茜桜 手鞠

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茜桜 手鞠

(せんおう てまり)です 投稿頻度は低めです 好きな時に手に取って読めるような手軽さを考えて作っています よろしくお願いします

私を忘れて

酷い男だった 何を信じればいいのかさへ分からないほど酷い人だった だというのに愛していました 恋愛経験の少ない私に誘い文句告げ、私を狙っているかのような口ぶりを見せつけた彼はただの軽い男でした 何度も会いたいというから、それほどまでに私を好きなのだろうと思っていたのに、ただ勢いのいいだけの男でした 一緒に過ごした時間は楽しい日々とモヤモヤが募る日々でした 恋人でもないのに距離が近いことも…恋人になってからするようなことを平気でしようとしてくるところも軽い人の証明みたいなものじゃないかと思うほどでした だからこそ、恋人じゃないからこそ断った そして、本気だからと順番を間違えてしまったことは本当に悪かったと彼から言われ、本気ならと付き合うことになったが… 私の初めては血で終わった 身体だけはなんとか守っていたが恋人になってからはそういうことは必要だろうと覚悟はしていた けれど… 私の心の準備と初めてだからこそちゃんとしたところでしたいと思っていた 彼はそれを了承したのだが… 結果としては約束を破られてしまった 確かに、場所はちゃんとしていたけれどタイミングが悪く生理が来てしまい今回は厳しいと伝えたのだが…彼は我慢ができなく私の約束を破り結果真っ赤な血を見ることとなった もうあんな血は見たくないと彼に伝えたが、血は見慣れているし、あれは生理の血でしょ?と次はああならないようにするからと… 私の初めては彼にとっては小さいものでちょうど付き合った人が初めてだったというだけなのだろう その後、私が一人暮らししている関係でデートした後は私の家でして泊まらず帰って行く日々を過ごしました 私は何のために付き合っているのだろう 綺麗な過去は絶対に持っていないだろう彼に不安を持ち続け、彼に対して軽く想わないと精神的に辛くなってしまうほど毎日毎日悩み泣いて過ごす日々 生理だろうが関係なく、避妊もする気は無い 覚悟が無いのに、子供ができたら結婚できるよ?結婚したいならそこまでしたら?と発言する 私は性奴隷なのかと彼に問うたが、彼は心外だというだけだった 一緒に過ごしても否定ばかりされ続ける そして、泣いて不安になっているのに面倒になったのか付き合う自信が無いと告げられフラれた 一緒に過ごした時間の中で笑い合うときもあった、行く場所も何もかも切り取って見たら楽しい日々もあった あの時間を私は縋りついてしまうのです あれだけは本物だったと思いたいのです 本当は自分の思い通りに動かせる都合のいい遊べる女がほしかったなんて思いたくないのです どうしてこんなにも縋りついて、愛しているのか分からない だから、彼に黒いチューリップを渡したい こんな私を忘れて

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私を忘れて

41.毒

「……どうしてあなたはそうなってしまったの?」 「…どうして?それを聞いてどうするんだ?」 彼は私の質問に理解ができないといった表情をしている 「あなたに出会って、あなたを愛して、一緒に過ごして、愛する子供たちが生まれて…あなたにとって私も子供たちも…どうして道具のように使うの…?」 「…何も感じないからだ」 表情が無くなり、何も聞けない雰囲気を出してくる 「何も感じない?」 「…ただ、実験に必要なものがほしかった。それだけだ」 その後彼はもう話す気が無くなったのか、鞄からある物を出した それは…赤い液体の何か 「…それはなに?」 「これは彼岸花とクリスマスローズをすり潰したものだ。一見、ただの花だが…」 確か…彼岸花とクリスマスローズには吐き気や目眩を起こす毒があると言われている 「それをどうするの?」 私は逃げる体勢になりながら、子供たちと自分を守れる方法を考える けれど…もう間に合わない

