美日向彩乃

28 件の小説
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美日向彩乃

気の向くままに詩や小説を載せています。アニメ、漫画、音楽や絵が好きです。投稿頻度めちゃくちゃです。よろしくお願いします。

両親

私は“名家のご令嬢”として生まれました。 幼い頃から何不自由なくチヤホヤされながら暮らしていました。 生け花やお裁縫、お料理の練習。 私は不満を感じていませんでした。 上手に出来れば母に褒められ、可愛く結ってもらった頭を 父にくしゃくしゃに撫でて貰うことが私の喜びでしたから。 ある日の事です。 私は朝早く神妙な面持ちの使用人に起こされました。 私はまだ七つ程でしたから 何故こんな早くに起こされるのかと 少しむかつきながら身支度を済ませました。 いつものように食堂に向かおうとすると 使用人が私の肩に触れ、方向転換させられました。 連れて行かれたのは母の部屋でした。 中に入ると父と母がいました。 父が母の寝台の側に立ち、母は寝台に横たわっていました。 この構図は見慣れきっていましたので いつもと違う所を見つけるのに少し、時間がかかりました。 良く見てみると父の表情は穏やかではありませんし、 母はピクリとも動かないのです。 まだ幼い私にもわかりました。 母は亡くなったのです。 突然の事に驚きましたし、悲しいと思ったのですが、 思ったほど悲しくありませんでした。 母は体が弱かったのです。 床に伏せる事も多く何となくもう長くは無いことを 幼いながらにわかっていたのでしょう。 覚悟が出来ていたのかもしれません。 母の葬儀は淡々と行われました。 親戚の人達がヒソヒソ言うのが聞こえます。 −やっぱり呪いかね −元々体は弱かったしねぇ −あの子少しも涙が出ていないよ。薄情だね。 −不気味だ。 私のことを言っているのでしょうか。 退屈になった幼い私は真っ黒なお洋服の袖をまくって 自分の腕を見つめました。 白く、細く、痣だらけ。 母が亡くなってから10年が経った今でも あの日のことはハッキリと覚えています。 もし私の日記を読んでくださった方は思うでしょうね。 どこか他人事じゃないかって。 そう思う理由は簡単ですよ。 私が母と父の事を親として見ていないからです。 あら、“お父様”が私を呼んでいる声がします。 では、また。 ごきげんよう。

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死に損ないと群青色

ゾンビ。 元は人間だったモノ。 彼らは生を生きていない。 死を生きている。 地上がゾンビに占領されてから10年が経つ。 10年前私が5歳だった時、アイツらは突然現れた。 どこかの化学実験が失敗したとか 謎のウィルスだとか、突然変異だとか。 普通よりもそういう知識がある人達が10年の間に 色々発見した気になり、問題を解決しようとしていたが 全然解決出来ていない。 分かるのは身体能力が高いこと、人間や動物を喰らうこと、 そして“元”人間だということ。 10歳の時に両親はゾンビに襲われ、仲の良かった友達も次々喰われた。 残ったのは母の絵描き道具と父のナイフだけ。 そんな私もなんと今ゾンビに追いかけられている。 続くかも………。続け…っ

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食虫植物(百合っぽいです)

君は私の人生のごく一部に過ぎない。 そう思ってたよ。 でもさ、人は気になり始めると止まらない生き物だからさぁ。 だから…だから君に話しかけたんだ。 初めて会った日、きれいな子だなって思った。 長いまつ毛、大きな目、バラの花びらのような唇、サラサラな黒いセミロングヘア。 それは雪の中に咲く一輪の花の様で…周りとは違う、 少し近づき難い雰囲気を醸し出していた。 君を雪の中に咲く一輪の花とするならば、私は雪どけを待つ蜜蜂。 「…おはよ」 「…おはよう…」 …私は勘違いしていたみたい。 私は君を一輪の小さな花と思っていたけど違った。 君は食虫植物だよ。 甘い蜜で馬鹿な虫を誘う、食虫植物。 その馬鹿な虫はきっと私。 でも私は馬鹿なりにも知っている。 私が求めているのは君でも、君が求めているのは私じゃない。 頬を染めた君の目に映っているのは私でも、他の子でもなく、 あの人。 嫌だなぁ。 「私、−−君に告白しようと思うの……!」 あぁ、憎らしい。 心良く応援できない私も、何もせずに君から好意を寄せてもらえるあの人も、私に気づいてくれない君も…。 「応援、してるね!」あぁやっぱり馬鹿だ。私。 さよなら、さよなら…。 可愛い可愛い、ドロセラ…。

