茜桜 手鞠
189 件の小説60. 「魔法使いとお姫様」
手始めに彼女を研究室へと運び、治療と共にVR機能が搭載された仮想現実及び異空間への存在、存在が確認できるのか、動作は問題ないかを一つ一つチェックしていく そして、彼女の様子を見つつ内容を記録していき始めた ちょうど彼女が住んでいた一軒家の一部屋を記録部屋として使うのがいいと考え、もしものために鍵を取り付け、カメラを搭載した 少しずつ記録をしていく最中、自分も仮想現実の中で生活をしたいと思い始めた どうせならと思い、最新ゲームシステムを利用した仮想現実を作り、医療の発展を目指すという表向きの理由を掲げてはいるが…私の私欲のために作り出したとしても過言ではないこの仮想現実をもう少し現実から遠ざけてもいいのではないかとある本を取った それは、彼女が妊娠中に趣味で読んでいたファンタジー本である 私には到底理解ができない内容の本であるが、彼女はさらさらと読み進め、なんだか楽しそうに見えた それは「魔法使いとお姫様」 タイトルで登場人物を明かしてくるタイプの本だが、サラッと読めるほどの文章量で頭も痛くならない考え込まない内容 そして、現実ではあり得ない世界観が妊娠中の彼女を救ったのかもしれない この世界観をデータに入れ込み、彼女を登場人物の1人にしよう そして、私はまた彼女と同じ世界で生きるのだ そう思い至って行動し、数年後… ある事件が発生する
59.面白い生き物
やっと静かになった部屋の中で冷静になっていく頭とともに家の中を散策した 1階にはリビングと一つそれなりの広さの部屋があり、トイレと風呂がついている 2階には二つ部屋が用意されているが、これは子供用なのだろうか ただ、ここまで部屋が準備されていると私の研究部屋にも使えそうだなと考える そして…彼女には子供がいたはずだ 私と彼女の血が通った子供が… 扉という扉を開けて、子供が入れそうなスペースを確認する そして、最後にクローゼットを開けると… 小さな我が子が2人蹲っている 1人は私を見ると怯えているのにも関わらず真っ直ぐ私の目を見据えている もう1人は眠りこけて緊張の文字が見えない この状況下でこのような目を向けられる彼を面白く感じる 今までこんな子供に会ったことはない 「ここにいたのか」 そう私は彼に告げ、美しく散った彼女を見せに担いで連れていく そして、その美しさに彼は言葉も出ないようだった 「なにがおきたの…」 「母さんな…何度も抵抗するからこんな姿になってしまったんだよ」 「は…は…なに…」 彼も彼女も面白い生き物だな 人間とはこんなにも表情豊かで感情があるものなのだと思うと壊してみたくなるのは何故なのだろうな ああ…面白い
58.美しい赤
「……どうしてあなたはそうなってしまったの?」 絞り出したような声で彼女は私に投げかけた 私は彼女の思考を全く理解ができない 「…どうして?それを聞いてどうするんだ?」 「あなたに出会って、あなたを愛して、一緒に過ごして、愛する子供たちが生まれて…あなたにとって私も子供たちも…どうして道具のように使うの…?」 「…何も感じないからだ」 「何も感じない?」 「…ただ、実験に必要なものがほしかった。それだけだ」 私はこの日のために綺麗な綺麗な彼女をどう美しく着飾ろうかと悩み考え抜いた結果の薬品を取り出す それは吸い込まれそうなほどの美しい赤 「…それはなに?」 「これは彼岸花とクリスマスローズをすり潰したものだ。一見、ただの花だか…」 「それをどうするの?」 美しい花には棘がある 神経麻痺をさせるには充分な量を施し、逃げる彼女に飲ませる 飲まされるごとに苦痛の表情を表し、体勢が崩れ始める こんなものは第一段階にすぎない まだまだやってみたいことは沢山あるんだ 彼女は抵抗をしつつ、私に質問を投げかけている 私は少々面倒になりつつ回答する どうしてこの女はさっさと協力してくれないんだとイラつきさえ覚えてくる しかし、最後には彼女は何も話さず静かな屍となった
57.笑顔
