マイノリティハート
27 件の小説桜の舞
花の命は短くて 儚く散るがゆえに美しい… 桜並木の道なりに配置された数千の提灯の数々と、煌びやかな帯状の垂れ幕が、寺の本堂まで引き継がれてあった。 【桜🌸の舞 和泉弥 桜霞 】イズミヤオウカと、謳われし旗竿が春の夜風にたなびく。定例の夜桜祭の花舞台が、本陣寺の境内の前へと広がりを観せ、張り出した舞台を造る。 祇園一の舞姫と名を売り、歳の頃なら二十歳前後の美しい踊り手【和泉弥 桜霞 】イズミヤオウカ 京の都の幾多の街から沢山の聴衆を集める。舞姫の人気振りはと言うと、艶やかで美しい舞い姿、そして時折り覗く妖しく悲しい横顔が、観る者を忽ち虜にした。 笛の音と三味線に導かれ、舞台狭しと扇子を仰ぎ、桜の小枝を口に咥えながら桜霞は舞う。[光琳文様]の模様が、あしらわれ金箔仕上げの粋な黒の着物に、時折、舞い、散る桜の花弁が極上の演出を司る。 桜霞は風に舞散る花びらの如くヒラリヒラリと……舞台は盛りを迎え、張り出しの最先端へ舞を勧める。 一心不乱に声援を送る老若男女を見渡しながら、最後の舞の返しを披露するや一瞬、桜霞の動きが呼吸と共にピタリと止まる…何故か❓彼女の眼に飛び込んできたものとは、斜め前方の一人の商人風な客を凝視したまま息を呑む。 その時、桜霞の着物の内なる身の脚が震えていたことなど、誰一人知る由も無い。 桜霞は直ぐさま気を取り戻し舞を続け、其の後舞台からはける(その間二分程) もう一度登場し、満場の拍手と歓声が鳴り止まない中、終焉する。 *〜終焉まえ 桜霞がはけて楽屋入りして直ぐ、演舞最後の舞の為、鮮やかな紫の打掛を羽織ると、直ぐ様、付き人の小役の娘を呼び寄せ、会場の出入り口に立ち,楽屋の階段から張り出しの前にいる小鼠色の羽織の恰幅の良い中年の商人を指差し、 [ウチの好きなお方に、余りに似てはりまして 驚きどすえ 何とか貴方はんに直接お会いしたく、お暇どしたら…今日夜半に竹藪を通りぬけ、奥の祇園茶屋でお待ちしておりやす。 お越し下されましたなら、ウチは大変嬉しいどす。唯、お願いがひとつ…騒ぎになりはったら、あんさんの名に傷がつきます。どうか密かにお越しやす] と、 和紙に書いて四つ折りにし、踊りで使た桜の枝と一緒に渡すよう、小役の娘に言いつけたのだった。 祇園茶屋は、密会の場でもあり、鬱蒼とした竹藪の奥にひっそりと佇んでいた。茶屋というより旅館だ。気に入りの 太夫や芸者、役者との待合場所に使われた。芸を披露する場でもあり、普通に泊まることも出来る。 秘密時に落ち合う両者が多く,口外しないことが祇園の暗黙の了解だった。 和泉弥 桜霞が桜の舞を踏みとどまる程驚いた人物とは… 表向きは銭貸しと称し、裏では博打による貸付と借金取り立てに輩を使い、下層の町民から身分の高い武家まで過剰な利子の取り立てに始まり、借金の肩にその者の家族を捕え最も高値で売り飛ばす。売れるものは、骨の髄まで貪り情け容赦無い! この世にあって、未だ表沙汰にならず、罷り通る時代であったことが、悲しい業を生み続けている。 博打自体の摩耶かしも手伝い、巷の噂で俗に言う悪徳商人、此奴の為にどれだけの人々が惨殺され、先々を絶望し、自ら命を投げ死に急いだことか…… その傍若無人ぶりは、今や漏れ聴こえ世間を震撼させていた。 此奴こそが、悪名高き 大黒屋『義村 吉右衛門』ョシムラキチエモン ☆〜 その夜の子の刻 鼻の下を伸ばした吉右衛門は、騙された振りをする事に決め、誰かのお抱えにならず、又、旦那も取らない天下の桜霞が、自分を誘う訳はと考え抜いた。 多分、まとまった金銭が必要になったのか、踊りの場から離れたくなり、それ相当の代償が必要になる。まぁいずれにせよ、私だけのものになる事は明らかだ。 男は、舞姫の白い頸を想い浮かべ、舌舐めずりする。 先を急ぐため、番頭に案内させるも、辻斬りも有る難所の竹薮を通るは、やはりたじろぐ。真っ暗な暗闇と竹が擦れる音以外は、番頭の持つ提灯の明かりだけが頼りである。もうすぐ茶屋が見えるはずと足取りも速まる。 番頭は急に大声を発し、提灯を地面に落とす。 目の前に現れし武士?若武者?…狐の面を被り身軽な立ち振る舞いは、腕に覚え有りと見える。 吉右衛門は、懐中から銭を出し投げつける…「金はくれてやる 持って行け! 今回は見逃したる若僧、さっさと道を開けなはれ」 「吉右衛門 いいか 一度しか言わん よく聞け!! 」 若武者は少しだけ高めの岩の上から見下ろし、ゆっくりと刀を抜き、吉右衛門の目に向け正眼の構えをとる。 「伏見の元小平藩主の武士『和泉 琢磨 妻の佳代 許嫁との婚礼を控えていた姉御 雪乃』藩の衰退により貧しかった家族を狙い、様々な仕掛けと悪行の数々、夫婦も娘も散々痛ぶられボロボロになった家族は、生き恥を晒すより死を選び自害した……吉右衛門! 知らぬとは言わせぬ」 「何と、お お前は誰じゃ❗️ まさかの和泉の生き残りか? 剣術の習いと称し行方知らずだった舎弟が居ったと聞き、随分探しおましたわ」 「しかしだ、その後とても妙な話を耳にしたわいな、逃げ通したるは、弟では無く雪乃の妹の綾香だと知り、逃した、魚は追わねばならぬ踵を返し、道場へ駆け込んだのや」 「剣術、一刀流の師範 『小野柱銘』とか言ったか、そんな者は習い事には一度たりとも来る事はない、まして女子には此の道場では、指南は未だしておらないと、剣もほろろに扱いよったわい。まぁ、それ以上は手を出せず、名手の師範が刀を抜くと、脅かされたよし…」 「もし もしもおまんが雪乃の妹なら、今晩のこの事は帳消しにしたるわ! そやから今から借金を返してや、あなたのお父はんが借りた残りは未だぎょうさんあんのや、そげなおもちゃの刀、振り回しせんと今から遊廓で稼いでヤ!」 いつの間にか番頭は、とっくに逃げ帰ったか、何処にも居ない、、、、、、 若武者だと思い用心していたが、女だと知るや刀を突きつけられていた吉右衛門の顔が緩んだ(何の何の 赤子の手を捻るようなもんよ)と、にんまりとした次の瞬間、手にしていた銭の袋を思いっきり振り上げ、刀の先を目掛け振り下ろす。 若武者の刀は直ぐさま力を抜くや、刀は空を仰ぎ、そのまま吉右衛門の右腹を斬りつける。 吉右衛門は、腹から大量に血🩸を流し、か細い声は、さっきまでとは違い憚らず命乞いし、助けてと口走る。 「吉右衛門、おまんの罪は、私の家族だけではなく、真面目に働く町民に耳障りの良い遊びと称し、賭博に誘い込む。 退っ引きならなくなるまでのめり込ませ計画的に家族をも手の内にし、銭稼ぎの為ならば人など虫ケラ扱い、用無き後は自ら命を断たせ、自業自得で仕方無きと自ら風潮し、世間を欺いてきた。この世の者とは思えぬ悪業、決して許すまじ❗️ お上が成敗なさらぬならば、天に変わり、拙者がお前の首を打ちとろうが、天罰であろうや…」 “”悪人とて来世があるとするならば、最後の懺悔を聞かない選択は無い…大黒屋 万物の生業に許しを乞い…いざ❗️覚悟せい“” 翌日には、祇園町界隈で驚きと衝撃が広がる。 躁鬱とした竹藪で、銭貸し問屋 大黒屋吉右衛門が、辻斬りに遭う。 首を刎ねられる直前まで、誰かに許しを得るかの様に、腹に躊躇い創を残し、武士の腹切りの如く前のめりで息たえ…たと。 その日も次も、夜桜祭りと桜霞の舞は盛況のまま幕を閉じる。 花の盛りが過ぎ桜の花弁が散りゆく頃、和泉弥 桜霞は突然、姿を消し去った……桜と共に舞い散る運命であったのか 完
僕らの マスク戦争
最終章 ラスト開戦〜❺ 昨日はかなり疲れていた、もう朝の八時を回っている。 横のベッドに寝ていた杉田の姿はなく、階下から聞こえてくる開店準備前のスープ鍋の煮炊きの音や、野菜を洗う蛇口🚰の音だったり、集客の期待をかける緊迫感と忙しさを伝えている。 その隙間を縫って親子の会話が密かに聞こえてきた、、、、、、、、、 「ショウタ、今日何処行くんだ? お前が何しようが構わないが受験生だと言うことを忘れるなよ 後なこの間の融資の話は断った!! 訳の分からない融資は、後がオッカナイからよ! 」 「親父、期限があるんだろう? もし払えなかったら此の店を取られるんだゾ! 」 「お前は心配すんな、それよりもちゃんと勉強して大学入れ 母ちゃんとの約束を守れ! いいナ」、、、、、、 (繁盛しているように見えたけど、知らなかった、家が大変な時に…一宿一飯の恩義、早く手伝おう! ) ☆〜 「何だと❗️ 二人の生徒が逃げ出した❓…どうなってるんだ、黒マスク施設の警備は? 」 「明日には、例の新薬投与を強行する!頓挫するわけは絶対に行かない!! うちの病院の命運が掛かる大事なイベントだ! 莫大な金が流れる、こんな不手際は絶対に困るんだよ! 」 「そのために準備した製薬会社との密約、新薬の先行発注契約は明日の夜には決まる その後の大事な記者発表も予定している どんな手を使ってでも早く連れ戻せ❗️ 」 「逃げられたことが明るみになってみろ、黒マスク警察の権威が失墜する。 私の医師会での今後の立場も危うくなるやもしれん! 」 「其れに日に激しさを増す反対派の連中に捻込まれる材料は、是が非でも阻止せねばならない! いいか直ぐに探し出せ❗️ 」 ☆☆〜 「そうなんだ……逃げられるわけがないのに何故か逃げたんだ! 手助けをしたやつがいるようだな、大体馬鹿げているよ、ただの保護でしかないのだから、時間が来れば普通に帰れるんだよ…」 「兎に角、何処へ行ったのか本当に知らないのかね? 質問を変えようか、あの二人とはいつ何処で会う予定かな? 」 、、、、、、、 「あゝそうか、そんなに協力出来無いなら、こんな事はしたくはないが仕方無い❗️ 私の一声で銀行の融資もストップできる! 脅迫ではない! 私の権限と影響力は、今や誰もが知るところだよ!! 」 ***〜 次の日の午後 僕達は、大澤駅から直ぐのショッピングセンター“アラモ"に向かう、、、(三時半には到着しそうだな) 結局、杉田も一緒に参加する。 (キョウコ達が心配だからと、強行に言い張った こんな杉田を見たことが無い! コイツ、もしかしたらキョウコのことが❓ 僕は妙に気になった) 四時までに皆んなで集まることは決まっている。しかし問題は集合場所だ。 これが、休日の午後のモールの人混みで、紛れ込んだ二人を探す事さえ、今は容易では無いのに(せめてキョウコの洋服の色ぐらい、聞いておけばよかったナア) キョウコからのメールは、昨日を最後に途絶えた。此方からの送信は調べられている為、滅多なやりとりもキャッチされる恐れが有り、仲間達とは暗号でやり取りする。 集合場所は、黒マスク警察の動向次第で決める。 万が一、危険が迫る場合には、仲間たちには中止の雨マーク☔️を出す。速やかに立ち去ることが、僕が決めた仲間との絶対的な約束だった。 “アラモ“に着いた僕は、杉田と六人の仲間達と信号を取り合う。 僕が鳩、一羽、杉田が二羽、、、、今のところ仲間八羽全て飛んだ。 因みに、黒マスクは⦅カラス⦆と、例える。 