OSARAGI

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OSARAGI

激動の始まり

「司令。お戻りですか。」 副司令が司令官に頭を下げる。 「何が何だか。さっぱりだな。」 「ところで司令、先程不思議なことが。」 「不思議なこと?」 「はい。何故か先程、防衛隊の装甲機動車と乗組員と思われる隊員たちが死体で見つかったそうです。」 「なんだと?どこの部署の命令だ。」 「分かりません。その近くで、5号と、共に行動していると思われる少年の姿が防犯カメラで確認されています。現在川崎方面にどうぞ中だそうです。」 「なんだと!?直ぐに警察に連絡。世田谷区、川崎市方面の警備体制を強化しろ!」 司令が焦って声を張り上げる。 「は、了解。」 「なんか、最近変なこと多いよな。この前も隊員が1人、急にいなくなったのに上から捜索の許可、降りなかったらしいぞ。」 そんな噂話のような声が聞こえてきたが、司令官は先程のナヤ博士の話のせいで気にする事はなかった。 ガシャン。ガシャン。 5号と少年はついに神奈川県に入り、またしても人目のつかないような裏の道のそばにあった空き家に身を潜めた。 5号はまた自分の手のひらを見る。 手袋には殺した隊員の血が染み付いていた。 「また俺は人を殺したんだ。。。奴らは俺を撃った。俺は殺した。。撃たれたからだ。なのに何故。。。」 人を殺してしまった自分に恐怖し、ついに5号は涙を流す。 そこで少年が話しかける。 「兄さん、一体何者なんだ?」 5号は少年の顔をびっくりしたように見る。 「お前は俺が怖くないのか?」 少年はニヤっとした顔で言う。 「兄さんは俺を助けてくれたヒーローだ。怖いもんか。」 5号はその少年の優しさにまた涙をながす。 「俺、家出してきたんだよ。田舎からさ。東京に来た瞬間あんな事になって。」 「お前はなんで防衛隊に狙われていたんだ?」 5号が問う。 少年は笑顔で 「わかんねぇ。わかんねぇけど俺には兄さんがいる。もう怖くもなんともないよ。もう泣くなよ。」 「あぁ。決めたよ。俺はお前を守る。」 5号は少年の顔をじっと見つめ、そう覚悟を決める。 パシャッ。 少年は5号の顔にカメラを向けてシャッターを切る。 カメラの上部からフィルムが出てくる。 「よく撮れたな。こりゃいいや。ふん、ふんふふんふん、たがーためにーたたかうー。」 少年は機嫌良さそうに鼻歌を歌っている。 「行こう。いつまでもここに居ては見つかってしまう。」 「よし。どこまででもいくよ。兄さん。」 国家安全保障庁舎。 統合司令部。 「川崎市内にて、5号と少年の歩く姿が確認されました!現在パトカーと覆面が4台体制で追尾中。」 「よし、追尾を続行。副司令、ここ頼んだぞ。別名あるまで待機。」 「了解。」 司令官が早歩きで司令部から出ていく。 司令官が廊下を歩いていると、途中の曲がり道からナヤ博士も合流してくる。 「さて、始まるぞ。セリザワ君。」 「何をするつもりですか。」 「既に被験者は待機中だ。いつでも行けるぞ。」 「まさか、もうやるんですか。」 「当たり前だ。」 ガチャっ。 長官室のドアをセリザワが開く。 「待っていたぞ。さあ、始めようか。ナヤ君。」

