茜桜 手鞠
186 件の小説57.笑顔
初めて足を踏みいれるその場所へ、私は足を向かわせた 自分の予想よりも遥かに賢い彼女に会いに行く そう何故か心が躍るような気持ちを持ちつつ、彼女の家へと向かった しかし、すんなり家の中に入れてはもらえず、少し強引に中に入ると… 彼女は冷たい表情で私を見ていた 今まで見てきた表情の中でなんとも美しいと感じるその表情に魅了される 「今までよくも俺を騙してきたな」 私から彼女へ話しかける 「ごめんなさい。貴方のことを信用することが出来なかったの」 彼女は早々に話を終わらせたいのか切り捨てるように告げる 「お前が実家に帰りたいと懇願して、そこまで願うならと承諾したというのに、まさか…実家にいないとはな…まあ、いい…時間はかかったが、見つけたのだから…」 「見つけたとして、ここには何しに来たの?」 またしても、切り捨てる 何故か感じたことのない高揚感が私の体を動き回る 「実験だよ。俺は生と死、そして再生について非常に興味を抱いているのさ。そのための実験として、まず人はどのような死に方をするのか?という疑問から思いつく限りの死を見てみたいと思ったんだ」 彼女は呆れてながら言葉を放つ 「…そんな理由であんな…実験をしていたのね」 「ああ…その実験の数々をお前は知ってしまったんだろ?そんな奴を生かしておくことは出来ない…分かるだろ?だから、今日この場でお前は俺の実験体となるのだ」 彼女はとても冷たい目をしていた 初めて私の全てを曝け出した相手に苦々しい表情をされている そして、私は自分でも理解もできないがとても表情が緩み、笑顔で彼女を見つめたのだった
何年後かの私へ
ねぇ、私 超ビッグになっているかい? 私ね、自分に厳しく、そして今よりも高みを目指して生きてるの! そうなれているかな? 自分の現状の幸せを見つけられているかな? もっともっと私は強くならないといけない 今の立場では踏み潰されてしまうくらい弱っちいから そして、もっともっと器を大きくしてどんな相手でも受け入れられるような人間になりたい そう、夢としてここに飾っておきます。 語彙力もクソな私ですが、いつか誰かを支えられるくらい立派な人間になりたいのです。
56.彼女の家
それからどれだけの月日が経っただろうか 彼女の家を探すのに親の元へ行くと、既に家を引き払っているのか表札共々消えていた さて、いつからこれが計画されていたのか そんなことを考えながらも私の計画をも少しずつ進めなければならない状況 そこまで彼女に深く追求するほどのものだろうかと思いながら、少しずつ宛を探していく そして、お金というお金を払った末、電車で1時間ほどかかる距離に彼女はいた やっと彼女の居場所を特定したのだ いつから計画されていたのかわざわざ一軒家を借り、私の子供が2人優雅に暮らせるほどの広さを持ちつつ、自分が生活に困らないほどの地域と土地を考えられている 彼女は私から逃げるためにここまでのことをやってのけたのだ その場所が分かってから、どう彼女と対面しようか考えた 何を話そうか、彼女をどうしようか そう一つ一つ考えるだけで嬉しさが込み上げてくる そんな折、計画がいい段階まで進んだ知らせが入ってきた そう、1度試運転ならぬ試作品を体験する段階まで来たのだ ちょうどいい 彼女を実験に使ってしまえばいいのだ 他の女は使い物にならない、というより利用できる場所が違う そうと決まればと彼女の家へ赴き、手紙を添えて会える日を待ったのだった
55.カメラ
ある日、彼女は私にこう告げた 「ちょっとさ…話があるの」 現在、今までとは違う不可解な行動をとっている彼女に不信感を抱きつつ、私は返答をした 「…ん?…今、建て込んでてあんまり時間ないんだけど、すぐ終わるの?」 彼女は不安そうな顔つきで答える 「私ひとりで子供を育てるのやっぱり大変なのね…今は実家を行き来しながらだけど…ちょっと息抜きしたくて、少しの間実家に帰ってもいいかしら?」 「…駄目だ」 無意識に言葉が出てしまった 「…どうして?」 彼女の質問にどう答えようか考える 納得できる回答は一体なんだろうか…と考えるが上手く言葉が出てこない 「………君がいないと困るからだ」 そんなことを伝えても彼女は怯まなかった 「…ごめんなさい。どうしても…帰りたいの。親の元でゆっくりしたいの…お願い…帰らせて…」 「……考える」 そう答える余地無かった この日以降彼女と会わない日々を過ごしていたのだが、ふと携帯が鳴り出したのだ これは誰かが侵入したときに鳴る警告音 警告されている場所を見ると彼女と住んでいる家の私の研究室 部屋の中に搭載されているカメラを確認すると彼女が部屋を散策しているようだった まさか…ここまで準備していたとは…と彼女に対し、今までとは違う何かしらの高揚感を感じながらその日彼女を見逃したのだった
