茜桜 手鞠
183 件の小説54.賢者
そこで私は彼女との住居に自室を作り、研究資料等を保管した 鍵付きにしていたことと彼女が鈍感なこともあり、特に怪しまれずに数年過ごすことができたのだが… それだけでは今までの研究をするには環境が悪すぎると考えた私は別に部屋を借り、何人かの女性との逢い引き場所として使った その女性達は頭が足らないのが利点だったため、何も怪しむことがなくその部屋での逢い引きを楽しんでいた 女性達の携帯にはこちらでも画面を見れるよう共有し、監視カメラを全ての部屋に設置した そうした苦労と共に私の実験環境は完成したのだ その日々の中で彼女にも実験をしてみたくなった 少量の毒を入れ込み、そしてそれを解毒する薬を投与し…を繰り返し彼女の健康状態を前のものと比べながら記録をしていった そして、実験をしつつある日々の中で彼女は子供を出産した 私の血を継いだ子は何人も見てきたが彼女の子供だけは何故だか触ることができなかった 他の女性の子供達は実験道具としていくらでも残虐なことができたというのに… しかし…彼女は賢い人だった いや、私が所帯を持ちたいと思って良かったと思えるほど賢い人だったのだろう ある日彼女は携帯で私の素性を調べあげた後、役所に行ったようだった その日以降、彼女は少しずつ計画していたのだろう この私の完璧な計画を怪しめるほどに彼女は聡く、そして私の手から逃げることができるほど能力を持った人だった
53.手に入れたい
彼女の動向を理解はしたが、自分の欲を抑えることができなかった “彼女を手に入れたい” それが今の目的にすぎないのだ そして、私は彼女の最寄り駅を調べあげた 少々時間はかかったがこの最寄りで彼女を待ち伏せし話をしよう そう思い、彼女を待ち続けた 夜の19時頃彼女は駅の改札を出た ふんわりとしたスカートに淡い色味の長袖を合わせている、その人の印象そのものな服装で現れた彼女に声をかけた 「最近…僕のことを避けてる?」 彼女は目をまん丸にして、言葉を選んでいるのか口を開かない 「僕と…結婚してください。それが叶わないなら…もう君とは連絡を取らない。お願いします。答えをください」 彼女は先程よりも大きく目を広げ、数秒…時間が止まったかのように動かず、瞬きを数回繰り返した後… 「…こんな私でよければ…よろしくお願いします」 そして私は彼女を手に入れた だが、ここまでの行動をしたけれど、ふと冷静になり結婚はできないと思ったのだ 今ある自由な環境を狭めてしまう そう考えたのだ
52.彼女
暇ができると何故か寄りたくなった そのドラッグストアへ寄り、あの女性と話す それだけで何故か安心するのだ なんだか無性にその女性の笑顔を見たいと思ってしまうのだ 何度も何度も通い、雑談をするような仲になり電話番号を交換するまでに至った ああ…この人と所帯を持ちたい そう無意識に思ったのだが、最近彼女と話せる日が少なくなった気がする レジにいる時はちょこちょこ話はできるのだが、表立って仕事をしている時が少ない そして、どこかで見た事のある店長がいるときの方が多いのだ この店長はなんだか見覚えがあったのだ 確か…数年前上層部で勤務していた伊藤部長 役職定年とともに別のところで勤務しているとは聞いていたが、まさかここだったとは… 私はレジを担当していた店長へ話しかけた 「お久しぶりです。伊藤部長、お元気でしたか?」 そう声をかけた私に伊藤部長は探るような目つきで返答をする 「最近、ここに来ることが多いね。何の用だい?」 「…私の家がここから近いのですよ。ですから、何かと買い物に便利でしてね」 伊藤部長はため息をつきながら私に告げた 「……いつもここに来るとあの子とお話してることが多いだろう?あの子はとても純粋な子だから、あまり関わらないでほしいんだ」 私と伊藤部長はそこまで関わりがないはずなのに何故か私の内部まで見透かしているような人だ 私に忠告をしてきたということは彼女にも恐らく私のことを話しているのだろう だからか…と最近の彼女の動向を理解した