キョウコとハクトは、電車による長旅でお腹が空いているだろうと僕は考え、杉田と別れ、反対側からのフードコートを彷徨、同時に黒マスクを警戒しながら捜索する。 フードコートの先の🚻の前のベンチに座る、眼鏡をかけた大人びたベージュの上下を着た女性、見たところ、大きな買い物袋を持ち、子供の🚻を待つ若い母親のように見受けられる。 しかし、キョウコの下僕である僕には、彼女のオーラを感じ取る。 (確かめてみるか? どうやらハクトのトイレを待っている感じだな…) 僕も、杉田に借りたグレーのセーターで野球帽を被り民衆に溶け込んでいると思う。 {🚻の隣のスポーツ用品店に入って}と、書いたメモを、何気に座っている彼女の膝の上に落とした。 矢張りキョウコだった。 そのまま僕は、スポーツ店の入り口の植木に身体半分隠し待つ。 キョウコが、ソソクサと店に入る。と同時に僕は彼女の腕を掴み、思いっきり引き寄せ抱きしめていた。一瞬、お互いに顔を見合い、僕は感涙に咽びそうになる。このまま時を忘れずっと抱きしめていたかった、、、、、、、、、、、。 「キ キョウコ! ハクトの事を守ってくれて、本当にありがとう! どういったらいいか」 「シズキ! 自分の子供を守るのは当たり前だから」 「エッ⁉️ 今 なんて言ったの…」 「まだまだよ! 鑑賞に浸るには早い戦いはこれからなんだよシズキ!…ネェ、ハクト🚹 出るの遅くない❓ 」 (ハクト!! 確かにそうだ、彼女との再会で気が動転していた) なんて事だ! 目を離したといっても、一分程 それなのにハクトが居ない、幾度も、トイレや周辺をキョウコと探し回るも手掛かりが無い、杉田が現れ捜索に加わる。 最悪のシナリオが頭を過る。 黒マスクに捕まったかもしれないと、、、、、、、、、、、 時間的にアラモ内で移動しているなら、まだ救出可能ではないかと密かに期待をかけ''黄緑色の幼虫を咥えたカラスは庭の中” と,仲間たちに暗号を送る…………… ***・・・**・* 八王子市立八王子南高校三年、生徒会長"吉川イズミ"は来月、市で開催する青年の主張の高校生部門に出演する全ての高校からの弁士を募集していた。 このイベントを最後に、会長の座を退く。成功のための熱量は計り知れない。日々、私立公立高校の代表者達と連絡を密に取り合っていた。 ☆☆〜 週末前夜、試験勉強の合間にいつもの様にイズミは、部屋のベランダに出て、疲れた脳を癒すため、ライトアップされた内庭を見ながら、幾多の代表からのメールの返信をしていた。 "吉川総合クリニック院長“ 吉川孝明 は、地域統括代表でも有り黒マスク警察支部長の職務にも抜擢され、二つの肩書を持つ。 そして、イズミの最も尊敬する父親なのだ。書斎は娘の部屋の隣に在る… どうやら窓を開け通話をしているらしい、いつもと違う話し方に、何故かイズミは違和感を覚え、聞き耳を立てた… 「そうだよ逃げ出したんだ! 君の同級生の女子生徒と君の親友の宮原君とか言ったかな、その病気の弟を直ぐに連れ戻す必要がある…」 「君のお父上、せっかくの私からの融資を断るとは、あまり利口では無イネ! 大切な店は本当に大丈夫なのかなぁ…こんなこと言いたくはないが、お父上の店など私の一声で明日にも営業ストップになるよ……… フウン❗️ 成程 明日アラモに二人が現れたら、間髪入れずに連絡したまえ! 約束しよう明日中に二人を連れ戻すことが出来たら、融資は必ず取り付けるし手続きが済めば、夜には二人を解放してもいい」 [ショッピングセンター アラモ] "幼虫を咥えたカラス二羽が、水浴びを目指している❗️至急、bird watchingへ“ 鳩の三羽から、、、 "カラスが群をなし、大きな餌を求め、四方に飛散した。黒が抜けた色は、金の目を確認しbird watchへ、、、、、“ 彼方此方からメールが届く。 僕とキョウコは二手に分かれ人ごみに紛れながら、急いで出入り口近くの公園、''水浴び'' 噴水⛲️を目指す。 {鳩を手から舞い上がらせる仕草の少年の彫刻が施されている}中央の石柱から高低差の水流を、交互に噴き上げている噴水が在る。 僕は、すかさず仲間たちに ☔️マークを配信した。何故か急に居なくなった杉田にも、中止を知らせる。 既に僕は、腹を括っていた。 キョウコが、人を隠すなら人混みだと、この場所で会うことを決めた。 又、八王子でも指折りの大型駅とショッピングセンターは地続きで、かなりの市民が往来する。 狙いはこの人通り、、、この政策を見直すべきだと、地区の緊急事態条項マスクの着脱禁止規制の廃止を求める団体の代表に、予めキョウコがコンタクトをとった。 '' この理不尽な政策の為に、何の罪もない子供たちが利権に利用される事は絶対に許されない❗️“と賛同してくれた。 是非一緒に声を挙げ広く市民の皆様から署名をもらい、団体はすでにマスク義務の正当性と整合性に、疑問と反対を表明しマスクの自由化を掲げていた。 条例の為の、一部の利権企業から成る俄か黒マスク警察とやらの廃止を求める嘆願書等、又、新薬投与等の強制が露見した場合、権力乱用と違法行為としての調査会に申請し、徹底的に糾弾する旨を取り付けていた。 そのタイミングが午後四時、まもなくだった。しかしながら、団体との交流も儘ならない厳しい状況になった、、、、、、、 (しかし何故? 今日の場所も時間帯も知られていたんだろうか? ) タイミングが良過ぎてハッキリとはしないが妙な不自然さを感じる。キョウコと僕はその時、漠然とした不穏な空気を感じていた。 僕は一番に公園まで辿り着く。 ハクトがいた❗️中程にある⛲️噴水の向こう側にハクトを挟んで二人の黒マスク達は立ち止まり、手前男が何やら携帯電話を取り出し通話をし始めた。 片方の男に合図するや、男は噴水に手を翳して湧き上がる飛沫に集中するハクトを、無理矢理引っ張っていこうとした。 身体を張るなら今だと思い、僕は走った、、、、、、、 「ハクトを離せ❗️ 」ハクトの手を強く引っ張る男の腕を払いのけ、僕はハクト奪回の為、一進一退の攻防を繰り広げる。 しかし、形勢は元から不利だった。署からの指示を受けていたのか、通話を辞めた男によってその場に羽交い締めにされ床に倒されそうになる。 その時、駆けつけた杉田が男の背後から馬乗りになり僕の窮地を救う。 杉田はもう一人の黒マスク警察に殴られ鼻血が出ていた。僕も杉田も諦めなかった、、、、、、、、、、、、 「 杉田 大丈夫か? 」 「シズキすまん! 俺なんだ❗️ この場所も今日のことも全部密告したのは俺なんだ! 友を売る最低な野郎なのさ… 店の事を脅されて、母と造りあげた親父の店が無くなる…て思って! だけど、シズキがやられると思ったら居ても立ってもいられなかった! 本当にすまなかった」 「うん そうだったんだね、汚い奴らのする事だ仕方ないサ それにショウタ こうして僕を助けに来てくれたろ、☔️マークを出したのに、中止だ! 逃げろって言ったのに…僕の方こそ巻き込んですまん! おじさんに申し訳ないよ…だから諦めないよ 最後まで闘うつもりだ! 汚い大人の奴らにケリをつける❗️ 」 その時、ザワザワと何処からか、金バッチをつけた私服の黒マスク警察が、残りの鳩六羽を捕まえ僕と杉田の前に乱暴に引きずり集めた。 僕はあんなにも、逃げるように促し約束した筈…が、元から逃げる気など無かった仲間の真意を汲み取り胸が熱くなった。 仲間は暴れたのだろう?押さえつけられていた。これまた、僕と杉田も地面に手を着き首を抑え込まれている。 これじゃぁ、まるで時代劇の捕物だよ、、、、、、、、、、、、、、、 「早くみんなを解放してくれ! コイツらは 此処で偶然会っただけだ 今回の事には一切何の関係もないよ! マスクはしてるし、違反もしてない 捕まえる理由がないだろう! 」 「僕が首謀者だ❗️ 彼女と弟の逃亡の手助けも全て僕が考えて手引きした 」 「病気の弟はもう限界だ! 弟に何かあったらどうするんだ、責任は誰が取るんだよ!! いいかよく聞け二人の代わりにこの僕を支部長のところに連れて行けよ! 」 ハクトが大柄の男に抱きかかえられるのを目視すると、同時にキョウコの姿を急いで探す、、、、、突然、大きな水飛沫の音と、勢いよく水が流れる音がすると、辺りの景色が曇り俄かに霧が立ち込める、、、、、次の瞬間、僕は冷水を浴びたような錯覚を覚える。 なんとも言葉に表すのが難しい。 まるで、我が身が水中に埋没したかのような不思議な感覚、浮遊感と冷たさを肌で受ける。しかし魚のように普通に息をしている。 僕は我に返り、フウ〜と息を思いっきり吐いた。驚いたことに黒マスク警察官が、全身びしょ濡れになり、まるでドミノ倒しのように薙ぎ倒されている、、、 自分達に何事が起こったのか分からず只々呆然としていた、、、、、、、 キョウコがハクトと手をつないで僕達の処に駆け寄る。「き 君か? コ コレしたのキョン⁉️ 」 キョウコが僕を見て、ニヤリと笑った。 「シズキ! 反対派の代表達が弁護士と一緒に今、こっちに向かってる だから皆んなで戦い抜いて時間稼ぎするのよ! 」 シズキは噴水の水が、容量を超えて六〜七mも高く立ち昇り、地面の数m先まで流れ出している状況に初めて気がつく、、、、、、、、、、、、 僕ら仲間達にも理解できず、噴水⛲️の故障で溢れているのか? 水源元の水流がマックスになってしまう調整ミスだろうと考えているようだった。 何れにせよ、天が僕たちに味方したらしいと一斉に囁いていた……… ショピングセンターアラモを出入りする人々が、公園の様子を怪訝に思い立ち止まり始める。 いつしか群衆が群衆を呼び集めていた。 シズキ達は構えた………… 黒マスクが正気を取り戻し僕達に襲い掛かろうとしていた、、、、、 其の時、何処からか登場してきた制服女子が… 「待って❗️ 誰一人として連れて行けないわ! 貴方達 黒マスク警察は十八才以下の未成年の子供達に暴力を振ったのよ! 証拠は私達がビデオに収めています 此れは違法行為よ! 直ぐ市の懲罰委員会に提出します」 驚いたことに、我が校、八王子南高校生徒会長の吉川イズミだ。 ニ年の委員二人を連れて現れ、黒マスクが僕たちを押さえ込むシーンのビデオを流してみせる!、、、何故?僕達の加勢に廻ったのか? 「黒マスク警察さん、貴方達は間違っています! 黒マスク警察官支部長の吉川孝明、即ち私の父は大きな間違いを犯したんです この条例は、子供たちを対象にしたものでは無いはずです 切符が溜まった者だけの、そもそも児童生徒は指導だけの筈です……拘束し それどころか病気の子供を利用してお金儲けしようなんて❗️ 」 「父は医療に携わる身で、何の罪もない病気の子供に、都合の良い健康薬と称し欲や利権による金儲けの為に、特定の疾患が有る子を探しこんなことを? 娘としてとても恥ずかしいし悲し過ぎる」 「宮原くん 弟さんのこと本当にごめんなさい! 