175号室
4 件の小説最近思うこと
私ね最近思うんだ。 人間として生まれたことは幸せなのか。 私は生物学者でもないから、科学的に言えば違う、なんてこととあると思うけどとりあえず聞いて欲しい。 人って知能が他の動物より優れてるから 信じられないほど文明が発達してるよね。 でも多分文明の発達は全て知能によるものなのかな? 私は人間の感情の豊かさもその要因のひとつだと思う。 人間にはいくつもの言葉じゃ表せないほど複雑な感情がある。 自殺とかするのも多分人間だけどだしね。 でも、幸せを追求する気持ちとか嫉妬とか、成長していく上で重要な感情が、強いのは人間なんじゃないかな。 だから、ここまで文明が発達して(人間にとって)便利な世の中になったんだと思うな。 感情が複雑すぎるから必然的にポジティブな感情だけじゃなくて、ネガティブな感情も増えるけど それでもこうやって、思いをつづって簡単な発信できる場があるのは人間だけだよね。 だからやっぱり人間に生まれたことは幸福なんじゃないかな。
故意ゆえに。 第2話
司の朝 ドンッ! 大きな音を立てて俺は飛び起きた。 『9時12分』 完全に遅刻した。遅刻どころじゃない、もう一限目は始まってるし、あと30分も経てば終わる。ベットから飛ぶようにして降り、壁にかけていた制服を引きちぎるようにして掴んだ。 急いできながら1階のリビングへ降りて行く。お母さんに怒りたい気持ちをグッとこらえた。既に食卓に用意されていたご飯を5分もしないうちに食べる。顔を洗って歯を磨いて、部屋中を駆け巡るようにして準備を済ませていく。 「司ぁ〜。バタバタうるさいよ。それはそうと学校間に合うの?」 俺はカバンに部活の準備物を入れた手を止める。ガチャガチャと皿を洗っているお母さんを見た。 「今急いでるだろうが!なんで起こしてくれなかったんだよ。どう見ても遅刻だよ!!」 さっきまで我慢していた分もあって怒声を響かせてしまった。母親は動じず皿を洗う手を止めない。 「何度も起こしたけどねえ。」 そういうと今度は洗った皿たちを拭き始めた。俺は呆気に取られたが、そんな暇もなく急いでカバンをかき集めるようにして持ち、「行ってきます」と叫ぶように言って、家を出た。 爆速でチャリを漕いでいく。学校までは15分もあれば着く。準備もあったので結局家を出たのは35分くらいだった。1限目には間に合いそうにないが休み時間までには着くだろう。梅雨の湿気と汗でシャツの中が蒸れていくのもお構い無しに学校へ向かった。 司の興味 『ありがとうございました!!』 部活が終わってグラウンドに礼をする。頭の先からぶわっと汗が流れ出していく。タオルと水筒を掴んで、部室に入った。 「疲れた〜」俺が汗を拭いている隣でユニフォームを脱ぎながら横田が言う。 「最近は湿気が多いからキツイよな。」俺も返答した。夏場の練習できついのは日差しが強いことや熱いことだが、今の季節は湿気が多く、それが何よりきついのだ。俺もユニフォームを脱ぎシャツを着始める。 「おーい司。」先輩の声だった。俺はまだ留め終わってないボタンをそのままにして後ろを振り向いた。 「はい!先輩!なんですか。」 「お前、今日遅刻しただろ。」 「あ、、はい!!」俺は思考が停止したものの、ほぼ条件反射で迫力のある返事をした。 「はい!じゃねーわ!笑 お前が物凄いスピードで廊下駆け上がってるところ見たんだよ。」先輩はゲラゲラ笑いながら俺の頭を撫でてきた。何となく気まずい。 「あ、すいません…」情けない声をあげた。その後、結構強めに(別に怖くはなかったけど)監督から遅刻の件の注意を受けたが忘れたいので割愛する。 「気にすんなよ。流川。」横田が励ましてくれた。 「別に大丈夫だし。」強がった返事をしてしまった。横田はスマホを片手にぐっと距離を詰めてきて小さな声で呟いた。 「山田のやつ、時波(ときなみ)さんにDM送ったんだってさ。狙ってんのかな。想奈ちゃん可愛いもんな〜。」横田はそういうとちらりと部室の隅で着替えていた山田を見た。山田はそんなことは知らずに友だちとワイワイ話していた。 「さぁ。」俺は正直言ってそういうの興味なかったから適当な返事を返す。 「お前さぁ、恋人とか作らねーの?」横田は俺の返事が不服だったのだろう、口を尖らせて言う。 「いや、好きな人いないし。