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三度の飯よりアニメが好き 基本書くのはフィクションです

おかあさん だいすき

 わたしは だいすきな おかあさんがいます  おかあさんは せかいいちやさしい おかあさんです  おかあさんが つくった らーめんは せかいいちおいしいです    あ おかあさん  みてみて てすとまんてんとれたの  えへへ すごいでしょ  おかあさん どうして  どうして びりびりにしちゃうの  ごめんなさい じがへたで ごめんなさい  ごめんなさい わるいこで ごめんなさい  いいこになるから いいこになるから  だからね ぶたないで おかあさん  あ おかあさん  きょう おたんじょうびだよね  みてみて おはなとってきたの きれいでしょ  ぷれぜんとだよ  おかあさん いたい いたいよ  ごめんなさい おはなとってきて ごめんなさい  ごみばこに ないないするから  ぶたないで おかあさん  あ おかあさん  なんでないてるの どこかいたいの  おとうさん いなくなっちゃったから ないてるの  わたしが よしよししてあげるね  あ いたい おかあさん いたいよ  ごめんなさい ごめんなさい  うまれて ごめんなさい  いきてて ごめんなさい  おかあさん おかあさん  おねがい あけて  なかに いれて  さむい さむいよ  ごめんなさい わるいこでごめんなさい  なにもしないから しずかにするから  おかあさん なかにいれて  あ せんせい こんにちは  どうしたの せんせい  おかあさん いまいないよ  どうしたの あ これ  だいじょうだよ ぜんぜんへっちゃらだよ  わたしがわるいこだから いけないの  うん おかあさんのこと だいすきだよ    せんせい  どうして ないてるの  あ せんせい  きょうはね たなばたなんだって  おねがいごとかくと かなうんだって  なににしようかな なににしようかな  そうだ これにしよ   「おかあさんと もっとなかよくなれますように」    あ せんせい どうしたの  このひとたち だれ  まって まって   どこにいくの どこにいくの  おかあさん どこにいくの  やだよ やだよ つれてかないで  おかあさんを つれてかないで  せんせい おねがい  おかあさん まだかな  はやく むかえきてほしいな  まだかな まだかな  さびしいな さびしいな  あ わがままいったら おこられちゃうな  わたしは いいこだから  がまんできるよ おかあさん    あ せんせい ひさしぶりだね  うん げんきだよ  でもね おかあさんが  ぜんぜん むかえきてくれないんだ  でもね わたし いいこだから  ちゃんと まってるんだ  えへへ えらいでしょ    あ そうだ  きょうはね たなばたなんだって  せんせいも おねがいごとしよ  わたしもね おねがいごとしたよ  みてみて せんせい 「おかあさんと またくらせますように」

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子供嫌い

 子供は嫌いだ。  すぐ泣くし。  やめてって言っても危ないことするし。  自分のオムツすら変えられないし。  寝て欲しいのに全然寝てくれないし。  関わるメリットなんて何一つない。 「あ…あぅ!……あ…ぱぱ!……」 「あ!あなた聞いた??この子、今パパって言ったわ!」 「………………うん。」  その小さな手を握ると、とても暖かかった。  子供は嫌いだ。  自分の思い通りにならなければすぐ泣く。  やめろと言っても、人前で騒ぎ立てる。  学校で喧嘩をしたと、また先生から連絡が来た。  どれだけ迷惑をかければ気が済むんだ。 「あ……パパ。」 「……どうした?」 「おしごとがんばってね!」 「…………あぁ。」  その日は、なぜかいつもより頑張れた。    子供は嫌いだ。  何を考えてるかさっぱりわからないからだ。  最近は口も悪くなってきた。  部屋に行けば、「勝手に部屋に入るなクソオヤジ!」などと暴言を吐かれる。目上の人に対する敬意すらないのか。 「あ、あなた〜。」 「どうした?」 「これ……」  妻から渡されたのは、綺麗に包装された細長い箱だった。 「あなた来週誕生日でしょ。ちょっと早いけどプレゼントだって。まったく、あの子も自分で渡せば良いのにね。」 「……。」  箱の中身は新品の万年筆だ。きっと自分の、決して多くはない小遣いで買ったのだろう。……感謝の気持ちがあるのなら、直接渡すのが礼儀というものだ。全く何もわかっていない。  おれはそっと、スーツの胸ポケットにそれをしまった。    子供は嫌いだ。  最近、夜遅くに帰ってくることも増えてきた。  化粧やらファッションやらで色気付いてきた。  変な男でも寄ってきたらどうするんだ。  そんなおれの心配も考えて欲しいと、心の底から思う。 「あの子、彼氏に振られちゃったらしいのよ〜。」 「……そうなのか?」  リビングに行くとテーブルに突っ伏して啜り泣いているのを見つけた。 「……彼氏に振られたくらいでメソメソしてたら、この先が思いやられるな。」 「……うるさい、クソ親父。あんたには分かんないでしょ。」 「分かる。……父さんが母さんと出会うまで、何回振られてきたと思っているんだ。」 「………………ふふっ、何それフォローのつもり?」    彼女は赤く腫れた目を擦り、少し笑ってくれた。    子どもは嫌いだ。  手塩にかけて育てても、いつか離れて行ってしまうから。  決して寂しいわけではない。  だが、治安の悪い都会のどこが良いというのだ。 「じゃ、行ってくるね!」 「えぇ、行ってらっしゃい。大学生活満喫するのよ!ほら、お父さんも何かないの?」  そう言われても困る。言いたいことはいくらでもある。  夜更かしするな。  変な男に騙されるな。  ご飯はちゃんと食べろ。  …………。   「風邪……引くなよ。」 「いや、ゼフかよ。」    彼女は呆れたように笑った。 「お父さん、お母さん、ここまで育ててくれてありがと!じゃあ……行ってきます!」    スーツケースを引く音が少しずつ遠ざかっていく。振り返ることなく歩いていく後ろ姿は、いつの間にか大きくなっていた。 「あらお父さん、泣いてるの?」 「……これは汗だ。」  外はまだ肌寒いのに、目から出る汗は止まらなかった。 「あ、お父さんただいま〜!!」    ある日、都会に染まった彼女が久々帰ってきた。  今時の言葉遣いになってるし。  見た目はギャルそのものだし。  こんな風に育てた覚えはないのだが。   「お父さーん」 「なんだ。」 「振袖、変じゃない?」  赤い振袖に身を包んだ娘が、照れくさそうに立っている。ついこの前までランドセルを背負っていたはずなのに。   「……別に」 「ええ〜。」 「似合ってる。」 「ふふっ、ありがと。」    彼女の笑顔は、昔と何も変わっていなかった。    ある日、彼女がろくでもない男を家に連れてきた。   「娘さんをぼくにください!幸せにしてみせます!」    気に入らない。  礼儀正しいのも気に入らない。  真面目そうなのも気に入らない。  娘を見る目が優しいのも気に入らない。   「……お父さん?」  妻に肘で小突かれる。   「いや……」    おれは男を見てこう言った。   「娘を泣かせるな。」 「はい!」    即答なのが、少しだけ癪だった。  ……いつかは誰かのものになってしまう。そんなことは分かっていたし、想像もしたくなかった。でも、純白のドレスを纏った彼女は信じられないほど綺麗だった。    バージンロードの前で腕を差し出すと、彼女は少し照れながら手を添えた。   「お父さん。」 「なんだ。」 「今までありがとう。」 「……まだ早い。」 「え?」 「結婚してからが本番だからな。」    彼女は小さく笑ってくれた。    昔、小さな手でおれの指を握っていたのに、今はおれの腕を支えて歩いている。一歩、また一歩。歩くたびに、胸の奥が苦しくなる。祭壇の前でおれは彼女の手を、新郎へと託した。   「幸せになれ。」    そう呟くので精一杯だった。  やっぱり子どもは嫌いだ。  手がかかるし。  心配ばかりさせるし。  金もかかるし。  ——こうして何度も泣かされる。    ふと胸ポケットを触ると、あの日もらった万年筆がひっそりと収まっていた。

