ひぐらし

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 第2章…【いちご味の恋】

 私は今、翔和くんの部屋の前にいます。  どうしてここにいるのかと言うと、先程まで翔和くんと一緒に歩いていたのですが……途中で別れることになったからです。 『悪い、これからバイトだから』  バイトに行くと言って別れたのがつい5分前の出来事。ふぅ……」  大きく深呼吸をして、心を落ち着かせてから扉をノックしようと手を伸ばし…… 「凛ちゃん?」 「ひゃぁ!?」  後ろを振り向くと、そこには琴音さんがいました。 「ごめんね。驚かせるつもりはなかったの」  い、いえ。こちらこそ変な声を出してしまってごめんなさい……」 「ううん。私が悪いから気にしないで。それよりも、こんなところでどうしたの?」 「実は……」  私が事情を話すと、彼女は目を丸くさせながら驚きました。 「へぇ〜。常盤木君がそんなことをねぇ〜」 「はい。それでバイトに行ったようなので追いかけて来ようと思ったんです」 「なるほど。つまり、凛ちゃんは常盤木君に会いに来たってことなんだね」 「ち、違いますよ!! ただ、気になっただけです……」 「ふぅ~ん」 「な、なんですか?」 「いやぁ~。常盤木君、モテるんだなぁ~と思って」 「そ、そんなことはありませんよ。それに、私と付き合うメリットなんて何も……」 「そうかな? 私にはあると思うけど」 「どういうことでしょう?」 「例えばだけど、私だったら"好きな人の近くにいれて、毎日のように一緒にいられる。それに、ご飯を作ってあげることもできるし、お風呂上がりの髪も乾かしてあげられる。それに…………(以下略)」 「わ、わかりました。もう十分伝わりましたから!!」 「あははっ、冗談だよ」  本当にこの人は……。  はぐらかすためにわざとこんなことして……。 「でも、少し羨ましいな~。私にもこんな彼氏がいたらいいなぁ~」 「えっ?」 「ん? どうかした?」 「いえ、その……」  一瞬、耳を疑いました。  私の聞き間違いでなければ、確かに今……『彼氏が欲しい』と言いましたよね? 「い、今……」 「あっ、もしかして聞こえちゃった? 恥ずかしいね」 「そ、そうですね……」 「まぁまぁ、そう言わずに。ほら、入って」 「はい?」  そう言うと、琴音さんは部屋のドアを開けて中に入るように促しました。 「ちょ、ちょっと待ってください! まだ心の準備が……」 「大丈夫大丈夫。そんなに緊張しなくてもいいよ」 「でも……」 「ほらっ! 早く!」  そう言いながら強引に背中を押してきます。  私は抵抗することができず、そのまま部屋へと入ってしまいました。 「さぁさぁ、座って!」 「はい……」  私は言われるがまま、ソファーの端に腰を掛けました。  すると、対面に座っている彼女がニコッと微笑みかけてきました。 「じゃあ、まずは自己紹介から始めよっか」 「はい……」 「えっと、名前は知ってるか。一応、常盤木君のクラスメイトだもんね」 「そうですね……」 「なら、次は年齢だね。私は18歳」 「私は17歳です」 「なら同い年だね。ちなみに誕生日はいつなのかな?」 「9月1日です」 「そうなんだ! 9月生まれってなんか素敵だよね    。星座は何座なの?」 「乙女座ですよ」 「乙女座かぁ~。可愛らしいイメージがあるからぴったりかも」「ありがとうございます……」 「うんうん。それで身長とか体重はどれくらいなの?」 「158cmの48kgです」「へぇ〜、華奢なんだね。でも、スタイルは悪くないと思うよ。胸もあるし」 「む、胸に付いては聞かないで下さい……」 「ごめんごめん。それで、スリーサイズは?」 「りょ、両方とも秘密です!!」 「そっか。残念」 「もう琴音さん。揶揄わないでくださいよ」 「だって、可愛い反応をする凛ちゃんが悪いんだよ?」 「うぅ……」  琴音さんがニコニコしながら私を見つめています。  うぅぅ……。  これは翔和くんの部屋に入った時点で気付くべきでした。  まさか、こうなるとは予想外でしたよぉ……。 「ねぇねぇ、凛ちゃん」 「な、なんでしょうか?」 「常盤木君ってどんな感じなの?」 「ど、どんなって言われても困ります」 「そうだよね。いきなり聞かれても答えられないよね~」 「はい……」 「なら、質問を変えるね。常盤木君って普段何してるのかな?」 「えーと……ゲームしたり漫画を読んだり、寝たりしていますよ」 「へぇ~。意外だね。もっとアウトドア派な人だと思ってた」 「そうですか? でも、よくサボったりしているので、あまり当てにはならないと思います」 「ふぅ~ん……そっかそっかぁ~」  琴音さんが意味ありげな笑みを浮かべていました。 「あの、どうかしたんですか?」 「いや、なんでもないよ。ただ、常盤木君も男の子なんだなって思っただけ」 「それはどういう意味でしょう?」 「う~ん……。そうだねぇ……」  彼女は少し考える仕草を見せました。  そして、ゆっくりと口を開きます。 「まぁ簡単に言えば、無防備な女の子が近くにいたら意識しちゃうかなぁ~って」 「べ、別に私は無防備ではありません!」 「本当かな? 常盤木君はどう思う?」 「……」 「ほらっ!何も言わないし、顔も赤いよ? 図星だったんじゃない?」 「ち、違います! これは……その……」 「はい、これあげる」 「こ、これは……?」 「ホットココアだよ。私の特製だから、冷めないうちに飲んでね「ありがとうございます……」 「いいよいいよ。気にしないで」  私は渡されたマグカップを両手に持ち、口に運びました。  すると、甘い味と共に温かさが身体を包み込んでいくのを感じました。 「美味しい……」 「よかった。作った甲斐があったよ」 「琴音さんは凄いですね」 「そうでもないけど、褒められると嬉しいね〜」 「本当に美味しいです……」 「そう言って貰えると私も嬉しいよ」 「……」  会話が途切れてしまい、部屋に静寂が訪れます。ただ、居心地の悪い沈黙ではなく、どこか落ち着くような空間でした。 「あっ、そういえば」 「ん?」 「琴音さんって翔和くんのことを"常盤木君"って呼んでいるんですか?」 「あぁ~、それね。実は違うんだよね……って、どうしてそんなことを聞くの?」 「いえ、ちょっと気になっただけです」 「ふぅ~ん。もしかして、嫉妬とかしてくれてるのかと思ったんだけど、違ったみたいだね」 「そ、そんなことはありません! ただ、疑問に思っただけですから……」 「そう言うことにしておくね」  琴音さんは可笑しそうにクスッと笑いました。  私は恥ずかしくなり俯くと、琴音さんの視線を感じると同時に頭に何かが乗る感触を覚えます。 「よしよし」 「あ、あの……」 「頭を撫でるとストレスが減るらしいからさ。それに、こうしてると妹ができたみたいだし」 「お姉ちゃんがいたらこんな感じなのかな……」 「……」 「……」  また、部屋の中に静寂が生まれます。  聞こえてくるのは時計の音とエアコンの微かな稼働音。それと、琴音さんが髪を優しくすいてくれる感覚です。 「ねぇ、凛ちゃん」 「ははい……」 「もし、私が常盤木君のことを好きだと言ったら……凛ちゃんはどうする?」 「……」  唐突に投げかけられた質問。  それに対して、すぐに返事ができませんでした。  きっと、それが琴音さんが聞きたいことで、琴音さんが伝えたいことだと感じたのです。 「えっと……」  正直、驚きました。  琴音さんが翔和くんに対して好意を持っているとは思っていましたが、直接言われたことはなかったからです。  だからと言って、ここで動揺するのはおかしい。  翔和くんが誰を好きになろうとも自由ですしそれを咎める権利なんて私にはありません。  それに私は……もう—— 「……」  私は唇を噛み締め、拳を強く握りしめていました。  今にも溢れ出しそうな感情を抑え込むように……。 「やっぱりダメだよね……」 「えっ?」  悲しげな声音が耳に届きます。  反射的に顔を上げると、そこには弱々しく微笑む琴音さんの姿がありました。 「ごめんね。変なこと聞いちゃって」 「……」 「うん、わかってる。凛ちゃんは優しい子だから、困らせちゃったね」 「……」 「でもね、どうしても聞いておきたかったんだ。だって、このままじゃ凛ちゃんが後悔しそうだもん」 「……後……悔?」 「そ。だって、常盤木君のこと好きなんでしょ?」 「……」  私は咄嵯に否定しようとしましたが、上手く言葉が出ません。  頭の中では、肯定したい気持ちと否定したい思いが葛藤していたのです。 「……」 「ふふふ、無言は肯定とみなします」 「……」「まぁ、今の表情を見たらわかるけどさ」「……」 「大丈夫だよ。私は二人の邪魔をする気はないから」 「……本当ですか?」 「本当だよ。私はあくまで第三者として見守るだけだからね」 「……」 「ほぉ〜らっ! そんな暗い顔をしないでよ〜」「…………」 「うーん。なら、一つだけアドバイスをしてあげよう」 「……アドバイス?」 「そう、アドバイス」  琴音さんは立ち上がり私の横に座り直すと、耳元に口を近づけてきます。 「常盤木君はね……鈍感なんだよ」 「に、鈍感……?」 「だから、自分に向けられている好意に気づかないんだ」 「だから、頑張ってアピールしないと他の子に取られちゃうかもよ? まぁ、その時になって慌てないようにね」 「琴音さん……」 「まぁ、それは冗談だけどね」 「……」 「あれ? 意外だった? こういう話の方が興味あるのかと思ってたんだけど」 「そ、それは……」 「あははっ。やっぱり可愛いね、凛ちゃんは」  琴音さんは楽しそうに笑うと、「それじゃ、また明日学校でね」と言い残して帰っていきました。 「翔和くんは鈍感……か」  先程の琴音さんの言葉を反すうします。 「もしかしたら、琴音さんも翔和くんのことが……?」  翔和くんがモテるのは知っています。  でも、その事実を素直に受け入れることはできなくて……モヤモヤとしたものが胸を覆いつくしていくのでした。  ――――――  いつも読んでいただきありがとうございます! 読者の皆様まだまだ未熟者なのですが、これからも応援よろしくお願いいたします!

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 第1章…【レモン味の恋】

 朝はやく起きてリビングにでた。  すると、そこにはソファに座ってテレビを見ている母さんがいた。 「おはよう」  俺がそう声をかけると、振り返って笑顔を見せた。 「あら? 今日はずいぶん早いのね?」 「うん……なんか目が覚めちゃったからさ」  俺は母そういえば、昨日、お風呂に入ってなかったよね?」  ジャンル:ホラーサスペンス 母さんの隣りに座りながら聞いてみた。 「あーっ! そうだったわね~」  ジャンル:恋愛ドラマ 母さんも忘れていたようだ。  俺は脱衣所に行って洗濯機回すよ!」 「ありがと~」  洗濯機を回しておいた。  それから朝食を食べようとテーブルに向かうと  ジャンル:グルメ  ジャンル:スポーツ  ジャンル:ミステリー  ジャンル:ファンタジー  ジャンル:エッセイ  ジャンル:SF  ジャンル:冒険  ジャンル:学園あれ? これって……」  ジャンル別に分かれてる!? なんじゃこりゃ!? 俺はその事に驚いていると、 「どうしたの?」  母さんがやってきた。 「うわぁ!?」  突然後ろから現れた母さんにびっくりしてしまった。 「なにやってんの?」  呆れたような顔をする母さん。 「それよりこのジャンル分けされてるのはなんなんだよ!?」 「ああそれね、昨日の夜にやったのよ」  母さん曰く、  ・父さんは仕事があるし夜遅いため、いつもは朝だからジャンル別にした方が見やすいと思って」 「でもこんな事できるのかよ?」 「えぇ、パソコンやスマホで出来るらしいわよ」  へぇ~そんな事ができるんだ。 「まぁいいじゃん、ご飯食べようぜ」 「それもそうね」  こうしていただきます!」  俺達は朝食を食べることにした。  そして食後、食器を洗っていると 「翔和くん……」  背後から聞こえてきたか細い声に振り向くと、 そこには、寝癖をつけた美少女が立っていた。 「ど、どうしたの凛?」  あの……」 「うん」 「歯ブラシを忘れてしまいました」 「あー、わかった持って行くよ」 「お願いします」  俺は急いで洗面台に向かい歯ブラシを渡す。  そしてまたキッチンに戻ると、今度は母さんが話しかけてきた。 「ねぇ翔和ちゃん……凛ちゃんとはどこまでいったの?」  ニヤリとした顔で質問してくる母さん。  これは絶対に何か企んでいる顔だ……。  それにしてもどこに行ったかって言われてもなぁ…… 「特に何もないけど?」 「嘘ばっかり! 私にはわかるんだからね〜」 「本当に何もないんだけど……」 「ふ〜ん……そうなんだ~」 「何だよ?」 「べっつにぃ~♪」  意味深な態度をとる母さんに俺は首を傾げることしか出来なかった。  学校に着いた俺は自分の席に座っていた。  今日もおはよ~若宮!」 「おはよう藤さん」 「なぁなぁ! 今日の数学の授業ってさ―――」  藤さんのマシンガントークを聞き流しながら、ぼけ~っと外を見る。  相変わらず雨が強く降っていた。  傘を差していても服が濡れてしまうほどお~い聞いてるか?」 「ごめん、ちょっと考え事をしてた……」 「まったく……それでさ、その先生が言った言葉がこれなんだよ!」 「ほぉ~」 「『人生に正解はない』ってさ! なんか深いこと言ってるなと思ったわけ!!」  確かにそうだな……」 「だろ? でもさ、それってただ問題を先延ばしにしてるだけじゃないのかなって思うんだよなぁ……」  藤さんの話を聞いていると、チャイムが鳴った。  それと同時に担任の後藤が教室に入ってくる。 「ホームルーム始めるぞ~」  クラス委員長が号令をかけ、皆が立ちあがる。  しかし俺は、座ったまま窓の外を眺めていた。 「おい常盤木!」 「はい!」  急に呼ばれて驚いた俺は反射的に立ち上がる。  するとクラスのみんながクスクスと笑ってきた。すまんな、驚かせてしまって。だがお前も悪いんだからな」 「えっ、俺が悪いんですか?」 「当たり前だろうが。全く……早く席につけ」 「はい……」  俺が渋々座り直すと、また笑い声が聞こえてくる常盤木のやつ、マジで面白いな」 「本当ね」 「もう笑うしかないよねw」  俺は恥ずかしくなり頬を掻いて苦笑いをするしかなかった。 「じゃあ連絡事項を言うぞ」  そのあと、いつも通り授業が始まり昼休みになった。  購買  人がいないな…… まぁいっか。  俺は適当にパンを買って外に出ることにした。 「おっ、晴れてるじゃん」  雨が止んでいたので俺は屋上に向かった。  階段を上がり扉を開けると、そこには1人の少女がいた。  彼女はこちらに気こんにちは」 「おう」 「今日もいい天気ですね」 「ああ……」 「どうかしましたか?」 「別に何でもないよ」 「そうですか」  俺の返事に納得したようで、微笑みながら前を向いてしまう。……」 「……」  しばらく沈黙が続いた後、凛は弁当箱を取り出し蓋を開けた。 「あの、よかったら一緒に食べませんか?」 「いいのか?」 「はい、もちろんです」 「ありがとう」  俺はお礼を言い、彼女の隣りで同じように昼食今日も雨だね……」 「ああ、梅雨だから仕方ないな」 「うん……」 「どうしたんだ?」  いつも元気な彼女が珍しく落ち込んでいるようだ。何かあったのだろうか? 「実はね、今度友達と一緒に旅行に行くことになって楽しみだったんだけど、それがまさか雨のせいで中止になっちゃうなんて……」 「そっか……」 「せっかくの夏休みなのに、ずっと家にいるのは寂しいよ」 「まぁでもさ、延期したらいいんじゃないか?」 「そうだけど……」 「ならいいじゃん。俺だって家でゲームするだけだしさ」 「でも……」 「まぁ、俺のことは気にしないでいいから。それに、予定がなくなったからって俺の家に来なくて大丈夫だぞ?」 「……」 「えっ? なんで無言になるの?」 「別に……なんでもありません」  絶対嘘だろ!?」 「あ、あの翔和くん……これはどういう状況なんでしょうか?」 「さぁ?」  凛が困惑しているのも無理はない。  何故なら、現在進行形で俺は凛の膝枕をしているからだ。  凛曰く、最近寝不足なので寝ふふふっ……」 「ど、どうしたんだ?」 「いえ、ちょっと思い出し笑いをしてしまいました……」 「そ、そうなんだ」 「はい。それにしても……」 「それにしても?」 「こうしてると昔を思い出しますね」  そう言って優しく頭を撫……」 「んっ……んんっ」  俺は寝返りを打ち、凛のお腹に顔を埋める。  そしてそのまま顔を左右に動かした。 「んっ……くすぐったいですよ」 「すまん……なんか心地よくてさ」 「それは良かったです……けど……」 「けど?」 「もう少し……ゆっくりしてもらっても構いませ……」 「……」 「スー……スー……」 「……あれ?」 「……」 「もしかしなくても、寝ちゃってる?」……………… 「ふふっ、可愛い寝顔だなぁ~」………… 「よし、起こさないようにしよう!」  私は、そっと彼の手を握る。  その温もりを感じていると心が落ち着く。  彼は私にとって、とても大切な存在なのだと改めて思う。  こうやって手を繋いでいるだけで安心できる。ねぇ、翔和くん」 「なんだよ?」 「呼んでみただけ~♪」 「なんだそりゃ……」 「えへへ~」 「はいはい。それで何がしたいんだ?」 「特に何も~」 「なんじゃそら」  呆ただこうしていたいなって思ったの!」 「そうか。じゃあ好きなだけしとけ」 「うん!」 「……」 「えっ、それだけ?」 「他に何かして欲しいのか?」 「えーと……ぎゅってしてほしいかな?」 「はいよ」  えっ……本当にしてくれるんですか?」 「別にこれぐらい構わないぞ」 「嬉しいです! では早速……」 「ちょい待った」 「はい?」 「そんなに勢いよく飛び込んでくると危ないぞ?」 「あっ! ごめんなさい!!」  わかればよろしい」 「あの……翔和くん?」 「なに?」 「どうして私の胸を揉んでいるのですか?」 「そこに胸があるからだよ」 「意味がわかりませんよ!?」 「じゃあ聞くが、目の前に大きな山があったら触らずにはいられないだろうが!! この気持ちわかるか!?」 「全然、分かりませんよぉ〜」 「チッ……つまらない女だぜ」 「ひどっ!?」 「はぁ……癒される……」 「えっ、急にどうしたのですか?」  凛の太ももは柔らかくて最高だね……」 「えっ!? あ、ありがとうございます///」 「それにいい匂いだし……」 「も、もうやめてください〜!!!!」 「はい、やめるわ。もう十分堪能させてもらったし」  うぅ……」 「まぁまぁ、拗ねるなって」 「べ、別に拗ねていませんよ?」 「そうかい。まぁとりあえず俺から言いたいことは一つだけだな」 「な、なんでしょう?」 「ありがとな」 「いえ、どういたしましてです」 「いらっしゃいませ~」  今日はバイトの日だ。  そして今はお客さんがいないのでレジで暇つぶしをしている。  まぁ、仕事中だから遊んだりはしないけど。 「常盤木君、お疲れ様。休憩入っていいよ」 「はい。それじゃあお先に失礼します」 「はい、行ってらっしゃい」  店長に見送れながら俺はバックヤードに入り、制服から私服へと着替える。  それから店内に戻り、いつも通りアイスコーヒーを作りお待たせしました」 「ありがとう」  カウンターで座っている常連さんの席に置いた。 「いつものね」 「はい」  いつものとは、ホットのブラックコーヒーのこと。  俺も最初は驚いたが、今ではすっかり慣れてしまった。 「それにしても暑いな~。まだ6月なのにこんな気温だと7月にはもっと暑くなるんじゃないか?」 「そうですね。夏バテとか気をつけないといけませんし、体調管理にも注意しないとダメですよ」「まぁ、そうだね。君は大丈夫そうだけど」 「そうでもないですよ。結構、熱っぽい時ありますし」 「そうなのか? あまりそう見えないけど」 「見た目に出ないタイプなんじゃないでしょうか? でも、最近は少し体が怠くて……」 「それは大変じゃないか。風邪でも引いたの?」 「いえ、そういうわけではないと思いますけど……」 「そっか。ならいいんだけど」 「心配してくれてありがとうございます」 「気にすることはないさ」 「それでも感謝してますよ」 「律儀だねぇ……」 「そうですか?」 「ああ、そんなところも君の長所だよね」 「なんか照れるな……。それより、何か用事でもあったんですか?」 「んっ? どうしてだい?」 「だって、いつもここで飲んでるのに、わざわざ声をかけてきたから何かあったのかと」 「いや、大したことではないんだよ。ただ、君が元気がないように見えたからさ。それにここ最近、シフトに入っていなかっただろう?」 「……確かに。言われてみると休んでましたね」 「だろう?」 「すみません……迷惑かけてしまって……」 「謝ることなんてないよ。ただ……その……」 「その?」 「僕に出来ることがあったら何でも言って欲しいんだ。その……僕は君のことが好きだから……」 「………………えっ?」 「あっ、いや、今のは違っ……!」 「……」 「……」 「……」 「……」 「……」 「……」 「……」 「……」 「……」 「……」 「……」 「えっと……その……」 「あの……」 「な、なんでもない! 忘れてくれ!」 「あっ! ちょっと!」  呼び止めるも、彼は逃げるように店を後にしてしまった。  残されたのは俺と静寂だけ。  そして、店に入ってきた新たな客の声が聞こえてくる。 「いらっしゃいませー」  俺ははぁ……」  ため息をつき、頭を抱えた。  ―――――― 【後書き】  こんにちは、久賀琥珀です。  今回は短めのお話となりました。  次回は、凛目線の話になります

