茜桜 手鞠
201 件の小説69.光
眩い光が放たれて、頭が真っ白になっていく この瞬間はきっと数秒なのだろう 「颯士…」 隣から声をかけられた 声の主を見ると母親で穏やかな表情をしている 「もう全て終わったのよ。あの人、察していたのでしょうね…あんなところにパソコンを置いていては壊されてしまうのも分かるでしょうに」 確かに… 予想よりも早く壊すことができたとは思ったがあんな大事なもの分かりやすい場所に置いとくわけがないな あの男なら特に… 「あの人は私が連れていくわ。この先怖いものは何も無いよ。私が全て持っていくから、必ず幸せになりなさい」 その言葉を聞いた瞬間、また眩い光が放たれ目を細める 少し慣れてると目の前の景色が白い天井のみとなった ああ…やっと終わったのだ
68.火を放つ
僕は最後に父親と会った時、全てを壊す選択をした 「母さん、この屋敷共々燃やすことはできないかな」 母さんは目を大きく広げ、理解のできない表情を浮かべている 「もう…一か八かだ。僕の脳を破壊しないことにはこの世界にいる僕自身を消滅させることはできないと思う」 「……そんな…」 「…そのために僕は最後に父さんのパソコンを壊すよ。だから、協力してほしい」 最後に母さんと話をした後に僕は執務室へ向かった 父さんと最後の会話をする 遠くで火が放たれた音がした もうすぐ終わりが来るんだ… 「私はね、何もかもに興味があり、何もかもがどうでもいいんだ」 父さんはニヤリと笑い、過去の話を話し始めた その途中…全体に火が渡ったのであろう 部屋の中が段々と煙臭くなってきた 僕はそう感じ取り、父さんの机へと走って向かう 父さんは何かを察したのか机の上に無かったはずの拳銃を手に持ち、僕に向けて発砲する だが、僕の方が早かったのか机の上に置かれたパソコンを急ぎ手にすることができた その瞬間、父さんの顔が青ざめる これが最後の切り札であり、繋ぐ糸なのだろう 父さんは僕からパソコンを取り上げようとなりふり構わず向かってくる その様子を僕は気にせずパソコンをぶっ壊したのであった
最終話.私が美術へ触れた理由
私の人生なんてこんなもの お金に困らず学校には通え、その後親から離れたというのに自分自身で生活が成り立つわけではない 少なからず親の支援があって、芸術家ができていた それに気づかず私は自分のしている行為は正しいものだと過信していた 結局、親に腹が立ったところはあったが自分もそんな人間なのだ だが、私は今後も気づかず人生を過ごすのだ 恵まれている環境に置かれていることにも気づかずに… 今は『いい人』に出会い、お金の管理から生活等を助けてもらえている 私は美術へ集中できる時間を貰え、大変いい人だと思っている 親からの支援は続いているし、本当にのんびり過ごせている 私は自分のやりたいことができればそれでいいのです それが『美術に触れた理由』
8.模写
そんな腐っている私はやはり美術から離れることはできず、美術館へ通い、自然に触れ、私の感性を高めていった ある美術館へ行った そこでは、模写を禁止しているとのこと しかし、私はルールを破り模写をした 何故か? 素晴らしい作品は自分の力となり高める一つだからだ それを真似て技術を学ぶ 必要なことだろう しかし、それを理解していただけなかったのか学芸員の方に注意を受けた 私はそれに腹が立ち、SNSに学芸員の行動が理解できない等の内容を綴った すると…たちまち火がつき、大きくなり、何故か私が叩かれる始末となる 「人として常識あるんですか?」
7.結婚
ある日、仕事関係で出会った年下の男性と結婚することになった お付き合いをしていたが、両親に彼を紹介したところ結婚に至ってしまったのだ 彼は私にあることを求めた 「働いてほしい」 彼は共働きを希望したのであった そこに関しては特に問題は無かった 何故か? それは既に私は美術家として働いているからだ 何も問題は無い 彼は何を言っているのだろうか?と思ったくらいだ しかし、私の両親は違った 何故働かせるのか 普通は専業主婦だろうと… そんな両親の言葉を聞かず、私は彼との結婚生活を送ったのだが、哀れなことに私は腐っていたのでしょう 男の世話をするなど面倒だと感じてしまい、たった3ヶ月で離婚に至ってしまった
67.整理
母さんが…全て持って行ってくれた… 今まであった出来事が少しずつ朧気になっていくような感覚に陥る この出来事を忘れないように毎日毎日思い出すように記録をした ちょうど父親との事件が起き、実験が行われてから大体1ヶ月が経っているようだった 何故、このような実験をしたのかは研究員の誰1人知らない 全ての記録をあの男は削除していたようだった ただ、体は不自由でも会話が可能であるという結果には導かれたのであろう 今回のような使い方では無く、別の用途ではきっと誰かの助けになる機能であったことには間違いない 僕は1ヶ月の間、寝たきりだったこともあり話すことも立つことも歩くことも困難になった 毎日リハビリを続け、今では困難では無くなったが…その日々の中で研究員を一人一人見ていくと屋敷の人間たちと同じ顔立ちであることに気づいた そして、少しずつ歩けるようになった体で姉さんの元へ毎日向かうと僕より先に声をかけている男性がいた その男性は確か…お嬢様の婚約者である「アレン様」に似ているように見える 父親はここまで見越して設定をしていたのかと思うと少し怖さを感じる あの中でのお嬢様は幸せのように見えなかったが現実は幸せになれるのだろうか まあ、そんなことはまた後々に考えればいい 今は記憶を整理することが先だ