初めて足を踏みいれるその場所へ、私は足を向かわせた 自分の予想よりも遥かに賢い彼女に会いに行く そう何故か心が躍るような気持ちを持ちつつ、彼女の家へと向かった しかし、すんなり家の中に入れてはもらえず、少し強引に中に入ると… 彼女は冷たい表情で私を見ていた 今まで見てきた表情の中でなんとも美しいと感じるその表情に魅了される 「今までよくも俺を騙してきたな」 私から彼女へ話しかける 「ごめんなさい。貴方のことを信用することが出来なかったの」 彼女は早々に話を終わらせたいのか切り捨てるように告げる 「お前が実家に帰りたいと懇願して、そこまで願うならと承諾したというのに、まさか…実家にいないとはな…まあ、いい…時間はかかったが、見つけたのだから…」 「見つけたとして、ここには何しに来たの?」 またしても、切り捨てる 何故か感じたことのない高揚感が私の体を動き回る 「実験だよ。俺は生と死、そして再生について非常に興味を抱いているのさ。そのための実験として、まず人はどのような死に方をするのか?という疑問から思いつく限りの死を見てみたいと思ったんだ」 彼女は呆れてながら言葉を放つ 「…そんな理由であんな…実験をしていたのね」 「ああ…その実験の数々をお前は知ってしまったんだろ?そんな奴を生かしておくことは出来ない…分かるだろ?だから、今日この場でお前は俺の実験体となるのだ」 彼女はとても冷たい目をしていた 初めて私の全てを曝け出した相手に苦々しい表情をされている そして、私は自分でも理解もできないがとても表情が緩み、笑顔で彼女を見つめたのだった
何年後かの私へ
ねぇ、私 超ビッグになっているかい? 私ね、自分に厳しく、そして今よりも高みを目指して生きてるの! そうなれているかな? 自分の現状の幸せを見つけられているかな? もっともっと私は強くならないといけない 今の立場では踏み潰されてしまうくらい弱っちいから そして、もっともっと器を大きくしてどんな相手でも受け入れられるような人間になりたい そう、夢としてここに飾っておきます。 語彙力もクソな私ですが、いつか誰かを支えられるくらい立派な人間になりたいのです。
56.彼女の家
それからどれだけの月日が経っただろうか 彼女の家を探すのに親の元へ行くと、既に家を引き払っているのか表札共々消えていた さて、いつからこれが計画されていたのか そんなことを考えながらも私の計画をも少しずつ進めなければならない状況 そこまで彼女に深く追求するほどのものだろうかと思いながら、少しずつ宛を探していく そして、お金というお金を払った末、電車で1時間ほどかかる距離に彼女はいた やっと彼女の居場所を特定したのだ いつから計画されていたのかわざわざ一軒家を借り、私の子供が2人優雅に暮らせるほどの広さを持ちつつ、自分が生活に困らないほどの地域と土地を考えられている 彼女は私から逃げるためにここまでのことをやってのけたのだ その場所が分かってから、どう彼女と対面しようか考えた 何を話そうか、彼女をどうしようか そう一つ一つ考えるだけで嬉しさが込み上げてくる そんな折、計画がいい段階まで進んだ知らせが入ってきた そう、1度試運転ならぬ試作品を体験する段階まで来たのだ ちょうどいい 彼女を実験に使ってしまえばいいのだ 他の女は使い物にならない、というより利用できる場所が違う そうと決まればと彼女の家へ赴き、手紙を添えて会える日を待ったのだった
55.カメラ
ある日、彼女は私にこう告げた 「ちょっとさ…話があるの」 現在、今までとは違う不可解な行動をとっている彼女に不信感を抱きつつ、私は返答をした 「…ん?…今、建て込んでてあんまり時間ないんだけど、すぐ終わるの?」 彼女は不安そうな顔つきで答える 「私ひとりで子供を育てるのやっぱり大変なのね…今は実家を行き来しながらだけど…ちょっと息抜きしたくて、少しの間実家に帰ってもいいかしら?」 「…駄目だ」 無意識に言葉が出てしまった 「…どうして?」 彼女の質問にどう答えようか考える 納得できる回答は一体なんだろうか…と考えるが上手く言葉が出てこない 「………君がいないと困るからだ」 そんなことを伝えても彼女は怯まなかった 「…ごめんなさい。どうしても…帰りたいの。親の元でゆっくりしたいの…お願い…帰らせて…」 「……考える」 そう答える余地無かった この日以降彼女と会わない日々を過ごしていたのだが、ふと携帯が鳴り出したのだ これは誰かが侵入したときに鳴る警告音 警告されている場所を見ると彼女と住んでいる家の私の研究室 部屋の中に搭載されているカメラを確認すると彼女が部屋を散策しているようだった まさか…ここまで準備していたとは…と彼女に対し、今までとは違う何かしらの高揚感を感じながらその日彼女を見逃したのだった
