海月

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海月

高校二年の海月(くらげ)です! 多ジャンルの小説をたくさん書きたいと思うので、気軽にリクエストをお願いします! 毎日受け付けております👍 🔴YouTubeでボカロPをやる予定です! 興味がある方は、僕の作品のコメント欄まで♪🔴 プロセカやってます! 「きゃらめる・らて」フレンドコード:549149525832708097 ※サムネやアイコンのイラストは、ChatGPTやピクルー、フリー画像などを主に使用しています。

Silent Vortex 〜影の旋律〜 DATE1(#3)

ーーなんなんだよあいつら…俺らを殺害するだと? いやそんな事より、一体、どうやってここがアジトだって分かったんだよ! ハッカー集団のボスは、男と逃げ惑いながら考えていた。彼らに分かるはずもない。Silent Latticeは、24時間日本各地の街の様子、治安、ニュースをずっとモニタリングをしているのだ。その手段として、ネットニュースや気軽に呟けるSNS、至る所に設置されているライブカメラなど。彼らの情報網は、格子のごとく規則正しく張り巡らされているのだ。 * 一方、霞真たちは激戦を繰り広げていた。 ーー素人の動きではないな。意外と動きが速い。油断してたら撃たれてしまうかもな。だが… 霞真はナイフを握りしめ、目の前の男の胸ぐらを掴んだ。そして、奴の頸動脈を刺す。 「がッ…」 派手に血飛沫を上げながら、ばたりと倒れた。顔やローブに血が付着するも、霞真は構わず次の標的の方へ向かう。陸斗は右手に投げナイフを三本持ち、一本ずつ投げた。それはまっすぐ飛んでいき、男の胸に突き刺さった。 「ぐあぁっ!」 陸斗が投げるナイフは、99%の確率で命中する。そして彼らは、十分もしないうちに武装する男たちを全員殺害した。だが、本命は奴らではない。 「陸斗、あのボスらはどの方向へ行った?」 「たしか、そっちの出口に逃げたんじゃないかな」 霞真は手についた血をはらって、無線機を手に取った。 「こちら霞真。団員二十人の始末完了。残りの団員一人と、ボスの始末に向かう。Latticeはここの処理と、サーバーなどの回収を頼む」 《了解》 Latticeのもう一つの役目。それは、死体や返り血の後始末だ。特殊なスプレーなどを使って汚れを拭き取り、死体は持ち帰ってアジトの焼却炉で燃やす。全てを無かったことにするのだ。霞真は奴らが持っていた銃の残りの弾数を確認し、一丁を陸斗に渡し、自分も装備した。 「ボスを追うぞ」 「おけ」 霞真と陸斗が部屋から出ようとした時だった。無線から、焦っている様子の声が聞こえた。 《こちらLattice! ターゲットらしき二人の人物が、建物外へ逃亡している!》 「なっ…もう逃げ出したのか⁉︎」 続いて、別のメンバーからも無線が入った。 《こちらLattice。現在地付近にターゲット確認。今なら奴を仕留められます》 「おい、仕留めるってお前、なにで…?」 《今、手元に護衛用のナイフがあるので、覚悟はできています》 そう言う諜報員だが、霞真は首を大きく横に振る。 「ダメだ! 奴は銃を持ってるんだぞ。お前が先に殺られる!」 《しかし…》 「おい、霞真! あいつじゃね⁉︎」 陸斗が窓の外を指差してる。そこを見ると、ビル近くの道を、あの二人組が走って逃げている。その時、霞真はその窓を急いで開けた。陸斗は彼が何をしたいのかをすぐに理解し、慌てて彼を止める。 「おい、よせよ。ここ12メートルもあるんだぞ。怪我でもしたらどうするんだ…」 「止めるな‼︎ 今しか奴らを殺せない!」 陸斗の手を振り払い、霞真は窓から外へ飛び降りた。そして、僅かな空気抵抗を受けながらボスの方向へと飛んでいき、何も知らない奴にドロップキックをした! 「ギャアァァァァァ⁉︎」 ボスの肋骨が折れる音がした。霞真はすぐに姿勢を立て直し、二人をナイフで切りつけたのだ。倒れ込む二人。 「はぁ…はぁ…」 霞真の身体に疲労が押し寄せてきた。 「…死ぬかと思った」 そこへ、陸斗とLatticeのメンバーが駆けつけてきた。 「大丈夫か、霞真⁉︎」 「ああ、なんとか間に合ったよ」 「マジで無茶すんなよ、映画のワンシーンみたいな事しやがって!」 「手段がこれしか無かったんだよ」 こうして、Specter Hackの核が殺され、奴らの犯行は二度と起きなくなった。 * 翌日のアジト。Silent Vortexのメンバーの真夜が、霞真から当時の話を聞き終え、信じられないような表情をしていた。 「なにその映画みたいな倒し方…危なすぎない?」 「陸斗と同じ事言ってるじゃねぇか」 「霞真はすぐそうやって無茶するんだから。自分の身体は大事にしないとだよ?」 「…まあ次からは気をつけるよ」 本当なの?と言う真夜に、霞真は苦笑した。 DATE1 fin. 作:海月