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41.毒

40.愛していた

子供たちをクローゼットに避難させ、もう二度と会えない子供たちの顔を忘れぬよう目に焼き付けるように扉を閉めた 愛しているわ… そして、ドンドンと強く叩き続けるあの人の元へ行き、玄関の扉を開けると彼は不気味な笑みを浮かべこちらへ向かってくる 「今までよくも俺を騙してきたな」 彼はやっと私を見つけたことに喜びを感じているのか高揚とした声色になっていく 「ごめんなさい。貴方のことを信用することが出来なかったの」 私はなるべく早く切り上げたい様子を露わにして冷たく言葉を伝える 「お前が実家に帰りたいと懇願して、そこまで願うならと承諾したというのに、まさか…実家にいないとはな…まあ、いい…時間はかかったが、見つけたのだから…」 見つけた…? 承諾されてもいなければ逃げるように去ったというのに…あの会話で承諾されていたのね 「見つけたとして、ここには何しに来たの?」 「実験だよ。俺は生と死、そして再生について非常に興味を抱いているのさ。そのための実験として、まず人はどのような死に方をするのか?という疑問から思いつく限りの死を見てみたいと思ったんだ」 生と死… だから…私も実験に使われたのね… 「…そんな理由であんな…実験をしていたのね」 「ああ…その実験の数々をお前は知ってしまったんだろ?そんな奴を生かしておくことは出来ない…分かるだろ?だから、今日この場でお前は俺の実験体となるのだ」 楽しそうに話す彼を私は冷たい目で見ていた あの日、彼は私を実験体として見て話しかけに来ていたのだろうか? ドラッグストアで働いている私を都合よく抹消できる存在として… ああ…あの日がとても懐かしい 温かみのある日々はもう戻ってこない…

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40.愛していた

39.封筒

二人の子供を育てながら、幸せな日々を過ごす 歩き出し、喋り出す子供を眺めながら今後の恐怖を考える どうしたらいいのだろう きっと…そのうちバレてしまう その前に何とかしなければ…と思うのだが、何も出来ない… 今までの事を走り書きでノートに書きながら、今の幸せな日々を綴っていく こんな日々がずっと続けばいいのに… そう願っていたのに… ある日郵便受けに封筒が入っているのを見かけた 住所や名前の記載が無く、どこをどう見ても不気味な封筒だ ざわざわとした気持ちを抑えながら、封筒を開けると1枚の紙が入っていた その紙には… “明日の夜また来る” この言葉が1行のみ 名前も何も無いが、誰が来たのか想像するのは容易かった どうにか逃げなければならないがもう準備する時間は残されていない せめて…子供たちだけでも幸せに過ごせるように… なにも助けてあげられないけれど きっと残る傷は大きいだろうけれど… あなた達のことは愛してる 次の日、子供たちにプレゼントと私が今なぜこの家に住むことになったのか彼と出会った時からの話をゆっくりと説明した 子供たちは頭を傾げながらぼうっと私の顔を見つめている そして…ちょうど話し終えたあと… 扉を強く叩く音が聞こえた もうあの人が来たんだわ… 折角子供たちと楽しい時間を過ごしていたのにもう終わりなのね…

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39.封筒

38. 鳳凰颯士

健康状態が細かく記載されており、私の出生や学歴、これまでの人生が事細かに書かれた紙も一緒にある そして、今まで私に投与したであろう薬と実験結果が載っていた 読みながら、手が震えてくる どうしたらいいのだろう…早く逃げなければ…と思うのだが… 自分の情報を読み終わり、別のファイルを見ると他の女性と娘の蘭の情報が入っていた この女性は一体誰…? 同じように情報が事細かに記載されているが、まだ薬を扱った形跡は無い… そして、蘭も同じく形跡は無さそうだ 次の書類に目を通すと… 鳳凰颯士の名前があった 誰だろう…なんて思わない 今お腹の中にいる子供の名前だ この子も…実験に使われるのね 読んでいた紙を急いで片付け、部屋を後にしようとするが、手が震え上手く片付けることができない 私の手元から紙がバサバサと何枚か床に落ちてゆく それを拾い上げると「仮想現実」という文字が見えた 現実世界では実験不可能であることを仮想現実では可能にするといった内容が書かれてある …一体何をするつもりなの? しかし、ここで考えている暇は無い 震える手で今後起きるであろう出来事に蓋をして、その場を後にした 動悸がするのを感じながら、バタバタと小走りで彼と住んでいたマンションから出る そのまま、私が借りた家に向かった そして、忘れないうちに内容を自分の手帳に書き込んだ きっと、この家もバレてしまうだろう 少しの間の平穏しか守れないであろう けれど…けれど…他に方法は無いの… 手帳を書き終え、ゆっくりと息を吐いた なんだか、ずっと休めていなかった気がする そう思い、私はソファに横たわりながら目を瞑った 少し経ち、お腹の中の子供が産まれた 名前は鳳凰颯士 前から決められていた名前だ