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 第2章…【征服】

ある日のこと、私が学校の帰り道に歩いていると、目の前に猫が現れた。その猫はとても可愛らしく、まるで天使のような見た目をしていた。しかし、よく見ると首輪をしていることに気づいた。しかもそこには、『飼い主募集中』と書かれた紙が貼られていたのだ。 「かわいそうな猫さん……」そう呟いたその時、背後から声をかけられた。 「おい、そこの女。お前今俺のことを可哀想と言ったか?」  振り返ると、そこには背の高い男が立っていた。 「はい……言いましたけど……」  すると男はこう言った。 「俺は確かに世間一般から見た不幸な男かもしれない……。だが、決して不幸ではないぞ!」 「どうしてですか?」 「なぜなら、今の世の中は平和すぎるからだ!もし仮に戦争が起こったとしても、ミサイルや核爆弾を使えば一瞬で解決する時代だぞ!そんなものが存在する限り、人間は幸せになれないだろう!!」 「でも、それだとみんな死んじゃいますよ?」 「フンッ!それがどうしたというのだ!むしろ人類にとっての死とは最大の幸福ではないか!死の先にこそ真の楽園があるのだ!」 「……」 「それにな、人間という生き物は他の動物と違って進化しているのだ。だからこそ他の動物よりも優れた能力を持っているし、知能も高い。つまり、人間の未来は明るいということなのだ!!」 「……」 「わかったかね?君も早く大人になりなさい」 「わかりませんよ……」 「わからない?何故だね?」 「だって……あなたの考えは間違っていると思います!」 「ほう……では君は一体どこが正しいと思うのかね?」 「正しいかどうかなんて分かりません……だけど私はあなたの考えを否定します!」 「フハハッ!面白いじゃないか!ならばかかってこい!!」  そういうと彼はポケットの中からナイフを取り出した。 「きゃあっ!」  私は思わず目を瞑った。……しばらく経っても何も起こらないので恐る恐る目を開けると、目の前には血まみれで倒れている男の姿が見えた。 「えっ!?大丈夫ですか!?しっかりして下さい!!」  私は必死に声をかけたが返事はなかった。どうしよう……救急車を呼ばないと……と思った時、急に視界が真っ暗になった。そして意識を失ってしまった……目が覚めるとそこは病院だった。隣を見ると、あの時の男性が眠っていた。 「あ、起きられましたか?」  看護師らしき女性が話しかけてきた。 「はい……」 「あなたは自分の名前は覚えていますか?」 「もちろんです!私の名前は『一ノ瀬のぞみ』といいます!」 「ふむ……やはり記憶喪失ですね……自分の名前以外は忘れてしまっているようです……」 「そんな……」 「一応検査をしてみましょうか……」  ――1時間後―― 「特に異常はないみたいですよ!」 「よかったぁ〜!」 「まあ念の為1週間ほど入院してもらおうかな!」 「わかりました!」  こうして私の1週間にわたる長い入院生活が始まった……  ――1日目―― 「おはようございます!」 「あら?ずいぶん元気な挨拶ね!」 「はい!だって私『世界征服』を目指していますから!」 「そう……じゃあ今日から頑張ってね!」 「はい!頑張ります!」  ――2日目―― 「こんにちは!」 「おぉ……元気じゃのう……」 「ありがとうございます!」  ――3日目―― 「こんにちは!」 「あぁ……いい天気だねぇ……」 「そうですね!」  ――4日目―― 「こんにちは!」 「はいはーい……」  ――5日目―― 「こんにちは!」 「はいはーい……」 「もう!いつまで寝てるんですか!?」 「いやぁ……昨日は徹夜でゲームをしていたからねぇ……眠たくて仕方がないんだよ……」 「まったく……しょうがない人ですね……」 「あはは……ごめんねぇ……」  ――6日目―― 「こんにちは!」「はいはい……どうも……」  ――7日目―― 「こんにちは!」 「うぅ……頭が痛い……助けてくれぇ……」 「だ、大丈夫ですか!?」 「うん……薬さえ飲めばすぐに治るよ……」 「わかりました!今すぐ持ってきますね!」 「うん……ありがとう……」  ――8日目―― 「こんにちは!」 「……」  ――9日目―― 「――10日目―― 「……」  ――11日目―― 「……」  ――12日目―― 「……」  ――13日目―― 「……」  ――14日目―― 「……」  ――15日目―― 「……」  ――16日目―― 「……」  ――17 日目――  ――18日目――  ――19日目――  ――20日目―― 「……」  ――21日目―― 「……」  ――22日目―― 「……」  ――23日目―― 「……」  ――24日目―― 「ねえ、あなたはどうしてそんなにも無気力なんですか?」 「それはね、僕が生きる意味を見失ってしまったからだよ……」 「生きる意味?」 「そうだよ……僕は今まで色々なことをやってきたんだ……勉強、スポーツ、芸術、その他諸々……でも、どんなに努力しても、僕の上には常に天才と呼ばれる人たちがいた。だから、いつしか諦めてしまったのさ……自分はこの世に必要のない人間なんだって……」 「……」 「そして、今に至るというわけだ……ははっ!笑っちゃうよね!たかだか失恋したくらいでこんな風になっちゃうなんて!ほんと……バカみたいだなぁ……」  彼の目からは涙が出ていた……その姿を見て私は思った…… (私が彼を助けなくちゃ!) 「そんなことないです!」「え?」 「あなたはとても素晴らしい方です!」 「そ、そんなはずはない!だって現に僕はこうやって君の前で泣いているじゃないか!そんな奴のどこが良いっていうのさ!?」 「確かにあなたは悲しみのあまり涙を流しているのかもしれません……だけど!それでも私はあなたを尊敬します!」 「何故なら、あなたは自分の弱さをちゃんと認めて、そこから逃げずに向き合っているじゃないですか!」 「それに、もし仮に自分が完璧だったとしても、それではつまらないと思います!」 「完璧な人生……それはまるでロボットのようではありませんか!?」 「「人間は誰しも弱い部分を持っています。だからこそ、みんな支え合って生きているのです!」 「だからこそ、あなたはこれから強くなって下さい!自分の大切なものを守る為に!」 「自分の大切なもの……か……」  彼は何かを決意したような表情になった。そして私に向かって言った。 「わかった!僕は強くなる!そして必ず自分の夢を叶える!」 「はい!」  こうして彼は立ち直ったのだ。それから彼は私と一緒に『世界征服』を目指して頑張った……  ――1年後―― 「のぞみさん……僕のプロポーズを受けてくれますか?」 「ええっ!?」 「嫌……ですか?」 「いえ……むしろ嬉しいです!こちらこそよろしくお願いします!」  こうして私たちは結婚した……しかし、私たちの生活はそう簡単に変わることはなかった……なぜなら…… 「世界征服まであと少しですね!」 「あはは……そうですね……」 「もう!また敬語になってますよ!」 「すまない……」 「ふふふ……」 「ははは……」  2人は笑い合った。するとその時、玄関の方から声が聞こえてきた。どうやら誰か来たようだ。 「お邪魔しまーす!」……どうやら2人の子供が遊びに来たらしい……2人はすぐに笑顔になり、「いらっしゃい!」と言った……  ――完―― 【あとがき】……いかがでしたか?面白かったでしょうか?もし良かったらコメントで感想を教えて頂けるとありがたいです!

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 第1章…【世界征服】

ある朝の7:45 「二ノ瀬のぞみ」という女子高生が朝ごはんを作っていると、突然包丁を持った母親が襲ってきた。そして、その刃先は彼女の心臓を突き刺したのだ。しかし、彼女はそれでも笑顔で母親を抱きしめたのだった…… そんなニュースが流れた次の日、「二ノ瀬のぞみ」は学校に登校していた。いつも通りの明るい表情でクラスおーい!のぞみん!」 「おはよう!ゆりかちゃん!!」 「おっすー、今日も元気だなぁ……」 「そりゃそうよ!だって私には夢があるんだもん!」 「へぇ~、どんな?」 「それはね…… 『この世界のすべての人を救うこと』だよっ!」 「……え?ごめん聞こえなかったからもう1回言ってくれないかな?」 「だから、私は全ての人を救いたいんだよ!」 「うわあああああああ!!やめろおおおおおお!!!!」 「どうしたの!??ゆりかちゃん!」 「いやあ……ちょっと悪夢を見ちゃってさ……」 「そっかぁ、じゃあさっきの夢の話聞かせてよ!」 「いいけど……」  ―――――――3分後――― 「うん、すごく面白かった!ありがとうゆりかちゃん!」 「まあ……面白いならよかったよ……」 (こんな変な話でも笑えるなんて、やっぱりすごい子なんだなぁ) 「ねえ、ところでのぞみちゃんは将来何になりたいとか決めてるの?」 「そうだねぇ、私の将来の夢は…… 『世界征服!』だよっ!!!」 「……はい?」 「あれ?どうかしたのゆりかちゃん?」 「いや……なんでもないよ……」 (なんだろう、最近疲れているのかしら……)  ――完?――