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終点

長いお出かけの帰り道。 ほんのり色褪せた窓からオレンジ色の光が注がれている。 耳に入ってくるのは走行音、エアコンの音、そしてあの曲。 不思議。 街は青いのに空は暖かく頬を染めている。 こんな時間がずっと続けばいいと思う。 涼しいのに暖かくて寝たくないのに眠たくて。 口の中はさっき飲んだミルクティー味で。 空はどこまでもどこまでも続いているのに私にはちょこっとしか見えなくて。 あぁ、蝉が鳴いている。 限られた時間の中で蝉は何を思い、何のために叫ぶのか。 私たちはいつ叫ぶのか。 あの空も頬をお日様の色に染めて叫んでいるのかもしれない。 ぼーっとしているといつもは考えないことまで思いつく。 いつの間にかさっきまで聴いていた曲は止まり、耳に入ってくる音もさっきとは変わってざわざわしている。 「終点です。ご乗車ありがとうございました。」 また今日が終わる。

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家出ギターとクズドラム

薄暗い場所で目が覚めた。 私はどこかのベッドに寝かされているらしい。 シーツのような物が肌に触れている。 ゆっくりと起き上がって周りの様子を確認してみた。 窓には青いカーテンが引かれている。 シングルベッド、ミニテーブル、散らばった楽譜らしき紙。 そして、たくさんの楽器たち。 小さなアンプ、ホコリをかぶっているエレキギター、 キーボードやトランペットもある。 中でも1番目を引くのが年季の入ったドラムセット。 他の楽器はさほど弾いたあとは無いのに このドラムだけがたくさん使われている。 この部屋の住人はドラマーなのだろうか。 楽器や楽譜を避けながら窓まで行き、 カーテンを開けてみた。 夕方…いや、夜が明けてすぐのようだ。 朝日を浴びて深呼吸をする。 すると、少し淀んだ空気が肺に入ってきた。 全く知らない場所にいるのに私はひどく冷静で頭も心も空っぽだ。 もう一度部屋を見渡してみた。 私が持ってきたリュックとアコースティックギターが 足元に転がっている。 「……楽器の墓場」 ぽつりと呟いた。 この楽器だらけで散らかった部屋を見ていたら なんとなく感じがしたから。 ぼーっと部屋を見たり、荷物を確認していたら、 カチャッと解錠音が聞こえてきた。 どうやらこの部屋の住人が帰ってきたようだ。 (変な誘拐犯だったらどうしよう) そんなことを空っぽな頭で考えた。 扉が開く…。 続く…かもしれない。

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家出ギターとクズドラム

今更自己紹介します

名前:美日向彩乃 年齢:え、逆に何歳だと思います? 趣味:絵を描くこと、楽器弾いたりすること、 小説や詩を書くこと、漫画アニメ、美味しいものを食べること よく書くジャンル:恋愛(?)、コメディーみたいなやつ、 自分的にはエモい詩 苦手なジャンル:ミステリー、長編 好きなアニメ:犬夜叉、半妖の夜叉姫、鬼滅の刃、文豪ストレイドッグス、転生したらスライムだった件…など 好きな食べ物:いちご、胡麻豆腐、天ぷら、甘いもの、揚げ物、蕎麦…など 嫌いな食べ物:納豆、キュウリ、マヨネーズ、生魚 好きな小説:「かがみの孤城」、「あの花が咲く丘で君とまた出会えたら」、「ハリー・ポッター」シリーズ、「世界の終わりと、さよならのうた」、「文豪ストレイドッグス」 好きな文豪:中原中也(文ストで好きなキャラは…泉鏡花とか中島敦とか選べないです。みんな尊くてほとんど箱推しです) ざっとこんな感じですかね。 あと、いつか本を出したいな〜と思ってます。 ゴリゴリの文系です。 魔法少女とか好きです。·̩͙꒰ঌ( 〃 ó꙳ò ).゚・*. 質問とかあれば気軽にどうぞ! できる限り答えます。 これからもよろしくお願いします!