凄く心配させてしまって…、こんな理不尽な条例は直ぐに辞めるべきよ❗️ だから、皆んなに声をかけて賛同してくれる市の全ての高校生に拡散してもらったの……見て❗️ こんなに集まってくれたわ!」、、、、、、、、、、 群衆の合間から、種々様々な制服を着た高校生達、おそらく市内の高校の学生たちが続々と集まり、いつの間にか、まるで集会場のように見渡す限りの制服の群れを成していた。 一斉に、"強制マスク反対“ 、“ 黒マスク警察の廃止!“ ⦅民を奴隷化する条例、廃止!⦆等のプラカードを掲げ、吉川イズミの号令で一斉にシュプレヒコールを挙げる。 また、条例反対派の団体も加わり、広い公園内は人で埋め尽くされ、一般市民も一緒に声を挙げ始めた。 黒マスク警察は、圧倒され如何にもならず、唯、立ち尽くすだけだった、、、、、、、、、、そして、奇跡が起こる。 騒ぎを聞きつけた著名な文記者やマスコミが、社会現象として捉え、こぞって記事にしてくれたのだ。 この事は八王子だけに留まらず、全国的に広がり、燻っていた国民の不安や不満が爆発し、緊急事態条例や数多の法案をも、見直しとなる可能性が出てきた。 その後も、民衆の声は今も広がり続けている、、、、、、、、、、、、 シズキ達は、それからの数ヶ月、マスクを外し、残り少ない高校生活を謳歌し、無事に卒業を迎えた。 今回の事は何と言うか、特別な事件となり感動するラストを迎え、一生僕たちの脳裏に刻まれだろう。 しかしながら、一番の功績は、吉川イズミだ! 彼女は、実の父親を告発したのだから、それなりの覚悟が必要だった筈。 僕こそ、彼女を自己中だと誤解していたことを心の底から謝りたい! 彼女こそ真の勇者である。 彼女は、高校生による弁論大会でも、市政の在り方や正しい未来像を打ち出し、イズミの弁士振りは圧巻だった。 心配していた親子の対立は事なきを得る。孝明は役職から退いたが、辛うじてクリニックの院長は続けられる。 イズミは医療を学んだ末、父のクリニック継がず、過疎地の医療に従事することを望んでいる。 杉田の店の🍜ラーメン屋は、銀行融資を受けられ今も営業している。 キョウコは、大和神宮を護り継続するための神童学科がある大学と、同時に経営学も学ぶことを決めた。 キョウコとのこれからの関係性は、説明する必要も無く、三日に一度、我が弟ハクトに会いに来る。ハクトもキョウコのチカラが働いているのか、少しずつ会話が出来るようになり、表情もほんの少し豊かになってきた。 一番の驚きは、心配の種だったハクトの喘息発作が事件以来起きていない。 僕はと言えば、残念ながら第一志望の国立大を失敗した。でも僕は迷わず第二志望大は蹴り、一年浪人することを決めた。 (彼女の大学と僕の第一志望大が 少しだけ距離が近い) まぁ、彼女と僕との関係?…、相も変わらず僕は彼女の下僕以外の何物でも無い!今のところは… 彼女の真意は分からないが、僕は彼女が好きだし❣️、生涯大切に守りたい女性だと確信している。 前世も、現在も、未来も、家族であるのだから、、、、、、、、、、、、、、、 僕が今思う事、これから先、パンデミックが起きる可能性はゼロでは無い!だから僕達は、常に冷静に客観的に見定め、決して流されず、正しい見識と判断をしていく必要があるだろう。 今回のように、一番の被害者になり得る声を上げられない子供達、そして僕たちの未来を守るために、、、、、、、 完 とても長いストーリーお読みいただき、有難う御座いました。又、ラストの投稿が、かなり遅れましたことを自省すると共にお詫びします。 名称や建物等、政治的表現はフィクションです。 後書き 在る高校生達の活動に賛同し、応援したいと思い書かせていただきました。取り巻く社会現象や変わりゆく時代の波に対し、考える一つのキッカケになれば幸いです。🙇♀️
ラスト スタジアム
戦後の日本、昭和三十一年以降、プロ野球も甲子園も開催された。 「お爺ちゃん! 本当にこの野球スタジアムは無くなるの? 巨人もタイガース🐯の試合もここでは見られないの、つまんないなあ!」 「残念だよ、此処は壊して市営団地になるようだな 市街地の再開発事業とやらで老朽化が進んだこの市民野球場は、なくなるんだ、でもアキラ知ってるか?都心で今、開発中のびっくりする程大きなスタジアムが建設中なんだぞ! 写真で見て知ってるだろアメリカのスタジアムとそっくな建物だと思うよ! アメリカの大リーガーも呼べる位の円形の球場が出来る、巨人タイガース戦もあるぞ! 完成したらジィジと又観戦しに行けばいいさ」 『 掘越辰爾』六十七才 孫『明』八歳 直ぐ目の前で繰り広げられた、懐かしい戦いの数々が浮かんでいた。 明日には解体される古いが広さは有るこの野球場。 プロ野球も一、二度、開催された市営野球場を隅から隅まで感慨深く眺める、、、、、、、、、、、、 「おじいちゃんは、ずっと前此処で野球したんでしょ! チームの勝敗数は良かった? ジィジはホームラン打った事ある? 」 「僕ら明石少年野球チームのエースは すごく野球がうまいんだ! 満塁打もあるしヒット数もどんどん上げているし、もう少し頑張れば、いつかホームランも打てると思うよ」 「ジィジは…な 話してなかったけど 実はピッチャーだった」 「打率はさほどじゃなかったな、センターヒット一,ニ回位か? アキラの方がジィジよりずっと打ってるさ! アキラだって、これから先の練習で満塁ホームランも夢じゃないぞ! 」 " ワシの試合か…うん そうさな 一度だけ奇跡のような試合があったな… 海南高校があと一試合で、地区予選を勝ち抜き甲子園出場を勝ち取る大事な試合があったんだよ! ピッチャーは私を始め、数人居たが,試合を通して投げられるのは、ジィジともう一人いて、そう、先輩の『高野大輔』と言う人だった。 対戦相手は,甲子園に二回続けて出場していた地区大会優勝候補、箕輪高校、強豪校だったんだよ。 海南高校は、排水の陣で望んだとしても、圧倒され惨敗するだろうと、周りも、協会、運営側も徐に決めてかかっていたんだ。 勿論,先輩の高野さんが、大半を投げると思ったし、やはり先発から起用された。 高野大輔は,他の球児よりも体も一回り大きいし,投げる球は力強い豪速球で,変化球も投げるが、直球に威力があった。 彼は必ずプロになると私は確信していたし、その才輝あふれるプレーは、この試合で証明して観せた。 何と、七回裏まで、ノーヒットノーランが続いた。高野のフォームの乱れは未だ無い!唯どちらのチームも無得点であった。 最早、延長突入かと思いきや、代打がムードを変え援護射撃になり、我が海南高校に先制点が入る。 関係者及び生徒、家族はもはや、甲子園も高野の完全勝利もあり得ると、只々固唾を呑んで見守る。 誰もが勝利を信じて疑わなかった。 しかし、八回裏ツーアウトから悲劇は訪れる。高野の決め球、ドロップが落ちきれず、打者のバットの芯にはまり、激しく打ち返される。それがピッチャーの高野に目掛け顔面に炸裂する、、、、、、、、 その弾かれた球が、サードフライになる。 高野は、そのまま倒れ込む。審判がタイムを取ろうとマウンドに出た瞬間、倒れた高野が、ふらふらしながら立ち上がる … 数秒後,静寂になる……… 「バッターアウト!」球場内に割れんばかりの喝采が起きる。もちろん、ブーイングも起こったであろう! 試合は中断され、高野は、コーチや仲間に支えられ、ベンチ入りし、直ぐさま病院に担ぎ込まれる。 高野大輔は、その時、リリーフの私をしっかり見つめ、" 頼む "と囁き球場を後にした。 いよいよ九回裏、私は自分を落ち着かせようと深呼吸し、(落ち着け 落ち着け 兎に角一球づつ 集中しろ) キャッチャーのサインは、直球!よし (打たれても無失点ならば 高野先輩も 勝つ 我が校も勝利する。仲間を信じろ!) 投げ…………た。アッ、マズイ❗️力み過ぎた。カッキーン!!いきなり右中間を破り三塁打!!!、、、、 (仕方ない次だ 次 この一球でケリヲツケル) 第二打者、私はカーブのサインに首を振り、ストレートで行く、、、、、 投げる…投げ…る、(空振りだ! よし)、、、、投げた…“ フルカウント" 私は賭けに出た❗️外角低めのギリギリのストライクゾーンを直球で絞る、、、、コントロールに自信を持つ私は、勝負した……投げた。狙い通りの低めのライン、ようし、いいぞバットを振れ❗️、、、、、な、何と、スクイズ⁉️私は一気に走り球を拾い上げ、ランナー目掛け、突っ込んだ!三塁ランナーも、猛ダッシュで頭から滑り込む、あらかた同時の攻防戦で有る……… 「セーフ! セーフ!」 動揺が支配し、空回りする間に打者が二塁ベースを駆け抜け、慌てて投げるも悪送球で又も追加点を許し、さよなら負けになってしまった。 試合は誰のせいでもなく、全て自分のせいで負けたのだ。 歓声は、何処か遠くで聞こえ,時に雷鳴の様に身体を射抜き、又心臓を刺す!無常にも鳴り響き渡りいつまでも止むことはなかった… 負けた❗️負けてしまった!!手を出せば取れたろう甲子園の切符も、高野先輩の歴史に残る完全試合。 プロでも難しい偉業を残したかもの試合、又、無得点ならば、ノーヒットノーランも起こし得た筈の試合!! 試合終盤のリリーフが自分じゃなかったならば、何より先輩の負傷が無ければ、成し得た成功だろう! 私は情けない話だが、気力も無くなり野球から遠ざかった。 高野先輩の怪我は思いのほか悪く、脳挫傷だった。野球は大学でしばらく続けていたと噂に聴いてはいたが、その後プロ入りしたと言う話も無く、今に至る。 「おじいちゃんの事、その人怒ってるかな? 僕は違うと思うよ、試合は負けちゃったけど、やっぱり、やらなかった後悔より一生懸命やったんだから、試合に出られて良かったんだと思うよ! 僕のコーチがいつも、負けたらそう言ってるよ、続けるから意味が有るんだって!」 私は少し衝撃を受けた!孫のアキラに教えられた感が有る。八歳の孫の祖父への返しが、的を得た話し具合に、私は嬉しくも有り、思わず苦笑した。 古い野球場に別れを告げ、出口に向かう途中のベンチに、一人の年配の男性が、懐かしむように、フィールドを眺めている。 ふと目が合い、お互いに何か分からない想いが、込み上げ、男性は立ち上がると、此方に歩み近づく、 「堀越さん イヤ〜お久しぶりです」 何と言う事だろう!今、想い描いた高野先輩だった。五十年振りのよもやの再会であった。 私はあの試合の失態を懺悔するも、先輩には、逆に謝り倒されたのだ。 「あの状況の中に追い込んでしまい 生涯、責め苦に合わせてしまった事を、今貴方にお会いし、矢張りと納得しました、試合は時の運です! 私が最後に打たれていたかも知れないのですから、堀越さん、もうお互いにこの事は忘れ又、野球バカになりましょう。お孫さんも野球が好きなら尚の事です! 最後の球場を貴方と懐かしみ,見定め終える事が出来、これ程の幸せはもう無いでしょう! 」 二人は、陽が落ちるまで、語り尽くし………た。 完
枕が足りねえ!
