満欠

181 件の小説
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満欠

みちかけ と読みます 誤字多い 基本書く専ですがたまに読んでます

目奥

あなたの目に映っていたい そう強く願ったのは、あの日が初めてだったと思う。 夏の日差しがじりじりと照りつける中入った病院は、不謹慎だが天国かと思うくらい涼しかった。 病院特有の鼻を突く薬の匂いも、入院病棟に入ると、独特な病人の匂いに変わった。 この匂いが嫌で、どれだけ父に言われようと、どれだけ誘われても断っていた。 だが、受験も終わり、いい訳もなくなってくると共に、 「いつ会えなくなるか分からないから、」 という父と母の言葉に承諾せざるを得なかった。 病室に入ると匂いはいっそう強くなり、看護師と患者のままならない声が聞こえる。 その中で窓際のベッドには看護師は付いておらず、窓の外をぼーっと眺める祖母の姿があった。 この姿が見たくなくて、来ていなかったのに、 父が祖母に声をかけると、ゆっくりとこちらを向く。 「俺だよ、わかる?息子」 と呼びかけても、何ら返事がない。 「さよが来てくれたよ、」 そう言って父は私に祖母の顔をのぞき込ませる。 父は既に泣きそうになっていた。 「さよだよ、わかる?」 と問いかけるが返事がない。 見ているのは、私のようで、私でない。 どこかズレているところを見ているような、虚ろな目。 暖かなあなたの目に、まだ映っていたかった。 あなたの中で、愛する孫でいたかった。 いま、あなたの目に映っている私はあなたの中で誰なのだろう。

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目奥

あなたの名前を呼びたい。III

かけがえのないものは、いつも、どこでも手に入る。 友情も愛情も、 “かけがえのない”のは、失いやすく、失ったものは取り戻せないからだ。 今、僕の手元にあるのは、両親が残したこのただ広いだけの家と、手の施しようもなく失ってしまう記憶たちだけ。 そしてその奥の、“君の名をもう一度呼べたら”という思い。 これだけは、忘れたくない。 忘れたとしても、これだけはふと思い出すことがあると思う。 雨が嫌いなだと、ひとりが寂しいと、そして、誰かの名を呼びたいと。そう思うだろう。 僕にとって、この家も思い出も全て大切なもので、失いたくないと思う。でも、 「...一等大切なものは、、呆気なく失ってしまったな」

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あなたの名前を呼びたい。III

歪。Ⅰ

無地のドレスに、じんわりと鮮やかな紅色が広がっていく。 色白の彼女によく似合う、少しだけイエローベースの白。「綺麗だ」と言っていたいつかの僕は、嘘だったのだろう。今の方がずっと綺麗だと思った。 何も出来なかった、というよりしようとしなかった僕は、ただ唖然と時が過ぎるのを待った。 真っ赤な葉が茂る頃、真っ黄色の葉が一枚だけ落ちてきた。ひらひらと落ちるそれを目で追っていると、母の肩に落ちる。母は気づく様子もないので、 「楓さん、」 と僕はよびかける。そうすれば 「どうしたの?和間さん」 と、母が嬉しそうに微笑んで振り向いた。そっと母の肩に触れ、落ち葉を落とした。 僕の名前は“和志”だ。 父によく似た目許、髪質、眼鏡をかけているところも。父が死んだあの日から、十六のあの頃から、僕は母の“夫”を演じている。 母のあの、愛する恋人に向けるような恍惚とした顔を向けられてしまえば、拒むことなんてできなかった。拒んでしまえばそれこそ、母が完全に壊れてしまうのではないかと考えた。嫌だった。

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歪。Ⅰ

書き直したい作品について

あまり、というか、全然いらっしゃらないと思うんですが 初期の初期に私が書いた「歪」を読んだことがある方いらっしゃるんでしょうか、 こんにちは、満欠です。 最近低浮上気味ですが作品は読み漁っております。 この度ですね、「歪」という作品を書き直したいと思っておりまして、ちゃんとしたお話にしたいんですね、 始めた当初に書いたものなので知っている方はいないんじゃないかと思っております笑 所々変えようと思っているところがあるので、知ってくださっている方も、知らない方も暖かい目で見守っていただければ幸いです。 それではまた。

