猫桜

6 件の小説
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猫桜

初めまして よろしくお願いします

他人の思いやりって? なに?

 私は、今まで真面目に働いてきた。  いまは、休養中。  会社を辞めて、やっと、心が安らぐ、そう思った。  でも、自分のことを知らない人は平気で、おかしなことを言う。  もう、前の会社は辞めたのに、あなたのために、言うのと。 「誰々さんは、頑張っているのよ、社会のために」  そう言われると、自分の心が締め付けられる。  延々と、自分の頭の中で、他人の頑張りと自分の頑張りって、関係ないでしょって。  まるで、自分が怠けているみたいじゃんって、思われているのかなあと?  せっかく、安全地帯に避難できた。そう思った。  もっと、ゆっくり休みたい、たくさん眠りたい。  他人の人生と自分の人生は、別ものなんだから、大きなお世話だと思う。  「他人の頑張りよりも、自分が一番幸せになりたいのに」って、思い切り言い返したい。  でも、それをうまく、言い返せない。  まるで、洗脳されてしまったような感じ。  私は、その洗脳されたような心をどうにかしたい。  自分の人生を後悔しないために、生きていく。  これからは、もう真面目にとか、誰かさんのために、そう考えることをやめたい。  この呪いから、解放されたい。

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構造改革

 私は、私立の高校を経営している理事長を務めている。  我が校では、もうじき卒業を控えた生徒たちがいるのだが、正直なところ資金繰りに苦労している。  それというのも、小子高齢化社会のおかげで、入学する生徒数が激減したからだ。  やはり、このような時は、教育者である校長先生に相談するのが、一番良い方法だと考える。  そこで、私は校長先生を理事長室に呼び出し、相談を始めた。 「あの、校長先生。実は、我が校は資金繰りが悪化してしまい困っているのですよ」 「えっ、もうじき卒業式があるというのに」 「校長先生なら、こういうとき、どうすれば良いか、おわかりいただけますよね」 「あの、それは、私の老後に関わることだと理解しろということですか?」 「いえ、なにも、そこまでは」 「わかりました。なんとかしてみます」  翌日、我が校で管理している、全ての個人情報などのデータが消去されていた。  私の心の中で、災難は、続くものだと思ったとき、良い案が浮かんだ。 (そうだ、都合の悪いことは無かったことにしよう)  校内は、パニックになり、卒業を控えた三年生たちは大騒ぎしていた。  理事長の私は、この事態の収束をはかるために説明会を開いた。   「えー、これから卒業を予定されている三年生は、そのまま四年生に進学できるように、仕組みを変えました。よって、大学に進学を予定されているかたは、奨学金の心配をする必要が無くなりました」  私がこの話をしていたところ、校内から生徒たちが消えていた。 「あの、校長先生。生徒のみなさんは、どこへ行ってしまったのですか?」 「はあ、みんな怒って帰っちゃいましたよ」 「ところで、データが消えたことについてなんですが?」 「はい、私がやりました」

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プール嫌い

 私は高校生になってもプールが苦手でした。  理由はプールの水がとても冷たいからです。  なので小学生から一度も水泳の授業に出席したことがありません。  泳いだ記憶があるとすれば家族で旅行に出かけた温泉だけです。  泳いだといっても少しバシャバシャしただけですけどね。  温泉は泳いで良い場所ではないのですが、周囲の人たちは私が小さい子供だったので気にしませんでした。  そう、私は温泉で泳いだときの暖かくて気持ち良い感じが忘れられないのです。  そのせいかプールに指先を入れたとき、あまりの冷たさにびっくりしました。  他の生徒からは、私が泳げないからプールの授業を見学しているんじゃないかと思われていました。    それでも、私は体育の授業でプールに入りたくないので、担任の先生に体に重い持病があると嘘をつき、みんなを騙していたのです。  このような嘘をついて水泳の授業に出ず、なんとか無事にやり過ごしてきました。  この調子で三年間体育の授業を見学で済ませたいと企んでいたのですが、上手くいきませんでした。  入学してから一ヶ月が経過した頃、友人から温水プールに誘われて、どうしても断ることが出来なかったのです。  私は温泉プールの水が冷たくないか確かめるために指先を入れて確認しました。  ちょっとだけ温い感じがしたので、これなら大丈夫だと思い生まれて初めてプールに入りました。  最初はちょっと冷たい感じがしたけど、すぐ慣れてバシャバシャと水しぶきをあげて泳ぎ始めました。    プールから上がってアイスが食べたいと友人に話かけると、「息継ぎしないで五十メートル泳げたらアイスを奢ってあげる」そう言われて、私は本気でやってやろうと思い挑戦しました。  せーので、思い切り息を吸い込み無我夢中で泳ぎ始めました。  夢中になって泳いでいるとなぜか? プールの周りが騒がしくなっていることに気づきました。    私がもうすぐゴールするところで、隣のレーンの人にぶつかってしまいチャレンジは失敗に終わりました。  ところが、ぶつかった相手はオリンピックに出場する予定の人だったので、びっくりしてぺこぺこと頭を下げて謝罪しました。    しかし、その様子を見ていた選手のコーチが、私の方を見てびっくりしているのです。  私が友人からアイスを奢ってもらう機会を逃して落ち込んでいたところ、なぜかオリンピック選手のコーチが帰り際に一緒に焼き肉にいきませんかと話しかけてきました。  私と友人はなんだか得した気分になり、焼き肉屋さんで美味しいお肉をたくさん食べました。  何日か経過した頃、私のスマホに焼き肉をご馳走してくれたコーチから連絡がきました。  なんと、私に将来オリンピックに出られるような素質があると言うのです。  そして、学校が終わるとプールに行き、泳ぐことが日課になりました。  あんなにプールが嫌いだったのに、いつのまにかプールに入ることが楽しくて幸せな気持ちになってきました。  しばらくして、周囲の生徒たちからの視線が気になるようになったので、みんな今のうちに私のサインが欲しいのかなあと期待していたのですが、私の勘違いでした。  周りからの突き刺さるような視線は、私が持病があると平然と嘘をついていることに対して向けられたものでした。  後日、私は将来オリンピック選手を目指すと言い残して、転校しました。