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第九話 社交の場では笑顔が大事♡

『もしもし〜、ハロー!私はキラリ!いずれ世界を救う魔法少女だよ♡』 「……もしもし、田辺だけど。ちょっとお願いがあってな。」 『ん〜?』  ベッドの上で寝転がりながら、彼女は気の抜けた返事をした。 「今日の夜の懇親会、また参加頼めるか?」 『えー!!私今日休みなんだけど〜!!』 「奇遇だな、おれもだ。」 『……なーんで私なの?』 「会長のご指名だ。」 『あー……そういうこと。』  一瞬で察したキラリは、盛大にため息をついた。   『あのエロオヤジの相手きついんだけど〜。』 「すまん、おれもそれは耐えてくれとしか言えない……。」 『…………夜ご飯奢ってくれたら行く。』 「いいよ。何でも奢るわ。」 『ほんと!?じゃあ、いつものとこがいいな。あと、準備終わったら迎えきて。』 「了解だ。ありがとう。」  電話を切った後、彼女はしばらく布団に埋もれていたが、やがて観念したようにもぞもぞと這い出した。せっかくの休日だというのに、本当に面倒な話である。  都内某所。高級ホテルの大宴会場は、シャンデリアの光に照らされていた。会場にはスーツ姿の男女が大勢集まっている。スポンサー、政治家、官僚、防衛関係者。テレビで見たことのある顔も少なくない。そんな中、一際目立つ桃色の髪の少女がいた。 『ねぇ田辺。私はいつからお偉いさんの見世物になったんだい?』 「……すまん。」  そうぼやきながらも、彼女は笑顔を崩さない。しかし、その顔には疲労が滲み出ている。無論、隣でボディーガードをしている田辺も同様だ。    魔法少女の戦闘フォームに変身し、純白と桃色のフリルドレス姿になった彼女は注目の的だ。事あるごとに世のお偉い方に声を掛けられ、あれこれ頼み事をされ、写真を撮られ、しまいには勝手に見合い話まで持ち込まれる始末だ。   「まぁでも流石というか、当然というか。こういう時の社交スキルは大したもんだ。やっぱ良子さんの子だな。」 『……母さんなら、もっと上手く媚びるんじゃない?』 「いや、言い方よ。」  そんな軽口を交わしていると、人混みの向こうからふくよかな男性が歩いてきた。両脇にはメイド姿の美女を連れている。会場の空気にまったく馴染んでいないのに、なぜか誰も突っ込まない。 「やぁやぁキラリ、相変わらず可愛いな〜。」 『げ……あ、ううん!お久しぶりです、会長!お元気そうで何よりです。』 「あぁ元気だとも!キラリはどうだ?最近困ってることはないか?なんでも私に言ってみたまえ。」  そう言って、会長は当然のようにキラリの肩へ手を回した。顔が近いうえに香水と酒の匂いが鼻につく。   『あはは……お気遣いありがとうございます。』    営業スマイル。満点。内心は零点だった。   「そうだ。今夜この後、食事でもどうだね?」 『あーすみません、今日はちょーっと予定があるので別の機会に……。』 「そうかい?残念だ。では、また別の機会に誘おうか。」  彼は少し苦笑した後、キラリの隣にいる田辺に目を向けた。いや、睨みつけた。 「おい田辺!」 「はい。」 「最近ちゃんとやってるのか?」 「やってますよ。」 「間違ってもキラリに面倒かけるんじゃないぞ、いいな?」 「会長、なんでぼくには喧嘩腰なんすか。面倒かけられてるのぼくのほうっすよ。」 「ははは!冗談だ、お前の働きには期待しているからな。馬車馬の如く働いてくれ!」 「うっす。定時厳守で頑張りやす。」  会長はそう笑うと、不意に田辺の肩へ腕を回した。そして周囲に聞こえないよう顔を寄せる。   「……あと、良い子がいたら紹介してくれ。もちろん、お前にも回してやる。」  彼は最後にそう耳打ちして去っていった。 『……エロオヤジ。』 「……まぁ、会長はそういう人だから。」  キラリと田辺は目を合わせ、はぁと溜息をついた。 「あらぁ〜、2人してなーに辛気臭い顔してんのよ。」  野太い声が響く。振り返ると、周囲の男たちより頭一つ大きな巨体がずんずんと歩いてきていた。黒いドレスの上からでも分かる分厚い胸板。丸太のような腕。そして艶やかな化粧。筋骨隆々のオネエがそこに立っていた。   『あ!クマノミさん!なんかすごいムキムキですね。』 「そうなのよぉ〜! 最近筋トレにハマっちゃって!筋肉ホルモン増し増しよ!」    彼?は自信満々に力こぶを作るが、着ているドレスの袖が悲鳴を上げていた。   「こんにちは、キラリちゃん。田辺ちゃんも久しぶりね。そんな顔してたら運気下がるわよ?」 「お久しぶりです、クマノミさん。勘弁してくださいよ。ぼく今日非番だったんですよ。」 「あらあら、こんな美少女のボディーガードできるのよ?もっと喜びなさい。ね、キラリちゃん。」 『そーだそーだ。』 「お前なぁ……。」  キラリはケラケラ笑っている。すると何かを思い出したように手を叩いた。   『あ、そうそうこの前はありがとうございました。これお礼の分です。』  そう言って、彼女は札束の入った封筒をクマノミに渡した。 「あら、ありがと。私の性転換魔法が役に立って何よりだわ。でも、あの後私も楽しんじゃったから、お代は半分でいいわよ。」 『いやぁ、でもクマノミさんには色々お世話になってますし……。じゃあ、次依頼する時の前金ってことで!』 「あらあら、口が上手くなったわね!じゃあ、何かあったら私を頼りなさい。田辺ちゃんもね!」 「うっす。」  そんな和やかな空気を切り裂くように、突然大きな声が響いた。 「魔法少女キラリ!!」 『ひゃっ!?』     突然背後からでかめの声を掛けられた彼女は、思わず体をビクッと震わせる。振り返ると、赤と黒のドレスを纏った赤毛の少女がそこに立っていた。 「今日という今日はあんたに文句を言ってやる!」 『え……君だれ?』 「はぁぁぁぁ!?」  赤毛の少女は今にも噛み付きそうな顔で一歩踏み出した。 「私よ!私!!魔法少女ヒバナ!!あんたと何回か任務で一緒になったじゃない!!」 『えー……あー、ごめん。私忘れっぽいんだよね〜。』 「忘れっぽいですって??舐めるのも大概にしなさいよ!!」  目の前の少女は地団駄を踏んでいる。 「あの時も、この前の任務も……あなたが全部めちゃくちゃにしてったんじゃない!!」    ヒバナの怒鳴り声を聞きながら、キラリは首を傾げた。 ――そういえば、そんなこともあった……のかな?  一方ヒバナの脳裏には、キラリとの共同任務の記憶が蘇っていた。

