匿名未確認生物

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匿名未確認生物

世界のどこかに生息している生き物です

独白(2日目)

 定期的に死にたくなる思考を殺したい。「全部自分が悪い」なんて言わないけど、なんかしらで罪悪感は感じているんだろうな。親ともめてる時も憂鬱な時も気づいたら好きな曲聴いてる。本当に僕の「精神安定剤」なんだろうなぁ。母親が僕の言うことを理解してくれないのと母目線で僕が全然言うことを聞いてくれないのは絶対的に生きている世界が違うんだろうな。生まれた世界も環境も、育った世界も環境も、学んだことも見て絶望した事実も。全部が違う。さっきあいつが言った言葉で辻褄があった。僕らが生きている世界線がちう。同じ次元に生まれて、存在していたとしても今いる場所は天と地ぐらい違う。僕が地下奥深くにいてあいつが空高くにいる。あいつには空が見えても僕には輝く空なんてどう頑張ったって見えっこない。なそれ同等で、あいつには僕の見えていく真っ暗で冷たい世界が見えない。いあいつに見える現実は僕には見えない。あいつに見える未来も僕には見えない。見る権利がない。単純に怖いからだろうなぁ。見てしまったら自分が耐えきれないんじゃないかって。また苦しいんじゃないかって、そう思うから僕の中の誰かが僕の行動を引き止める。「死にたくない」「苦しみたくない」って喚きながら。必死に。一種のデスゲームだ。そう言う環境を作り上げたのは、僕自身だが。息苦しいのは永遠と僕を付き纏うだろうな。

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独白(1日目)

 今日もだ。なぜか寝る気がしない。眠気がないと行った方が正しいだろうか。寝る前ここ最近、いつもなぜかやるせ無い気分になる。明日が嫌だからだろうか?学校が嫌だからだろうか?理由は何理由はなんとなくでわかってもそれが事実かどうかわからない。自分ですらわからない。きっとまた、僕の中の誰かが喚いているのだろう。やだって、終わりたいって。どっちにしろ僕は彼らに耳を傾けることはない。勢力の弱い声は僕だって抵抗できる。ただ、勢力がでかいと抵抗はできない。だからなんだって感じだが。  なんか知らんが憂鬱だ。何もしたく無いことはないがなんとなくやるせない。なんでだろうか?以前なら理由がすぐにわかっただろうに、今は全然わからない。答えが出ない。ただ、なんとなく「死にたい」なんて思っているのかもしれない。「ここにいたくない」って誰かが言っているのかもしれない。妙に物に当たりたくなる。これがストレスだろうか?わからない。そんなことすら理解できない。なんとなく「泣きたい」だなんて、そんなことを思ってしまっている。全部忘れて、全部放り出して、逃げ出したい。ここじゃない場所に行きたい。誰もいない場所で叫びたい。何かしていたい。何かーー。言葉が出てこない。下手になったなほんと。