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 第1章…【異世界人】

昔、アルカナ王国では人身売買が横行していた。しかしある日、奴隷商人が謎の集団によって殺害されたのだ。それからというもの、アルカナ王国は人身売買を禁止している。だが、裏の世界ではまだ続いているらしい。 「まあ、俺には関係ないな」  そう言って、俺は眠りちょっと待てや!」 「うわっ!?︎」  目を覚ますと目の前に美少女がいた。 「お前、今寝ようとしてただろ!私がいるのに!」 「いや、知らないけど……」 「私はお前の監視役だぞ!ちゃんと見張ってないとダメなんだからな!」 「はいはい、わかったよ」 「返事は一回でいいんだよ!」  この子の名前は『ステラ・ルーナ』。見た目通り、14歳である。  彼女は俺と同じ異世界人であり、ある理由で俺と一緒に召喚された。そしてなぜか監視役として「ねえ、まだ着かないのか?」 「もうすぐだよ」  図書館まではかなり距離がある。俺は能力のおかげで疲れないが、普通の人間なら何時間もかかるだろう。 「着いたぞ」 「ここが図書館?何か地味じゃないか?」 「しょうがないだろ、ここは王宮にあるんだし」 「それもそうだな。さあ行こうぜ!」  俺たちは中に入った。するとそこには本棚が大量に並んであった。 「すげえ!これ全部本なのか!?︎」 「ああ、そうだよ」 「凄いなぁ〜、早く読みたいな〜」 「おいおい、読む前にすることがあるだろ?」 「あっ!そうだったな。まずは勉強しないとな!」  そう言うとステラは机に向かっていった。 「よし!頑張るぞー!」  こうしてステラの勉強が始まった。  〜1時間後〜「終わったー!!︎」 「おつかれさん」  ステラは満面の笑みを浮かべた。 「やっと読めたぞ!」 「そりゃよかったな」 「早速借りてくる!」 「ちょっ、そんな急ぐなって!」  ステラは走って行ってしまった俺は仕方なく待つことにした。 (あいつ、あんなに急いでどうしたんだ?)  数分後に戻ってきた。  その手には本が2冊握られていた。  ステラの顔はとても嬉しそうな表情をしていた。  ちなみに一冊目は恋愛小説、二冊目がファンタジー系の小説である。  ステラ曰く、どちらも面白いらしい。  それから俺たちは昼食を食べに行った。  そこでもステラはたくさん食べていた。  俺はその様子を見て少し引いていた。  午後からは魔法について学ぶことになった。  魔法とは体内に存在する魔力を変換して使うものらしい。  魔法の属性は主に火・水・風・土・雷・光・闇の7種類があり、それぞれ適性のある者しか使えない。  また、人によって得意不得意もあるらしく、使える魔法も変わってくるようだ。  他にも回復系や支援系などもあるが、あまり使われないらしい。  ちなみに俺は全属性使えたりする。というわけで今日はこれくらいにしておこうか」 「はい!」 「明日も同じ時間にここに来てくれ」 「わかりました!」 「それじゃあ気をつけて帰れよ」 「ありがとうございました!」  ステラは帰って行った。  俺はその後すぐに王宮に戻った。ふぅ〜疲れた〜」  ベッドの上に倒れ込んだ。 「でも、楽しかったな」  こんな日々がずっと続けばいいと思った。  だが数日後、俺はある事件に巻き込まれることになる。  〜翌日〜 いつものように俺は図書館に向かった。 「おはようございます!」  元気よく挨拶をするステラを見て微笑ましく思った。  この数日でかなり打ち解けてきたと思う。  最初の頃に比べると笑顔を見せることが増えた気がする。  しかし、この時の俺はまだ知らなかった。  これから起こることを…… 俺たちは席に着いた。  早速勉強を始めることにしよう。  まずは歴史から始めるかさて、始めようか」 「おう!」 「じゃあ、まずはアルカナ王国の歴史から説明するぞ」 「よろしくお願いします!」 「アルカナ王国は今から約500年前に建国されたと言われている」 「へぇ〜、意外と新しい国なんだな」ああ、なんでも初代国王は異世界人だったらしい」 「異世界人が王様になったのか!?︎」 「ああ、しかもかなりの実力者だったみたいだ」 「どんな人なんだ?」 「名前は『シオン・クジョウ』」 「日本人か!?︎」 「ああ、俺と同じ世界から来た人物だ」 「そういえば、お前って何歳なの?」 「俺か?俺は17だよ」 「年上だったのか……」 「ん?どうかしたか?」 「いや、別に何でもないよ」 「まあいいか。話を戻すぞ「わかった!」 「シオン王は異世界の知識を使って、様々な改革を行った」 「例えば?」 「農業、商業、工業、医療の発展、教育制度の確立、その他にも数え切れないほどの偉業を成し遂げた」 「すげえ!流石は王様だな」 「ああ、まさに救世主と呼ぶに相応しい存在だ」 「会ってみたいな」 「そのうち機会があれば紹介してやるよ」 「本当か!約束だからな!」 「ああ、任せとけ」  その後も授業を続けた。  そして数時間後、今日の分が終わったところで解散することにした。き俺は部屋に戻っていた。  すると、部屋の扉がノックされる音が聞こえた。  コンッ、コココッ、コンッコンッ! 誰か来たようだ。  誰だろう? とりあえず開けることにした。  ガチャッ! そこには一人の少女がいた。  年齢は10代前半といったところだろうか? (可愛い子だな)  俺は思わず見惚れてしまった。  金髪碧眼で、身長は140cmほどしかない小柄な体型をしている。 (一体何の用なんだろう?)  不思議に思っていると向こうから話しかけてきた。  透き通るような声でとても綺麗な声をしていた。  彼女は自分の名前を名乗った。  続けて俺は自己紹介することにした。  まずはこちらから名乗ろう。  俺は自分の名前を告げた。  次に彼女の方を見る。  その瞬間、俺は目を見開いた。 (嘘……だろ?)  そこに立っていたのは、先……ステラなのか?」 「久しぶりね、レイジ」  目の前にいる美少女はステラに間違いなかった。  なぜ彼女がここにいるんだ? まさか、また何かに巻き込まれたんじゃないだろうな? 嫌な予感がした。  俺は恐る恐る聞いてみた。 「どうしてここに?」  すると、ステラは真剣な表情で答えてくれた。  実はあなたに会いに来たの」 「俺に?」  ますます訳がわからなくなった。 「詳しく聞かせてくれないか?」 「わかったわ」  話によると、あの日以来、俺のことを忘れられずに毎日のように思い出していたらしい。  そんな時、父さんから手紙が届いたそうだ。内容は、この国にある王立学院に入学してみないかというものだった。  最初は迷ったが、決心して入学することに決め、入学試験を受けた。  その結果、見事に合格することができた。  そして今日、その知らせを聞いた俺は急いで会いに行ったというわけだ。  ちなみに今は夏休み中らしい。  なるほどそういうことだったのか」 「驚かせてごめんなさい」 「いや、謝らなくていいよ」 「それにしても大きくなったな」 「そうかしら?」 「ああ」 「ありがとう」  ステラは嬉しそうな顔をしている。  こうして見ると本当に可愛くなったなこれからどうするの?」 「うーん、まだ決まってないんだよな」 「それならうちに来ない?」  突然の提案だった。 「いいのか?」 「もちろんよ!」 「じゃあ、お言葉に甘えて」 「決まりね!」 「これからよろしく「うん!」  〜その頃〜 シオン王の元に一通の手紙が届いていた。  差出人は不明で、中には一枚の写真が入っていただけだった。  〜数日後〜 俺たちは馬車に乗って家に向かっていた。  隣にはステラがいる。  あれから俺たちは家族になり一緒に暮らすことになったそして、今に至る。 「着いたぞ」  そこは大きな屋敷の前だった。 「凄いな……」 「さあ、入って」 「ああ」 「ただいま〜」 「おかえり〜」  奥の方から女性の声が聞こえてきた。 「あら、その子は?」 「私の新しい家族のレイジよ」 「よろしくお願いします!」 「よろしく〜私はミオン・クジョウよ」 「よろしくお願いします!」 「よろしくな」 「はい!」  その後、全員揃って食事をすることになった。 「そういえば、お前の両親はどこにいるんだ?」 「私が小さい頃に事故で亡くなってしまったの……」 「そうだったのか……」 「だから今は一人暮らしなの……」 「大変だったな……」 「でも、今はもう大丈夫よ」 「そっか……」 「ところで、学校はいつから始まるの?」 「明日だよ」 「じゃあ、早く寝ないとね」 「ああ、そうだな」 「じゃあ、早速だけど案内してくれる?」 「わかった」  こうして俺の新たな生活が始まった。  翌朝、俺達は準備をして家を出発した。 「行ってきます!」 「いってらっしゃい!」  母さんの見送りを受けて俺とステラは学校へ向かった。 「おはよう!」  教室に入ると既に何人かの生徒が集まっていた(みんな仲良しなんだな)  少し羨ましく思った。 (おっ!アイツは確か同じクラスの……)  そこには一人の少年がいた。  名前は確か……カイヤだっけ? 話しかけてみるか。  俺は近づいていった。  すると向こうも気づいたようだ。彼はこちらを向く。  その瞬間、俺は思わず目を見開いた。 (え?何でコイツがここにいるんだ?)  そこに立っていたのはかつての親友だった。  しかし、向こうはこちらに気づいていない様子だ。 (まあいいか)  とりあえず挨拶しよう。  俺はよう、久しぶり」と声をかけた。 「!?︎……誰だお前?」 「おいおい、忘れたのかよ」 「悪いけど覚えがないな」  どうやら完全に他人扱いされているみたいだ。仕方ないので名乗ることにした。 「俺はレイジだ」 「レイジ……どこかで聞いたような気がするな」 「思い出したか?」 「いや、やっぱり知らないな」 「嘘つけ!俺だよ!レイジ!親友のシオンだ!」 「何を言ってるんだ?俺はカイトだ」 (おかしいな?そんなはずはない!」 「何を根拠にそんなこと言ってるんだ?」 「だって、俺達一緒に異世界に行ったじゃないか!」 「????」  どうなってるんだ? まさか、記憶喪失なのか? 「すまない、ちょっと混乱してるみたいなんだ」 「そうなのか?」 「ああ、だからまた後で話さないか?」 「わかった」 「じゃあ、またあとで」 「おう」  そう言うと俺は自分の席に戻った。  それからしばらくして担任の先生がやってきた。 「今日からこのクラスを担当することになった。よろしく頼む」 「はい!」  元気のいい返事が返ってきた。 「まず初めに自己紹介だ。名前と出身校を教えてくれ」 「はい、私はリリスです。出身地はユグドラシル王国にある魔法学園です」  彼女は黒髪ロングヘアーの少女だ。身長は150cmくらいだろうか。胸が大きいのが特徴的だ。 (へぇ〜結構可愛いな)  次に隣の少女が立ち上がる。  金髪碧眼の少女である。年齢は15歳ほどに見える。  続いて後ろの方に座っていた生徒が立ち上がった。  こちらは銀髪赤目の美少女だった。年齢は12歳ほどだろう。  そして、さらに次の生徒が立ち上がって言った。  茶髪のショートカットに緑色の瞳をした活発そうな女の子だった。  最後にもう一人の女子生徒が立った。  ピンク色の髪をツインテールにしている。  背は低く、見た目は小学生にしか見えない。  こうして順番に自己紹介が行われた。よし、全員終わったな。次は質問タイムにするぞ」 「はい!」  最初に手を挙げたのは先程のリリスという子だった。 「好きな食べ物は何ですか?」 「甘いものなら何でも好きです」 「趣味はありますか?」 「読書ですね」 「特技はなんですか?」 「料理とかが得意ですよ」 「好きな男性のタイプは?」 「優しくて強い人かなぁ〜」 「恋人はいますか?」 「残念ながらいません」 「スリーサイズは?」 「上から78-55-78です」 「ぶっちゃけ、SEX経験はありますか?」 「秘密です♪」 「ズバリ、目標は?」 「世界平和です」  その後もいくつかの質問が続いた。  〜その頃〜 「アイツの名前はレイジっていうのか……」  俺は一人呟いた。 (レイジ……アイツとは仲良くなれそうだ)  〜数時間後〜 授業が全て終わり下校の時間になった。  帰り支度をしている時、突然声をかけられた。 「ねえ!あなた!」  振り返るとそこにはリリスの姿があった。 「何?」 「これから一緒に帰らない?」 「別に構わないけど」「じゃあ、行きましょう」  こうして俺たちは並んで歩き始めた。  しばらくすると彼女が口を開いた。 「さっきはごめんなさい。急に声をかけたりして」 「いや、大丈夫だよ」 (それより、コイツってこんな性格だったっけ?)  俺の記憶の中の彼女からは想像もつかないような言葉が出てきた。  だが、今更気にしても仕方ないのでとりあえず話を続けてみることにした。  すると今度は彼女の方から話しかけてきた。  ちなみに今はお互い向き合っている状態だ。  どうやら何か言いたいことがあるらしい。  一体何を言うつもりなんだ?あのね……実は私……あなたのことが好きになってしまったみたいなの!」 (は?どういうことだ?)  俺は訳がわからず戸惑っていた。 (まさか、これが俗に言う告白というものなのか?)  しかし、まだ出会って数分しか経っていないのにいきなりすぎるだろ! それに、仮にそうだ悪いけど、君の気持ちには応えられない」  俺はきっぱりと断った。 「どうして?」 「俺は君のことをよく知らないし、そもそも付き合うなんて無理だ」 「でも、私たちはもう会ってしまったわ」 「それが何だ?」 「だから、もう一度最初からやり直せばいいじゃない!」  どうやら諦めるつもりはないようだ。  こうなった以上仕方ない。  俺も覚悟を決めることにした。 「わかったよ。じゃあ、友達になろう」  俺の言葉を聞いて彼女は笑顔になる。 「ありがとう!」 (まあ、これくらいなら問題ないだろう)ところで、どこに向かっているんだ?」  俺はふと疑問に思ったことを尋ねてみた。 「それは着いてからの楽しみということで」  そう言って彼女は悪戯っぽく笑った。  それから程なくして目的地に到着した。  そこは小さな公園だった。どうやらここに連れてくることが目的だったみたいだ。中に入るとすぐにベンチを見つけたのでそこに座ることにした。  それからしばらくして彼女が話し始めた。  どうやら自己紹介をしたいみたいだ。  まずは自分からということなのでこちらから聞いてみることにする。  まずは名前からだな。  リリスという名前を聞いた時点で予想はしていたがやはり日本人ではなかった。  では、出身校はどこかというとユグドラシル王国にある魔法学園だという。  魔法学園ということはつまり魔法が使えるというわけだ。  それならば、是非とも見せてもらいたいところだな。  次は趣味についてだ。  読書が好きだと言っていたが具体的にどんな本を読むのか聞いてみると意外にもライトノベルばかりだった。 (あれ?この子ってもしかしてオタクなのか?)  だとしたら話が合いそうだと思った。次に特技を教えてもらったのだがこれは凄かった。料理が得意だということだったので今度作ってほしいと言っておいた。  最後に好きな男性のタイプを教えてくれた。優しい優しくて強い人です!」  彼女ははっきりとした口調で言う。  なるほど、確かにそういう人が好みというのも納得できる。  最後にスリーサイズは教えてくれなかった。  おそらく恥ずかしいのだろう。  というか、普通に考えればわかることだったな。  最後に俺は自分のことについて話す。  といってもは言えなかったのだけど。  年齢は16歳で好きな食べ物はカレーライス。趣味は特になし。  ちなみに嫌いな食べ物は納豆である。  そんな感じの自己紹介だった。  そして、次はリリスの方の番である。  まずは自己紹介から始まった。名前はリリスというらしい。  出身校はユグドラシル王国の魔法学園だと言う。  趣味は読書だそうだ。  特技は料理らしい。  好きな男性のタイプは優しくて強い人です! とのことだった。  続いて質問タイムが始まった。好きな女性のタイプは? 恋人はいますか? スリーサイズは? など、色々な質問が飛び交う。ちなみにスリーサイズについては秘密です♪と言われた。  ちなみに俺のスリーサイズは上から85-55-85である。  最後に俺たちの関係について聞かれたので正直に答えた。  俺たちは友達になったのだこれからよろしくお願いしますね」 「ああ、こちらこそ」  こうして俺たちの日常が始まる。  〜数日後〜 「今日も授業が終わったな。さて、帰るとするかな」  俺は帰り支度を始めた。  すると、リリスに声をかけられた。 「ねえ、一緒に帰らない〜翌日〜 いつものように登校している途中、突然後ろから声をかけられた。  振り返るとそこにはリリスの姿があった。  どうやら俺のことを待っていてくれたようだ。  そのまま二人で並んで歩き始める。  今日は何をするかという話になったが、お互いにやりたいことが思いつかなかったためとりあえず街に出ることになった。  街の中を見て回りながら歩いていると、ふとあるものが目に入った。  それは占い屋だった。  〜その頃〜 レイジは一人呟いた。  アイツの名前はレイジっていうのか…… 〜数時間後〜 授業が全て終わり下校の時間になった。  帰り支度をしている時、突然声をかけられた。  どうやら俺のことを待っていたらしい。  どうやら俺と一緒に帰りたいらしい。  断る理由もないのでOKする。  ちなみに今はお互い向き合っている状態だ。  どうやら俺に何か用があるらしい。あなたって、結構強そうなオーラが出てるわね」 「そうかな?」 (自分じゃよくわからないけど) 「ええ、だからあなたには私の師匠になって欲しいの!」 (はい?)  俺は思わず耳を疑った。 (今、何と言った?) 「今なんて言った「だから、あなたのことを私の弟子にしてあげようと思って!」 「何でまた急に?」  当然俺は尋ねた。すると彼女はこう答える。 「私、実は魔法使いを目指しているんだけどなかなか上手くいかなくて、それで誰かに弟子入りしようと思っていたところにちょうどいいタイミングであなたが現れたというわけよ」 「なるほど」 (まあ、別にいいけどな) 「でも、俺なんかが本当にいいのか?」 「もちろんよ!」 「わかった。じゃあ、弟子入りを認めるよ」 「ありがとうございます! ところで、一つ気になっていたことがあるんですけれど」 「何だ?」 「その格好は何ですか?」 (ん?どういうことだ?)  俺は改めて自分の姿を確認する。  どうやら制服のままだ。 「あっ」  どうやらすっかり忘れていたみたいだ。悪い。着替えてくるから少し待っていてくれ」  そう言って急いで家に帰る。  家に帰ってからはすぐに部屋着に着替える。  それからすぐにリリスの元へ戻る。  彼女は既に準備万端といった様子だ。 「待たせて悪かったな。さっそく始めようか「はい、よろしくお願いします!先生!!」  こうして、リリスの修行が始まった。  まず最初に行うのは魔力コントロールだ。  彼女の中に眠る膨大な量の魔力を自在に引き出すことが出来るようにならなければならない。  そのためにはまず、魔力を知覚するところから始まる。  まずは、目を閉じてゆっくりと深呼吸をしてみてくれ。そして心を落ち着けて集中力を高めるんだ」  指示通りに集中する彼女。  しばらくして変化が訪れた。  なんと、体の内側から光が溢れ出してきたのだ。 「これが魔力だよ。今はまだ眠っている状態にあるが、意識的に目覚めさせることが出来れば魔法が使えるようになるはずだ」  彼女はとても嬉しそうだ。  だが、喜ぶのはまだ早い。  次はいよいよ魔法について教えることになるのだが、ここで一つの問題が生じる。  俺は今まで魔法を使ったことがないのである。  つまり、俺は魔法の使い方を知らないということになる。  しかし、そんなことはリリスもわかっているようで、心配はいらないと言っていた。  なんでも、この世界に存在する全ての生物は体内に魔素と呼ばれるエネルギーを持っているらしい。  そして、この魔素は普段は目に見えないものだが、空気中に含まれる魔素の濃度が一定以上になると可視化できるようになるらしい。  要するに、魔素を感じ取ることができさえすれば魔法を使うために必要な手順は全て頭の中に入ってくるというわけだ。  早速やってみることにした。まずは両手を広げて精神統一をする。すると、少しずつではあるが体内にある何かが動き始めたような気がした。  よし、これならばあともう少しでコツが掴めそうだ。うーん、なかなか難しいですね」 「最初は誰でもそうだ。ゆっくりでいいから確実に進めていくぞ」 「わかりました」  その後も何度も繰り返し挑戦していくうちに、だんだんと感覚がつかめるようになってきた。 「よし、だいぶ良くなってきたんじゃないか?」  俺の言葉を聞いてリリス本当ですか!?」 「ああ、おそらくもう大丈夫だろう」 「やったぁ!!これで私もついに魔法使いデビューね!」  こうしてリリスは無事に初歩的な魔法を習得することができた。  次はいよいよ本格的な特訓に入る。  リリスは俺に向かって手を伸ばしてきた。 「それでは行きますよ。しっかりついてきて下さいね」  そう言うと同時に彼女が放った光弾が一直線に飛んでくる。  俺はそれをなんとかギリギリのところで避けることに成功した。 「どうやら今のを避けられるということは最低限の力はあるみたいですわね」 「いきなり何をするんだよ?」では行きますよ。しっかりついてきて下さいね」  そう言うと同時に彼女が放った光弾が一直線に飛んでくる。  俺はそれをなんとかギリギリのところで避けることに成功した。 「どうやら今のを避けられるということは最低限の力はあるみたいですわね」 「いきなり何をするんだよ?」あら?ごめんなさい、言い忘れていましたわ。私はあなたを試していたのですわ」 「俺を?」 「ええ、あなたにはこれから毎日私の攻撃を避けてもらいます。もしも一度も攻撃を受けずにクリアできた場合にはあなたを私の師匠として認めましょう」 「わかった」 (まただしもし一度でも攻撃を受けたらその時点でゲームオーバー。二度と私の前に姿を見せないでください」 「わかった」 (負けられない戦いが始まる)  〜数日後〜 今日も俺はリリスの攻撃を避ける訓練をしていた。 「ほら、もっとよく見てください!」 「くそっ!」  俺は必死まだまだ甘いですよ!」 「クソッ!」  俺は焦っていた。 「そこっ!」 「ぐわっ!」  とうとう攻撃をくらってしまった。 「はい、残念でしたね。約束通り、あなたとはお別れです」 「待ってくれ!もう一度チャンスをくれないか?」俺は土下座して頼み込んだ。  プライドなんて知ったことか!今はただ、彼女に勝ちたい一心だった。  しかし…… 結果は惨敗。結局、俺は最後まで一撃を入れることができなかった。  翌日からも俺は諦めることなく、何度も挑み続けた。  だが、それでも結果は同じ。俺は彼女の前に膝をつくしかなかった。  それから一週間後。  俺は最後の賭けに出た。  これまではずっと逃げ続けていたが、今度は自分から攻撃を仕掛けたのだ。  もちろん簡単に避けられてしまった。  俺はそのまま地面に倒れ込む。  もはや立ち上がる気力すら残っていなかった。  しかし、彼女はなぜかとどめを刺そうとしない。 (どうしてだ?)  不思議に思っていると、彼女は突然こんなことを言ってきた。  実は、先ほどの戦いで私は確信しました。やはり、あなたの実力を認めようと思います」  こうしてリリスとの修行は終わりを迎えたのであった。  リリスの修行始まってから数ヶ月が経過したある日のこと。  俺たちはいつものように修行を行っていた。  今日のメニューは魔法を使った戦闘だ。  といっても、まだリリスは初心者なので主に防御面の強化を行っている。  そして、ちょうど今、彼女の渾身の一撃を俺が受け止めたところだ。  どうやら少しは強くなったようだな。  俺も少しだけ本気で相手することにした。  まずは彼女の足元を崩す。  バランスを崩したところを狙って一気に畳み掛ける。  彼女は咄嵯の判断でガードを試みたが、俺の拳が当たる方が早かった。 「勝負あり。はい、そこまで」  リリスの肩に手を置く。 「先生、ありがとうございました」 「ああ、お疲れ様。だいぶ腕を上げたじゃないか」 「いえ、先生の教えのおかげです」 「いや、リリスの実力だよ」 「そんなことはありません。全ては先生の指導力によるものです」 「いやいや、リリスの努力の成果だよ」 「いいえ、先生の力です!」 「いや、違う。やっぱり全部リリスのおかげだ」 「違います。ぜーんぶっ、先生のせいです!」おい、それはさすがに無理があるだろ」 「だって、本当のことですもん♪」 「あのなぁ……」 「ふふっ、冗談ですよ。本当は私の努力の成果です」 「そうだ、その通り。よくわかってるじゃねえか」 「はい、ですからこれからもよろしくお願いしますね。師匠!」 「おう、任せとけ」 「それでは早速ですが、次のステップに進みましょう」 「次?一体何をするんだ?」 「次は攻撃魔法の習得を目指します」 「攻撃魔法?」 「はい、そうです」 「ちなみにどんなことができるようになるのか教えてくれないか?」 「そうですね、わかりやすく言えば、炎を出したり雷を落としたりといったところでしょうか」 「なるほど」 「まあ、いきなり実戦は厳しいと思うので最初は基礎的なことから始めていきますね」 「ああ、頼む」 「それでは、手を出してください」  言われた通りに手を差し出す。  すると、その上に小さな石、これは?」 「魔晶石です」 「魔晶石?」 「ええ、魔力を蓄えておくことのできる特殊な鉱石です」 「へぇー」 「これに私が魔力を流し込みます」 「わかった」 「いきますよ」  そう言うと同時に、彼女のうっ……」 「どうした?」 「ちょっと痛いだけです」 「大丈夫か?無理しなくても良いぞ」 「いえ、大丈夫です。続けさせてください」 「わかった」 「行きます!」 「ぐっ」 「もう少し耐えてください!」俺は歯を食い縛りながら必死に耐え続ける。  やがて…… ピキッ! 何かが割れるような音が聞こえてきた。  それと同時に、全身を駆け巡っていた痛みが嘘のように消え去った。  俺は恐る恐る目を開けてみる。  そこには先程までとは比べものにならないくらい大きくなった魔晶石があった。  これがレベルアップか!? 俺は自分のステータスを確認してみた。  名前:神威愛梨  職業:魔法使い(全属性)  レベル:25/100  HP:15800/15800  MP:300000/300000  EXP:0 2500  攻撃力:5080  防御力:4520  素早さ:4670  魔力:5200  成長度:100  耐性:火・水・風・土・光・闇・毒・麻痺・呪い  特殊スキル:言語理解  特技:全武器術魔法適性:全属性  称号:魔王の娘  装備 頭:賢者の帽子  体1:賢者のローブ  体2:賢神の衣  足:賢神の靴  持ち物:叡智の書  アイテムボックス 所持金:10万G レベルが25 になっている! それに新しい称号が…… でも今はとりあえず…… 俺はリリスの方を見た。  彼女は今にも倒れそうな顔をしている。  おそらく、かなりの負担がかかったのだろう。  俺は慌ててリリスのもとに駆け寄った。  そして、彼女の身体を支えるようにして抱きかかえる。