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38. 鳳凰颯士

37.部屋には

その日から少しづつ部屋の物を移動させて行った 実家の近くにある一軒家を探しに不動産に寄り、3人で住めそうな落ち着いた家を借り、そして… 「ちょっとさ…話があるの」 「…ん?…今、建て込んでてあんまり時間ないんだけど、すぐ終わるの?」 凄く不機嫌そうな表情で私を見つめる彼 初めて会った時の彼はもうここにはいないように見える 「私ひとりで子供を育てるのやっぱり大変なのね…今は実家を行き来しながらだけど…ちょっと息抜きしたくて、少しの間実家に帰ってもいいかしら?」 「…駄目だ」 「…どうして?」 「………君がいないと困るからだ」 きっと…この言葉には裏がある 何も不審なことが無ければ、嬉しい言葉だった気がするのに… 「…ごめんなさい。どうしても…帰りたいの。親の元でゆっくりしたいの…お願い…帰らせて…」 「……考える」 彼はその後何も話さず、会話が終了してしまった そして、また彼がいない日々が続く 荷物も何もかも全て移動させたわ 今日…入る 私は深呼吸をして、彼の部屋の扉を開けた 中には仕事用デスクと2台のパソコンと本棚、物置スペースがある 普通に見れば、仕事部屋ね… 私はそのまま本棚や書類を確認する 本棚には薬に関する本が並べてある 薬剤系だから普通ではあるのだろうけれど… パラパラと本のページを捲っていくと… なんだか、違和感を感じた 載っているもの全て人体に害のある成分のものだらけだ おかしいと思い、デスク周りの引き出しを片っ端から開けると… 研究記録のようなものが沢山入っていた 内容は「人体に作用する毒物」について ざっと、目を通すと人体に影響のある毒物で人の死体の変化を見たい…ようなことが書かれている これを生物の研究というのだろうか…? 別の書類に目を通す その書類には今まで実験した数々の死体の写真と結果が載っていた 思い通りの実験結果では無いものには失敗の文字が書かれてある そして、また別の書類に目を通すと私の情報が書かれてあった

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37.部屋には

初めてを迎えた日

何故だろう… 何度も何度も学んではいるが、何故女性ばかりが痛みを伴わなければならないのだろう… 今まで恋人はいたのだが、学生だったこともありなんとなくその行為までにいかずに別れてを繰り返していた 大人になった今…絶対それを避けることはできない 最近お声がかかり、告白はしないが分かりやすいほどのアプローチが多い人とお付き合いをすることになった 半ば私が行動と言動が一致しないこの人にイラッとしてしまい、ハッキリしろと催促してしまったのが原因なのだが… 付き合ったはいいものの…そういった行為をしなければいけない心の準備が整っていなかった 彼にはまだ経験していないことを正式に付き合うことになった時に伝えてはいるのだが、ある程度待ってほしいところではある… しかし、早々にその日がやってきてしまった もう…こうなってしまった以上、覚悟を決めるしかないと… 彼の気持ちに了承したが… まさか…あんなに痛いとは思わなかった… 綺麗な言い方ができないけれど、股が裂けるかと思うほど痛い… もう入っているだけで痛い、既に抜いてほしい… 動かないでほしい…痛すぎる… 過呼吸気味になりながら耐え続け行為は終わったが、正直思うこととしてはこれは…好きな人でなければ耐えたくない痛みだ… 終わったあとのベッドには血がついているし、行為後の股も激痛のまま…トイレに行くのが怖かった… それと同時に出産をしている女性が凄すぎるとこれ以上の痛みを体験しているのかと尊敬の眼差しでいっぱいになった そして…この行為を簡単に軽い気持ちで行える女性陣に驚きを隠せなかった もし経験のない状態でレイプなどされてしまったら一生のトラウマになるだろうと考えを巡らすほど痛みが凄いものだった ※ 本当に女性って凄いですね…

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初めてを迎えた日

36.存在

彼の名前は鳳凰 栄一(ほうおう えいいち) 鳳凰グループの社長のご兄弟のお子さんに当たる… 元々、家族経営というものは崩壊を招くと言われていたため、彼は鳳凰グループで働くことを禁止されていたが、大学院卒業後、大学の研究所で働き始め、そのまま流れで鳳凰グループの研究施設で働き始めたと言われている 彼が言っていた内容はこんな感じか… ネットで鳳凰グループを調べると鳳凰グループは家族経営以外を推奨とのこと 社長が家族から選出されているわけではない それは会社を成り立たせる上で他者を入れるということは必須であるか… なるほど… 今回の代が鳳凰家の者だっただけであって、最初から雲の上の存在だったわけではないのね ふと、役所に行ってみようと思った 今まで手続きなど全て彼に任せてしまっていたから何も知らない 何も無ければ問題ないのだけれど… なんだか、心の中にざわざわと嫌な空気が充満しているように落ち着かない… そのモヤモヤを抱えつつ、蘭を両親に預け、役所の手続きを確認しに行った そして、蘭の戸籍を貰う手続きをすると… 戸籍の父親の欄に彼の名前が無かった どういうこと? 彼は私と結婚する時…婚姻届に名前を書いたはず… そういえば…彼が保証人を親に書いてもらうために婚姻届を1度持ち帰ると言った時があった そのまま、親に書いてもらって役所に出してきたとその時は言っていたのに… あれは嘘だったの…? 今の私は彼の中でどういう存在なの…? 私の中で辻褄が合わない部分を重ねていく もう、訳が分からない 彼のことも何も私は知らないで結婚して… 何もかも…騙されている? 何が本当で何が嘘なの? 私はそのまま家に帰り、彼の部屋を見に行くことに決めた 前から仕事部屋として使っている部屋 特に入る予定が無いのと仕事をしていた時はバタバタしていて部屋に入ることが無かったし、子供が産まれてからはワンオペになって…家のことはあまり出来なかった しんどい時は実家に帰ったりとしてたから見ていなかったけれど… きっと…何かあるわよね… 見ていない部屋があるっておかしいもの でも、今日は辞めておこう なんだか、胸騒ぎがした 少しづつ私の物を実家に移そう そして、実家の近くに一軒家があるならそこを借りようと段取りを立てたの

