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22 件の小説どうか私で
私が恋に落ちた相手は、恋を知らない人でした。 いつも一緒に帰って、いつも一緒にお昼を食べて、何があっても一緒にいました。 帰り道、白い空気の中にいるとは思えない2人の男女を見たその子は、呑気な声で ┈好きってなんなんだろうねぇ どこか寂しそうにそう言っていました。 私は羨むようで何かに対しての感情を抱えているその横顔も、自分のペースではっきりとものを言う声や考え方も、愛おしくて仕方ありませんでした。 ですが、恋愛に疎いその子は無自覚にも人を好きにさせて、噂話が後を絶たない様子にも気付いてはいないようでした。 いやでも入ってくる噂話に私はどんどん敏感になって、自分でも嫌悪を抱くほど嫉妬の言葉が頭をよぎりました。 ━━━どうか私で恋を知って。 そう思うようになったのは、初めてその子が告白された16の冬でした。
青いアネモネと夏の匂い
彼女は呟いた。聞き取れるか微妙なほどの小さな声で。 「もし私が死んでもあなたは幸せにならないでね。」 と。この言葉を僕じゃなく、事情を知らない誰かが聞けば、きっと驚くだろう。 だけど僕らはこんな物騒な言い回しでも伝え合える。そしてこれは、す彼女のただの愛情表現であると。 「そうなるくらいなら僕が死ねば良かったのに。」 お互いが求めている完璧な答え。他に何も失うものは無い僕たちは静かな部屋で2人寄り添い合う。 汗をかいた窓辺に置かれた儚げな花。頭を空っぽにして見つめる。そしてその花言葉を確認するかのように僕たちは唇を合わせた。 赤か黒か、甲高い音が遠くから聞こえてくる。いっそ2人で死んでしまおうか。 手を繋いでベランダに出る。すると微かに夏の匂いがした。暖かいけど凛としたそんな匂い。 「一緒に地獄に堕ちようね。」 彼女は言った。 「僕たち2人だけの地獄がいいな。」 最後の最期まで物騒にも聞こえる会話を交わしたあと、真っ白なワンピースと眼鏡が宙を舞った。 着地と共にワンピースは真っ赤に染まり、遠くから聞こえた音の正体は黒だった。 そんな結果は幸せそうに眠り続けている2人には知りもしないことだろう。 ところで、この心中が青いアネモネの悲しみと1部の界隈では騒がれているのは、窓辺にあったアネモネと、その日降っていた雨が理由らしい。
もしもあなたと
もしもあなたと出会えたのなら、今よりずっと幸せだったっていう自信がある。 この子なんかより絶対にあなたを幸せだって言わせてみせる。 味のしないガムみたいになるほど観た映画。 だけど毎回同じところで全く同じ感情を抱く。 わかってる。 もっと早く出会えていたら私はこんな風になってなかった。 裸になって鏡を見る。体に模様が出来てていつも笑っちゃう。 これがずっと恋煩いのような思いを抱えている相手にやられたなんて、情けなさすぎて怒りすら覚える。 出会った時代が悪かった。そう、全部時代のせい。 じゃないとこんなに愛していながら大っ嫌いなことは無い。 そうだよね、 お父さん。
りりー。
ねぇ、早く起きなよ。寝過ぎるともったいない気がするって言ってたのは君でしょ? 毎日おんなじ事を聞かされてきたから僕は早起きするようになったって言うのに。今日は僕が君に言う番になったとでも言うのかい? やだよそんなの。そんな立場になんかなってやるもんか。 だから早く起きてよ。今日は君の好きなものを朝食に揃えてるんだ。2人で食べようよ。 それから、洗濯ものを干して散歩をしよう。今日は地面が乾いているから森の奥まで行ける。 秘密基地を作るっていう計画を実現する時だ。こんな絶好の機会を逃していいわけが無い。 ねぇ、リリー。 なんで目を開かないの。昨日の夜まで笑顔で僕に「おやすみ!」って言ってくれてたじゃないか。 そっか。 そうなんだね。 ねぇ、リリー。 ううん、やっぱ何でもない。 この話はまた君と会える時にするよ。 おはよう。 そして、 おやすみ。
1年
こんにちは。はのです。 気がついたらしれっと1年経ってました。 これからも部活や習い事の関係もあります故、ぼちぼち戻ってこようと思います。 よろしくお願いします。 飽きたり忙しかったりで数ヶ月空くのはざらにあると思います。
いつかの咲いた花は泣く。 <夢と幸>
