茜桜 手鞠

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茜桜 手鞠

(せんおう てまり)です 投稿頻度は低めです 好きな時に手に取って読めるような手軽さを考えて作っています よろしくお願いします

終.無知の罪

偉大な母から生まれた私は凡人で何も知らない罪深い人間でした。 それを知ったのは何年前だったでしょうか… ただ、私は偉大な母を偉大だと思わなかった、普通の母と子だと思っていました。 私の家はお金持ちでも無く、年収約500万程をキープし、その中でなるべく苦にならないよう生活をしてきました。 母は、私を育てる中で気分で怒ったことはありません。 間違った事をしてしまった時だけ怒るのです。 そして、母は言うのです。 「あなたが自分でしたいと思うならすればいい。自分で選択したことなのだから私は知らないよ」 その言葉は私にとって怖い一言であり、自分の選択は自分で責任を取らねばならないものだと学びました。 そして、何か間違えた時にはいつも母は理由を聞きました。 「何故そんなことをしたの?どうしてそう思ったの?」 私はまともに母の質問に答えられたことはありません。 納得したら私の間違いが許されるのかというと違います。 母は今後の一つの学びとなり、工夫次第で間違いを正すことができるからこそ、理由を聞くのです。 それ以外、怒られることはありません。 優しく、私と目線を合わせ、私のやりたいことを優先してくれる母でした。 だからこそ、私は自由な生活を送っていました。 母に対して友人のように接し、暴君王女のように我儘を言い、それを普通だと思って生きていました。 その様子を見た友人達は、私に言いました。 「恵まれた母を持ったのだからもっと大切にしなきゃいけないと思う」 私は自分が恵まれていることに気づいていなかった為、家庭内を知らない人間にどうして注意を受けなければならないのかと思ってしまいました。 その後、私の母親に会った人間は私に言うのです。 「あなたの母親と私の母親を交換してほしい」 偉大な母を持つ私を皆が憎みました。 その時の私は知らなかったのです。 周りの母親がヒステリックに気分で怒ることを、母親と気軽に話をすることは無いということを、自分の今ある自由は異常だということを知らなかったのです。 そんな私は無知の罪なのです。

