詩月 零

36 件の小説
Profile picture

詩月 零

初めまして、詩月 零(しづき れい)と言います。色んな方々の小説を拝見しながら小説の勉強中… 未熟者の小説ではありますが、温かい目で見て下さって頂けたら嬉しいです。

サイダーポンチ

「ただいまー」 仕事が終わって誰もいない家にただ一人 夜になっても蒸し暑さは変わらない ちょっと喉が渇いたからビールを… ん……? 冷蔵庫の中にサイダーが入ってる いつ、買ってきたんだっけ? あっ、そうだ!アレが食べたくて買ったんだ 私は咄嗟に思い出した“アレ”を作ることにした 果物の缶詰めを開けて ガラスボールに果物を入れる そこにしゅわしゅわした炭酸サイダーを入れれば完成! 懐かしいなぁー… 学生時代、食べたよね〜 この味… 果物の甘さと 炭酸サイダーのしゅわしゅわが一緒になって踊る まるでダンスしているみたいに あっー…でも… やっぱりビールが飲みたい …なんてね

6
0
サイダーポンチ

君恋-キミコイ-

第十話 「告白」  青くて白い雲ー… 合わさった空が果てしなく続くー… 今日も変わらない空が私を迎える 二時限目の授業が終わって休み時間となり 廊下は人集りでいっぱいでも声などいっさい聞こえない 窓の前に立ってそっと深呼吸をする 空は自由だ…ってそう思う そのまま廊下に出てお手洗いに行く途中ー… 誰かがこちらを見つめている …………………? 「遠野さんっ!!」 その姿がはっきりと映って私は驚いた …真城くんっ!! 私は急いで、後ろを振り返り 教室へと戻ろうとした瞬間ー… 彼は足早に私の手首をガシッと掴み、 身動きが取れなくなった 『真城くんっ!離して!』 『僕はこの手を離さないっ!』 グッと引き寄せられるように 気がつけば私は彼に抱きしめられていた 必死にもがく… だけど抱きしめる力が強くて離れることが出来ない 「会いたかった…」 くすぐったいくらい耳元で何か言っている 彼は私の顔を見つめながら その瞳をずっと逸らす事はなかった 『真城くん、あの時言ったよね。もう会わないって』 『ちゃんと理由も言わないで離れるのは違うと思う』 『別に私達は付き合っている訳じゃ…』 『そうかもしれない… でも僕はずっと遠野さんの事が好きなんだ』 えっー… 抱きしめられて息が届くくらい 真っ直ぐな目で私を捉えて見つめている 『私は、障害者の身だよ。音だって聞こえない。 真城くんの声だって聞こえないのに… そんな私と居たって疲れるはずだよ』 『僕は一ミリたりともそんな事を思った事はない。だって、僕はずっと見ていたから…遠野さんのことを』 『えっ…………』 あの日、雨が降っていた入学式での事をー… 『だから君が障害者だという肩書きがあるのは確かに辛い事だし、僕が代わりになれるような簡単じゃない事も分かっている。それでも僕は、遠野さんの耳が聞こえなくても、僕が君の耳となりたいんだ』 真城くんー…… 『僕と一緒にいてくれませんか?』 私は幸せになってもいいのかなぁ… この先、どんな幸福があって不幸があっても 私は彼を信じて乗り切れるかなぁ… でも…見てみたかった 新しい何かに会えて 新しい景色に出会えるのなら 私は、そっと彼の手を握りしめて 真っ直ぐに見つめた 『好きです。真城くんー…』 風が吹き抜ける 私達は小さな口付けを交わしたのだった

