蓮と芙蓉
18 件の小説蓮と芙蓉
名前が定まらん 性別はありません。現実でxジェンダーだと分かっています。全体的にちょい腐です。(時々ちゃんと腐) 絵描きます。アイコンは手描き。気が向いたら表紙とかも描きます。主に表紙は自分が撮った写真なのでフリ素とかはあんまり使いません。 アニメとか漫画とかゲーム好きなので二次創作書きたいけどほぼ書きません。(書けない)だいたいうちの子小説と詩を書きます。絶対ハッピーエンドの小説書きます。 テスト期間とかだと投稿減ります。 連載系は毎回3000文字くらいいっちゃうと思います。長いけどお付き合い下さい。でも乗らない時は2000位かも。 そこまでショッキングな内容はないと思います。過度出なくても注意を書く際があります。性行為表現無し。(匂わせは有り)ただし多少の暴力行為有り。ご了承ください。
林檎と兎
こんばんは愛する人よ あいしてる。 そう言って こんにちは愛された人よ僕もだよ。そう言った ああ、なんて憂さ晴らし! ハイハイこちら 終点までの片道切符 沸点低いね堅物まみれ?魔人呼び出し地獄行き! どんどん落ちてく 赤から黒へ豹変 荒天 合法セーフ? 愛し愛され林檎かじってほらほら跳ねろよ子兎共 皆皆誰ぞ敵 怖い怖いはご覧なさい ほら醜い蓋して鍵して と じ こ め て しまって 林檎売りの泡沫少年手伸ばしかき消し ああ、救いがねぇぜ!走って叫んで何処までも 届かない パンドラの箱 仮面かぶりは何方様(どちらさま)知らん知らんは辞書開け ほら周知 塗って書いて か き な お し て し まっ て 愛想振りまく天然少年探し求めて ああ、愛しかねぇぜ!笑って泣いても どんなにも変わらないね パルメニデス
灯火 お題
ゆらゆらゆらゆらゆらゆらゆらゆらゆらゆらゆらゆら。 火が辺りを囲み踊り狂う。 「これは君の心の様だね。」 「…………………。」 赤く揺れる塊を見つめていつかの青年が小さな少年に言った。 「だってこの炎は、 「やめろ。」 「……なぜ?怖いから?はははっ!そうだったら滑稽だなぁ!」 少年の肩を叩きながら青年は腹を抱えて笑い出した。 「……。」 少年が俯くと青年は顔から全ての感情を落とし、鋭い空気の中囁いた。 「存分に苦しんでね? この、殺人鬼が。」 白い天井。慣れない薬の匂い。微かに痛む腕。軽く縛られた様に張ったな布団。 「ここは…。?」 ゆっくりと体を起こす。四方をカーテンで包まれていた。腕には小さな正方形の絆創膏が貼られていてそこから小さなチューブがででいる。そのチューブはベット横の棒に吊るされた透明な液体の入った袋につながっている。中間地点の針から一滴一滴がゆっくりと膨らんで落ちる。 あぁ、“また”病院か。 ナースコールを少し強く押す。しばらくするとナースが一人カーテンを勢いよく開けた。俺を頭から足までジラリとみてにっこりと仮面をつけた。 「良かった。起きられたんですね。ご自身の名前、年齢は言えますか?」 「……。尼成…燎火(あまなり りょうか)…。22歳。」 スラスラとでは無いが、いつもの単語を吐いた。 「意識もはっきりしていますね。よかったです。何故ここにいるのかは言えますか?」 「……倒れたから。」 「何処でですか?」 まるで尋問の様だと、毎回思う。 「…ショッピングモール。」 ナースは満足した様に顔をあげた。 何回目だろう。こうやって病院から出てくるのは。いつもいつも、俺は倒れるんだ。そして決まって同じ夢をみる。 ー殺人鬼が。ー 「最悪だ。」 「何がですか?」 いきなり現れた見知らぬ声に俺はずっこけた。コントみたいに。 「わぁ、大丈夫ですか?ふふっコントみたいっ!」 ピンクと白に統一されたフリフリのスカート服。ツインテールの金髪。ハートが中で揺れるピンクの瞳。恐ろしいほどに整った顔。 どうみても日本人じゃねぇ…。 「だ、だれですか…。」 「なんで最悪なんですか?」 無視?まじ?怖っ。 「だってこんなに空は晴れてるし!猫が可愛いし!今日は最高の日でしょ!?」 「え、いや、……は?」 誰!?わけわかんねぇ! 続く…………?(多分続かない…人気あったら続くかも?)