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 第2章…【逆転】

 第2章…【逆転】  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 「なぁ、そろそろ教えてくれないか?一体何を企んでいるんだ?」  突然、隣を歩く彼が話しかけてきた。 「あら、何かしら?」 「とぼけるなって。君の目的は何なんだ?」  どうやら彼は納得していないようだ。  それも当然のことか。  彼は私の指示通りに動いているだけで、私が何をしているのかは知らないのだから。  だけど、私は彼に真実を話すつもりはない。  そもそも話そんなことよりも、あなたこそ私に隠し事をしているんじゃなくて?」  私は質問で返すことで話を逸らす。 「……どういうことだ?」  彼の声色が変わる。 「言葉通りの意味よ。あなたが何者かが気になるって言っているの」  私は彼の反応を見ながら続ける。あなた、本当に人間なのかしらね」 「…………」  彼は黙ったままだった。  私はそれを無視して続ける。 「昨日のことよ。私の知り合いから聞いたんだけど、最近この辺りの街に正体不明の一団が現れたらしいわ。なんでも、全員がフード付きのローブを着ていて、素顔を見た者は誰もいないそうよ。しかも、その集団は魔法を使って人を襲うそうよ」 「……」 「ねぇ、これってあなたたちの仕業じゃないの?」 「……」 「だんまりかしら?まあいいわ。でも、あなたたちのことを見過ごすことは出来ないわ」 「……それで?」 「あなたたちが私たちを狙っているのなら、ここで倒させてもらうわ!」 「……」 「さあ、覚悟しなさい!」 「ふぅー」  僕は深呼吸をして心を落ち着かせる。  目の前にいる女の子はどう見ても子供にしか見えない。  だけど、彼女が放つオーラのようなものは明らかに普通ではない。  おそらく、彼女は強い。  そうでなければこんなところまで来れるはずがない。  それに彼女の言う通り、ここは僕が守るべき場所だ。  だからこそ、絶対に負けるわけにはいかない! そう決意して剣を構える。 「いいぜ!かかってこい!!」 「言われなくても!!」  僕の挑発に少女は乗ってきた。  よし!まずは相手の出方を見るぞ! 「はああっ!!」  次の瞬間、少女の姿が見えなくなった。  いや、正確には消えたように見えたのだ。 (――速いっ!) 「くっ!」  咄嵯に横に跳んで回避する。  するとさっきまで立っていた場所に少女がいた。 「へぇ~今のを避けるなんてやるじゃん!」  嬉しそうな表情を浮かべながら少女は再び今度は逃がさないわよっ!」  そう言って再び姿が消える。 (――またかっ!?)  しかし、今度は見えた。  なぜなら、彼女が現れる場所は決まっているからだ。  それは足元だ。  つまり、地面だ。  そして、そこには必ず影が出来る。  だから、その場所さえ分かっていれば攻撃を防ぐことは可能だ。  それにしてもなんという速さだ。まるで光の速度だ。  だが、それでも避けられないほどではない。 (――次こそは受け止めてみせる!!)  心の中で叫ぶと同時に少女が再び姿を現した。  今度も真下だ。  僕はタイミングを合わせて足を振り上げる。  ガキンッ!! 激しい音と共に火花が散り、互いの武器がぶつかり合う。  そして、鍔迫り合いのような状態になりながらも、互いに睨み合った。  一瞬の間があり、その後すぐに二人は距離を取った。  そして、仕切り直しとばかりに再び戦闘が始まる。  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 戦いが始まってからどれくらい経っただろうか? 実際にはそれほど時間は経っていないのかもしれない。  だけど、私にとっては数時間にも思えるような長い時間だった。  最初は何とか攻撃を防いでいた彼だったが、徐々に動きが悪くなり、今では避けるので精一杯といった様子だ。  私は焦っていた。このままでは勝てる気がしない。  そう思った私はある作戦に出ることにした。  私は彼の懐に入ると、そのまま体当たりをした。  彼は突然の攻撃に対処出来ずに吹き飛ばされてしまう。  私はすかさず追い打ちをかけるべく、彼の元へ向かう。  これで決めるわよ! 私は剣を構え、彼に向かって走り出した。  その時だった。  突如として視界の端から黒い何かが現れ、私を吹き飛ばした。  いったい何が起こったのか分からなかった。  ただ一つ分かるのは、私が地面に倒れているということだ起き上がろうとするも体が動かない。 「う、嘘……どうして……」  かろうじて動く口を動かして呟いた。 「悪いな。お前の勝ちだよ」  彼がこちらを見下ろしていた。 「な……んで……?」  私は絞り出すように声を出した。 「簡単な話さ。俺の能力は『主人公補正』。どんな状況でも主人公が勝つようになっているんだよ。だから、俺は負けないんだ。まぁ、今回は相手が悪かったけどな。じゃあ、そろそろ終わりにするぜ」  彼はそう言うと、剣を構えた。  私は恐怖で目を瞑った。 「安心しろ。。殺しはしねぇよ」  彼の言葉を聞いて目を開ける。  そこには既に彼の姿はなかった。  代わりに私の目の前には大きな熊が横たわっている。 「えっ?」  私は訳が分からないまま立ち上がって辺りをキョロキョロと見回す。  どうやら、  夢を見ていたみたいね」  ホッとしたせいか急にお腹が減ってきたので、私はその場を離れることにしたのだった。  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 「ふぅー危なかった。まさかあんなところで出会うとは思わなかった」  僕は安堵のため息をつく。  その頃ガルティア王国では冥界から伝説の龍、「ハチダイリュウオウ」、「シカイリュウオウ」、「クリカラリュウオウ」、「シンリュウオウ」の4体が現れた。  4体の竜王は世界中に散らばり、それぞれ別の街を破壊し始めた。  そして、その混乱に乗じて、1人の男が現れた。  その男は自らを魔王と名乗り、世界征服を宣言した。  しかし、その男が魔王を名乗るには理由があった。  実はこの世界にはまだ5人目の魔王が存在していたのだ。  その存在を知る者はほんの一握りしかおらず、世間には公表されていない。だが、ある時を境に各地で異変が起こり始める。  それは魔界と呼ばれる異世界の存在が確認されたことだった。  5人目の魔王の名はルキア。彼女は人間界に現れると、次々と魔族を生み出していった。  そして、生み出された魔族は人を襲うようになった。  さらに彼女は人間と契約を交わすことで、より強力な力を与えることができることを発見した。  こうして、人知れず世界は崩壊への一歩を踏み出していくことになる。  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 時は少し遡り、ここはとある国にある城の中。  玉座に腰掛ける一人の女がいた。彼女の名はルナリア・クレース。  かつて、勇者パーティーの一員として活躍したこともあるほどの実力者である。  そんな彼女がなぜこんなところにいるかというと、それは少し前に遡る。  ある日のこと、突然、彼女の前に一人の少女が現れる。  少女の名前はアメリア。  見た目はとても可愛らしいのだが、なぜか全身が血まみれの状態だ。  少女が口を開く。  しかし、少女の声が聞こえることはなかった。  なぜなら、少女の喉は潰れていて、喋ることができなかったからだ。  少女は筆談によって会話をすることに決めたようだ。  "あなたは誰ですか?" 少女は紙に書き込んで見せる。  すると、それを覗き込むようにして見た後、すぐに自分の名前を書いて見せた。  少女の名前を見て、驚きを隠せない様子だ。  そして、少女もまた驚いているようだった。  お互いがお互いに見つめ合っていると、不意に扉が開いた。  入ってきたのはこの国の王だ。  王は入ってくるなり、二人を見るなり、すぐに駆け寄ってきた。  そして、泣きながら抱きしめた。  しばらく時間が経ち、落ち着いた頃を見計らい、王が口を開いた。  なんでも、王の一人娘のステラ姫が亡くなったという。  死因は不明で、何者かによる暗殺の可能性が高いという。  そこで、犯人探しが始まった。  まずは、メイドたち全員から話を聞こう。怪しい人物を見た者がいるかもしれない」  そう言って、一人ひとりに質問を始めた。  だが、誰も何も知らなかった。  ただ一人を除いて。 「―――――」 「ん? 何か言ったか?」 「―――――――― 「なんだって?」 「――」 「よく聞こえないぞ」 「――」 「もっと大きな声で言ってくれ!」 「――」 「くそっ! 全然聞き取れない! 一体なんと言っているんだ!?」 「――」 「……いや、待てよ。もしかしたら……」 「――」 「……いや、やはりダメだ。そんなことあり得ない。……いや、でも……」 「――」 「そうだ、これはきっと夢に違いない。……よし、頬っぺたをつねれば目が覚めるはずだ「――」 「……痛いな。ということは夢じゃないのか……。まさか、本当に……?」 「――」 「分かった、信じよう。……で、なんて言っているんだ?」 「――」 「なにぃ!? そいつは何者だ?」 「――」  なになに、名前はアルスランだと?……おい、そいつはどこに住んでいるんだ?」 「――」 「そうなのか。ありがとう、助かったよ」 「――」 「あぁ、また会おう」 「――」 「あぁ、それじゃあ」 「――」 「じゃあね」……………… 「あぁ、楽しかった」 「さすがに、もう限界かな」 「でも、もう少しだけ」 「うん」 「わかった」 「あとちょっとだけだよ」 「うん「ごめんね」 「いいの?」 「ありがと」 「がんばる」 「おやすみ」 「おやすみなさい」 「おやすみ」  その瞬間、すべてが消えた。  あるのはただ真っ白な空間だけだった。  そこには俺しかいなかった。  俺はいったいどうしたのだろう。どうしてここにいるのだろうか。  思い出せない。俺は何者で、ここはどこか。  ただわかる俺は立ち上がり歩き出した。どこに行けばいいかわからなかったが、それでも歩くしかなかった。  どれくらい歩いたのだろうか。  気がつくと目の前には巨大な塔があった。  それはまるで天まで届くかのように高く聳え立っていた。  その高さに圧倒されながらも、なぜかその塔に入らなければならない気がして、中へと入っていった。  中は螺旋階段になっており、上へ登っていくごとにどんどん暗くなっていった。  やがて頂上に着いたとき、そこは外ではなく、薄暗い部屋になっていた。  部屋の中央にある台座の上には、一冊の本が置かれていた。そして、それに呼応するかのように、本が輝き始めた。  眩しい光が収まった後、そこにいたのは一人の少女だった。  少女はこちらを見ると、微笑みを浮かべながら話しかけてきた。  少女は自らを神と名乗った。  ここは神の住む世界だという。  なぜ自分はここに来たのか。それはわからないらしい。 「君が持っている本を私に見せてくれないかしら」  言われるがままに持っていた本を手渡す。  すると、表紙をめくった次のページに文字が浮かび上がってきた。 【この本を読める者が現れた時、私は再び目覚めるであろう】  そう書かれていた。 「そう、そうなの。あなたは選ばれたのね」  少女はそう言うと、少し寂しそうにしてから、「ねぇ、少し話をしない?」と言ってきた。  断る理由もなく  ああ、構わないよ」と答えた。  少女は嬉しそうに笑っていた。それからしばらく二人で話していたのだが、突然少女が泣き出してしまったのだ。 「……ぐずっ……うぅ……ごめんなさい……急に泣いたりなんかして……」  彼女は涙を拭いながら、あの……聞いてくれるかしら……」と言い、自分のことを語りはじめた。  少女の名前はアイシア。  この世界を創ったものの一人だと言う。  そして、彼女はとても悲しく辛い過去を持っていた。  彼女の生まれた星は地球と呼ばれていたらしい。  そして、そこでは皆幸せに暮らしていたのだという。