1
0
君恋-キミコイ-

君恋-キミコイ-

第九話 「声」 あの日の遊園地の出来事の日から 私は彼に会う事はなく二週間が過ぎていた 変わらない特別支援の教室で 凛花ちゃんとスマホで他愛もないやり取りをしながら 一日が過ぎていく毎日だった 「冬歌ー、お客さんだよー」 クラスメイトの女の子が声をかけると 耳の聞こえる凛花ちゃんがそっと 私に合図を送るようにスマホの文字で教えてくれた 席を立ち、特別支援の教室から出ると そこには忘れる事もないあの河原朝霞さんの姿が… 「久しぶりー!元気にしてた?」 「…………………」 耳が聞こえないのを知っておきながら わざと声を出しているのが分かる 『あの…何のご用でしょうか?』 手話で会話すると 彼女は無視してスマホを片手に文字を打ち出した 『そろそろ遥音に会いたい頃じゃないの』 『いえ…真城くんとはこれからも会いません』 いや…そんなのは嘘 本当は真城くんに会いたいって思う グッと我慢するように スカートの裾を握りしめる 『あっ、そう。遥音なんかこの二週間、いっさい口も開かなくなっちゃって、面白いよねー』 『それは朝霞さんが…』 『私が何…』 『…………………』 ギロリと見つめる視線は どこか怒りに満ちる中に悲しそうな眼をしていた スマホの打つ音が強くなる 『だいたいね!私は遥音が好きだったの! アンタさえいなければ、遥音は私と一緒に…』 私よりもずっと前から… きっと…好きだったのかもしれない 彼女の目から涙が溢れながらも 私はしっかりと彼女の目を捉えて見つめた 『私はこれ以上、真城くんとは会いません』 『…………………』 『それに私は障害者の分際です。障害者がよからぬ夢など見てはいけないですから…』 私はそう言って彼女にお辞儀をして 後ろを振り返る事なく教室へと戻った 教室に戻ると凛花ちゃんが待っていた 何も言わず、凛花ちゃんは私に駆け寄ってギュッと抱きしめる 私は我慢してたものが溢れて涙が溢れた 「うっ…ううっ……」 もし、耳が聞こえてたらー… もし、障害者じゃなかったらー… どんな夢が見られたのだろう 真城くんー… 真城くんの声(手話)が聞きたい

1
0
君恋-キミコイ-

君恋-キミコイ-

第八話 「健常者と障害者」 「遥音っ…!」 「朝霞…なんでここに…」 「遥音こそ、そこの彼女とデート…?」 「…そうだけど」 彼は何やら顔が引きつっていて その上、彼の方に引き寄せられながら 私は訳が分からなくて二人の顔を見合わせる 『遠野さん、紹介するね。彼女は同じクラスの河原朝霞(かわはら あさか)』 「河原朝霞です。よろしくね♪」 河原朝霞さんー… 私よりも大人っぽくスタイルが良くて凄く美人 こんな素敵な人が同じ学校にいるなんて… 彼女は笑顔を浮かべながら そっと私の方へと手を差し出す 手を差し伸べるとギュッと力強くて痛いくらい その不適な笑みがとても怖く感じた… 「そういえば…遥音。そこの彼女さんって 確か…耳が聞こえないんだったよね」 「別に…朝霞には関係ないだろ」 「そんな事言わずにさ〜 私も彼女と仲良くなりたいんだから」 「………………」 彼は震えながら拳を握りしめていた 「えっと、遠野冬歌さんでしたよね」 「朝霞…何で遠野さんの名前を…」 「別にいいじゃない。私の情報は早いんだから」 「………………?」 二人のやり取りを見ながらも 彼女との視線が絡み合う 「あっ、ごめんなさい。突然の事で驚いたよね 耳が聞こえないんでしたっけ」 そう言って、彼女は鞄からスマホを取り出して 何やら文字を打っているようだった …………………? 「はい。これで分かるよね」 スマホ画面に映した文字ー… 『障害者の分際が遥音に近づくな』 ドクンと変な鼓動が高鳴る 「それと…」 彼女は再びスマホに文字を打ち、私に見せた 『遥音と二度会わないように、忠告です❤︎』 ニコッと微笑み 彼女はスマホを鞄にしまい込んで 「じゃあ、またね〜」と 手を振ってその場から立ち去った 突然の出来事で何がなんだか分からない このままじゃー… 私だけの問題じゃない 遥音くんにまで迷惑がかかってしまう ガクガクと震えが止まらない 「遠野さんっ!!」 地べたに座り込んだ私を支えるかのように 彼はそっと私の顔を覗き込んだ 『大丈夫…朝霞に何か言われた?』 『ううん…大丈夫。何も言われてないよ』 『本当に…?』 『うん。真城くんって結構心配性なんだね』 『それは…遠野さんの事がっ…!』 『えっ…?』 顔を赤らめる彼の視線を見つめるように 私はそっと手を握りしめた 『遠野さん?』 『真城くん…これからは会わないようにしよう』 『えっ……』 動揺を隠せない彼の顔 『今日は楽しかった。本当にありがとう』 私はそう言い残して 彼を見る事も振り返る事なく その場から離れた 私は障害者… 私達は見てる世界も住む世界も違う 叶わない夢など見てはいけないのだから