選択
二択があった。 だけどそれは私には決められることができなかった。 どうしてみんな分けたがるのだろうか。そんなこと決めても意味なんてなんじゃないだろうか。そう思うことが多かった。 「かわいいね〜。」 「大人びてるってよく言われない?」 「イケメンっ!スパダリかよ!!」 「かっけぇっ笑」 昔から、親や親族には可愛がられていた。ふわふわな洋服に、可愛い雑貨、ピンクを中心にした家具。私は体に合った物を与えられてきた。そして体に合った言葉も貰ってきた。 そこに違和感はなかった。 初めて違和感を感じた時は中学校二年の時。初めて自分がカッコいいと言われた。背が他よりも高かったからだろう、同級生にそう言われた。 胸がざわついた。 かっこいい。私が?かっこいい? なんだろう。 この感情がなんなのかわからなかった。ただひたすらに胸が熱くなって、足がついていないみたいだった。 「黒がいい。」 「えー?黒は似合わないよ。それよりこれの方がかわいいよ。ほらっ」 「…そうだね。」 「これ着たい。」 「いやいや、それは大人っぽすぎるよ。そっちよりこれの方が可愛らしいんじゃないかな?うん。こっちの方が似合うよ。」 「そうだね。」 最早着せ替え人形だ。 私は選択肢がない。 着たかった服はことごとく似合わないと言われ買ってもらえなかった。着たい服と似合う服は=なのだろうか。着たいから着ることは叶わないのだろうか。似合っていないと買うことすら許されないのだろうか。 親の愛情はきっと正しい。子により合った服を着せたい。「着させてあげたい。」その感情は正しい。そして似合わない服を着ることで周りから浮く事を避けることも正しいことなのだろう。 別にいいんだけど。 可愛いものは好きだよ。でもかっこいいものも好きだよ。結構どっちもすき。選べなんて言わないでね。 私=スカートなのが気に食わない。私だってズボンを履いて黒で統一した服を着たい。 友達を、男女と思った事がない。一人一人を区別しているわけではなかった。ただ、私に近づいてくる人が「女」が多かっただけで、友達の性別の割合なんて自分の性別に関係なんてない。 私は初めての恋人ができた。彼から告白された。彼といることが別に苦痛でなかったから、付き合った。お互い高校が別になり合える機会は減った。それでもインターネットでの連絡は欠かさなかった。しっかり私は彼が好きだった。 高校一年の初夏。私は考えてしまった。 この子と付き合いたい。 この子の頬に手を当てたい。この小さい体を抱きしめたい。少し乱れた髪を撫でて優しく解いてあげたい。体温を分かち合いたい。 今思えば、それは恋だったんだろう。でも私はその感情を過度な友情というレッテルで括り、見事に変態の友達役をら演じた。 「〇〇ー!すき♡今日もかわいいね!!ほっぺ触っていい?」 「やめろ変態っ。」 適当にあしらわれる。ハグを強要しすごい顔で拒否され、不意に頬を突き手を叩かれて。友達間での悪戯、に見えていたのだろうか。それでも私は満足だった。だってそれでも私たちでは仲良しでいれたから。この関係を崩したくない。それに、私には恋人がいるのだ。その感情は許されない。 「〇〇ー。」 「なになに。」 「すき。」 「……。」 私はいつもの流れでこの言葉を吐いた。そこに偽りはなかった。そしていつも通り、変態だとか、引いた仕草や、罵倒をされるのを待っていた。 「私のこと好き?」 「すきだよ。」 反射だった。それが私の中でいつもの言葉だったのかと聞かれれば、なんともいえなかった。 それよりもその質問に胸が締め付けられた様に思った。 これは冗談。冗談を言っているだけ。それにしては、声は淡々としていた。怖かった。この関係は、とても心地がいい。それが壊れるのが怖い。 はじめに好きになったのが男だっただけ。 俺は、 私は、 自分は、 どっちの、選択も取れない。 自分が少数派の人間だと自覚したのは本当に最近のことだった。 誰にも言っていない。 言う必要なんてないだろ。 それは自分が決めることだから。 誰にも、言わない。 なんて言えばいいのかすら、分からない。 彼の、ことが今でもすき。今でも付き合っている。 あの子の事もすき。きっと、今のままの関係以上を私は望んでいる。 どうしたらいいんだろう。 男でも女でもない自分は、なんなのだろうか。 選べない。 選びたくない。 それを選ぶと言うことは二人を選ぶことに繋がってしまいそうだから。 怖い。 これは、自分の話。誰でもない、自分の話。 愚かで、 救いを殺してきた、 罪を被る様な、 残酷で、 最悪な、 俺、 私、 自分の、 選択だから。、
