茜桜 手鞠
193 件の小説64.楽しい日々
研究員達から再度連絡があり目が覚める 彼らは驚きの表情をしていたが急ぎ対応をしてくれたおかげでこのまま実験へ移行できたのだった 子供達は治療を施した状態でVR機能を頭に取り付け、物語を始めた 初めはやり方に慣れないところもあったが現実世界とそう変わらない生活がそこにはあり、なんとも楽しい日々であった 屋敷に手配している者達は研究員達の顔形を使用した人物像を作り出し、毎日遠隔で操作している 私の妻の麗が子供を産み、穏やかで緩やかな時間が流れていく だが、物語の強制力で彼女は死亡 数年が経ち、何故か娘の蘭が人格を持ち始めた 私の操作のもとで過ごしている人間が人格を持ち、予想外の行動を取り始めたのである そこから、蘭を何度も戻そうとしたのだが失敗に終わった そうこうしている間に息子の颯士も人格を持ち始め…結果、今に至っている とても面白いのだ 何故なのか、人間の脳の仕組みなのか 機械トラブルというものなのか もっと調べてみたいことは沢山あったというのにこれで私の人生はお終いだ 私は一体何をしたかったのだろうと人間らしいことを考えた しかし、何も思いつかない だが…私は一瞬だけこの世界で麗と蘭と颯士の3人で4人家族として団欒した日々が好きであった
63.ワイン
「……何もしなかった?逆に今までの行為とは別に何かすることでもあったのか?」 「ああ…だがな…お前らは優先順位が低かった。何故か…お前は知っているだろう?知っているならこの茶番を早く終わらせよう」 「…母さんを殺したのは…いや…今の今まで…愛人の元にいたんだろ?あの高級マンションで一緒に暮らしてたんだろ?なのに…なんで今頃、ストレス発散以外の実験なんか始めるんだよ!」 「それはお前も分かるはずだろ?母さんが死んだ理由と同じなんだからな」 お前は母親とそっくりだよ どこのきっかけか分からないが一つの謎からここまで動き、予測できるほどの頭の良さ そして、今から実験をされるというのに声を荒げ訴えるその姿勢 血が繋がっているだけある 「お前が帰ってくるまでにワインを飲み干してしまったよ」 そう告げて、ワインボトルを彼に向かって振りかざす…が、目の前に立ったのは倒れているはずの娘であった 弟を守りながら倒れていく娘、それに怒りを覚え私に向かって隠し持っていたカッターを刺しにくる息子 私の首元を擦り、血が飛んでゆく 私は何も考えず、勢いよく割れたワインボトルを彼に向かって刺す そのまま彼は倒れ込んだ その後、彼はどこかへ連絡しているようだった 私は急ぎ研究員達に連絡をした 「強盗が入った、私と子供が怪我をしている。急ぎ怪我の処置を頼みます」 連絡後、私は眠りに落ちるのだった
62.暴力
その日は予想外の連続だった 娘は驚きの顔をしつつ、ゆっくりと近くに置いてある携帯を手に持ち、急いで誰かに連絡をしているようだった 携帯に気を取られている娘に私は一発強い打撃を与える そのまま娘は痛みに苦しみながら倒れ込むのだった そこから、1時間ほど経っただろうか 息子が帰宅し、現状を目で捉え言葉を失っているようだった 娘はこの1時間部屋の中を逃げ惑い、私からの暴力に耐え、玄関まで向かっていた 息子はその様子を見て怒りに震えているようだった そこから、30分も経っていないと思われる 私も娘も息子も意識不明の事態に陥っていた それは何故か… 帰ってきて状況を理解した息子はある言葉を投げた 「姉さんに何をしたんだ」 「言うことを聞かないから躾をしただけだよ」 そう私は息子に告げる 私の思考を邪魔するものは削除せねばならない そう考えている 「お前も帰ってきたらことだし、実験を始めようか」 「……は?」 阿呆の如く、拍子抜けした顔をした彼を見つつ、私は話を続けた 「俺はな…今までこの家に訪れても何もしなかった。だが…何故、今ここで実験を始めるのか理解できるか?」
61.警告
