茜桜 手鞠

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茜桜 手鞠

(せんおう てまり)です 投稿頻度は低めです 好きな時に手に取って読めるような手軽さを考えて作っています よろしくお願いします

38. 鳳凰颯士

健康状態が細かく記載されており、私の出生や学歴、これまでの人生が事細かに書かれた紙も一緒にある そして、今まで私に投与したであろう薬と実験結果が載っていた 読みながら、手が震えてくる どうしたらいいのだろう…早く逃げなければ…と思うのだが… 自分の情報を読み終わり、別のファイルを見ると他の女性と娘の蘭の情報が入っていた この女性は一体誰…? 同じように情報が事細かに記載されているが、まだ薬を扱った形跡は無い… そして、蘭も同じく形跡は無さそうだ 次の書類に目を通すと… 鳳凰颯士の名前があった 誰だろう…なんて思わない 今お腹の中にいる子供の名前だ この子も…実験に使われるのね 読んでいた紙を急いで片付け、部屋を後にしようとするが、手が震え上手く片付けることができない 私の手元から紙がバサバサと何枚か床に落ちてゆく それを拾い上げると「仮想現実」という文字が見えた 現実世界では実験不可能であることを仮想現実では可能にするといった内容が書かれてある …一体何をするつもりなの? しかし、ここで考えている暇は無い 震える手で今後起きるであろう出来事に蓋をして、その場を後にした 動悸がするのを感じながら、バタバタと小走りで彼と住んでいたマンションから出る そのまま、私が借りた家に向かった そして、忘れないうちに内容を自分の手帳に書き込んだ きっと、この家もバレてしまうだろう 少しの間の平穏しか守れないであろう けれど…けれど…他に方法は無いの… 手帳を書き終え、ゆっくりと息を吐いた なんだか、ずっと休めていなかった気がする そう思い、私はソファに横たわりながら目を瞑った 少し経ち、お腹の中の子供が産まれた 名前は鳳凰颯士 前から決められていた名前だ

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38. 鳳凰颯士

37.部屋には

その日から少しづつ部屋の物を移動させて行った 実家の近くにある一軒家を探しに不動産に寄り、3人で住めそうな落ち着いた家を借り、そして… 「ちょっとさ…話があるの」 「…ん?…今、建て込んでてあんまり時間ないんだけど、すぐ終わるの?」 凄く不機嫌そうな表情で私を見つめる彼 初めて会った時の彼はもうここにはいないように見える 「私ひとりで子供を育てるのやっぱり大変なのね…今は実家を行き来しながらだけど…ちょっと息抜きしたくて、少しの間実家に帰ってもいいかしら?」 「…駄目だ」 「…どうして?」 「………君がいないと困るからだ」 きっと…この言葉には裏がある 何も不審なことが無ければ、嬉しい言葉だった気がするのに… 「…ごめんなさい。どうしても…帰りたいの。親の元でゆっくりしたいの…お願い…帰らせて…」 「……考える」 彼はその後何も話さず、会話が終了してしまった そして、また彼がいない日々が続く 荷物も何もかも全て移動させたわ 今日…入る 私は深呼吸をして、彼の部屋の扉を開けた 中には仕事用デスクと2台のパソコンと本棚、物置スペースがある 普通に見れば、仕事部屋ね… 私はそのまま本棚や書類を確認する 本棚には薬に関する本が並べてある 薬剤系だから普通ではあるのだろうけれど… パラパラと本のページを捲っていくと… なんだか、違和感を感じた 載っているもの全て人体に害のある成分のものだらけだ おかしいと思い、デスク周りの引き出しを片っ端から開けると… 研究記録のようなものが沢山入っていた 内容は「人体に作用する毒物」について ざっと、目を通すと人体に影響のある毒物で人の死体の変化を見たい…ようなことが書かれている これを生物の研究というのだろうか…? 別の書類に目を通す その書類には今まで実験した数々の死体の写真と結果が載っていた 思い通りの実験結果では無いものには失敗の文字が書かれてある そして、また別の書類に目を通すと私の情報が書かれてあった

