だれか

9 件の小説

だれか

わたし

何も無い私でした。 何も無いことに気づかない私でした。 あの人は線を綺麗に引く人だと思いました。人と人との間を綺麗な一本の線で明確にする人でした。 きっとだからでしょう。憧れてしまいました。一人で堂々と生きているように見えたのでしょうか。本当はきっとそんな人では無いのに。 あの人になりたいと思ってからは目まぐるしい日々を送りました。共通の話を持ちたかったのです。すぐに好きな物や感じ方や考え方を合わせました。相性が良かったのでしょうか、半年もしないうちになれました。 いつしかあの人の横が私の一番好きな居場所で、落ち着く場所でした。かけがえのないものでした。今までそんなもの無かったものですから、それはもう大惨事です。 けれど、気づいた時にはあの人の横はもうありませんでした。私とは違い、明るくてお喋りな可愛らしいお方でした。憎むことは、出来ませんでした。 私の空っぽの中身はあの人でぎっしりと埋まってしまっていて、染み付いてしまったので。もう、変わることは出来ません。自分が選びとったと思っている道にはあの人の気配がします。 もう諦めてしまいました。大切な大切な貴方で、私ですから。元には戻れない。 それでも良いと思えてしまうほど、きっと幸せを知ってしまったのでしょうね。

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アネモネ

「白いアネモネは期待という意味があるんだって」 教えてくれたのは貴方。 花言葉は美しい願いのようなものだと思っていたのよ。呪いになるなんて思っていなかったの。 貴方を想うと手の力が抜けなくて、折れちゃわないようにしなくちゃって、優しく包み込むんだけれど。 想いは募るばかりだわ。

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大切な人

貴方は子供のように笑う。私よりうんと年下なんじゃないかといつも錯覚してしまう。 寂しがり屋で、いつも退屈そうで。一人でも楽しめると強がっている癖に、「美味しい」とたい焼きの写真を送ってくるような可愛い人だ。 何よりも裏切られることに脅えている。期待しなければ失望することもないと、信じて疑うことを知らない。 誰にも興味が無くて、誰にでも優しくて、誰の区別もしない。貴方の前では人間は人間でしかないのだろう。 私は貴方の期待になりたい。 私は貴方の本心など何一つ知らない。 何も知らない貴方が好きだ。

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生きる意味

生きる意味がなくても生きてていいんだよ。 って誰かが言ってた でもそれって、死にたくないと思ってる人達への慰めであって はやく死ねたら、と思う私には響かない言葉だ。

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夜の中

月光藍色の電車の中で 海も月明かりも知らず 病的に白い貴方の横顔を 目の裏まで焼き付けていた。

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遺品

音楽が死ぬ27より前の日に貴方は死んでしまった。 死んだ後の絵画が美しいように、 あの音楽は貴方が死ぬ前よりも、 意味を与えられたのだろう。 それがなんだかすごく寂しくて、 音楽は貴方を殺してしまったんだと思った。

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それはまるで踊りのような

真夜中の空気を君は美味しそうに飲み込んで 海に咲いた月を宝石のように優しく撫でた 錆びた空き缶にある何かを虚ろな目で眺め 思い出がへこんだ砂浜で 溺れないように昔に縋った

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来世

来世はきっと出会ってくれない貴方 今日はどこへ行こうか

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真綿で首を絞められているようだった。 呼吸をすることは出来ても、目の前は霞んでいくばかりだった。 鳥が羨ましかった、見上げることしか出来ない私にとって、目を焼くほど眩しかったから。 縄を持っている人が羨ましかった、真綿よりも固くて丈夫で、とても可哀想に見えたから。 …雨の中で貴方に出会った。貴方は私に傘をさしてはくれなかったけれど、たった2人。 鳥を眺めている時は晴れていた気がした。

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