『人間』という生き物

 いつもの見慣れた帰路。帰宅時にはいつも今日起きたことを振り返る。ああ言わなきゃよかったとか、もっと反応してあげればよかったとかそんなこと。いわゆる1人反省会だ。今日のことはもう思い出したくないなぁ。最近そんなことばっか思うようになった。ろくに変わらない人生。それでいいじゃないか。今のまま変わらず。  後ろの方から物音が聞こえて後ろを振り返る。誰もいないはずなのに。いつもの幻覚かと思ったが目の前を何かが横切った瞬間に持っていた鞄を取られてしまった。 「あ!ちょっと!!」  そう言い急いで追いかけるがなかなか追いつかない。止まって息を整えていると黒い塊が鞄を咥えたままこちらを見ている。もしかして弄ばれてる?  自宅とは別方向に走っていく黒い塊には絶対に追いつけないが自分が止まると見える位置で止まっている。まるでついて来いとでもいうように。  最終的には来たこともない方向の山に連れて行かれた。山の中まで咥えられていた自分の鞄が足元に落ちている。 「ったく。なんでこんな」枯葉と土がついていて少し汚い。  もう暗いし帰らないと。そう思い来た道を帰ろうとしたがどこも同じ風景でどこから来たかわからなくなってしまった。  まずい。そう焦っていると奥の方に人影が見えた。あの人なら。そう思いその人に声をかけた。 「あのー、すみません。道に迷っちゃって」
匿名未確認生物
匿名未確認生物
世界のどこかに生息している生き物です