54.賢者
そこで私は彼女との住居に自室を作り、研究資料等を保管した 鍵付きにしていたことと彼女が鈍感なこともあり、特に怪しまれずに数年過ごすことができたのだが… それだけでは今までの研究をするには環境が悪すぎると考えた私は別に部屋を借り、何人かの女性との逢い引き場所として使った その女性達は頭が足らないのが利点だったため、何も怪しむことがなくその部屋での逢い引きを楽しんでいた 女性達の携帯にはこちらでも画面を見れるよう共有し、監視カメラを全ての部屋に設置した そうした苦労と共に私の実験環境は完成したのだ その日々の中で彼女にも実験をしてみたくなった 少量の毒を入れ込み、そしてそれを解毒する薬を投与し…を繰り返し彼女の健康状態を前のものと比べながら記録をしていった そして、実験をしつつある日々の中で彼女は子供を出産した 私の血を継いだ子は何人も見てきたが彼女の子供だけは何故だか触ることができなかった 他の女性の子供達は実験道具としていくらでも残虐なことができたというのに… しかし…彼女は賢い人だった いや、私が所帯を持ちたいと思って良かったと思えるほど賢い人だったのだろう ある日彼女は携帯で私の素性を調べあげた後、役所に行ったようだった その日以降、彼女は少しずつ計画していたのだろう この私の完璧な計画を怪しめるほどに彼女は聡く、そして私の手から逃げることができるほど能力を持った人だった
53.手に入れたい
彼女の動向を理解はしたが、自分の欲を抑えることができなかった “彼女を手に入れたい” それが今の目的にすぎないのだ そして、私は彼女の最寄り駅を調べあげた 少々時間はかかったがこの最寄りで彼女を待ち伏せし話をしよう そう思い、彼女を待ち続けた 夜の19時頃彼女は駅の改札を出た ふんわりとしたスカートに淡い色味の長袖を合わせている、その人の印象そのものな服装で現れた彼女に声をかけた 「最近…僕のことを避けてる?」 彼女は目をまん丸にして、言葉を選んでいるのか口を開かない 「僕と…結婚してください。それが叶わないなら…もう君とは連絡を取らない。お願いします。答えをください」 彼女は先程よりも大きく目を広げ、数秒…時間が止まったかのように動かず、瞬きを数回繰り返した後… 「…こんな私でよければ…よろしくお願いします」 そして私は彼女を手に入れた だが、ここまでの行動をしたけれど、ふと冷静になり結婚はできないと思ったのだ 今ある自由な環境を狭めてしまう そう考えたのだ
52.彼女
暇ができると何故か寄りたくなった そのドラッグストアへ寄り、あの女性と話す それだけで何故か安心するのだ なんだか無性にその女性の笑顔を見たいと思ってしまうのだ 何度も何度も通い、雑談をするような仲になり電話番号を交換するまでに至った ああ…この人と所帯を持ちたい そう無意識に思ったのだが、最近彼女と話せる日が少なくなった気がする レジにいる時はちょこちょこ話はできるのだが、表立って仕事をしている時が少ない そして、どこかで見た事のある店長がいるときの方が多いのだ この店長はなんだか見覚えがあったのだ 確か…数年前上層部で勤務していた伊藤部長 役職定年とともに別のところで勤務しているとは聞いていたが、まさかここだったとは… 私はレジを担当していた店長へ話しかけた 「お久しぶりです。伊藤部長、お元気でしたか?」 そう声をかけた私に伊藤部長は探るような目つきで返答をする 「最近、ここに来ることが多いね。何の用だい?」 「…私の家がここから近いのですよ。ですから、何かと買い物に便利でしてね」 伊藤部長はため息をつきながら私に告げた 「……いつもここに来るとあの子とお話してることが多いだろう?あの子はとても純粋な子だから、あまり関わらないでほしいんだ」 私と伊藤部長はそこまで関わりがないはずなのに何故か私の内部まで見透かしているような人だ 私に忠告をしてきたということは彼女にも恐らく私のことを話しているのだろう だからか…と最近の彼女の動向を理解した