それは突然どこかの国で地震が起き、把握できぬまま津波が来るようにその日は訪れたのだ 私の携帯が鳴る その画面は警告を示すものだった そう、彼女の家に誰かが侵入したのだ それは誰か… 携帯を開き、カメラを確認する すると…それは私の息子であった まさか…まさか…彼女と同じく部屋に侵入するとは… やはり、彼女の子であるが故に疑問への突入が素晴らしく発達しているのだろう 彼は部屋の中を物色し、資料という資料を確認して部屋を出て行った 何かしらでも知った奴は生かしてはおけない そう頭の中で思い浮かぶ そして、仮想現実の実験として大変使える人間だと考えた 急いで準備せねばと自分の家に戻る そこで、家にある資料は全て燃やした ここまで完成された実験 これ以上の物を作ることはないだろう そして、今までの記録データを保存しているUSBは外のゴミ箱へ捨てた 次の日、子供たちへ連絡する きっと、青ざめることであろうその顔を想像し笑いが込み上げる 私は子供たちが家から出て、帰ってくる頃に同じく私も家に行く ちょうどその時間、姉の蘭が弟のために家事をしている最中だった
60. 「魔法使いとお姫様」
手始めに彼女を研究室へと運び、治療と共にVR機能が搭載された仮想現実及び異空間への存在、存在が確認できるのか、動作は問題ないかを一つ一つチェックしていく そして、彼女の様子を見つつ内容を記録していき始めた ちょうど彼女が住んでいた一軒家の一部屋を記録部屋として使うのがいいと考え、もしものために鍵を取り付け、カメラを搭載した 少しずつ記録をしていく最中、自分も仮想現実の中で生活をしたいと思い始めた どうせならと思い、最新ゲームシステムを利用した仮想現実を作り、医療の発展を目指すという表向きの理由を掲げてはいるが…私の私欲のために作り出したとしても過言ではないこの仮想現実をもう少し現実から遠ざけてもいいのではないかとある本を取った それは、彼女が妊娠中に趣味で読んでいたファンタジー本である 私には到底理解ができない内容の本であるが、彼女はさらさらと読み進め、なんだか楽しそうに見えた それは「魔法使いとお姫様」 タイトルで登場人物を明かしてくるタイプの本だが、サラッと読めるほどの文章量で頭も痛くならない考え込まない内容 そして、現実ではあり得ない世界観が妊娠中の彼女を救ったのかもしれない この世界観をデータに入れ込み、彼女を登場人物の1人にしよう そして、私はまた彼女と同じ世界で生きるのだ そう思い至って行動し、数年後… ある事件が発生する
59.面白い生き物
やっと静かになった部屋の中で冷静になっていく頭とともに家の中を散策した 1階にはリビングと一つそれなりの広さの部屋があり、トイレと風呂がついている 2階には二つ部屋が用意されているが、これは子供用なのだろうか ただ、ここまで部屋が準備されていると私の研究部屋にも使えそうだなと考える そして…彼女には子供がいたはずだ 私と彼女の血が通った子供が… 扉という扉を開けて、子供が入れそうなスペースを確認する そして、最後にクローゼットを開けると… 小さな我が子が2人蹲っている 1人は私を見ると怯えているのにも関わらず真っ直ぐ私の目を見据えている もう1人は眠りこけて緊張の文字が見えない この状況下でこのような目を向けられる彼を面白く感じる 今までこんな子供に会ったことはない 「ここにいたのか」 そう私は彼に告げ、美しく散った彼女を見せに担いで連れていく そして、その美しさに彼は言葉も出ないようだった 「なにがおきたの…」 「母さんな…何度も抵抗するからこんな姿になってしまったんだよ」 「は…は…なに…」 彼も彼女も面白い生き物だな 人間とはこんなにも表情豊かで感情があるものなのだと思うと壊してみたくなるのは何故なのだろうな ああ…面白い
58.美しい赤