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夏の思い出

 とても暑い夏の日、夏休みも半分が終わった。課題もなんとかやっている。今日は珍しく部活も休みで偶然にもみんな帰省してしまっている。  暇だな。そう思って気づけば無人の神社にいた。近くの木陰に入って休む。来る途中でコンビニで買ったアイスの袋を開ける。 「ねえ!それちょうだい!」  誰もいないはずなのに目の前に白いワンピースを着たロングヘアの女の子が立っていた 「えっ」 「いいの?ダメなの?」  少し迷ったがもう一つあったのでそっちをあげた。すると女の子は嬉しそうに笑って隣に座ってアイスを食べ始めた。 「これ美味しい!!」  目を輝かせながらすぐに食べ終える。 「美味しかった!!ありがと!!」そう言って微笑む。 「喜んでもらえたならよかった」  私アイス初めて食べたんだよね〜そう言って立ち上がった。 「ねえ君の名前なんていうの?」 「名前?」 「うん!あるでしょ?名前」 「俺は桐谷純也(きりたにじゅんや)」 「私にな!宮森にな!よろしくねきりや!」  そのあだ名に驚いた。初対面で教えてもないのに普段友人に呼ばれているあだ名だったからだ。 「どうしたの?きりや?」 「いや、なんでもない」きっと偶然だ。そう思った。 「きりやはなんでここに来たの?」 「うーん、なんとなく?」 「へー!私は――私は」  彼女の顔だ一瞬暗くなったような気がした。でも明るい顔に戻って言う。「私もなんとなく!」 「じゃあ一緒だね」 「一緒!!やったー!」嬉しそうに声を上げる。  それから彼女と色々話した。夕方になり家に帰ろうとすると。 「帰っちゃうの?」寂しそうにいうになの姿があった。 「うん、親も心配するだろうし。また来るよ」 「!ほんと!?」 「うん、約束」 「約束!もう一つ約束してほしいことがあるんだ」 「何?」 「私のことは誰にも言わないでほしい」 「いいよ?」  少し疑問に思ったが事情か何かあるのだろう。になが俺の手を掴んで上下に振った。 「約束だよ!ついでにまたアイス持って来て!」 「俺が買ってるんだけど」  彼女を置いて家に帰る。そういや、になの手すごい冷たかったな。外はこんなに暑いのに。  夕暮れなのにまだ蝉がうるさく合唱をしている。そんな中家まで帰った。  次の日、神社に行こうと思ったが友人の一人の裕が帰ってきており遊びに行こうと言われたので承諾した。  とりあえず涼しい室内に避難し話す。 「裕は課題は大丈夫なのか?」 「大丈夫大丈夫、なんとかなるから!去年だってなんとかなったんだし」 「でもほとんど最終日まで残ってなかったっけ?」 「それはきりやもそうだったじゃん」 「去年はそうでも今年はちゃんと毎日少しづづやってるから」 「裏切り者!!でもまだあいつらも終わってないだろ」 「確かに終わってなさそうではある」 「矢野ぐらいじゃない?計画通りにやってそうなの。去年もちゃんとやってたし」 「そうは思えないけどな〜」  そんな会話をする。色々やってたら夕方になって家に帰った。  帰り道、神社の前を通りかかった。になはまだいるだろうか?流石にもう帰っているか。また明日来よう。家に向かった  課題を少し片付けてから神社に向かう。長い階段を登り鳥居を潜ってあの場所に向かう。 「あっ」上から声が聞こえて木の上からになが振ってきた。 「うわっ」間一髪で避ける。 「いった!久々に木から落ちた」  そんなことを言いながらこちらを向く。「待ってたよ!きりや!」  笑う彼女の笑顔は夏の太陽のせいか眩しく見えた。 「今日はアイス持ってきてないの?」俺の周りを確認しながら言う。 「ほんとに欲しかったの?」 「ほしいに決まってるじゃん!あんな美味しいもの食べたの初めてだったもん」 「普段何食べてるの」 「えっ。普通に、普通のご飯」  まあそりゃそうか。 「日陰入ろー」俺の手を引いて木陰に行く。 「きりや!何か面白い話して?」 「は!?」 「いいじゃん、つまんないもん」  その後に小声で「私の知ってる世界」と聞こえた気がした。 「え?」 「ううんなんでもない」 「面白い話ねー」頭を働かせて何かないかと探す。 「あっそう言えばあった」 「え!なになに」  俺に詰め寄って着て期待に満ちた瞳を輝かせている。 「学校での話なんだけど――」  しばらく話した。