月白 雪加ーTsukisiro Sekka.
47 件の小説月白 雪加ーTsukisiro Sekka.
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家族以上、知人未満な僕と君。
お待たせしました!家族以上、知人未満な僕と君。完結までお読み頂き、ありがとうございました! どうだったでしょうか。 余談ですが題名の『家族以上、知人未満』は颯が桜と出会う前には颯にとっては桜は知人未満、桜が成仏されたあとは颯から見たら桜は家族だった。でも生まれ変わった桜にとっては知人未満、という意味が込められています。 複雑すぎる....執筆しながら思っておりました。 作者がこの物語を書いたきっかけは幼少期の頃。 まだ4歳くらいの時、旅行先に向かう途中に通った河川敷で『あ、お兄ちゃん!』と叫んだらしいんです。作者は一人っ子なので兄などいるわけないのですが。 そんな話を聞いたもので、そこからこの物語を書きました。 これも余談ですが、幽霊っていると思いますか? 私は信じない派なのですが、科学的に亡くなったあと、体重が減るそうなのです。それも水分では無いそうで。魂?とか言われてます。 今回のヒロイン、桜のような後悔は誰にでも起こりうると思います。 自分に正直に、一日一日大事にしたいですね。 作者も颯みたいに好きな人に好きとか正直に言ってみたいにものです、笑。 長くなってしまいました。 では、また次回の作品で会いましょう。
家族以上、知人未満な僕と君。
(前回の続きです。今回で最終話です。) 37−受け継がれる思い あ。小さい男の子が来店してきた。 「いらっしゃいませー」 「この、6号ホール1つ下さい!」 「誰かの誕生日かな。上のチョコになんて書いて欲しい?」 「桜姉ちゃん、6歳の誕生日おめでとう、で」 桜...6歳..まさか。 頭をかすめるのはあいつのこと。 会計を済まし、朱織にあの少年の相手をしてもらい僕はケーキのプレートを工房で作った。 「こんにちは。君の名前はなんて言うの?」 「そうた!5歳なんだ!」 「今日はお姉ちゃんな誕生日なの?」 「うん!そうなの。この花もお姉ちゃんの好きなやつ!」 「これは..スイートピー??」 「そうだよ!」 レジの近くで朱織さんと少年が話しているのが聞こえた。 これ絶対桜じゃん。 しかも弟の名前、そうたって。 颯太、って書くのかもしれない。 生まれ変わり、あるのかもな。 そして思う。 幸せ、なんだな、桜。と。 もう僕らが彼女に関わることはできないけれど、幸せならそれで良い。 あっという間に商品が出来上がり、幼い少年にしゃがみながら渡す。 「お姉ちゃんと沢山楽しむんだぞ〜少年。一日一日を大切にな。」 頭をなで、ケーキを託す。 「分かった!優しいお兄ちゃん!」 少年はそれから走って店を出た。 「元気そうだね。桜さん。」 朱織さんが僕の近くによってきて、つぶやく。 「そうだね。僕らも今日はお墓参りに行こうか。」 「いいね。スイートピー持って行こう。」 彼女は微笑んでいた。勿論僕も。 そして店の前にある桜も満開に咲き誇っていたのだった。 完
家族以上、知人未満な僕と君。
(前回の続きです。) 36−運命の赤い糸 「ごめんなさい。」 初恋の相手に振られたのはもう10年前のこと。 僕らはもう24歳になっていた。 僕と言えば今はパティシエを目指している。 叔父さんの住む県でバイトとしてケーキ屋で働いているのだ。 ちなみにあの事件の後、僕の母親は桜と同じように交通事故で死んだ。 申し訳ないが、桜への態度といい、彼女の行動を見れば地獄行き決定だろう。 やっぱり僕には優しかったから、亡くなったときは悲しいとも思ったけど、どこかでざまぁと思ったよね。 人間って恐ろしい。 そんなこと、今はどうでもいいんです!