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 第1章…【暗殺者】

第1章…【暗殺者】  赤き月の廻るころ、ガルティア王国では大規模な反乱が起こっていた。  ガルティア王を打倒するため、貴族たちが手を結び挙兵したのだ。  ガルティア王は軍を組織し鎮圧に当たるが、反乱軍も精鋭ぞろいであり苦戦を強いられる。  しかし、反乱軍の首魁である元宰相が討ち取られたことで戦況は一変する。  その後、国王軍は勢いを増し、反乱を鎮圧した。  そしてその戦いにおいて、英雄と呼ばれた男が居た。  彼の名はアベル・レヴァンタ。  レヴァンタ男爵家の長男にして、王国の第一王子でもある。  この物語は、そんな彼が英雄として称えられる前の物語――  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆  ――これは、とある少年の物語だ。  少年の名前はアリシア・クリステラ。  平民の出身でありながら魔法の才能を認められ、学園に入学を許された優秀な生徒だった。  だが、入学して早々に問題を起こしてしまう。  理由は些細なことだった  のだが、その態度に激怒した学園長から停学を言い渡されてしまったのだ。  そして謹慎期間が明けて数日後のこと。  学園長はアリシアを呼び出すと、あることを告げた。  それは――  ――お前を退学処分とする! そう言い放ったのだ。  突然の宣告に驚くアリシアだったが、さらに追い打ちをかけるように学園長が言葉を続ける。  ――今すぐに荷物をまとめて出て行け! これ以上ここに居るようなら拘束し、衛兵に引き渡すことになるぞ? 有無を言わせぬ口調で凄まれてしまい、アリシアは何も言えなくなってしまう。  こうしてアリシアは、半ば強制的に学園を追い出されてしまったのであった……。 「うーん、これからどうしようかなぁ」  学園を出たあと、私は街の中をあてもなく彷徨っていた。  正直なところ行く当てなどない。  お金だって持っていないし、頼れる人も……あれ?」  ふいにあることに気付き足を止める。  辺りを見回すとそこは見覚えのある場所だった。 「ここって……」  間違いない。ここは私が住んでいたスラム街だ。  どうしてこんなところに来ちゃったんだろう……? 不思議に思いながらもとりあえず歩いていくことにした  ……!」  しばらく歩いていると誰かの声が聞こえてきた。  何だろうと思い声の方へと向かってみることにする。  するとそこには一人の男の人が立っていた。 「おい、そいつを捕まえてくれ!!」  男の人は大きな声で叫んでいるようだった。  よく見ると、何か小さな生き物を追いかけているようだじっと見つめると目が合ってしまった。  すると、追いかけられていた小さな生き物は一目散に逃げていってしまう。 「ああっ!?逃げられた!!くっそ~!!」  悔しそうな表情を浮かべながらこちらに向かってくる男の人。 「おっと、ごめんよお嬢ちゃん」  そのまますれ違おうとした瞬間、急に手を掴まれた。  驚いて振り返ろうとするも、すごい力で握られていて振りほどけない。 「痛いっ!」  思わず叫ぶとようやく手が離された。  恐る恐る顔を上げると、さっきまで笑顔だったはずの男の人の目はまるで別人のように冷たくなっていた。  そして口を開くとこう言った。  ――君には死んでもらうよ そう言うと同時に私の胸ぐらを掴み上げてくる。  あまりの力の強さに息苦しくなり、必死に抵抗するが全く意味がない。  やがて意識を失いそうになったその時―― (……………さん!姉御!!」  聞き慣れた声と共に身体を引っ張られる感覚があった。  直後、ドサッという音とともに地面に放り出される。 「ゲホッゴホゴホッ!ハァッ……ハッ……」  咳き込みながらも呼吸を整えようとする。……一体何が起こった大丈夫ですか姉御?」  心配そうに見下ろしているのは弟のダリアだった。 「うん、何とかね……ところで今は何時かしら?」  ゆっくりと立ち上がりながら尋ねると、弟は懐から時計を取り出して見せてくれた。 「今は夜の11時半です」  それを聞いて私はため息をつく。  今日も寝不足確定だわ……。  ―――私がこの世界に転生したのは8歳の時のことだった。  前世の記憶を思い出したのはちょうど誕生日を迎えた日のことである。  それまで私は、ごく普通のどこにでも居る女の子として生活していた。  それがある日突然、頭の中に見知らぬ記憶が流れ込んできたのだ。  そのせいで数日間熱を出して寝込んでしまったのだが、それも今ではいい思い出だ。  そしてその日から、私は自分の置かれている状況を理解したのだった。  この世界はかつて自分がプレイしたことのある乙女ゲームの世界なのだと。  ただ一つ、本来ならヒロインであるはずの自分ではなく、悪役令嬢として生まれ変わっていたことを除いて――  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆  ――翌日、私は早速行動を開始した。  まずは情報を集めることから始めることにしたのだ。  そして集めた情報を整理した結果、この世界で生きていくためには力が必要だということに気付いたのだった。  そして次に考えたのは自分の力を鍛えることだった。  そこで目を付けたのが学園に通うことだった。  学園では様々なことを学べるし、人脈を広げることも出来るからだ。  それに学園に通えばお金も稼げるから一石二鳥だと思ったのだ。  だがしかし、ここで一つの問題が浮上した。まさか、入学金が必要なんて……」  そう、学園に入学するには多額の費用がかかるのだ。  平民出身の私にとっては大金を支払わなければならない。  だからといって諦めるわけにもいかない。  どうにかして費用を工面しようと考えたのだが、なかなか良い案が浮かばなかった。  そんな時、父に学園に通いたいと言ったところ、あっさりと了承してくれたのだ。  そして、とんでもない条件を突き付けてきたのだった。  それは、学園に通っている間は父の商会で働かないこと、そして卒業するまでに成果を出すこと、の二つであった。  つまり、自分で学費を稼ぎながら学園を卒業しろと言っているのと同じことだった。  いくらなんでもそれは無理があるのではないかと思っていたのだが、父は本気のようで一切譲歩してくれなかった。  結局、学園に入学できたものの、私は途方に暮れていたのだった……。  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆  ――それから数日後、私はある人に声を掛けられた。  それが今の私の仕事仲間であり、家族でもある弟だ。  最初は仕事の話を持ちかけられただけだったが、いつしか一緒に仕事をするようになっていた。  弟とは歳が離れていることもあり、実の弟というよりはむしろ息子のような存在だ。  だけど彼はとても優秀だし、私のことを大切に思ってくれていることもよく分かる。  いつも私のことを助けてくれるし本当に自慢の息子だと思う。  そんなある日のこと、私は彼にお願いをした。  私の大切な人を助けて欲しいと――  その人は私の恩人であり、尊敬できる人物でもあり、同時に愛している人でもあった。  だからこそ彼だけはどうしても救いたかった。 「わかりました。姉さんの頼みなら引き受けますよ」  そう言って微笑む彼の笑顔はとても頼もしくて安心感を与えてくれた。 「ありがとう。あなたならきっと助け出してくれるって信じているわ」 「はい!任せてください!」  力強く返事をする弟に、私は心の底から「頼りにしているわ!」  と言って笑ったのだった。 「それで、姉さんはどうするつもりなんですか?」  弟が尋ねてくるが、私は考えがまとまっていなかった。  というのも弟に相談したところ、「とりあえず相手の目的を探るべきですね。相手が何を望んでいるのか分かればこちらも動きやすいはずです」と言われたからだ。  そして私は弟のアドバイスに従い、ターゲットに接触してみることにした。  そうして出会ったのが、攻略対象の一人であるダリア・タンジーだったのだ。  弟の言った通り、接触してみると彼はすぐにこちらの目的を見抜いてきた。  さすが我が弟だ。  そう思った矢先、急に胸ぐらを掴み上げられてしまったのだ。 「痛いっ!離しなさい!!」  思わず叫んでしまう。  すると、男は急に手を離すとこう言ってきた。 「ああっ!?ごめんよお嬢ちゃん!」  そしてそのままその時だった。  男が一瞬ニヤリと口元を歪めたように見えたのだ。 (――っ!!)  直感的に危険を感じた私は咄嵯に弟の手を掴むと、そのまま走り出した。  その直後、後ろから大きな爆発音が聞こえたのだった。 (危ないところだったわ……)  男から離れ物陰に隠れると、ようやく私は安堵のため息をつくことが出来た。  あの時、弟が止めてくれなければ今頃は死んでいたかもしれない。  改めて弟に感謝しなければ。  だが、まだ危機が去ったわけではない。  弟も私も今の状況では満足に戦えない。  それに相手の目的は分からないままだ。  私はこれからの行動について考える。  そしてしばらく悩んだ結果、私はある決断を下したのだった。  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆  ――翌日、私はダリアを連れて街へと繰り出した。  目的は情報収集と食料の確保である昨日、私は考えた末にまずは情報を集めることにした。  そして集めた情報を元に対策を考えることにしたのだ。  まずは情報を集めようと考えたのは、相手に情報を与えることなく行動を起こすためだ。  私が知っている情報は限られているし、その情報だってどこまで信用出来るか分かったものではないだから、なるべくリスクを減らすためにも慎重に動く必要があった。  そこで、ダリアの出番というわけだ。  彼の能力があれば大抵の情報はすぐに集めることが出来るし、何より顔が広い。  さらに言えば、いざとなった時に私を守ることも容易だろう。  そう考えた上での判断だもちろん弟には反対された。  それはそうだ。  いくら何でも弟を置いていくわけにはいかない。  だから、私は弟と一緒に行くことを条件に彼を連れて行くことを決めたのだ。  弟には申し訳ないが、今は私一人で行動するわけにはいかない。  それに彼ならば上手くやってくれるはずだ。では、早速行きましょう」  こうして私たちは街の中を歩き始めたのだった。