新人噺家、『 鳴門ゑ サクラ』二十八歳。 銀行を辞め、この落語家の世界に飛び込み、一年半。 ある演芸場に落語を聴きに行った時のこと、本題の噺に入る前の頭の部分を"まくら"と言う。 要するに、よく言う掴みのことである。 枕が絶好調だと、その後の定番の落語のお題が、生きてくる。 その場の客の心を一瞬に奪い、笑を誘う『一之輔』の絶妙な話し振りは、圧巻で、正に魔法でしか無い! 全身に電流が走る衝撃を受けたのを、今も覚えている。 噺家の世界に,清水の舞台から飛び降りる覚悟で、一年半前に『鳴門ゑ 薮から坊』師匠に弟子入りした。 今日で三回目の前座を務める。師匠の計らいでチャンスを貰う。しかしながら、客席の反応は、パラパラの拍手と失笑であった。 楽屋で師匠に、頭を小突かれ散々説教される。 「おめえなぁ 寿限無も死神も山程練習し浚ったから そう悪くはねぇが、肝心の"まくら"が,足らねえ❗️ 全く足りねえよ! きいてくれきいてくれってよ おめえが張り切ってしゃべる程に、バナナ 🍌の叩き売りにしかならねえーよ!! 枕はな、古典落語の噺にその落語家だけが持っている特別な味と色が付けられる、大事な箇所になるっちゅうことよ お前は、人生経験が足らネエ!サクラ、明日から地方巡業して来い!!一皮剥けるまで戻ってくんナ…」 某、小学校体育館 「皆さん今日のお噺、[饅頭が怖い] 面白かったかな? お兄ちゃんも、まだまだお勉強中です。 もしお話で分からないところがあったら、質問 受けますよ……」 「サクラお兄ちゃん、面白かったけどネ、お饅頭が怖いなんて、何か変だよ、頭が悪いの? その二人は馬鹿なの❓ 」 サクラは、絶句した!(頭が悪い 馬鹿なの トホホ……) サクラは、より一層、経験を積まねばと、心を燃やす。 彼方此方の巡業先を駆け巡り、時には、演芸場の中に在る蕎麦屋内で,小噺を披露する為に、一席を設けてもらう等、朝夕、修行に明け暮れた。 宿では、師匠の次に尊敬する[春風亭.一之輔の噺全集]の動画を観ては、日夜勉強し続け、心を燃やす。 サクラは、東北の巡業先に、一番安い鈍行列車のローカル線に乗り、一日掛けて、やっと山形県蔵王に着いた。 もう日も暮れる頃合いで、サクラは巡業先に連絡を取り、近くの安い宿を所望し、数日間の予約をしてもらう事を取付ける。 サクラの荷物は、リュック一つ、舞台の衣装と、下着と、動画全集と"薮から坊"師匠から旅費として貰った数万円、この金が尽きるまで修行は続く、、、、、、師匠には、舞台経験の後、随時、報告を入れていた。 蔵王には、大学の時、友人と訪れたことがある。その時は大雪山の山並みが続く大パノラマだった。 今は、春本番を前に、山間の残雪が幾らか残る風景を見遣る。 落語家として、まさかの再来訪、サクラは、成功を修める事を願い、一皮剥ける為に、一層、心を燃やす。 宿までは少し距離がある。街道沿いに暫く歩きながら、ついでに何処かで、食事する為、サクラは手頃な店を探しながら、ひたすら歩いた。 駅近から離れる程、見渡す限りの畑と山並みが広がり、食事処の看板一つ見つからなかった。 唯、途中の民家に、コンビニの旗と看板が、申し訳なさ気に掲げてあるのが見えた。しかし、後は何も無い! サクラは、駅近で営業していた店で済ませば良かったと、少し後悔していた、、、、、、、アッ、あったワイ! 遠くに、蕎麦屋の、紫の暖簾が風に旗めいているのを確認し、ホットし、歩きを早めた。 すると、直ぐ目の前の建物の横で、苦しそうな大きなお腹の女性が、片膝を着き柱にも垂れ掛かっている。 「大丈夫ですか? ご主人か 付き添いの方を呼びましょうか?…」 「えぇ 急に痛くなって、主人は夜にしか 帰れませう あの,す,すみ、ませんが、それ 其処が家なんです 中に、息子が 居る,のです ハアハア……連れて 行って,下さいま,せんか? 家で、救急 車を呼びま、す ハア〜うぅ」 「あー、はい分かりました。取り敢えずお家へお連れしますね、サア〜捕まって、ゆっくり歩いて そうですよ」 サクラは,そばに落ちていた牛乳とシュウクリーム一個が入っているコンビニの袋を拾い上げ、時々襲ってくる痛みに耐える妊婦を抱えた。 二重扉の玄関(豪雪予防)を開け、妊婦の言う通りに炬燵がある居間に入り、近くにある座布団やら、炬燵布団等を掻き集め、そこの上へ妊婦を寝せた、、、、、、、、、 「あゝ〜ハアハア…ありが,とうございま した 直ぐに,病院に 行きますから、ハア……と,隣りに四つの、息子、が、マコトが…うぅうぅ、ハア…」 女性は、身体を反り返り、またもや,激痛だろうか、苦しみだした。 「お 奥さん! マコト君、おきてますよ、連れてきますか? その前に、矢張り先に救急車を呼びましょう!……その電話、お借りしますよ…お、奥さんの名前と住所を教えてください! 」 「もしもし?ハー、そ そうです 原沢 加奈子と言います。 住所は……、ハイ、凄く痛がってどんどん酷くなっきてます。兎に角、大至急、来てください!! 」 「加奈子さん、もう直ぐ救急車が来ますからね、辛抱ですよ! 救急車が来るまで私が付き添いますから、何でも言ってください! 」 隣で寝ていた坊やのマコト君が、ママの所に寝起きの顔で、半べそかきながら入って来た、、、、、、、、、、。 「ママ、ママ〜おっきちてー、トウタンは?いちゅかえるん? ウエーン、ママ、ちんじゃダメー……」 サクラは、不安で大泣きする,マー君をあやし、母親が、息子のオヤツに買ったと思われるシュウクリームを食べさせ、ポットのお湯を冷まし、マー君に飲ませた。 加奈子さんにも、白湯を進めながら、サクラは、救急車の到着を、一日千秋とやらの思いで、待っている。気を揉み手を揉みながら、、、、、、、、、、 その時、妊婦の加奈子さんが、絶叫する❗️ 「う う、産まれ〜る〜⁉️……は、破水、した みたい で す もう ダメです」 サクラは,壮絶なシーンを目の当たりにし、緊張がマックスとなり、声にならない声を上げ、妊婦に対し、訳の分からない語録を並べ、叱咤激励する!! “ 加奈子さ〜ん! 頑張るには早すぎますよ、お出しにならないでええ! それで、えぇ、マー君の夫のお父さんは、何言ってやがる… イヤ ご主人さんは、今はどのへんすかねえ…… えぇええい、分かりやした❗️ 矢でも鉄砲でも持って来やがれ! (馬鹿 何をとっ散らかってやがる サクラ 落ちつけ! ) 加奈子さん、分かりました! 出しましょう!産んだ経験はありゃしませんが、アッシが手助けいたしやす! “ その時、救急車に乗り込んでいる救急隊員から連絡が来る、、,サクラは逼迫している妊婦の状況を告げる。 すると、、、、 「それでは、緊急の場合に備える準備をして下さい! ご主人(エッ…),落ち着いて聞いてください! 到着は、残雪の山を越える為、少なくとも十分は掛かりそうなんです。万が一、間に合わなかったとしても落ち着いて処理してください! 」 "このまま電話を繋いだままにします…“ 「直ぐに手をよく洗い、お湯を沸かし、タライに入れておいてください! ご主人、大丈夫ですか? 落ち着いて聞いてください! お産は自然なことですからいいですね… 赤ちゃんが出てきそうなになったらまた説明します」 “”"ウウッ、ヒー、ヒー、フー ヒーヒー、フウ、、、、、“” 「加奈子さん! 御呪いですね、了解しました、一緒に唱えます❗️ ヒーヒー、フー、フー、ヒーヒーフー……えええ〜産まれる⁉️」 加奈子が、サクラに、自分の後ろに廻り、背中を支えて欲しいと自分に手招きし、項垂れ懇願していると思った。 左手でマー君を抱き、妊婦を背中から挟み込み、体制を整え、痛がる腰を指示通り摩る、、、、サクラは妊婦の加奈子が、時折、極度の痛みに耐えかね、直ぐ隣にあるサクラの太ももを、ギュウギュウ抓りまくりした過酷な痛みに、、、、 (修行! 此れも荒業だ! 心を燃やす 修行なのだ!)と、漫然と堪えていた、、、、、、、、、、もう限界だあー、ヤバ、産まれそう❗️ その時、二重扉を勢いよく開け、救急隊員二人が治療カバンや清潔なタオルを数枚持ち、悪戦苦闘の私達、家族の居間に、駆け込んで来た。 「原沢 加奈子さん 私は助産医です。 安心してください! もう出てきてますから 大きく深呼吸して合図をしますから、力んで下さい! ヒーヒー、フー、力んで!! ……」 “オギャー………“ 「元気な女の子ですよ❣️ おめでとうございます よく頑張りましたね、お父さんも! 」 その後、産後の処置のため産科に搬送された。勿論、マー君を連れ、救急車にサクラも同乗した。 ***〜 出産予定日が. 五日も早まるとは、家族も誰も予想出来無い事だった。 本物の父親は、北海道の出張から、この日の夜には帰宅する予定で、次の日から暫く、休みを取る予定になっていた。 サクラは、かわいい元気な女の子の赤ちゃんを見るなり、嬉しくて、嬉しくて感極まり、涙目になった。 (人生って言うやつは、粋な計らいをしてくれるじゃないか? 一生分の感動をもらったワイ! 八百万の神様 ありがとうござんした) 鳴門ゑ 一門に戻り、数ヶ月後 一通の手紙が、サクラに届く。 【先ずは、娘も妻の加奈子も、日々、健康状態も良く無事に過ごしているご報告と、通りすがりのサクラ様に、多大なご負担をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。最後まで妻に寄り添い 、お世話いただきました事、一生の恩着である事は勿論のこと、私共家族は、ひたすら感謝しかなく、どうお返しすれば良いか見つからず、これ程までの御厚意に対し、御礼の言葉も見つかりません。 唯、サクラ様の噺家と言うお仕事柄、地方巡業中の天変地異の出来事として、サクラ様の噺のネタにお使いいただき、お返しの一つとして役立つならば、幸いですし、私たち家族も生涯、幸福感で満たされるでしょう! 又、貴方様のお陰で、スクスクと育っています♪'サクラ''も、名前の自慢と、なる事と信じます。本当にありがとうございました。 原沢 雄介、加奈子】 出演者の肉声や表情、息遣い、臨場感が、どの席からでも伝わると評判の演芸場で、一際、鬼才を放し、毎回の歓喜と拍手の渦に迎えられる、師匠がいる。 その名は、 『 鳴門ゑ さくら吹雪 』 完
地下室のマジック
