嶌崎月夜

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嶌崎月夜

TELLERでも活動しています。読み方はしまざきつきよ,です。普段書くお話は殺し物語ですがここでは恋愛物語を書かせてもらってます。よろしくお願いします。

恋する日,僕の最期をこの言葉に 3

光の墓に手を合わせるー凜がいた。急いで駐車場に車を停める。光に軽く手を合わせてから墓の上に缶コーヒーをまた置いておく。 「実は私も結愛さんに用があったんです。私一人じゃどうしようもなくて。」 何が言いたいのかはわかる。彼女もまた光の事を言いたいことを。それを否定する気はなく,協力ができるから喜んで助けたい。 「光の部屋の整理を手伝っていただきたくてお願いしようと思ったんです。そして何かあったら結愛さんにお伝えが出来ると思って。」 「お気遣い本当に助かります。では早速向かいましょう,どうぞ乗って。」 でもひとつ疑問に思った。何故,凜は家族いや遺族と言えばいいのか分からないがそちらに頼まなかったのだろう。理由はわかったがそれは整理していてそこから関するものを一気に見せればいいのに。でもそんなことを聞くことはしない。大切な光の家族を傷つけることをしたくない。そんなことを一人で考えていると 「結愛さんは車で音楽とかかけないんですか?」 「普段は無音ですね,音楽とかかけたいんですけど機械のことについてはすごく疎いですよね。」 「車のナビにブルートゥースで繋いで音楽アプリがあれば聴けますよ,試しに私のでもいいですか?」 「……優しい曲ですね。聞いてて心が安らぐ。 いいセンスしているんですね,羨ましいです。」 そこからはお互いに静かにしていた。凜は時々流れてくる曲を口ずさむ。でも正直,結愛に出来ることは限られてる。光が遺した物なんてないだろう。凜にはなんか遺したりはするかもだが。幼馴染に遺せる物があったら逆に知りたい。 「そちらを右に曲がっていただくと家ですので,車は適当に停めていただいていいですよ。」 「分かりました,でも家大きくないですか?」 「庭が大きいだけです。部屋の割り振りは結構狭いですし。」 一軒家なのにこれが狭いってどうゆうことなんだと言いたくなるくらいとてつもなく広いのだ。 「こちらへどうぞ,光の部屋までご案内しますね。」 やはり両親はいないぽい。ふと壁に家族写真を見つけた。笑う光に凜に両親。でもその隣には遺影もあった。優しく微笑む両親と光。 「両親も光の後を追ったかのように亡くなりました。交通事故だそうです。信号無視した車に巻き込まれて即死。何故,兄まで失って両親を失う必要があったのでしょうかね。」 まだ若いながらに多くの大切なものを失っている。なのに辛さを見せる涙は見せない強さがある。 「みんながみんな,優しくしてくれて嬉しかった。でもその一方で孤独をいちばんその時に感じる。授業参観でもみんないるのに私だけいないなんて屈辱的でたまらなかった。」 お気の毒になんて気軽には言えなかった。言えば凜が余計に屈辱を感じる。 「すみません,光の部屋へ行きましょうか。」 ガチャとドアを開けると小綺麗でスピーカーが主に目に付く。好きなアーティストの曲を聴くにはピッタリな部屋だ。 「ではさっそく整理始めましょうか。」 凜が大きめのダンボールを何個も手にし,綺麗に敷きつめていく。結愛は本棚に積まれた本をしまっていく。見たことあるもの,見たことないけど以前おすすめされたことがある本。全く知らない本。 「適当にやっていいですよ。光の部屋の荷物だけ片付けたらここの家を売り出しますし。」 凜は勉強机やベッド下の荷物をメインに片付けている。でもたまに紙を凜の横に置いて行く姿もある。何かのものなんだろうか。 「凜さん,終わりました。」 「ありがとうございます,あのこれ……。」 先程から横に置いていた紙だ。綺麗に封筒に入れられ,宛書きまで書いてあった。そこの宛書きには“結愛へ“と。 「全て光からです,ぜひ貰ってください。」 礼を言って結愛は凜の家を出た。日付やその手紙が何回目かまで詳しく記されている。でもその一通目の日は確か……。※次回,製作中 〈あとがき〉 “恋する日,僕の最期をこの言葉に“をご愛読ありがとうございます!いつも読んでくださる方には本当に申し訳ありません。中3でしてテスト週間などあってお話をかけることが少ないですがどうぞよろしくお願い致します。

