樹月 勝
110 件の小説壱 猫又
これはほんの最近のお話。 とある街に裕福なお坊っちゃんが住んでいました。 お坊っちゃんはとにかく好奇心が旺盛で何にでも興味を示したそうです。 そんなお坊っちゃんが一番興味を示したのは動物の解剖でした。 お坊っちゃんの父親はお医者様だったので良くメスを借りてカエルやヘビなどの小動物の解剖をしていました。 もちろん猫も例外ではありません。 ある時、お坊っちゃんは一匹の猫を捕まえてきました。 お坊っちゃんは猫を縛りつけ、尻尾から一気に引き裂こうとしましたが、尻尾が裂けたところで拘束が緩み、猫は逃げてしまいました。 数日後、街ではとある噂が流れていました。 猫又の噂が…。 これは後日談ですがそのさらに数日後、お坊っちゃんが空き地で変死体となって見つかったそうです。 内臓を全て取り出された状態でね…。 …恐怖の始まりは大体人間からですよね。 人間が抱いた恐怖が妖怪を産む。 でも今回はどちらが妖怪かわかりませんね? 妖怪の根本が人間説を私は推しますよ♡
第0話 語り手
皆さんこんにちは。 僕のことは「語り手」とお呼びください。 早速ですが皆さんは「妖怪」を信じますか? …。 信じない方がほとんどではないでしょうか? かく言う僕も半分は何かの間違いか、人間の創作物だと思っています。 けれど、もし存在しているのだとしたらどう思いますか? 怖いですか? 気持ち悪いですか? そうですね、その通りです。 自分が見慣れていないものや異なるものがあると人間は不安に感じるものです。 そんな妖怪たちの話をこれから僕が語っていきたいと思います。 僕が彼らの「妖怪」の真実をお教えしますよ。 ではご機嫌よう。 あ 忘れていましたが 僕がするのはあくまでも想像です 貴方の周りに出たからと言って僕に文句を言わないでくださいね? では adiós
第一話 ドワーフの悩み1
俺は息を深く吸い込み、コーヒーの芳しい香りを堪能した。 昼下がりの午後。 一仕事終えたあとのこのコーヒーの一杯は格別だ。 もちろんノンシュガー。 窓から見える晴天の空を見ながら、コーヒーを一口啜る。 苦。 やっぱ砂糖入れよ。 そんなチルな一時は、どっかのやんちゃエルフのせいで吹っ飛んだ。 ムーア「おっじさーん!!遊びに来たよー!!」 バスター「うるせぇよエルフっ娘。おじさんのあったかブラックコーヒーが冷めちまうだろ?」 ムーア「さっき砂糖入れてたじゃん?」 くっ、こいつ意外と見てやがる。 バスター「ちげぇよちょびっとしか入れてねぇから、ほら黒にちょっと白混ぜたぐらいじゃ白にゃならねぇだろ?黒って200色あんねん。」 ムーア「へー。あ、私もコーヒー貰うね?」 ムーアの冷めた態度に唖然としつつ、もう一度コーヒーを啜る。 ムーアは俺の座るソファの向かい側に座り、熱々のコーヒーをフゥフゥし始めた。 まだまだガキだなぁ。 そう思いながら俺もコーヒーを啜る。 …まだ苦い。 その時、事務所のドアに設置してあったベルが鳴った。 ラブリュス「すまぬ。ここは「バスター情報事務所」で合っているか?」 バスター「合ってますよ。依頼ですか?」 そうここは情報屋。 ここアルカディア共和国に置けるあらゆる情報の提供、捜査を担っている。 まぁ探偵業とほぼ同じようなものだが…。 ムーア「…ドワーフって初めて見ました。」 バスター「ムーア、お客様にお茶かコーヒーを。」 ムーア「はーい。」 一応ムーアもここの従業員だ。 まぁ俺の助手ってとこかな。 それはさておき、ドワーフをソファに座らせる。 バスター「さて…それで依頼はなんでしょう?」 ラブリュス「…ここの事務所は…なんでもしてくれるのか?」 バスター「…報酬次第…そしてうちはなんでも屋ってわけじゃないんでね。出来ない依頼は断らせてもらってる。」 ラブリュス「…斧を…。斧を…探してもらいたい。」
暗闇描く物語
むかしむかし あるところに一人のお侍様がいました お侍様はいつもいつも お姫様を助けてくれます どんなバケモノからも悪魔からも… 「…どうですか?ヒイラギ?いい物語だと思いませんか?」 目を閉じた少女は手元にある真っ白な本を閉じる。 大きな廃墟の中にはその少女の声だけが響く。 「…いい物語だな。ツバキ。」 「そうでしょう?」 ツバキはヒイラギに笑いかける。 ツバキは立ち上がると空に絵を描き始めた。 「私は感謝してるんですよ?盲目になって真っ白なキャンパスが目の前に現れたのですから。」 少女は手探りでポケットからペンを出すと空中に線を描く。 線はやがて立体となり、大蛇となって動き出した。 そんな時、一匹の大蛇が現れました 大蛇は今にも姫を喰らおうとしています その時、侍は大蛇目掛けて走り出しました ヒイラギは鞘から剣を抜くと大蛇に向け、走り出した。 大蛇は首を真っ二つに斬られ、そのまま倒れ込んだ。 大蛇は段々と薄くなり、やがて地面に消えてしまった。 ヒイラギは剣を収めるとツバキの元へ行き、ツバキを椅子に座らせた。 侍は大蛇を斬り、姫を助け出しました そして姫と永遠に結ばれましたとさ めでたしめでたし 「…いい物語だよ。ツバキ。」 「そうでしょう?ヒイラギならわかってくれると思ったんですよ?」 そう言うとツバキはヒイラギに笑いかけた。 これは盲目の姫と一人の侍の物語 彼女は自ら危険を作り、守られていることをまだ知らない 彼女にとっての世界とはその瞼に映る自らが書き出した物語そのものなのだから