ジョウジは、頭を抱えていた。母親からの自分への再三の結婚話しに、閉口していて,既にタカが切れそうな程に切羽詰まっていた。 「ジョウジ、ワインセラーの地下室が有る家、探していた理想のハウスが見つかり本当に良かったワ、 マミ〜も早く観てみたいわ!立地も中々生活しやすそうだし、外観も悪く無いと思うけど…。 モダンな造りと言えばそう、そうだわよ、写真だけじゃ分からないから、近々其方に行くわ!! 実はネ、合わせたい人がいるの❣️ジョウジ、今度の女性は特別な人よ! 話を聞いたら、驚くわよ!貴方と同じソムリエなの、話も合うし美人だし、〇〇〇college卒で才媛よ!もう最高なんだから、まず話だけでも聞いてチョウダイナ❗️ 分かってるわね、もう十年になるのよ、 ワインソムリエに昇進してから、ワインの試飲大会や、年代産地別試飲コンテストでも、売れ行きに関わるジョウジの評価を、数多のワイン製造会社、関係者が固唾を呑み待っているなんて、 貴方はもう、押しも押されぬソムリエよ! 無くてはならない第一人者になってるワ、マミ〜は嬉しいし、自慢の息子よ。 だから今度こそ、マミ〜の願いを聞いておくれ!アタシも、もう時期七十になるの、パパが亡くなってから、貴方の先々だけが心配で、夜も寝れない位にネ。 兄弟で、アナタだけなんだから、安心させておくれ!早く良い伴侶を得て、可愛い孫を抱かせて頂戴ナ!! 数々の素晴らしいお話を蹴ってしまって、気付けば貴方、三十九才よ、過ぎた事は縁が無かったとして忘れるわ、、、、ダカラ、今度こそ決めて欲しいのよ!今度の方を逃したら、もう貴方、一生結婚できない❗️ 後悔することになるわ、もう現れないわよ!、、、ジョージ❗️聞いてる? 、、、、、、、、、、 「母さん、俺は、イヤー実はいるんだよ!好きな人、そうアイラブ〜だよ❣️ もう一緒に住んでいる。ゴメン母さん、黙ってて、お互いに確かめ合う時間が必要だったんだ。 今、打ち明けた。ウェディングや入籍は未だ未定サ、でも必ずするよ、落ちついたらネ。 だから母さん!もうこれ以上の紹介は終わりにしてよ!!此れからは、ママの好きなことに目を向け、人生を楽しんで欲しい、、、、、、、 一週間後の某日 「ママ、いらっしゃい! 良く来たね、此処が僕の城、イヤイヤ 僕と彼女の幸せの城だ! 」 「彼女は今、ママに出す🍷ワインを地下で音楽をかけながら選んでいる。今呼ぶから、座って待っていて 腰の具合はどうだい?…そうか、ソファーの方がいいよね 楽にしてて、彼女を呼んで来る」 地下室から出て来た女性は、驚くほど背が高く、ピンクのセーターとlong スカートをはき、細身だが何処か、しっかりとした、子宝に恵まれそうな肉体を持ち、blondヘア〜が良く似合っている。美しい微笑を見せながら現れた。 彼女は、手筈良くbottleを開け🍷ワインglassに注ぐ。プロ顔負けの手際の良さで有る。 「お母様、初めてお目に掛かります。カレンです。ご挨拶が遅れまして失礼いたしました。 ジョウジとは、もう直ぐ一年になります……アー、そうなんです。ジョージさん程では無いですが、一応ソムリエの勉強中ですノ。ジョージに日々指導を受けていまスワ。 マア! お母様、そんナア〜ワタクシなんか、まだまだです、ホホ…ジョージ何してるのかしら?お母様をほっといて、ワタクシ呼んで参りますネ」 「ママ、彼女どう! 気にいってくれた?…そうなんだよ一緒に仕事しているんだ…これ! ママはroséのが好きだったよね、観て年代! これ最高に美味しいロゼだ、ホンノリ葡萄の香りかし、飲み口は爽やかで、微妙な甘味が有る。塩加減が効いたチーズがとっても合うんだよ 幾らでも違うワイン🍷用意してるからね、ジャンジャン飲んでよ! 」 ジョウジが引っ込み、少しして、チーズを乗せたオードブルを、カレンが運んできた。 「ママ,イヤンウホん、お母様、足首の痛みは引きましたか?…アッ,ホラ、自転車で転ばれ、足首を捻り痛かったと聞いてましたから…それは、良かったでしたワ、エ〜と、彼は多分トイレかしら?きっと。 エエー何と? ママ…様、お料理なんて、ジョウジに叱られますから、彼が後で,お送りする時に、お二人でお食事される事でしたから、私は余り夜は頂かない主義なものでし、、て、、、、 ハア〜 チキンは有りますけど、トマト、勿論,有りますわ……承知いたしました、ワタクシがお手伝いをさせて頂きます」 ママの手作りのチキン🍅トマト煮のチーズ載せ焼きが完成し、カレンがTableに運び、並べる。 料理が完成するまでに、カレンとジョウジは何回も、その場を去り地下室を行き来した。 「ねぇ、カレン? 間違ってたら悪いんだけど、もしかして、ベイビー👶❣️ 貴方のお腹に宿しているんじゃないのかしら?…そうでしょ❓ 地下室に何度も降りていってたし、可笑しいナアってずっと思っていたのよ。間違いないワ、きっとそうだワ!! チキンの匂いがキツいわよねー、気持ち悪いって言ってくれたらいいのに、ごめんなさい、気が付かなくて! 地下のトイレて、吐いてたのね、だから、食べない主義だなんて言ったのネ…」 ママは断固として思い込み、思い切り自分の想像を膨らませていた。 (此の方の 有る意味特性である) カレンが違うと言ったところで、ママは思い込んだら命懸け、唸りまくる。 「直ぐに、ジョウジを呼びなさい!! 二人揃って、ちゃんとマミ〜に報告して頂戴ナ❗️ 」 カレンは仕方無く、彼、ジョウジを呼びに地下におりていった。下からbossa novaのメロディが軽快に流れている、 、、、、、、、、、、、、、、、、 数分後、🚪doorを開けて、出て来た ジョウジ❓カレン⁉️の姿に、ママは仰天し、眼を見開き、口をパクパクしながらソファ~に倒れ込んだ。 ブロンドのカツラを外し、化粧した顔に長いつけまつげが片方だけ付いたまま、赤いルージュが、唇からはみ出し、宛らピエロの様? 彼のロングスカートの端のジッパーが壊れ、脱げなくなったのか?斜めに引きずりながら、現れた。 [ ママ……ママゴメン❕俺、結婚は考えていないんだ。女性が怖いんだ、昔、ママも知ってるよ、 学生の頃とっても好きだった女性、そうさ、結婚したいと思った女性がいた。 そう,年上の女性サ、僕は本当に彼女にのぼせていて、何も知らなかったんだ……七つ年上の彼女は結婚してて、子供もいたんだよ、俺は彼女に弄ばれた。其れから、女性がダメになった。 もちろん、努力したよ、カウンセリングも受けた……ママの為に治したいと思う。 今はまだ一人で、やっていくよ! ママ、大好きなワイン達に囲まれ、俺は、結構幸せなんだよ…でもいつか心底好きな女性が現れたら、考えるよ! だから、ママ、其れ迄、長生きしてよ❕ マミ〜、それまで、元気でいてよ、愛してる❣️ 完
青年兵士と少年
ドロップス缶🥫 終戦を迎える一月前、既に沖縄が落ち閃光は本土に迫り来る、戦況は著しく厳しい。 村まで行かないと民家も無い何処までも続く田畑の一筋を開拓し、一機づつの発着可能なこの小飛行場の滑走路とした。細長く伸ばすことで周りの農地に溶け込ませている。上空から見る敵機に目立たぬ風情を醸し出していた。 飛行場の近くには、小高い丘状の土豪が、幾つも掘られて有り、これも又、飛行場の滑走路の存在の目隠しをしている。 そこの一つの土豪の上に登り、低学年か、若しくは就学前のあどけない少年が、おもちゃの壊れた双眼鏡を覗きながら毎日飛行機を眺めていた。 東山春樹、十九歳、明大ニ年の時、学徒出陣し、陸軍航空隊所属となる。 ト号 "特攻“ 要員として志願し訓練を受ける。昨日、硫黄島に向け、敵国軍艦撃沈の策を受けた。よって、一両日中に軍の確かな命が下される。 春樹は、暫く現実逃避の時間は有ると見込み、前より気になっていた年回りと面立ちが、何処か弟に似通っている小さな少年に、声を掛けてみたかった。仲間と酒を酌み交わすのは、その後にしようと思う、、、、 「君は 昨日も一昨日もここに居たね、飛行機好きなのかい? 」 「うん すごく好き 格好いいもん! お兄ちゃんは、そこから飛ぶためにきたの?……あのネ この間ネ、そこの飛行機がネ、僕のとこに飛んで来てもうびっくり❗️僕にぶつかりそうだったんダ!!! もの凄く大きな音で、僕の頭の直ぐ上を何回も、何回も越えて、海へ飛んでいったんだ! それも沢山、幾つかな? イッパイ、イッパイだよ。 飛行機が小さく小さく蟻サンになるまで、ズズーと見てたんだ」 少年は、レンズも無いヒビが入ったおもちゃの双眼鏡、{割と経済的に裕福な家庭の子のオモチャである}を持ち上げ得意そうに話す。 「僕も そうだよ飛ぶよ! 多分 二、三日中にね。偉い人が飛べって言ったら直ぐだよ…… いいかい? ホラ あそこ! 橙色に見える灯台が見えるだろ、そのずっと先の海の向こうに、硫黄島と言う島があるんだよ、兵隊さんは皆そこまで飛んでいくんだ。 凄く遠いんだよ! お兄ちゃんは、途中で故障しないように、あの兵隊さんみたいに、毎日点検してるんだよ」 「いおーじま? 無人島なの……楽しい島なら、僕も行きたいなぁ〜 でもさぁ、みんな何しに飛んでいくの❓ たくさん飛んでいった飛行機は、いつ戻ってくるの? だって、ここが寂しくなっちゃうよね、お兄ちゃんは帰ってくるよね❓ 」 「あの島までは遠いから燃料 アッ わかる? 飛行機が飛ぶための力の元、ご飯を食べられなかったら、元気なくなるでしょ、飛行機も同じなんだ。帰ってくるご飯が足らないから、皆んな帰れないのかもな……きっとネ」 少年の名は、『本郷 ヒロキ』と言った。 どうやら、近くの村に住む祖父母と住んでいて,この近くの農地で野菜等を作り、自給自足の生活をしている様だ。 両親が迎えに来るまでの一時的な疎開のようである。少年のお父上は、公的立場の方らしい、なんとなくだがヒロキ少年の話しから想像できた。 遠くから,ヒロキの祖父母だろうか、手を振り孫を呼んでいるようだ。籠いっぱいに採れた野菜を入れ、荷車に積んでいる。 孫と一緒に居る春樹に、老夫婦は帽子を取り、深々一礼する、、、、、春樹も礼を返す。 「ヒロキ君 ドロップス好きかい? …この缶🥫知ってるだろ、島に行くお兄ちゃん達に分けちゃったからサ…少ししか残って無いんだけど…… 何だ何だ、四個しか無いなあー ゴメンナ! この缶ドロップス、今はもう作ってないから大事にしてたんだけど、サヨナラする兵隊さん達に配ったんだよ、そう 力が出るようにってね。 そうだ、明日も来るかい? ならお詫びに、お兄ちゃんが珍しくて凄く美味しい缶詰め持ってくるから、約束ナ」 と言うと、春樹は布肩バックから、ノートを出し、一枚綺麗に破りとると、急いで、自分の名前と一飛曹の階級と、所属を簡単に記しヒロキ少年に渡した。 少年の祖父母が、自分を何処の誰か気になられたら申し訳ないと、気遣ったのだ。 嬉しそうな顔のヒロキは、もらったドロップスの中身を出し、三粒だけズボンのポケットに入れ、後の一粒を缶🥫に戻し、春樹に返した。 「あのね おじいちゃんとおばあちゃんと僕の分、残りはお兄ちゃんの分だよ! 飛んでいったお兄ちゃんたちも、みんな食べたんでしょ❗️ お仕事終わったらちゃんと帰れるようにって、だからこれは、お兄ちゃんの分、力が出るなら絶対食べてね…… でもね、このドロップスの空き缶は明日、僕にください! 飛行機乗りのお兄ちゃんとお話ししたって、迎えに来たら、お父さんとお母さんに話すの、これもらったんだって……… 顔を赤らめ、嬉しそうに話していたはずのヒロキの顔が、一瞬曇ったのを、春樹は見逃さなかった。春樹は少年の手を握り、肩を軽く叩き、 「明日、遅刻するなよ! じゃぁな、おじいちゃんおばあちゃんに、よろしく言ってくれ! 」 小さなお客の少年は、会ったときの元気と笑顔を取り戻し、走って行った。 その夜、少年の祖父が基地に訪ねて来た。春樹に対し出征前の時間を、一人寂しい孫に割いてくれたことへの礼を述べたいと言い、野菜を籠いっぱい持参してきた。 ヒロキの両親は、三ヶ月前、三月十日の東京大空襲で、亡くなったことを知る。兄弟も無く一人きりになった孫には、酷で辛く未だ何も知らせていないと話した。 ヒロキの父親は代議士だったそうだ。