そろそろ思い出してくれたかな。ワタシの事。ちょっとだけ頑張って見たんだけどどうだろう。 どうやら未だに気付いてないみたい。こんなにも長く一緒にいるのにね。 まあいいや。気にしたら今までだってキリが無い。だから、心の中に留めておくね。 みんな、自分勝手な約束だけして1度も来た事ないんだよなぁ。でもあの子だけは違う気がする。ワタシやあの方のお気に入りで、特別な存在。 あの子の母親はどうしようもない子だったからワタシは大嫌いだったけど、それとは裏腹に子供の時から凄く優しくて、誰に対しても明るく振る舞うようなあの子。 言っちゃダメだけど、トンビが鷹を産んだみたい。きっとあのおばあさんの育てかたが良かったんだろうな。 ともかく、気付かなくていい、分からなくて良い。ワタシがずっと一緒に過ごして来た花涙だって事も、あなたをずっと想い続けてきたことも。 あの夢を見て思い出して、話してくれただけで、ワタシは幸せ。 夢を見せたのはワタシ。今まで叶うことの無いような夢を追い続けてきたのもワタシ。自己満足の幸せで満たされてるのもワタシ。全部自分の勝手なの。 あ、もう出発するの? 小さい時からその好奇心と行動力は変わってないね。 そうだ。この間夢を見たんだ、久しぶりに。まだ覚えてるんだけど、話、聞いてくれる? そうやって話すあなたの満ち足りた横顔を見て、本当に夢で会えてよかった、見せて良かったと思った。 今までワタシに夢のような時間をくれてありがとう。そのままでいてくれてありがとう。感謝してもしきれないそれほど幸せだったから。 大好きだったよ。 どこかで思い出すまで、またね。
素のままで。
こんにちは。読んでる頃にはこんばんはかな?おはようかな?まぁ、何でもいいや、好きな時に読んでね。 突然手紙なんか書くからビックリしてる?それともホントに馬鹿な私の事を再確認したかな。多分、あなたは両方何だろうね。 うん、きっと分かってるんだろうね。私はもうそこにいないし、探してもあなたの前に出ていかない事を。もう時間が無いんだ。ごめんね、 あのね、言いたいことがふたつあるの。これから伝えることが出来なくなると思うから。 まずひとつ。初めて会った日からずっと愛してたよ。今までそばに居てくれて本当にありがとう。 2つ目、死ぬまで素のままで居てね。 どれだけ変わっても、どれだけ傷付いても、あなたは素のままでいて。 じゃないと、私が愛した人なんかいなくなっちゃう。素のままのあなたを愛したことが、私の生きた証。 あ、そこまで責任重大な訳じゃないからね。 じゃあまたね。
恋したクラゲの末路には。
深くて広い、海の中。とあるクラゲは恋をした。そのクラゲよりはるかに大きく、心の綺麗な生き物に。 そのクラゲには心臓がなかった、だがしかし一目見た時心臓が大きく高鳴ったような感覚に陥った。 話したくても話せない。一方的にあちらが声を掛けてくるだけ。あまり感情が分かりにくい海の中でも、優しい雰囲気をまとっていた。 出会いと別れを繰り返し、2人は疲れ果てていた。だからこそ、どれだけ大きさが違えど一緒に入れたのかもしれない。2人だけの安心感というのを知っていた。 恋をしたクラゲは、傍から見ればあまりにも哀れで儚い状態だった。 あなたのそばにいることが出来れば何でもいい。と思えたクラゲは海の底から浮き上がる泡に近付く運命にあった。 クラゲと思っていたものは、ただの恋心であった。
中心の世界
あなた中心の世界では、私はあなたにとっての6割に入るらしい。それでも良いから関わりたいと思っていたのはどうやら間違いだったみたい。 馬鹿だから、それを理解したのは私があなたにとっての2割になってから。 あの子中心の世界では、彼はあの子にとって2割に入るらしい。叶わないって分かってて無理に近付こうとするの、正直言って凄く哀れ。 やっぱり、理解しようとしなかったから深く傷付いてるんだ。ホントばっかみたい。この時点でわたしにも嫌われてるって事、まぁ分かんないんだろうなァ。精々頑張ってくれたらもっと面白いのに。 アイツ中心の世界では、俺が無関心なのに諦めるってことを知らないらしい。馬鹿のひとつ覚えみたいで気色悪い。なんかどうでもいい奴に好かれんの気持ち悪いし、嫌いかも。 そうだ。今連絡入れたらあの子に会えるかな。 今日は溜まってんだよなぁ。色々と、やっぱ持つべきものは都合が良くて従順な可愛い子だよ。 あなたの中心の世界は?
白に吐く。
もう無理。だけど押し込まなくちゃ。しょうが無い、自分でした事なんだから。体はダルいし、苦しいし。動きたくないなぁ。 辛い。全部出してしまおうかな。気持ち悪いし、ここまで来たらなんでもいいや。 まただ。私の悪い癖。ギリギリまで押し込んで、最後にはもう何でもいい。分かってるけど、辞められない。 その時にはもう忘れてて、終わった後に思い出す。そして白い壁を見て、 なんでこんなのなんだろう。 って虚無感と不安が襲ってくる。 だって、日常になったら止められないんだもん。 食べるのも感情を抑えるのも、癖になったら治らない。