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抑えられない力

「なぜ俺は同僚を殺して今も平気で生きているんだ。なぜ俺はあの時迷わずに同僚を殺せた。なぜ、、、、」 人通りの少ない道で被験者5号は、脱出時に隊員を殺傷した事を改めて思い出し、頭を抱えていた。 脱出時から頭につけていたヘルメット越しに頭を抱えてその場に膝から崩れ落ちた。 「やめろ!助けて!誰か!」 その時、少し遠くの方から、青年が助けを求める声が聞こえてきた。 被験者5号は直ぐにかけて行く。 そこには、防衛隊の装甲機動車に今にも詰め込まれそうになっている青年が居た。 青年を抱えて車に詰め込もうとする隊員の手を怪力で引き剥がし、青年を抱えあげる。 「痛い!」 そうだ。5号の握力は水道の蛇口をも破壊する握力。力を入れて人を抱き上げる事は痛みを伴うのだ。 「すまない。自分でも力加減が分からないんだ。」 そう言って少年を降ろす。 少年はカメラを決して離さずに構えている。 「貴様、何者だ。これは国家安全保障庁からの命令だぞ。出しゃばるな。」 隊員が5号を5号と知らず威嚇する。 「青年の誘拐が国の命令なのか。」 5号が問いかける。 「黙れ。それ以上邪魔をすれば撃つ事も考えなければ行けない。」 そう言って隊員は5号へ小銃を向ける。 「国民を銃で脅すとは。防衛隊も堕ちたものだな。さぁ、撃て。」 そう言って隊員の方へ歩みを進める。 バァン! 隊員は空中へ威嚇射撃を行った。 「それ以上近づくな。撃つぞ!」 そんな脅しも聞かず、5号は歩く。 バァン! 隊員の1人が5号の足元を狙い、1発発砲した。 しかしサイボーグメンテナンスを経た5号の皮膚の内部は装甲化されており、表面は出血するも銃撃を通さなかった。 その瞬間、5号は砂塵を巻き上げて空中へ飛び上がる。 空中から降下しながら繰り出される高威力のパンチは、隊員のヘルメットを無効化し、血飛沫を上げて頭部を破壊した。 その他の隊員は怯むも直ぐに銃を向け、集中射撃を開始。 唯一の弱点である脳のある頭部は、特殊ヘルメットにより銃撃を通さず。肉体は装甲化されており銃撃を通さなかった。 蹴り、殴り、あっという間に5号は隊員達を制圧した。 少年は興味深そうに写真を撮っている。 「早く逃げよう。」 5号は少年にそう声をかけ、首に捕まり背中に被さるように言った。 そして5号は圧倒的な走力で現場を離脱した。 国家安全保障庁舎。 統合司令部。 通信士が声を上げる。 「世田谷区を警ら中のパトカーが、住宅地にて防衛隊の装甲機動車と乗車していたと思われる隊員の遺体を発見したとの報告あり。」 「何?なぜ防衛隊の装甲機動車が世田谷区の住宅地にいるんだ。」 副司令が通信士に問いかける。 「分かりません。しかし近くの防犯カメラで5号らしき影と、背中に覆い被さる少年の姿が確認されています。」 「方向は。」 「やはり川崎方面です。」 副司令が顔をしかめる。 その時、司令室の自動ドアが開いた。

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繰り返される愚行

「ナヤ博士、一体何故ですか」 司令官のセリザワが博士に問う。 「訳は向こうで話す。とりあえず、来てくれないか。」 後ろから長官も来ていた。 「長官まで。万が一にも、国民に被害が出れば防衛隊の存続にも係わるんですよ。それに、ヤツ自体国家防衛機密の塊であり、、、」 「司令、ここは私が指揮を取ります。」 副長がすかさず割って入る。 「しかし、、、」 「いいから。一刻を争います。さぁ。」 少し間を空け、司令官が副長に頷く。 「行きましょう。」 本庁会議室。 「その策というのは。」 セリザワがナヤ博士に問う。 「5号討伐のために新たなサイボーグメンテナンスにより人体を改造された人材を生産し、派遣する。実戦をを通しこの技術をより発展させる。」 セリザワが呆れたように言う。 「ちょっと待ってください、こんな実験をまだ続ける気なのですか」 ナヤ博士が不思議そうに言い返す。 「こんな実験?何を言っている。人体を強化し、人体に及ぶリスクを減らすことが、より人類の発展に寄与することに繋がるのだよ。素晴らしい実験ではないかね。」 「それは、人が人体を捨て、人で無くなると言うことに等しいのではないですか。」 ナヤ博士がニヤリと笑う。 「日本、世界を取り巻く安全保障は日に日に過酷さを増している。人類のこれまでの歴史で、1度でも戦争が絶えたことはあるかい?」 「それは不可能に等しいでしょう。」 「それを可能にする方法があるのだよ。そのために私は、この技術を何としても確立させなければならないんだ。頼む。手を貸してくれないか。」 「しかし、、、、」 「セリザワ君。日本、世界の平和、ひいては人類の進化のためなのだ。乗ってくれないか。」 長官が改めてお願いをする。 「あくまでも日本の平和のためです。それ以外のなんでもありません。」 「ありがとう。恩に着るよ。」 ナヤ博士が安堵した表情で礼を言う。 3人が会議室で手に持つ資料の表紙には 「極秘・デストロン計画」と書いてあった。