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Silent Vortex 〜影の旋律〜 DATE1(#3)

Silent Vortex 〜影の旋律〜 DATE1(#2)

「本日、電子マネーサービス『EasyPay』が、ハッカー集団によるサイバー攻撃を受けた」 モニターに映る情報を指差しそう言うのは、諜報員グループSilent Latticeのリーダー、静馬だ。とある地下アジトの20時。ミーティングルームの中で霞真と陸斗も、真剣そうな表情で話を聞いている。 「そのハッカー集団の正体なんだが、かの有名な『Specter Hack』によるものである事が判明した」 「!」 Specter Hack。世界中で様々な電波障害、ハッキングを繰り返す厄介なハッカー集団だ。金銭や情報漏洩などを目的に動いており、毎年至るところで被害が報告されている。 「霞真。どうやらお前も被害に遭ったみたいだが、復旧はしたのか?」 「ああ、残高も減っている訳ではなさそうだし、大した問題はない」 陸斗が尋ねた。 「それで、奴らの拠点はどこか分かったのか?」 「もちろんだ。今回は駅近くにある〇〇ビルの四階を使用していたらしい。どうやらリーダーらしき人物もそこにいるらしいから、今夜、Specter Hackの核を潰すぞ」 「おお…なんかワクワクするな!」 そう言う陸斗に、霞真がつっこむ。 「殺し屋がワクワクするって、滅多に聞かないぞ」 「でもさ、俺らの手で、世界の治安を影ながら救うって、やっぱりかっこいいだろ!」 「…まあ、悪い気はしないかもな」 「だろ⁉︎ よし、今日も頑張るぞ!」 一層張り切る陸斗。静馬はモニターに繋いでいたパソコンを閉じた。 「ーーでは、22時に作戦を遂行する。それまでに準備してくれ」 「了解」「了解!」 * 〇〇ビル。それは数十年前に倒産した会社のビルで、所有者もすでに亡くなっている。解体するにも莫大な金が掛かり、今も残っている。薄暗い部屋を、不気味なサーバーの光が照らしていた。 「ボス、次のターゲット地区の提案を頼む」 大勢いる男のうちの一人の男が、Specter Hackのボスらしき人物に尋ねた。ボスは腕を組み、テーブルに広げられた地図のとある位置を指差した。 「明日、このあたりでイベントがあるらしい。人通りも多いし、ここにしよう」 そんな怪しげな話し合いをしている時だった。物凄く大きな音がしたと思ったら、入り口のドアが破壊されていた。 「ーーッ⁉︎ 誰だ⁉︎」 そこからコツコツと足音が響き、二人の人物が現れた。そう、霞真と陸斗だ。二人とも黒いローブを身にまとい、霞真は二本のダガーナイフ、陸斗は数本の小さな投げナイフを持っている。 「あんたがSpecter Hackのリーダー、イシダ ヤスノリか。こんな汚ねぇとこでコソコソしやがって」 「な、何故それが分かる!」 陸斗の言葉に動揺するボス。霞真もこう言う。 「我々は、お前らの行動が世界の秩序を乱す存在であると判断した。よって、本日お前らを殺害する」 その言葉に、ボスは一気に青ざめた。だがーー。 「まさかこんな事になるなんてな…おい、アレを用意しろ」 周りの男たちは、自分の懐からピストルを取り出した。 「へぇ…セキュリティガバガバかと思ったら、ちゃんと対策はしてあるんだね」 陸斗の煽りに、ボスが怒鳴る。 「黙れ! お前ら、こいつを蜂の巣にしろ!」 「「押忍‼︎」」 そうしてボスは、一人の男を連れて奥へ逃げ出した。 「殺れるか、陸斗?」 「勿論! 俺についてこい、霞真‼︎」 「…偉そうなヤツ」 Specter Hack武装者の二十人 対 霞真&陸斗。 二人は、銃を持つ群れに向かって走り出した。 to be continued… 作:海月

