カフェイン

32 件の小説

カフェイン

眠れなくなりそうだけどクセになる、そんな小説家を目指して。ホラーより風刺多め。

フィクションです

酷い人生だった。 思えば物心ついた時には親から嫌われていた。 暴言とため息と嘲笑で彩られた幼少期は、 僕の一生を見事に真っ黒に染めた。いじめや叱責などはむしろあのクズ共から生まれてきた僕に関わった不幸を少しでも払拭したかったまともな人の判断だろうとすら思える。 僕の人生が不幸であると知らしめてくれる存在すらもいなかった。 生きることは素晴らしいことだと言った誰かはさぞ恵まれていたのだろう。今となってはどうでもいい話だ。 人から好かれる能力も、人に嫌われずに済む方法も、何一つ持つことはなく。 僕は今日、20数年の短い人生を終えることになる。 最期くらい、あの二人が苦しんで生きるようにしてやりたかった。 きっと僕が生まれてきた意味なんてなかった。 あったとしても、そこまで生きる気力はない。 ただ、僕と同じような人間が 一人でも減ってくれればいい、と。 まともなフリをした願いを抱いて飛び降りた。 光とブレーキ音のあと、 僕の体は綺麗にバラバラになった。 『乗客の皆様には、大変ご迷惑を_』

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現実の怖い話

 所詮、みんな他人事だ。自分に起きない悲劇はエンターテイメントとして楽しむことができる。特に、しっかりと悪役のいる悲劇はみんな我先に飛びつく。当事者の気持ちは勝手に押し付けて。  いじめや隠蔽、不倫。自分に関係のない事件を知るや否や、まるで人を傷つける免罪符を得たかのようにいろんな方法で懲らしめようとする。その事件の事実確認など後回し。恐ろしい人たちだ。もし、その人が何もしていなかったら?嘘をついている人がいたら?  そんなこと、考えもしない。考えることができない。人を傷つけていい人などいやしない。傷つけるなら傷つけられる覚悟を。傷つけられた復讐ならば相手と同じ土台に立つ覚悟を持つべきだと思う。    私は、とある事件の加害者にさせられた。誰かの嘘に飛びついた人々が、確認すらせずに私を殺そうとしてくるのだ。恐ろしいことに、彼らはそれが正しいと信じて疑わない。警察もマスコミも信じない人々が、ネットに書き込みをしたどこかの誰かの言葉を信じるのだ。  私は明日、生きていられるのだろうか。  

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正直に言ってよ

ねぇ、ねぇ もし周りに、同性愛者がいたらどうする? もし周りに、体の性別と心の性別が違う人がいたらどうする? もし周りに、恋愛感情を持たない人がいたらどうする? もし周りに、心の性別が無い人がいたらどうする? もし周りに、異性装者がいたらどうする? もし周りに、そういう人がいたら、 「どうもしない」ことが出来る? 大丈夫だよって、気にしないよって、 自分は優しいって事を伝えたりしてない? ねぇ、 無意識に相手は特別だって思い込んだりしてない? ただの人間だよ? あなたと同じだよ? 「そう」だからこうしなきゃ、って思い込んだりしてない? 相手をカテゴリで見てない? それが優しさだと思ってない? ただの人間なんだから。 好きでも嫌いでも、どっちでもいいんだよ。 お互いに。

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アロマンティック

 恋をしない。今、ゆっくりとそういう生き方が認知されつつある。  変な話だ。認知しなければ、そう言う人間がいると、そういう生き方が幸せな人もいるという知識がなければ相手を許せないなんて。おかしな話だと思う。  自分と違う人間がいることなんて至極当然のことじゃないか。何がそんなに恐ろしいのだろう。  自分にとっての幸せが幸せじゃない人がいるなんて普通のこと。国籍が違えば、環境が違えば、性別が違えば、年齢が違えば、そんなに難しいことか?  恋だってそうだ。そもそも一人じゃできないことが出来るのが当たり前だという思い込み、押し付けのなにが幸せなのか。恐ろしい生き物だ、人間というのは。不幸になった人が例外で、幸せな人が当然か。    私にはわからない。この知能の低い人間どもが、素晴らしいと繰り返す恋愛が。  そして、わからないことが不幸だと決めつける存在が。 

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ポジティブ

 ポジティブに生きろ。多分、聞いたことのない人なんていないんじゃないか。それぐらい今の日本人には必要なことらしい。  でも、一体どれくらいの人がポジティブの意味をしっかり理解しているんだろう。それって妥協なんじゃないの?もっと上にいけるはずなのに、もっとより良く出来るはずなのに、今の環境が最善と思い込んで変わる事をしない。それの一体どこがポジティブだっていうんだろう。ボクにはわからないよ。  ポジティブに、って言って相手を洗脳する相手っているんじゃないかな。ここじゃなくても自分が輝ける場所はたくさんある。耐えなくたって、逃げたって、生きていればいいことがある。そう思うこともポジティブじゃん。  ポジティブに生きろ、って言われてる人。それは、本当にポジティブかな?