51.中和
そんな日々を過ごしていたある日 流石にニュースになるほど人を殺めては自分の経歴に傷がつく可能性があると考えた私は仮想現実を作ろうと思い至った それを研究所の人間に話をする 医学等も生身の人間では行いにくい実験もあるだろうと研究にはもってこいの仮想現実を作ったらどうではと長々とつらつら説明をすると研究所の人間は目を輝かせ、仮想現実への実現に協力してくれたのだった そんな中、私は所帯を持ちたいと思った だが、そんな欲望と同等に女性への実験は抑えきれなかった 1人、いや複数人… 新しい命という芽生えである妊娠、出産を経て生まれてくる我が子 人間の本質はきっとここにあるのだろうと何かしら神秘的なものを感じる だが…そこからまた恐ろしい実験をしたくなる この何も出来ない小さな我が子はどこまで生きることができるのか 生命なる実験を考え始めるのだ そう自分の狂気じみさを全くも理解しないほど私は人間として不出来なのだ そんなある日、私は日用品を買いに家の近くのドラッグストアへ寄った そこでレジの担当をしていた女性はまだ若く20代前半だろうその人は慣れた手つきで作業をし、商品の中で薬が入っている場合は余裕のある声色で薬の作用について説明する そして、人が寄り付きそうな毒のない笑顔で見送っていく そんな女性だった 何故だろうか 勝手に毒が抜けたかのように、ふとその女性と話したくなるのだ
50.経験
私は女性経験が乏しかったため、手っ取り早く夜の店に行った きっとゆっくり友人や身近な人間から紹介などを経て、進めた経験のほうがより自分のステータスになっただろうが… それと長いこと一緒にいる気はないため、どうでもいいぞんざいに扱える人間がいいと考えた 夜の店では皆同じ顔立ちの数値で測ったらより綺麗なことが明確に分かりそうな整いをしている人が多くいる 自分の表面上の話をしつつ、周りを見ると真っ当に生きている人間は来ることがないのだろうとなんとなく分かる客層をしている あるとしても会社の付き合いなどだろうか…? 大金を払って疑似恋愛をすることがきっと男性にとって良いものなのだろうなと勝手ながらに解釈しつつ、目の前の女性と話をする 私は研究に明け暮れていたせいで女性の扱いが下手であったが、夜の女性の何人かと話をして向こうの身の上話を聞けるほどに仲が良くなり、女性とはこのように接すると勝手に落ちてくれるのかと手法を覚えていった それと初めての体験をしつつ、男というものはこうも欲に塗れていることを知る なるほど…これは覚醒剤のような作用があるのかと思うのだ この行為そのものに新しい命が宿るなどなんと面白いものだと思い、私は女性への実験を始めたのだった やはり、紹介などで知り合った女性では身の上がよろしいので自分に火の粉が被る可能性がある これで良かったのだ これで… そう心の内で思いつつ、残酷なまでの欲望への忠実さと共になんとも目に映すことが出来ぬ実験をしたのだ
49.探究心
小さくだけれどもそれなりの主張とともに見出しがつけられた題 静かな家と赤々と照らされた景色がそこにはあった 〇〇市で意識不明の家族が搬送された 全員重症で息はかろうじてあるようだが、存命は難しいだろうと医師は告げる その日から家族全員、ICUで治療が始まった そして、私だけが助かった 奇跡の復活とも言える見出しが貼り付けられていく その見出しと共にまた明るい世界へと私は行くのだった と…ハッピーエンドのように語るが、計画通り家族全員が死に私のみが生き返った それだけのこと… これで邪魔するものがいなくなった そう心から思い、笑いが込み上げてくる 私はきっと一般的な人間とはかけ離れているのだろう そのまま私は研究所に籠り、薬物反応を調べあげた 何度も何度も繰り返し続けれる実験 死んでも構わなそうな人間を雇いながら、実験という実験をし続け、私の部屋には恐ろしい結果報告のみが残った それでいいのだ 私の中で残っているものはただ探究心のみ それだけのために生きているのだ しかし、こんな私でも何故か人間関係を築いてみたいと思ったのだ 何も感じないからこそ、出来うる経験をしてみたいなどと思ったのだろうか その日から初めて女性へ視点を移すことになった
