藤
7 件の小説感情なんてあるから。
感情なんてなければ、私は幸せだったんだろうか。 もしなかったとしても、私はきっと笑顔を作れただろう。 感情なんて、なんのためにあるんだ。 あったって、邪魔なだけのがらくたなのに。 だから私は、感情のオンオフをコントロールできるようにした。 つらいときは、感情をオフにする。 笑わなければいけないときは、感情をオンにする。 でも変だった。 まるで強い力で、身体中を締め付けられているみたいだ。 心臓を握りつぶされそうな感覚がしていた。 苦しいと思った。 でもそれすらも、いらないと思った。 感情がなければ、傷つくこともきっとない。 感情がなければ、恋愛なんてしたいと思わなくてもいい。 感情がなければ、人を愛したり信じたりすることもない。 それがきっと私にとっての幸せなんだ。 そうであるはずなんだ。 そう信じて生きてきた私の足跡を、私までもが 否定してしまったら、私にはもう何もなくなってしまう。 お願いだから、もう何も感じなくしてほしい。 人間など愛したくない。 人間など信じたくない。 人間などでいたくない。 生きたいと思いたくない。 生きたいなんて思わなければ、 きっと死ねたのに。 きっと楽になれたのに。 きっと、幸せになれたのに。
幸せだと思えたらよかったのに。
四人でいる時も、ひとりで後ろを歩いている。 何人でいようと、いつもひとりぼっち。 会話していても、笑っていても、悲しくても、ひとりぼっち。 話してもらえるだけ幸せだと思えたらよかったのに。 生きていることを幸せだと思えたらよかったのに。 死にたいと思ってしまうのは、きっと悪いことだ。 生きていたって何も価値がないと思ってしまうのは、 きっと間違いだ。 弱みを見せないことが美徳とされるこの国を恨んでしまうのは、 きっと筋違いだ。 私がすべて間違っている。 周りがすべて正しい。 そう思ってしまうこともきっと不正解だ。 肌が黒い。目が小さい。脚も太い。背も小さい。華奢でもない。 頭も悪い。声も汚い。歌も下手。外国語だって話せない。 走るのも遅い。運動もできない。愛想もない。笑顔が気色悪い。 勇気もない。自信もない。優しさもない。希望もない。 私にいったい何があるのだろう。 あるとしたら汚い心と、醜い外見だけだ。 誰か教えてくれと願ったところで、意味はない。 誰にも迷惑をかけずに生きられたなら。 周りを明るくできるような存在になれたなら。 誰にも嫌われないなんてことができたなら。 みんなが私を愛してくれたなら。 完璧になれたなら。 私は生きたいと思えただろうか。 この傷だらけで穴だらけの人生を、幸せだと思えたなら。 私は笑えたのだろうか。
私の心は世界のどこかに
人に嫌われるのが怖いと思うのは悪いことでしょうか。 人にどう思われるかがすべてだと思ってしまうのは 悪いことなのでしょうか。 それだけで世界が回っているわけではないことも知っている。 それでも不安で、今日も私は下を向く。 私の心は何を思っているのでしょうか。 私の心は何を感じて、何を怖がっているのでしょうか。 私の心はどこにあるのでしょうか。 探しても見つからなくて、聞いても誰も答えてくれなくて、 結局また探して。 誰に愛されているのかもわからなくて、自分のことも愛せない。 でも、それを無視して明日は来る。 だから私は、今日も探している。 自分を愛せる方法を。 人を信じる方法を。 この息苦しい世界で、生きていく方法を。
ひとりごと。
これはね、ただの、私のひとりごと。 誰かに聞いてほしくて、でもどこにも居場所がなくて。 そんな私のひとりごと。 長いから、途中まででもいいから聞いてくれるかな。 思ったことを、感じたことを、言語化しただけなんだけどね。 お母さんが病気になったの。 いつも何事にも全力投球で、いつも家族第一、一生懸命で優しい。 そんなお母さんが病気になったの。 長期入院が必要なものではないけれど、 毎日痛みと闘わなければならない、 手術をしなければ治らない病気。 病気になってからのお母さんは、いつも疲れた顔をしていて、 手伝いをしてもしてもどれだけ気遣っても、笑顔はほとんどない。 病気がわかった日、 私にできることは全部やろうと誓ったの。 どれだけ疲れていても、つらい日でも、お母さんのことを一番に 考えて動こうと思ったよ。 そうじゃないとまわらない家族だから。 たくさん我慢したつもりだった。 たくさん考えたつもりだった。 たくさん笑ったつもりだった。 少しでも不安を紛らわせてあげたかった。 休んでいいんだと、少しでいいから思ってほしかった。 それでも、それでも、 ある日お母さんが吐いた言葉はその気持ちを全部砕いていった。 「ママだって毎日いっぱいいっぱいなんだよ!! みんな自分のことで精一杯じゃん!毎日痛みを我慢して仕事して、 家族みんなのケアをして、家事をして、 お義父さんや親父のことも考えて、 それでもまだ何か頑張らなくちゃだめ!?」 