はの

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はの

塵と海月。 多分恋愛系ばっか書いてる人 開始 2023/09/13

海豹 after

俺を育ててくれた恩人夫婦に久しぶりに会いに行った。とにかく優しく迎え入れてくれたあの人たちはいま元気にしているだろうか。 そんなことを考えながらBGMにゆったりとした音楽を流す。海と森の境にあるあの家は、いつまで経ってものどかなままだった。 チャイムを鳴らすと反応がなく、試しにドアを開けると鍵がしまっていなかった。全く無用心な夫婦だと思いながら家の中を探して回ると、二人はリビングのソファーベッドでレコードを垂れ流したまま手を繋いで寝ていた。 二人がいつまでもバカップルなのは分かっているつもりだったが、ここまで呑気なものかと呆れかえってしまった。 同時に起こしてびっくりさせてやろうと思い繋いでいる手に触れると、こちらが驚かされた。 手が冷たい。 外に少しいると汗ばむような季節なのに。 目の前が一気に暗くなった。生きることや人を信じることに絶望を感じていた俺をここまで来させてくれたのはあんた達だろうが。挨拶もなしに逝かないでくれ。まだ感謝しきれてないんだ。そんな言葉ばかりが頭を蹂躙し、俺の視界をも隠していく。 その後どうしたかはよく覚えていない。気付いたら二人の穏やかな寝顔が見える中、煩悩の数を手にぶら下げていた。どうやら他の養子である(兄貴として扱っている)人が色々とやってくれたらしい。 踏みにじられまくった荒野の頭でも理解できたのは、二人の死因は非常に稀である60代での老衰死らしい。 なぁ、最期に笑ってたんならさ、教えてくれよ。ずっと望んでた走馬灯は見れたか?今、どこにいる?俺はさ、あんたらが好きだった海と同じ色の空の下でその答えばかりを探してるんだ。 あとがき このお話を最後まで読んでいただきありがとうございました。珍しく熱が出て、音楽聞きながら寝ようとして気付いたら勢いで書いてました。 やっぱり勢いって大事ですね。アザラシが水になっていくっていう終わり方だけを想像してたんですが、何とか脱線せずに終われてよかったかな?と思います。 気付けば受験生になって、今年の夏本格的に勉強に取り組まなきゃいけないなーとは思いつつ、中学生以下の小説コンクール的なものに初めて応募してみたりしようか悩んでいるところです。昨日ふと思いついたことなので実現するかは不明ですが、もし背中を押してくれるようなあたたかくてちょーーーーー優しい天使のような方がいましたらまた応援などしていただけると幸いです。 改めまして、読んでいただきありがとうございました!

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海豹

久しぶりに二人でお昼寝をしたの。その時はなんだか全てがあたたかくて、心地よかった。初夏も始まるって言うのに。二人で出かけても手なんて繋ぐことがなかったから、いつぶりかに繋いだ大好きな人の手は、やっぱり若い頃よりやわらかいようで硬くて、でも私のずっと愛し続けてきた手だった。 今が夢なのか現実なのかは分からないけど、さっきこの前ニュースで取り上げられてた山に暮らしながら作品をつくる夫婦の方と出会ったの。でも可笑しいの。目の前には水槽があって、その夫婦はシジュウカラの姿をしていたわ。なぜ見た瞬間にあの夫婦だと理解できたのかは未だにわかってない。きっと直感だわ。しかもね、私たちはアザラシだったのよ。シジュウカラとアザラシが水槽の前にいるってどんな状況?って戸惑う夫を前に笑い転げてしまって、危うく水槽に落ちそうだった。さすがに危機感を持ったわ。 さらにおかしいのがね、言葉を口から発しなくともそのご夫婦と言いたいことが通じあえて、謎の首輪?みたいなものを一緒に作ってみてと言われたの。材料なんてどこにもないのに。そう二人で顔を合わせてるとね、いつの間にかそこに幼い子が拾ってきたような貝殻やらきらきらしたものがいくつか落ちていたの。それを二人で、あーでもないこーでもないとか言いながら笑い合える時間がとても幸せだったわ。走馬灯の最後はあれがいいなぁ。 そうそう。できた首輪はね、あちらのお二人が器用に私たちの首にはめてくれて、そうかと思えばクラゲになって私たちより先に水槽に飛び込んだの。『おいで』って 最初見たときからどこが引っかかるような違和感を覚えてた水槽だったから少し怖かったけど、夫と二人で飛び込んだわ。するとね、どんどんクラゲさんたちが降りていくの。それを見ていると引っ張られるように私たちも降りていて、底に着いてしまったわ。 ふと横にいたクラゲさんたちを見ると、さらにぷるぷるした水のかたまりみたいになって最期は底に溶けていったの。あれ?と思ったときにはもう、私たちも水になろうとしてた。なんだか怖くて、二人で手を繋いで、目を見ながら水になってしまったわ。最後まであの人は私の大好きな人だった。