赤いそれに溺れ
ああ…記憶が無い そう気づいたのは起きた今に決まっている そうこうなったのは2回目、2回目なのだ 原因は分かっている あの赤色に揺れるワインだ!!! 前回は友人と飲んだ際に起きたのだが、記憶が無いところを確認すると普段通りだったという… 凄いな、私は天才的だ!…と思ったのだが、今回は違ったようだ 見てみろ、部屋が散乱している 泥棒でも入ったのか? いやはや、違ぇだろ 犯人は自分だ しかも、なんということでしょう 生理が来てしまったせいで血まみれになっておられる 何をしたのか壁にも床にも付いていてもう殺人事件の完成だ 本当に記憶が無い 現在、床で寝ていた私は起きて周りを見渡している最中である しかも、恐らく私は洗濯物を片付けようとした、お風呂に入ろうとした、吐いた、そして転けたことが読み取れるほど部屋がごった返している 泥酔した時に本性が出るというが…自分はなんだ、完璧にやりたがりなのか?となんとなくそう思うが…完璧にできずに死んだことだけはよく分かる 本当にお酒は怖いですね あとがき 汚い話ですみません いや、この時ボトル1本程飲んだのですが、いつもはそれだけ飲んでもこんな大事件にはならないのですよ…! なんでしょう、体調と精神面が色々重なるとこうなることが2回の記憶喪失により明らかになりましたね… 皆様、お酒にはご注意を…
48.ガス
ガスを使用するとしても、色や匂いなどが発生する可能性がある なるべく発生せずにガスを使用したいと考え、成分を1つ1つ調べあげる ちょうど閉じ込められている間、調べる時間が沢山できて都合がいい そして、あるとき… 匂いも反応もないガスが完成した あとはこれを実際に使うのみと…考えたが… 今、使用するのは惜しい 私の今の年齢は15、6といったところだ この年齢時期に実験を行い、家を失うのは厳しいところ 自分の生きる環境を作った上で実験を遂行したほうがいい そう考えた私はそのまま高校卒業までを大人しく過ごし、大学は叔父が住んでいる付近を選び、実家から離れ一人暮らしを始めた 時間に余裕が出来たときには叔父に会いに行き、経営を学んだ そして、少し経った頃…叔父に研究所の中を見たいと相談を持ちかけた 時間をかけ叔父との関係値を作り、その流れで研究所に入ることができれば自分の望むものが手に入るとそう思ったのだ そして、計画通りに研究所への入館を許され、最近は研究というものに励んでいるというものだ 叔父から許可を得ている関係で長い時間研究所で過ごしても特に何を言われることもなく、自由に研究を続けられ、大体この辺りだろうと落ち着いたタイミングを狙い大学3年のある日… 実家であのガスを使用した 私はガスへの特効薬というものを作り、半死状態でいられるように仕向けた そうすることによって犯人としての行動をなるべく悟られぬようにしたのだ
終.修復
「君はどこまで覚えてる?」 そう私に聞いてきた彼は長い前髪をオールバックにして、タキシードのような式で通用する格好をしている まるでゴシック様式のような建物の中で私はシンプルな少々の綺麗な柄が散りばめられたドレスを着ている 「私は酔っ払って…その後、どうなったの?」 「気を失う前にワインを飲んでいたよ。どうしてかな?」 気を失う前… 私は、林君を目の前で失い…坂口さんも殺した… 目の前で殺してしまった罪に耐えきれなかった私はお酒を飲みまくった とりあえず、外でお酒を買い飲み終わり次第また買い足す… それを繰り返し外で吐き、ワインをまた飲み足す… 頭が重くなり朦朧とし方向感覚も無くなっていった辺りから視界が暗くなっていったことを覚えている そして、記憶が曖昧になった 「林君…私を恨んでる?」 