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Silent Vortex 〜影の旋律〜 DATE1(#2)

Silent Vortex 〜影の旋律〜 DATE1(#1)

Silent Vortexーーそれは、日本全国に潜む悪を抹消させるために立ち上げられた、凄腕の暗殺グループである。二本のダガーナイフで標的を切り裂く霞真(かずま)。銃器を使いこなし、相手に触れずに仕留める真夜(まよ)。大剣クレイモアで、一度に多人数を葬る龍也(たつや)。鎖鎌を振るい、目にも留まらぬ速さで標的を巻き付け、斬りつける明莉(あかり)。投げナイフを使って、標的を無音で仕留める陸斗(りくと)。様々な薬品を使い、賢く倒す京子(きょうこ)。彼らは新潟県に存在する地下アジトを拠点とし、今もどこかで任務を遂行している。 ある正午のことだった。霞真と陸斗が駅近くのカフェで昼食を取っていた。普段プライベートで関わることの少ない彼らだが、珍しく霞真が陸斗を誘ったのだ。陸斗は運ばれてきたコーヒーカップを手に取り、香ばしいコーヒーの香りを嗜む。 「今日は誘ってくれてありがとな、霞真。にしても、お前から誘ってくるとは珍しいじゃんか」 「ああ。たまには仲間と食べにいくのも悪くないと思ってな」 霞真も、注文したフレンチトーストを食べ始める。普段の仕事では見せない、僅かなリラックスした空気がゆったりと流れていた。 数十分後。空になった食器が乗ったプレートを返却棚にのせ、会計へと向かう霞真。 「これくらいなら、俺が払ってやるよ」 その言葉に、陸斗は目を輝かせた。 「え、いいの⁉︎ さっすが霞真、イケメ〜ン!」 「うるせぇ」 そう言いながらも、店員の方を向いた。 「千六百円です」 「QRでお願いします」 霞真はそう言うと、スマホを取り出し、電子マネーのアプリを開く。機器にスマホを当て、決済しようとしたが、いくら待っても、決済完了の表示がでない。やがて、こんな表示が出てきた。 『原因不明のエラーが発生しました。時間をおいてもう一度かざしてください』 「…ん?」 その後も何度も決済を試みるも、やはりエラー表示が出てしまう。そうしているうちに、後ろに会計待ちの行列ができてしまい、これ以上時間をかけると怒られてしまう。 「すまん陸斗。後でATMで下ろして返すから、今払ってくんね?」 「あ、ああ」 そうして陸斗は現金を出し、カフェから出ると、霞真は現金を下ろしにコンビニへと向かった。外で待つ陸斗。 「サイバー攻撃にでも遭ったのか…?」 そう呟いていると、突然、後ろから声をかけられた。 「こんにちは、お兄さん! こちら、試供品です。ぜひお試しください!」 「え? あ、はい…」 手渡されたのはポケットティッシュ。だが陸斗は、先ほど声をかけてきた人物に見覚えがあった。 「Latticeの諜報員か? てことは…」 Latticeというのは、Silent Vortexに所属して、情報収集の役割がある諜報員のことだ。陸斗はティッシュの紙を全て取り出し、それらを一枚一枚確認した。すると、そのうちの一枚に文章が書かれてあり、それを見た陸斗は険しい顔になった。 「…なるほどな」 to be continued… 作:海月