それよりビッグニュースがあるんです。 実は昨日告られたんですよね。 え?誰にかって? それがー 朱織さんなんですよ。 僕も驚いた。実は彼女もパティシエを目指してたみたいで、たまたま一緒のところでバイトしてて、今は交際中。運命の赤い糸ってほんとにあるんだって感じなんですけど。 そして今日は彼女とシフトが一緒だった。 2人でニヤニヤラブラブしながら仕事してます。 ただクリスマスでも何でもない日は暇で。こんなことが頭をよぎるんだ。 そういや、今日は桜が成仏した日なんだよな。って 今頃、何してるんだろう。 生まれ変わったかな。だいたい生まれ変わりには4年かかると言われている。 生まれ変わりがあるならばって話だけど。 それがほんとならあいつ、今6歳くらいか.........。
家族以上、知人未満な僕と君。
(前回の続きです。) 35−兄弟愛 「誕生日おめでとう。弟。姉ちゃんは颯のことが大好きだよ!」 その言葉が手紙に書いてあり、あとは僕と桜のツーショットの写真が一緒に入っていた。 誕生日、知ってたんだ。そりゃそうか。姉だもん。 そう、もうすぐなんだよね。僕の誕生日。 「何だよ、こんなの見たことないよ。知らないよ。」 家のアルバムは見たことあるけど、桜が写った写真なんて、1枚も無かった。 だから、今までは信じられなかったんだ。 でもそれは母親が捨てただけで僕は知らなかっただけなんだ。 携帯には特に何も無かった。だけど、Yohooの検索履歴には多分僕に会うために調べたであろうことしか無かった。 こんなに、愛されてたんだ、僕。 実感した。 それから僕は決意した。もう後悔はしたくない。今自分に正直にならなきゃ。 帰り道、もう暗くなった空を眺めていた朱織さんに思い切って言った。 「好きです!朱織さん。つ、付き合って下さい!」
家族以上、知人未満な僕と君。
(前回の続きです。) 34−教えてよ。 「こんにちは。叔父さん」 「こんにちは。ここに来たってことはそういうことだよね。」 「はい。全部一応伝えました。」 ここへ来る時、颯くんはずっと黙り込んでいた。何を考えているのか。それとも、何も考えられないのか。 「颯くん、こっちに来て。」 私たちにおじさんが見せたのは桜さんの携帯と手紙。私はそこに何が書いてあったのかは分からない。私がいない方がいい、と感じたからリビングで颯くんを待っていたのだ。 颯くんが部屋から出てきたとき、彼の目の周りが赤くなっていた。泣いたんだろうな。 声は聞こえなかったから、私に聞こえないように泣いたんだろう。 強がらなくてもいいのに。 辛い時は泣けばいいのに。なんて思ったけど、彼の顔にはどこか光があった。 前向きな目に見えた。それで安心した。 そこから叔父さんが出してくれたむぎ茶を飲みきり、私たちは叔父さんの家を出た。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 桜と遼が同一人物...。 それに僕の姉だった。 そんなこと言われても。今じゃ遅いのに。 本人の口から聞きたかった。そしたら納得出来たのに。 叔父さんの家へ向かう間、僕は悲しい、というより怒りの感情に支配されていた。 叔父さんの家では桜姉ちゃんの携帯と僕宛ての手紙を見せてもらった。
家族以上、知人未満な僕と君。