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最終話…最後の授業

そして冬になった。  炎狐先生と虎丸先生と希子先生と神間先生は散歩をしていた。  希子先生)寒いですねぇ。  神間先生)本当だよな。  希子先生)早く春になって欲しいですよ。  神間先生)本当本当。  希子先生)ところで最近寒くなってきたから風邪には気をつけないといけませんね。  神間先生)うん  虎丸先生)あっという間に12月になりましたしね。  炎狐先生)皆さんも体調崩さないようにしてくださいね。  すると後ろの方から声が聞こえてきた。  そこには蘭丸先生と琥珀先生がいた。  琥珀先生) 大丈夫ですよ。  蘭丸先生)俺も元気なので心配しないで下さい。  炎狐先生)なら良かったです。  蘭丸先生)炎狐先生って本当に優しいんですね。  炎狐先生)いえそんなことはありませんよ。  その時、私のお腹が大きな音を立てた。グゥー。  私は恥ずかしさのあまり顔を赤くした。  炎狐先生)お昼ご飯食べてなかったな。  琥珀先生)みなさんで焼肉食べに行きましょう!  こうして炎狐先生、虎丸先生、希子先生、神間先生、琥珀先生、蘭丸先生はみんなで焼肉屋に向かった。その道中では色んなお店があった。  希子先生)ここのお店のラーメン美味しいんですよ。  琥珀先生)へぇ〜そうなんだ。  炎狐先生)行ってみようか。  琥珀先生)そうですね。  蘭丸先生&虎丸先生&神間先生) 賛成! 私達はお店の中に入った。  店員)いらっしゃいませ。  席に案内された。  炎狐先生)じゃあ注文しよう。  琥珀先生)はい。  虎丸先生)俺はカルビがいい。  琥珀先生)僕はタン塩が食べたいなぁ。  神間先生)僕も同じのを食べたい。  炎狐先生)それじゃあ私が頼んでくるよ。  全員分を頼み終わり、しばらく待っているとお肉が来た。  早速焼いて食べることにした。  琥珀先生)うまっ! 炎狐先生確かにこれはうまいな。  希子先生)でしょう?  炎狐先生)はい。  それからお酒を飲みながら話していた。  琥珀先生)そう言えば…炎狐先生は来年の3月にここの学校の先生を辞めるんですよね……  炎狐先生)はい。  琥珀先生)寂しくないですか?  炎狐先生)まあまあかな。  琥珀先生)本当ですか?  炎狐先生)本当だよ。  神間先生) 本当ですか!?︎  炎狐先生)本当だよ。  希子先生)嘘だ。絶対悲しいと思ってますよね。  炎狐先生)思ってますけど。  希子先生)やっぱり(笑  希子先生が笑い出すと他の人も釣られて笑う。  そしてお会計をして外に出た。  外では雪が降っていた。  希子先生)わっ!寒いですねぇ。  炎狐先生)本当ですよねぇ。  希子先生)早く春になって欲しいですよ。  神間先生)本当本当。  蘭丸先生)あっという間に12月になりましたし。しかも今回で「人格達の日常」の最終回だよな。  そしてこの話を影で聞いていた3人。  風花)えっ!!マジで!?  奏水)そうだよ。  風花)なんかショックかも……。  奏水)なんでよ。  風花)だってもうすぐ卒業じゃん。  奏水)そっか。でもまだあと  シロ)そうだね…  風花)寂しいね…  シロ)うん 私は今、シロちゃん達と一緒にいる。シロちゃん達が私の家に来たから一緒に遊んでいるのだ。  風花)でもあと3ヶ月ちょっとだから頑張ろう!  奏水)頑張って! 風花はやる気満々だった。  風花)ところでさ、みんな進路どうするの? 風花の質問にみんなが黙った。  奏水)まだ決めていない。  風花)そうなんだ。  奏水)そういう風花は決めたの? 奏水が聞くとまたみんなが静かになった。  風花)実は私は決まっていないんだ。  風花が言う。  シロ) 私も。  奏水)私も。  奏水もシロも私も何も言えなかった。  すると奏水がある提案をした。  風花)じゃあ3人で相談しようか。  奏水の提案に賛成した。  風花)まずは奏水からだね。  そのころ、ひかるとるかはラボで研究をしている。  るか)出来たぞー。  ひかる)おっ、何を作ったのかなぁ〜? るかが何かを作っているようだが、俺にはよく分からない物ばかり作っている。  るかが見せてきた物は機械のようなものだった。だが俺はそれがどういうものなのか分からなかった。  これはなんだい?  るか)これはですね、タイムマシンみたいなものです。  なるほど、確かにそれは凄いな。  ひかる)へぇ〜。  そう言えば、前にもこんなことがあったな。  あれはまだ私が小学生の時のことだった。  小学4年生の時、理科の授業中に先生が言った言葉が今でも忘れられない。  〜回想シーン〜 (先生)今日はこの時間を使って実験をします。  先生が準備している時、僕は友達と話していた。  ひかる)ねぇねぇ知ってる?  ひかるの友1)何をだ?  ひかる)あのねぇ、昨日テレビでやってたんだけど、未来って分かるらしいよ。  僕の話を聞いてくれた子は信じていなかった。  ひかるの友2)そんなわけ無いだろう。  その通りだと思う。僕も最初は信じられなかったが、今は信じるようになった。  なぜなら、実際に体験してしまったからである。  先生)それでは授業を始めます。  先生が黒板に文字を書いていく。  先生)この時間は電気について勉強したいと思います。  先生が書いたのは「電流」という字だった。  先生が説明を始める。  先生)皆さんの中には「雷」というものを知っている人もいるでしょう。  先生の話を聞きながら外を見る。空を見ると雲一つ無かった。  先生)昔の人々は、「雷=稲妻」だと考えていました。  そして先生の説明が続く。  先生)ですが、実際は違いました。  先生)昔の人々は、稲妻のことを「電光石火(でんこうせっか)」と呼んでいましたが、今では違う呼び方になっています。  先生がチョークで書いたのは「閃き」という言葉。  先生)昔の人々は、稲妻を見てそれを「閃いた!」と言ったんです。  私は先生の言葉に納得する。  先生)さて、今からこの紙を配りたいと思う。この紙に、自分が将来なりたい職業を書きましょう。  私は配られた紙に自分の将来の夢を書いた。  先生)書き終わった人から帰っていいですよ。  ひかる) 先生!  先生)どうしましたか?  ひかる)先生は何になりたいですか!?︎  先生)先生の夢かい? 先生は自分の夢の話をしてくれた。  先生)先生は科学者になりたかったんだ。でもなれなかったんだ。だから先生になったんだ。  先生)まぁでも後悔は無いけどね。でももしなれたら、どんな感じなんだろうかとは思うな。  ひかる) そうなんだ……  先生)よしっ、もう終わりにして帰ろう。  私達は学校を出た。  るか)ひかる君、これあげる。  るかが渡してきたのは、小さな箱に入ったペンダントのようなもの。  ひかる)これは? るか)開けてみると分かります。  言われた通りに開けた。すると中には指輪が入っていた。  ひかる)綺麗な宝石が付いているな。  るか)それはダイヤモンドと言って、とても硬いんですよ。  ひかる)へぇ〜。  るか)ちなみに、そのダイヤの硬度は約10 で、一番硬くて有名なのが、金剛石と呼ばれている物で、約100でした。  ひかる)へぇ〜。  るか)あと、ダイアモンドには炭素が含まれているのですが、この炭素こそが、燃えると赤く輝く理由なのです。  なるほどな。  るか)あ、そうだひかる。後で一緒にさ飯をくいに行こうや!  ひかる)おう!  そのころアオ、クロ、狼はプロレスの練習をしていた。  アオ)行くぞー!!  クロ)かかってこいやー!!!  狼)おりゃあああああっ!! 〜終了〜  アオ)疲れた……。  クロ)楽しかったぜ。  狼)また明日もやるのかよ。  アオ)当たり前だろ。  そう言って狼は帰った。  アオ)俺達も帰るか。  クロ)そんじゃあな。  アオ)じゃあな。  アオと別れた。  アオ)今日は久しぶりにジムに行くかな。  アオはジムに向かった。  ジムに着いた。  受付の人)こんにちわ。  アオ)こんちわ。  アオ)トレーニングルームってどこにあるの? 受付の人)えっとですね、ここを出て右に曲がったところにあります。  アオ)ありがとう。  アオ)着いた。  アオはドアを開ける。  そこにはたくさんの人がいた。  アオ)おぉ、いっぱいいるな。  アオは空いている場所を見つけそこに座る。  アオ)まずストレッチするか。  アオは体をほぐし始める。  アオ)ふぅ、だいぶ柔らかくなったし、始めよう。  アオはまずランニングマシンに乗る。そして走り始めた。  しばらく走っていると誰かが来た。  狼)お前も来てたか。  狼だった。  狼)やっぱり体を動かさないと鈍っちゃうからね。  アオ)確かにね。  私達は話しながら走った。  しばらくして私達は休憩する。  アオ)なぁ狼。  狼)ん?どうした?  アオ)狼の夢は何?  狼)夢かぁ…… 俺は考えた。俺の将来の夢は何だろうか?  考えてみたけど思いつかなかった。  狼)特に無いかも……  アオ)そうなんだ……  狼)そういうアオこそ何になりたいんだ?  アオ)僕は、プロレスラーになる事だよ。  狼)へぇ〜、そうなんだ。  アオ)うん。  狼)でもなんでそんなに強くなりたいと思ったの?  アオ)それは、僕が小さい頃、いじめられていた時があったんだけど、その時に助けてくれた人がいてね。その人は僕の憧れなんだ。だから強くなってその人に恩返しがしたいと思って。  アオがそこまで言うなんて珍しいな。  アオ)まぁ、その人も今はもういないんだけどな。  狼)亡くなったの!?︎  アオ)ああ。  狼)なんかごめん。  アオ)大丈夫だって。  アオ)よしっ!走るぞ!  狼)おう! 私とアオは再び走り出した。  〜終了〜  そして春になった。  炎狐先生)皆さんおはようございます。  生徒一同)おはようございます。  炎狐先生)今年もこの季節になりました。そう、クラス替えです。  生徒たちはそれぞれ友達と話していたりしていた。  私は誰と同じクラスなのかな……。  炎狐先生)それでは廊下に並んでください。  みんな並び始める。  炎狐先生)はい次。  クロ)俺だな。  クロも終わったみたいだ。  次はシロちゃんだ。  シロ)あ、あたしだ。  シロも終わり最後はアオ君だ。  アオ)よっしゃあ!!  アオ君は気合いが入っているようだ。  炎狐先生)はい、これで全員ですね。では教室に行きましょう。  私たちはそれぞれの新しいクラスの教室に向かった。  ガラガラッ 扉を開けて中に入る。  すると、一人の生徒が話しかけてきた。  ?)おーす。  アオ)お、おぉ。  この子は確か、同じボクシングサークルの子。名前はえっと、忘れた。  えっと、名前、何だったかな。  と、えっと。  ?=魔王アラビス)おいこら待てやお前。  アオ) ん? 振り向くとそこには、黒いフードを被った男が立っていた。  炎狐先生)どちら様でしょうか。  魔王アラビス)お前、ここの学校の教師か。  炎狐先生)はい。  魔王アラビス)ならちょうどいい。俺をここの学校の生徒にしてくれ。  何を言っているのだろう。  炎狐先生)あの、どういうことですか。  魔王アラビス)そのままの意味だが? 意味がわからなかった。  なぜ私が学校の生徒にしなければいけないのか。  そもそもあなたは何者なのだ。  炎狐先生)失礼ながらお聞きしますがあなたのお名前を伺ってもよろしいでしょうか。 魔王アラビス)我の名は、魔王アラビ…… クロ)ちょっと待ちな。  クロさんが入ってきた。  クロさんには何か心当たりがあるのだろうか。  クロ)やっぱりあんたか。  クロさんはこの男を知っているようだった。  炎狐先生)知り合いなんですか?  クロ)ああ。こいつは、前に話した、俺とアオの師匠だよ。  この人が!?︎ でもなんでこんなところにいるんだろう。 それになんで学校に来ているんだろう。  クロさんの言う通りだとしたら、この人は本当に私の学校の先生になるということなの!?︎  クロ)まぁ、そういうことだな。  クロさんも驚いている様子だった。  クロ)まぁ、とりあえず、自己紹介くらいしておけ。  魔王アラビス)ふんっ。まぁよい、我が名のなは魔王アラビスだ。勇者殺しの名を持っている。  クロ)そんなことはどうだって良いんだよ。  クロさんは呆れ顔で言った。  クロさんの言葉を聞いて少しイラついたような顔をする。  魔王アラビス)貴様に言われなくてもわかっておるわ。  炎狐先生)えっと、つまり、あなたは私達の学校の先生になるという事ですよね。  私は恐る恐る聞いてみた。  魔王アラビス)そのとうりだ。  炎狐先生)わかりました。では、これからよろしくお願いいたします。  私はそう言って頭を下げた。  しかし私はこの時、とんでもない人を受け持ってしまったのではないかと不安になっていた。  この人に任せても大丈夫なのかと……。  炎狐先生)では、まず職員室まで行きましょうか。  魔王アラビス)わかった。  こうして、私たちのクラスに新しい教師が加わったのであった。  〜終了〜 そしてとうとう3月になった。  炎狐先生)とうとう来たかこの時が…  今日は卒業式である。  卒業生一同)卒業おめでとうございます! 3年生の先輩達は泣いていたりしていた。  もちろん、アオ君も泣かないわけがない。  アオ)うぅ……ぐすん。  アオ君は泣きまくっていた。  希子)アオ先輩、泣くの早いです。まだ式が終わっただけじゃないですか。  希子はあきれたように言ってきた。  確かにそうだ。  そして卒業式の終盤に退職する先生の発表があった。  その中には炎狐先生もいた。  校長先生)では最後に炎狐先生から一言いただきます。  みんな真剣な表情になっている。  緊張しているのだろう。  炎狐先生)みなさんこんにちは。  私の大切なクラスの生徒たち、卒業おめでとうございます。  私は今日をもって学校を退職することになりました。  短い間でしたがありがとうございました。そして卒業式が終わりましたら私のクラスの生徒たちは最後のホームルームをします。  そして琥珀先生、七瀬先生、蘭丸先生、狐鉄先生、虎丸先生、神間先生、白黒先生今まで私のことを支えてくれたり話してくれたりして下さりありがとうございます。  炎狐先生)琥珀先生には私が相談に乗ってもらったこともありとても感謝していますし、いつも優しくしてくれて嬉しかったです。  琥珀先生)いえいえ。こちらこそ。  すると、琥珀先生の目からは涙が出ていた。  炎狐先生)琥珀先生、いつも優しい笑顔で接してくれるので安心しました。  琥珀先生)はい。  蘭丸先生)炎狐先生とはいろんなことがあったよな。  虎丸先生)ああ  神間先生)いろんなところに連れて行ってくれたな。  琥珀先生)はい。  七瀬先生)楽しかったですね。  白黒先生)本当に楽しい思い出ばかりだなぁ。  琥珀先生はしみじみと言った感じだった。  クロ)俺も炎狐先生とはよく遊んだりしたっけ?  シロ)うん。よく一緒にゲームしたりしたよね。  クロとシロも懐かしむような口調で言う。  神間先生)でも、もう会えないのかと思うと寂しい気持ちになるぜ。  風花)私も同じこと思っていました。  奏水)またどこかで会いたいね。  苺)そうですよねぇ。  奏水の言葉に苺や風花など他の生徒達も大きくうなずいていた。  炎狐先生)きっといつか再会できる日が来ると思います。  その時はよろしくお願いいたします。  そして卒業式が終わりそして教室に戻った。そして最後のホームルームが始まった。  炎狐先生)これが本当の最後のホームルームになります。  これから皆さんは大学生にや社会人になりますね!将来の夢のためにこれからも頑張ってね!  私はもう学校の先生をやめたのでもう皆さんと会うのがこれで最後になります。  だからと言って、この学校であったことを忘れないで下さい。  もし、何か困ったことや悩み事があればいつでも連絡をしてください。  クラス一同)きりつ!きょうつけい!れい!今まで3年間お世話になりました!  そして炎狐先生ありがとうございました。  炎狐先生は泣きながら教室を出た。  こうして、私の長いようで短かった教師生活が終了したのであった。  〜完〜  管理人)最後まで読んでいただきありとうございます!!  そして今回は特別ゲストの祭利さんと舞利愛さんが来てくれました。  二人ともどうぞ宜しくお願い致しますm(_ _)m  祭利)はい。  舞利愛)はーい!  まずは自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか?  祭利)えっと……僕は……  舞利愛)私は~♪  祭利)あっあの僕から先に言わせてもらってもいいですか!?  舞利愛)あ、はい……。  では、祭莉の方から自己紹介を聞かせてください。  祭利)では、改めましてこんにちわ。  初めましての方ははじめまして。 『祭利』と申します。  以後、お見知りおきを。  舞利愛)さて、次は私の番。こんちには。  祭利の彼女の「舞利愛」です。  呼びやすい方で呼んでくれれば大丈夫だよ。  ちなみに好きなものは甘いもの全般と可愛いものとかかな。嫌いなものは特になし。  苦手なのは虫とか爬虫類系のもの。  よろしくお願いします。  管理人)はい。こちらこそよろしくお願いします。  それじゃあ早速質問していこうと思います。  この「人格達の日常」を読んでどうでしたか?  舞利愛)面白かったですね。  それにとても読みやすかったし話の内容も面白くて良かったなと思いました。  特に主人公の炎狐先生の性格や考え方や行動力などが凄く共感できました。  あと、登場人物達がみんな個性的で面白い人達ばかりでした。  管理人)なるほど。  では、読者の皆様に一言メッセージを。  祭利)この作品を通して少しでも多くの人に楽しんで頂けたら嬉しいです。  そして我々が登場している、「解離世界の子供たち」をもし良ければも読んでくださると嬉しいです!  管理人)はい。ありがとうございます。  最後にに舞利愛さん。  読者に一言を述べてください!  舞利愛)私達のような多重人格者の物語を読んだことがない人は是非一度読んでみて欲しいなって思います。  それと、多重人格者の方は勿論のこと、そうでない人も楽しめる作品になっていると思うので、気軽に読んでいただけたら幸いです。  管理人)はい。  本当に今日は来て下さり誠に有難う御座いました! またどこかで会える日が来ることを楽しみにして待っていますね。  では、本日の対談はこれにて終了となります! 次回もお楽しみくださいませ!  管理人&祭利・舞利愛)ばいばーい!    