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第九話 社交の場では笑顔が大事♡

小説ではありません。二

 あ、どうもこんにちは。夏ですね。暑いですね。冷房使いすぎて電気代の請求が怖い季節になってきました。  さて、私事ですが。私は夏の期間、母の手伝いも兼ねて小学校の児童会のバイトをよくやるんですね。バイトと言っても、子供たちの面倒を見つつ一緒に遊んでるだけです。  そこで、子供達とは良くゲームをしたりします。しかし、もう成人している人間が一回りも下の子供相手に本気出すわけにもいかず、ゲームでは手を抜いているわけです。うまいこと加減して良い具合に負けてあげる……言わば接待ゲームですね。まぁ子供相手だけでなく、良くしてくれるバイト先の先輩とかにも良くやりますが。  でも小学生ともなってくると、中には生意気なクソガ……ゲフンゲフン、ちょっとヤンチャな子もいるんですね。そういう子に接待ゲームなんかして負け続けると、いつしか調子に乗り始めるわけですわ。 「えー先生弱すぎwww 雑魚じゃん!!雑魚雑魚!!」 「あはは〜、先生また負けちゃった。〇〇君強いね〜(いてこますぞクソガキ)。」  みたいなやり取りをするんですよ。まぁ?私はれっきとした大人ですし?子供の言うことなんかいちいち相手にもしてないわけで。  でもある日、その子(仮にA君としましょう)がボードゲームを持ってきたんですね。中身は将棋やチェス、オセロなど。運ではなく、それなりに実力差が出るゲームです。それを持ってきたA君はまた言うわけですよ。 「先生ゲーム弱いしバカだから、おれ余裕で勝てるわwww」    ——カッチーーン。いいでしょういいでしょう。まぁ?別に煽られてムカついたわけではないですし?こんな調子だと、いつか人様に迷惑かけてしまうかもしれませんし?そう、これは教育です教育。仕方のないことなんです。  幸い、私は将棋もチェスもオセロもスマホアプリでやっていた時期があったため、並の人間……それも小学生相手なら勝てる自信がありました。  そして勝負が始まり、私は大学のテストを受ける時よりも集中力を使い、A君を完膚なきまでにボコボコにしました。  そしたらギャン泣きしちゃった笑  私が勝利の余韻に浸っていると、他の指導員の方が様子を見に来ました。事情を説明すると、 「大人気ないことしないでください。」  そう一言お叱りを受けました。流石に我に帰った私は、目の前で泣きじゃくる子供を見て良心がひしひしと痛むのを感じました。  ここまで色々話しましたが、私の名誉のために言うと別段子供が嫌いとかではなく、ただちょっと生意気な奴をからかってやろうと思ったらこうなったのです。ちゃんと謝りましたからね?  しかし、私は思うのです。将来、自分が子を持つことになった時、子供と遊ぶ時が必ず来るでしょう。その時はどのくらい手加減してあげるべきなのか、と。何歳になっても接待ゲームをしていたら、絶対調子に乗って痛い目見る事は目に見えているじゃないですか。それもまた成長するためと言われたら、その通りかもしれませんが……。  皆さんはどう思いますか?