紅い衝動
焼いたばかりトーストを齧りながらケイは目の前のシクロロに目をやる。 「何だ。」 見ていたことがバレていたことにケイはトーストが喉に刺さり咽せる。 「げほっ!げほっ!!…あ、いえ、なんでもないです。」 「ふーん。」 実のところケイはシクロロに謎の共感を感じていた。見たところなにも共通点は見当たらない。しかしケイはシクロロに対して何か自分に似ている、そう感じたのだ。だが、まだケイはその感情に気づいていない。ただただシクロロを見ていると胸の辺りがザワザワと波を立てるだけで言葉にはならず体の内側に打たれて波はひいていった。 シクロロに視線がバレてしまいどこを目をやるか迷った挙句上、右、左、また上…。最終的にはトーストに目を落としまた齧る。そんな事を幾度か繰り返していると、飲み干したコップをテーブルにコトンと置いたシクロロがケイに声をかけた。 「そうだ、ケイ。食べ終わったら着替えろ。」 「え?」 コップの淵には焦茶色の跡がついていた。コーヒーかココアだろうかと選択肢が出てきたが、置いたと同時にふわりと甘い香りが鼻を掠めたためココアだと確信した。 「着替えるって、何にですか?」 「制服。いつまでもそのワイシャツとズボンじゃ駄目だろ。」 ケイは服に目を向けた。シクロロや他の社員を見る限り好きな服を着ている様に見えた。そしてケイの服もワイシャツなのだから一応制服としては役割を果たしているのではと思ったがシクロロ的には違うらしい。ケイはちょうど残り一口のトーストをポイと口に放り込み、お茶の入ったコップを流し込み、朝食を済ませた。キッチンに食器を置き、洗い終わった所で後ろからシミラに飛びつかれケイは素っ頓狂な声をあげた。 「ぬぅおぁ!!?」 「あははは!!へんなこえーーー!!ねえねえ、ケイはどんなせーふくきるのぉ?たのしみだね!おれもついていっていい???いいよねー!!ふふふ!!」 半強制的にシミラがついてくるらしい。シクロロが二人を見てうんざりという顔をして催促した。 「…来るなら早く来い。」 「はーーーーいっ!」 キッチンにかけてあるタオルで手を拭きケイはシクロロとシミラの方へかけよる。 「何処にいくんですか?」 「一階。大体仕事に関わる事は一階でやるし、一階に置いてある。」 「なるほど。」 3人で一回に続く階段を降りた。降りる途中、前にいるシクロロの背中にシミラが飛びついた。ケイは降りの階段で前の人に飛びつくなんて危な過ぎると一瞬背筋ぎ凍ったが、いつもしているのかシクロロはそのままシミラを背負って降りていく。それにしても声もかけずに飛び乗ったんだから蹌踉けくらいするかと思ったが背負うために姿勢を少し前にするだけでバランスを崩した様にも耐えた様にも見えなかった。シミラはそんなに軽いのだろうか。いや単にシクロロの体幹が安定しているだけなのかもしれない。ケイは2人を見ていて幸せな気分になった。なんだか2人には立ち入れない様な特別な空間だった。親子でも友人でもない、何か別のものの様に見えた。 一階に着くとオフィスになっていた。白と黒に統一されたよくある会社だった。すりガラスの玄関のすぐ横に棚がありおそらくそこが受付兼書類置き場になっていた。受付近くには黒い革ソファー二つにシックなローテーブルがはさまれている。そこからまた低めの書類置き用の棚を挟んだ場所に幾つかの書類やパソコン、私物の様な物が乱雑に置かれた片袖机や綺麗に整頓された片袖机が置いてある。一番奥には黒のエグゼクティブ机が置いてある。その上にも書類が置いてありその机だけ書類の数は尋常ではなかった。最早パソコンなど置く場所がないほど詰め尽くされていた。 「奥。」 シクロロがシミラを再度背負いつつ顎で部屋の一番奥にある扉を示した。ケイはその扉に近づきそっと扉を開ける。 「えっ?」 階段だった。地下へと続く様な先が見えない暗い階段。両側はコンクリートの壁に挟まれておりそれが一層不気味さと圧迫感を極めていた。 「地下…ですか?」 