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終.無知の罪

10.少女の日記

私が小学校3年生の頃、登校と下校を共にしていた友達が他の人と行くと言ったので私は1人で登校、下校をすることになりました。 朝は、姉と時間が合う時は一緒に行き、帰りは姉とは時間が合わないので1人で帰るという時間を過ごしました。 そんなある日、同じクラスの子が私に言ったのです。 「一緒に帰ってもいいかな?」 その子はいつも1人で登校、下校をしている子でした。 私も一緒に帰る人がいなかった為、その日は一緒に帰ることにしました。 その後、その子は勇気を出して私に「朝も一緒に行きたい」と言ってくれました。 その日から私とその子は登校、下校を一緒に過ごすこととなりました。 それから、その子とは小学校の中で親友と言うであろう程、仲が良かったと思います。 しかし、その子と仲良くなっていくうちに自分とその子の違いをはっきり分かるようになっていきました。 小学校のいつ頃だったか覚えてはいませんが、その子は母親を連れてお家に遊びに来たことがありました。 その時、私の母は特にいつも通りというような反応だったと思うのですが、私がその子のお家に遊びに行き始めてから母の様子がどんどんと変わっていくようになりました。 その子のお家は小学生の私の目にはお城の様に見えました。 その子の母親も美人でスタイルが良くいつもお洒落をしている人でした。 私の家は、足の踏み場も無い…物で散らかっている…ゴキブリはこんにちは!といつも出てくる程の汚さでした。 私はその子の家を見た時、私もこんな家に住みたい、将来こんな家にしようと思いました。 ある日、その子に聞きました。 「お母さんは、いつも怒るの…勉強できなかったら怒られるし、忘れ物が見つからなかったら怒られるし、その時の気分でも怒られる…お母さんに怒られたことある?」 「うーん…あるよ!でも、約束破ったり…悪いこと?をしたりしたら怒られるかな!」 私は悪い事をしているから怒られているのだろうか、悪い事をしているという感覚が無いだけなのだろうか、それとも、この子がただ嘘をついてるだけなのだろうか…そう思い、その子の家に寄ったついでにその子の母親に聞いて見ることにしました。 「〇〇ちゃんのお母さんは、怒ったりしないの?」 「悪い事をしたり、約束破ったりしたら怒るよ?」 「……私、悪いことしてるのかな…?お母さんにね、〇〇ちゃんのお家みたいに将来綺麗な家に住みたい!って言ったら叩かれたの…ほっぺが赤くなるほど叩かれたの…」 「……」 「…だから…一生懸命掃除したの…綺麗にしたの…そしたら疲れて寝ちゃった…維持しようとしてもすぐ汚くなっちゃうの…」 すると、その子の母親は私を抱きしめてくれました。 そして、私に言ったのです。 「今は辛いと思う。でも、あと何年か耐えたら逃げられるから」 私は、その子のことが大好きだったから遊びたかった… けれど、母親は許してくれませんでした。 その子と仲良くなり始め、その子のお家の話をし始めてから母親は私を叩くようになり、次第には私とその子を遊ばせないようにしました。 どんなに約束しても、その子が何時間待とうとも私はその子の元に行けません。 その時、母が駄目と言ったら私は行けないのです。 なので、私は何度もドタキャンをしてしまいました。 そんなある時、3人で登校、下校をすることになりました。 その1人は最初に共に登校、下校をしていた子です。 〇〇ちゃんと一緒に登校している最中に急に入ってきて、その日から一緒に行くことになりました。 少し経つと〇〇ちゃんはハブられるようになりました。 私はハブられているのを知っていて見て見ぬふりをしていました。 他の子とも一緒に下校をしたりしましたが、〇〇ちゃんは他の子からも嫌われていました。 私はその子が大好きでしたが、他の方は違ったようです。 今なら分かりますが、その子はお嬢様のような思考を持った人でした。 私の家は父がとても高収入だった為、私が欲しいものは買って貰える環境でした。 その子との違いは、母親が立派かどうかです。 なので、お嬢様思考は周りにとって嫉妬の対象でしかなかったのです。 そんな嫉妬の対象にされたその子は虐められたと感じるほど心地の悪い場所だったと思います。 それから、その子は私から距離を置くようになりました。 …私から距離を置いたのほうが正しいでしょうね。 そして、中学に上がって一度だけ…私に声をかけてきたことがあります。 「今日、一緒に帰らない?」 何か言いたいことがあったのかもしれません。 しかし、私は断ってしまいました。 その子と一緒にいるところを母親に見られれば、また良くないことが起きるかもしれない… そう思ってしまったからです。 その日から声をかけられることはありませんでした。 そして、中学校2年生になった頃その子が転校するという噂を聞きました。 噂を聞き始めて2週間ほど経ったある日、手紙が届きました。 その手紙の内容は“一生恨む”といった内容でした。 私は、その子から罪悪感という大きなプレゼントを渡されたのでした。 以上、私の日記です。

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10.少女の日記

9.叫び

「お父さんとどんなことがあったのか詳しく教えて下さい」 警察官は私を捕らえた後、取調室で話を聞いている 「…昔の話になります。父と母が出会ったのは海外のカジノのあるバーでした。…」 そこで、母はゲームで父に負け、結婚することになったそうです。 元々、父も母も両親が裕福な家だったらしくその影響を受けたくなかった母が家から出て自分で就職をし、働き始めたらしいのです。 母の性格上、誰かに頼ることなく自分で切り開きたい人だったようなので、家を出た後も上手くいったそうです。 そして、両親とも家を出た後も仲が良かったそうです。 父は、両親の仕事を継いで経営をしていたそうなのですが、母と出会って経営を辞めたそうです。 「めちゃくちゃな父ですよね」 「…まあ…今のところなんとも…」 父も就職し、なんとか会社に溶け込み仕事をしていたようです。 しかし…私を産んで10年程経った頃、父がおかしくなっていったのです。 どこで話を聞いたのか分からないですが、急に宗教にハマり父の部屋には宗教の道具が増えていきました。 そんなある日、父は母を殺しました。 私が友達と遊んで帰ってくると、リビングで血だらけになり倒れている母と笑っている父がいました。 私は母に近づくと微かに目を開けた母と目が合いました。 私は狂った父を憐れに思い、母に言ったのです。 「でも、どんな人にも平等に接したせいで刺されてしまったね」 その言葉を聞いた母は絶望的な顔をして目を瞑りました。 そして父は私を見るとこう言ったのです。 “庭に埋めるぞ” 私は父が普通の神経では無いことを再確認しました。 そのまま時が経ち、高校生になると父は私に向けて母の面影を探すようになりました。 私の顔が母と似ている。 それだけで、私は性的対象として見られるようになりました。 父に触られるだけで悪寒がし、鳥肌が立つほど気持ち悪かった。 そんな日々を耐えて、あの日私は何かが切れたように父を包丁で刺し殺していました。 「私はどんな罪なのでしょうか?」