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第八話 お姉ちゃん

 仕事終わりの人波が、駅前の広場へ絶え間なく流れ出していた。  改札口が開くたびに、黒や紺のスーツがあふれ出し、誰もが家路を急ぐ。高架を走る電車の音、信号機の電子音、どこかの居酒屋から漏れてくる賑やかな声。夕暮れはとうに過ぎ、街は無数の看板と街灯の光で照らされていた。  そんな中、彼女は街路樹のそばに立っていた。お気に入りの服に身を包み、長い黒髪はゆるく巻かれ、小さな銀色のピアスが街灯の光を受けて揺れている。   『あ!!』  彼女の視線が改札口へ向く。人波の向こうに見慣れた姿が見えたからだ。黒のワイドパンツに白いブラウス。ネイビーのロングジャケットを羽織ったその姿は、人混みの中でも自然と目を引いた。落ち着いた大人の色気があり、すれ違う人が思わず振り返るほどだった。   『お姉ちゃん!!』  大きく手を振ると、姉もこちらに気づいて笑みを浮かべる。嬉しくなった彼女は駆け足で姉の元へ行き、盛大にハグをした。 「久しぶり!優子、元気にしてた?」 『うん!めっちゃ元気!』 「そう、良かったぁ。来るの遅れちゃってごめんね。」 『全然大丈夫だよ!』 「じゃ、行こっか。お店は予約してあるから!」  駅前の喧騒から離れ、2人は大通りの少し先の高層ビルに足を運んだ。専用のエレベーターを使い、向かう先は最上階。広がったのは静かな空間だった。磨き上げられた大理石の床。間接照明に照らされた落ち着いたロビー。大きな窓の向こうには夜景が広がり、街の灯りが宝石のように輝いている。 「予約の井原様ですね。いつもご利用ありがとうございます。」  2人を迎えたのは、身なりの整ったウェイターの丁寧な接客。案内されたのは窓際の席だ。夜の街を一望できるここは、まるで空中に浮かんでいるようだった。 「そういえば、これ見たわ!」  席に着くなり、姉は一冊の雑誌を取り出した。タイトルは「魔法少女キラリの大活躍!!」。表紙には先日撮影した写真が使われている。 『あ、それ!』 「そう!魔法少女キラリの特集と写真集。すごいわ優子!可愛く写ってて、お姉ちゃん鼻が高いわ〜。」 『えへへ、可愛いでしょ。』 「ただ……ちょっとこの衣装は大胆ね。私が言えたことじゃないけど、変な人が寄ってこないか心配よ。」 『大丈夫だよ!そんなやつ、返り討ちにできるから!!』 「ふふっ、さすが世界を救う魔法少女ね!」  そう話していると、ウェイターが慣れた手つきで豪華な料理を運んでくる。真鯛のカルパッチョや牛フィレ肉のグリルなど食欲がそそられる。そして、最後はグラスに赤ワインを静かに注いだ。窓の外の夜景を映したワインは、まるで赤い宝石のように輝いていた。 『なんかドラマに出てきそうな料理だね。』 「えぇ、ここの料理は絶品よ。」 『うん、見てるだけですごく美味しそう。あんまこういうとこ来ないから嬉しい。』 「それなら良かったわ。じゃあ、優子の最近の活躍を祝って。」    そう言って姉はグラスを持ち上げる。   「お疲れさま、優子。」 『ありがとう、お姉ちゃん!』    軽くグラスを合わせると、澄んだ音が夜景の広がる店内に響いた。  料理はどれも美味しく、会話も途切れることはなかった。優子は姉の笑顔を見ながら、この時間がずっと続けばいいのにと思う。お互い忙しくてなかなか会えないからこそ、こうして向かい合って話せる時間が嬉しかった。    しばらく他愛もない話をした後、優子は姉にこう尋ねた。 『お姉ちゃんは最近どう?何かあった?』 「あ、実はね……」  姉は少し照れたように笑った。 「彼とね、結婚することになったの。」 『えっ……ほんと?』 「うん!」  姉は嬉しそうに頷く。 『そっか……。』  優子は思わず言葉を飲み込む。驚いたわけではない。姉が彼のことをずっと好きだったのは知っている。それでも胸の奥が少しだけざわついた。   『おめでとう、お姉ちゃん。』 「ありがとう!」  姉は柔らかく笑った。 「付き合ってから長かったなぁ。」 『どのくらいだっけ?』 「もう5年になるかな。途中で別れたりもしたけどね。」  姉は苦笑しながらこう続けた。 「でも結局あの人しかいなかったんだよね〜。」 『……お姉ちゃん、ずっと好きって言ってたもんね。』 「ふふっ、そうね。それに、最近やっと落ち着いてきたし。」 『お仕事も順調なの?』 「うん。」  姉はどこか誇らしげに言った。 「彼、今月もナンバーワンだったんだって。」 『そっか……すごいね、彼氏さん。』 「でしょ?」  まるで自分のことのように笑う。 「ほんと頑張り屋さんなの。」 『……結婚式はやるの?』 「うん、やるつもり。彼がお店を辞めてからかな。」  姉は少し遠くを見るような目をした。スマホを取り出し、待ち受け画面をちらりと見る。   「今すぐってわけにもいかないし、私もまた中国に行かなきゃいけないから。」 『……なかなかハードだね。』 「まぁね。向こうの方がお金になるから。」  そう言って姉はワインを飲み干した。 「もう少しだけ頑張らないとね。」 『……あんまり無理はしないでね?』 「わかってるわ!」  姉はいつものように笑った。優子はそれ以上何も言わなかった。その笑顔を見ていると、不思議と大丈夫な気がしてしまうのだ。    2人が食事を終えた頃には、時計の針は9時を回っていた。   『美味しかった〜。』    最後のデザートまで食べ切った優子は、満足そうにお腹をさする。   「そんなに喜んでもらえると連れてきた甲斐があるわ。」    会計を済ませた姉に続き、二人は店を後にする。静かなロビーを抜け、専用エレベーターへ乗り込む。ゆっくりと下降していく箱の中で、ガラス越しの夜景が少しずつ遠ざかっていった。そのまま1階に着き、外に出た2人を夜の街の空気が包み込んだ。   『気持ちいいね。』 「そうね。」    見上げれば、雲の切れ間から小さな月が顔を覗かせていた。大通りにはまだ多くの人が行き交っている。飲み終わりの会社員や楽しそうに笑い合う学生グループ、手を繋いで歩く恋人たち。 『まだ結構人いるんだね。』 「この辺りは夜でも賑やかだから。」    信号待ちをしながら姉が答える。道路の向こうでは大型ビジョンが鮮やかな映像を映し出し、飲食店の看板が競うように光を放っていた。 『次はいつ会える?』 「うーん、お仕事次第かな〜。またこっちに戻ってきた時に連絡するね。」 『わかった……。お姉ちゃん、あんまり危ないとこは行かないでね?ちゃんと連絡してね?』 「大丈夫よ。お姉ちゃん慣れてるから!」 『……うん。』  2人は駅前へ向かってゆっくり歩いた。先ほど待ち合わせをした広場も、今は人通りがまばらになっている。改札口の上にある電光掲示板には、次の電車の時刻が表示されていた。   「じゃあ、ここまでね。」 『うん。』    足を止める。さっきまで途切れることなく続いていた会話も、別れ際になると不思議と言葉が少なくなった。    優子は少しだけ視線を逸らしながら言う。   『今日はありがとね。』 「どういたしまして。」 『ご飯もおいしかったし、楽しかった。』 「私もよ。」    姉は柔らかく微笑んだ。 「じゃあまたね、優子。」 『うん、お姉ちゃんも元気で。』  姉の姿が改札の向こうへ消えていく。彼女は寂しそうに、その背中を見つめていた。いつまでも、いつまでも。 『幸せなら、オッケー……だよね?』  夜空を見上げると、街の灯りに負けそうな小さな星が、ぽつりと瞬いていた。胸の中に残る気持ちを抱えながら、彼女もまた自分の帰る場所へ向かって歩き出した。  この夜が、姉との最後の思い出になることを。彼女はまだ知らなかった。