51.中和
そんな日々を過ごしていたある日 流石にニュースになるほど人を殺めては自分の経歴に傷がつく可能性があると考えた私は仮想現実を作ろうと思い至った それを研究所の人間に話をする 医学等も生身の人間では行いにくい実験もあるだろうと研究にはもってこいの仮想現実を作ったらどうではと長々とつらつら説明をすると研究所の人間は目を輝かせ、仮想現実への実現に協力してくれたのだった そんな中、私は所帯を持ちたいと思った だが、そんな欲望と同等に女性への実験は抑えきれなかった 1人、いや複数人… 新しい命という芽生えである妊娠、出産を経て生まれてくる我が子 人間の本質はきっとここにあるのだろうと何かしら神秘的なものを感じる だが…そこからまた恐ろしい実験をしたくなる この何も出来ない小さな我が子はどこまで生きることができるのか 生命なる実験を考え始めるのだ そう自分の狂気じみさを全くも理解しないほど私は人間として不出来なのだ そんなある日、私は日用品を買いに家の近くのドラッグストアへ寄った そこでレジの担当をしていた女性はまだ若く20代前半だろうその人は慣れた手つきで作業をし、商品の中で薬が入っている場合は余裕のある声色で薬の作用について説明する そして、人が寄り付きそうな毒のない笑顔で見送っていく そんな女性だった 何故だろうか 勝手に毒が抜けたかのように、ふとその女性と話したくなるのだ
50.経験
私は女性経験が乏しかったため、手っ取り早く夜の店に行った きっとゆっくり友人や身近な人間から紹介などを経て、進めた経験のほうがより自分のステータスになっただろうが… それと長いこと一緒にいる気はないため、どうでもいいぞんざいに扱える人間がいいと考えた 夜の店では皆同じ顔立ちの数値で測ったらより綺麗なことが明確に分かりそうな整いをしている人が多くいる 自分の表面上の話をしつつ、周りを見ると真っ当に生きている人間は来ることがないのだろうとなんとなく分かる客層をしている あるとしても会社の付き合いなどだろうか…? 大金を払って疑似恋愛をすることがきっと男性にとって良いものなのだろうなと勝手ながらに解釈しつつ、目の前の女性と話をする 私は研究に明け暮れていたせいで女性の扱いが下手であったが、夜の女性の何人かと話をして向こうの身の上話を聞けるほどに仲が良くなり、女性とはこのように接すると勝手に落ちてくれるのかと手法を覚えていった それと初めての体験をしつつ、男というものはこうも欲に塗れていることを知る なるほど…これは覚醒剤のような作用があるのかと思うのだ この行為そのものに新しい命が宿るなどなんと面白いものだと思い、私は女性への実験を始めたのだった やはり、紹介などで知り合った女性では身の上がよろしいので自分に火の粉が被る可能性がある これで良かったのだ これで… そう心の内で思いつつ、残酷なまでの欲望への忠実さと共になんとも目に映すことが出来ぬ実験をしたのだ
49.探究心
小さくだけれどもそれなりの主張とともに見出しがつけられた題 静かな家と赤々と照らされた景色がそこにはあった 〇〇市で意識不明の家族が搬送された 全員重症で息はかろうじてあるようだが、存命は難しいだろうと医師は告げる その日から家族全員、ICUで治療が始まった そして、私だけが助かった 奇跡の復活とも言える見出しが貼り付けられていく その見出しと共にまた明るい世界へと私は行くのだった と…ハッピーエンドのように語るが、計画通り家族全員が死に私のみが生き返った それだけのこと… これで邪魔するものがいなくなった そう心から思い、笑いが込み上げてくる 私はきっと一般的な人間とはかけ離れているのだろう そのまま私は研究所に籠り、薬物反応を調べあげた 何度も何度も繰り返し続けれる実験 死んでも構わなそうな人間を雇いながら、実験という実験をし続け、私の部屋には恐ろしい結果報告のみが残った それでいいのだ 私の中で残っているものはただ探究心のみ それだけのために生きているのだ しかし、こんな私でも何故か人間関係を築いてみたいと思ったのだ 何も感じないからこそ、出来うる経験をしてみたいなどと思ったのだろうか その日から初めて女性へ視点を移すことになった