(前回の続きです。) 33−決意 私は向埜朱織。この前遼くんの秘密を知ってびっくりしたところなんだけど、先週の土曜日に桜さんは成仏したそうだ。初めて出会った本物の遼くんからそう聞いた。 そして彼にはこれから君たち(私と颯くん)には関わらない。と言われた。 関わらない、かぁ。 私、実は遼くんのことが好きだった、のかも知れなかった。 でもそれは遼くんに扮した桜さんで。 冴えない気持ちが続いたからか今日、この3人で遊ぶ日までずっと颯くんには何も言えなかった。 何か聞かれたら何で答えようと思うと言葉が出なかった。 でもそろそろ遼くんと桜さんのこと、言わなきゃ。 今日、遼くんは来ない、もう君の待つ人は居ないって言わなきゃいけないのに。 勇気がでない。でも... 「朱織さん、何か知ってる?」 この言葉を聞いた瞬間、やっぱり言わなきゃいけないよね、と思った。 「実はね、颯くん。遼くんは来ないの。もう一生...」 「えっ...」 そこからは辛かった。一連のことを全て話し、叔父さんの住所まで伝えた。 颯くんはどう思っただろう。 「確かに、あの時も遼は何かを言おうとしてた。僕の家を知ってるのもおかしかった。 考えてみれば気づくチャンスは沢山あった。でも、僕は気づいてなかった。いや薄々違和感は感じてたけど知らないふりをしてた。」 そのあと長い沈黙が続いた。 彼は自分に起きた出来事を一つ一つ振り返り、後悔しているように見えた。 何をしてあげたらいいんだろう。 私も考えた。その結論がこれ。 「颯くん!叔父さん家に行こ!!」
家族以上、知人未満な僕と君。
(前回の続きです。) 32−違和感① 一昨日は楽しかったなぁ。 桜って意外と面白いやつだよな。 初めは2人で買い物だなんて、と否定的だったが、案外いいな。また遊びたい。 ちなみに、今週は遼と朱織さんと3人で遊ぶ予定。 僕の熱で延期になってしまったからなぁ。やっとって感じ。 最近ほんとに充実してるよ。 今日も少し高いテンションで学校へと向かう。 朝、教室に入り、おはようという。もちろん遼に。 「おはようございます。」 え。敬語?いつもなら『風邪引くとか何してんだよ!心配したじゃねーか!』みたいな感じなのに。 なんかよそよそしいなぁ。ドッキリかなんかか? それとも気に食わないことしたかな。僕。 とりあえず今日はそっとしておくことにした。 それからといい、ぼくと遼と朱織さんが今までみたいに仲良く話すことは無かった。 やっぱりドッキリなんかじゃなくて、避けてる。そんなの鈍感な僕にだって分かった。 朱織さんは今まで通りの態度で接している、つもりだろう。でも分かる、何かかくしてるんだよ。 どうしてだろう。 そんな疑問を抱えながら迎えた土曜日。 先週は桜と待ち合わせしたななんて振り返りながら2人を待つ。 「おはよう!遅れてごめんねぇー颯くん。」 「いや、全然大丈夫だよ。」 そう話してからかれこれもう1時間。遼を待ち続けている。 遅いなぁ。 「ねぇ朱織さん、何か知ってる?」
家族以上、知人未満な僕と君。
(前回の続きです。) 31−行こう。 あの後俺は家へと帰り、自分の部屋で横になっていた。 俺と桜さん(霊体)が出会い、計画を交わしてから昼間、つまり学校の時間はこの体は桜さんのもの、そして家では俺に戻るという生活だった。 その日その日にあったことは、1冊の交換ノートを通して伝えあっていた。 彼女が俺の体を使う時、俺は霊体になる。 自由に彷徨えるのだ。つまり透明人間。 彼女が俺の体を使い始めて間もない頃は彼女のことが心配で、よく学校に覗き込んでいたものだ。 彼女のせいなのかおかげなのかは分からないが、俺はすっかり陰キャから陽キャ転生を果たしていた。 随分と楽しそうだった。 俺もそこで一緒に笑いたいだなんてしばしば思っていたものだ。 彼ら彼女らが談笑しているのを見て羨む自分に呆れて商店街をさまよっている間にも、それは感じた。 体がないだけ。ただそれだけなのに、挨拶もして貰えない、自転車にも轢かれる、美味しいご飯も食べられないし頼めない。 だからかな。正直羨ましかった。昔の自分が。 生きていること、体がある事のありがたさをしみじみと感じたのだ。 交換ノートにはいつも楽しそうな俺のことが綴られていた。そして ありがとう、と毎日最後に記されているのだ。 これから俺はどうやって学校生活を送ったらいいんだろう。桜さんみたいに振る舞えない。いっそずーっと憑依してて貰って良かったのに… どうしたらいいんだろう。 ふと交換ノートを開く。 今日の朝に書いたページがあった。そこには 「ありがとう」 ただ一言だけ。その字は丁寧で綺麗で。 何故か涙がこぼれてきた。 どういう流れで貰ったかは分からないけど、きのうなぜか手に持っていたスイートピーの花束がノートの右側にあった。 行こう、彼女のお墓へ。この花束を持って。