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Silent Vortex 〜影の旋律〜 DATE1(#1)

暁に咲く花

静まり返った戦場で ただ一人、歩いていた 傷だらけで冷たくなった 彼を背負って 街で湧き上がる歓声 勝利を祝う人々 そんな中笑えずにいた 私がいた 忘れはしない 彼の最期の笑顔 頬にキスをして 柔らかい地面に埋めた もしも貴方に会えたら 勝利の喜びを分かち合いたかった 結局、何も得られなかった 私は 何のために戦ったんだろう? 朝の紅茶にふたつ カップを並べてみた そこに座る幻影を 探していた 風に語った あの日の川のこと 笑うあなたの声が 胸を締めつけた もしも貴方に会えたら もう一度だけ笑い合いたかった あの静かな午後のように 私は ただ隣にいたかっただけ もう戦わなくていいなら この痛みも終わるのなら せめて夢の中だけでも 貴方に会わせて もしも貴方に会ったら もう一度貴方を抱きしめたい またあの時のように あの頃のように 一緒に暮らしたい もしも貴方に会えたら 勝利の喜びを分かち合いたかった けれど胸に残るのは この孤独と 答えのない祈りだけで もしも貴方に会えたら もう一度だけ笑い合いたかった ただ隣にいるだけで それだけで 私は救われていたのに 風が頬を叩いた 遠ざかる世界の音 痛みも涙も すべて 空に溶けていった そして 懐かしい背中が、 見えた、 気が、 した 作:海月

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暁に咲く花

心の隔たり 第6回N1 予選出場作品

あの頃、私たちの間には『見えない壁』があった。 握手を交わすことも、肩を寄せ合うこともためらわれた。友人と笑い合う時間は画面越しになり、家族で囲む食卓にも静寂が増えた。誰かの温もりを感じることさえ、遠い昔の記憶のように思えた。 人との距離は、物理的なものだけではなかった。心の距離もまた、少しずつ広がっていった。「会いたい」と思っても、簡単には言えない。「大丈夫?」と聞かれても、本当の気持ちは隠してしまう。見えない壁が、私たちの間にそっと立ちはだかり、互いの存在をぼんやりとした影のようにした。 その壁の原因となった『疫病』で亡くなっても、まだ元気だった頃に見た顔が最後となってしまい、二度と顔を合わせることはなかった。 けれど、壁の向こうには、同じように手を伸ばしたい人がいることも知っていた。画面の向こうの笑顔や、届いた手紙の文字、遠くから聞こえる声が、その証だった。中には、自分たちでその壁をぶち壊してやろうと言わんばかりに、人々に笑顔を届けるために立ち上がる者もいた。その行動は、『疫病』に苦しむほとんどの人々を笑顔にした。その瞬間、壁の隙間から、新鮮で心地よい風が吹いてきた気がした。 そして現在。あの分厚い壁は、もうそこには無い。今日も人と人が、手を繋いだり、会話を楽しんだり、いつもの日常を楽しんでいた。 作:海月

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心の隔たり 第6回N1 予選出場作品

今、自分にはストレスが溜まってると思う。友人関係、成績、家族…。あらゆる場面でネガティブになり、どんどんと自分の中でストレスが溜まっていく。ふと、ストレス発散というワードが思い浮かび、色んな発散方法を試してみた。…でも、発散できなかった。ある日、学校の保健だよりの見出しに、こんな事が書いてあった。 『涙を流すことによって、ストレスが発散される。』 その文章によれば、涙には身体にあったストレス物資が含まれており、泣くことで気持ちが少しすっきりするらしい。でも、自分は何故か涙が出ない。どんなに感動的な映画を観ても、良かったとは思うが涙は出なかった。今、自分にはどれだけストレスが溜まっているのだろう。自分の心に、じっとりとしたストレスがまとわりつき、涙が出ないほどに虚無と化していた。 だが時々、そのストレスを感じなくなる時がある。自分が好きな食べ物を食べたり、ゲームで勝ったり、友達とカラオケに行って、喉が渇れるまで歌ったり...。その瞬間だけ、心がカラッとする。そうして、 「そこまで深く考えることじゃないか。」 と思い、また次の日頑張れるものなのだ。いつか今の困難を乗り越えられ、溜まっていたストレスが、氷が溶けるように発散される日が来るのだろうか。そんな事を考えながら、今日も頑張った自分を褒め、布団にもぐりこんだ。 作:海月

