歪。Ⅰ

歪。Ⅰ
無地のドレスに、じんわりと鮮やかな紅色が広がっていく。 色白の彼女によく似合う、少しだけイエローベースの白。「綺麗だ」と言っていたいつかの僕は、嘘だったのだろう。今の方がずっと綺麗だと思った。 何も出来なかった、というよりしようとしなかった僕は、ただ唖然と時が過ぎるのを待った。 真っ赤な葉が茂る頃、真っ黄色の葉が一枚だけ落ちてきた。ひらひらと落ちるそれを目で追っていると、母の肩に落ちる。母は気づく様子もないので、 「楓さん、」 と僕はよびかける。そうすれば 「どうしたの?和間さん」 と、母が嬉しそうに微笑んで振り向いた。そっと母の肩に触れ、落ち葉を落とした。 僕の名前は“和志”だ。
満欠
満欠
みちかけ と読みます 誤字多い 基本書く専ですがたまに読んでます