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動き出した影

「はぁ、はぁ。」 路地裏で壁に手を付き息切れをしている5号。 すぐそばにあった水道から、水を飲もうとする。 蛇口に手をかけ、ひねろうとする。 ガチャッ と、蛇口が取れる。 「蛇口すらひねることを許されないのか。」 サイボーグメンテナンスによる筋力強化。 それに伴い握力が常人よりも遥かに高くなっていたのだ。 「クソッ。」 彼はそう吐き捨てるように言って、路地をまた歩き始めた。 東京都、新宿区市谷市内。 国家安全保障庁庁舎敷地内研究施設。 施設内総合管理室。 「都内の防犯カメラが、第5号らしき影を捉えたと通報がありました!」 通信士が声を上げる。 「場所は。」 司令官が聞く。 「はい。現在川崎市。横浜方面に逃走しているとの事です。」 「そうか。話には聞いていたがやはり恐るべき速さだな。まだ司令室はドタバタ状態。そんな中2時間強で川崎とはな。」 「横浜の駐屯地に連絡をとれ。ヤツを、、」 司令室の扉が開き、、、 「待たれよ。」 司令官が振り向く。 そこには本計画を主導する技術者が立っていた。 「あ、あなたは、、、」 「ナヤ博士。」

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サイボーグ・ウルトラ作戦第1号

ウィン、と本庁特別会議室の扉が開く。 「遅くなりました。」 と、1人のモノクルをつけた男が会議室に入ってくる。 「遅かったでは無いか。一刻を争う事態なのだぞ」 そう焦りの様子で言うのは胸にNSSDという刺繍が入った国家安全保障防衛隊の幹部。 「君がこの計画の担当技術者だろう、どうなっているんだね」 「そういう君も、この計画の総括を任されている責任者だろう?」 「それはそうであるが、、、」 この部屋には総12名の本庁幹部階級が集まる。 全員の前の卓上には【極秘、ウルトラ・サイボーグ作戦第1号】と書かれた冊子が置いてある。 「まぁ、そう慌てんでも敵はたかが人間1人。ここは隠密にどうにかならんのかね。」 と、焦りながらも落ち着いた様子で言うのは長官。 「奴らはもうヒトで無くなったモノたちです。人を殺める害虫にも等しい。」 技術者がそう言う。 「人体機械技術結合を行ったロボットのようなものだろう?」 「まぁまぁ、アレをヒトと呼ぶか否かは今ではなかろう。それで、脱走したそうじゃないか。どうするつもりなのだね。」 長官が技術者、総括者に問いかける。 「あぁ、脱走、、は、、おい技術者、何か対策はなかったのか」 技術者は何も言わない。 「長官がお聞きになっている。早く答えないか。」 「責任逃れはよさんか。幹部でもあるものが。」 「は、すいません。」 「それで、何も作が無いわけでもなかろう?」 長官が技術者に問う。 「はい。もちろん作はあります。」 「どのような作か、お聞かせ願おうかな。」 「その前に、1つ長官にお願いが。」 技術者がニヤリとしながら言う。 「ほう。その頼みとは?」 「奴らに対抗するためのシン組織の発足を。」 「相手は単身だぞ?シン組織の発足など必要なのかね。」 「でなければその作というのを教えるわけには行きません。」 「身の程をわきまえなさい」 「そうだ、そうだ。」 幹部たちからの批判の声が飛び交う。 「やむを得んだろう。国家安全保障に関わる重大事件だ。飲もう。」 「長官!」 「お考え直し下さい」 幹部たちからの驚きと静止の声。 またも技術者がニヤリとする。 「では、また後ほど書類をお渡しします。」 長官へ一礼し、技術者は部屋を出ていった。 「これでいいんだな。」 長官が1人つぶやく。