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今更自己紹介します

リレー小説企画

注意! この小説は全然知識がない人間が書いたものです! そしてめちゃ短いです! それでもいい方のみお読みください!! あ『あ〜やばかった!!』 どうしていきなりいれいすのライブに来ちゃったんだろう…。 (あの白い光が何か関係あるのかな。) 『ないこさん、控室って言ってたよね』 舞台の方から音楽と歓声が聞こえてくる。 武道館か〜。すごいな。 (ん?武道館?夢だって言ってた気がするけど武道館ライブなんて告知あったっけ…) あれば気が付かないはずない。 (あとで聞いてみようかな) あ、ここか。控室。 (うお、結構広い。) 椅子に座ってどうやってここに来てしまったのか考えて、時間をつぶす。 (そういえば今日って何日だっけ) 壁にかけてあるカレンダーを見てみる。 2025年6月29日 日曜日 あ『日曜日?今日学校あったはず…。ん?2025年?!』 な「お待たせ。いきなりだけど、何でここに来たのか聞かせ…」 あ『ないこさん!!』 な「うおっ、え、なに」 あ『今!2000何年ですか?!』 な「え…2025年だけど…」 あ『ぁ…』 (嘘だぁ……) バタンっ。 全「え!ちょ大丈夫!?」 そこで私の意識は途切れた…。 こんにちは〜。 美日向彩乃です。 今回は叶夢衣緒さんのリレー小説企画に参加させて頂きました! 難しかった……。 皆さんぜひ参加してください! 次の方よろしくお願いします!!🙇‍♀️

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リレー小説企画

人外たちの“特別教室”2

「起立、礼、着席」 4人の椅子を引く音が響く。 「えー今日は校外学習のことについてやろうと思う」 特別教室の担任、唐鬼兵助が覇気のない声で言った。 また奥さんに家出されてしまったらしい。 生徒に(早よ離婚しろ)と思われていることを唐鬼は知らない。 奥さんは数えられないほど家出しているのに 未だに夫婦仲が冷めていないことには皆驚いていた。 「センセ、今日元気ないじゃん。また 奥さんに家出されたんでしょ〜。いい加減懲りろし〜」 口裂け女の口裂萌の発言に他の3人は (空気を読めよ!/読みなさいよ!/読んでください!) と心の中で叫んだ。 「いやーあれだぞ。口裂。お前あれだな。 空気読むの無理子ちゃんだろ」 「何それダサ」 「俺もう“あっち”帰るわ」 「やめてくださいよ先生! 職務放棄しないで!?」雪女の茶野湖雪が叫んだ。 「そうですよ。先生。 この口が馬鹿でかいクソギャルなんか無視すればいいんですよ」 「ひ、人の言うことなんてそんなに気にすることないですよ」 獣人の鷹野優とトイレの花子さんの御手洗花子も 湖雪に続き先生を励ます。 「誰がクソギャルだ!肉を喰うことしか脳にないチキンが!!」 「んだと。ゴラァ!」 「あ、ぁ、2人とも喧嘩はやめてくださいよ…!」 花子が仲裁に入ろうとするも、萌と優は聞く耳を持たない。 人外。人間の言う妖怪、幽霊たち。 その面々は揃いも揃ってキャラが濃いので言い争いが 殴り合い引っ掻き合いの喧嘩になることは日常茶飯事である。 「おい!2人とも喧嘩するしか脳がないのか? 1限目の授業あと15分しかないんだけど…ぐえっっ!」 「「うるせーよ!!」」 萌と優が同時に唐鬼先生を殴ってノックアウトした。 それでも2人の喧嘩は収まらない。 「きゃぁぁ!先生!先生ー!!しっかりなさってくださいー!」 「…っもう!うるっっさいのよ!アンタたち!! 少しは手加減だとかオブラートに包むってことを知らないの!? これだから私たちは人間たちに 古いものだとかそんなふうに言われるのよ!?ったく、 古くたっていいだろがっこんちくしょうがァ!!! なんかムカついてきた!」 「ぁ、ぁ、ぁぁ。」 (私どうすれば…?) 普段は真面目委員長キャラの湖雪まで怒りだし、 教室の気温はマイナス零度まで下がってしまった。 カオス。 そんなこんなで始まった人外たちの“特別教室” これから困難が待ち受けていたり、いなかったり。 展開は神のみぞ知る。 「うるっせぇ!!街中で男でも喰ってろや!」 「あぁん?!小鳥は山へ帰ってピーチクパーチクしてろやゴラァ!!」