最後まで、秘書官の母親と共に、民の誘導と救出に尽力され、その後,逃げ遅れ辺りは火の海になっていたそうだ。 春樹は、ヒロキ少年の、曇り顔を思い出し、幼い少年の小さな胸の奥に、何の連絡もしてくれない両親の不穏を、少年の湧き上がる不安を、春樹は確実に感じていた。 たとえ通りすがりの縁であっても、これからの小さな少年の苦しみを鑑み、春樹は自分の事の様に、胸を痛め涙した。 その夜は、中々寝付かれなかった。 自分の死が家族にどれだけの代償を払わすのか、初めて真剣に考える。 (自分は、ト号" 特攻"に志願した時から、覚悟の上の事であるから、怖く哀しく足が震えようが、土壇場で負け犬のように逃げたくなったとしても、皆、自分自身の問題だ。 最後に、自分は如何したいか?矢張り無駄死にはしたくない❗️ 万が一に、自分の砲撃により、本土の家族が生き延びることが出来るならば、迷わず闘い、散る…) (しかし、家族は如何か?大好きな兄の尊厳死を、七歳の弟が讃えられる筈も無い……もし今、願い叶うならば 幼い弟に色んな話しをしてやりたい、戦死した父の代わりに❗️ ) カズオ、心して聞きなさい。 第一,これから先、食べていくことも大 変になるだろう。でも何とかして 生き抜け!生きてくれ! 第ニ,父が死に、兄も居なくなる。妹と お前を抱えて母が大変になるから 母さんを助けろ!我儘は少しだ。 妹はお前が守れ。 第三,立派な大人を目指すのでは無く, 自分軸を持ち、他人の痛みや悲し みが分かる本物の男になれ! 最後、これらは皆、生前の父親の 言葉でも有り、自分に絶えず投げ かけている人生訓です。参考まで 其れから、私の死を必要以上に、 悲しまなくて良い、褒め称える ことも要らない。 (唯 言える事、言わせてもらうなら、何人が死を持って尊しとするならば、最後に 我 家族を守る為にぞと思いし散ることぞ、私の本懐で有り本望である。 いつか戦いの無い平和な日本国に、と祈る!! ) 『 追記、カズオが小遣いで買ってくれたドロップスの🥫缶、ずっと大事にしまっていましたが、飛び立つことが決まり、思い切って全部食べました。お美味しく頂きました。何故か?カズオの味がいたしましたよハハハ。本当に嬉しかった!ありがとう!! 』 早朝 出撃命令が発せられる。春樹の機は十ニ時間後、 【明朝、〇〇時、方位〇〇度,編隊機七機、飛行隊結集】変隊長、東山春樹。 春樹は,この時こそ、自分の死が現実化したことを思い知る。得たい知れない恐怖が、全身に駆け登り、脚の震えが止まらない。残り少ない時間を無駄にしないよう飛び立つ準備で、自分を鼓舞するしか無い。 忘れてはならないヒロキ少年との約束、春樹は軍からの特別支給品の、魚缶、九州の工場で念入りに作られた良質の赤飯の缶詰を持ち、土豪の前で少年を待つ。 ヒロキ少年は、こなかった。少し気にはなったが、何か急な用事ができたのだろうと考え、暫く待ち,諦めて魚缶と赤飯の缶詰、そして、空のドロップス缶を土豪の側に袋に入れ,簡単な手紙を添えて、置いた。 春樹は、残念な気持ちもあるが、毎夜毎夜の空襲が気掛かりだった為、少年に会えなかったことより、祖父母様と少年の現在が健やかであることを祈り、ヒロキの住む村を見やり、思いを込めて敬礼する……… 特攻隊の火蓋が放たれた。 旧型機の零戦に、片道だけの燃料を積み、 一機、又一機と、続けて離陸し、騒音と煙の中をワサワサと飛んで行く、、、、、、零戦は七機、春樹は編隊長として、全ての機を確認し、最後に飛びたった、、、、、、 田園の手前の土豪の上に子供の姿,発見⁉️ドロップスの空き缶の口に細長い枝を差し込み、小躍りしながら、大きく左右に缶を振っているヒロキと、その後には、杖をつく祖父と手を添えて介助する祖母が、日の丸を振っていた。 春樹は、少し安堵した。お祖父様の腰痛らしき姿が,痛々しいくもあり、早くに完治されたしと願う。 又、缶詰が、ご家族にお渡し出来た事を知り、自分はもう、チリ一つ思い残す事無く,本懐を遂げられると、何やら清々しい気持ちになっていた。 春樹は,通り過ぎてゆく、ヒロキを見下ろし、“”ありがとう❗️“”'と叫び、万感の想いを込め、見えなくなるまで敬礼し続ける…… 完 人物名、エピソードは創作です。 重いお話を、読んで頂き有難うございました。 先人の思いや心根は真実であろうと思い、書かせていただきました。
赤いドレスの女,ジュン
『最後の贈り物』 一度、二人で行ったことがある市内を一望できるデートスポット、丘の傍に車を停め煌びやか夜景を、車の窓を全開し眺める、、、、 初秋の夜の風立ちは、思ったよりも爽やかで、少しばかりの涼風が肌を撫で通り過ぎる。 「ジュン❗️お前を一人にはせないよ、これからはずっと一緒さ…」 男は女を抱きしめ、唇を重ねる。 思いもよらない男の言葉に、彼女は、溢れ出る涙を止められなかった。 何処かで、ずっとこの日を待ち詫びていた。 そうだ!女はずっと彼の邪な恋慕の片棒を担ぐ駒でしか無かったから、、、、、不幸になるかもしれないと思いながらも、女は男から離れられなくなっていた。 あの夜、店で出会った日から、同じ孤独な匂いを感じ取り惹かれていく。 女の名は、ジュン 昼間のパートと夜は場末のスナックバーで深夜まで働く。普段は、ジャージ姿で過ごし、ノーメイクの彼女にすれ違ったとしても誰だか分から無いだろう,彼女は自分の存在を消して生活しているから。 「ガツガツしなくたって、おまんまが食べられたら、ええやないの! 安い給料やけど、内で働きヤ」 夜の店には珍しい位、人の良いママのお陰で、女を売らずとも生活出来ている。 「あんたスタイルもいいし、面相もなかなかの美人なんやから,着るものと化粧で間違いなく化けるわよ! 」 確かに、夜は豹変する。 ジュンの儚さが際立つ妖艶な美しさに、客は最初、誰しも息を呑む。 しかしながら、愛想も話術も無く酒を出しお酌をし、一通の仕事が終われば、俯き殻に閉じこもる。 ママに何度も嗜められるが、ジュン自身、酒場で働く身で在りながら客などどうでもよかったし、媚びるつもりもさらさら無い。 クビになるならそれも良い、それでも良くしてくれるママには申し訳ない気持ちは過る。片腹痛い。 そんなある夜、彼が息を切らし、倒れ込むように店のdoorを開けて入って来た。 全身に大汗を掻き、蒼白く透けるような肌からは、腐っていく屍の匂いを放出し、それはまさに逃げて逃げ切れず追い詰められた、息も絶え絶えの手負いの獅子。 ジュンは,お絞りとウヰスキーと冷たい水のデカンタを急いで用意した。 ジュンが注いだ水とウヰスキーを交互に勢いよく飲み干す。 ヤサグレ男の喉首を、バニラの香りがする水の雫が伝い落ちている。 流れる男の汗をジュンは躊躇いも無く、何度も拭ってやる。 男は抑揚の無い掠れ声で、'' ありがとう“ とジュンの瞳の奥を真っ直ぐに見つめながら言った。 徐に水割りを口に含むと、後は一言も話さず、唯々遠い目をし何を思わんや、ずっと一点を見続ける。 ジュンは、男の眼差しに限り無く哀しく狂わしい陰翳を見ていた。 その後、男は度々ジュンに会いに店を訪れ、ジュンも又、彼の来店を心待ちにしていた。 暫くして男は、ジュンの誕生月Ruby色(七月の誕生石はRuby)、『ピジョン.ブラッド』鳩の血の色“”と同じ、マザリケノナイ赤い色、周囲の色など跳ね除け寄せ付けない、美しい赤いドレスを贈る。 その夜、ジュンは愛される。彼女は身も心も歓びに打ち震えた。 (例え彼に愛する人、殺めてでも奪いたい女がいたとしても、 構わない❗️ この夜の幸せと、彼の愛は私一人のものだから……………) しかし、男がこの部屋に、再び泊まる事はなかった。 (彼の為なら何でもする、其れで彼が苦しみから逃れられるならば、アタシは大丈夫よ、どうせ一度は捨てた命だもの……) (アナタを匿い庇うアタシも同罪! 当然の報いを受けるワ……其れでもアタシは本望だし、望んで生まれてきた訳じゃない! 心配御無用ヨ) 長く薬漬だった男の命の灯は、残り少ないと知っていたから、支え続けるのか、男の頼みが犯罪に手を染めることだとしても、ジュンにNOと言う選択肢は無い。 ジュンは、誰とも付き合わず冷血女と揶揄われ、待ち伏せされ、暴力を受け警察沙汰になったことも有る。今の店の客の誘いも頑なに拒んで来た。 それは何故? 彼女の壮絶な過去のトラウマなのか?天涯孤独な身の上から来るものかは分からない! 唯、選べる人生を見失い,異常な程の闇の男を、愛する選択をした彼女は、もう引き返すことも出来ず、男の犯罪の渦に巻き込まれて行く… 有る殺人事件の報道が、地上波から流れてきて…………いた。 それからジュンは、かけがえのない日を迎えていた。 "'' 彼からのデートの誘い、犯罪の匂いはしない、初めて彼が私の為だけに心を配った時間!!“” 男から贈られたお気に入りの真っ赤なドレスを着て、彼からの誘いに身も心も騒めきながら、束の間の二人だけの時を過ごす。 ジュンは、初めて生きている幸せを噛み締める。 深夜のデートスポットの小高い丘の傍に車を駐車し、隠し持ってきた缶ビールを開け、一番親しい相手との遊び、腕をクロスし,お互いの口に流し込む。 「ジュン! お前をもう1人にはしないよ絶対に、これからはずっと一緒さ❗️ 」 男はジュンを強く抱きしめ、唇を重ねる。 思いもよらない彼の優しい言葉に、涙する。 彼女は,身体中で幸福感に酔いしれる。 強く抱きしめていた彼の腕が緩み、いつしかジュンの背中を優しく撫で挙げている、…そして、躊躇いも無く男の両手が素早くジュンの細い首を掴み,強く,しっかりと出来だけ一気に締めあげる❗️ モット、モット強く、息が残らぬよう苦しみが短くて済むように……………… こうするしか彼女を救う方法はなかったと、男は呟く。 “ 俺の残された時間も長くは無い、 俺の最後は、俺一人だけのものだし、誰にも邪魔されたくない! たとえお前であっても、全てを知るお前には、こうするしか無かった! ゴメンナ、ジュン!! 俺なりの落し前をつけたなら、必ずお前の側にいく、約束だ、、、、“ お気に入りの真っ赤なドレスを着ているジュンの顔から、煌めく滴が流れおちる…… カット見開いたジュンの瞳は、幸福の光で満たされていた✨、、、、、、、 完
kitchen,ハウス
