと思っていたし、 そんなことを考えるんだなと少し驚きました。 でも彼女の言ってる意味が少し分かった気がします。 彼女は順番を愛していました。同時に「メインディッシュ」を愛していました。 なぜ、彼女が死ななければならなかったのか私には分かりません。 もし会えたなら、かける言葉は決まっています。 「次は何をするの?」
椎名遥香の独白
私は派手なものが好き。いや…それは違うかな? 私は可愛いものが好き。…それも違うか。 私は私が好きなものが好き。これがしっくりくる。 そんなわけで、私は自分の「好き」を1番に考えてきた。 だから、教室の隅で本を読んでる地味…静かな三木ちゃんとか、 ずっと機械の声、あぁ、ボカロ?かな、を聞いてる柳瀬ちゃんとかの気持ちはよく分からなかった。 でも結花のことは私結構知ってたと思う。 あの子は私の友達ってちゃんと呼べる関係だったと思うよ。 だって何回もスタバの新作飲みに行ったし、プリクラ撮ったし、校外学習の班も一緒だった。 結花は優しかった。いい匂いもしたし。でも今考えてみたら、私がグイグイ行き過ぎたのかなとも思う。 たまに咲に「あんまり結花連れ回しちゃダメ」って言われたし。 でもなんだろうなー。私たちは親友になれなかった。 なりたかったわけでも、なりたくなかったわけでもなくて、それは時間が過ぎたら勝手に「なれるもの」だと思ってた。 だからかな。私たちは足りてるようで足りてなかったのかな?って今は思うよ。でもその足りなさは別に他で埋めればいいことだとも思ってる。 結花には冴木がいたし。 二人は円満だったと思うよ。私はあんまり冴木の良いところが分からなかったからあれだけどね。 だから分からない。結花が死んじゃった理由は。 私が嫌われてたのかな? でも結花からたまに言われたことはあったよ。 「私は遥香になってみたい」って。
見たこと無い色と見えない色
入学式も終わり、高校生活が始まりを迎えた。 穏やかな春の日差しに包まれて―。 なんてことを言っている場合ではない。 他人の頭上に「色」を見られる俺は、入学式の日、 頭上に「見たこと無い色」を浮かべた生徒会長と「色が見えない」女子に出会った。 そして入学式の日、「色が見えない」女子は 俺の方を見て唖然としていたのだ。 その原因も分からない。 途方に暮れているともう放課後だ。 することを探していたその時、 「ようやく見つけた!」 ん?俺は声がした方を見る。 教室の入口に立っていたのは 頭上に色を浮かべていない女子だった。 つまり俺たちは再会した。あの入学式以来だった。 窓際の席の俺に近づき、窓にもたれるように俺の横に立った。 「あんた、何者?なんで頭の上に色なんか浮かべてんの?」 は?訳が分からなかった。なんとか落ち着いて 「まず自己紹介からしないか?」 すると彼女はハッとしたように 「あっ、ごめん。私の名前は七宮 彩葉。 1年生。何?好きな食べ物でも言う?」 「いや、別にそういうのはいい。 俺の名前は古賀 蒼太。同じく1年生だ。」 「なんて呼べばいいか知らないけど蒼太! あんた何者なの?頭の上にある青色は何?」 俺はだんだん理解した。 「もしかして、俺の頭の上に色が浮かんでいたりするのか?」 「その通りよ。」 「もしかして、色が浮かんでいるのは俺だけだったりするのか?」 「その通りよ。」 そういう事か。彼女、七宮には俺の色だけ見えるらしい。 だが、それが心と連動するかは分からない。 ただ、連動することはほぼ確定だろう。 つまり、俺は彼女の心の色だけ見えず、 彼女は俺の心の色だけ見える。 俺はその事情を七宮に説明した。 彼女は戸惑うことなくそれを受け入れた。 俺にはそれが意外だった。 「あ〜。そういう事ね。だからあんた青色浮かべてるんだ?」 「どういうことだ?」 「なんかつまらなそうじゃん。熱くなることがないんでしょ?」 「まぁ正解だな。」 「じゃあ蒼太は、私の色は見えないんだよね?」 「あぁ。こんなことは初めてなんだが。」 「へぇー。じゃあじゃあ、私の色今何色だと思う?」 好奇心を目に浮かべ七宮は俺に聞いた。 初めての質問だった。 「黄色とかか?」 「それはねぇー。」 