彼女が欲しくないと思ったことは無いけど。」 「でも時波さんだぜ??可愛いとは思うだろ?」 俺は少し考えた。 「会ったことないし顔知らない。」 「はー!?マジで言ってんの?!」横田はでっかい声を上げる。山田も目を丸くしてこっちを見てきた。何人かがどうしたのかと横田に聞く。 「いや、こいつ時波さんの顔知らないとか言ってるんだぜ!?」横田は更に声を荒らげた。周りのみんなは有り得ないだとか1度は話してみたいだとか口々に言っていた。時波さんという言葉を聞いた山田は少し気まずそうな顔をした。俺は少し申し訳なくなった。 「いや、ごめんって。そんなに可愛いんだったら今度見ておくよ。」横田や他のみんなを宥めるべく俺は答えた。 「横田そんなに時波さんのこと言って、好きなのか?」俺は逆に横田に質問をした。横田はびっくりした顔をした。 「いや?別に好きじゃないけど、てか俺なんかが好きになったら行けないし。でも可愛いじゃん。」次はまた俺がびっくりした。好きでもない相手を可愛い可愛いと騒いで、誰かが狙ってたら少し怒ったりとかするものなのだろうか。それはやっぱり好きなのではないか。価値観が違いすぎて何も言えなくなった。 「…そうか」それだけ答えると俺はカバンを持って部室を出た。チャリに乗って今度はゆっくり漕ぎながら家へと向かう。朝の雨や湿気がだいぶ収まっていた。少し涼しい風が吹いていた。 「あ、ノート買わなきゃ。」俺は今日使い切ったノートを思い出した。学校の駅の近くにディスカウントストアがある。そこによってノートを買おうと思い方向を変えて駅へと向かう。 「あれ、横田が言ってた女子の名前なんだっけ。」途中でそんなことを考えながらディスカウントストアに着いた。
食べ残し 第1話
プロローグ 「ごちそーさま。」時雨瀬奈子(しぐれ せなこ)は手を合わせて言う。 「え?瀬奈子!まだスープ残ってるよ。」 大きな二重の目をキョロキョロさせて浦名明美(うらな あけみ)がご飯を頬張って尋ねた。 「えー、、だってこのスープ味薄いもん!私濃い方が好きなんだよね、」口を尖らせた瀬奈子は箸でスープをかき回す。一口飲んで薄い!っと言うと残っていた牛乳を飲み干して手慣れた動きで牛乳パックをたたむ。 「あー、確かに薄い。私それよりこのサラダがいらないや。」明美は皿の上で玉ねぎだけを綺麗に残していた。よくそんなふうに分けれるなと瀬奈子は思いつつも何も言わなかった。 「2人とも後5分で給食終わるよ。」 優しそうな声が瀬奈子の頭の上で聞こえてきた。白浜時子(しらはま ときこ)だ。 時子は華奢ですぐに骨が折れそうなくらい弱々しいのにたくさん食べる。いつもダイエットしている瀬奈子は羨ましいと思っていた。時子は典型的な痩せ体質だ。水でも太ると言われた瀬奈子とは違う。瀬奈子も特別太っているわけじゃないが、足が太いのが悩みらしい。 「あ!時子ちゃん!ちょうどいいところに来てくれたね??このスープ飲んでくんない?」瀬奈子は言う。 「え、、んー、でも私もお腹いっぱいだしな。」 「ならさ!このサラダの玉ねぎは?!これくらいならいけるっしょ!」 「えー、自分で食べなよー、私これから歯磨きしに行くのに。」 「「いいじゃん!!」」瀬奈子と明美の声がハモる。3人ともおかしくなってひとしきり笑う。 「はー、面白い笑 まあいいや。スープちょーだい。」時子は右手を瀬奈子に差し出すと瀬奈子はスープの入っていた茶碗を渡す。一気に飲み干した時子は少し苦しそうな顔をしつつも明美に向かって「次。」という。明美も皿を差し出すと、時子は一口で残りの玉ねぎを平らげる。 「ほんと助かったー!残したら先生怒るもんね。ありがとー!」瀬奈子はお盆を持ち上げ片付けの準備を始めようとする。慌てて明美もついていく。 お盆の上の皿をカゴの中へと2人で入れていると寺本琥珀(てらもと こはく)が来た。 「瀬奈子と明美さ俺のごまプリンいる?」 「いらないー。琥珀ってプリン好きじゃなかったっけ?」 「ごまは嫌いだから。明美は?」 「私もいいかなー。」 「そっか。他当たってみる。来栖ーーー!」 給食中だと言うのに琥珀は大きな声で来栖 勝彦(くるす かつひこ)を呼ぶ。 「要らんってさっきも言っただろー?」 「お願いだよお。お前ごまプリンどうしたのー。」 「こっそり捨てたわ笑笑」 「最低ー笑」 2人はゲラゲラ笑って騒いでいる。 