Yui

55 件の小説
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Yui

小説が大好きな人間です。 文章は下手くそですが、暖かい目で見ていただけると嬉しいですっ! イラストはノーコピーライトガールさんのものを使わせていただいております!本当に感謝しかないです笑(違うイラストを使う場合もあります) フォロバは返せない可能性が高いです!本当に申し訳ないです…! アイコンを変えました。分かりにくかったらごめんなさい…

ペンは剣より強し

言葉は暴力よりも強い。 この世界に溢れた誹謗中傷は暴力の力を大きく上回っている。 そして私はこの言葉を知ったとき、物語を書くのが怖くなった。

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ペンは剣より強し

命の重さ

僕の両親は僕が生まれて間もない頃に亡くなった。 死因はよくある圧死。 見知らぬ男子高校生がふざけて両親を踏みつけたのだ。 体が小さかった僕は両親を助けることができなかった。 そして僕は男子高校生に興味を持った。 僕の両親を踏みつけたあの男子高校生に。 しばらく観察しているとあの男子高校生の母親は、心臓が少しばかり弱いらしい。 母親は入退院を繰り返しているようだった。 ある曇り空の日。 様子の違う男子高校生を僕は見た。 目は腫れぼったくり、顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。 何かがあったんだろう。 心配になった僕は男子高校生の後をつけていった。 彼が向かった先は病院。綺麗な看護師さんと何か話しているようだった。 「お母様のことは残念でしたね。」 その一言を聞いたとき僕はハッとした。 亡くなってしまったんだ。 僕は彼をとても心配した。 でもそれにつれて疑問が生まれた。 踏み潰されたアリと亡くなった人間の命は等しくないのだろうか。

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命の重さ

君に会わなければ。

画面の向こうで視聴者に手を振る君。 楽しそうなコメント欄。 本当に寒気がした。 たまたまおすすめに流れてきた君の動画。 暇つぶしで見始めた君に私は埋もれていった。 君の沼は底なし沼のようで息継ぎを与えてくれない。 LIVEにも握手会にも行った。 人気な君からの認知を貰うのは難しかった。 髪型を変え、化粧も濃くなった私からは、人が去っていった。 そして、私は恋ができなくなっていた。 少ない友達からの合コンの誘いを断ることが増えていた。 同年代から聞く恋愛話に興味が薄れてきた。 君の配信を見るときはいつも思う。 君に会わなければ私は幸せだったのかもしれない。

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君に会わなければ。

最後の晩餐

寒くて誰も街に出ていない。そんな日に私は君を殺した。 戦争が始まって以来、この街には誰も住んでいない。 残されたのは私と妹。 妹が背負う学生鞄に詰め込まれていたのは、私との思い出だった。 色違いのキーホルダー、2人で撮り合った写真。 妹は知らなかった。 明日、敵の軍が攻めて来ることを。 ラジオを隠し持っていた私だけが情報を持っていた。 「今日はご馳走にしようか。」 小さな声で妹に話しかけた。 目を輝かせた妹が愛くるしかった。 その日の夜、冷凍保存したチキンと 毒を入れた甘いシャンパンで 乾杯をした。 「メリークリスマス」

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最後の晩餐

世界一大きなプレゼントを君に

もうすぐクリスマス。 僕は君へのプレゼントを考えていた。 一応、行事だとかお祝い事は尽くしてきた。 君が喜んでくれるように、忙しい仕事の合間を縫ってサプライズを考えていた。 感謝の言葉は羞恥心で言えなかった。 けれど、僕は君の為に尽くしている。 そして幸せそうにしている君が好きだった。 クリスマス当日、僕はサンタの格好をして、大きな花束を抱えて君を出迎えた。 「メリークリスマス!今年も花束を持ってきたよ!」 手を上げ陽気に言った時、一本の電話が入った。 急いで会社に来い。そう上司からの声を聞いた時、無意識にサンタ服を脱いでいた。 「ごめん、急な仕事が入った。」 そう君に告げドアノブに手をかけた時、君は泣き崩れた。 「花束なんていらない!プレゼントなんかいらない!  貴方の、一言!  愛してる。それだけでよかった!  なのに貴方は言ってくれなかった!」 泣きわめく君を見て、僕は何も言えなかった。

