猫又ももんじゃ
17 件の小説夢想
彼女と同じベッドで寝る夜には決まって貴女が夢に出てくる もうどこにもいないのに 声も顔も薄れて私の記憶から消え去りそうなのに 夢の中の貴女は嫌に鮮明であの時のように微笑を浮かべている 一体、私に何を求めている 私が何事にも消極的なのは貴女が一番理解しているはずだ もちろん貴女に対しても それを分かっていてわざとそんな仕草をしているのだろう もし貴女も私と同じ事を想っていたのなら…… いや、分かっているよ 私から言わなければ また今度、夢で逢えたら
幸せ
気づかない内に幸せの一つを手に入れているのに満たされないふりをしてまた次を欲しがっている
彩雲
綺麗な色のはずの空が灰色にしか見えなくなってどれくらい経ったろうか? 無色透明じゃなくて、しっかり灰色として私の眼に映っているのが余計にウザい
判らない
どん底を這いつくばっているのは分かってるのにどうしてこうなったのかは解らない 知らないうちに分岐点を間違えたのだろうけどどの道が正解だったのかも判らない
人間やめたい
あれだけ鬱陶しかった足枷を無理やり外して檻の外に出た時に初めて本当の絶望を味わった あぁ、神様。 人の上に人を創らないのに、人の下に人を作ったのは何故なのですか?
恣意的
選択肢がある人間が愚痴を漏らすのは許されて選択肢のない人間が愚痴を漏らすのが許されないのはなぜなのだろうか
鍾愛
もう二度と会うことのない貴女から分け与えられたらしい愛は私にとってなんの役にも立たない 所詮自分が満たされて、そこからこぼれ落ちそうな粗末なものを「愛」と嘯いて私の餌にしただけ 私がもし貴女に与えられるものがあるとしたらそれは愛憎だけ 最低のエゴイストである貴女への憎しみを最低のナルシストである私が「愛」として無理やりその嫌味や言い訳しか発さない口に突っ込むだけ
藍〜あい〜
藍色の衣服に袖を通した 藍の花は赤色なのだそうだ 茎や葉からこの染料を取るらしい そして、藍の花とは真逆のような色に染め上げられたものが世の中のいたるところに並ぶ 藍の花弁は小さくあまり写真映えなんかはしないように思える 花は当たり前だがそれぞれ花弁に大きな違いが出る でも藍の花弁を見ている人なんてあまり居ないのだろう 皆、この藍色という深い青を綺麗だというくらいの認識しかない 花弁ではなく茎や葉を重宝されている藍は世の中への皮肉のようなものをそれなりに綺麗に具現化しているような気がする
哀〜あい〜
自分の悲しみには敏感なのに貴方の悲しみには鈍感な私を見て貴方は哀しんでいるのですか?
病〜やまい〜
まるでコンピュータウイルスに侵されたように頭の中で欲望ばかりが増殖している それは他人の介入からか、自己で形成したものなのかは分からない