「……どうしてあなたはそうなってしまったの?」 絞り出したような声で彼女は私に投げかけた 私は彼女の思考を全く理解ができない 「…どうして?それを聞いてどうするんだ?」 「あなたに出会って、あなたを愛して、一緒に過ごして、愛する子供たちが生まれて…あなたにとって私も子供たちも…どうして道具のように使うの…?」 「…何も感じないからだ」 「何も感じない?」 「…ただ、実験に必要なものがほしかった。それだけだ」 私はこの日のために綺麗な綺麗な彼女をどう美しく着飾ろうかと悩み考え抜いた結果の薬品を取り出す それは吸い込まれそうなほどの美しい赤 「…それはなに?」 「これは彼岸花とクリスマスローズをすり潰したものだ。一見、ただの花だか…」 「それをどうするの?」 美しい花には棘がある 神経麻痺をさせるには充分な量を施し、逃げる彼女に飲ませる 飲まされるごとに苦痛の表情を表し、体勢が崩れ始める こんなものは第一段階にすぎない まだまだやってみたいことは沢山あるんだ 彼女は抵抗をしつつ、私に質問を投げかけている 私は少々面倒になりつつ回答する どうしてこの女はさっさと協力してくれないんだとイラつきさえ覚えてくる しかし、最後には彼女は何も話さず静かな屍となった
57.笑顔
初めて足を踏みいれるその場所へ、私は足を向かわせた 自分の予想よりも遥かに賢い彼女に会いに行く そう何故か心が躍るような気持ちを持ちつつ、彼女の家へと向かった しかし、すんなり家の中に入れてはもらえず、少し強引に中に入ると… 彼女は冷たい表情で私を見ていた 今まで見てきた表情の中でなんとも美しいと感じるその表情に魅了される 「今までよくも俺を騙してきたな」 私から彼女へ話しかける 「ごめんなさい。貴方のことを信用することが出来なかったの」 彼女は早々に話を終わらせたいのか切り捨てるように告げる 「お前が実家に帰りたいと懇願して、そこまで願うならと承諾したというのに、まさか…実家にいないとはな…まあ、いい…時間はかかったが、見つけたのだから…」 「見つけたとして、ここには何しに来たの?」 またしても、切り捨てる 何故か感じたことのない高揚感が私の体を動き回る 「実験だよ。俺は生と死、そして再生について非常に興味を抱いているのさ。そのための実験として、まず人はどのような死に方をするのか?という疑問から思いつく限りの死を見てみたいと思ったんだ」 彼女は呆れてながら言葉を放つ 「…そんな理由であんな…実験をしていたのね」 「ああ…その実験の数々をお前は知ってしまったんだろ?そんな奴を生かしておくことは出来ない…分かるだろ?だから、今日この場でお前は俺の実験体となるのだ」 彼女はとても冷たい目をしていた 初めて私の全てを曝け出した相手に苦々しい表情をされている そして、私は自分でも理解もできないがとても表情が緩み、笑顔で彼女を見つめたのだった
何年後かの私へ
ねぇ、私 超ビッグになっているかい? 私ね、自分に厳しく、そして今よりも高みを目指して生きてるの! そうなれているかな? 自分の現状の幸せを見つけられているかな? もっともっと私は強くならないといけない 今の立場では踏み潰されてしまうくらい弱っちいから そして、もっともっと器を大きくしてどんな相手でも受け入れられるような人間になりたい そう、夢としてここに飾っておきます。 語彙力もクソな私ですが、いつか誰かを支えられるくらい立派な人間になりたいのです。
56.彼女の家
それからどれだけの月日が経っただろうか 彼女の家を探すのに親の元へ行くと、既に家を引き払っているのか表札共々消えていた さて、いつからこれが計画されていたのか そんなことを考えながらも私の計画をも少しずつ進めなければならない状況 そこまで彼女に深く追求するほどのものだろうかと思いながら、少しずつ宛を探していく そして、お金というお金を払った末、電車で1時間ほどかかる距離に彼女はいた やっと彼女の居場所を特定したのだ いつから計画されていたのかわざわざ一軒家を借り、私の子供が2人優雅に暮らせるほどの広さを持ちつつ、自分が生活に困らないほどの地域と土地を考えられている 彼女は私から逃げるためにここまでのことをやってのけたのだ その場所が分かってから、どう彼女と対面しようか考えた 何を話そうか、彼女をどうしようか そう一つ一つ考えるだけで嬉しさが込み上げてくる そんな折、計画がいい段階まで進んだ知らせが入ってきた そう、1度試運転ならぬ試作品を体験する段階まで来たのだ ちょうどいい 彼女を実験に使ってしまえばいいのだ 他の女は使い物にならない、というより利用できる場所が違う そうと決まればと彼女の家へ赴き、手紙を添えて会える日を待ったのだった