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涙

質問に答える海月 #1

初の質問コーナーです! 僕に聞いてみたいことがあったら、コメ欄で質問をお願いします!(個人情報以外) 海月

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質問に答える海月 #1

事故ったら異世界に転生しちゃった⁉︎ #RQ FINAL

ーー昔、俺が住んでいた村が、モンスターに襲われた。そんな時、父ちゃんがモンスターと戦ったんだ、このブラッドクラッシュで。でも、村は守れたけど、父ちゃんは酷い怪我をして...。父ちゃんが死ぬ直前、泣きじゃくる俺にこう言ったんだ。 『カイ...父ちゃんはもう、死んじまうみてぇだ...。今度はお前が、この村を守るんだぞ。このハンマーを使いこなせるようになって、母ちゃんや、村の人たちの笑顔を、絶対に崩すな...!』 ごめん、父ちゃん。ハンマー、壊しちまった。もう戦えない。そっちに行っても、父ちゃんと合わせる顔がねぇわ。 ーーあぁ...。やっぱり、ついてくるんじゃなかった。それに、レオンを守りきれなかった。やっぱりウチは、姉さんみたいに強くなれない。練習、頑張ったはずなんだけどな。てか、なんでウチ、魔法使いとして産まれたんだろう。 〜〜〜 「みんな、起きて‼︎」 「!」「...!」 真那の声が、この広場に響く。 「私は絶対、リリスや王様、そしてみんなの未来や世界を守り抜く。何度転生しても!」 ーーはぁ、情けねぇ。こんな所で諦めるなんて。 その時、カイがむくっと起き上がる。 「...父ちゃん、少しだけ力をくれ。」 カイは、その壊れたハンマーの柄を振り上げる。その時、割れ目から、赤い液体がにじんできた。 「俺はぜってぇ、強くならなきゃいけねえんだよ。その前にまず......!」 ハンマーの柄から、大量のマグマが溢れ出てきた。そしてそれは板のように固まって、巨大な剣へと変化した。〈ラーヴァ・ブレード〉だ‼︎ 「お前をぶっ倒してやる!!!」 レオンも勇気を出して、アリアを起こそうとする。 「アリア! もう少し頑張ろうよ! ねえアリアーー」 「うるさい、分かったから! レオンはあいつの動きをどうにか止めて。いくわよ!」 「アリア...!」 再び立ち上がる4人。魔王も冷静に対応する。 《何度来ても同じだ。蹴散らしてやる!》 魔王の手から、蛇のような電撃が這い出てきて、それを鞭のように振るう。 〈ボルトウィップ〉! 寄せ付けないように、魔王は勢いよくボルトウィップを振り回す。しかし、カイはラーヴァブレードを握り、そのウィップをぶった斬った。 《な...ボルトウィップが切れただと?》 「焼き尽くしてやる‼︎」 ごおごおと、炎が舞う音がする。そこへ、アリアも突進してきた。 「直接攻撃できなくても、動きを封じれば、攻撃もいづれ当たる!」 四本のスターリスピアを出現させ、魔王の四肢を狙う。魔王はそれを避けようとするが、うまく身体が動かない、いや、暑い。 〈フィーバーフロア〉! カイのラーヴァブレードから放たれる熱波で、魔王の動きが鈍くなったのだ。見事、スターリスピアは命中し、魔王の四肢を固定した。 《ぐぅぅっ! 小癪な...!》 魔王がなんとかしてそこから脱出しようとするが、今度は身体に強い衝撃が走った。レオンが、ボルトオーブを投げつけたのだ。 「へっへー! 今度は当たったぞ。やっぱり、僕の攻撃の方が強いもんねー!」 《クソ...動けん!》 魔王が顔をしかめる。チャンスだ。 「今だ、マナ!」 「いっけぇぇぇぇ‼︎」 「頑張れ、マナ!」 真那は震える手で剣を握り、魔王に向かって走る。そして、高く飛び上がり、勢いよく剣を振るったーー‼︎ * 3人は爆風に飛ばされ、周囲に土埃が舞う。カイは立ち上がり、目を凝らした。倒せたのだろうか。 「マナ...!」 やがて霧が晴れ、真那の姿が見える。ところがーーー。 「...え?」 「マ、マナ...?」 「なに、してるの?」 真那は、剣を振るう手が、魔王の首を斬り裂く寸前で止まっていたのだ。魔王は、その光景を見て、震える声で呟く。 《な...何故だ...。何故殺さない...?》 その時、真那は黙って剣を地面に突き刺し、魔王に渾身の平手打ちをした。バシン、と頬を弾く音が響く。 《う...⁉︎》 戸惑う魔王に、真那が叫んだ。 「いい加減にしてよ! もう、こんなの辞めようよ‼︎」 涙ぐむ真那だが、怒りの表情が出ていた。 「あなた言ったよね。このネザルムを広くしていきたいって。