家族以上、知人未満な僕と君。
(前回の続きです。) 30−何で? えっ……戻ってる。 いま外なのに。なんで俺が出てきてるんだ? 成仏の期限は明日のはず。 ノートであんなにカウントしてたんだから、間違ってないはずだ。 俺は松野遼。本人だ。なぜか手には花束が。 一体どういうことなんだ! 振り返るとあいつがいた。 あの颯とか言うやつ。桜さんの弟だったか。 なんかとても楽しそうだ。けど今日は桜さんとお出かけじゃなかったのか……? あ。 すべてが分かった。 あぁ。そうか。良かった。 満たされたんだな。あの人の欠けた感情が。 無事成仏できたんだ。 ふと、今自分が生きてることについて考える。 今まで俺は誰かを幸せに出来ていたのかな。 もういいかと捨てかかったその体はあの人を 少なからず1人の魂を幸せにした。 俺のしたことは間違ってたかもしれない。 だけど、生きてて良かったと思えたのは、今日が初めてだ。
家族以上、知人未満な僕と君。
(前回の続きです。) 29−きっとまた咲けるはず。 「階段でジャンケンするやつ??別にいいけど。」 「そうそう!罰ゲーム付きで!」 「罰ゲームっ?!何するの?」 「勝った方が負けた方になんでも質問する!!」 「...よし、そのゲーム引き受けてやろうじゃないか!」 「本当!?じゃあ早速!」 最初はグージャンケンポン!... こうして私の勝手な提案で始まったグリコゲームだったのだが、期待に反して私があっさり勝ってしまった。 「ぎゃぁぁ負けたぁ」 「瞬殺じゃん、弱いね颯。」 「そんなことないし、もっかいするか??」 「いや颯が勝てるまでやらされそうだからやめとくよ。」 「えぇぇ。で、何なんだ?質問」 あ、考えてなかった。ただただできるだけ長いこと弟の隣にいたかったがために焦って提案したから。どうしようかな。 「うーん...それじゃ颯にとって私ってどんな存在なの?」 知人?友人?謎人間?お節介な人?それとも...? 「...そうだな。ただの知り合いではないかな。でも、友人でもない。どちらかと言えば...家族?」 家族。たった3文字なんだ。 だけど、だけどさ。 違うじゃん。 そんな、そんなこと言われたらさ.. 今までで1番言って欲しかった。 やっと面と向かって言って貰えた。 だから、嬉しいはずなのに。何故か悔しい。 視界が揺れる。あ、涙だ。 今じゃない。今泣いちゃダメだ。 元気な桜として振る舞わなきゃ。 「そうなんだ。意外。じゃあ私は颯の」 お姉ちゃんだね。そう言いかけた。 「お姉ちゃんだね。とか言わないよね!?桜は妹だよ。妹!い!も!う!と!!」 妹!?歳もこんなに離れてるって言うのに。 「なーにが妹よ!!私が姉でしょ?!歳も、身長...」 あら。身長はいま遼だから低いのか。 「え!?身長は僕の方が高いよね。だから僕が兄な!」 「ではさらばだ!妹よ。またな!」 そうだ。そんな会話をしているともう曲がり角へ。姉だったら、一緒に帰れるのになぁ。 ここに来てまたな、の言葉の重さに気づく。 いま、私はこの言葉に返せない。 また、はもう無いからな。今日で最後、これで本当に最期なんだよ。 「じゃあね、元気でね。またいつか〜!」 考えた末の言葉。また、は無理。 でも生まれ変わりがもしあるならばいつか、はあるかもしれない。 またいつか、その日が来るまでさようなら。 颯。いや世界一好きな弟!!