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36.存在

35.不審

そうしたら… 少し経ったくらいに、私の家の最寄り駅にその人がいてね 私を見つけて、話しかけに来たの 「最近…僕のことを避けてる?」 毎日やり取りしていたのを、2日に1回から段々と減らしていたものだから、向こうも分かったのでしょうね その日…私はその人の言葉に返答が出来なくてね 口を閉ざしていたら… 「僕と…結婚してください。それが、叶わないなら…もう君とは連絡を取らない。お願いします。答えをください」 もう…私、驚いてしまって… なんだか、私も話せなくなってしまったことに寂しさもあったのだと思うの それで…あまり考えずに… 「…こんな私でよければ…よろしくお願いします」 そう返答してしまって、結婚することになったの 問題はその後よね 彼は…私を愛してなどいなかったのだと思うの… ただ、私を利用したかったのよ まず、結婚する前の挨拶が無くてね 私の両親には挨拶したのだけれど、彼の親には会わせてくれなかったの その時、時間の都合がつかないとかで… 彼は結婚式をしたいような感じではなかったから、前撮りの写真だけ撮って終わってね そのまま、会うことなく結婚生活が始まったのだけれど、必ずと言っていいほど、週に2回ほど家に帰ってこないことがあるの ただ、当時私はあまり考えていなくてね… 仕事の関係とかで帰れない日があるのかしらと… 私のような薬局の社員とは違って、研究職だから仕事上そんなこともあるのかと思っていたの そんな色々と不審な点があった中で蘭が産まれたの 凄く…幸せだった… 自分の子供はなんて可愛いのだろうと… 本当に幸せだった… けれど… あの人は子供を産んでから殆ど帰ってこなくなった なんだか、色々と最初の不審な点とこの状況に理解が追いつかなくて、この際だから何か調べようと思い始めたの

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35.不審

34.昔話

「あまり関係ないかもしれないけれど、父さんの過去と母さんが父さんに会った時のこと教えてほしい」 「…父さんがどうしてこの世界を作り上げたのか…それは…正直分からない…生と死の実験と言っているけれど…恐らく、もっと根本に原因があるのか、もしくは特に深い理由がないのか…どちらかだと思う」 ……この世界を作るくらいなのだから、何か理由はあってほしい… それを理解するのは別だが… 「母さんはね、薬品関係の末端で働いていたの。あの人は上層部で働いていたから、ほぼ面識なんてなかったんだけどね… 学生の頃、ドラッグストアでバイトをしていて、そのまま正社員になるために資格の勉強をして、少し時間はかかったけれど資格が取れて、正社員で働き始めたのね 父さんの会社は薬品関係の会社に幅広く携わっていて、殆どを子会社として契約を結んで会社を大きくしていたの そこで、私が働いていたドラッグストアも吸収されてしまって、父さんの会社の一部になってしまった 私は末端だから特に何も変化は無かったのだけど… ただ、たまにドラッグストアに買い物に来ている人がいてね… 髪型はラフな感じで、服装も手軽なものをそのまま着たような格好の人でね 毎回、買い物をしてはポイントとがどうとか、薬の成分はどうとか…買ったものに対して、色々質問をしてきてね こちらの対応の仕方とかよく見ていた人だったの そんな人とたまに雑談をするようになって、電話番号を交換するくらい仲が良くなったんだけど… ある時、店長がよく来るお客さんがうちの会社の研究施設の上層部に配属されている方だと言ってきたのね 基本、末端で働いている人は上層部の顔を知ることなんてないから…店長もどこで知ったのか分からなかったのだけれど… そんな上層部の人とあまり深い関わりを持つべきものじゃないと店長から釘を刺されてね 確かに…立場上、社員との壁を壊すべきものでは無いのかもしれないと思って、その時以降…連絡を控えるようになったの

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34.昔話