話の内容はになにウケたようでしばらくツボっていた。になと話している間も昨日彼女は神社に来ていたのだろうかとか考えてた。そしてうっかり言ってしまった。「になは昨日も神社にいたの?」 「えっ」  一瞬驚いたような顔をしていた。 「あっいや、やっぱなし――」 「いたよ、だってあそこにいたくないもん」悲しそうな顔をしていた。  何かあるのだろうか?家庭の事情とか。になが頬を叩く 「それで、今日は何する?」  夕方になりになが帰った。帰ると言ってもなぜか建物の裏に入っていた。 になはここに住んでいるのだろうか。まあいいか。長い階段を降りて鳥居を抜ける。 「あれ?きりさん?」 「あ、あきじゃん」 「こんなところで何してんのー」自転車を押しながら寄ってくる。 「別に」 「嘘だ、嘘でしょ」 「そりゃ何かはしてたよ」 「ふーん」 「そういうあきは何してたんだよ」 「僕は、部活後の買い出し?親に頼まれて」  自転車のカゴの中に買ったものと思われるものが入った袋が雑に入っている。 「ちょうど帰りだからって普通頼む?僕は早く家帰ってゲームしたいのに」 「なくはないんじゃないか?」  二人で話しながら歩く。途中で別れて自宅に帰った。それから数日俺はほとんど毎日になに会いに行っていた。友人との誘いを断ってまで彼女に会いに行っていた。  もちろん、アイスを持って。  おかげで友人たちの間で、「ついに頭がイカれた」とか言われ始めている。  そりゃ毎日、誘いを断ってまで神社に行ってたらそう思われてもおかしくないけど。  鳥居を潜っていつもの場所に来たいつも俺よりも先にになが俺を見つけて声がいろんなところから聞こえてくる――はずだ。 「になー来たぞー」  そう言ってもあのフワッとした声が聞こえてこなかった。おかしいな。しばらく探したが彼女の姿はなかった。  本当の意味で誰もいなくなった神社には蝉の声だけが響き渡っていた。その日は一人でアイスを食べてそのまま家に帰った。  しばらくしても神社にになの姿はなかった。普通の人間ならもう行くのをやめるのだろう でも、彼女と一緒に話すのが楽しみになってしまった俺は彼女のことを気にながら日々を過ごしていた。  バイトの後、今日も懲りずにアイスを持って神社に来た。 「あっ」 「?きりやだ!!」  一瞬不思議そうな顔をした後、俺を見つけるとすぐに笑顔になった。 「久しぶりだね!元気だった?」 「うん、元気だったよ。になも――変わらなさそうだね」 「そうかな?」  木陰に入ってアイスを渡す。食べ終えると、俺はになに聞いてみた。 「ねえ」「なあ」二人とも同時に言ってお互いの顔を見る。 「きりやからいいよ」 「じゃあ。――になはなんで神社にいなかったの?」冷たい風が吹いた気がした。 「それは、ね」少し黙った後口を開いた。 「死にかけてた――が正しいかな」 「えっ」 「私、ほんとはここにいないんだ。訳わかんないよね。私ね、幼い時からずっと病気で病院にいるんだ。今もそう。体はあっちにある」 「そう、だったんだ」 「うん、そう。だから私は病院の外から出たことないし、食べ物も余計なものは食べさせてくれない」  になの話を聞いて今までの会話に納得がいった。になは続ける。 「それでね。私、気づいたら病院の外に出たいって毎日願うようになってた。そうしたら、ここにいた。なんでここにこれてるかは自分でもわかってない」 「じゃあ今は――」 「今は眠ってる。私がここに来るときは大体眠ってる。することもないしね。あったとしてもどうせ、検査だったり誰かが来たりした時だけ。おかげでめっちゃ元気」  そう言って笑った。笑い事でいいのだろうか。 「になはさっき何を言おうとしてたの?」  になは驚いたような顔をした。そしてニッと笑って言った。 「さっき言ったこと!ずっと嘘つくのも気が引けるからさ。ほら、良心ってやつ」  二人で笑った。そして俺は、少し聞きにくかったが聞いてみた。 「になさ、さっき死にかけてたって言ってたけど。それって――」 「それはね。私の病気、悪化してるんだって。最近はろくに食事してないし、会話もしてない。あっ、病院にいるときの話ね。余命宣告までされちゃった。まだ生きてたいのに。まだきりやとこうやってお話ししてたいのに」悲しそうな顔で笑う。  俺だってもっと――。 「向こうにいる時はね、すごい苦しくてしんどくて辛い。でもねここにいるとすごい体、楽なんだ。