そう言った。 あぁ、私のしてきたことは、何も意味がなかったんだなぁって。 「みんな自分のことで精一杯」かぁ。 私のできる家事は手伝って、体調と顔色に気を配って、 気分を害さないように常に気を張って。 それが間違いだったのかなぁ。 それでも自分のことで精一杯に見えたんだなぁ。 私は心が狭いんだなぁ。 こんなことなら、私が病気になればよかったなぁ。 あぁ、死にたいなぁ。 消えちゃいたいなぁ。 生まれてこなければよかったなぁ。 生まれてきてごめんね、お母さん。 でもね。 私は生きるよ。 どれだけ死にたくても怖くても痛くてもつらくても。 だって私が泣いて誰が助けてくれるの? 私が涙なんて流して誰が気づいてくれる? 泣いて何になるの? なーんにもない。誰も助けてはくれない。見つけてはくれない。 私の周りにはたくさんの人がいる。 でも、私の世界には誰もいないの。 だからね、決めたんだ。 私は生きる。 死ねないなら、生きるしかないから。 心の狭い、自己中心的で心の汚い私は、 涙を堪えたままで、救われないままで、息苦しいままで 私は歩いていくの。
君を守りたい。
僕に君を守る力があったらよかった。 肩を震わせて泣く君を、僕には抱きしめることしかできない。 君を傷つけるやつをやっつけて、もう大丈夫だと笑う、 そんなヒーローだったらよかった。 僕にはそんな力、なかった。 君を傷つけるやつに牙をむくことはできても、 そいつが向けてくる刃に立ち向かうことができない。 僕の伸ばした手の後ろで、君が泣いているのに。 僕に強さがないせいで、君を守れない。 こんなに虚しいことはない。 だから僕は。 無力で何の力にもなれない僕は。 君の傷をもらうよ。 君がひとりで背負ってきた傷を、僕がもらうよ。 君が傷ついたときに追った傷も、僕はすべてもらう。 だから、泣かないで。 僕の大好きな、君の笑顔を見せてよ。
推しへの愛ってさ。
推しってさ。 叶わない恋の相手で、 太陽みたいにまぶしくて、 あなたが好きって、それだけで、 生きている理由になれてしまう。 あなたの一番にはなれないとしても。 私という存在を認知してもらえなくても。 それでも、あなたのために、生きていられる。 「大好き」って、きっとそういうもの。 今日も、明日も明後日も、一週間後も一ヶ月後も一年後も。 あなたがこの世界にいてくれるならそれだけで。 私は生きていられるよ。 頑張っていけるよ。 ありがとう、いてくれてありがとう。 推しへの愛ってさ。 もはや恋人への愛だよね。 大好きだよ、今日もこれからも。 ️ 🫧あとがき 最後まで読んでくださってありがとうございます✨️ 推しへの愛を叫んでみました。 お気軽に感想おまちしてます️🫧 みんなの推しも聞かせてね。
雨の日に、ついた嘘。
バイトが終わったとき。 急に雨が降り出してきて、あちゃあ、と眉をひそめた。 よりによって私が帰る時に限って、降ってきてしまった。 あーあ、と見上げた空から降ってくる雨と一緒に君の声がした。 「あー、降ってきたねぇ。大丈夫?傘持ってる?」 私の好きな、ちょっと低くてはっきりとした君の声。 顔が熱くなっていくのがわかった。 何を言われたのか一瞬わからなくなってしまうくらいの雨音と、 それに負けないほど鳴っている私の心臓の音。 はっと我に返ると、君の瞳はまっすぐに私を見ていた。 慌てて持っていた手さげ袋を探る。 折りたたみ傘を掴んだ感触が、確かにあった。 なのに。 「あー……ないです……」 勝手に口走っていた。 言った瞬間、バカ!と自分を殴りたい衝動に襲われた。 何を期待したのか自分でもよくわかっていない。 混乱する頭をどうにか無視して、慌てて口を動かす。 「でも大丈夫です!近いですし走って帰ります!」 「いやいや、風邪ひいちゃうよ。ちょっと待ってね、 車の中に傘ないか見てくる」 優しい。 そういうとこだよ、ほんとにもう。 胸が締め付けられる感触と、気を遣わせてしまった罪悪感で 今にも逃げ出したいくらいだった。 「はいこれ!使って」 君が差し出した傘は、私が使っているものよりも少し大きい、 紺色の傘。 まさか貸してもらえるとは微塵も思っていなかった。 と言ったら嘘になる。 傘を理由にして、君と話す機会がほしかったのかもしれない。 「い、いいんですか?すみません、お借りします」 震えそうな手で傘を受け取って、帰路につく。 その傘は、開いた瞬間、ぶわっと君の匂いが私を覆った。 私の好きな、柔軟剤みたいにふわふわした君の匂い。 きも!と頭をブンブンと振って、私何やってんだろとか思いながら 歩き出した。 土砂降りのはずの雨音は、頭に残った君の声でほとんど 耳に入ってこない。 真っ黒な空と、視界の隅っこで揺れる君の傘。 「……守られてるみたい」 ️ 🫧あとがき この物語は、雨の日にびしょ濡れで帰った時に頭に 浮かんだものです。 主人公の女の子の感情に共感しながら書きました。 ぜひぜひ、感想などお待ちしております✨️