「うん」 「そうだよね…。私…償いきれないことをしてしまったよね…」 「そうだね…僕のことを忘れるために頑張っていたよね」 「…うん、私ずっと言えなかったけど…林君のこと好きだったの…学生の頃からずっと…だから、目の前で失った事実から目を背けたかった」 「……」 「ごめん…ごめん…私が今死んでいるのなら…恨めしい気持ちでいっぱいだよね」 彼は短な会話の中でずっと表情を変えずにいたが私の言葉を聞いて、眉毛を八の字にし、苦しそうな表情で私を見つめた 「……そうだね………僕も佐々木さんのこと好きだったよ。こんな形で終わってしまうのが悲しいくらいに」 その言葉を最後に温かい空気に囲まれて私は目を覚ました ああ…私は死ななかったのか… 病院で目を覚まし、自分が生きていることを再確認する あの場所で私は何をしたかったのだろうか… ただ、懺悔をして終わってしまった… でも…きっと今のまま生きてはいけない 罪を忘れないこと、それが私の罰なのだ そこで、私は警察に自首をした 3年の時が経ち、部屋を探す 新たな再スタートにしっかり向き合わなければならない 部屋を探している最中、私にしか見えない何かが写っている それはあの時死んだ彼女、坂口沙耶だ 「坂口さん、私に何の用?」 私は一生の償いをしなければならないのだが、何の悪びれも無さそうな態度で冷たく相手に問いかける これは相手の恨みが無くなるまで私はこの悪人を続けなければならない、そうこれが一種の罰なのだ 「見えているの?」 「ええ、見えるわよ。私のことを恨んでいるのかしら?」 「…ええ」 彼女は鬼のような形相で私を睨みつけている 彼女をこの現世に縛り付けてしまった理由がきっとここにあるのだろう そう思い、あるマンションの一室を借りて私はある行動に出たのだった 「昨日、ここに引っ越してきました佐々木と申します。確か…お隣さんでしたよね?」
6.同期の死因
騒がしい声と共に1人の男性社員は息を引き取った 慌てて病院に電話をかけたが遅く、急性アルコール中毒で亡くなったことが知らされる 一気に酔いが覚めた佐々木結衣は、先程自分が行った行為に後悔をし始めていた 数時間前、新入社員の歓迎会が行われ酔いが回り始めた社員達は飲みゲーを始めた ゲームで当てられた人は強制的に飲まされるシステム 最初はアルコール度数5%程のお酒で行われていたが、段々と調子が上がりワインでゲームをし始めるようになった そう提案してしまったのが佐々木結衣だったが為に、彼女は後悔の渦に巻き込まれた そのワインを飲み始めて1時間後、新入社員の林誠司は倒れたのだった 酔っ払いだらけだった社員達はただ眠っただけなのだろうと最初は思っていたが、飲み会が終わりにかけ起こそうと思い、声をかけても反応がない その現状に顔面蒼白となり、焦りに焦るがもう遅かった 「林君!何の本読んでるの?」 林君は長い前髪から覗く目をこちらに向け一言 「詩」とだけ告げる 「詩?どんな内容が載ってるの?」 私がめげずに話しかけると林君は少し面倒そうに話を続けてくれた 「…その時の感情とかを短く、だけれども簡素ではない…そんな文が載ってるんだ」 「へぇ〜、めっちゃ国語の点数良さそうだね!」 「国語?うーん…現国はまあまあだけど、古典は全くだね」 いつも、林君を見つける度に声をかけていた 少しだけでも仲良くなれるのが嬉しくて… でも、自分の気持ちを告白することなく高校を卒業して、大学に進学しそのまま社会人になった 新卒で入った会社で見覚えのある顔があり、名札を見ると林と書かれていた 久しぶりに林君を見た瞬間、高校時代の淡い想いが溢れ出し、もう一度話をしたいと思った だが、その瞬間は訪れることはなかった あの日、歓迎会で酔いに酔った私はまともに話をすることは出来ず、私のこと覚えてる?と聞くだけのことを出来ないまま林君に次のお酒を聞くだけ 林君の表情を見ないまま追い詰めて終わってしまったのだ 涙を流しても遅い 「…林君、私も同じ道程を歩んだのね」