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 第4話…思い出

 第4話…思い出     炎狐先生)希子先生ー。早くー。  希子先生)待ってくださいよー。  炎狐先生)遅いよー。  希子先生)すみませんでしたー。  炎狐先生)もう。  希子先生)暑いですね。  炎狐先生)そうだね。  希子先生)かき氷食べに行きましょう。  炎狐先生)賛成。  私達は近くの店に入った。  炎狐先生)何味にする?  希子先生)イチゴで。  炎狐先生)私もそれで。  店員)かしこまりました〜。  炎狐先生)美味しいなぁ〜。  希子先生)そうですね〜。  炎狐先生)そういえばさぁ〜。  希子先生)はい〜。  炎狐先生)最近さぁ〜。  希子先生)はいはい〜。  炎狐先生)なんか、私の扱い雑じゃない?  希子先生)気のせいですよ。  炎狐先生)絶対違うと思うんだけどな……。  希子先生)はい、終わり。次行きましょう。  炎狐先生)えぇ……。  希子先生)次はどこ行きますか?  炎狐先生)うーん……。あっ!ここ行きましょう。  希子先生)いいですね。そこ入りますか!  炎狐先生)よし!入ろう! 中に入るとそこはゲームセンターだった。そこにはアオと狼とクロと風磨がいた。  アオ・狼・クロ・風磨)おっ!!︎  風磨)炎狐先生と希子先生だ。  炎狐先生)みんなここで遊んでたんだな。  アオ)俺達も遊びに来てたんすよ。  狼)お前らこそなんでここににいるんだよ。  クロ)まあまあ、落ち着いて。  風磨)お二人共仲良いっすね。  炎狐先生)まあな。  アオ)まあな。  風磨)まあな。  炎狐先生)真似するな。  アオ希子先生)ちょっとうるさいですけど許してあげてください。  アオ)希子先生が言うなら仕方ない。  風磨)しょうがない。  炎狐先生)おい、なんだその態度。  風磨)冗談だって。  炎狐先生)ったく。  希子先生と私はクレーンゲームのところに行った。  希子先生)これ可愛いと思いませんか!? 希子先生が指差した先には大きなクマのぬいぐるみがあった。  炎狐先生)確かに。欲しいのか?  希子先生)はい。でも取れないんですよねぇ。  炎狐先生)私が取ってやるか。  そして100円を入れた。アームを動かすとすぐに落ちた。  炎狐先生)取れちゃいました。  希子先生)ありがとうございます。  炎狐先生)いえいえ。  その後、色んなところを回った後、帰る時間になった。  炎狐先生)楽しかったな。  希子先生)はい。また来たいですね。  炎狐先生)うん。それじゃ夏休み明けに職員室で会いましょう!  希子先生)はい。  炎狐先生)ばいば〜い。  希子先生)さよなら〜。  炎狐先生)ふぅ〜。今日も疲れたなぁ〜。  次の日、ひぐらしがうるさいほどないている頃。  私はまだ寝ていた。  ピンポーン。  誰か来たようだ。まだ眠いから無視しよう。  しかし、何度もチャイムが鳴る。  炎狐先生)誰だよ…… ドアを開けるとそこにいたのは奏水と睡蓮花と苺と風花と倉と萌香が来ていた。  奏水)おはようございま〜す。  睡蓮花)お邪魔しま〜す。  苺)お邪魔します。  倉)お邪魔させていただきます。  萌香)お邪魔させてもらいます。  全員)おぉ!広い!  炎狐先生)そうかな?  奏水)広すぎですよ!  炎狐先生)そんなことより何の用?  奏水)それはもちろん……。  炎狐先生)なんだよ……。  奏水)ゲームをしに来たんです!  炎狐先生)えぇ……。  誰かが階段から降りてきた。  希子先生) みんな来てたんだね。  奏水)あっ!希子せんせー。  希子先生)どうも。みんなで集まって何をしているのですか?  奏水)それはもちろん遊びに来てるのです。  希子先生)そうなの。楽しんで行ってくださいね。  奏水)はいっ!  希子先生)ところでなんのゲームをして遊ぶの?  奏水)それはもちろん人生ゲームです。  希子先生)いいわよ。やろうやろう。  炎狐先生)よしっ。やるか。  こうして、私の家で人生ゲームが始まった。  奏水)まず最初は私からだ。  奏水がルーレットを回すと出た目は4だった。  奏水)やった。1だ。  希子先生)よかったじゃない。  次は倉の番倉がルーレットを回した。  出た目の数は5。  倉)おっ。結構良いぞ。  萌香がルーレットを回し出した。  萌香)うそ!?︎1しかないじゃん。  希子先生)あらら。残念。  続いては風花のターン。風花がルーレットを回して止まったところの数は6だった。  風花)あちゃ〜。ついてないなぁ。  そして、今度は睡蓮花がルーレットを回し始めた。睡蓮花が止まったのは2。  睡蓮花)2かぁ。そして、最後は苺の番。苺)えいっ!……1でゴール!  希子先生)おめでとうございます。  奏水)苺ちゃんお金持ちになったねぇ〜。  苺)ありがとうございます。  倉)私達も早くやろ。  倉がルーレットを回し始める。  倉私は3だからな。1とか出てほしいな。  倉の願いが叶ったのか倉が止めたマスには『好きな人と結婚できる』と書いてあった。  倉)結婚だって。  奏水)おぉ。お幸せに。  奏水に茶化されたが、倉が選んだ相手は意外な人だった。  倉)この人でお願いします。  私が指差したのはクロさん。クロさんは驚いた様子を見せた。  クロ)俺なんか選んでくれるなんて嬉しいな。  倉)よろしくお願いします。  クロ)こちらこそ。  奏水)お似合いですね〜。  倉)そうかな?  風花)うん。お似合だと思うよ。  倉)ありがと。  その後の人生ゲームではお金を増やしたり減らしたりするだけで特に変わったことはなかった。  奏水)楽しかった。またやりたいな。  倉)そうだね。今度もやろう。  風花)次も楽しみにしてます。  希子先生)いつでも来てくださいね。  炎狐先生) みんな気をつけて帰れよ。  全員)さよならー! 全員を見送った。  炎狐先生)さてと片付けでもするか。  食器などを洗ってから希子先生と炎狐先生が部屋に戻る。  炎狐先生)ふぅ……。疲れたな……。  希子先生)今日も色々あって面白かったです。  炎狐先生)それは良かったです。  希子先生)ところで、明日は何をしましょう?  炎狐先生)何がしたいですか?  希子先生)えっと……その……。  どうしよう。何か言わないと変な空気になる気がするんだけど何も思いつかないな。  希子先生)あの……一緒にお風呂に入りませんか? 突然のお誘いでびっくりした。  炎狐先生)いいですよ。入りに行きましょう。  朝ごはんを食べてからお昼までずっとゲームをしていた。  希子先生)もうお腹空きましたよね。ご飯作ります。  希子がキッチンに立つ。  希子先生)何が食べたいですか?何でも言ってください。  炎狐先生)じゃあオムライスが食べたいな。  希子先生)わかりました。待っていて下さい。  しばらくしてオムライスが運ばれてきた。  オムライスの上にケチャップで書かれた文字は『大好き』だった。  炎狐先生)美味しい。  希子先生)よかった。  食事が終わったあとはソファーに座ってテレビを見たり、話をしたりして過ごした。  希子先生)そろそろ温泉に行きましょう!  炎狐先生)行きましょう。  準備をして、車に乗って出発した。  旅館に着くと、チェックインを済ませて部屋に案内された。  部屋の中に入ると大きな窓から景色が見えるようになっていた。  窓を開けると心地よい風が流れ込んできた。  外を見ると綺麗な海が広がっていた。  炎狐先生)本当にいい眺めだね!  希子先生)はい。とても素敵です。  荷物を置いて少し休憩してから外に出ることにした。まず最初に行ったのはお土産屋。  お店にはたくさんの種類のお守りがあった。  お店の人に聞くとおすすめを教えてくれたのでそれを買うことにした。  お店を後にすると次はおみくじを引いた。結果は大吉。恋愛運が最高らしい。  他にも色々なものを買った。  お店で買ったものを持って車に戻ってきた。  炎狐先生)ただいま。  希子先生)おかえりなさい。  炎狐先生)おみやげたくさんあるけど後で渡すね。  希子先生)ありがとうございます。  しばらくドライブを楽しんだ。  そして温泉旅館に戻った。  夕食の時間になった。  料理はとても豪華だった。  料理に舌鼓を打っていると希子先生が話しかけてきた。  希子先生)そういえばお酒飲みたくないですか?  炎狐先生)お酒を飲んだことないんです。どんな味なんだろうなぁ。  希子先生)飲んでみたいなら私がお酌しますよ。  お言葉に甘えてお酒をいただいた。  初めて飲むお酒の感想としては苦くて不味かった。  希子先生)どうですか?初めてのお酒のご気分は?  炎狐先生) うーん……。よくわからないです。でもお料理はどれもすごくおいしいです。  希子先生)それは良かったです。もっとお料理も楽しんでください。  炎狐先生)はい。いただきます。  料理も全て平らげた。  その後部屋に戻ってからまた温泉に入った。  その日の夜も一緒に寝ることになった。  炎狐先生)今日も一緒に寝るのですね。  希子先生)嫌……でしょうか……?  炎狐先生)いえ……そんなことはないのですが……  希子先生)なら一緒に眠りませんか……?  炎狐先生)わかりました。  布団に入って横になる。  希子先生)おやすみなさい。  炎狐先生)おやすみ。  希子先生)……。  炎狐先生)まだ起きていますよね。  希子先生)はい。眠れなくて。  炎狐先生)私もです。何を考えていたのですか?  希子先生)えっと夏休み明けのテストの内容をどんな感じにしようかなって…  炎狐先生)真面目なことを考えているのですね。私は何も考えていませんでした笑  希子先生)そうなのですね。  炎狐先生)はい。  希子先生)あの……質問してもいいですか?  炎狐先生)もちろんですよ。なんでも聞いて下さい。  希子先生)炎狐さんっておいくつなのですか?  炎狐先生)21歳だよ。  希子先生)21歳!?︎若い!!︎  炎狐先生)若く見えるかな?  希子先生)はい!とても!  炎狐先生)そっか。嬉しいな。  希子先生)どうして教師になろうと思ったのですか?  炎狐先生)小さい頃からの夢だから。  希子先生)夢を叶えてすごいと思います!  炎狐先生)ありがとう。  希子先生)他に何かやりたいこととかないのですか?  炎狐先生)今のところはないかな。  希子先生)そうですか。残念です。  炎狐先生)希子先生は将来何をしたいとかあるのか?  希子先生)特にありませんね。  炎狐先生そこから話が盛り上がり2人は寝た。  次の日、朝食を食べてからチェックアウトをした。  2人で車に乗り込むと出発した。  少し走って海沿いの道に出た。そこで車を停めて休憩することにした。  炎狐先生)綺麗だなぁ。  希子先生)本当ですね。  しばらく景色を眺めていた。  それから旅館に戻り荷物を持って外に出た。  炎狐先生)ほんじゃ、帰るか!  希子先生)そうしましょう。  そして夏休み明けになった。  炎狐先生が問題用紙を配り始めた。  希子先生)それでは始めてください! 生徒達は一斉にペンを走らせ始める音が聞こえてくる。  生徒はいつも通り問題を解いて行った。  最後の問題が解けたので見直しをして時間を待つ。  チャイムが鳴ると解答をやめるように言われたので手を止める。  炎狐先生)皆さん終わりましたかね。  全員の生徒が答えを書き終わったのを確認してテストを回収された。  炎狐先生)これで全教科分終了しましたね。  希子先生)お疲れ様。  炎狐先生)おつかれさまです。  希子先生)この後どうするの?  炎狐先生)生徒たちが書いたテストの点数をつけるよ。  希子先生)大変そうだねぇ。  炎狐先生)まあね。  希子先生)頑張って。  炎狐先生)うん。頑張る。  希子先生)さようならー。  炎狐先生)さよなら。  希子先生が職員室から出て行くのを見送る。  炎狐先生)今日の仕事はこれでおしまい。  明日の授業の準備だけすればいいから楽で良い。  準備を終えて帰り支度を始める。  するとスマホにメッセージが届いた。 「今暇?」  友達の琥珀先生からだ。  炎狐先生)大丈夫だけど  琥珀先生)良かった。ちょっと話さない?近くの公園に来れる?  琥珀先生)わかった。すぐに向かう。 「了解」と返信してすぐに部屋を出た。  駐車場に向かい車のエンジンをかける。  ハンドルを握ってアクセルを踏み込んだ。  目的地は家から近いところにある小さな児童公園。  そこに着くとベンチに座っている琥珀先生の姿を見つけた。  琥珀先生)あっ。来た。こっちだよ。  炎狐先生)待たせたな。  琥珀先生の隣へ腰掛ける。  炎狐先生)それで何の話?  琥珀先生)いや、特にないんだけど……  炎狐先生)そうなんだ。  琥珀先生)なんか最近元気がないみたいだったから気になって。  炎狐先生)そうかなぁ。  琥珀先生)そう見えるけど何かあったのかなぁって思って。  炎狐先生)う〜ん。バレたかw  実は…来年の3月学校の先生を辞めるんだ…  琥珀先生)えっ!?︎どうして辞めちゃうの! 炎狐先生)色々あって。  琥珀先生)そっか。寂しくなるね。  炎狐先生)ああ。  琥珀先生)でも、まだ決まったわけじゃないんでしょ!  炎狐先生)それは……。  琥珀先生)きっと何とかなるよ。  炎狐先生)ありがとう。琥珀先生。  琥珀先生に相談に乗ってもらって少し気持ちが軽くなった気がした。  それから少し話をしてから解散した。  次の日いつも通り授業を行い放課後になった。  生徒達を帰らせて私は教室の後片付けをしていた時だ。  ガラガラッと扉が開く音が聞こえてきたので振り返るとそこには校長がいた。  炎狐先生)どうかされましたか。  校長は私の元へ歩いてきた。  そして私の目の前に立つ。  一体なんだろうと思っていると突然頭を下げられた。  校長先生がなぜこんなことをしているのか分からなかった。  炎狐先生)あの……。  顔を上げた校長の顔には涙の跡があった。  その表情を見て察してしまった。もうこの学校に居られないということを悟ったのだ。  だから最後に挨拶をしに来たという事なのだろうか。  それならば早く立ち去ってほしいと思った。だが違ったようだ。  校長が口を開く。  校長先生が涙を流しながら言った言葉を聞いて驚いた。  校長が言うには私が学校を去るのが嫌だとのことだった。  炎狐先生)まだ9月ですから大丈夫ですよ私が辞めるの来年の3月ですよ?  校長先生)それでもです。  炎狐先生)そんなこと急に言われても困りますよ。  校長が泣き出してしまう。  どうしたものかと考えているとふと思い出したことがあった。  炎狐先生)そうだ。  校長先生)はい?  炎狐先生)今日お時間あります?  校長先生)はい。今日は特に用事はありませんが。  炎狐先生)では一緒に飲みに行きましょう。  校長先生)いいんですかね。  炎狐先生)いいんですよ。  こうして私は校長を連れて居酒屋へ向かった。  炎狐先生)さあ飲んでください。  校長先生)いただきまーす。  炎狐先生)どんどん食べてくださいね。  お酒を飲みながら料理を食べて会話を楽しむ。  最初は緊張していた様子だったがお酒を飲ませているうちにだんだんとリラックスしてきたようだった。  校長先生)ところでなぜ学校を辞めるんですか?  酔った勢いで聞いてくるが、あまり言いたくないことだ。  なので誤魔化しておくことにした。  炎狐先生)色々と事情があるのです……  校長先生)そうなのですか……  炎狐先生)はい……  校長先生)もしかしたら他の学校で働けるかもしれないですね!そうすればまた会えるかもしれませんよ!  炎狐先生)そう……そうですね…… そうして夜遅くまで話をして別れた。  翌日。  いつものように仕事をこなしていく。  午前中の授業を終えて昼休みに入る。  いつもなら食堂に向かうのだがこの日は違うところに向かった。  向かった先は職員室の隣にある会議室。  ここには大きなホワイトボードがあり自由に使えるようになっている。  そこで生徒たちへのメッセージを書いていた。  炎狐先生)よし。これでOKっと。  書き終えてから時計を見るとちょうど12時になっていた。  そろそろ昼食の時間だなぁと思っていると誰かが部屋に入って来た。  入って来たのは奏水だ。  風花)こんにちわ〜ってあれ!?︎何やってんの!?︎  炎狐先生)ああ。ちょっとメッセージを書こうと思って。  風花風花)なんのメッセージ?  炎狐先生)それはまだ言えない…とりあえず一緒に昼飯、食いに行こ!  そして2人は食堂に向かった。2人でご飯を食べる。  風花)それでなんのメッセージ書くの?  炎狐先生)それは秘密だよ。  風花は不満げな顔をする。  風花)えぇ。教えてくれたって良いじゃん。  炎狐先生)ダメなものはダーメ。  風花の質問を軽くあしらう。  すると突然何かを思い出したかのように声を上げた。  風花)あっ!!︎  炎狐先生)どうかした?  風花)忘れるところだった。  炎狐先生)何を?  風花)誕生日おめでとう。これプレゼント。  炎狐先生)ありがとう。開けてみても良い? 風花)もちろん。  中に入っていたのは大きなぬいぐるみだった。  炎狐先生)おおっ。ありがとう!  風花)喜んでくれて良かった。  炎狐先生)大切に使うね。  風花)うん。  炎狐先生)じゃあそろそろ教室に戻るか。  風花)そうだね。  炎狐先生)そうだ。今日授業終わったら時間あるかな?  風花)今日は特に用事は無いけど。  炎狐先生)話したいことがあるから時間空けといてくれないかな。  風花)分かった。  炎狐先生)よろしくね。  放課後になった。  そして放課後に会議室に風花と炎狐先生が来た。  炎狐先生)さあ座ってください。  風花)お邪魔しまーす。  風花が席に着くと早速本題に入った。  風花)炎狐先生、昼休みにホワイトボードに書いてたこのメッセージなんですか?  炎狐先生)実は…私…来年の3月に学校の先生を辞めるんだ。  風花)辞めるんですか!?︎どうして急にそんなことに……。  炎狐先生)まあまあ落ち着いて。  私は深呼吸をして落ち着くように促してから理由を話し始めた。  炎狐先生)私が教師になったのは私の夢を叶えるためなんだよね。  風花)どんな夢なの?  炎狐先生)自分の教え子を作ること。それが私の夢。  風花)へぇ〜。  炎狐先生)でもなかなか上手くいかない。  風花)そうなの?  炎狐先生)そう。  風花)なんか意外。  炎狐先生)だってみんな個性が強いもん。  風花)確かに。  炎狐先生)例えば風花ちゃんとか。  風花)いやぁそれほどでもないよぉ。  炎狐先生)褒められてないぞ。  風花)あれれ?おっかしいなぁ(笑  風花が首を傾げるのを見て思わずクスッとした。  そして炎狐先生と風花は話を続けていた…17:30になった。  炎狐先生)もうこんな時間だ。  風花)本当だ。  炎狐先生)それでは失礼します。  風花)また明日。  炎狐先生)はい。  挨拶を交わしてから会議室を出て行った。  次の日。いつものように仕事をしていると  校長室に呼ばれた。  コンコン。ドアをノックして入る。  そこには校長先生が居た。  炎狐先生)こんにちは。  校長先生)どうもこんにちわ。  炎狐先生)それで何のご要件でしょうか?  そこには「人格達の日常」のナレーションの管理人が来ていた。  そして突然衝撃的なことを言われた。  管理人)実はこの「人格達の日常」は次回で最終話になる。  炎狐先生)えっ!最終話!!︎  管理人)そうだ。だから最後に何かメッセージを書かないかい?  炎狐先生)なるほど!良いですね!書きましょう!いつまでに書いたらいいんですか?  管理人)明日までにお願いできるかな?  炎狐先生分かりました。頑張ります! こうして最後のメッセージを書くことになった。  …次回は最終話…