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人外たちの“特別教室”2

死ぬまでに見たかったひとつのこと

目の前のドアが開く。皆が私を見る。 隣には緊張でガチガチのお父さん。 ヴェールのせいか涙のせいか、視界がぼやける。 音楽が流れゆっくりと前に進んでいく。 (だいぶ時間がかかったな) 花楓のお葬式には何が何だかよく分からないまま参列した。 ニュースを見た時と変わらず頭の中でキーンと耳鳴りがしていた。 部屋着から制服に着替える時、制服がやけに冷たかった。 あまりに急な出来事で何も理解できず、席についた時は涙は流れなかった。 焼香のやり方なんて知らない。 棺桶の中の花楓は青白い死化粧で白い死装束を着せられて、 微笑みとも無表情とも言える表情を浮かべている。 そんな真友を見ていたらやっと泣くことが出来た。 何が起きたか理解出来てしまった。 「っ…うぅっうわぁぁぁぁぁんっ!ぁ、っ」 お葬式が終わったあと花楓の両親が2冊のノートを渡してきた。 「…これは……」 1冊は日記のようなもの。もう1冊は良く見覚えがあるノートだった。 「っ…あの子は日記に遺言を書いていたみたい…。遺言の中に日記とそのノートは美月ちゃんに渡して欲しいって…っ」 「!…私に…?」 「…ノートは中身を見ずに渡してって…っ」 私は少し躊躇いながらも日記を開いた。 途中まではごく普通の今日テストがあったとか、 遊びに行ったとかそんなことが書かれていた。 「遺書」とボールペンで書いてあるところからはその名の通り遺言が書いてあった。 最初は両親への感謝の言葉。 親戚やクラスメイトへのメッセージ。 持ち物はこうして欲しいなどが書いてあった。 その中にこの日記と緑色のリングノートは美月に渡して欲しいという文を見つけて心臓がキュッとなった。 最後に「美月へ」と私へのメッセージが書かれていた。 「美月へ 美月がこれを読んでいるということは、 私は死んじゃったんだね。ごめんね。 いざこういうのを書こうと思っても 何書けばいいかよく分からないな。 “死ぬまでにやりたい100のこと”は達成出来たのかな。 出来てないよね。きっと。 出来ていないことは、美月に託す! 全部やるも、やらないも美月の自由だよ! 私が死んだのは17歳かな。楽しかったな。 美月と出会って、14年だ! 知ってた?もう14年だよ? 早かったね〜。あっという間。 昔は私の方が背高かったのに、 いつの間にか抜かされちゃった。 まだ伸びるんだろうね。 私が居なくてもトマトちゃんと食べるんだよ? 笑うのやめちゃダメだからね。 遺書とかってもっと長く書くものかも しれないけど書くことそんなに無いな。 美月には結構色々話したから。 それに美月なら書かなくても色々分かってくれそう。 美月のことお母さんお父さんの次に よく分かってるのは私だからね! 覚えてる?小学2年生になるまで お互いちゃん付けで呼んでたんだよ? わがままな私と仲良くしてくれてありがとう。 美月ちゃん、最期のわがまま聞いてくれる? 自分の人生を幸せに生きてね。 あんまり早くこっちに来ちゃダメだよ。 ヨボヨボのおばあちゃんになってから来て、 お土産話を聞かせてください。 今までありがとう。花楓」 泣きながら書いたのか所々ボールペンの文字が滲んでいる。 「っ…花楓らしい、よ…」 私は震えながら日記を閉じ、ノートの方を開いた。 学校の休み時間に書いた落書き、ノートを忘れた時に面倒くさくて貼り付けた授業プリント。 そして“死ぬまでにやりたい100のこと” これを書いたのはたったの数ヶ月前。 もう既に懐かしい。 頑なに見せてくれなかった最後のページ。 それを見た時、私はその場に泣き崩れた。 「っ…何死んでんのっ…。ふふっ…うっ無理じゃん………」 「誓います」 一昨日は花楓の4周忌だった。 外の桜は満開ではらはらと花びらが舞っている。 花楓はもういない。 でも式には列席している。 少しかしこまった笑顔で。写真の中から。 (わがままちゃんと聞いたんだからそっち逝ったら歓迎してよ?) 「ふふっ。おめでとう。美月ちゃん」 100、美月(真友)の結婚式を見る!