神様の力だったりするのかな?」 「ここの神社に祀られてる神様は、そういう神だったような気がする」 「えっ!?それほんと!?」 「俺もあんまりよくわかってないけど」 「そうだったら感謝しないと」  そう言い建物の前に行き、鈴を鳴らして2例2拍手をして手を合わせた。 「私をここまで連れてきてくれてありがとうございます!お金は持っていないのでお賽銭はできませんが本当にありがとうございます!!」  小声でブツブツと言っているになを横目に空を見上げた。  次の日、部活の後直接神社に来た。夕焼けに照らされてオレンジ色になった神社は昼間とは違う雰囲気を漂わせている。 「あ、きりや来た」 「ごめん、今日部活で。できるだけ急いで来たんだけど」 「ううん、いいよ。会えるのが嬉しいから」  そう言って微笑む。彼女の笑顔にいつしか胸が高鳴るようになっていた。  しばらくいつも通り過ごした後。になが口を開いた。 「あのさ、きりや」 「どうした?」 「私、もうここに来れないかもしれない」 「!」 「そんな感じがしてるだけ」 「だから、もうわざわざここにこなくてもいいよ」  になは話し続けているが全く話の内容が入ってこない。もう来れないとはどういうことなのか、もう会えないということなのだろうか。どっちにしろ 嫌だ。 「ねえきりや」 「何?」震えそうになる声を抑える。 「最後に、お願い。聞いてくれる?」 「いいよ」 「私、――――――」 「っ!!」 「今日までありがと、またね」 「になっ!」  彼女の腕を掴もうとしたがもう遅かった。彼女の体が夏のカラッとした風と共に消えてしまった。俺は地面に崩れ落ちるように座り込んだ。一人になってしまった神社からは夏の終わりが近づく合図が聞こえてくる。  同時に、彼女の死も近づいているような気がした。  それからというもの、俺は彼女のことが頭から離れなくて課題にも部活にも遊ぶにしても集中できなかった。集中しろと顧問に何回も怒られた。友人からは好きな人でもできたか?と冗談半分で言われているがそうだったのかもしれない。  俺は好きだったんだ、になのことが。今更気づくとか鈍感にも程がある。そんな自分が嫌になった。  ふと、彼女の最後の願いを思い出した。彼女、になの最後の願い 『きりやにちゃんと会ってお話がしたい――』  初恋の人の願いを叶えてあげたい気持ちと自分も会いたいという気持ちもあった。気づいたら動いていた。  今日から俺のになの捜索が始まった。こんなんだったら聞いとくべきだった。そんなことを思いつつ足と手を動かした。  夏休みが終わりかけるころついに見つけた。自分の住んでいる地域の隣町の大きい病院にになはいた。なんとか中に入れてもらい、看護師の人に案内されて部屋に入った。一番に視界に入ったのは病院の窓から外を眺めるになだった。静かにドアを閉めて声をかける。 「にな、来たよ」  ゆっくりとこちらに振り返る。 「!きり、や…?」彼女は涙を流している。 「そうだよ」彼女に釣られて涙が出てくる。 「夢、じゃ、ない。よね?」 「夢じゃないよ」 「きりやだ!」  今にも力尽きそうな声で言う彼女は神社にいたときよりも弱々しかった。近づくと抱きついてくる。 「本物だ」 「ふっ。本物だって」 「だって私からしたら今までずっっと夢の中の出来事だったんだよ?友達ができたって言っても、誰も信じてくれなかった」 「まあ、こんな状態だとそうだろうな」  色々な機械に繋げられているのを見て言う。 「そう、なのかな?」いつものように微笑む。  笑顔だけは眩しいままだった。外が暗くなりかけるまで話し続けた。 「それじゃあ、俺そろそろ帰るね」 「うん、今日はありがと。また明日も来てくれる?」 「わかったよ。またな」 「ふふっ。またね」  細い腕をゆっくり振っていた。  8月31日、夏休み最後の日だ。裕たちと勉強会という名の『終わってない課題をやっちゃおうの会』に参加せず彼女に会いに行った。バスに乗り病院近くのバス停で降りる。午後1時過ぎに病院の受付で看護師の人に呼ばれた。 「桐谷?さん」 「はい、なんですか?」 「になさんなんですが――」 「!!」  話を聞いてできるだけ早く歩いてになのいた病室に向かった。部屋に入ると、ベッドで寝ているになと、彼女の両親と思われる大人二人と看護師の人がいた。急いできたせいで呼吸が上がっている。 「あの、誰、ですか」母親と思われる人が言う。 