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9.叫び

8.娘との時間

私たちは周りから見ても自分達から見ても仲がいい親子だ 娘のことは本当に愛しているし、この子の幸せだけを願っている そんな娘とよく会話をするのだけれど… いつも娘から言われることは 「お母さん、このままだときっと刺されちゃう」 とても物騒だが、娘はいつも私に言う 私があまりにも異常なまでに周りを愛しすぎているせいで周りが異常になっていくと… 私にとっては普通だと思っているし、人は大事にするものだと思い行動しているのだが… それを周りは理解できず、1つのピースが外れると逆上してしまい、人を殺めてしまうほどになってしまうのだろう そして、それは誰にでも陥るということ… 「最近、お父さんおかしいよ…お母さん誰にでも平等に無償の愛を与えることが全ていいとは限らないんだよ。だから…」 娘からこれだけ何度も忠告されていたのに私はそれに耳を傾けられなかった だから…ああなってしまったのね…

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8.娘との時間

7.割れた…

カツンと音を立て卵を割る… ああ…今日は運が悪い日なのだろう 殻が入ってしまった このぬめっとした液体から殻を取り出すのは少々面倒だが…やるしかない… 今日は、私が得意な卵焼き!を作ろうと思っていたのに…殻が入るとか聞いてないよ?? そういえば…今日は静かだな… どうしてこんなに静かなのだろう よく聞く嵐の前の静けさってやつかな? いつもは部屋の中で物音がして、基本的に静かな時はないというのに…今日に限って静かだな ああ!だから失敗したのか! いつもと違うから誤ってしまったんだ! あれ?なんか…卵の色が違くない?? 私が見ているのは卵だよね? あれ…?私の手…こんなにも赤かったっけ? そういえば昨日何してたっけ? あれ…?あれ…? 「はっ!…夢?…夢だよね…?まさか…そんなことはないよね…」 何故か目の前には学校の先生がいて、怯えている そして、遠くの方でサイレンの音がする 「…もしかして…先生が呼んだの?」 「…あなた…こんな状況で…どうしてそんなに平然としていられるの?」 「…え?」 私…なにか…おかしいのかな…? 「そ…そこに…横たわってる…うっ…人は…あなたの…うっ…え」 え? 先生の目線を追いその人を見ると父親だった 父親は真っ赤な血の海の中死んでいた 何度も包丁で刺されたと思われる傷 私の手には包丁が握られ、私の手は真っ赤に染められていた まさか…私が…? 「警察です」 警察がやってきて、私は口を開いた 「…私…この人に…されてました…」 そう告げると先生と警察は少し憐れみの目を向けた

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7.割れた…

6.聖なる夜

街は鮮やかな光に包まれ、通り行く人々はこの日を楽しみにしていたようだった 私は家に帰り、いつも通りやる事を済ませなければならない はあ…私もあんな風に笑顔いっぱいで過ごしたい… そう思いながらご飯を作り、洗濯物を片付け…と家事を行っていく ガチャ 玄関が開いた音がした 私の家族が帰ってきたのだ その人は私を見ると笑い、私に手を出すのだ 「お父さんの言うことは聞けるよな?今日は特別な日だ。我儘は言うなよ?」 私の父と名乗る人はそのまま私を押し倒し、汚い手で触っていく… 気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い… プツン…と何かが切れ、私は意識を失った 数時間後、目が覚め普段通り料理を始めていく 何故かスッキリした気持ちと共に窓の外を見る ああ…今日は寒いな… カツンと音を立て卵を割る

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6.聖なる夜

5.歪み

「なあ、どうして俺のワインが飲めないんだ?」 目の前の女は冷たい目をして言う 「…最近の貴方は不気味よ。そんな人の飲み物は飲めないわ」 そう言い放ち、俺を異常者扱いする愛する女 「…どこが不気味だって言うんだよ。ただのワインじゃねぇか」 「…嘘よ。何か入っているでしょう?変な匂いがするもの」 もう何度目かの会話 一度もワインを飲んでくれない君に苛つきを覚える 「お前は俺のことを愛していないのか?」 「今、それと何の関係があるの?」 「愛していたら飲めるはずだ!!」 俺は、その怒りと共に近くにあった包丁で愛する妻を刺した 痛みに耐える君を俺は何度も刺す 血に埋もれた君も美しい 俺だけの妻…俺だけの… どうして俺だけを愛してくれないんだ… 数年前、ある宗教団体が家を訪ねて来た 妻も娘も家を出ていて、早く追い払おうと思ったが、インターホン越しに話を聞いていると興味深いことを話し始めた それは、不老不死になれるというもの 神からの罰で不老不死となる方がいるという 俺と妻が不老不死になればずっと一緒にいられる そう思い、宗教団体に入り不老不死になれる方法を聞いた “私は罪深い人間だから、不老不死になり罪を償っていきたい” と言い続け、教えてもらった方法がワインに死んだ者の血を入れるというものだった 死人は宗教団体に入っている者で亡くなった方から貰い、その血をワインに入れて飲んだ 妻にも飲んでもらい、2人で永遠に生きたかった でも…妻は一回も飲むことはなく自分の手で殺してしまった