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死ぬまでにやりたい100のこと

※人の死に関するニュースのような描写があります。 それでもいい方のみお読みください。 私の親友は余命1年だ。 これを聞いた時、足元がガラガラと崩れ落ちたような気がした。 でも、彼女はヘラヘラしながら、 「ね〜やばくない?私の人生いきなり 少女漫画風になっちゃったよ〜。 “死ぬまでにやりたい100のこと” でもやってみようかな〜」 と言った。 「い、良いんじゃない…?」 自分の声がいつもより高い。 「…美月、協力お願いね!」 「……うん!」 私、なんて言えば良いんだろう。 慰めればいいの? わんわん大泣きすればいいの? 多分、花楓はどっちも望んでいない。 花楓なら一緒に笑って欲しいはず。 それから、花楓と私は花楓のやりたいことを ノートに書き出していった。 「100個めはどうするの?」 「う〜ん、内緒!」 「え〜?」 放課後の教室の窓からオレンジの光が降りかかる。 花楓はその段々と消えていく光を名残惜しそうに眺めていた。 「…花楓、全部やろうね。100まで」 「うん。ちゃんと手伝ってよ?美月」 「もちろん」 私と花楓は1つ1つやりたいことをやっていき、沢山写真を撮った。 バンジージャンプ、焼肉食べ放題、温泉旅行、朝までカラオケ、 苦手教科のテスト2人とも100点−−「もう2度とやりたくない」と花楓は言った−−など…。 そしてついに残り4つになった。 最後の4つが書いてあるページを花楓は頑なに 「100個目が分かっちゃうでしょ!」と見せてくれなかった。 「ついに残り4つだねぇ〜」 「…あっという間だったね」 「ね〜、私が死ぬまであと4ヶ月もあるよ〜」 「………」 「美月?」 「…そんなこと言わないでよ。嫌だよ。私…っ」 ずっと堪えていた涙が流れそうになる。 「…美月…っ」 泣きそうになっている私を花楓がぎゅっと抱きしめる。 「…美月、ごめんっ、ごめんね…!私馬鹿だから、美月が笑ってくれるから気付かなくて…!」 「そん、な…」 そんなこと言わないで…。声が上手く出ない。 「大丈夫、大丈夫だよ。私まだここにいるよ。美月」 ね?と優しく私の頭を撫でる。 「っ…うん…」 花楓は私が落ち着くまで抱きしめてくれた。 (私がこんなじゃいけないのに…) 「…美月、落ち着いた?」 「うん、ごめんね…」 (ごめん、ごめん、ごめんなさい…) 「ううん。私が悪かったの。 …お願い、まだ私の真友でいてくれる…?」 「!…。決まってるでしょ」 「美月、」 「私がそばにいないとずっこけて自分で寿命縮めちゃいそうだもん」 「なっ!ひどいよぉ〜」 「えへへっ」 (ごめんね、花楓。 私そばに居ることくらいしかできないや) 97個目はタクシーで「海まで行ってください」と言う事だった。 98個目は煙草を吸うこと。 99個目は着物を着て浅草観光すること。 ついにあとひとつ。 「あっという間だったね〜」 「そうだね」 「“死ぬまでにやりたい100のこと”リストはあと1つだけどまだまだ美月とやりたいこといっぱいあるな〜」 「…全部やればいいよ」 「…そうだね!」 次は〜○○駅〜。○○駅〜。 「あ、もう着いちゃう。 美月と喋ってるとあっという間だな〜。楽しいから」 「私も楽しいよ」 (…でも、何だろう。この胸騒ぎは) 「駅出てすぐ別れちゃうってすごく悲しくない?」 「……」 「美月?」 「あ、ごめん」 「も〜何ぼーっとしてんのよ!話聞いてなかった罰! 明日はスイーツバイキング行くよ」 「また行くの?太るよ?」 「甘いものはゼロカロリーです〜」 「はいはい。また明日ね」 「うん、バイバイ!」 私は花楓に手を振ってから自分の家の方向に歩き出した。 (嫌な予感…。気のせい、だよね) 私はモヤモヤを振り払って家のドアを開けた。 私のお父さんはいつも晩ご飯の後にテレビでニュースを見る。今日もいつものように俳優の誰かが結婚したとか、どこどこで火事があったとか報道されている。 「〜〜山崎花楓さんです。…」 (え?) 今、間違いなく花楓の名前が言われた。 私は首が痛くなるくらいに勢いよくテレビの方を振り返った。 「〜心肺停止の状態で病院に搬送されましたが、死亡が確認されました。」 頭の中がキーンという。 (聞き間違えだ。きっと) 「あれ?!美月、これ花楓ちゃんじゃない!?」 お母さんがテレビに映し出された女の子の写真を指さして言った。 写真の下のテロップは 「死亡した 山崎花楓さん(17)」

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