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海豹

日曜日の午後、わたしの趣味であるレコードを垂れ流しながら、二人で紅茶を飲んだり外を眺めたりしているときだった。 「走馬灯が選べるなら、あなたのことがいいな。死んだあとは二人で静かに海の砂にでもなれたらいい。」 ぽつりと横で呟くものだから少し驚きはしたが、急に何を言うかと耳を疑うわけではなかった。 わたし達が出会ったのは海だった。海で遊ぶことが好きな訳ではなく、『海』そのものが好きだった。話が合うと分かってからは海の色んな話をたくさんした。ときには、夜から朝まで語り明かすこともあった。もちろん海に生きるものたちに憧れを抱くこともあったので、結婚してから現在に至るまでよく水族館にデートに行った。そのため、死んだら海の中でゆっくりと過ごすものになりたいというのは二人の理想だったのだ。それに、わたしは最初にも書いた通り妻を溺愛している自覚がある。だからこの発言も可愛くて仕方が無いし、わたしも走馬灯が選べるならもちろん妻とのことを選ぶ。 わたし達の老後の理想は、二人で海に関する創作物をつくり、たまに人の目につくように細々としながらも物品として販売することだ。この物価高な世の中で年金だけでやっていくのは難しいと考えているため、少しでも小遣い稼ぎになればいいなと思う。この前報道番組で取り上げられていた老夫婦は山のコテージで暮らしていて、山にあるものだけで作品をつくり続けているという取り組みを行っていた。その夫婦は自然を愛しているらしく、それに相応しいような柔らかな表情をしていた。こんな夫婦になりたいと思った。どこかの夕食の時に思い出したかのように伝えてみると、妻は目を少女のように輝かせて、 「とっても素敵ね!」 と興奮していた。可愛らしかった。 話は変わるが、わたし達には子供がいない。正確に言うと、血縁関係を持った子供を持つという判断をしなかった。ただでさえお互いのことで手いっぱいになるのにもうひとり二人と自分の子供を持つとなるととんでもない事になりかねなかったのが目に見えたからだ。そのため養護施設で引き取った子供は三人いたが、どの子も思春期真っ只中で複雑な気持ちを抱えていたであろうに、恩返しをしようとしてくれている。むしろ、わたし達のところに来てくれてこっちが感謝したいところだ。 話は逸れたが、この判断は英断だったのでは無いかと思う。病気などが関係してつくれなかったのではない。“あえて”つくらなかったのだ。 そのおかげといってはなんだが、余裕のない二人だったからこそちゃんとお互いに向き合って上手く付き合ってこれたんだと改めて考える。

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海豹

私の夫を動物に例えると、クジラだと思う。結婚35年目を迎えた今でも、出会った頃と変わらず背が高くて初対面の人じゃなくても驚かれたりはするけれど、全然そんなことはなくて、大らかでどこかあたたかい。それに好奇心旺盛なところもあって、興味があることには目を輝かして学びに行く姿勢や芯を持ち、気づけば人の懐にスっと入っている。 還暦を迎える歳のおばさんが何を惚気けているのかと思われるかもしれないけれど、私はそんな夫のことを今でも大好きなの。未だに二人で出かける時は緊張するし、服や髪型だって悩むし、いちいち夫にときめいたりしてしまう。痛いやつだって思われても仕方が無い。でも表に出すことはないんだから、ちょっとくらい乙女心を持ってたっていいじゃない? 大きな喧嘩をすることも感情的になりすぎて家出をするか迷うこともあったけれど、離婚なんて考えたことは一度もない。それに、今となってはすごく大切な思い出で、愛でるべき価値のあるものだと思うの。 さらに若い人たちからしたら面倒臭いことをいうと、夫のことをどれだけ好きなのかは分かって欲しいけど、夫のことを深く知って欲しいとは思えない。夫の良さに気付いたりするのは私だけでいいの。 いや、私だけがいいの。

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海豹

わたしの妻はアザラシに似ている。一見失礼極まりないと思う人や妻をディスっていると思う人もいるかもしれない。だが、自分ではかなり妻を溺愛しているほうだと思う。ではなぜアザラシに似ていると思うのか。それは読みながら想像してくれるとわかると思う。 わたしはアザラシが好きだ。あのなんとも言えないもちっとしたフォルムと可愛らしい顔つき。それを巧みに使いこなす愛嬌や憎めない程度の腹が立つ表情を持っていながら、肉食動物であるというギャップも兼ね備えている。そんなところが愛らしいと思う。 妻とは25歳の時に結婚して、もう35年が経った。この35年間は長いようで短かった気がする。いつまで経っても愛らしくて仕方の無い妻を見ているとすぐに年月など去ってしまう。もちろん時には言い合ったり泣かせてしまうこともあったが、離婚の文字が頭に浮かんだことは一度もない。それほど彼女を愛しているのは今読んでいる人にも理解してもらえるだろうか。 かなり面倒臭いことを言うと、どれだけ理解して欲しくても彼女を実際に見て確かめて貰うのは話が違う。この年齢で不特定多数の人に嫉妬するなんて言うのは醜い話だというのは承知の上だ。