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 第3話…【命の友シ火】

 第3話…【命の友シ火】    炎狐先生)よし、仕事終わりだ!早く帰ってゲームでもするか! 私が帰ろうとしたその時だった。  るかとひかるが喧嘩をしていた。  ひかる)おい、お前何やってんだよ! ひかるが怒鳴ると、るかも負けじと言い返す。  るか)それはこっちのセリフだよ!僕の発明品を勝手に使うなんてどういうつもり!?  ひかる)別にいいだろうが! ひかるが怒りを露にしている。すると、そこにシロがやってきた。  シロ)まあまあお二人さん落ち着いてください。  シロに宥められた2人は、一旦冷静になってくれたようだ。だが、まだ何か言い足りない様子だったので、今度は私の方から話しかけることにした。  炎狐先生)一体何を揉めているんだ? 私の言葉を聞いた瞬間に、すかさず返答する。  るか)実はですね……。  それから数分後に事情を聞くことが出来た。要点をまとめると、こういうことだ。  ・るかの作ったロボットが壊れてしまったので、修理をしてほしい。  ・そのついでとして、新しい機能をつけてほしい。  ということらしい。  そこで、まずは故障の原因について聞いてみた。  炎狐先生)それで、どんな風に壊してしまったんだ?  るか)それがですね、ちょっとした事故で、壁にぶつかってしまったんですよ。  なるほどなぁ。それなら納得できるかもしれない。  次に、新機能をつけられるかどうかを聞いてみる。  炎狐先生)分かったよ。だけど、その代わりに1個だけ条件があるんだ。  そう言うと、彼は不思議そうにこちらを見つめてきたので、続けて話すことにした。  炎狐先生)最近、学校でいじめがあったのは知っているよね?彼は少し考えた後、「はい。」と答えたので、そのまま続ける。  炎狐先生)あれの犯人を捜すために手伝ってほしいんだ。もちろん、無理強いするつもりはないけど。  そういうと、少し悩んだ様子を見せた後、答えてくれた。  るか)分かりました。協力します。  こうして、るかくんも仲間に加わった。  次の日、早速作戦会議を始めることになったのだが、なかなか良い案が思いつかない。  どうしたものかなと考えているうちに、あっという間に放課後になってしまった。  とりあえず、今日は解散することにした。  炎狐先生)今日はこれくらいにしておこうか。  全員)おつかれさまです。  みんなが教室を出ていったあと、私は1人残っていた。  しばらく考え事をしていると、突然後ろから声をかけられた。  風花)あの、先生。少し相談したいことがあるんですけれど、よろしいでしょうか?  炎狐先生)あ、ああ。大丈夫ですよ。  少し驚いたものの、すぐに返事をする。  そして、彼女の話を聞いた。  彼女は、学校での人間関係に悩んでいるのだという。  友達に裏切られたり、無視されたりすることが増えてきて辛いのだそうだ。  確かに、そんなことがあれば誰だって悩むに決まっている。  しかし、だからといって、私にできることなどあるのだろうか。  彼女は今にも泣き出しそうな顔をしていたので、慰めてあげることにしよう。  炎狐先生)先生はいつでもあなたの味方なので安心してくださいね。  彼女が少し落ち着いたところで、私は質問してみることにした。  炎狐先生)あなたにとって大切なものってなんですか? すると、少し考えてからこう言った。  風花)家族とか、友人達との思い出、それと、夢ですね。  私は、少し間をおいてから答える。  炎狐先生)へえ。じゃあさ、もし願い事が叶うとしたら何を願う? 私が聞くと、彼女は少し困ったような表情を浮かべてから口を開いた。  風花)……やっぱり、自分の才能を活かして人の役に立つことですかね。  炎狐先生)ふーん。そっか!ありがとう!! お礼を言うと、嬉しかったのか笑顔を見せてくれたので良かった。  その後すぐに帰る準備を始めたので一緒に帰ることにする。  帰り道の途中にある公園に立ち寄った。  2人でベンチに座ると、彼女の方が先に話し始めたので、黙っていることにした。  風花)先生は何か悩み事でもあるんですか? いきなり聞かれたので少し驚いてしまったが、冷静に返す。  炎狐)どうしてそう思ったんだい?  風花)いえ、ただいつもより元気がないように見えたもので。それに、なんだかさっきまでとは違って見えたので。  炎狐)まぁ、君には隠し事はできなさそうだな。実はさ、最近学校でいじめがあっているんだよ。それで、なんとか解決できないものかと思っていて。  そこまで言うと、少し間を置いてから続けた。  炎狐)でもな、先生には何もできなかったんだ。  俺は正直に今の気持ちを話していた。  俺にもっと力があったならこんなに苦しまずに済んだかもしれないのに。  そう思うと悔しくて仕方がなかった。  すると、彼女は優しい声で話しかけてきた。  風花)先生、きっと1人ではできないことも2人だとできるかもしれませんよ。私も手伝いますから、頑張りましょう。  その言葉を聞いて、思わず涙が出そうになった。  誰かに相談するだけで心が軽くなるなんて知らなかったからだ。  1度流れ始めた涙を止めることはできなかった。  気がつくと、私は泣いていた。  それを見ていた彼女が慌ててハンカチを差し出してくれたのでありがたく使わせてもらうことにする。  しばらくしてようやく落ち着きを取り戻したので彼女に聞いてみた。  炎狐)君はいつも周りをよく見ているよね。  風花)はい。それが私の長所だと思っているので嬉しいです。  炎狐)君のそういうところはとても素敵だと思う。これからも頑張ってくれ。  私が褒めると照れているようだった。  そして、彼女はまた話し出した。  風花)先生、私も先生の力になりたいのですが、何をすればいいでしょうか? どうやら手伝ってくれるらしい。  炎狐)それは助かる。じゃあ、早速だけど明日の放課後に生徒指導室に来てくれるかな?そこで色々話すから。  風花)わかりました。  こうして、私は彼女を呼び出したのであった。  次の日、約束通り彼女がやってきたのだ。  そこにはひかるとるかがいた。  るか)こんにちわ〜。  ひかる)おっす。  炎狐先生)やっほー。今日はよろしくね。  るか)はい。こちらこそお願いします。  炎狐先生)じゃ、とりあえずそこに座ってもらえるかい? 3人が椅子に腰掛けると、話を切り出す。  炎狐先生)じゃ、本題に入るけど、昨日の件についてだよ。  風花)はい。  炎狐先生)結論だけ言おう。いじめをしているのは誰だい?  風花)えっと、多分3年生の女子グループですね。  名前は……すみません、わからないです。  炎狐先生)なるほど……。わかった!ありがとよ。  風花)いえいえ。  炎狐先生)ちなみに、るかくんとひかるさんは何か知らないか?  るか)うーん、特に何もないと思います。  ひかる)同じく。  炎狐先生)そっか。  風花)先生、もしかして犯人探しですか?  炎狐先生)ああ。このまま放っておくわけにもいかないだろう?  風花)確かにそうですよね。  炎狐先生)だから、ちょっと調べたいんだけど協力してくれるかい?  風花・るか)もちろん(です)!!  炎狐先生)ありがとう。その後すぐに解散した。  3人とも協力してやる気満々のようだ。  それを見て嬉しくなった。  これで少しはいじめを減らせるといいのだが。  翌日、3人に集まってもらった。  風花)おはようございます。  ひかる)おは。  るか)おはよう!  炎狐先生)みなさんおはようございます。さぁ、始めよう。  まず最初に3人の話を聞いた。  それによると、やはり3人はいじめには関わっていないそうだ。  ただ、最近そのグループの1人の様子がおかしいということを聞いたという。  ひかる)なんか、ずっとスマホ見てニヤついてるんだよね。  風花)そうなんですか。怪しいですね。  炎狐先生)よし、今度こっそり見に行ってみよう。  るか)でも大丈夫なんですか?もしバレたらヤバくありませんかね。  炎狐先生)まぁな。だが、気になるじゃないか。  風花)それもそうですね。  炎狐先生)だろ? ということで、3人で行くことにした。  ひかる)ここが教室みたい。  風花)入ってみる?  るか)うん。  ガラガラッ 中に入ると、1人の生徒が座っていた。  風花)あの子じゃない?  ひかる)あ、ホントだ。  彼女は机の上にスマホを置いて眺めていた。  すると、突然画面が光り出した。  それと同時に彼女の体が浮いたように見えた。  そして、そのままどこかへ飛んでいった。  風花)何あれ!?  るか)追いかけないと!  2人)あっ……。  私は2人を追いかけた。  炎狐)待ってくれ〜〜〜〜〜〜〜!!! 私が必死で追いつくとそこには1人の女の子がいた。  炎狐先生)やっと捕まえたぞ。  彼女を捕まえると、地面に下ろしてあげた。  炎狐先生)お前がやったのか?  苺)違いますよ。  炎狐先生)じゃあ誰がしたんだよ?  苺)それはわかりませんけど。  その時だった。  奏水)私だよぉ。  奏水が現れた。奏水はこちらに近づいてきた。  奏水)ねぇ、あなたがやってくれたのかな? 苺)いえ。  奏水)ふーん。そっかそっか。  奏水は苺に近づきながら話していた。  奏水)君が私の邪魔をするなら容赦しないから。  苺)…………っ。  奏水が彼女に手を伸ばす。  しかし、彼女がそれを弾こうとした時、 「やめなさい!」  声の主の方を見ると、そこに立っていたのは希子先生であった。  奏水の手を掴む希子先生。  奏水)希ちゃん、どうしたの?離してくれない?希子)いいえ、絶対離さないわ。  奏水)どうしてそんなこと言うの? 奏水の顔からは笑みが消えている。  奏水)だって、その子が悪いんでしょ? 希子)違うでしょ。  奏水の手をさらに強く握る。  奏水)痛いんだけど。  希子)嘘つかないで。本当はわかってるんじゃないの? 奏水)何を言ってるのかさっぱりわからないなぁ。  希子の手に力が入る。  奏水)だから、やめてってば。  奏水も負けじと押し返す。  その瞬間、一瞬だけ力が緩んだ。  その隙を見逃さず、その腕を振り払う。  奏水)もう、しつこいなぁ。  そう言うと、どこからかナイフを取り出してきた。  それを見た風花さんが叫ぶ。  風花)危ない! 風花さんが咄嵯の判断で希子先生を突き飛ばす。  希子先生の代わりに風花さんが刺されたのだ。  炎狐先生)おい、大丈夫か!?しっかりしろ。  返事がない。  まさか……死んでいるなんてことは……。  風花さんの体に触れるとまだ温かかった。  生きているようだ。  安心したが、風花さんをこのままにはできない。  炎狐先生)ひかるとるかはとりあえず風花を保健室に連れて行ってくれ!  るか・ひかる)はい。  2人は急いで走って行った。  私はというと、犯人である奏水を睨んでいた。  奏水)なんですか? 私は怒りを抑えつつ言った。  炎狐先生)お前だけは絶対に許さねえ。  私は奏水に向かって走り出したが、希子によって止められた。  希子先生)待ってください。私が行きます。  希子はゆっくりと歩き出した。  そして、彼女の目の前まで行くと、 パチンッ!!︎!!︎ 思いっきりビンタをした。  奏水)いった〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!! あまりの強さに倒れ込む彼女。  だが、それでも彼女は立ち上がり、また向かってきた。  今度は蹴りを入れようとする。  希子先生はギリギリで避けて足を掴んだ。  そのまま地面に叩きつける。  ドスンっと鈍い音がした。  奏水は頭を打ったのか気絶してしまった。  希子先生は私達の方を向いて笑顔でピースサインをしていた。  炎狐先生)お見事です。  希子先生)いえいえ。  炎狐先生)それにしても強いですね。  希子先生)ありがとうございます。  保健室では、風花の手当が行われていた。  風花の傷が深すぎていたのだろうか。  結構、血が流れ続けている。  炎狐先生)これはまずいな……。  するとそこに奏水がやってきた。  奏水)ごめんなさい。私のせいだよね?  炎狐先生)そうだなぁ。  奏水)どうしよう?どうしたらいいかな?どうすればいいと思う?  炎狐先生)そんなこと私にもわかんねぇよ。  るかは救急車を呼んで、ひかるは傷を抑えて、止血しようとしている。  奏水も一緒になって抑えている。  しかし、止まらない。  どんどん溢れ出てくる。  その時だった。  救急隊員が現れた。  すぐに病院へ運ばれた  奏水)本当にすみませんでした。  希子先生)あなたが謝ることじゃないですよ。  風花)……っ。  風花は苦しそうにしている。  炎狐先生)大丈夫か!?  風花)はい……。  炎狐先生)無理するな。寝とけ。  風花)……わかりました。  風花が寝た後、病室に1人残った。  炎狐先生)……。  風花、早く元気になってくれ。  3日後……。  風花はまだ目を覚まさない。  風花のお母さんから電話があった。  風花の容態が悪化しているというのだ。  炎狐先生)すぐ向かいます! 風花がいるところは、大きな病院で、集中治療室で、たくさんの機械に囲まれていて、心電図の音だけが響いている。  炎狐先生)風花!  看護師)あ、先生ですか?  炎狐先生)はい。  看護師)今、危険な状態です。いつ死んでしまってもおかしくありません  炎狐先生)え、嘘でしょう。  私はその場に崩れ落ちた。  もう、何も考えられなくなった。  私はただ、呆然と立ち尽くしていた。  それからというものの私は毎日のようにお見舞いに行った。  その度に私は泣き続けた。  そして今日もまた泣いている。  風花が死んでしまうかもしれないという恐怖と悲しみで押し潰されそうになる。  でも、私には泣くしかできなかった。  風花が助かる方法なんて思いつかないし。  涙を流す以外私には何ができるんだろう。  ひかるくんとるかくんと希子先生が病室に来たようだ。  炎狐先生)みんな来てくれたのか。  希子先生)もちろんです。風花のことが心配ですもんね。  炎狐先生)ありがとうございます。  風花のベッドの周りに4人で座った。  風花の手を握り、声をかける。  炎狐先生)頑張れよ。お前ならできる。  るか)頑張ってください。  ひかる)応援してるよ〜。  希子先生)私達もついていますよ。  風花がゆっくりと目を開ける。  炎狐先生・るか・ひかる・希子先生)あっ!!︎!!︎!!︎!!︎!!︎!!︎  風花)おはようございます……。  炎狐先生)よかったぁぁぁぁぁぁ!!!  るか)うわっ。うるさ。  ひかる)ちょっと静かにしようよ。  希子)そうだぞぉ(笑)  炎狐先生)ごめんなさい。  風花)あの、ここはどこなんでしょうか?  炎狐先生)病院だよ。  希子先生)あなたは奏水に刺されて重症だったんですよ。  炎狐先生)奏水は捕まったらしいけど……。  風花は奏水がやったことを全て話した。  炎狐先生)そうか……。辛かったな。風花は悪くない。  風花の目からは大粒の涙が流れ出した。  風花)炎狐先生……助けてくだ……さい。  炎狐先生)どうすればいいのかな。  希子先生)私が行きましょう。  炎狐先生)お願いします。  私は風花の手を握ったまま、ずっとそばにいた。  希子先生)大丈夫ですよ。  彼女は笑顔で言った。  希子先生)すぐに終わらせてきますから! 希子先生は走って行った。  数分後……。  炎狐先生)お帰り!早かったですね。  希子先生)はい!風花ちゃん、元気になりました!  炎狐先生)えっ!?  希子先生)奏水のところに行ってきました。  炎狐先生)えっ!?どうやって!?  希子先生)それは秘密です。  炎狐先生)そっか。まあ、無事で良かった。  希子先生)はい。  その後、退院することができた。  しかし、まだ傷跡が残っている。  でも、そんなこと気にしない。  だって、生きてるだけで幸せだからねそして次の日にるかとひかるが職員室に来た。  炎狐先生)おぅ。どうかしましたか?  るか)炎狐先生って小説書いていますよね。  炎狐先生)うん。それが何か?  るか)僕たちに読ませてくれませんかね。  炎狐先生)別に構わないが。  るか)じゃあ、読みたいです。  炎狐先生)わかった。今度持って来る。  放課後になった。  私は帰ろうとした時、誰かが話しかけてきた。  風花)炎狐先生。一緒に帰ってもいいですか?  炎狐先生)もちろんだよ。  風花)ありがとうございます。  そして2人は帰った…続く…

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