月ノしずく

7 件の小説
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月ノしずく

はじめまして。月ノしずくといいます。文学部を出たわけじゃないし、学はないけれど、文章を読むのも書くのも好きです。 だから、ただ書きます。

かめん

そのしたにある きみのかめん なんまいあるか わからない わたしのしたにも あるかめん まいにちうまれ それからきえて いちばんうえに するかめんが しんじつとは かぎらないけど ときどきふと したのかめんが でてきそうになる よわさ ずるさ いかり かなしみ きれいなもの きたないもの どのかめんも すべて あなたのひとつで わたしのひとつで かなしみは かなしみのうみに にくしみは にくしみのうみに はがしてながす やさしさは つちにまいて うれしさも つちにまいて ふりそそぐあめは にくしみと かなしみのうみから きたものだけど やさしいはなと うれしいはなを さかせてくれるから だいじょうぶ あなたも わたしも だいじょうぶだよ

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かめん

贖罪 第一話

「じゃあ、また」 「うん。またね」 夕暮れどきの公園の前で、私たちはそう言って別れた。 ずっと友達だった。 楽しいことも、悲しいことも共有できた。恥ずかしがらずに、自分を曝け出せた。一番の親友。 だけど、私たちの間に“また”が来ないことを私は知っていた。 彼女の笑顔についた、初めてで最後の嘘だ。 あれから三十年もの年月が経とうとしている。 彼女がどこでどんな風に歳を重ねていたのか、私は知らない。 でも、想像はつく。 だって彼女は人間として、とても素敵だった。二十歳になったばかりだったのに、まるで人生を何周もしたような落ち着きさだった。 素敵な女性になっているはずだ。 「どうしたんですか。ボーっとして」 「えー、ボーっとしてた?」 「してましたよ」 「まずい。認知症かなあ」 「また冗談言って。早すぎますよ」 「何言ってんの。若年性の認知症だってあるってテレビで言ってたわよ」 「そうなんですか?でも美雪さんはないと思うなー」 「何それ」 「えー。なんとなくですけど。勘です、勘。若いもん、美雪さん」 「褒め言葉どうもありがとう。何もあげるものないけどねー。さ、仕事しよ」 「煽てたわけじゃないんだけどなー。ま、いっか」 いつも私に話しかけてくる彼女はまだ二十代前半で、あの頃の私たちを思い出させる。 人とはできるだけ距離を置いていたいのに、彼女に話しかけられるとつい相手になってしまうのは、きっと彼女の人柄なんだろう。 そんなところが、かつての親友だった彼女と重なる。 孤独というワードは嫌いだ。 冷たく、暗く、痛い。 私の生活は世間の大半の人から見ればおそらくは、そう呼ばれるものなんだろう。 工場の仕事を定時で終え、帰り道スーパーに寄って半額シールのついた惣菜を買う。帰る先は、駅から徒歩15分の単身者向けアパートの一室だ。 小さなベランダで始めた水耕栽培は、インスタで見かけて始めた。動物でも植物でも何でもいい。命を育てていると感じられる瞬間が何よりの幸福だ。 思わず顔を顰めるほどの塩っぱさな上に肉がパサついていたチキン南蛮を食べ終えた。 六畳の和室。他人がどう思うかは知らない。ただ、ここが私のお城であることは間違いなく事実だ。 普段あまり観ないテレビを観ようと思ったのは単なる偶然だった。最近の番組表なんて分かるはずもなく、かと言って調べる気力はなく、適当にチャンネルを押していると知った顔がそこに突然現れた。 彼女だ。 間違いない。何十年経っても、彼女の顔を間違えない自信がある。くっきりとした瞳と、彼女のお父さん譲りのエキゾチックな顔立ちは同性の目から見ても羨ましくなるほど素敵だった。 番組は国内の至るところを周り、その土地の美味しいものや珍しいことを取り上げていた。彼女は「素敵な場所があるんですけど」と昔と変わらない笑顔で言い、番組スタッフを案内して歩き出した。 紹介された小さな店には、色とりどりの傘が飾ってあった。彼女は「このお店のディスプレイは全てが地元の職人さんたちの手作りなんですよ。小さな町ですけど、みんなで支え合ってるんです」と言うと、一瞬、遠くを見つめるような表情をした。 あの夕暮れ時の公園から、私たちはほんの少しも交わらない道を歩いてきた。彼女がどんな道を歩んできたのかを、誰かに聞くことも私には許されなかった。とにかくあの頃の全てから私は距離を置いたまま過ごしてきた。 そうすること、私が孤独という環境下に身を置くことで、私は私という存在をこの世界から消しされたような錯覚に陥っていた。 テレビのリモコンを手にしたまま、どのくらいの時間が経ったのか。時計を見ると2時間が過ぎていた。 歯磨きをして、お風呂に入る。いつもの流れをちゃんと踏んでいるはずなのに、どこか落ち着けない。 この不思議な感覚が、二度と会えなかったはずの存在を確かめられた嬉しさなのか何なのかはわからない。だけど、彼女は生きている。想像していた以上に素敵な女性になっていた。それだけで、充分な気がした。

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贖罪 第一話

交差点

重なるのは一瞬 まるでさよならを告げるみたいに 別々の方へと向かう どこへいくの どんな人に出会うの 終わりはあるの そんな想いを言わないまま だけど たった一瞬でも 重なりあえたのなら その先に続いていく道が どうか幸せであるようにと 願わずには、いられないのです

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交差点

つい

ひかりとかげ よろこびとかなしみ むとゆう であいとわかれ せいとし よせてはかえす、なみ せいとどう からみあうくさり のがれられない それが いきているあかし

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つい

いろ

憧れの景色は いつか見た風景のように 色がなく いつもどこかさびしい空気を纏っていて 手を伸ばしても辿り着かない わたしという人間が この地に生まれたとき 喜んでくれた人はたしかにいて だけど 通りすぎてしまった景色は いつのまにか 色をなくして だんだんと薄くなり 本当に存在していたのか わからなくなる いまこの瞬間 生まれてくる命たちへ 真っ白なこの世界に 色をつけていくのは あなた

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いろ

ピンク

桃の花、見つけた ひら、ひら 彼女のほっぺ ぽっ、ぽっ ふと目についた 店先のひなあられ 通り過ぎていく ゆれる、ちいさなリボン もう掴めないのに 春は、またくる

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ピンク

いつからそこにあったのか 知らぬ間に そこにぽかりと空いていて 覗いたら最後な気がして それでも 覗かなければ何も始まらない気もして 覗こうと 背伸びする自分がいた はじまりも おわりも すべて 選ぶときがある いくつもある窓 さあ、どれを覗こう

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