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第八話 お姉ちゃん

タイムマシン

「蓮……今日もやってるのか?」  ガレージのシャッターをくぐった瞬間、むわっとした熱気が全身を包み込んだ。その暑さに思わず顔をしかめる。   「あぁ、陽介か。」  蓮はそう答えて、こちらに一瞥することなく目の前の機械をいじり始める。金属部品の匂い、無数の配線、見たこともない装置。いつ来ても変わらない光景だった。   「相変わらずあっついなこの部屋。」 「まぁ夏だし。」  額に滲んだ汗もお構いなしに、蓮は機械の端子を繋いでいる。おれは近くにあったパイプ椅子へ腰を下ろし、ため息をついた。   「なぁ、おれ達もう三十だよ。いい加減、安定した仕事探して、家庭持つとかしないの?」 「ないな。」  間髪入れずの即答に、おれは思わず苦笑した。同級生たちは家を建てたり、子供を育てたり、出世競争に頭を悩ませたりしている年齢だ。それなのにこいつは……あの時からずっとここに籠っている。 「おれにとって、これを完成させることが最優先事項だ。」 「……老後の貯金とかは?」 「金なら問題ない。副業で売ってるガラクタが結構売れてるから。」 「まじかよ、この天才め。」  おれがそう言うと、蓮は少し肩をすくめた。  十四歳で海外の大学へ飛び級し、何かの論文を書けば研究者が騒ぎ、適当に作った装置をネットへ流せば企業が群がる。平凡なサラリーマンのおれとは別世界の人間だ。  そんな天才が作ろうとしているのはタイムマシンだ。過去や未来を行き来する、誰も実現できなかった夢の機械。歴史上、それに挑んで敗れた人間は数え切れない。  以前、興味本位で仕組みを聞いてみたことがある。   『……一般相対性理論がどうのこうので……超伝導リングがどうたらこうたら……因果律そのものが…………』  結果、五分も聞かず理解を諦めた。おれのチンケな頭は圧倒的情報量を処理できなかったのだ。  蓮がタイムマシンに執着している理由は、死んだ妹を救うためだ。  十五年前の不運な事故。下校中、暴走したトラックが蓮と妹の紫苑に突っ込んだ。衝突の直前、紫苑は蓮を突き飛ばし、そのまま轢かれて死んでしまったのだ。  おれは今でも覚えている。葬式の日の蓮の顔を。泣きもせず、ただ何かが壊れたみたいに静かだった。    そして数日後、こいつは言ったのだ。『タイムマシンを作る』と。当時は誰も本気にしなかった。おれもそうだ。でも十五年経った今、蓮を笑う人間は一人もいない。 「ここが違う……?いや、やっぱりここをこうして……。くそっ!!もう少しで完成しそうなのに!!」  妹を助ける、そのためだけに十五年。常人ならとっくに諦めるであろう苦行の道を歩き、タイムマシンはついに完成間近まで来ていた。やっぱりこいつは天才だ。 「紫苑を助けられたらさ。」    気づけば、おれはそう口にしていた。蓮の手が一瞬止まる。ほんの一瞬だけ。   「また三人で遊びたいな。」    静かな沈黙が落ち、機械の駆動音だけが流れていく。   「そうだな……。色んなとこ連れてってやりたい。」  蓮が少し笑ってそう言った。その顔は昔のままだった。妹の話をする時だけ、こいつは十五年前の兄に戻るのだ。   「兄妹で旅行行けばいいじゃん。」 「ありだな。そん時はお前も来い。」 「え?なんでだよ。」 「紫苑が喜ぶから。」 「そうなの?」 「うん。あいつ、陽介のこと好きだったんだよ。」 「……は?」    思わず変な声が出た。   「……まじ?」 「まじ。」 「全然気づかなかったんだけど。」 「だろうな。」    蓮が苦笑する。   「あいつは恥ずかしがり屋だったから。本人も最後まで言えなかったし。あの日だって、バレンタインのチョコ買いに行こうとして……それで……」    言葉が途切れる。沈黙が流れ、部屋の温度が少し下がった気がした。もちろん気のせいだ。それを察したおれも蓮も黙ったままだった。十五年経っても、傷は簡単に治らない。   「おれ、そろそろ行くよ。完成するといいな、タイムマシン。」 「……あぁ。まー今夜あたりまた起動実験してみる。」 「できたら教えてな。」 「もちろん。」  ガレージを出ようとしたおれを、蓮は不意に呼び止めた。   「陽介。」 「ん?」 「ありがとな。」 「……急にどうした。」 「……別に。」    視線を逸らす蓮を見て、おれは少し笑った。ありがとな、その言葉が妙に胸に残っていた。  その夜のことだった。蓮から急にLINEが来た。 『陽介!!ついにタイムマシンが完成したぞ!!』  そのメッセージを見た瞬間、思わずベッドから飛び起きた。   「まじか!!」  すぐに返信しようと、文字を打つ手が震えてしまう。   『おめでとう!!よくやったわ、まじで!!』 『さんきゅ!!』  大切な友人が、積年の夢を叶えたのだ。おれは自分のことのように嬉しかった。 『完成はしたけど、制限が色々ある。使えるのも一回だけだ。』 『一回だけ?』 『ああ。でも十分だ。』    続けてメッセージが届く。   『今から行ってくる。』  短い文章だった。けれど、そこに込められた覚悟は痛いほど伝わった。   『ほんとに行くの?』 『もちろんだ。十五年かかったんだぞ。』 『わかった。気を付けろよ!あと、成功したら連絡してくれ。』    少し間が空いて、やがて返信が来た。   『任せろ。』  それが、おれと蓮の最後の会話になった。  スマホの画面を見つめながら、おれは小さく笑う。十五年かけて、あいつは本当にやり遂げたのだ。馬鹿みたいな夢を。誰も信じなかった夢を。妹を助けるためだけの夢を。  友人の吉報を祈り、おれはそのまま眠りに落ちた。その夜は、不思議なくらいよく眠れた。  ……。  …………。  ……………………。    夏の終わり。空が高く、風が涼しい穏やかな日に、おれは妻と墓参りに来ていた。   「もう十五年になるんだね。」    彼女が小さく呟く。   「早いもんだな。」 「うん……。」    二人で墓前に花を供える。墓石にはおれの友人の……蓮の名前が刻まれていた。   「あの時お兄ちゃんが助けてくれたから、私は……。」    彼女は空を見上げてこう続ける。   「たまに思うの。もし、私じゃなくてお兄ちゃんが生きてたらって。お兄ちゃんなら、きっとすごい発明とかして色んな人に必要とされたんじゃないかって……。」 「……そんなこと言うなよ。それに、もし紫苑が死んでたとしても、あいつならどんな手を使っても助けようとしたさ。」 「……そうかな?」 「あぁ、だってあいつシスコンだったし。」    おれがそう言うと、彼女は少し苦笑した。   「確かに。」 「何なら、人生全部賭けてタイムマシンでも作ったんじゃないかな。」  そう言ってから、胸の奥が熱くなった。『タイムマシン』その言葉が、なぜか頭に引っかかる。何か大切なことを忘れてしまったみたいに。   「……蓮なら作れたかもな。」    冗談めかしてそう言うと、彼女はふふっと笑った。 「そうだね。お兄ちゃん天才だったもん。」 「そうそう。」  その時、雲の切れ間から差し込んだ陽射しが墓石を照らした。刻まれた名前がわずかに光を反射している。おれはしばらくそれを見つめたあと、静かに口を開いた。   「蓮、お前の大事な妹はおれが守る。」    彼女が驚いたようにこちらを見る。 「絶対幸せにする。」    おれは彼女のお腹に目を向けた。その中には新しい命が宿っている。彼女の伴侶として、彼女の兄の友人として、そして生まれてくる子の父親として。今度はおれが、必ず守ってみせる。   「だから安心してくれ。」    彼女は少し目を潤ませながら笑った。   「ありがとう。私、今すごく幸せだよ。」  その瞬間、遠くから聞こえていた蝉の声が不意に途切れる。墓地を包んでいた静けさが、どこか心地いい。   「紫苑、そろそろ帰ろっか。」 「うん。」    帰り際、彼女は墓石に向かって手を振った。   「また来るね、お兄ちゃん。」    墓前に供えた花びらが一枚、ゆっくりと石畳へ落ちた。まるで長い旅を終えた誰かが、ようやく肩の荷を下ろしたみたいに。