「俺は、彼女の、宮森になさんの友人です」そう言うことしかできなかった。になからそう言えって言われたから。 「になの――ああ、本当だったのだな」 「彼女の顔を見てもいいですか」 「ああ、もちろんだ」  父親と思われる人に抱きつきながら泣いている母親と思われる人は俺を好いていないような気がした。になの顔を見る。最期、彼女は笑えたのだろうか。苦しまずに逝けたのだろうか。俺と話せて楽しかっただろうか。そんな疑問ばかり浮かぶ。  視界がぼやけかけて泣くのを我慢してその場を離れようとすると、看護師の人から封筒を一つ渡された。 「になちゃんが、桐谷さんに渡してほしいと言われたものです。いつもの神社?で読んでほしいそうです」  封筒には拙い字できりやへと書かれているのがわかる。遺書のようなものだろうか。 「ありがとうございます」封筒を握りしめてその場を離れる。  になの顔をもう少し見て行ってもよかったのだが部外者が立ち入っていい感じがしなかった。  夕暮れの時間帯、神社内でひぐらしの声が響く。いつもの木陰で俺はおそるおそる封筒を開いて中身を全て出した。 きりやへ これが君に届いている時にはもう私は死んだってことかな? らなさんがちゃんと渡してくれたんだよねきっと あっらなさんってのは多分これを渡してくれた人だよ 優しくていい人なんだぁ 私ね きりやに出会えてよかった!まずこれが言いたい きりやからしたら唐突に現れて急にアイスねだってきたやばいやつだったかもしれないけど でも、あのアイスの味はよく覚えてるよ 変わった味がして甘くて冷たくておいしかった それで いつもアイス持ってきてくれてありがとう らなさんから病院の外の話をよく聞いてたけど 何か物を買うときはお金がいるんだってね ごめんねそんなことも知らずにねだっちゃって それでも私に分けてくれたきりやは優しいんだね もう神社に行けなくなったとき もうきりやに会うのは最後だと思ったのに 気づいたら私の元にきりやは来てくれた すごい嬉しかった 私の最後の願い、覚えててくれたんだなーって きりやはとことん優しいんだね そんなきりやのこと、私は好きだよ 多分恋ってやつ 初めてだったあんな感情 きっときりやに会ってなかったらそんなことも知らずに死んでたかもね きりやのこと考えると無性に会いたくなって話したくなった きりやと一緒にいると心臓がうるさかった それは嫌な物じゃない なぜか嬉しかった それを話したら『恋』だねって言われた 私、ずっときりやのこと好きだったんだなーって気づいた きりやはどうだったんだろう? これってきっと生きてる時に聞くべきだったよね でも大丈夫 私は幽霊とかそういうの信じるタイプだからきりやの近くをうろつくね 守護霊になってあげる! 最後に 今まで短かったけどありがとう!楽しかったよ毎日 そして 大好きだよきりや また一緒にアイス食べよ! それじゃあ またね にな  手紙に涙が落ちていく。にな…。俺も、俺も好きだよ、になのこと。  涙が止まらない。「くそっなんでなんだ!」  夕日が神社内を照らす。あの時と同じ風が吹いた。  今日は9月1日、いつもの日常が戻ってくる。荷物をまとめて学校に向かう。始業式が始まる。  つまらない校長の話を聞き流しながら夏休みを振り返った。いつもと少し、いや、かなり変わった夏休みは楽しいことばかりではなかったけど楽しかった。  になに出会い、恋をして、初恋の人はこの世から旅立った。誰も信じてくれないような漫画のような話。  彼女は今も見守っているのだろうか。守護霊になるとか言っていたが実際どうなのかはわからない。また会える日まで。それまでは、俺にできることを――。  教室に戻る途中、知っている風が吹いた気がした。  数年後、俺は高校を卒業して大学に入ってしばらく経った。今日は8月31日。そう彼女、宮森になの命日である。俺は墓参りに来ている。アイスのカップに水を入れて蓋をしておいておく。しっかり洗ったから蟻はたかってこないはずだ。  両親が来たのか周りの地面がまだ湿っている。になに近状報告をする。 「また来るよ」そう告げて帰る。 「ちゃんと来てよ?約束だよ?」大好きな彼女の声が聞こえた。 「わかってるよ。ちゃんとアイスも持ってくるからな。溶ける前に食べ切るんだぞ」  夏終わりの風が吹いた。 これは二人が初恋をした夏の思い出の一つである