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37.部屋には

初めてを迎えた日

何故だろう… 何度も何度も学んではいるが、何故女性ばかりが痛みを伴わなければならないのだろう… 今まで恋人はいたのだが、学生だったこともありなんとなくその行為までにいかずに別れてを繰り返していた 大人になった今…絶対それを避けることはできない 最近お声がかかり、告白はしないが分かりやすいほどのアプローチが多い人とお付き合いをすることになった 半ば私が行動と言動が一致しないこの人にイラッとしてしまい、ハッキリしろと催促してしまったのが原因なのだが… 付き合ったはいいものの…そういった行為をしなければいけない心の準備が整っていなかった 彼にはまだ経験していないことを正式に付き合うことになった時に伝えてはいるのだが、ある程度待ってほしいところではある… しかし、早々にその日がやってきてしまった もう…こうなってしまった以上、覚悟を決めるしかないと… 彼の気持ちに了承したが… まさか…あんなに痛いとは思わなかった… 綺麗な言い方ができないけれど、股が裂けるかと思うほど痛い… もう入っているだけで痛い、既に抜いてほしい… 動かないでほしい…痛すぎる… 過呼吸気味になりながら耐え続け行為は終わったが、正直思うこととしてはこれは…好きな人でなければ耐えたくない痛みだ… 終わったあとのベッドには血がついているし、行為後の股も激痛のまま…トイレに行くのが怖かった… それと同時に出産をしている女性が凄すぎるとこれ以上の痛みを体験しているのかと尊敬の眼差しでいっぱいになった そして…この行為を簡単に軽い気持ちで行える女性陣に驚きを隠せなかった もし経験のない状態でレイプなどされてしまったら一生のトラウマになるだろうと考えを巡らすほど痛みが凄いものだった ※ 本当に女性って凄いですね…

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初めてを迎えた日

36.存在

彼の名前は鳳凰 栄一(ほうおう えいいち) 鳳凰グループの社長のご兄弟のお子さんに当たる… 元々、家族経営というものは崩壊を招くと言われていたため、彼は鳳凰グループで働くことを禁止されていたが、大学院卒業後、大学の研究所で働き始め、そのまま流れで鳳凰グループの研究施設で働き始めたと言われている 彼が言っていた内容はこんな感じか… ネットで鳳凰グループを調べると鳳凰グループは家族経営以外を推奨とのこと 社長が家族から選出されているわけではない それは会社を成り立たせる上で他者を入れるということは必須であるか… なるほど… 今回の代が鳳凰家の者だっただけであって、最初から雲の上の存在だったわけではないのね ふと、役所に行ってみようと思った 今まで手続きなど全て彼に任せてしまっていたから何も知らない 何も無ければ問題ないのだけれど… なんだか、心の中にざわざわと嫌な空気が充満しているように落ち着かない… そのモヤモヤを抱えつつ、蘭を両親に預け、役所の手続きを確認しに行った そして、蘭の戸籍を貰う手続きをすると… 戸籍の父親の欄に彼の名前が無かった どういうこと? 彼は私と結婚する時…婚姻届に名前を書いたはず… そういえば…彼が保証人を親に書いてもらうために婚姻届を1度持ち帰ると言った時があった そのまま、親に書いてもらって役所に出してきたとその時は言っていたのに… あれは嘘だったの…? 今の私は彼の中でどういう存在なの…? 私の中で辻褄が合わない部分を重ねていく もう、訳が分からない 彼のことも何も私は知らないで結婚して… 何もかも…騙されている? 何が本当で何が嘘なの? 私はそのまま家に帰り、彼の部屋を見に行くことに決めた 前から仕事部屋として使っている部屋 特に入る予定が無いのと仕事をしていた時はバタバタしていて部屋に入ることが無かったし、子供が産まれてからはワンオペになって…家のことはあまり出来なかった しんどい時は実家に帰ったりとしてたから見ていなかったけれど… きっと…何かあるわよね… 見ていない部屋があるっておかしいもの でも、今日は辞めておこう なんだか、胸騒ぎがした 少しづつ私の物を実家に移そう そして、実家の近くに一軒家があるならそこを借りようと段取りを立てたの

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36.存在

35.不審

そうしたら… 少し経ったくらいに、私の家の最寄り駅にその人がいてね 私を見つけて、話しかけに来たの 「最近…僕のことを避けてる?」 毎日やり取りしていたのを、2日に1回から段々と減らしていたものだから、向こうも分かったのでしょうね その日…私はその人の言葉に返答が出来なくてね 口を閉ざしていたら… 「僕と…結婚してください。それが、叶わないなら…もう君とは連絡を取らない。お願いします。答えをください」 もう…私、驚いてしまって… なんだか、私も話せなくなってしまったことに寂しさもあったのだと思うの それで…あまり考えずに… 「…こんな私でよければ…よろしくお願いします」 そう返答してしまって、結婚することになったの 問題はその後よね 彼は…私を愛してなどいなかったのだと思うの… ただ、私を利用したかったのよ まず、結婚する前の挨拶が無くてね 私の両親には挨拶したのだけれど、彼の親には会わせてくれなかったの その時、時間の都合がつかないとかで… 彼は結婚式をしたいような感じではなかったから、前撮りの写真だけ撮って終わってね そのまま、会うことなく結婚生活が始まったのだけれど、必ずと言っていいほど、週に2回ほど家に帰ってこないことがあるの ただ、当時私はあまり考えていなくてね… 仕事の関係とかで帰れない日があるのかしらと… 私のような薬局の社員とは違って、研究職だから仕事上そんなこともあるのかと思っていたの そんな色々と不審な点があった中で蘭が産まれたの 凄く…幸せだった… 自分の子供はなんて可愛いのだろうと… 本当に幸せだった… けれど… あの人は子供を産んでから殆ど帰ってこなくなった なんだか、色々と最初の不審な点とこの状況に理解が追いつかなくて、この際だから何か調べようと思い始めたの