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第七話 スキャンダルにはご注意を!!

『ハロー!私はキラリ!いずれ世界を救う魔法少女だよ♡今日は宣伝のために、雑誌用の写真撮影してま〜す!』  眩しい照明が降り注ぐスタジオの中央で、彼女は満面の笑みを浮かべた。  肩や脚を大胆に露出した衣装は、一般的なアイドルのグラビアと比べてもかなり際どい。それでも彼女は慣れた様子でポーズを決め、次々とシャッターを切られていく。 「はい!オッケーです!一旦休憩入りまーす。」 『ふぅ……ずっとポーズしてるのも大変だね〜。』  張り付けていた営業スマイルを少しだけ緩めながら、彼女は楽屋へ戻った。椅子に座り、押し寄せる疲労感を感じていたところ、マネージャーが紙コップを差し出してくる。 「お疲れ様です!どうぞ!」 『わぁ、レモンティー! ありがとうございます!』  大好物を受け取った彼女は、嬉しそうにそれを一口飲んだ。 『まだ撮影続きそうですか?』 「それが……。」    マネージャーは少し困ったような顔をした。   「実はディレクターとADが揉めてまして。」 『あー。さっきから怒鳴り声聞こえてましたね。』    その瞬間、まるで噂をすれば何とやらと言わんばかりに、隣の部屋から怒声が響いた。   「こんな写真で売れると思ってんのか!!」    壁越しでもわかるほどの大声だった。   「世間はもっと過激なもん求めてんだよ!!」 「ですが……彼女は政府公認の魔法少女です。炎上したらスポンサーどころか警視庁まで来ますよ……。」 「そんなことは百も承知だ!だからこそギリギリを攻めるんだよ!」    彼女はレモンティーを飲みながら小さくため息をついた。   『面倒な予感しかしないなぁ。』  数分後。  スタジオへ呼び戻された彼女の前にADが現れた。しかし、その表情はどこか沈んでいる。   「キラリさん……。」 『どうしました?』 「その……次の撮影なんですが。」    ADは申し訳なさそうに衣装を差し出した。それを見た瞬間、彼女は思わず眉をひそめる。  布面積が極端に少ない。雑誌のグラビアというより、AVを想定しているような代物だった。   『えっと……これは?』 「すみません……。」    ADは肩を落とした。   「僕も反対したんです。でもディレクターがどうしてもって。」    苦しそうな声音だった。   「本当はこんなお願いしたくないんですけど……立場上、逆らえなくて。」    彼女はしばらく衣装を見つめたあと、小さく笑った。   『ちょっと待っててください。』  彼女は足早に、ディレクターが待機している楽屋へ向かった。  ノックもそこそこに扉を開く。   『ディレクターさん、少しいいですか?』 「ああ、キラリ君か。」    ディレクターは椅子にもたれながら笑みを浮かべた。   「新しい衣装は見たかい?」 『見ました。』 「どうだい? 君の魅力を最大限に引き出せると思うんだが。」 『いやぁ……ちょっと布が少ないかなって。』 「そうかな。まぁ、今どき清純路線だけじゃ弱いんだよ。」    ディレクターは肩をすくめる。   「話題にするには、少しくらい攻めないとね。」 『でも、今回はアダルト向けの企画じゃないですよね?』 「そんな細かいことは気にしなくていいんだよ、キラリ君。」    ディレクターのその態度に彼女はうんざりした。この人は、自分が押し切れると思っているのだと。   『仕方ないですね。じゃあこれを。』  彼女は懐から一枚の写真を取り出し、それをディレクターに見せつけた。 「なんだそれは?」  ディレクターは何気なく写真を受け取った。そして、それを見た彼の表情はみるみる凍りついく。  深夜のホテル。若い女性。腕を組みながら入館する自分の姿。どこからどう見ても、言い逃れのできない一枚だった。   「な、なぜ……。」 『この子、最近話題のアイドルグループの子ですよね?しかもディレクターさんは既婚者だし、これネットにばら撒いたら面白そうですよね。』 「……脅しのつもりか?」 『そんなつもりはありませんよ♡』 「……。」 『それで、私の撮影衣装なんですけど……。』 「わかった!!すまない、さっきのは軽い冗談だよ。あはは……撮影はさっきのやつでいいから。」  冷や汗ダラダラでそう言うディレクターに、彼女はニッコリ笑いかける。 『ですよね!冗談ですもんね!あとADさんのこと、あんまいじめないであげてくださいね!』  彼女は軽くウインクをして、楽屋を去っていった。  その後の撮影は驚くほど順調に進んだ。余計な横槍も入らず、スタッフの空気もどこか明るい。予定通り全工程が終了した頃には、すっかり日も傾いていた。   「キラリさん!」  帰り際、ADが駆け寄ってくる。 「今日はありがとうございました!」 『いえいえ!ADさんもお疲れ様です!』 「撮影の時はすみませんでした。急な衣装変更、ディレクターが考え直してくれたんですけど、何かあったんですか?」  純粋な疑問を向けられ、彼女は人差し指を唇に当てた。 『乙女の秘密です♡』  スタジオを後にした彼女は、密会写真を「#業界の闇」のタグを添えて投稿した。

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第七話 スキャンダルにはご注意を!!

