だれか
13 件の小説本当のこと
君はカラオケに行くと必ずメロンソーダを飲むんだ、と言った。 私もだよ、と言った。 その日から私は必ずメロンソーダを飲むことにした。 このバンド知ってる?あまり有名では無いんだけど、と聞かれた。 知ってる、最近聞いてないんだけどいい歌詞書くよね、と言った。 その日からそのバンドを毎日聞いて、語れるほどには詳しくなった。 君にはたくさんの嘘をついていたと思う。 とても酷い、どうしようもないやつだと思うよ。 それでも、メロンソーダは好きで今も飲んでいるし、あのバンドのライブで感動したのも本当なんだ。 ねぇどうか君には、嘘以外を信じてほしいんだよ。
日々
砂浜で、ならんで歩いた痕跡を辿って 海と空をとおくまで見渡すとき。 近所のお祭りで、かきごおりのいちごを買って 知らない人の歓声とともに花火を見上げたとき。 ファミレスで、あれもこれもたくさん頼んで 机がいっぱいになるのを待っていたとき。 外に出て、家の鍵をかけて イヤホンから聞こえる音をひとつ大きくしたとき。 ひとり家を飛び出して、知らない部屋で 天井も、布団も、空気も、景色も 何も知らない場所で 眠れなくなって窓の外からみえた 朝焼けに心を 奪われたとき。 わたしは ひとりでいることのさびしさを知った。
人生のマイノリティ
私は、真面目で怠惰。臆病で天邪鬼。 あとはそうだな、 自分のことを周りより少し賢い人間だと思っている、とか。 誰かといるよりも一人で遊びに行く方が好き。ひとりディズニーが出来るほどの勇気があるかどうかはわからないが。 原作厨で懐古厨。ちょっとマイナーなものが好きだし、有名になったら冷めてしまう薄情者。 すぐに嘘をついて自分がまるで正しいように振舞って、なんでも知っているようなフリをして酸いも甘いも知り尽くしているような態度をとる。 あぁ、そうだった! 私は、人恋しくて寂しがりやで捻くれ者だけどどこにでもいるただの人間。 私という人生の主人公である。
心中
「心中しようか」 貴方の最後に私を選んでしまったことと、 私の最後が貴方であること。 貴方も私と同じ、この世界にうんざりしていたこと。 人生で一番、ときめいてしまいました。
わたし
何も無い私でした。 何も無いことに気づかない私でした。 あの人は線を綺麗に引く人だと思いました。人と人との間を綺麗な一本の線で明確にする人でした。 きっとだからでしょう。憧れてしまいました。一人で堂々と生きているように見えたのでしょうか。本当はきっとそんな人では無いのに。 あの人になりたいと思ってからは目まぐるしい日々を送りました。共通の話を持ちたかったのです。すぐに好きな物や感じ方や考え方を合わせました。相性が良かったのでしょうか、半年もしないうちになれました。 いつしかあの人の横が私の一番好きな居場所で、落ち着く場所でした。かけがえのないものでした。今までそんなもの無かったものですから、それはもう大惨事です。 けれど、気づいた時にはあの人の横はもうありませんでした。私とは違い、明るくてお喋りな可愛らしいお方でした。憎むことは、出来ませんでした。 私の空っぽの中身はあの人でぎっしりと埋まってしまっていて、染み付いてしまったので。もう、変わることは出来ません。自分が選びとったと思っている道にはあの人の気配がします。 もう諦めてしまいました。大切な大切な貴方で、私ですから。元には戻れない。 それでも良いと思えてしまうほど、きっと幸せを知ってしまったのでしょうね。
アネモネ
「白いアネモネは期待という意味があるんだって」 教えてくれたのは貴方。 花言葉は美しい願いのようなものだと思っていたのよ。呪いになるなんて思っていなかったの。 貴方を想うと手の力が抜けなくて、折れちゃわないようにしなくちゃって、優しく包み込むんだけれど。 想いは募るばかりだわ。
大切な人
貴方は子供のように笑う。私よりうんと年下なんじゃないかといつも錯覚してしまう。 寂しがり屋で、いつも退屈そうで。一人でも楽しめると強がっている癖に、「美味しい」とたい焼きの写真を送ってくるような可愛い人だ。 何よりも裏切られることに脅えている。期待しなければ失望することもないと、信じて疑うことを知らない。 誰にも興味が無くて、誰にでも優しくて、誰の区別もしない。貴方の前では人間は人間でしかないのだろう。 私は貴方の期待になりたい。 私は貴方の本心など何一つ知らない。 何も知らない貴方が好きだ。
生きる意味
生きる意味がなくても生きてていいんだよ。 って誰かが言ってた でもそれって、死にたくないと思ってる人達への慰めであって はやく死ねたら、と思う私には響かない言葉だ。
夜の中
月光藍色の電車の中で 海も月明かりも知らず 病的に白い貴方の横顔を 目の裏まで焼き付けていた。
遺品
音楽が死ぬ27より前の日に貴方は死んでしまった。 死んだ後の絵画が美しいように、 あの音楽は貴方が死ぬ前よりも、 意味を与えられたのだろう。 それがなんだかすごく寂しくて、 音楽は貴方を殺してしまったんだと思った。