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35.不審

34.昔話

「あまり関係ないかもしれないけれど、父さんの過去と母さんが父さんに会った時のこと教えてほしい」 「…父さんがどうしてこの世界を作り上げたのか…それは…正直分からない…生と死の実験と言っているけれど…恐らく、もっと根本に原因があるのか、もしくは特に深い理由がないのか…どちらかだと思う」 ……この世界を作るくらいなのだから、何か理由はあってほしい… それを理解するのは別だが… 「母さんはね、薬品関係の末端で働いていたの。あの人は上層部で働いていたから、ほぼ面識なんてなかったんだけどね… 学生の頃、ドラッグストアでバイトをしていて、そのまま正社員になるために資格の勉強をして、少し時間はかかったけれど資格が取れて、正社員で働き始めたのね 父さんの会社は薬品関係の会社に幅広く携わっていて、殆どを子会社として契約を結んで会社を大きくしていたの そこで、私が働いていたドラッグストアも吸収されてしまって、父さんの会社の一部になってしまった 私は末端だから特に何も変化は無かったのだけど… ただ、たまにドラッグストアに買い物に来ている人がいてね… 髪型はラフな感じで、服装も手軽なものをそのまま着たような格好の人でね 毎回、買い物をしてはポイントとがどうとか、薬の成分はどうとか…買ったものに対して、色々質問をしてきてね こちらの対応の仕方とかよく見ていた人だったの そんな人とたまに雑談をするようになって、電話番号を交換するくらい仲が良くなったんだけど… ある時、店長がよく来るお客さんがうちの会社の研究施設の上層部に配属されている方だと言ってきたのね 基本、末端で働いている人は上層部の顔を知ることなんてないから…店長もどこで知ったのか分からなかったのだけれど… そんな上層部の人とあまり深い関わりを持つべきものじゃないと店長から釘を刺されてね 確かに…立場上、社員との壁を壊すべきものでは無いのかもしれないと思って、その時以降…連絡を控えるようになったの

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34.昔話

33.ヘルプ機能

もう…4時か… 1時にこの部屋に訪れてからそんなに経ったのか… もう少しで従業員たちの起床時間になってしまう 今日、このまま動かなければ姉さんが消えた事実を抹消し、また姉さんをここに戻す可能性がある …だが、父さんの実験の結果状況では新しい結果が増え一石二鳥な状況だろうな… クソ…どうしたらいい… あまりにも情報が無さすぎる…! 「颯士…」 「…え?」 目の前にいるその人を見つめ、信じられない光景に瞬きを繰り返す 「颯士…ごめんね…こんなことになってしまって…私が守れなくて…ごめんね…」 「…母さん…どうして……?」 「…ここは不可能を可能にする世界、私は被検体の1人よ…貴方たちと別れたあと私の血液からこの世界の実験が始まったの、ノートに書かれてあったでしょう?この世界の私は意識自体を消滅させたけれど…今の颯士の条件下で私の存在が可能となったの。簡単に説明するのであれば…貴方の脳が私の存在を求め、認めたということ」 いるはずのない人物をこの世界に登場させることが可能になったということ…? 母さんの場合は元々この世界に存在させられたからこそ可能なのか? 分からない… ただ…ゲームで例えるならヘルプ機能のようなものだろうな… 「……母さんの存在が可能になったとして…どうして…目の前に現れた理由はなに?」 「情報が足りない…でしょう?それを、少しでも改善できればと思ってね…ただ、私も知らないことが多いのは確かよ」 「…そう…だよな…」