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書き直したい作品について

睫毛

私だけが、望んでいたのかもしれない。 公園のベンチ。 隣で寝息を立てている彼の睫毛を見て、私は昨日のことを思い出していた。 柄にもなく、怒鳴る彼と泣く私。 「泣くなんて卑怯だ」と、そっと私の手に、彼の少し骨ばった大きな手が重ねられた。 彼も泣きそうだった。 私に触れない彼を、何処か嫌っていたのかもしれない。そばに居てくれるだけで、なんて、綺麗事。 それでも、あなたが離れていくよりマシだと思った。 彼が触れるもの全てが、私だったらって考えるほどだった。心の狭い自分に腹が立つ。、 彼が触れる本も、箸も、水も。彼がそんなふうに、私に触れてくれたら、。 避けられている訳では無いし、私を見る目はどこか恍惚としていて愛さえ感じる。 だけど、彼がそれを望んでいるとは思えない。 はじめてを私は誘ってみたけれど、重なる彼の唇が、手が、冷たかった。 その睫毛さえも。 だから、やめにしようって言ったんだけど。 「自分勝手だ」 そんなの、わかってるよ。

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睫毛

アイス

真夏のサービスエリアに子供が落とした3段アイスのように、君はアスファルトの上に溶けていった。 さしずめ味はストロベリーといったところだろう。 どれだけその時を悔いても、思い出しても、冬が来た今はもうアイスは溶けない。

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アイス

金木犀

僕の初恋は枯れた。 サラサラと落ちる、あの金木犀のように。 茶色くなって、香りもないあの金木犀のように。 もう戻っては来ないあの初恋は、遠く遠くへ消え去った。 淡く儚く短い恋でした。 楽しい楽しい恋でした。 あのオレンジの小さな花のように、小さな想いを秘めた鮮やかな時間でした。 小さな小さなこと想いを大切に大切に育てていこうと思った矢先のことでした。 でも、花は来年も咲きます。 僕の恋もまた咲くことを願っています。

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金木犀

ビー玉

僕の、一番好きな色でした。 そのビー玉のような目が、僕を強く、強く引き込みました。 誰かといたい時も、誰ともいたくない時も、貴方はずっと傍を離れようとしてくれませんでした。 これは、嬉しいという意味でですよ。 温かくて、触り心地が良くて。ずっと、ずっと一緒にいられると願っていました。 いくつになっても。 そんなことがある訳もなく、命というのは呆気ないもので、小さいあなたはあっという間にその生を終えてしまいました。 あなたの目も、触り心地も今手の中にあるように覚えているのに、あなたはここにいません。 緑の瞳のあなたは、いつも私の邪魔をして、構えばどこかへひょいっと行ってしまうような気分屋で…。 僕の涙をずっと拭ってくれて。 僕という人間に、命の温かさをその生涯を持って教えてくれて。 そのビー玉の目を、二度と見ることはありません。 僕にはあなたという愛猫一匹で構わないのです。 その温かさをもう一度感じるのは、向こうへ行ってからの方が、僕もあなたも満足するでしょう。

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ビー玉

故郷。

もう、真冬の侯であった。 中学の時、そんな書き出しのある物語を読んだ気がする。 寒い風が吹き、どんよりとした鉛色の空。 それが、冬を連想させる言葉だと国語教師が言っていた。 実際僕にとって冬というのはそんなものではなく、よく澄んだ空に白い息が何度も何度も映し出される。 そんなものだった。 それにタバコの煙が加わったのは冬と言ってもほとんど春のような日だった。 夜の暗さにその赤がよく映えて、夕日を見ているようだった。 故郷に帰ってきたところで、改めて美しいと感じることも、懐かしむこともなかった。 タバコの少女を探している僕を客観視しているだけだった。 非行に走る彼女をかっこいいと、美しいと思っていた僕のおろかさと、そういう年頃だったんだなという悲観的な考えが混じったところで帰ってきた。 いいんだ。いなくていいんだ。 ずっと、僕に君を探させて欲しい。 故郷に帰る言い訳に。

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故郷。

夢日記。1日目

どうも、満欠です。 やっと夢を見ました。 最悪でした。 小学校の校庭でマラソン的なことをしてて、終わって集まってました。 喧嘩分けれした彼氏とそのままの状態でバカ気まずくて笑笑 集まった時に元彼に話しかけられて肩並べて砂になんか書いてました。 最悪👎

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夢日記。1日目