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『人間』という生き物

 いつもの見慣れた帰路。帰宅時にはいつも今日起きたことを振り返る。ああ言わなきゃよかったとか、もっと反応してあげればよかったとかそんなこと。いわゆる1人反省会だ。今日のことはもう思い出したくないなぁ。最近そんなことばっか思うようになった。ろくに変わらない人生。それでいいじゃないか。今のまま変わらず。  後ろの方から物音が聞こえて後ろを振り返る。誰もいないはずなのに。いつもの幻覚かと思ったが目の前を何かが横切った瞬間に持っていた鞄を取られてしまった。 「あ!ちょっと!!」  そう言い急いで追いかけるがなかなか追いつかない。止まって息を整えていると黒い塊が鞄を咥えたままこちらを見ている。もしかして弄ばれてる?  自宅とは別方向に走っていく黒い塊には絶対に追いつけないが自分が止まると見える位置で止まっている。まるでついて来いとでもいうように。  最終的には来たこともない方向の山に連れて行かれた。山の中まで咥えられていた自分の鞄が足元に落ちている。 「ったく。なんでこんな」枯葉と土がついていて少し汚い。  もう暗いし帰らないと。そう思い来た道を帰ろうとしたがどこも同じ風景でどこから来たかわからなくなってしまった。  まずい。そう焦っていると奥の方に人影が見えた。あの人なら。そう思いその人に声をかけた。 「あのー、すみません。道に迷っちゃって」 「縺昴≧縺ァ縺吶°縲∵ョ句ソオ縺ァ縺吶?らァ√b繧上°繧峨↑縺?〒縺吶?」 「えっと、今なんて?」 「縺ゅ↑縺溘?莠コ髢薙〒縺吶°?溘↑縺懊%縺薙↓縺?k縺ョ縺ァ縺吶°?」  その人は聞き覚えのない言語で会話をしてくる。ふとどこからか何かの鳴き声がして鳴き声がした方を見ると、ここまで連れてきた黒い塊がこちらを見つめている。  すると目の前の人がドロドロと溶け始め黒い狼の姿に変わった。その光景があまりにも恐怖で後退りをした。すぐに走って逃げることもできたが何故かそれができなかった。その狼はこちらを見つめて何かを訴えようとしている。  ここまで連れてきた黒い塊が足元に降りてきて隣の狼と同じ姿になった。 「おい人間。いや機械。俺らを助けてやくれないか?」 「ーーは?!」  いろいろな情報が一気に来て脳が追いつけない。謎の物体が狼に姿を変えて語りかけてきて助けを求めている。それに人間の自分が機械呼ばわりされている。一周回って脳が冷静になる。 「うん、じゃあ私は帰るから」帰ろうとすると狼が人の姿になって私の腕を掴んだ。 「待ってくれ!お願いだ。俺らにはお前しかいないんだ」  その人を見る。そいつは綺麗な青い目をしていた。 「でも、帰らないと」 「頼む!」そう言い土下座をする。隣にいた狼も見ようみまねで土下座をしている。 「わかったって。でも、流石に暗いから見えない。君たち黒いから」  「こっち」と言われついていくと地下に続く建物があった。そこは明らかにボロボロで水漏れをしている箇所が何個かある。その割には綺麗な場所が多かった。  ガラス張りになっている部屋の中にはこいつらと同じような黒い生き物が入っていた。そこで足を止める。 「俺らはここで生まれた生き物。『人間』だ」 「え?にん、げん?」 「そうだ。そして君は機械だ。その自覚がないのが不思議だが」 「いや、私たちが人間であなたたちがーー」 「俺たちは『人間』。そう人間たちに呼ばれてきた」  理解のできない状況をなんとか飲み込もうとした。私は思い出した。私は以前、ここにきたことがある。でもいつかはわからない。思い出せない。思い出すことを抵抗するように脳内にノイズが走った。  私はなんとなく理解した。あってはいけないものにあってしまったと。

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