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被験者達のレベル

「こちらBAY-02、現在複数の被験者らと遭遇、人的被害あり!射撃許可を請う」 即応部隊が本庁司令部へと射撃の許可を請う。 「総司令、即応部隊が射撃許可を求めています。」 通信士が総司令に伝える。 「射殺を許可する。」 「しかし、相手は国民では、、、」 「奴らは人じゃない。もう既に機械と相違ない。」 総司令は無慈悲にも射殺を命じた。 「こちら司令部、射殺を許可します。」 「こちらBAY-02、了解。」 「総司令、本当にいいんですか」 「先に人を殺したのは奴らだろう。分かり合えないのだよ。人間様と機械如きでは。」 「。。。」 通信士が言葉を失う。 施設内では銃声が鳴り響く。 「今の標的の数は!」 「元4体から現在2体の射殺を確認、残るは2体です!」 「うちの隊も残るは3名か、バケモノめ」 遮蔽物に身を隠す被験者達。 「おい4番、ここは俺に任せてくれないか」 「みんなで脱走するって約束しただろう、3番」 「俺の元班員だった1番と2番を殺したのはあいつらだ、頼む。」 「。。。共に志した仲だ、俺も」 「俺の分まで頼むぞ、3番」 そうして被験者3番は舞台の方へとかけて行く。 ドドドドド。銃声の後に ドサッ。と何かが倒れたような音がした。 「被験者一名の射殺に成功!残るは1名!」 その時、奥の遮蔽物の方から両手を上げ1人の被験者が出てきた。 「こちらBAY-02、被験者が投降してきた模様」 「総司令、被験者1名が投降してきたようです」 「そうか、有難く迎えてやれ。」 「こちら司令部、投降を受け入れてください。」 「こちらBAY-02、了解これにて被験者の制圧終了、帰投します」 「こちら司令部、了解」 と被さるように 「いや、待て」 と総司令の声が。 「帰投まて」 とすかさず通信士が言う。 なにかの冊子をペラペラとみ始める総司令。 「被験者は5人のはずだ。。。」 「そ、それは、、、」 通信士の顔が青ざめる。 「まだこの庁舎の敷地内に居るはずだ!本隊の準備は!」 総司令が焦りを見せる。 「は、もう既に準備は出来ているようです!」 総司令がドン!と冊子を閉じて机に叩きつける。 「直ぐに本隊を動員して敷地内を哨戒させろ!」 閉じた冊子の表紙には 【サイボーグ・ウルトラ作戦第1号】 と書いてあった。

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ヒトではなくなったモノ

東京都、新宿区市谷市内。 国家安全保障庁庁舎敷地内研究施設。 施設内総合管理室。 突然、施設内の明かりが消えると共にサイレンの音が大きく鳴り響く。 「何事だ」 ウィン、とドアが開く。 「発電室がやられました!」 「被験者達が脱走した可能性があります」 総合管理官の顔が青ざめる。 「直ちに探し出すのだ」 総合管理官が声を張り上げる。 「本庁に直ちに報告、即応部隊を出動させろ」 「了解」 本庁より連絡を受けた庁舎施設内の兵舎から、即応部隊が直ちに出動。脱走した被験者の捜索任務に当たることとなった。 「こちらBAY01、現在被験者達の隔離施設に東側より侵入に成功。施設内の捜索を開始。送れ。」 「こちらBAY02、了解。これより02も隔離施設に侵入を開始する。送れ。」 「01、了解。」 施設内に歩みを進める01部隊。 すると後方から バゴン! と壁に何かを叩きつける音が聞こえる。 「何事か」 と部隊長は銃口と体を後ろに向ける。 すると目先には1人の男が立っていた。 銃からのライトを当ててみると、右手は鮮血に染った真っ赤な色をしていた。 視界の左下には無惨にも頭部が破裂し、血まみれになった隊員の姿があった。 「お前は人間か」 そう部隊長は問う。 すると男は 「俺は人間じゃない。機械だ。お前らがそう言った。」 部隊長はそっと引き金に指をかけ、サイトを覗き込む。 その瞬間、その男は高く飛び上がった。 人体機械技術結合手術により得た力だ。 約6mほど飛び上がった男に部隊長は怯み引き金を引くことが出来なかった。 男は空中から急降下、部隊長の頭を掴みかかり地面に強く叩きつけた。 「こちらBAY02、01へ。どうした!」 男は死体に埋もれていた無線機を踏み潰した。

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