雪女
ある山の麓町に一人の少女がいた。 少女は病弱、故に一日の大半は床で寝て過ごした。 少女の両親は村一番の医者を呼び、治療をさせた。 だが一向に治る気配もなく、医者も音をあげ、いつからか来なくなった。 少女は痩せ細り、髪が白くなった。 そんな少女を町の人々は畏怖した。 町を歩いているだけで少女は白い目で見られた。 ある日、少女が町を歩いていた時、地面に転がる小石に躓き、倒れた。 周りが怖がり近づかない中で、一人の心優しい老人が少女の手を取る。 少女の手を取った老人は顔を青ざめすぐに少女の手を離した。 少女の手は死人のように冷たくなっていた。 だが、少女は元々冷え性だった。 その後、その老人は死亡した。 老人の死去は瞬く間に町に広がり、少女は一層、畏怖の目で見られるようになった。 老人が死亡したならばまだここまでの噂にはならなかったであろう。 だがこの噂をより一層深くさせたのは少女の両親の死である。 病で死んだとされているがその実態は謎に包まれており、少女が原因ではないかと噂された。 数日後、少女の住んでいた町が雪崩に会い、ほとんどの人間が亡くなった。 遠出をしたものなどは助かっていた。 命からがら逃げてきた者もいた。 その一人が言った。 少女が何か呪いを言った後に雪崩が起きたと。 後に少女は雪女と言われ、今でも生きているのではと噂されている。 これは私が作った一つの物語 雪女と呼ばれた少女は本当に呪いの言葉を口にしたのでしょうか? 本当は「助けて…。」と言ったのではないでしょうか? まぁ、少女に直接聞くしかありませんが…
天使は男が嫌いです
「ヘックション!!」 私は男の人アレルギーだ。 男の人が近づいただけでサブイボが出るし、くしゃみが止まらない。 お医者さんからその言葉を聞いた時、私は絶句してしまった。 男の人に近づかなければいい。 そう思う人も多いかもしれない。 でも私が発祥したのが高三の夏!! もうすぐ受験シーズン到来って時に転校だなんてしてられない。 絶対!! 絶対に大学に受かって薔薇色のキャンパスライフを楽しんでやるんだから!! そう思っていた時期もありました…。 そうだった私が通っている弦財学園は元々は男子校だった高校。 男女比率は3対7。 私にとっては最悪の空間だった。 「ほしの?大丈夫?」 そんな私を気遣ってくれるのが友達の紗希。 「紗希ぃ。学校生活ってごんなづらかっだっけぇ?」 「はいはい、鼻声になってるよ。」 紗希は面倒見が良くて頼りになる私の一番の友達だ。 男の人アレルギーって打ち明けても変わらず接してくれる。 「でも最後まで居るって決めたのはほしのじゃん?」 「うぅ、それ言われたら何も返せない…。」 「とりあえず色々対策考えて、卒業まで頑張ろ?」 「…うん。」 本当に紗希は面倒見がいい。 将来、いいお嫁さんになるんだろうなぁ。 「…そろそろかな?」 今紗希が何かいいかけていたが、鼻水で中耳炎一歩手前な私の耳には聞き取れなかった。 放課後になると私は男地獄から解放される。 やっぱり鼻から息が吸えるって素晴らしい!! 私が歩いていると前から金髪の男の人が歩いてきた。 ゲ! 男の人!? 私はできるだけ遠く離れてすれ違おうとした。 しかし男の人は私に近づいてくる。 「…やっと見つけた!!」 わ、美形。 男の人は私の肩に手を置いて息をついた。 てか手が…。 …あれ? 鼻水が出ない? サブイボが出ない? なんで? 私が困惑していると男の人は私を抱きしめた。 「…ちょ!?」 それと同時に爆発音のようなものが聞こえた。 男の人が私から離れると男の人の背中には白い羽がついていた。 いやごめん。 私も形容し難いんだけどこれは羽だわ。 男の人の視線の先に目をやるとそこには黒い羽を生やした紗希が立っていた。 え? 何? どういうこと? 紗希はいつもかけている眼鏡を外してこちらを見た。 「まさか、貴方もいるだなんてね。ザドキエル。やっぱり私の推理は正しかった。」 ざ、ざどきえる? 私は紗希が何を言っているかわからなかった。 「…彼女は傷つけさせないよ。エストリエ。」 だ、誰かこの状況を説明してくれぇ!!