七宮は間を置いて 「内緒。」 と言った。 彼女は人差し指を唇に当て、首を傾ける。 彼女の肩まであるツヤツヤの髪はふんわりと揺れ、 魅力的な大きな目が俺を見つめる。 夕焼けに照らされた彼女の姿に、思わず 「可愛い…」と漏らしてしまった。 「ちょっ、は?あんた何言ってんの? もっ、もう帰る!」 俺は七宮の心の色は見えない。 でも、彼女の顔が真っ赤に染まったことは 心が見えなくても、俺には分かった。 七宮が去ってから。 「あっ、あのー。少しよろしいでしょうか?」 見た事の無い色を浮かべた生徒会長は、 俺しかいない教室に訪ねてきたのだった。
君以外の心が見える僕と、僕の心だけ見える君の話
はっきりとは覚えていない。 小学生になって少しの頃から俺は他人の頭上に「色」を見ることが出来た。 それがその人間の「心」と連動していると気づいたのは、4年生になったときくらいだと思う。 はっきりとは覚えていない。 ただ、高校1年生になったばかりの俺の目には今も、他人の心の「色」が頭上に浮かんでいる。 それは、大きさと色が変わる。 大きさは感情の大きさ、色は感情の内容を示す。でも、赤だから 怒っているとか、青だから悲しんでいるとか、 そんな簡単なものじゃない。 純粋に、ひとつの色だけが浮かんでいることなど見たことがない。 それは喜怒哀楽諸々の感情はいつもどこかにはあって、 ひとつだけがそれを支配することはないからだと思う。 そんなことを振り返っている入学式。 俺はそこで初めての経験をした。 「生徒会長より新入生への挨拶です。」 生徒会長か。大変な役職をよくこなすな。 そんなどうでもいいことを思っていた矢先、俺は声を出すのを我慢するのに必死だった。 え?なんだあの色は。見たことがない。 新入生の前へ歩いてきた生徒会長の頭上の色、 それはおかしかった。 大きさは普通だ。でも、混ざり方か、 色の種類か、なにかがおかしかった。 黒では無いが、それに近い諦め?のような色だった。 俺は、それを形容する言葉を知らない。 見たことがなかったから。 そうして生徒会長の頭に釘付けになった俺は更なる初体験をした。 「新入生、退場。新入生、起立。 皆さん、大きな拍手でお送りください。」 前列に座っていた新入生から退場していく。俺は後ろの方だから、先に退場していく、これからの同級生たちを見ていた。 そこでだ。俺はおかしなものを見た。 1人の女子。名前も知らない彼女の 頭上には何も浮かんでいなかった。 俺はそんな人間を見たこと無かった。 そして次の瞬間、彼女は僕の方を見て、慌てて目を逸らし退場して行った。 どういうことだ。立て続けに意味のわからない事が怒っている。 俺は、色と感情が個人によって連動するので、その色が表す細かい心情こそ全てを知っているわけでは無い。 だが色自体は網羅したつもりだったし、 出会ってきた他人全ての頭上に色は浮かんでいた。 それでも生徒会長の頭上の色は見たこと無かった。 それでも同級生となる彼女の頭上に色はなかった。 この2つで頭がパンクしそうになった時、 俺は退場の番がきたことを悟った。
恋砂糖3
太陽は容赦なく照りつけ、僕たちを溶かそうと必死なようだ。 暑い暑い。まだ6月だというのに。 もう放課後だというのに。 もう隣の席でなくなった白木さん。 彼女は、僕の隣の隣の斜め前だ。あんまり見えないけれど、 今日も真面目に、彼女は勉強している。 あれ以来、僕達には進展がなかった。 席が離れたことも影響しているはずだ。 僕は、白木さんに話しかける勇気なんてないし、 眺めてるだけで充分だから、 これ以上は望まない。 すると、数少ない友達かつ、帰宅部で僕の後ろの席の原川が シャーペンで背中をつついた。 「もうやめろって、普通に声かけろよ。」 僕が振り返る。すると原川が 「お前ほんとに、ずっと白木さんの事見てるな。」 「バレた?」 「バレて欲しいのかってくらいには見てるぞ。 ガン見だ。ガン見。」 「仕方ないだろ…」 「何が仕方ないんだか。まぁ、そんな純粋片思い一途マンを 見放すほど俺は冷たくない。」 饒舌に話し始めた原川。 「来週の土曜日、隣の市で夏祭りがあるんだよ。 