“” 扇状 スキコ “”(センジョウ スキコ)、三十一歳で独身、住宅は新築一戸建て。身長百六十八でスレンダー, 小綺麗で整った顔立ち、父親の融資による二社のハウスメーカーを媒体とした建設会社で,インテリアデザイナーとして働いている。 性質は、人に優しく笑顔で接し親切で穏やか。仕事は絶えず冷静沈着で、父親の息が掛かるとは言え、流儀に基づくプロフェッショナルである。理不尽なクレームにも真摯に対応し、決して声を荒らげる事は無い。 スキコは,都心から少し離れた場所に念願のマイホームを建て、デザイナーとしてのノウハウを余すことなく発揮し、自分だけの城を持った。 とりわけキッチンには、全ての英知を結集して他に類を見ない仕上がりを求めた。 素材には、最高級の大理石を使用し、 輸入物の高級仕様の天火やコンロ, そしてグラスと食器を分けるニ種類の食洗機を設置し,四通りの水質と、高度な浄水システムを設け、コの字型で、 通常の2倍の幅と広さのシステムキッチンを作り上げた。 大理石のキッチンそのものが、家の中心を占め,存在感たるや、かつて見たことも無い程のものである。 都心から離れた場所であっても、元々ネットを媒介としている仕事が大半な為、不便は無い。少しでも広い土地が良かったからだ。 スキコは朝からキッチンに入り、 先ずは、特別なアルカリ洗剤で全てを洗い消毒し、乾拭きし、大理石の艶をかける。 朝食は、冷蔵庫の市販のヨーグルトと、冷凍のモーニングセットのエッグマフィンをレンジでチンし、自動“”コーヒー淹れたて“”の機械でコーヒーを飲む。 そして最後に,ほとんど使用していないキッチンを、洗浄し、また消毒し、乾拭きし,艶出しする。 そして、束の間の仕事を片付けて,ランチに出掛ける。 近くの、小高い丘の上に有る清潔感漂うブルーの建物のカフェに入ると、スキコはなるべく景色を眺めたいと思い、一番奥の窓側を所望した。 席に座ると、一面のガラス張りに映える紺碧の空の下、 樹々の合間にオレンジ色の屋根が覗いている。スキコは父親の伝で今の地位を得た身の上だがマイホームは自分の力で建てるのだと、頑なに結婚話も蹴って財を成し やっと建てた"我が城''マイホームである。 取り分け憧れだった理想の我が家のキッチンを思い浮かべ、幸せを存分に噛み締め乍ら、顔が綻ぶスキコだった。 仔牛のソテーとサッパリとしたレモン風味のサウザンドPastaサラダを味わった。 味もさる事ながら、盛られた容器がすべて、ポルトガル製、コスタ、ノヴァなど、センスが良いワとスキコの気分は上昇。 スキコは視線を感じ辺りを見廻すと、斜め後ろの一人席で、中年の男性と目が合い、男性が軽い会釈をしてきた。 ( アレ、何処かでお会いしたかしら?……あっそう!引越しの時に,声を掛けていただいた方だわ。ご近所さんネ) 「どうも、真前の装煉瓦造りハウスの主 “” 新井 タイヨウ “”です!、、、 イヤ〜ここでお会いしたのも何かの御縁、お近づきと言いますか,宜しかったら、お勧めのデザート,是非僕にご馳走させて下さいませんか?」 普通なら体よくお断りする所だが、高揚した気分の為か、男性の雰囲気が、彼女の好みだった、とかは知らないが、スキコは同席をOKした。 「ケーキの下の、こちらの皿❗️…これ、この国では、なかなか手に入らない品物なんです、ご存知で?そ、そうです、コスト、ノヴァの皿なんです。この滑らかな触り心地と程良い厚み、波形,そしてマリンブルーな色合い,タマラナイナア!…アッ、すみません、実は食器マニアなんです。まして、家には数千種類の珍しい食器が有ります。高額と言うのでは無く、デザインや希少価値のセトモノや硝子製品を集めています。 仕事はシガナイ弁護士で、今は民事裁判を専門に扱っています。五年前に妻と離婚し独り身になってから,食器にハマり集め始めました。唯のショウモナイ趣味ですよ、ハハハ」 スキコは勿論,自慢のキッチンの話を始めるともう止められなかったし、彼は常に相槌を打ち、只々真剣に彼女の話を聞いていた。 スキコは、そんなタイヨウの態度に感動し、ツイ、ランチの礼を兼ねディナーに招待した(してしまった)(汗)ʕ⁎̯͡⁎ʔ༄ スキコは、約束の時間の一時間前にはキッチンに立ち、大理石に合うクリーム色のフリルのエプロンを着て,先ずは念入りに洗浄し、乾拭きし、丸く丸く特殊なWaxで,見事な艶感を出す。 食材も午前中に一時間は掛かる都心の高級スーパーまで車を飛ばし、おもてなしの買い物は全て揃えてある。 約束の時間通りに、目の前の家に住む“” 新井 タイヨウ“”氏が,自慢のジバンシー洋皿と、バカラのグラスを土産に持ってやって来た。 中へ通されたタイヨウは、唖然として言葉にならなかった。 一階の建物面積四十坪に対し、半分近くキッチンが占めていて、余りの豪華さんに呆然とするばかり、それでも, 「す、す,凄いナア❗️素晴らしいですよ!!こんなキッチン初めて拝見しました。聞きしに勝る、ここまで存在感溢れるキッチンとは、驚きました!」 申し訳程度にダイニングが有り,スキコはディナー用に蝋燭と装飾したテーブルにタイヨウを案内した。 先ずは、シャンパン🥂で乾杯し、スキコは、キッチンの奥の小部屋に入って行き🚪doorを閉め、少しして、オードブルを運び、Tableに置き、又、奥の部屋に行き、暫くして料理を運んでくる、こんな感じで、繰り返し、繰り返し奥の部屋から、料理を運ぶ。 流石に疑問を持ったタイヨウが、 「スキコさん、奥の部屋はパントリーのようなお部屋があるんですか?宜しければ運ぶのをお手伝いさせて下さい! 私だけが、ひとり頂いているみたいで、スキコさんは余り召し上がっていないじゃないですか、何だか申し訳無い感じです。 其れに、、アノオ…、矢張りkitchenを汚したく無いと思われているとしたら、もしそうだったとしたら、私はとても理解出来ます❗️本当です。 正直に話しますが、実は私も家にある大事な食器は、今まで一度も使っていません、恥ずかしい話ですが、思い切って打ち明けます、、、、、私は紙皿と紙コップで日々飲食しているんですよ。 矢張り!引きましたヨネ」 スキコは奥の部屋の⇆往復で、大分疲弊していた。タイヨウの話しを聞くなり、直ぐに立ち上がり、最後のデザート🍮🍨が有るから、手伝って下さいと告げ、タイヨウの手を引き奥の部屋へと連れて行った。 🚪ドアを開けると、何とそこは、 トイレ!!トイレ付きバス風呂一体型の部屋であった。手洗い場の前に長テーブルを置き、全ての料理を並べ、レンジも配線し、温めて運んでいたのだ。 タイヨウは、予期していたのか? あまり驚くことは無く、“”私達は,似たもの同士かもしれませんね、これからも宜しくお願いします❣️“”と言うと、二人はお互いの顔を見合い、急に笑いが込み上げ、爆笑の渦にハマり、、、した。 後話 二人はその後、お付き合いが始まり、食事を作る時には、スキコが食器を持ち込み、タイヨウの家のkitchenで思う存分料理をし、食事を楽しんだとサ、、、、、、、 完
チェロ奏者と鯛焼き君
俺は、御徒町の大型の楽器店で働いている。 音楽知識も有り,どんな楽器でも大体は弾きこなせる。元々俺の専門はチェロ、暇を持て余す時や客の試し弾きの時等、有名な曲のアタマやサビ部分を演奏したりして、たまにアンコールに答え(アホか、自分)、素人客相手に自慢げに披露してみせている。 俺はこう見えても、プロを目指した事もあるし、一応音大卒。色々あり、途中挫折した。じゃ何故❓楽器屋で働いてるか?、そう,それは悩ましい…!他にやりたい事も無く、音大卒業まで多額の金を工面してもらった親の手前と言うか、何人にもなれなかった後ろめたさが、今も音楽に付かず離れず携わり、何より自分への贖罪としているのかもしれない。 時々俺は,楽器に使用するボアクリームや油の匂いのせいなのか,急に色々な過去の場面を思い出し、息苦しさを感じ、店から逃げ出したくなる。 今日も又、急に自然に触れたくなり,上野の公園を目指す。いつもは遅い昼休憩を取っているが,今日は,一番先に時間を取った為,腹は空かない。帰る時にコンビニにでも寄ろうと思う。 暫く歩き駅を通り抜けると,直ぐ目の前に有名な〈 鯛焼き 〉の店が現れた。 餡子が尻尾まで入っているという割と有名で、今も人が並んでいる。俺は急に心も腹も少しばかり、ホッコリしたくなり、コンビニに寄らず、鯛焼きを食すことにした。お茶を駅の出口で買い、ホカホカ鯛焼きを(一つとは言いにくい)二つ買い、青空の元、(鯛焼きタイムと〜シャレ〜こもうや)と、人のいないベンチを探す。 何処からか聞こえてくる曲、音源のボリュームを上げ聴いているのか?イベントでも在ったのか?兎に角,俺のオハコのヨハン、セバスチャンバッハの美しい旋律が、チェロの元々の音Kontrabassの重奏な音質とバッハの心地良い一定の rhythmに載せて、上野の森の公園の何処からか流れてきた。 二十六歳の俺が、今まで,演奏家連盟主催の弦楽四重奏や重奏、特にチェロのソロコンサートを数々聴いてきたが、上手いと思ったのは稀で、言っちゃ悪いが、まだ俺様のが勝っていると思うくらいのレベル,〇〇−−の背比べ的と言わざるおえない。 しかし,この日本、イヤ世界的に名を知らない者などいない優れた逸材であるチェロ演奏家、『橘 カイリュウ』だけは,別格だ。 海外で活躍しているが、最近では日本へ戻るとか,巷の噂で聞いている…。学生の頃、バイト代を貯め、彼のコンサートを追って、イタリアまで行った事もあるぐらい、俺がずっと崇拝している演奏家なのだ。 僕は、食べかけの鯛焼きを口に咥え、まだ温かいもう一つの鯛焼きと楽譜(休憩にはマイ楽譜を読書代わりに持参)を持ち、音の所在に近づいて行く。 完璧な音質に聴こえていた音源は,奏者が生で奏でていることが判明した。こんもりと緑が茂る木立から覗いた人、それはまさに青天の碧礫❗️上手いはず…だ❗️ なんと、“”“”橘 カイリュウ“”“”,三十八歳。何でこんな所に❓それも、生演奏⁉️俺は驚きの余り,勢いよく楽譜を地面に落す。 演奏者は、俺に気付き、「イヤー、申し訳無い!うるさかったですよね、この時間は、人も居ないと思い,音出しだけのつもりがフル弾いてしまいました。 アレ、貴方、ここの学生さん?[直ぐ裏手に名門G大が在る]違うのカナ、でも楽譜だよね,それもチェロの組み曲,君はチェロ演奏されるの?」 俺は、“”橘 カイリュウ“”に呼ばれ,一緒のベンチに座る。 カイリュウは、G大の特別招待講師として今から一番広い音楽堂で、教えるらしい、他の音大の生徒もくる大イベントらしいが、時間調整を間違えフランスから帰り着いたばかりで、大学へ行く途中のこの公園で,人も少ないし、急に音出ししたくなったのだと言っていた。 驚いたことに、カイリュウは、、、、 「その鯛焼き、餡子が尻尾までたっぷりと言う…店のだよね,買うか迷ったんだけど、こんなデカブツ抱えてチャァ買いにくいから辞めたんだ、やっぱり餡子尻尾まで入ってた?ハハハ」 俺は、すぐさま袋に入っている,ほんのり温もりがまだ在る,もう一つの鯛焼きを,差し出した、、、、。 カイリュウは、子供の様に喜んで食べだ。ホントに食べたかったみたいだった。きっと海外生活が長い為,日本foodが恋しかったのだろう。 もっと驚いたことに,カイリュウは、鯛焼きのお礼に、時間があるなら、一緒に大学へ行こうと俺を誘ったのだ!!それも、付き添いとして❗️ 俺は全身を震わせながら、起立し「エエッ!アッ、ありがとうございます」 楽器店ノ昼休み休憩中の身だと言うことなど、もはや忘れ去り,帰る頃には、仕事の事は異次元になっていた。 驚き以上に,カイリュウは、その講義中、俺にチェロを弾かせたのだ。 勿論、他の学生に混ざってだが、、, この時から、カイリュウは,俺のこと を、【鯛焼き君】と、呼ぶ!! 驚きを通り越して、カイリュウは,俺にもう一度、来年のG大の試験を受け大学院に入れと言う、講師も引き受けてくれると言うのだ。 勿論、過去の音大の時に起きた事故、有名大学講師のT氏のパワハラと暴力が引き金となり、指関節の疲労骨折を招いた。(実際に証明が出来ず訴えは不可) 指先の怪我で、試験が受けれず、一年留年となる。怪我はよくなったが、トラウマとなり、どの講師をも支持したく無いと、精神的にも経済的にも、打ちのめされ、それでも、チェロの技術は高い評価を受けていた為、卒業は出来たのだ。その事も話した上での,カイリュウからの提案だった。 プロになる為の登竜門は音楽家としての術だからと、、、、、、、、、、 その日に起きた人生のテンペスト’"嵐“”は、俺をもっとも高い壇上へと引き上げることとなる、、、、、 私の最も尊敬し,敬愛する恩師❗️ “” 橘 カイリュウ“”先生は、益々の世界的アーテイストとして名を連ねて行った。 それは単に,カイリュウ先生の途轍もない懐の大きさと,何人にも温かい心根の所以…であるからに相違無い! 完 追記 [テンペスト]とは、ベートーベンのピアノソナタ三楽章です。