1
0
君恋-キミコイ-

君恋-キミコイ-

第七話 「遊園地」 ガヤガヤと人で賑わう 親子連れやカップル達がとても多い まだ約束の時間にもなっていないのに 私は、早くから遊園地の入り口付近で 緊張しながら待っていた 今日のお洋服はお気に入りのワンピース 白い生地の中にピンクの花柄が散りばめられていて、 女の子らしいかなと思って選んだお洋服 デート…じゃないのは分かっているけど ソワソワしながら待っていると 遠くの方から息を切らしながら 走ってくる姿が見える …真城くん!! 息を切らし、『遅れてごめん』と手話で交わすと 私は咄嗟に彼の背中を摩(さす)った 『ありがとう。もう大丈夫だよ』 いつもは制服姿の彼を見ているけど 今日は一段と雰囲気が違くて大人っぽい 彼の視線が絡み合い、思わずドキッとする 『そういえば遠野さんの洋服…かっ、可愛いね』 『えっ、あっ、ありがとう』 ドキドキしながら何度もお辞儀を交わすと 彼は満面の笑顔を浮かべた 『とても楽しみにしてたんだ。だから今日は思う存分楽しもうね。遠野さん!』 『うん!』 私達はチケットを握りしめて 遊園地の中へと入った ジェットコースター、メリーゴーランド、 お化け屋敷、カーレース、ウォーターコースター どれもこれもが迫力があって楽しくて 時間さえ忘れられた 私でよかったのかなぁ…なんて思ったけど 真城くんも楽しそうに笑っていて それが何より嬉しかった お昼ごはんも食べて 再びアトラクションに乗って 閉園時間になるまで遊び尽くした そして、気がつけば夕暮れの空へと変わっていた 『はあ〜楽しかったね』 『いっぱい遊んだね』 『遠野さん、疲れてない?』 『大丈夫だよ。真城くん、今日はありがとう』 『よかった。遠野さんが楽しんでくれて』 彼はニコッと笑顔を浮かべ 私にとって素敵な思い出が作れたような気がした 『お家まで送るよ』 『ありがとう』 遊園地の出口へと向かい、帰ろうと思った瞬間… 突然、一人の女の子が私達の目の前へと現れた 「遥音っ…!」

2
0
君恋-キミコイ-

君恋-キミコイ-

第六話 「きっかけ」 『ふーゆーか!』 凛花ちゃんのスマホ画面が私の方へと向けられる 『凛花ちゃん、何か楽しそうだね』 『そりゃ、そうでしょ。今から体育館で…』 『ち…違うと思うから』 『何も言ってないけど、何が違うの?』 『何もないけど…もう〜からかわないで』 スクールバックに教科書や筆記用具… そして、彼から貰ったお手紙をそっと入れる 凛花ちゃんはニヤニヤとした顔で 『いってらっしゃい』と手を振りながら 私は何が起こるのか分からない心情とともに 特別支援の教室を後にした 体育館に着くと、何やらバッシュの音が聞こえる キュッキュッとした靴の音 私は静かに覗くと真城くんの姿が見えて バスケに集中している この間、落としたユニフォーム姿で ドリブルしながら綺麗なレイアップシュート 汗を拭う彼の姿にドキドキが止まらなかった 転がり落ちるボールは私の方へと近づき それに気づいた彼は ニコッと満面の笑顔を浮かべた 『来てくれたんだね』 バスケボールを拾い上げ、手話で会話する 『真城くんってバスケが上手だね』 『ありがとう。そう言って貰えて嬉しいよ』 『その…お手紙の事なんだけど…』 『あぁ…その…』 彼は後ろを向いてしまって顔が見えない 耳が少しだけほんのり赤くなっている ……………? 「…あの…その…」 ……………? 声が聞こえない 両手でバスケボールを回転させながら 落ち着きがない彼の姿 『真城くん…?』 『あ…あの…実はね遊園地のチケットが二枚あって、 その…遠野さんを誘いたくて呼んだんだ』 『そうだったんだね。いいね!遊園地!』 『明日は週末だし、部活も休みだから… もしよかったら明日でもどうかなぁって』 『うん、大丈夫だよ』 『よかった…ありがとう』 遊園地かあ… 楽しみだなぁ…真城くんと… …って、これって… 早まる鼓動が高鳴る ただー… 彼の見つめる視線はどこか言いそびれた顔だった

2
0
君恋-キミコイ-

思い出の制服

娘の部屋に入る 誰もいない、電気の灯りもついていない ただ、綺麗に整理整頓された部屋だけが残されていた 部屋に入ると 娘が愛用していたクローゼットの前に立つ 開けてみると 懐かしの高校生の頃に着用していた 夏服、冬服の制服が飾られてあった あら…懐かしい 衣替えの時期になると 娘はいつも『クリーニングお願い』って言って 頼まれることがあったっけ 夏服の制服を取り出すと 娘の匂いがほんの少しだけ傍にいる気がして 綺麗な制服をギュッと抱きしめる 娘へー… 結婚おめでとう お父さんとお母さんはいつもあなたの味方です