屋台付き、花火付きだ。 結構有名だし、お前も知ってるだろ? 誘ったらどうだ?」 「誰をだよ。」 「分かってることを聞くなよ〜。まぁこれは提案。 お前がどうするかは、お前に任せるぜ。」 なんだコイツは。助け船でもなんでもない。 祭りのことは知っていた。 だが白木さんを誘うのは… 「いい提案だとは思うが、流石にな。」 「何なんだよ。根性無し。」 グサッ。なかなかの痛みだ。 白木さん…。俺が夏祭りに誘っていいような人か? そんな葛藤に駆られる。 すると椅子がゴゴッと引かれる音がした。 音の方を見ると、白木さんが突然立った。 そして僕の方に歩いてきた。 彼女は僕の前で立ち止まり、 「あの…聞こえてるんだけど?」 と気まずそうに言った。 最悪だ。原川を刺す。そう決意した。 だが、 「私夏祭りの日、予定ないんだよね?」 白木さんの顔が、徐々に赤くなる。 「だから…ね?」 そう言って彼女は一目散に駆けてった。 え? 僕も原川も目を丸め、開いた口が塞がらない。 そういうことなんだろうか。 そんなことがあっていいんだろうか。 あまりにも甘すぎる現実に、 僕はついていけなかった。 そして、僕の口から最初のお誘いをしなかったことを とてつもなく後悔した。
恋砂糖2
やばいやばいやばい。 隣に座っているのは、僕がいつも見惚れている白木さん。 狭いベンチのせいで、彼女との距離がとても近い。 そして狭いベンチのおかげで、彼女の 甘い香りが、贅沢に感じられる。 「あのっ、白木さんは、放課後はいつも何してるの?」 僕が見ている限り、彼女はいつも 教科書なり単語帳なりプリントなりと にらめっこしていた。 「勉強…かな…」 自信なさそうに答えた。 「そうなんだ…」 続ける言葉が見つからない。 すると今度は白木さんから 「御言くんも、勉強してるよね?」 「うん…(本当は隣の席の白木さんを眺めてるんだけど。)」 ぎこちない会話はなかなか続かない。 だから僕は、思い切って聞いた。 「あっあの!白木さんって、その… あの…なんていうか…気になってる人って!いるんですか?」 上手く言えなかったことなんかどうでもよかった。 彼女の口から発せられる答えしか、鼓膜に届かなかった。 「いるよ。気になってる人はね。」 そう言って、少し首を傾けた後、彼女は吹き出した。 彼女の笑い声が響く。 「御言君って、面白いんだねぇ。」 予想していなかった。 白木さんが、こんなに笑うとは。 そしてその笑顔が、見たことないほど 眩しいとは。 気になる人がいる白木さん。 僕だといいな。と思いながら、 そんなありもしない妄想に想いを馳せる。 「教室に戻ろっか。」 甘い甘い時間が、溶けていった。
恋砂糖
僕には、気になる人がいる。 その人は、別に、透き通るほど綺麗とか、漫画のヒロインみたいに可憐だとか、 そんな人じゃない。 ただただまっすぐで、努力家で、優しくて。 そんな彼女に、僕は見惚れてしまう。 今日もまた、彼女を眺めて、そう感じる。 彼女の名前は、白木和香。 授業中はいつも、何かをメモしていて、 休み時間は単語帳をめくっていて、 黙々とお昼ご飯を食べている。 そんな彼女が気になって仕方ない。 僕の隣で、いつもひたむきな彼女。 今日も見惚れるだけで、話しかけられない。 放課後。なんの部活にも入っていない 僕と彼女は、教室に残っていた。 僕は教室から出て、トイレに向かった。 この学校は、古い校舎なので、 外にしかトイレがない。 用を足して、教室に戻ろうとすると、 白木さんが校舎から出てきた。 すれ違う‥と思っていたら 「御言(みこと)君だよね。」 白木さんが、いきなり下の名前で呼んできた。 僕は、あまりの予想外に、言葉を失いそうになった。 咄嗟に言葉を繋ぐ。 「そっそうだけど、どっどうしたの?」 「いつも隣で見てくるから、少し話してみたくて」 すこし恥ずかしそうに言った。 バレてたー。見惚れてたのバレてたー。 弁明の余地もない。というか、恥ずかしそうなの可愛すぎる。 「あっちのベンチで話さない?」 僕は頷いた。高揚と緊張が止まらない。 2人でベンチに座る。 甘い甘い、そんな香りがした。