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ポニーテールに欲情する人もいる

「あ」 マネキンの前で立ち止まる。可愛い。 でも、ちょっと露出が多い。 頑張ってダイエットしたら買いにこよっと。 最近太っちゃったしなー。 「ダメよ、そんな男を誘うような格好」 「痴漢にあったらどうするの」 変なのー 洋服着てるだけで、なんであたしたちが見知らぬ男を誘うことになるの? そんなの「お前が俺好みだから襲われても仕方ない」って言ってるみたいじゃん。 相手は犯罪犯してるけど、あたし何か悪いことした?法を犯した? そりゃ、素っ裸で歩いてたら犯罪だよ。 襲われる前に警察だよ。 でも、そうじゃないでしょ?ちゃんと服着て、 大事なとこ隠してるでしょ? 何が悪いの? なんで犯罪を犯すかもしれない人の為に気を使わなきゃいけないの? ねぇねぇ、なんでなんで?? 好きな格好が、どうして男を誘うことになるの?

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私は変わり者

周りから、ずっと変だと言われてきた。 良い意味でも、悪い意味でも言われてきた。 何が変なのか自分ではさっぱりだったけど、大人になった今はよくわかる。 人ってのは他の人間がどういうものか気になって仕方ないし、違うことに酷く臆病なんだ。 誰かと一緒にいたいし、異性にドキドキするものなんだ。 正しいとか間違ってるとかじゃなくて、自分が嫌だったら悪なんだ。 友達がいるのが普通で、友達の言うことに振り回されるのが多数派なんだ。 友達がいないってことは辛いことなんだ。 最近はそうでもないみたいだけど。 大人になって、世界が広くなって自分みたいな人間がたくさんいると知ったけど、 それと同時に自分の価値観では悪者と呼べるくらい危ない人が数えきれないことも知った。 子供が言う「何故?」に答えられない理由が、知らない以外にたくさんあることも知った。先生や親が偉くもなんともない、それでも一生懸命生きてきた一人の人間だと知った。 まだ、一生を考えてみれば若い、と言われる年代だけど、歳をとった人たちが驚くことがたくさん起きてるから… きっとこれからも、人間如きの頭じゃ予測のつかないことが起こるだろう。 それを、自分なりに楽しみにしている。 みんなが慌てるなら、自分は楽しめるかもしれない。だって、自分は変わり者なのだ。

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まだまだ発展途上

「僕、本当は男の人が好きなんだ」 「そうなんだ?大丈夫だよ、偏見ないから!」 「俺、本当は男なんだ」 「そうなんだ。大丈夫、なんとも思わないよ」 「大丈夫ってなんだろ?」 「偏見持ってるのが普通ってことじゃないか?」 「…喜ぶべきなのかな」 「どうだろうね」 「僕、本当は男の人が好きなんだ」 「……へー」 「俺、本当は男なんだ」 「えっ…そうなんだ」 「…どう思う?」 「これはこれで傷つく」 「どうして欲しいんだろうな?俺ら」 「わかんない」

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優しい人

「優しい人になって欲しい」 私はそういう願いを込めて育てられた。 小学生になっても優しくあろうとした。 中学生になっても優しくあろうとした。 高校生になっても優しくあろうとした。 社会人になっても優しくあろうとした。 ずっとずっと、私だけが優しかった。 お母さんとお父さんは、 私に優しくなって欲しかったんじゃない。 私に幸せになって欲しかったんじゃない。 気づくのが遅すぎた。 どうやって、優しくなくなればいいの?

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夢のお話

「…う、ん」 目が覚めると、知らない駐車場にいた。 デパートの地下みたいだ。 昔、家族でよく行った場所を思い出した。 自分は小さい男の子になってた。 気がつくと、そばには小さな女の子が寄り添っていた。何も言わずに、不安そうな顔で自分を見上げている。可愛らしい女の子だった。 自分は駐車場の中央に、エレベーターを見つけた。中に入って一瞬背筋が凍った。 『3回目4回目5回目6回目』 『会いたいさみしいつらい』 エレベーターの内部に書き殴られた文字。 女の子がぎゅっと手を握ってきた。 エレベーターで上の回にあがると、 ちょっと怪しい感じのお兄さんと出会った。 「ここは色々危ないよー」 お兄さんは笑顔でそう言った。 そのあと、怪物からお兄さんが助けてくれた。 でも、お兄さんはなんだか怪しい雰囲気だった。 少しして、不思議な水晶があった。 その水晶は触るとどろどろに溶けてしまう呪いの水晶だった。 それを避けて、次のエレベーターに向かった。 怪物がまた追いかけてきた。 そこで、お兄さんが言った。 「大丈夫だよ。ここは、僕にとって何十回も通った場所だから」 次のエレベーターの中で、 お兄さんは教えてくれた。 ここで妹を探してるんだって。 最初のエレベーターのらくがきや、 あちこちにおちてたメモはお兄さんが書いたものだって。 次のエレベーターに向かう。 次のエレベーターの扉の中は箱がなくて真っ暗だった。 自分達もお兄さんも首を傾げて、中を覗き込んだ。 そしたら、奥から黒い手が伸びてきて、 お兄さんを掴んだ。 精一杯引っ張ったけどダメだった。 お兄さんは、中に落ちてしまった。 でも、お兄さんは落ちる直前に言った。 「そこにいたんだね」と。

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