案の定先生から指導を受ける琥珀たちを横目にして片付けを済ませた。 「今日の給食ハズレやな。」ぼそっと呟く末内 司(すえうち つかさ)も片付けを始めたみたいだ。 「ね!スープ不味かった笑」瀬奈子は微笑むも、横の明美はニコリともしない。末内と明美は塾が一緒みたいで先日トラブルがあったのだそう。彼らの問題なので内容については深くは聞いてないが、成績のことだそう。なんでも私たちはいま中学三年生で受験生なのだから切羽詰まるのもわかる。仲良くなって欲しいものだと瀬奈子はつくづくおもう。 9月も半ばに差し掛かる。そろそろ肌寒くなりクラスには中間服の人と夏服の人で別れて統一感のない感じがある。こんな時いつも瀬奈子は季節の変わり目だなぁと思った。午後からは雨が降ると言っていた。きっと寒くなるだろう。瀬奈子は中間服を着てきて良かったなと思った。前線の影響か何かだろうと瀬奈子は思う。寒冷前線とか温暖前線とか理科でやった気がする。などと思っていると給食終了のチャイムが学校全体に鳴り響いた。 これは平和な日の最後の思い出だ。
故意ゆえに。 第1話
想奈の興味 正直言って私は高嶺の花だ。他称でもあるし自称でもある。私と隣の席になった人には、持ち前の明るさと可愛さとコミュ力で1日もしないうちに落とすことだってできる。私は恋人も友達も選ぶ側、なんなら選んであげるって感じだ。そんなこと思ってても表に出さなければ、性格も良くて顔も良くてな完璧キャラ。おまけに頭もいいし運動もできる。欠点があるとしたら視力が悪いくらいかな。コンタクトすれば問題ないし、ないも同然。そのせいか理想が高くなっちゃって本気で好きになった人は居ない。付き合った人は何人かいるけど、周りに押されてまあいいかなって感じで付き合っただけだった。完璧な私だもの、どんな相手だって落とせるからそう焦らずに、完璧な相手が現れるまで待てばいいの。毎日が楽しくて仕方がない。 「想奈〜!」1時間目の休み時間に突入した直後に背後から名前を呼ばれた。 「なになにどうしたの?」私はニコッと微笑むと、友だちの方を向いて質問した。教室は梅雨の時期のせいで高温多湿、蒸し蒸しして髪の毛がゴワゴワしちゃうのが悩みな季節だ。さっき先生が除湿機をつけてくれたから幾分かマシではある。 「三組の山田が想奈のこと好きらしいよ」 ニヤニヤする友だち。私は目を丸くしてスマホを取りだした。 「山田くんって誰だろう?昨日知らない人からDM来たんだけどこの人かな。」 私のスマホをのぞき込む友だち。その後自分のスマホを確認して大きくうなづいた。 「そうそう!その人だよ。写真あるけど見る?」 「んー。まあいいかな〜。」私は眉間に皺を寄せて笑った。 「えー何でよーー。つまらないの。」 「だって知らない人だもん。興味無いよ。」 「想奈はモテるもんね。」 「そんなんじゃないよ。」 次の時間が化学室だったので教科書やノートをまとめて2人で廊下へと出た。化学室は4階で私たちの教室は3階。向かう途中で外を見ながら歩いた。大きな坊主頭の人がカバンを持って物凄いすいスピードで校門から昇降口へと走っている。遅刻だろうか。多分野球部だよな。とか思いながら私はぼーっと歩いていく。 弥生の興味 想奈が化学室へ向かっている頃、想奈教室とは2つ教室を挟んだところで、休み時間を過ごしている人がいた。 私は、黄色の筆箱から名前ペンを取りだして新しく買ったノートに名前を丁寧に書いていく。 瀬、、田、、 名前ペンの細い方を使って丁寧に丁寧に。 弥、、 後ろでガタガタと音がした。 生 「あっ!」私な短い声を上げた。後ろの男子たちが私の体にあたって「生」の字が太くなってしまった。 「え、あ、ごめん!」手を勢いよく合わせて謝ってくる男子。私も思った以上に大きな声を上げてしまったので申し訳なかった。 「こっちこそごめんね」ニコニコと笑いながら大丈夫だよというジェスチャーをする。 「え?なになに」後ろで一緒にはしゃいでいた男子が様子をのぞき込む。私のノートと名前ペンを見て理解したようで、ぶつかってきた男子のことをからかい始めた。 「おい!お前!瀬田さんに謝れよー!」 「いや謝ったよ。そもそもお前が押したのが悪いんだろう?お前も謝れよ。」 「あ、そーか。ごめんね瀬田さん。」 丁寧に頭を下げてしたことに少し驚きつつ私は「いいよいいよ」と小さく手を振る。 