第六話 暗い夜道には御用心♡

『ハロー!私はキラリ!いずれ世界を救う魔法少女だよ♡最近この先で通り魔が出るらしいから、そんなヤバいやつ懲らしめに来たよ!』  乗ってきた新車……高速の事故でフロントグリルがぼこぼこ……を路肩に止め、彼女はこの先の目的地に向かった。  街灯のない山道をしばらく歩くと、ガードレールの切れ目の先に、それはあった。車一台も通れないような小さな通路。奥へ続く暗闇は異様に深く、懐中電灯を向けても途中で光が鈍く飲み込まれる。ここら辺の地域では、いわゆる肝試しスポットとして有名らしい。 『私、ホラーは苦手なんだよ……。怪獣退治の方が100倍マシ。あとで田辺に文句言ったろ。』  セーラー服に身を包んだ彼女は、通路の入り口でため息をつきながらも意を決して先に進んでいった。  トンネルの中へ一歩踏み込んだ瞬間、空気が変わった。外とは別世界のように、そこだけが冷え切っている。湿ったコンクリートの匂いと、長い年月を吸い込んだ水の臭気が鼻の奥にまとわりついた。  ――コツ、コツ、コツ……。    足音が、やけに大きく響く。自分のものしかないはずなのに、半拍遅れてもう一つ、別の靴音が返ってくる気がした。 『おや……。』  数メートル先はT字の分かれ道だった。 『んー。こっち!』  彼女は少し悩んだ後、右へ進路を決めた。出口が少し先に見える。肝試しスポットという割には意外と短いな、そう思って足を進めようとした。しかし…… 『むぐっ!?』  突然、後ろから口を塞がれた。同時に腕を拘束され、そのまま強引に羽交い締めにされる。   『むぐぐ〜!?』 「おい……大人しくしろ。怪我したくなかったらな。」  耳元からは男の声。それと同時に、後ろから回された彼の腕にはナイフが握られている。 『むぅ……。』  彼女は抵抗をやめ、脱力した。 「そうそう、それで良いんだよ。」  男はいやらしく笑う。 「まさかJKが釣れるとはなぁ。」  その声に応じるように、背後からさらに2人の男が姿を現した。 「お、可愛いじゃん。」 「今日は当たりだなぁ。」    下卑た笑い声が、狭いトンネルに反響する。   『な…何するんですか……?』  彼女は怯えた様子で彼らにそう聞いた。目には涙を浮かべている。 「安心しろって。ちょっと遊ぶだけだから。」  下衆な笑みを浮かべながら、男は彼女の胸あたりを弄り始めた。 『ひっ…!!や、やめてください!!誰か!!誰か!!!』  思わず彼女は悲鳴をあげる。 「ひひひ、残念だったな嬢ちゃん。こんなとこで叫んでも誰も来ないぜ。わかったら静かにしな。」  男は再度、ナイフを顔に突きつける。そのまま彼女を地面に押し倒した。もう1人の男が彼女の腕を押さえつけ、身動きが取れない。 『ひっ……離して!!』  震える声。男達の笑い声はさらに大きくなった。   「だから無駄だって言ってるだろ。」  男はセーラー服をはだけさせ、スカートも無理矢理下ろし始めた。抵抗しようにも腕は抑えられ、さらに3人目の男がその様子をスマホで撮影している。 『うっ……うう……。』  彼女はついに泣き出してしまった。 『へへへ……心配すんな、ちゃんと気持ちよくしてやるから。』  そう言って男が自分のベルトに手をかけた、次の瞬間……  ――ドゴォ!!! 「ぐはっ!!!」  男が白目を剥いて吹き飛んだ。股間を抑えたまま壁へ激突する。   「なっ……!?」    続けざまにもう1人の顔面へ蹴りが炸裂。 「がぁ!!!」  さらに振り向きざまに、撮影していた男のみぞおちに右ストレート。 「ぐえっ!!」  手に持ったスマホは地面へ投げ出された。  わずか数秒の出来事。彼女にしばかれた3人は揃って床を転げ回り、悶絶している。 『も〜、女の子には優しくって習わなかった?君たちモテないでしょ。』  スカートを脱がされ、服もはだけさせられた彼女は、それを直すこともなく平然とそう言い放つ。 「な、なんなんだこのガキ……。」  股間を抑え、目に涙を浮かべた男が彼女を睨む。 『わっ、こわーい。でもでも〜こんなか弱い女の子を強姦しようとした君たちには、お仕置きが必要だよね♡』  彼女は指先でくるりと宙で円を書いた。すると、桃色の淡い光が倒れている男3人に降りかかる。 「な、なんだこれ!!」  男達の体はみるみる間に縮んでいき、サイズが合わなくなった服がダボっと落ちる。そして、その服の中から変わり果てた3人が姿を現した。 「え……あれ?……おれ、どうなって??」  成熟していない甲高い声が通路に響く。 「お、おい……嘘だろ……。」  彼らは自分の体を見つめ、自分の身に起こったことを理解した。自分のものとは思えない小さな手足。少し膨らんだ乳房。そして、先程までそそり立っていた男の証が消え去っていた。  そう。彼らは、自分たちが獲物として見ていた存在そのものへ変えられてしまったのだ。 『元があれでも結構可愛くなったね〜。』  彼女は彼らを見てケタケタと笑った。 「な、なんでこんなことするんだよ!!」  そんな彼女を見て、元男の内の1人が甲高い声をあげて泣き出してしまった。 『なんで?なんでって言ってもね〜。私襲われた側だし、自業自得じゃない?』  3人の顔色が一気に青ざめる。 『まーそういうことで。おーい、こっち来て良いよ〜。』  彼女は暗闇に向かって手を振る。するとその合図を待っていたかのように、十数人の男達がぞろぞろとこちらへ向かってきた。   「っ……!?」 『それじゃあ楽しんでね!あ、スマホは証拠としてもらってくね?』  彼女はスマホを拾い上げ、その場を去ろうとする。 「ま、待てよ!!何する気だよ!!」  彼女はきょとんとした後、満面の笑みを浮かべた。   『ん〜?何ってそりゃね。君達、これまでいっぱい女の子泣かせてきたんでしょ?だから次は君達の番ってことで!』 「はっ……??」 『じゃあ後は任せるね!みんな〜この子達のこと、たくさん可愛がってあげてね♡』    元男は、彼女の言ったことの意味を理解し、どんどん顔が青ざめていった。そんなことはつゆ知らず、男達がどんどん彼ら…いや彼女らに迫っていく。 「お、おい……やめろ、来るな……。」 「「「やめろぉぉぉぉぉ!!!!」」」  甲高い悲鳴が、暗いトンネルの奥へ吸い込まれていった。