そこから流れてくるどす黒い重たく鋭いほど冷空気はケイの足を止めるのには容易かった。そんなケイを横目にシミラを背負ったシクロロが階段を躊躇なく降りていく。気づけばシミラはシクロロの背中で気持ちよさそうに寝ていた。やはり子供だ、ケイはシミラを愛おしく思ったと同時に××を思い出し胸が苦しくなるのを感じた。めを 「何してる。行くぞ。」 「あっ、はい!」 壁にポツポツとある仄かな灯りを頼りに階段を降りた。二分ほど降りると階段が終わり、平坦な道が見えた。すると先の見えない廊下が現れた。一体何処へ向かっているのだろうかとケイは恐れた。なんせここは林檎なのだ。地下といえば監禁、拷問………。ケイは背筋を凍らせたがシクロロに着いていくしかなかった。 またしばらく薄暗い廊下を歩くと金庫の様な扉が道を塞いでいた。仄かな灯りに照らされて扉が銀色に怪しく光った。 シクロロは背中ですやすやと眠るシミラを揺らし無言で起こした。 「……ぅうん。…っぃたぁ?」 目を擦りながら眠たそうにシミラは背中から滑り降りた。シミラは半目のままシクロロのニットの裾を握り扉が開くのを待っていた。それを横目にシクロロは扉の端にある緑色で書かれた0から9までのキーボードに指を当て1を6回連打した。 「あ、ありきたりすぎません?パスワード、ですよね?」 「違う。」 「え?」 「パスワードと見せかけて指紋認証なんだよ。6回押すことで指紋を読み取る仕組みになっている。」 「なるほど…。それ、俺に教えちゃっていいんですか?」 扉が音を立ててゆっくりと開き始めた。それと同時にシクロロが不思議そうにこちらをみた。 「何言ってる。お前はこれから此処に何度も来ることになるんだ。むしろ覚えておけ。」 ケイはその言葉に何故か目頭が熱くなるのを感じた。 そうか、この人は、俺を本当に社員として、扱うつもりなんだ。 ケイは今までのシクロロに対する疑心を恥じた。同時にこの人に尽くそうと思った。あんなゴミ溜めから自分を摘み出してくれた事、そして居場所を与えてくれた、そしてこの人のおかげで自分は今××に再び会うことに希望を持てているんだ。ケイは静かに姿勢を正した。 扉が開き切る前に騒がしい声が中から漏れた。楽しんでいるような人々の声でケイにはこんな恐ろしい道のりの先にあるのがこの陽気な声である事に違和感を覚えた。 扉が開き切る。そこは、 「ここって…?」 商店街の様だった。大きな道を挟んでいくつもの店が左右に並んでいる。何人もの人が店に立ち寄り、話をし、笑い合っている。ケイはその光景に『平和』という文字が頭に浮かんだ。林檎には決して存在しない言葉だと思っていた。それが、今、目の前にある。 「おれいつものとこいってくるねー!!」 いつの間にか目をぱっちり覚ましたシミラが商店街の先に走って行った。シクロロはそれを無言で見送るとケイの方をチラリと向いた。 「見ての通り。商店街。」 「な、なるほど。」 唖然と賑わう商店街の入り口で立っていると、二人の登場に気付いた人々が叫んだ。 「ロロ!!!!」 「うわー!!!本当だ!ロロ!!」 「久しぶりやなぁ!!いつぶり!?」 シクロロに大人数からの声の波が押し寄せる。ところでケイはその人々の勢いと賑わいで前後も分からないほどに混乱の渦に飲まれていた。
秘密 腐
誰が何を言っているのか分からない。それでも五月蝿いということは理解できる。こんな小さい空間に三十何人も詰め込んで仲良くしろだなんて大人は頭がおかしい。たまたま同じ年に生まれて、たまたま同じ地区で産まれただけなのに何故仲良くしないといけないんだ。 そういう捻くれた考えを抱えて俺は机に突っ伏した。腕に顔を詰めると先程まで明るすぎた視界が一気に暗闇に覆われる。それでも耳障りなざわつきは消えない。 「おはよ。三枝木(さえき)。」 細い指が突っ伏した俺に耳を優しく掠めた。その触り方に背筋が震える。 「ーーっ!!?おいっ!」 咄嗟に顔を上げ触られた場所を抑える。前の席に座って腹を抱えて笑う青年に俺は苛立ちを露わにした。 「ワロタ。」 「黙れ陽キャが。」 「ねぇ〜!英語のワークした?」 「………。」 「もしかしてしてねーーの??」 会話を遮る様に俯いた俺の顔を覗き込む様に顔を近づけてくる無舵(むかじ)に更なる怒りを覚えた。 「五月蝿い。話しかけるな!」 勢いよく席を立ち教室から出た。 