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二次元コード

 私はハンバーガーショップでアルバイトをしている。  最近はどこの飲食店もタッチパネルを使っているのだけれど、まだ自分が働くこの店に設置する予定はないとバイト先の店長は笑いながらいつも答える。  レジで接客をしている私はもっと効率よく仕事がしたい。  たまに隣り町にある同じチェーン店のハンバーガーショップに行くのだが、こちらでは早い段階でタッチパネルが導入され、キャッシュレス決済にも対応していた。  私は店に入りタッチパネルの前に立ちメニューを選び人差し指でパネルに触れる。  選ぶときにセットか? 単品か? どちらを押そうか指先が左右に動いて迷ってしまう。  そして、セットのメニューを選び操作を進めていくと今度はおすすめの品であるサイドメニューが現れる。  なんとなくで、操作を進めていくとセットで頼んだものに色々追加でサイドメニューまで注文していることがわかる。  注文を確定するをタッチして合計金額に驚く。 (このタッチパネルは慣れないと余計な品物もいっしょに頼んでしまうのではと)  電子マネーで会計を済ませてテーブルでハンバーガーの到着を待つ。 「ご注文のお品物になります。よろしければこちらのアンケートにご協力をお願いします。どうもありがとうございました」  私の目の前にハンバーガーとポテトのセットが届いた。一緒に名刺サイズの二次元コードが付いたクーポン券がトレイに乗っていた。  そこには私たちの仕事について感想を下さいと書かれており、もれなく二百ポイントプレゼントがもらえるとのことだった。さらに仕事をするときの励みになりますという文字が際立っていた。 (ポイントがもらえるのなら仕方がないか?)  私はこのお店がもっと良くなればいいなと思いアンケートに答えた。 (お店の雰囲気はとても良いです。ただ注文をするときにタッチパネルがしゃべってくれると、面白いのではないのかと)  私は任意の部分と必須の項目に自分のバイト先で足りないものがあったのでスマホからいろいろな要望を書いて送信してしまった。  美味しくハンバーガーを食べて家に帰る。  翌日バイトに行くと透明な箱がレジの横に置いてある。  ちょうど人間が入れる大きさになっていて、観察するように見ている私に店長が声をかけてきた。 「あの、急で申し訳ないのだけれど、今日からこの透明ボックスでレジをお願いします」 「エッ、どうして私なんですか?」 「いやねぇ、昨日本部から連絡があってね。タッチパネルの代わりに、この透明ボックスを使ってくれって送られてきたんだよ」 「あのですね、どうして私がやらなければいけないのかを聞いているのですが?」 「ああ、それはねえ! 君が本部からのアンケート調査に熱心に答えたからなんだってさ」 「エッなんでばれているんですか? 怖いんですけど」 「会社は僕たち社員の個人情報をしっかり保護しているんだよ」 「嘘でしょー」 「嘘なんかついてないよ! 君のネームプレートにはニックネームが使われているじゃないか」  私はこの日でアルバイトを辞めた。