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5.歪み

4.偽りの女

私はたまに偽りの女と言われる それは何故なのか私も分からない いつも私の周りには人がいるけれど、それもただその人達がそこに居たいからいるだけだと思っている ある人は言う 「貴方の周りにいる人は異常者だ。異常者の近くには異常者しかいないのか」 私は自分のことを異常者だと思わないし、周りのことも異常者だと思わない いつも自分は恵まれていて、周りの人は凄く優しい人達だと思う 「貴方は簡単に愛を振りまくけれど、本当に愛したことはないよね。皆、騙されて自分だけ愛してくれていると思い込んでいるけれど、貴方自身そこまで愛していないよね。それは相手にとって失礼だと思わない?」 そんなことを言われてもこれが自分自身だし、自分のやっていることが他の人とズレていたとしてもやらない自分の方が窮屈だと感じてしまう 「貴方みたいに当たり前に無償の愛を捧げられる人はいないのよ。それも全ての人に。皆、独占したくて誰か一人のために無償の愛を捧げたいと思うものよ。それが自分に向けられたものなら尚更返したいと思うものよね。でも、貴方は誰に対しても無償の愛を捧げてしまう。人が生きるためにご飯を食べるように。そのせいで周りは自分だけ無償の愛を捧げられていると思い込んでしまう」 私は間違ったことをしているとは思えない 誰かが苦しんでいたら助けるでしょう? それが他人だったとしても同じ人間なのだから助けないといけないでしょう? 自分ができることなら全力でやりたい 私は生まれた時から今まで色んなことがあったからこそ、後悔しない道を選びたいと思ったの それのどこがいけないの? 「でも、どんな人にも平等に扱ったせいで刺されてしまったね」

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4.偽りの女

3.遅効性

私の目の前にいる男は面白い 焦りや苛つきが顔に出て分かりやすい 何度見ても飽きない面白さだと思いながら笑っていると 「俺は、経営を辞めたいんだ」 今の今までゲームで遊び、約1000万にも及ぶ額を私に賭けてきているこの男が急に何を言っているのか訳が分からなかった 「父親の仕事を手伝いながら始めた経営だったけれど、俺は欲しいものが見つかった…経営など辞めて欲しいものを掴みたい」 「はあ…じゃあ、ダウトでもする?」 「ああ、俺が勝ったら結婚してくれ」 その言葉に動揺し、ゲームをした結果、今の今まで貰った約1000万を返す形になってしまった 「あ〜あ、負けてしまったわ。貴方、経営辞めたいって言ってたわよね?私、日本では民間企業の平社員なの。それでも私と結婚したい?」 「ああ、君と同じ立場で生きたいんだ」 そんなことを言うものだから、私は結婚してしまった 時が経ち、愛する娘が生まれ順風満帆な日々を送っていると思っていた 娘が中学生くらいになった頃、あの人の様子がおかしくなっていった まるで、宗教に取り憑かれているような姿が度々目に映る 「でも、どんな人にも平等に扱ったせいで刺されてしまったね」 最期に娘からその言葉を聞き、視界が真っ暗になった

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3.遅効性

2.ピアス

俺の惚れている女はピアスをつけている 派手な装いに光によって輝き方が変わる大きめのピアス その全てが彼女を輝かせた 彼女と出会ったのは、カジノのできるバーだった そこで、ポーカーを始めて数十分… 彼女が現れ、空いている席に座った 「私も、参加したいんだけど途中参加できるかしら?」 「…ベットして頂ければ問題ございません」 「分かったわ」 そう言って途中参加の権利を得て、ゲームがスタートした 彼女はどの人の番になっても“レイズ”と“オールイン”を繰り返す そして、少々の時間が経つ頃には手札が揃い、彼女は俺を見て言った 「ロイヤルフラッシュ」 その瞬間、体が痺れ無意識に顔が歪む 「…こんな…負け方をすることがあるなんてな…」 「もう1ゲームする?」 そう言った彼女の耳には大きなピアスがついており、魅了するほどの輝きを放っていた

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2.ピアス