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世界一大きなプレゼントを君に

殺し屋の名はない

俺は殺し屋をやっている。 餓鬼の頃に捨てられていた俺をボスが拾ってくれたのだ。 今まで数々の変装、偽装を繰り返した俺は嘘のプロと言っても過言ではないだろう。 名前を変えるのも当然。性別を変えたことだってあった。 服装は千着以上を着こなし、化粧なんてお手のものだった。 正直、どうして殺しの仕事をしているのかはわからなかった。 表上ではボスへの恩と理由付けているが、内心、殺し屋をやっている理由なんてなかった。 ある日、餓鬼の頃仲良くしていた幼馴染が話しかけてきた。 もちろん、俺が殺し屋をやってるなんて知らない。 三十分かそのくらい話しただろう。 幼馴染は思い出したように俺に問いかけた。 「お前ってさ、何度も変装したり名前変えたり、年齢変えたり、すごいよな。  結局、何になりたいんだ?」 俺は自分を見失った。

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殺し屋の名はない

何かが違う

私は人間とおんなじようにできる。 楽しい時は笑うし、悲しい時は涙が出る。 感情を押し殺すこともできるし、空気を読むことだってできる。 勉強も運動も、完璧ではなくほどほどに設定されている。 手入れを施さないとボロついていくし、冬場は肌荒れしやすくなる。 私にはたくさん友達ができた。 私以外、みんな人間だ。 いつも楽しかった。 普通の人みたいに遊んで、笑って、泣いた。 それでも、友達はだんだんと亡くなっていった。 たくさんしわが刻まれていった友達を私は羨ましく思った。 ロボットの私は死ねないのだから。

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何かが違う

死んでよ。

「別れたい。」 そう告げられた。 彼の好きな色に染められた髪。 染め直しで傷みまくった髪はもう戻らなかった。 彼の好きな香りに染められた部屋に私は取り残された。 いくら消臭剤をふっかけても直らなかった。 画面の割れた携帯に溜まった写真。 彼との思い出は一枚一枚消去した。 彼の口癖は今でも私に残ったままだ。 浮気癖の強い彼。 大嫌いだったあの子との浮気。 時間だけが過ぎていった。 無視が続く日々に、私だけが苦しめられていた。 「ちゃんと好き。」 そう言って抱きしめた彼からは、知らない匂いが染み付いていた。 ベランダに出ると見えたのは、彼が知らない女の子と歩いてる姿だった。 彼に少しでも聞こえるように 私は涙を拭って叫んだ。 「死んでよ。」

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死んでよ。

流れ着いた瓶

僕はポツンとした孤島に生まれた。 住人は僕。1人。 父親と母親はだいぶ前に死んだ。 今は森に住んでる動物と、たまに空を通りがかるジェット機を楽しみに生きている。 島の広さは学校の教室ぐらい。 「どうしてこんな島を選んだんだ!」 父親と母親の口論に耳を塞ぐこともなくなり、今は物足りない日常を送っている。 そんなある日、島の浜辺に一つの瓶が流れ着いた。 誰かが、面白半分で流してみたのだろう。 苦笑いをして、僕は手紙を読んだ。 『これを読んだ方へ。    私は友達がいません。  よければ、友達になってくれませんか。』 丁寧に書かれた文字は丸っこくて可愛かった。 同情。共感。 そんなものを感じたのだろうか。 僕は手紙を返したくなったのだ。 僕は試しに 『これを読んだ方へ  僕も友達がいません。』 うまいこといくわけないだろう。 そう分かっていたが、僕は瓶を海へ流した。 3日か4日か経っただろう。 僕の手元には一枚の手紙があった。 瓶が流れ着いていた時は、飛び跳ねるほど喜んださ。 魔法にかけられたようだったのだから。 そこから何年か経っただろう。 小さな島には小さくても幸せな家庭が築かれていたのだった。

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流れ着いた瓶

甘い葡萄

私の父と母は厳しい人だった。 礼儀やマナーについては苦い思い出を何度もしている。 だからだろう。 私は何度も何度も家出をした。 夜遅い日は、祖母の家に言って寝泊まりするようになった。 葡萄農家の祖母は、私に楽しさを教えてくれた。 自由を教えてくれた。 祖母が私は大好きだった。 よく泣いた日に出してくれる葡萄が大好きだった。 深い紫をした、祖母の甘い葡萄が大好きだった。 毎年、秋になると私は葡萄を収穫する。 収穫をした葡萄を祖母の仏壇にそっと供える。 そして天国に聞こえるように。 そっと呟く。 「今年の葡萄も甘いです。」

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甘い葡萄