「あっ、まてよ!三枝木!」 微かに聞こえた声に耳を閉じ、トイレへと急いだ。流れる様に個室に入りスライド式の鍵をかけた。扉を背につけ息を荒げる。 「はーーっ。はーーっ。」 全身がどくどく言って揺らされているみたいだった。全身が熱かった。 「なんで人前で話しかけてくんだよ!あの阿保!」 俺たちは 付き合ってる。 「お前!あんだけ人前では話しかけるなって言ってるだろ!!」 「わーーはいはい。ゴメンナサーイ。」 「思ってもないこと言うなよっ。」 帰り道。誰もいないことを確認した上で2人は横に並んで家路に着いていた。 三枝木は耳を手で塞いで棒読みをする無舵に一蹴り入れようと脚を出したがあと少しの所で止め、つつく容量でそっと当てた。 「ふふっ。」 「なんだよっ!」 「いや、そーいうところ好きだよ。」 「は?」 「三枝木。」 今日の朝と同じ手つきで無舵は三枝木の腰に手を回した。それに三枝木は肩を一瞬上げたが少し俯いただけで、朝のように怒りはしなかった。 「…んだよ。」 「今日家来る?」 無舵は悪戯っぽく首を傾げてみせた。 「………ん。」 三枝木は頬を林檎のように染めて小さく頷いた。それを見た無舵は腰に回した手をより強く引き寄せた。その引き寄せた勢いと共に三枝木はこてんと無舵の肩に頭を寄せた。
雨夢
夢がある 土砂降りの中で踊ってみたい 主人公みたいに自由に 誰のことも気にしないで 自分を曝け出したい 打ち付ける雨は冷たくて でも気持ちよくて 雨で辺りは白くて 雨が強く地面に叩きつく音しか聞こえなくて 私だけの時間 どれだけ濡れても怒られない 誰からも見られていない なんの皮もいらない 雨の中で上を向いて 笑って びしょ濡れになって まわって ステップを踏んで 飛んで 雨と踊りたい 誰の目も気にしないで 踊っていたい ありのままの姿の 夢がある
夕食の頭取り
「ねえ俺のこと好き?」 「は?何言ってんの。きもい!」 「ええぇ!!俺たち付き合ってんのにそんなこと言うの!?!?」 「や、急に言うからさ。」 「しょーがないなぁ!次からは予告しておくよ。」 「くっ…ふふ。」 「んん???笑ってんの?あーごめんごめんおもしろすぎたね?」 「仕方なく笑っただけよ。阿保。」 「でもでも!絶対笑ってたよ!!肩揺らして口角上げてさ!」 「ねぇ、私のことすき?」 2人は無言で箸を取り冷めた夕食に手をつけた。 [後日。男女2人の死体が発見されました。死因は毒殺でした。]
あいうえお
あ あいしてる い いかれてる う うらやましい え えがお お おおげさな あいうえお いじょうあいうえお ん
いこう
微かに揺れる席に座り、線状に伸びて原型を留められない景色の手前に現れた左右反対の自分が挑発的に問いかけてくる。 「本当に行くのかい?君にそんな勇気があったなんて意外だな。」 僕はその挑発に乗らず受け流す。 「あ、そ。自分のことを知らないなんて出来損ないだな。」 意地悪そうに笑う。僕の僕。 「あはは。本物が出来損ないなのに俺が出来損ないじゃない訳ないだろ?相変わらず阿保だね!」 ガタッと揺れる。そして空気が抜けるような音と共に音声が流れる。ふと、外を見ると緑豊かな景色がハッキリと見えていた。 「〇〇海岸前、〇〇海岸前です。お足元にお気をつけ下さい。」 僕は嘲笑う僕に別れを告げ席を立つ。 丁寧に一段づつ降りる。 足が地面につくと同時に海の風が僕の髪を揺らした。たなびく髪は悪戯に踊り僕の首をくすぐる。 大きく息を吸った。 身体中に海の香りが充満し満たされていくそうに思えた。僕に足りないものを全て埋めていく様に波が寄せる砂浜に足を踏み入れた。 見た時からウズウズしていた足を拘束から解放する。足裏に砂が張り付いていく感触が心地よい。拘束具をそこらになぜ捨て冷たい海に一歩入った。 波が揺れる。僕は水面をじっとみつめる。 そこに僕はいない。 次のバスが来るでに終わらせよう。
ワタシ
殴る 殴る 蹴る 唸る 泣く 嗚咽 殴る 泣く 泣く 蹴る 泣く 蹴る 殴る 殴る 今日も私は元気 そうして傷を沢山増やす 私は元気 元気です あなたが知らない所で 傷は増える 見えないわ 見せないわ これは 私の傷 私の痛み 私の苦悩 私のモノ 全部全部 私 傷だらけのカラダ 誰も知らない 私も知らない 私だけの 嘆き