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恋する日,僕の最期をこの言葉に 3

恋する日,僕の最期をこの言葉に 2

凜と別れを告げて家に帰る。パッとスマホを見ると教員のグループが通知の嵐となっている。メンションまでつけられいる。友達同士のメッセージなら既読スルーして,翌朝ごめんごめんって言えば許される。でも教員。嫌でも顔を合わせる仲であるから既読スルーしておくと場の空気が重い。しかも,〈小テストあるので問題作成忘れないでくださいね。〉なんて書かれているし,いわゆる忠告だ。〈分かりました,ご連絡ありがとうございます。〉とだけ打つとぼふっとベッドに埋もれる。ふかふかだ。目を閉じれば眠りに誘い込まれる。でも風呂も入ってないし,ご飯も食べてない。あっ,洗濯もしてないじゃん。 墓参りぐらいで疲れることは無い。ただ凜のことで身体や精神が少し疲れたのだろう。光の妹と言うだけで神経を使うんだから。下手なこと言うとめんどくさい事になってせっかく得られる情報源を失うと大変だ。なんて考えていると風呂に入る気力も洗濯をするやる気も全てなくなってきた。うつらうつら夢に取り込まれる。 変な姿勢で眠っていたせいか身体がものすごく痛い。身体がつっている。うがぁ……と呻き声を出してふと我に返る。 「今何時……?ん〜,8時10分……?目覚まし壊れてるんかな?」 目覚ましは時間が狂うことがあるから信用は出来ないがスマホの時刻は正しい。正しいから8時10分。つまり,完全に遅刻だ。いい年こいた教師が寝坊により遅刻なんて口が裂けても言えない。パッとメッセージのアプリを開くと昨夜と同じく通知の嵐だ。休みなら連絡くださいや教師が遅刻なんて前代未聞です,なんて言われてしまっている。〈すみません,遅れるので代わりにHRお願いしますね。〉そしたら1件ポンと送られる。ざまーみろ。仲のいい教師友達の大樹だ。数学教師で生徒からの支持が高く,何より顔がいい。が朝から機嫌を悪くさせる天才と言えば天才。ともかく大樹は放っておいて遅刻と割り切ればゆっくり行こうという思考が働く。いつもなら乗らない乗車時間に乗り込み,座席に座る。ガタンゴトン……。通勤ラッシュにしては人がいない。7時とかに普段乗り込むから8時の電車は空いているのか。電車から降りるとちょうどピッタリ,8時30分。あぁ……もうダメだ。と諦めモードに完全に染る。職員室には何気ない表情ではいる。 「ごめんなさい,遅刻してしまいました。」 こんな人前で頭を下げるなんていつぶりだろう。赤面していく自分が恥ずかしい。大丈夫よ,人だもの。などフォローしてくれる人もいるが大樹だけは舌をべーと出している。しかもなぜこんな時に限って隣なんだ。 「いい大人が遅刻なんですか?結愛先生?」 「うっさい,わざとじゃないんだからいいでしょう?」 「まぁ……どうでしょうねぇwww」 殴りたい。という衝動を抑えてにっこり笑って済ましておく。1時間目から担当授業がある。社会科の教師として3年はやってきた。そしてどんな時でも授業がめんどくさいなんて考えたこともなかった。好きな授業だから何時間やってても楽しい。楽しいのに……今日だけは楽しくない。集中ができない。めんどくさいと考えてしまう。きっと光のことだろう。すっかり忘れたはずの記憶がサビから解き放たれたかのように鮮明に記憶にある。今日も墓参りに行ってこようかな。なんて考えていると 「先生……授業進めないんですか?」 素朴な疑問されて,ようやく現実に帰る。授業やってもいいが“めんどくさい”。自習で,とだけ告げるとスマホを開き,凜宛にメッセージを送る。本日もお会い出来ますか,と。できますよ,と返答が来るとスタンプだけ押してスマホをしまった。※次作,作成中