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33.ヘルプ機能

32.ファンタジー世界

ノートパソコンを反対側に折り曲げ、物理的に壊す 自分に何も変化が無いとすると… 恐らく、データの破損はされていないのだろうな このパソコンはスペアだろうし、このノートはもしものことがあったときの復元用だろう 色々と試行錯誤しながらノートに書き込み、データを復元、削除を繰り返したのだろう …僕はこのまま父さんと決着をつける きっとこの世界は母さんが持っていた本を元に作られた世界 ファンタジー世界なら、現実世界には無い実験ができるとか考えたんだろうな いや…実験環境を整える上でその世界観を考えるのが面倒だったがために近くにあった本の世界を作ったとかか? そこまで深く考えずに『魔法使いとお姫様』の世界を作りあげたんだろうな なんとなく、母さんの部屋の机の引き出しを開ける 引き出しの中には『魔法使いとお姫様』の本が何故か入っている 本を取り出し、おもむろに本のページを捲った 内容はある公爵家のお嬢様が城の魔法使いと結婚する話… 途中にお嬢様と婚約していた人は城に務めている侯爵家の子息でその人のある裏切りにより、婚約破棄となる 婚約者が城に務めていたことや身分の関係で城に赴くことがあったお嬢様はその流れで魔法使い様とお話することがあり、恋愛に発展したとされる… 話の流れを見ると、僕がいる世界はまだ序盤にすぎないということか… ただ、これが仮想現実のゲーム化の試作であるならこの物語通りにクリアすればいいだけであるが、この世界はこの物語の時代背景や設定を使われたゲームでは無い、現実… 仮想現実はどこかにアクセスすることで脱出することが可能そうではあるが、無理に動こうとすると脳が破壊され、二度と目覚めない…なんてこともありそうだな やはり…どうにか父さんの部屋で自分のデータのみ変えなければ…

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32.ファンタジー世界

31.エラー

ごめん、姉さん 僕は姉さんの自慢になれない弟だったと思う けれど、仕方がないんだ もう…分からないんだ… パリン ああ…割ってしまった… 壊したそれを眺めて、姉さんのいたところを見ると、綺麗にその存在が消えている 試しにパソコンで姉さんのデータを確認する ノートに書かれた順番でアプリケーションに入り、人物のデータを見ると… 姉さんの記録がぱったりと無くなっていた …生きているのか、死んでいるのか分からない でも…どちらにせよ僕もそっちに行くから… 姉さん… この世界に来て、記憶が戻ってから僕に何度も言っていたんだろう 「もう少し待っていてね。私がなんとかする」 何度も何度も悩んで僕を救うために苦しんだだろう ごめん…姉さん… ごめん… 僕は母さんの部屋でひとしきり泣いた ここ数日で起きた僕のエラーを処理するために感情整理とともに涙をこぼす ああ…どうしたらいいんだ… もう…物理的なやり方では父さんに勝つことは出来ないだろう また、同じリセットの繰り返しだ 何をするべきかが全く思い浮かばない 脳内処理が追いつかないのだろうか ……どうせ終わらせるなら、このノートパソコンを壊してしまっても問題がないのでは無いのか? きっと、脳内を壊す行為であり、そのまま死ぬだろうが… このまま出口のない世界で生き続けるよりマシだ

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31.エラー

30.仮死状態

「仮死状態…」 姉さんは状況を受け入れられないのか真っ青な顔つきになっていく 「きっと、キャラクターを作り上げ、仮想現実世界に存在させることは早い段階で出来たはずなんだ。そこから、より現実にするために母さんの実験をした。そこで、精神の不具合が生じ…」 「……もういいよ…何度も何度も考えた。あの日以降私はどうなったのかって…やっぱり死んでしまっていたのね…」 「姉さん?どうしたの?」 「でも…でも…もしかしたら…帰れるかもって」 姉さんは片目から涙を一筋流す 涙と共に姉さんの体が段々と歪んでいく これは…姉さんの精神異常によって出来たバグか…!? この世界と現実世界の矛盾によって生まれた精神異常… 「姉さん!!気をしっかり持つんだ!!!まだ、帰れる希望はあるかもしれない!僕たちが実験体ならば、まだ生きている可能性があるんだ…まだ…まだ…諦めちゃダメだ!!!」 「……もう…嫌よ…この世界を認識してからどのくらい経ったんだろう」 「姉さん………僕はずっと姉さんに支えられてきた。本当に姉さんがいて良かったと思ってる。………だから、希望を捨てないでくれ。僕は姉さんとまた普通の日常を過ごしたいんだ…!」 「……」 姉さんは涙を流したまま動かない もう…姉さんの体は半透明になっている データが消滅する寸前なのだろう きっと…僕たちの電源があるはずだ… いくら、パソコン上のデータで操れたとしても本人しか動かせない電源のようなものがあるはずだ ……これを壊したら姉さんは消えてしまうだろうか…

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30.仮死状態