「瀬田さん字綺麗だね。」 「ほんとだ。上手い。」 ふたりは私の字を見て言った。 「え、、あ、そうかな、ありがとう。」しどろもどろになりながらも笑顔を崩さずにお礼を言う。正直言うと、早くどっかに行って欲しかった。謝ってそれで終わりで良かった。男子と話すことには興味はあるけど上手く喋れないし、反応も下手くそだから緊張して仕方がなかった。我慢できなくなって私は二人の続きの会話を聞かずにその場からすっと消えた。 「お前字が汚いもんな。」 「うるさい。お前は女みたいな丸文字書きやがって。」 「別にいいだろ…あれ瀬田さんどっか行った。」 「ほんとだ。お前がうるさいからだよ。」 「お前もうるさいだろ。」 「瀬田さんってなんか心開いてくれてない感じするよな。」 「わかるー。でも開いてる人には自分からいっぱい話しかけてるし活き活きしてるよな。」 「俺も沢山話したいけど、心閉ざされてるんかな。」 「えお前瀬田さん好きなの?」 「違うよ。でも仲良くなりたいじゃん。何であの人って言うような男子とめっちゃ仲良かったりするし。」 「あーわかる。いつもニコニコしてて親しみやすそうな感じなのに話すとやっぱり距離感じるよな。」 その場からは消えたけど私は一部始終会話を聞いていた。やっぱりそう思われてるんだ。 少し悲しくなった反面仕方ないとも思った。 私は男子だけじゃなくて女子にも心開いているかどうかでかなり態度が違う。心を開いていないからと言って決して冷たく接するようなことはしない。でも緊張して、雰囲気がすぐ気まずくなってしまう。嫌ってる訳では無いしもっと気軽にみんなと話したいのに、何がこんなに緊張させているんだろう。私は小さなため息をついた。嫌われている訳では無さそうだし、愛想良くにこにこしといて良かったと常日頃の自分に感謝して、とりあえず気にしないことにした。廊下に出ると他クラスの男子が通った。 堀田くんだ。堀田くんは私の数少ない異性の友だちだった。多分異性という意識がないから気楽に話せるのだと思う。 「堀田くん!今度のテストどんな感じ?」 堀田くんも私もどうしてこの高校に入れたのだろうかと言うくらい成績が良くない。堀田くんは成績悪いキャラとして確立しているものの女子である私はそうはいかなかった。 「んー。赤点は回避出来たと思うけど。」 「ふーん笑私もまぁまぁかな。」 「勝負する?」 「良いけど私の勝ちは決まってるよ」 「いや分からんよ?」 レベルの低い会話を繰り広げていく。他の人には死んでも言えないくらい恥ずかしいけど堀田くんは仲間だからそんなことは気にしない。すると堀田くんは私の教室の方を見てニコニコと笑った。私の後ろから友達である佐久本結花(さくもと ゆか)が出てきたのだ。結花もまずまずな成績で私といい勝負なのだ。3人は成績の悪いもの同士去年から仲良くしている。私は勝手におバカ仲間だと呼んでいた。 「なになにー?私の出番かな?」 「あー!結花ちゃん!笑そうだよ出番だよ。」 「佐久本さん今回どんな感じ?」堀田くんはニヤニヤしながら聞く。 「いやー笑まずノー勉の教科が半分以上あったんですよね。」変に改まった口調で話す結花に私たちは笑った。 「ごめんなさい!ごめんなさい!」 私たちの教室の廊下のすぐ横にある階段の方から大きくて低い声が響いてきた。なんだろうと私たちは階段の方を見た。坊主頭の背が高くガタイのいい小麦色の肌の男の子が、階段を1段飛ばしでかけ登っていく。私たち3人の間を大股で軽く会釈をしながら速やかに通って行った。彼はまだ鞄を持っていて、多分遅刻したのだろう。 「大きな鞄…」結花がぽつりと呟いた。堀田くんは「野球部のものだよ。」とだけ返事をした。 私は驚いたし面白くて少し笑っていたけど、心のどこかでかっこいいと思っていた。漢って感じの見た目で、優しいお父さんとゴリラを合体したような人だと思った。背の低い私の3倍くらいありそうな分厚い壁のような背中にどこか安心感すら覚えた。 「弥生ちゃんあんな人がタイプって言ってなかったっけ?」結花はからかうように私に言う。私も我に返って首を振りながら答える。 「まぁ確かにね。でも人目見ただけでは好きにはならないよ。」堀田くんはびっくりしていた。 「坊主の人って人気ないんだと思ってたよ。」 「弥生ちゃんが特殊なだけだよ。」 「そんなことないし。」