1
0
思い出の制服

夕焼けのスケートボート

何かにハマっている事… みんなも何かハマっている事とかある? 私はもちろんスケートボート 子どもの頃から両親に買ってもらった宝物 一枚板のスケートボート それを使って自由気ままにアクションを起こす 私のお気に入りは夕焼け時の時間 辺りがオレンジ色に染まる時 スケボと一緒に景色を謳歌しながら楽しむの 私には、夢があるんだ スケボを使って世界各地を巡ること いつかチャレンジしてみたいなぁってー… 夢はありますか… 背中を向けちゃダメだよ… 幾つになっても挑戦することを諦めないで

1
0
夕焼けのスケートボート

和風おでん屋

グツグツと煮込む音… 鼻腔をくすぐるような美味しそうな和風おでん 僕等三人、ヒィ、フゥ、ミィは 近くの和風おでん屋さんに立ち寄っていた 白滝、大根、餅巾着、たまご、牛すじ、さつま揚げ… 色んなおでんが湯気を立てて食欲をそそる 「なぁなぁ、聞いてくれよ」 「なに?」 ダシのきいた大根を頬張りながら フゥの話を聞いていた 「この間、母ちゃんと口喧嘩して思いっきり言ってやったんだ」 「何を言ったの?」 「クソババアって」 「ちょっ、おまっ…口悪すぎだろ」 ミィは笑い転げる 「それでな、その後、母ちゃん何て言ったと思う」 「そりゃ、ブタれるだろう。ブタだけに」 ヒィの真面目な答えに何故か冷たい風が流れる 「違う違う!母ちゃんはなこう言ったんだ。 『クソババアって言うならな、糞しない糞詰まりなババアを連れてこい』ってさ」 「なんか汚くね笑」 ミィは鼻をほじりながらクスクスと笑う 「糞詰まりってそんな人いるの?」 「知らねーけど、いるんじゃね」 「おでん食っているのに不味くなるね」 三人はおでんのだし汁を静かに啜る 僕等は、ヒィ、フゥ、ミィ… 今日も馬鹿げた一日を過ごすのでした

3
0
和風おでん屋

君恋-キミコイ-

第五話 「お手紙」 あの日、突然的に彼から 包み込まれた手のぬくもりは 今でも忘れられなかった お昼の時間ー… 私は、凛花ちゃんと一緒に お昼ごはんを食べようと机をつけながらお弁当を広げて スマホで楽しく会話していると 何やら特別支援の廊下から人集りが出来ていた 『なんだろう…あれ…』 お弁当を食べる手を止めて廊下の方に目を向ける 『私、ちょっと見てくるよ』 そう言って、凛花ちゃんは 食べかけのお弁当を置いて教室から出ていった こういう事は滅多にない…というか 騒ぐほどの“何か”がなければ起きないと思うけど 不思議に思いながらも廊下に目線を向けたまま 凛花ちゃんの姿が見えて 何やら慌てた様子で戻ってきた 『たっ、大変だよー!』 スマホを打つ文字からして慌てた様子 『どうしたの?』 『まっ、真城くんが特別支援に来ているの!』 『えっ!!』 『冬歌、いいからちょっと来て!』 私は考える暇もなく凛花ちゃんに手を掴まれて 特別支援の教室から出れば 特別支援の女子生徒達が多く集まっていた 私と凛花ちゃんは人集りを掻き分けながら ようやく彼の姿が見えた 「あっ、遠野さん」 「……………」 彼はニコッと微笑みながら私の方へと近づく 「急にごめんね」 「……………?」 彼は見つめながら口だけが動いていて 何を言っているのか分からず戸惑ってしまう 「あの…真城くん、冬歌は耳が聞こえなくて」 「あっ、ごめんね。僕だけが喋ってばかりだったね」 すると彼は大きく深呼吸するかのように 綺麗で大きな手から手話を始めた 『遠野さんに渡したいものがあるんだ』 『えっ…?』 私は彼が手話が出来ると思わず驚きながらも 彼は制服のポケットからあるものを取り出した お手紙ー…? 私にー…? 『短い文章だけど読んでくれたら嬉しいな』 とても可愛らしいお手紙 封を開けようと彼は慌てて私の手を止めた 『あっ待って!ここで読まれるのは恥ずかしいから、僕が帰った後に読んでくれたら嬉しいな』 『そうなの?分かった。お手紙ありがとう』 『それじゃあ、僕は行くね』 そう言って駆け足で特別支援から離れていった 初めてのお手紙… 受け取ったお手紙を見つめる 凛花ちゃんは頷きながら 私はそっと封を開けて便箋の中身を見た “明日の放課後、体育館で待ってます”

2
1
君恋-キミコイ-