大きな国にしたいって! それは別に悪いことじゃないよ。でもさ、そうやって誰かを傷つけないといけないの? 誰かを困らせてまで、国を大きくしたいの⁇ そんなのおかしいよ‼︎」 魔王は、自分の頬をさすりながらも、真那の目を見ている。 「ちゃんとこのネザルムを立派にしたいんだったらさ、自分の力で大きくしていけばいいじゃん! 充分な力持ってるはずだよ! それなのに足りないからって、他人を傷つけてまでエネルギー吸い取るなんて事、しなくてもいいよ‼︎ あのモンスター達だって、こんなの望んでないよ!!!...分かってよ......。」 「マナ...。」 カイが小さく呟く。レオンやアリアも、何故、真那が剣を振るわなかったのかが、ようやく分かった気がした。魔王は、その場に立ち尽くしている。先ほどのような無表情ではなく、どこか悲しげな表情をしていた。その時、入口のほうで、声が聞こえた。 《魔王様ーー‼︎ ここは我々にお任せください! すぐに、奴らの始末をーー》 《待て。》 すると、魔王はモンスターたちにこう言った。 《皆の者、話を聞いてくれ。私は今まで、君たちに酷いことをさせていた。》 《え...。》 モンスターたちがどよめく。 《世界を支配することで、ネザルムを安定させようと考えていた。だが、それでは本当の意味でネザルムを導くことにはならない。...これからは、私たちだけの力で、このネザルムを守るんだ。だがやはり、私だけでは力不足だ。だから...》 魔王が優しく微笑み、モンスターに手を差し伸べる。 《一緒に、歩んではくれないだろうか。》 その言葉に、モンスターは号泣し、何度もうなづいた。 《魔王様...! はい、分かりました! このペルーダ、どこまでもついていきます!》 こうして、魔王は姫と王様を解放し、他のエネルギー源も、全て返却された。 * リリス姫は真那に抱きつき、こう言った。 「マナ〜! 助けてくれて、ありがとう! もう大好き!」 「私も大好きだよ、リリス!」 カイが、感心したような表情で呟いた。 「いやー、まさか魔王を倒さず、説得させるなんてな! さすがマナだな!」 「ちょっと、やめてよー!」 レオンが目を輝かせる。 「本当にかっこよかったよ、マナ!」 アリアも優しく微笑む。 「どうなるかとは思ったけど、本当に良かったわ。ありがと、マナ。」 すると、カイが何かを思い出したかのように言った。 「そういえばマナ、この前、願い石の話をしたよな。あれ、魔王が全部持ってたらしいぞ。」 「えっ⁉︎ そうだったの? それは今どこに...」 「あそこにあるんだけど...使うか?」 真那は一瞬迷った。異世界での冒険は彼女に多くの出会いと成長をもたらした。この世界で得た仲間たちとの絆を考えると、ここで別れるのが辛いと感じる自分もいた。しかし、元の世界に帰りたいという思いもまた、彼女の中にずっとあった。深く考えた末、真那はついに、意を決して言った。 「使う。元の世界に帰る。」 「分かった。じゃあ、願い石、持ってくるな。みんなも呼んでくるよ。」 数分後、村の人々が集まり、真那を囲んだ。真那は、その青く澄んだ空のような色をした願い石を握り、皆に別れを告げた。 「みんな、短い間だったけど、お世話になりました! リリス、カイ、レオン、アリア......」 真那は目に涙を溜めながらも、にっこりと笑ってみせた。 「ーー元気でね。」 「じゃあな、マナ!」 「ありがとう、楽しかったよー!」 「またね、マナ。」 「マナ〜! 貴女も元気でいてね〜!」 そして、真那は願い石に向かって、言った。 「私を、元の世界へ戻してーー!」 〜〜〜〜〜 「真那? 真那! 起きて、朝ごはん食べるよ!」 聞き慣れた声が聞こえ、真那は目を覚ました。そこには、真那の母親がいたのだ。あれは、夢だったのだろうか。そう思いながら、母親に返事をした。 「ん〜...分かった。」 「トースト焦げちゃうから、先行ってるよ? ほら、支度しておいて。」 真那がベッドから身を起こそうとした時、ふと、脚に何かが当たったので、布団の中を覗く。そこにあったのは...。 「願い石...!」 夢じゃない。それを見て、真那はようやく理解したのだ。 日常生活に戻った真那は、異世界での経験を胸に、新しい自分として日々を過ごす。自分が勇気を出せば、どんな困難にも立ち向かえるという自信が湧いていた。そして、時折窓の外を見上げては思う。 「みんな、元気にしてるかな。また会える日が来るといいな。」 その記憶と成長は彼女の中で生き続けるのだった。 Fin. 作:海月 スペシャルサンクス:藤咲ふみ様

