魔法が解ける、その前に 前日譚 夜真side
とある土曜日。黒咲 夜真(くろさき よま)は、自分の部屋の棚に飾ってある水晶玉を見た。紫色を基調としたそれは、窓からの日光を集めて美しい光を放っている。それは夜真が10歳の時、男手一つで育ててくれた父親がくれた物だった。ふと、夜真は自分の目の前で両手を広げてみた。するとその手のひらから、ぬるぬると黒い何かが出てきた。それはやがて尖った形状になり、うごめく触手へと変化した。これが彼の闇属性の魔法。身体の至るところからこのようにして触手を生やせるのだ。幼少期に離婚した母親は魔法を持たず、父親が闇の魔法を持っている。夜真は父親の遺伝子を継いだのだ。彼が3歳の頃、無意識に出していたその触手を、魔法の事を知らない母親が見つけてしまったのだ。
ーーこんな子、私じゃ育てられない!
そう言い、母親は出ていってしまった。夜真はその事を知らない。
「…暇だな」
そう呟く夜真。人とあまり関わらない彼は、休日はほとんどする事がない。窓の向こうから、誰かがはしゃぐ声が聞こえる。その特徴的な声に、夜真は聞き覚えがあった。
「あの人、休みの日には大体あの鳥と遊んでるんだよなぁ。俺にもペットがいれば楽しいかもしれないんだけど…」
その時、遠くの窓の向こうで何かがひらひらと飛んでいるのが見え、夜真は触手を使って静かに窓を開けた。そして部屋の中に入ってきたのは、なんと、光り輝く蝶のような生き物だった。夜真が手を差し伸べると、蝶はしばらく手の周りを羽ばたき、やがて人差し指にとまって羽を休めた。その美しい輝きを放つ蝶を見つめ、夜真は不思議な気持ちになった。
「この蝶、綺麗だな。なんて名前の蝶なんだろう?」
夜真はスマホを取り出し、光る蝶を脅かさないように写真に撮って画像検索にかけた。だが…。
「…ウスキシロチョウ?」
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カテゴリー: ファンタジー
投稿日時: 2025/7/17 6:51
海月
しばらく投稿少なくなるかもです。たまに短編書いてたりします。
高校二年の海月(くらげ)です!
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※サムネやアイコンのイラストは、ChatGPTやピクルー、フリー画像などを主に使用しています。