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プロローグ

突然だが、君の目は腐っている。君とは誰か。今まさしくこの文章を追っている君のことだ。 字が読めているんだから目は腐っていない!君はいま、そう言いたげな目をしている。まあまあ、一口に腐っていると言っても色んな意味を含むが、その説明は一旦置いておこう。 人を貶しておいてなんだが、当然私の目も今は腐りきっている。だが、それも「今は」の話だ。 今から話すのは、私の目がまだ多少なりとも澄んでいて、この先生きていても腐ることはないだろうと信じて疑わなかった時の話だ。

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プロローグ

後悔って

どうして私だけできないんだろう。ってずっと思ってた。 誰よりも劣ってる自分が面白く見えた。 だから、せめて誰もやりたがらないことやって周りに近付こうとした。 別に負けることが嫌じゃなかった。 負けた方が楽な気さえした。 先生は怒るけど、今はまだそれでいっかって思ってた。 その環境から離れて考えてみたら、先生たちがどれだけ本気なのかとか、みんながどんな思いでやってたのか、少しだけ自分の中で腑に落ちた。多分 集団行動が嫌いとか言いながらも、なんだかんだみんなと一緒に頑張るのが楽しかった。 精神的な面で考えたら今の方が楽なのかもしれない。 だけど、決して全部嫌な思い出じゃないことは確かだなって思う。 こういうのって、辞めてからじゃないと考えないからこそ、正解が分かんなくなるんだよねきっと

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後悔って

どうか私で

私が恋に落ちた相手は、恋を知らない人でした。 いつも一緒に帰って、いつも一緒にお昼を食べて、何があっても一緒にいました。 帰り道、白い空気の中にいるとは思えない2人の男女を見たその子は、呑気な声で ┈好きってなんなんだろうねぇ どこか寂しそうにそう言っていました。 私は羨むようで何かに対しての感情を抱えているその横顔も、自分のペースではっきりとものを言う声や考え方も、愛おしくて仕方ありませんでした。 ですが、恋愛に疎いその子は無自覚にも人を好きにさせて、噂話が後を絶たない様子にも気付いてはいないようでした。 いやでも入ってくる噂話に私はどんどん敏感になって、自分でも嫌悪を抱くほど嫉妬の言葉が頭をよぎりました。 ━━━どうか私で恋を知って。 そう思うようになったのは、初めてその子が告白された16の冬でした。

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どうか私で

青いアネモネと夏の匂い

彼女は呟いた。聞き取れるか微妙なほどの小さな声で。 「もし私が死んでもあなたは幸せにならないでね。」 と。この言葉を僕じゃなく、事情を知らない誰かが聞けば、きっと驚くだろう。 だけど僕らはこんな物騒な言い回しでも伝え合える。そしてこれは、す彼女のただの愛情表現であると。 「そうなるくらいなら僕が死ねば良かったのに。」 お互いが求めている完璧な答え。他に何も失うものは無い僕たちは静かな部屋で2人寄り添い合う。 汗をかいた窓辺に置かれた儚げな花。頭を空っぽにして見つめる。そしてその花言葉を確認するかのように僕たちは唇を合わせた。 赤か黒か、甲高い音が遠くから聞こえてくる。いっそ2人で死んでしまおうか。 手を繋いでベランダに出る。すると微かに夏の匂いがした。暖かいけど凛としたそんな匂い。 「一緒に地獄に堕ちようね。」 彼女は言った。 「僕たち2人だけの地獄がいいな。」 最後の最期まで物騒にも聞こえる会話を交わしたあと、真っ白なワンピースと眼鏡が宙を舞った。 着地と共にワンピースは真っ赤に染まり、遠くから聞こえた音の正体は黒だった。 そんな結果は幸せそうに眠り続けている2人には知りもしないことだろう。 ところで、この心中が青いアネモネの悲しみと1部の界隈では騒がれているのは、窓辺にあったアネモネと、その日降っていた雨が理由らしい。

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青いアネモネと夏の匂い

もしもあなたと

もしもあなたと出会えたのなら、今よりずっと幸せだったっていう自信がある。 この子なんかより絶対にあなたを幸せだって言わせてみせる。 味のしないガムみたいになるほど観た映画。 だけど毎回同じところで全く同じ感情を抱く。 わかってる。 もっと早く出会えていたら私はこんな風になってなかった。 裸になって鏡を見る。体に模様が出来てていつも笑っちゃう。 これがずっと恋煩いのような思いを抱えている相手にやられたなんて、情けなさすぎて怒りすら覚える。 出会った時代が悪かった。そう、全部時代のせい。 じゃないとこんなに愛していながら大っ嫌いなことは無い。 そうだよね、 お父さん。

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もしもあなたと