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第六話 暗い夜道には御用心♡

実家にいる付喪神の話

 あなたは神様を信じますか?  ……いや、別に宗教勧誘ではなくてですね。神様とか幽霊とか、妖怪とか。見えはしないけれど、昔から「いる」と言われ続けているものってあるじゃないですか。  実は私、結構信じてるんですよね。そういう感じのオカルトチックな話。  今日お話しするのは、私が神様を信じるきっかけになった……実家にいる付喪神の話です。 「付喪神」とは古い器物に霊が宿って誕生する日本妖怪の総称、と日本では言われています。物に命が宿るという、何とも神秘的な話ですね。  私の家にいる(と、勝手に私が思っている)付喪神は、私が小さい頃作った1つの「てるてる坊主」です。  もう記憶も曖昧な、小学生にもなってない幼い私は、夏休みに祖母の家へ遊びに行きました。2泊3日の初めてのお泊まり。夏だし外にプールでも出して遊ぼうと、ウッキウキで向かったわけです。  しかし、残念ながらその3日間の天気予報は雨でした。しかも当日は笑えるくらい土砂降り。当然外には出れず、プールも中止です。  しょんぼりした私は、雨が止んでほしい一心でてるてる坊主を作りました。母がくれたガーゼにティッシュを詰めて、顔を描いて。丹精込めて作ったそれを窓に吊るし、こう願ったわけです。 「てるてる坊主〜てる坊主〜、あーした晴れにしておくれ〜♪♪」  晴れでなくても、せめて曇りくらいになればと思って。    翌朝、カーテンを開けた私は思わず声を上げました。外は雲ひとつない快晴だったんです。子供だった私は本気で思いました。「てるてる坊主が願いを叶えてくれたんだ」って。    そこからでした。  運動会の日。  旅行の日。  部活の大切な試合の日。  何かしらのイベントの日。  私は何かあるたび、そのてるてる坊主に願うようになりました。すると、不思議なくらい晴れるんです。予報が雨でも。降水確率100%でも。  これには何か、不思議な力が宿っているのではないかと。付喪神がついているのではないかと。信じてしまうには充分すぎました。  分かっています。そんなのただの偶然だと、たまたま運が良かっただけだと、そう思われるかもしれません。  でも、もう一つだけ話があるんです。    てるてる坊主って、本来は晴れを願う物だと思うんですよ。でも、一度だけ雨を願ったことがあるんです。  高校三年生の夏。私は野球部で、最後の大会を控えていました。ずっとレギュラーを目指して練習して、ようやくスタメンが見えてきた頃に事故が起きました。  ピッチャーが投げたボールが、私の顔面に直撃したんです。顔面デッドボールです。いや〜痛かったですね、初めて救急車乗りましたよ。無事?鼻を骨折し、即入院の即手術でした。そこまでひどくはなかったのと、大会があるからとお願いして一週間で退院させてもらいました。  しかし、退院したとて一週間は運動禁止。私がまともに動けるようになった時には、試合まで残り5日しかありませんでした。このまま試合に出場することは、残された時間的に叶いません。  そこで私は思いました。 「てるてる坊主に土日雨にして貰えば、試合が一週間後になるからワンチャン出れる。」  邪な考えでした。でも、そんなこと考えるくらいにはショックと焦りでいっぱいだったんです。だって考えてみてください。2年半くらいの努力が、一回の怪我で全て水に流れるんですよ。もう藁にもすがりたくなりますよね。  私は願いました。どうか雨にしておくれ、と。野球一筋の日々の最後がこんな終わりは嫌だから、と。  そして、試合の日。  なんと雨が降ったんです、それも土砂降り。晴れ予報だったのに。  朝起きてガッツポーズしました。てるてる坊主にありがとうとお礼まで言いました。今思えば、だいぶ不謹慎な奴ですよね。  試合は一週間延期になり、その間に調子を取り戻した私は無事スタメン出場することができました。試合には負けてしまったけれど、不思議と悔しさや悲しさよりも達成感が強かったのを覚えています。  ……長くなりましたが、これが私の実家にいる付喪神の話です。  どうでしたか?少しは信じてもらえたのではないでしょうか。これ全部実話です。あなたの身の周りにも、こんな感じの不思議な話があるかもしれません。信じる信じないはあなた次第ですが。    実家では、今でもそのてるてる坊主は吊るされています。もう10年以上前の物なので、布は黄ばんでいるし、糸もほつれています。普通なら、とっくに捨てられていてもおかしくないんですけどね。でも、ずっと窓際に吊るされたままなんです。この子はきっと、この家を守ってくれているのでは無いかと、そう思ったりもします。    だから、私は信じています。神様とか、幽霊とか、そういう“見えないもの”を。   ……だって、その方が面白いじゃないですか。

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小説ではありません。

 あ、どうもこんにちは。タイトル通りこれは小説ではありません。それでもいいよという方に、少々お聞きしたいことがありまして。  まー変な深読みせず、頭空っぽにして次の質問に答えて欲しいんですよ。 「好きな異性のタイプを3つ。」  なんでもいいですよ。ちなみに私は、年上で美人なお姉さ……ゲフンゲフン。 ・話しやすくて ・ギャップがある ・ロングヘアな人 とかですかね。  3つ思い浮かべましたか?  では2つ目質問です。 「あなたの前に、その3つを全て満たした人が2人いるとします。その2人から同時にアプローチされたら、あなたはどちらを選びますか?」  直感で構いません。  性格?顔?趣味?判断材料は色々あると思います。  思い浮かべましたか?  ではネタバラシです。 「2つ目の質問で、あなたが2人のうち1人を選ぶときに決めた判断条件。それが、あなたが恋愛において最も重要視する点…だそうです。」  どうです?当たってますか?  実はこれ、私が大学一年生の時に先輩に仕掛けられた心理テストでして。まーゆうて心理テストなので、外れた人も知ってた人もいると思います。  当時何も知らなかった私は、2問目で勘と答えました。はい、今でもネタにされてます。  でもこれ結構友達にやったりしてるんですけど、今のとこ高確率で当たってるんですよ。たまたま当たってるだけなのか、割と信憑性あるのか気になってしまって投稿した次第であります。  飲みの席でやると盛り上がるので、合コンなどの話題のネタにできるのではないでしょうか(学生同士の飲みの席だけかもしれないし、私は合コンとか参加したことないので、空気が地獄になっても責任は負いかねます。)。  以上です。ここまで読んでいただきありがとうございました。    あと余談なんですけど、当時の飲みの席に嫌いな先輩がいましてね。顔カッコよくないし、結構嫌われているくせにめちゃくちゃ面食いな人だったんですけど。その先輩が2問目で、 「顔が可愛いほう!!」  って答えてて腹ちぎれるくらい笑いました。  

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