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恋する日,僕の最期をこの言葉に 2

恋する日,僕の最期をこの言葉に

『出会った時から好きだったよ』 その言葉を残した彼はもうこの世にはいない。 今だから言える。彼と出会えたときから好きと。言えないのは連絡先が繋がってないとか海外に住んでいて電話ができないとかではない。遠くの地にいるから話せないから言いたいとかじゃない。簡単なこと。病気で亡くなってしまったからだ。産まれ持っての病気だったそうだ。簡単に治ることはなく退院しては入院しての繰り返し。まともに学校にも行けず,周りからはただの不登校だのあーだの言われ続けて来たがそんな言葉に負けずに学校に顔を出したりもしてきた。 「結愛,しばらくは学校行けそうだから僕が休んでた分のノートを取らしてくれる?」 彼が学校に来れた時の最初の会話は大抵これだった。でも今はなかなかボケっとしてられない。時間は通勤ラッシュの真っ只中。今の私ー結愛は彼の夢であった教師を務めている。ついつい,人の波に呑み込まれそうになりながらも電車のつり革をしっかり握る。揺られ揺れる。 「あぁ……最近墓参りに行けてないな。」 ふと電車の外の窓を見た。蒼く澄渡る空を仰いだ。 「この時代の歴史は大正デモクラシーが起きたの。色々と混んがらがるだろうけどきちんと復習してきてね。明日,小テストですし。」 結愛の授業担当のクラスが全て終わり,普段よりも三時間ほど早く上がれそうだ。教師となれば平気で土日は仕事で奪われる。まったりと休日を満喫はできない。だから平日で早く終われるなら終わって,光の墓参りに行きたい。早くて五時に学校を出れる。最後に墓参りに行ったのは,去年の春くらいか。帰りのホームルームには出席せずに学校をものすごいスピードで去る。まずはスーパーで彼岸用の花を買って,線香も買って,チャッカマンも買って……。何一つプランを考えないで行き当たりばったりで買おうとすると意外な出費があって財布がないている。色々なものを買ってから少しだけ車で走ると住宅街から少し外れた墓地に車を進める。ぽつんと一つだけ綺麗な墓が見えてくる。光の墓だ。 「……ん?」 ここ最近に新しく花を注したかと言えるような花が咲いていた。まだ生き生きとした葉の緑。菊の白に黄色が交互に咲いていて美しい。無理に自分が持っていた花を入れ込む。こんなに花が咲いていてば光も寂しくはないだろう。もし,生きていれば光も結愛と同じ教師でバカ話して缶コーヒーを片手に歩いているだろうか。あるいはもう二十歳は過ぎているから居酒屋で酒を飲んで酔ってお互いフラフラになりながら家に帰るだろうか。二日酔いして起きれなくなるだろうか。それとも……結婚したりするか。時々,痴話喧嘩してそれでも結局,お互い嫌えなくて仲良いねって最終的には言われる夫婦になれなくはなかった。自分の身で描く未来地図は少しつまらない。横で光がアドバイスしてもらってるような感覚になる。直接地面に座り込み,缶コーヒーをブラブラさせる。ガサッと地面を踏み込まれる音がして首を上げる。 「あっあの……大丈夫ですか?しゃがみこまれていたので……。」 「あぁ……すみません。こんなところで座られていたら迷惑ですね。」 「えっ?問題ありません大丈夫ですよ。その花とお線香に缶コーヒーはあなたが置いてくれたんですか?」 しゃがみこまれて迷惑の前に自分がお供えしたものに質問される。恐らく,光の妹か。口調が光と似ていてふわふわしている。自分以外に墓参りしていることに驚いているんだろう。 「はい,去年の春くらいに一度墓参りに。しばらく行けてなくて。」 「あっすみません。自己紹介がまだでしたね,いきなり声かけられて驚かしてしまいました。」 ペコペコ頭を下げる女性に申し訳なくなり,誤って一本多く買ってしまったお茶を差し上げた。 「何から何まですみません。私の名前は光の妹の凜です。」 「凜さんですか。光さんの幼馴染の結愛と申します。」 定期的に凜は光の墓参りに行っていた。だから墓が綺麗だったりしたわけだ。一人で納得していると凜が笑う。 「幼馴染でこんなに良くしてもらってる光は幸せ者です。」 凜はさりげなく言ったのだろう。だが結愛にとって少し,心が傷んだ。※ 次作,作成中

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恋する日,僕の最期をこの言葉に