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メモリ

「社長、大変です」 「なんだ? その封筒は」  私は部下の手から大きな封筒を受け取ると天井のライトに向けて左右に動かしてみた。 (何か入っているのか? カサカサとわずかだが擦れる音がする)  我が社はメモリ開発に出遅れた。今世界中で極めて小さなメモリーカードが普及している。  それだけではない。ウチは工場自体が古いのだ。  最新の設備などなく、まだ昔ながらのフロッピーディスクを製造している。  先ほど開けた封筒からマイクロSDカードが出てきた。かなり値段が高いものだろう。  部下がパソコンのカードリーダーにSDカードを挿すとおかしなファイルが転送された。  開いたものは文書ファイルで、この工場をやめてほしいとだけ書かれていた。 「社長、なんですか? これは」 「うーむ、ただのイタズラだろう」 「誰かから恨まれてませんか?」 「そんなわけあるか!」  このおかしな話が社内に広まると大きな騒ぎになった。  どういう理由でメモリーカードを送ってきたのかを社内で共有して話し合いをした。  まるで我が社が古いとバカにされている気分だと社員全員が思ったらしく、これからのことについて会議をすることになった。  失われた三十年とは良く言ったものだ。我が社ではまだフロッピーディスクの製造ラインが稼働しているのだ。  やけくそになった私は生産ラインを止めることにした。 「社長、これからどうするのですか?」 「うん、もうフロッピーはやめよう」 「そんな、これから何を作るのですか?」 「いやねえ、もうこうなったらフロッピーディスクのサイズのメモリーカードを作ろうと思ってさあ」  こうして我が社は大きくて持ち運びに不便なものを開発して製造を始めた。  大きさが小型のメモリーカードに比べると記憶容量も他社のものと比較にならないものになっていた。 「社長、この前のイタズラですが? どうしますか」 「ああ、その件か? もう解決したよ」  気がつくと我が社が業界のトップに君臨していた。

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隙間バイト

 サラリーマンをしていて思うことがある。  それは物価高になったことだ。  そこで、今流行りの隙間バイトが気になりスマホに入れたアプリに神経が向く。  仕事中に自分の将来が気になり思考が止まる。  ぼーっとしているとあっという間にお昼になった。  昼食をとるためにオフィスから外に出る。 (今日はラーメンを食べに行くか)  私は同僚と一緒に食事をしない。いつもふらふらと歩きながら街を見渡すと、その日の気分で食べたいものが変わるからだ。    少し黒ずんだ赤い色の暖簾がかかったラーメン屋さんの前に来た。古くから続いているように見える。  いらっしゃいませと威勢の良い声が心地よい。だげど店内はガラガラで貸し切り状態だ。  ゆっくり昼休みを過ごすことができると思い、ラーメン大盛りとチャーハンを注文した。 (チャーハンはちょっと頼まないほうがよかったかな)  店内が寂しかったから頼んだ。自分の心に言い訳をした。  待ち時間をスマホをみて潰す。自然と隙間バイトアプリに指が伸び画面をスクロールする。あっという間に時間が経過した。 「はーい、ラーメン大盛りとチャーハンになります」 「どうもありがとう」  自分のテーブルに注文した料理が運ばれてきた。スープから良い香りがして湯気が顔にかかると食欲が一段と増した。 (どうやらチャーハンを頼んで正解だったようだ)  夢中になって麺をすすりチャーハンも勢いよく口へ運ぶ。あっという間に完食してしまった。  ベルトの締め付けがキツくなっていたので、今日はいつもよりたくさん食べてしまったことがわかる。 (お腹のでっぱりが気になるなあ)  あとは会計を済ませるだけだ。最近キャッシュレスが便利なのでよく使うようになった。  テーブルから伝票を手に取りレジに向かう。 「すみませーん、お会計お願いします」 「はーい、少々お待ちください」  元気で大きな声が返ってきた。  支払いをするためにスマホを片手に持ち準備していると何だか嫌な予感がしてきた。 「あの、お客さま。ウチのレジはキャッシュレスに対応しておりません。どうか現金でお支払いをお願いします」 「あっ! それでは現金でお願いします」  伝票に千五百円と書いてある。自分の財布の中をのぞいた瞬間背筋に寒気がした。  五百円足りない。いい歳をした人間が無銭飲食をするのか? これはマズイ事態だ。  こうなったら仕方がないとダメ元でお店の人に自分の心のうちにあるものを提案してみた。 「あのー、隙間時間にバイトの募集とかしてませんか?」 「お客さま、店内をよく見渡していただきますとお分かりになると思います」 「あっ、そうですねー」  この一言がかなり失礼だったことは言うまでもなかった。  私のサラリーマン人生が崩れていく音が聞こえてきた。  

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