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事故ったら異世界に転生しちゃった⁉︎ #RQ FINAL

よく、こんな言葉を耳にする。 「それでは、良い夢を。」 ここで言う『夢』とは眠っている間に見る、ぼんやりとした意識のなかの映像の事をさす。ただ、睡眠の中でも、夢を見る睡眠もあれば、夢を見ない睡眠だってあるんだ。どちらかと言えば、後者が好ましい。夢なんて、所詮は想像に過ぎず、現実に変化は1ミリも出ないんだ。そんなもの、見たってどうしようもないじゃないか。夢を見ずに、良質な睡眠の方が、現実でも役立つし、快楽も得ることができる。夢なんて必要無いんだよ。 そう思いながら布団にもぐり、翌朝、僕は叫びながら目が覚めた。顔は歪み、涙が溢れていた。夢なんて、必要ない...必要ないんだよ......。 作:海月

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事故ったら異世界に転生しちゃった⁉︎ #RQ 第九話

ついに、ネザルム城への潜入に成功した真那たち。中を慎重に歩き回り、拐われたリリス姫と王様を探す。ハンマーを構えながら、カイがぼそっと呟く。 「...誰も居ないな。てっきり俺は、兵士とかがいるのかと思ったんだが。」 それからしばらく歩き回っていると、やがて広いスペースに辿り着いた。するとーー。 「...あー‼︎」 レオンが静かに叫ぶ。真那がこう尋ねる。 「どうしたの?」 「あれじゃない? マナが探してる姫!」 「えっ...あ! 本当だ!」 天井を見上げると、鳥籠のような檻に、目を閉じたリリス姫と、その王様と思われる人物が囚われていた。 「すぐに助けないと...!」 真那がそう言った時だった。 《 待 て 。 》 「...っ!」 低い声が響き、真那たちは驚いて後ろを見る。そこにいたのは、深緑のマントを羽織り、肌は灰色で、黄緑色の瞳の男だった。 《お前らか、この魔界ネザルムにやってきたのは。私の部下から連絡があったのだ。》 「...誰、あなた?」 《我が名はマルヴェリウス。このネザルムの王だ。》 「!」 今、目の前に魔王がいる。そう実感した真那に、怒りがこみ上げてきた。真那は魔王にこう言う。 「あの姫と王様を解放して。あなたの目的は何なの?」 《目的? 教えて欲しいか。》 魔王はニヤリと笑い、マントをひるがえす。 《私はな、世界中の誰よりも強く、世界中の何もかもを支配したいのだ。そうしてこのネザルムも、より広げていく。だがそのためには、まだ力が足りない。だから、世界中の至る所に存在するエネルギー源を掻き集めていたのだ。それが目的、といったところか。》 魔王は、握りしめた拳を見つめ、欲深い表情を浮かべる。その言葉に、カイが叫ぶ。 「は⁉︎ ふざけるなよ。自分勝手にも程があるだろうが。そんな理由で姫と王様を渡すわけにはいかねぇ!」 《...貴様。誰に口ごたえしているんだ?》 魔王が両手を広げると、腕に緑色の電撃が走る。 