LIKE〜二回目の初恋〜
俺には好きな子がいた。 中学校の文化祭。 有志の発表でダンスを踊っていたその子を見た。 可愛い、恋する理由なんてそんなものなのだろう。 彼女は優しく、成績優秀で、それでいて可憐な女性だった。 俺は彼女に近づこうと必死になった。 まぁ彼女には彼氏がいたのだが…。 結局、卒業まで告白もできず、俺の中学時代は何も無いまま幕を下ろした。 そして現在。 高校を卒業した俺は大手企業に就職するまでに至った。 高校の三年間、別の恋をしようかと思ったが、彼女のことを考え、全く恋愛する気は起きなかった。 部活や勉学に打ち込み、違う形の青春をして俺の高校生活は幕を閉じる。 …だ、大丈夫。 俺の高校時代は間違いでは…無いはず。 俺の脳裏に彼女が過ぎる。 「じゃあ、花島くんの職場はここね?」 部長がオフィスのドアを指刺す。 そうだ! 今は会社にいち早く慣れるために頑張っていこう! 俺がドアノブに手を掛けようとするとドアが突然開き、女性が目の前に立つ。 その女性を見て、俺は目を丸くした。 俺が初恋した彼女の生き写しでは無いかと思うくらい、そっくりだった。 「あ、ごめんなさい。人が立っているとは思わなくて…。」 「い、いえ!だ、大丈夫です。」 「って、もしかして今日から配属される子?よろしくね?」 これは俺の二度目の初恋の物語である。
無茶しないで
ある時 僕の憧れの人が足を怪我した 足に重たいものを落としてしまったらしい 僕は駆け寄って声を掛ける 「大丈夫ですか?」 「大丈夫だよ。」 とその人は足をさすりながら言った その時 僕はそれ以上の言葉を 掛けてあげることができなかった 心配して遠くから見ていても 足を庇いながら歩く 無茶しないでと言いたいけれど 僕はあなたが無茶をしてしまう人間だと 知っているから 僕もそうしてしまうだろうから 周りに心配かけたくなくて 見栄を張って 私は強いと でも 僕は悲しい 弱いところを見せてくれないのは 僕が頼りないから 僕はいつでも寄りかかれる 「木」ではないから 「無茶しないで」 そんな言葉が言える人間に 人を支えられる「大樹」に 僕はなりたい
悪夢
私がよく見る悪夢 多分周りの人に話しても それのどこに恐怖を感じるのか? と返されることだろう だが 私はその夢を見て 動悸が激しくなり 冷や汗をかき 飛び起きる その夢の内容は 太っている男がいて その男は大衆の真ん中で芸を披露している 太っている男は爪楊枝を出し 背中と地面に爪楊枝を刺し バランスをとっている だが爪楊枝は男の体重に耐えきれず 簡単に折れてしまう 簡単に言えば失敗だが 何故か観衆はスタンディングオベーション 私はその時、恐怖を感じた 周りからすれば恐怖しないような悪夢 だが私はこの光景を見て恐怖してしまった 観衆の顔が醜悪に見えてしまった 皆さんは悪夢を見たことがありますか? よかったら教えて欲しいです
退屈
つまらない 戦が終わって、日本が開国した そこまでは別にいい だが上の連中は俺から刀を奪おうとして きた 無論、斬ってやったがな 廃刀令だかなんだか知らねえが 俺から刀を奪おうなんざいい度胸だ だが上の連中は俺から競争相手すらも奪い やがった 相手のいねぇ勝負なんざつまらねぇ 退屈だ 戦があった頃は、俺みてぇな連中がその辺 を歩いてやがったのに 今じゃただの狂人扱いだ 足りねぇ 道場破りも飽きてきちまった 剣術道場ってのはカスみてぇな連中の集ま りだな あーつまらねぇ 弱い奴を斬ってもただただ虚しいだけだ 退屈だ そうだ 犯罪者を殺そう 辻斬りなら多少は骨のある奴がいるだろ ははっ まだ刀を捨てきれねぇ馬鹿共が うじゃうじゃいやがるな あぁ、そうだった 俺も馬鹿だった