66.涙
車椅子を押してもらい、どこに連れられるかも分からない状態でされるがままに委ねていると… ある部屋に通された そこには白い部屋にベッドが置かれており、ベッドには沢山の管が繋がっている そのベッドに寝ている人物は僕が求めていた人だった 「……ね…姉さん……!!!」 その人は僕をぼうっと見つめると涙を一筋流した 「………帰ってきたのね」 「……う…ん」 僕と姉さんは何も話さず涙を流した そこから数日後… 僕はこの場所がどこなのかを確認した 研究所のようなこの場所は僕の父親が仕事として利用をしていた研究所ではあった 仮想現実への研究実験としての場所を提供してくれていたらしい そこで勤務されている研究員の方からある部屋へ通された そこにはある人物が静かに横になっている 「……母さん…」 どうして母さんがここに…母さんは亡くなったんじゃ…と頭を渦巻く 「お父様もお母様も亡くなられましたよ。ここに横たわっているのは亡骸…となっております」 そう、白衣の女性は告げる 「父さんも亡くなった……」 その言葉である場面を思い出す 目が覚める一瞬、母さんが現れ告げた 「あの人は私が連れていくわ。この先怖いものは何も無いよ。私が全て持っていくから、必ず幸せになりなさい」
65.戻り
目が覚めた 目の前の景色は白い天井のみ ああ…僕は戻ってきたのかと察する 少し目線を外すと自分の周りには管が沢山あり、一つでも外したら命を落としそうな危険さを孕んでいる 声を出そうにも酸素マスクを付けられているため話せない いや、何日経っているのか分からないがずっと筋肉を使っていないこの体に声を出す機能は残されているのか?という問題だ ただ、僕が目を覚ましたことにより周りがざわめいているようだった 僕はまた目を閉じる 少し経つと声をかけられた 「お体の具合はいかがですか?」 白衣を着た女性が心配そうに僕を見つめている 「……ね…え…さ…ん…は…?」 僕はあまり動かない頭でも残っている記憶はある 1番安否を確認したい人がいる 「…お姉さんは、数時間前に目を覚まされました。ですが、現状を把握できていないのか…会話はできておりません」 僕は言うことを聞かない体を無理やり動かして、医療ベッドのようなものから降りようとすると彼女は止めようとする 「長いこと寝たきりだった体で無理に動いてはいけません。車椅子をご用意いたします」 彼女はそう告げるとどこかから車椅子を持ってきて僕に座るよう伝えた
64.楽しい日々
研究員達から再度連絡があり目が覚める 彼らは驚きの表情をしていたが急ぎ対応をしてくれたおかげでこのまま実験へ移行できたのだった 子供達は治療を施した状態でVR機能を頭に取り付け、物語を始めた 初めはやり方に慣れないところもあったが現実世界とそう変わらない生活がそこにはあり、なんとも楽しい日々であった 屋敷に手配している者達は研究員達の顔形を使用した人物像を作り出し、毎日遠隔で操作している 私の妻の麗が子供を産み、穏やかで緩やかな時間が流れていく だが、物語の強制力で彼女は死亡 数年が経ち、何故か娘の蘭が人格を持ち始めた 私の操作のもとで過ごしている人間が人格を持ち、予想外の行動を取り始めたのである そこから、蘭を何度も戻そうとしたのだが失敗に終わった そうこうしている間に息子の颯士も人格を持ち始め…結果、今に至っている とても面白いのだ 何故なのか、人間の脳の仕組みなのか 機械トラブルというものなのか もっと調べてみたいことは沢山あったというのにこれで私の人生はお終いだ 私は一体何をしたかったのだろうと人間らしいことを考えた しかし、何も思いつかない だが…私は一瞬だけこの世界で麗と蘭と颯士の3人で4人家族として団欒した日々が好きであった
63.ワイン
「……何もしなかった?逆に今までの行為とは別に何かすることでもあったのか?」 「ああ…だがな…お前らは優先順位が低かった。何故か…お前は知っているだろう?知っているならこの茶番を早く終わらせよう」 「…母さんを殺したのは…いや…今の今まで…愛人の元にいたんだろ?あの高級マンションで一緒に暮らしてたんだろ?なのに…なんで今頃、ストレス発散以外の実験なんか始めるんだよ!」 「それはお前も分かるはずだろ?母さんが死んだ理由と同じなんだからな」 お前は母親とそっくりだよ どこのきっかけか分からないが一つの謎からここまで動き、予測できるほどの頭の良さ そして、今から実験をされるというのに声を荒げ訴えるその姿勢 血が繋がっているだけある 「お前が帰ってくるまでにワインを飲み干してしまったよ」 そう告げて、ワインボトルを彼に向かって振りかざす…が、目の前に立ったのは倒れているはずの娘であった 弟を守りながら倒れていく娘、それに怒りを覚え私に向かって隠し持っていたカッターを刺しにくる息子 私の首元を擦り、血が飛んでゆく 私は何も考えず、勢いよく割れたワインボトルを彼に向かって刺す そのまま彼は倒れ込んだ その後、彼はどこかへ連絡しているようだった 私は急ぎ研究員達に連絡をした 「強盗が入った、私と子供が怪我をしている。急ぎ怪我の処置を頼みます」 連絡後、私は眠りに落ちるのだった