《そんなにこの人物が惜しいか? ならばーー》 その時、魔王の手から稲妻が飛び出し、地面を削った。 《貴様らが、私の力となれ‼︎》 魔王はその手を振り上げ、電撃が真那たちを襲う! 「危ない!」 バリバリと、地面が削られる音が響く。真那たちはそれをかわすと、戦闘体制になった。レオンが叫ぶ。 「僕の技を真似するなー! 絶対、僕の方が強いんだからな!」 手をかざし、ボルトオーブを生成した。そしてそれを思い切り投げる。黄色い電気がバチバチと弾けながら、魔王に向かって飛んでいく。しかしーー。 《笑わせるな。》 魔王はそのボルトオーブを、それよりも強力な雷で打ち壊してしまった。アリアも、魔王に攻撃を仕掛ける。 「レオン、離れて! いくわよ!」 スターリスピアを出現させ、魔王の胸部を狙ったが、軽々と避けられ、手から電撃を放つ。 「キャアァァ!」 アリアはその電撃を喰らってしまい、その場に倒れた。 「アリア‼︎」 それを見たレオンが、倒れたアリアに駆け寄る。意識はあるが、相当なダメージを喰らってしまったようだ。カイは炎を纏ったハンマーを振り回し、魔王に攻撃する。 〈フレア・プレス〉! 何度も攻撃される魔王は、電気で斥力を発動させ、カイを吹き飛ばした。 「うおぉっ⁉︎」 《貴様は特に癪に障る。消え失せろ!》 魔王は、レオンのボルトオーブの10倍もの大きさの電気球を出現させ、カイめがけて思い切りぶん投げた。 「おいおい、マジかよ...!」 焦るカイだが、ハンマーを使って、それをはね返そうとした。ところがーー。 バキッ‼︎ 電撃に耐えられなくなったハンマーが、音をたてて割れた。 「ーーは?」 電気球の攻撃は防げたものの、カイは、壊れたハンマーの柄を呆然と見つめていた。魔王はそんなカイにお構いなく再び攻撃し、カイはなす術もなく倒れた。 「ウ...ソだろ...? ブラッドクラッシュが...っ。」 その様子を見てしまった真那は、焦り始めた。アリアとカイがダウン。残るは彼女とレオンのみだ。真那も先程まで、魔王との攻防を繰り返し、剣をもつ手が痛んできた。レオンも体力はあるが、アリアがやられたショックで、メンタルが弱っている。 「ど、どうしよう。このままじゃ、みんな...!」 弱々しくレオンが呟く。その時、真那は覚悟を決め、皆に向かって叫んだ。 「みんな、起きて! このままアイツの思うままにしていたら、この世界が壊れちゃう!」 レオンが、にじむ瞳で真那を見る。 「私は、どうしてこの世界に迷い込んじゃったのか分からない。でもこれは、この世界がきっと、私を必要としているんだよ!」 アリアが、苦しそうな表情を浮かべながらも、顔を上げる。 「私は絶対、リリスや王様、そしてみんなの未来や世界を守り抜く。何度転生しても!」 カイが目だけを動かし、叫ぶ真那を見つめる。 「だからお願い! 私に協力して‼︎」 to be continued… 作:海月

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事故ったら異世界に転生しちゃった⁉︎ #RQ 第九話