僕らの マスク戦争
大三章 開戦〜❹ 僕は、辺りを見廻しながら、歩調を早め一気に校門を出ようとした。その時、校舎から続々と黒マスク軍団が、一斉に僕めがけて動き始める。 僕は慌てて走って逃げた。とにかく駅裏の路地で、追ってを少しでも煙に巻こうと悪戦苦闘する。やっと一人消し去ったと思いきや、暫く行くと又一人、又一人と増えキリがない。 疲労が身体の限界を超え、内なる悲鳴をあげる。しかし今は,ハクトとキョウコの為に自分を鼓舞し、逃げ切ることだ。 こんな時代に生まれ育った僕達の宿命なのだから⁉️ それからは出来るだけ大通りを目指し、ひたすら走り抜け人混みに身を投じる。 暫く彷徨、追ってが来ないことを確認すると、僕は仲間と約束している昭和の匂いがするカフェを,通りの中程にある商店の奥に見つけ中に入り友を待つことにした。 杉田は僕のゲー友でも有り、一度は断ったが、どうしても明日の黒マスクの決戦に行くと言う。 杉田は父親と二人暮らしだ。母親は三年前に他界した。時々父のとんこつラーメン屋を手伝っている。 杉田は進学をいちど諦めたが、父親と担任の前橋から説得され、邁進することを誓う。同い年の僕の頼れる友人だ。 カフェの昔風のメニューの中から、これもまた、懐かしいと謳うレモンスカッシュを頼み、それを飲んだ。レモンの酸っぱさが疲れた体に滲み入る。 一息つき、ずっと頭の中で考えていた、ハクトとキョウコ、(キョン❗️)が逃げ仰せたという真実、、、、、彼女との明日の約束は、果たして実行するべきか?危険が付き纏う… 絶対に行くと言う杉田や、他の仲間たちの安否?先が読めない不透明さと恐怖が、不安となり襲ってくる。 彼女とハクトを匿ったとしても、いずれにせよ二人が逃げ通せるはずも無い。 二人は、"逃亡犯"❗️ 母のミツコには、後で連絡しよう。何とか解決しなければ、前よりも酷いことになりそうだし、どっちみち、僕達も既に囚われの身なのだ。 現に逃げ場がない!! その時、携帯にたくさんのメールが知らない名前で送られてきた。急いで読む……… セオリズマイヒメ、、、キョウコ!!キョウコだ❣️ 安全を考え、新しい携帯からメール送信したのだ。どうやって施設を出ることが出来たかが事細かに記されていた。 ハクトもキョウコも無事で、今岡山の亡くなった叔父の知り合いの旅館に向かっていると……………、 逃亡の詳細 キョウコの家族は伝言通りに、施設の収容規定カリキュラムが終わる十時五十分、二人を呼び出し逃亡作戦を速やかに開始した。 収容機密保持法に依る,オート録音付施設内電話は使用不可。 個人の緊急に限り伝達は本部の許可申請を受理した場合により、本部からの指令に依る伝達可となる。この場合、キョウコの母が、適当な理由を考え許可申請をする。 同時に黒マスク警官が施設に直行する。万が一を考え、許可申請を出しておく事で、時間稼ぎができる。 黒マスク警官に化け、伝達の使者となってもらう重要な役回りを,背格好からもマッチしているキョウコの身近な叔父(父の三十二歳の弟)が引き受けた。 キョウコが言うには、黒マスクのバッチがあれば何とかなると、、、二センチ足らずのGOLDの簡単な円形で、小さな警察マークが真ん中に彫ってあるようだが、近づいて見ないと分からない位のものらしい。 似たものでも何とかなるから、大至急探してと言った。 隠し撮りした実際のバッチの写真が送られてきた。“🟠“ 僕は急いで調べ、ちょうど良い大きさの駄菓子屋のおまけの赤い丸バッチを見つけ出し、学校に行く前に急いでキョウコのお母さんに渡した。 お母さんは土産にもらった金箔を貼り付けて、娘のアクリル絵の具でコーティングした。 叔父さんは、そのバッチを黒いスーツの左襟に付け、黒マスク警察官として、伝達の手順を確認するためにも、実際に電話し対応の仕方を聞き、疑われないように練習したようだ。 いよいよ本番の時間になる。 警察署から歩いても行ける場所に施設の門があり、その近くに車を駐車すると、黒マスクに成りきった叔父さんが、受付の監視員の前に立ち敬礼し、{黒マスク警察は、手帳では無く、特別任務用バッチで確認し合う} 申請書控えを渡し、最後に左のバッチを見せ、用件を告げる。 「黒マスク警察本所からの伝達要請が有り、秘密情報の…………,個人情報保護法,傍受不可の為,玄関ではなく施設外横の出入り口に、以下二名を誘導願いたいとお伝えください。」 叔父さんは正面玄関では無く、数メートル左側非常用扉の前に歩いて行き二人を待った。 施設には、保護師(男性)と保護官(女性)が常務し、保護官の女が二人をドア近くに連れてきた。 保護官は、ドアの隣の明かり取りの窓から🪟、黒マスク警官を頭のテッペンから爪先まで眺め、最後に左襟のバッチをジーッと確認すると、二人に囁き、扉のロックを解除したまま後ろに下がり伝言が終わるのを待つ。 キョウコは、ハクトを扉の前に立つ黒マスクの叔父に引き渡すと “”直ぐに後ろに立つ保護官に向かい、何かを告げる❓、殴る⁇、、、〜〜から、急いで外へ出てドアを閉めた“” ハクトとキョウコは、監視員に見つからないように隠れながら、叔父さんの後に続いた。 監視員に一礼と声掛けしている間に、二人は身体を低くし通り抜ける。直ぐ様、駐車している叔父のsilverの車に飛び乗った。 キョウコの母から預かった当座のお金と岡山までの往復切符🎫とリュック (新しい携帯と二人の着替え) を渡し、無事に電車を見送り、叔父さんは任務完了となる。 “” 後日談から、実は金箔が途中から剥がれそうになっていたそうだ。 元の駄菓子のオマケの赤色が風で見え隠れし、保護官に見破られるのではないかと、叔父さんはドキドキして冷や汗💦ものだったそうだ! 実際に近間で見られたら、間違いなくアウトだったと、、、、、、。“” これが粗方、キョウコからの脱獄劇の様子だった。 しかし何か不可思議な気がしてならない⁉️ (なぜ?捕まらずにスムーズに外に出られたの?保護官にキョウコは、なんて言って説得したの?教えてくれよ❗️どうやって外へ出られたんだよ❓)“”“”“”。 杉田は今日の午後、父親の仕込みの手伝いで、午後には先に帰っていた。 その為、手配リストからは免れていると思う。 ラーメン屋は週末は掻き入れで深夜まで営業する。 僕は、ラーメンと炒飯を店でご馳走になり、杉田の父親に挨拶し,そのままニ階に上がり明日の心配をしながらも,黒マスクとの激走による極度の疲労から、倒れる様に寝落ちした……………………、…(( _ _ ))..zzzZZ………………アッ、、、ここは、古い神社⛩?大和神宮だ。 僕は、導かれるままに境内に吸い込まれていき、禊の間を通り抜け、奥の祀り場へ着くと、キョウコが古い木の唐箱から、紅色の字体の📜巻物を拡げている。 “”“”イザナギの神セオリズマイヒメ懐妊沙汰有候、神童『白兎』君子命名為る。水の天神女宮内赤子、是共封じ込めし理に在ら不。先の世の大和大納言宮祀りし継承姫、巫女の紫女現し,神の童『白兎』称、我が子君臨示、天地天命掛け御守り役目候 “”“” 白兎、、、ハクト⁉️水の神懐妊、、、封じ込められた?、先の世の後継者のヒメ巫女、、、キョウコがハクトを死守❓守りし役目である、………………………。 …キヨメタマエ、ハライタマエ……、キョウコが呟く,すると、どうしたことか?頭を抱え込み、唸り声を挙げその場に崩れ落ちる((キョウコ⁉️どうしたんだよ〜岡山で何があったんだ))、、、、、、、(( _ _ ))..zzzZZ…… …………………(-_-)zzz…………… …こ、ここは、何処た?僕は訳がわからないまま前に進む。 どこを見てもクリーム色の壁,また壁、通路には花一輪も無い!なんて殺風景な建物なんだろう?と思いながら暫く行くと、壁紙の途中の扉が突然開いて人が出てきた。 なんと❗️ハクトだ!キョウコと一緒に濃紺のパンツと白のワイシャツを着た女と出てきた。 建物(収容施設)の者らしい女は、書類の入ったファイルを持ち、二人を連れ出し、玄関が見える明るめの通路に出る。 それからすぐ右に曲がり、北側の暗い通路まで来た。少し陽が入る縦長窓(明かり取り窓)の直ぐ横に出入り口がある。 非常用扉に見えるその扉🚪の前に二人を立たせ、髪を黒ゴムで一つ縛りにしている四十代後半の施設の女が、横の窓から外に立つ黒マスク警官を、少しの間観察している。 そして徐に、「伝言を聞いたら、直ぐに自官の元に戻る事。伝達者もこちらの警官ですから、妙な真似は二人の為になりません、よいですね!」 施設の女が扉の施錠を解除し、キョウコに開けるように促す。 彼女は頷き,何故か、辺りを確認するよう見廻し,ハクトの手を引き扉🚪を一気に開け怪しい警官にハクトを預けた❗️ キョウコは伝言を聞かず徐に扉を閉める!!そのまま扉を前に、両手を重ね合わせ⦅右人差し指を天に向け))、、、、キヨメタマエ、、、ハライタマエ、、、ノタマワク、、、キヨメタマエ、、ハライタマエ、、トナシ、、ナリ、と,一心不乱に高音と早口で、幾度も唱え………る 「何してる!!!黙りなさい!戻れ❗️」女がキョウコを捕らえようと手を伸ばそうとしたその瞬間、キョウコはいきなり振り向き女の顔に手を翳す、、、「ナニ⁉️何を、シ、シタタダダダ!!……」 “”『キ、キョウコ⁉️…』と,その時、上から見下ろしていた僕は、一瞬、キョウコと目が合った気がした……“” 施設の女は、その場で固まり、動けなくなる。女の眼球だけが、恐怖でグルグル動いていた。 キョウコは直ぐに、ハクトと怪しい警官と連れ立って門の方角へ逃げていった、、、、、、、、、、(( _ _ ))..zzzZZ …………ガラガラガラ、一階のラーメン屋のシャッターを開ける音で目覚める。僕は、暫く放心状態だった。 (今のは夢❓イヤイヤイヤ正夢だ!そうじゃないだろう、リアル過ぎる。リアルタイムでは無い、やはり正夢か?イヤイヤ正夢は目覚めてから起きることだよナア〜) 僕は、その時,頭が変になりそうな気がして,無理矢理、自分を納得させようと思った。 しかし、時間が経つにつれ、真実を伝える夢だったと確信に変わっていく。 夢の中の出来事は,全て僕自身にも深く関わりが在るから、何かの力で知らされたのだと思っている。 最終章 ラスト開戦〜❺へ続く 大変長いストーリーを,お読みいただき、有難うございました。固有名詞、名称等は全てフィクションです。 表紙は色鉛筆で適当に書いています、ご了承下さいませ。