54.賢者
そこで私は彼女との住居に自室を作り、研究資料等を保管した 鍵付きにしていたことと彼女が鈍感なこともあり、特に怪しまれずに数年過ごすことができたのだが… それだけでは今までの研究をするには環境が悪すぎると考えた私は別に部屋を借り、何人かの女性との逢い引き場所として使った その女性達は頭が足らないのが利点だったため、何も怪しむことがなくその部屋での逢い引きを楽しんでいた 女性達の携帯にはこちらでも画面を見れるよう共有し、監視カメラを全ての部屋に設置した そうした苦労と共に私の実験環境は完成したのだ その日々の中で彼女にも実験をしてみたくなった 少量の毒を入れ込み、そしてそれを解毒する薬を投与し…を繰り返し彼女の健康状態を前のものと比べながら記録をしていった そして、実験をしつつある日々の中で彼女は子供を出産した 私の血を継いだ子は何人も見てきたが彼女の子供だけは何故だか触ることができなかった 他の女性の子供達は実験道具としていくらでも残虐なことができたというのに… しかし…彼女は賢い人だった いや、私が所帯を持ちたいと思って良かったと思えるほど賢い人だったのだろう ある日彼女は携帯で私の素性を調べあげた後、役所に行ったようだった その日以降、彼女は少しずつ計画していたのだろう この私の完璧な計画を怪しめるほどに彼女は聡く、そして私の手から逃げることができるほど能力を持った人だった
53.手に入れたい
彼女の動向を理解はしたが、自分の欲を抑えることができなかった “彼女を手に入れたい” それが今の目的にすぎないのだ そして、私は彼女の最寄り駅を調べあげた 少々時間はかかったがこの最寄りで彼女を待ち伏せし話をしよう そう思い、彼女を待ち続けた 夜の19時頃彼女は駅の改札を出た ふんわりとしたスカートに淡い色味の長袖を合わせている、その人の印象そのものな服装で現れた彼女に声をかけた 「最近…僕のことを避けてる?」 彼女は目をまん丸にして、言葉を選んでいるのか口を開かない 「僕と…結婚してください。それが叶わないなら…もう君とは連絡を取らない。お願いします。答えをください」 彼女は先程よりも大きく目を広げ、数秒…時間が止まったかのように動かず、瞬きを数回繰り返した後… 「…こんな私でよければ…よろしくお願いします」 そして私は彼女を手に入れた だが、ここまでの行動をしたけれど、ふと冷静になり結婚はできないと思ったのだ 今ある自由な環境を狭めてしまう そう考えたのだ
52.彼女
暇ができると何故か寄りたくなった そのドラッグストアへ寄り、あの女性と話す それだけで何故か安心するのだ なんだか無性にその女性の笑顔を見たいと思ってしまうのだ 何度も何度も通い、雑談をするような仲になり電話番号を交換するまでに至った ああ…この人と所帯を持ちたい そう無意識に思ったのだが、最近彼女と話せる日が少なくなった気がする レジにいる時はちょこちょこ話はできるのだが、表立って仕事をしている時が少ない そして、どこかで見た事のある店長がいるときの方が多いのだ この店長はなんだか見覚えがあったのだ 確か…数年前上層部で勤務していた伊藤部長 役職定年とともに別のところで勤務しているとは聞いていたが、まさかここだったとは… 私はレジを担当していた店長へ話しかけた 「お久しぶりです。伊藤部長、お元気でしたか?」 そう声をかけた私に伊藤部長は探るような目つきで返答をする 「最近、ここに来ることが多いね。何の用だい?」 「…私の家がここから近いのですよ。ですから、何かと買い物に便利でしてね」 伊藤部長はため息をつきながら私に告げた 「……いつもここに来るとあの子とお話してることが多いだろう?あの子はとても純粋な子だから、あまり関わらないでほしいんだ」 私と伊藤部長はそこまで関わりがないはずなのに何故か私の内部まで見透かしているような人だ 私に忠告をしてきたということは彼女にも恐らく私のことを話しているのだろう だからか…と最近の彼女の動向を理解した