Natume
177 件の小説あのころ君に言えなかった言葉6
「あ!紫おはよう!」 「お、おはよう。」 「どうしたの?ぎこちないけど。」 「そうかな?そんなことないよ。」 「あ、木嶋くんだ!」 「あっ綾菜!」 「ん?」 「湊のことどう思う?」 「え?」 「付き合いたいとかって思う?」 「ううん?全然。」 「じゃあ告白されたら?」 「変わんないよ?いきなりどうしたの?」 「私、湊と綾菜がお似合いだと思う。あ、もちろんいい意味で!」 「ちょっと冗談はやめてよ笑私と湊がお似合いだなんて笑」 「……。」 −「ねえ湊。」 「あ、紫じゃん。名前覚えたよ。」 「私、綾菜と湊が付き合えばいいのにって思ってる。」 「…それで自分と聡太が付き合ったら解決だって?」 「そう。性格悪いこと言っちゃうけど聡太と綾菜、付き合えないと思う。お互い不器用すぎると思う。」 「まー不器用だよね。」 「それだけ?綾菜と付き合いたくないの?」 「付き合いたいさそりゃ。でも今はあの2人を見守るべきじゃないの?」 「見守る?」 「そう見守る。今が1番旬なんだから。あの2人は。」 「どこがよ。聡太は好きじゃないっていうのは言ったよね?だったらこんな無駄なことはもうやめたほうが、」 「あのさぁ、性格悪すぎ。少しは親友の幸せ願ったら?」 「私だって願ってるわよ!」 「願ってない。少なくともね。俺、あんたみたいな女が1番嫌い。都合のいいことばっか並べて挙句の上大事な人の幸せぶち壊そうとする人が1番嫌いだよ。」 「ッ…」 「…ま,やるならあとは1人でやってよね。」 湊はどこかへ行った。 「ああああっ!もうなんなのよっ!」 −「あ!紫いた!探したよ!帰ろ!今日部活ないよね?雨すごいねー。」 綾菜は私の手を握ってきたけど振り解いた。 「…えっ?」 「私、聡太のことが好き。」 「…待ってもう一回言って今の。」 「聡太が好きなの!好きなんだって!」 「紫…」 「あんたと聡太のことを見て行くたびにどんどん惚れていったの!でも綾菜のことを思って隠してたけどもう限界よ!」 「……。」 「だからもう今までみたいに仲良くできない。」 「待って紫…!」 −翌日− 「…あ、紫、」 紫は木嶋くんのところへ走って行った。 「おはよう!今日お昼ご飯一緒に食べようよ。」 「え?うん。別に構わないけど。…尼崎は?」 「…さあ?知らない。」 「……そっか。」 「……。」 紫も本気なんだ。 「やっほープリンセス。」 「湊…。」 「ああ、紫の好きな人知っちゃった?」 「私、紫と仲直りできないかも。」 「…そうかな?ま、とりあえず行こ。」 「いつから知ってた?紫の好きな人。」 「少し前かな。聡太モテるんだな。」 「私の好きな人が湊だったら良かったのに…。」 「えっ?」 「はぁ。」 「今のどういうこと?!ねえ!」 −「尼崎。」 「あ、木嶋くん。」 「今日の委員会出れないから代わりに出れる?」 「ああ、うん。わかった。」 「元気ないけど大丈夫?」 「うん。大丈夫。」 「ほんとに?」 「…少し質問なんだけど、」 「ん?」 「紫のことどう思ってる?」 「え?…普通の友達だけど。」 「…そう。ごめんねいきなり。」 「ううん。どうしたの?喧嘩でもした?」 「ただの喧嘩ならどれだけ良かったか…。」 「……僕好きな人ができたんだ!」 「えっ?」 「好きな人が…できた。」 「それって誰!?」 「それは…」 「…言いたくないよね。」 「……。」 「じゃあね!委員会行ってくるね。」 「…うん。」 やっぱり私はただのクラスメイトだった? 「はぁっはぁっ、…嫌だよ…泣」 選ばれたのは紫なのかな。 −委員会が終わったから教室へ戻った。 すると向かいの廊下で紫と聡太が話していた。 「…ッ!」 突然2人がハグをした。 「!?」 私は走って帰った。 「湊くん最近付き合い悪くなーい?」 「…あのさ、」 綾菜が走っているところを見た。 「綾菜?帰るんなら俺も、」 「ごめん。…1人にさせて。」 声が震えていた。 「何があったんだ?」 −「うっ、あああっ!泣」 リュックに入っていたメモを取り出した。 「こんなものっ!」 メモをぐちゃぐちゃに破いた。 「ああああああっ!泣」 声が枯れるほど泣いた。 あーあ、終わっちゃった。意外と早かったな。 −翌日− 「綾菜!」 「…湊。」 「昨日大丈夫だったか?」 「ああ、昨日ね。大丈夫に見えた?」 「…。」 「なーんてね。大丈夫よ!私は失恋如きで落ち込むような女じゃないから。」 「目が腫れてる。」 「昨日映画を見たのよ。すごく感動した。」 「…今日から一緒に帰らない?」 「…うん、」 −「尼崎、」 「ごめん今忙しい。」 「……そっか。」 私は木嶋くんに合わせる顔がなくて離さない日々が何日も続いた。 「コンビニにノート買いに行かないと。...雨か。、」 コンビニに向かっている途中紫と会った。 「……。」 知らないふりをしよう。そう思った。 「私のこと嫌いになった?」 紫が突然そう言った。 「えっ?」 「嫌いになった?私のこと。」 「何言ってるのよ。そんなことないよ!」 「私、聡太に告白しようと思ってる。」 「……。」 「もしまだお互い聡太のこと好きなんだとしたら私たち終わりだよ!仲良くいられるわけない!」 「紫っ、」 「綾菜、どうして早く湊と幸せにならないのよ!湊はあんたのこと思ってるのに!なんでよりによって聡太なのっ!?泣」 「だったら、だったら私はどうすれば良かった!?紫が聡太を好きになったから今度は湊の方に行けって?私をなんだと思ってるの!?私は、紫の都合のいい友達?」 「わたしだって聡太を嫌いになりたいよ!綾菜。私たち親友だよ?前までなら綾菜のこと第一優先だった。だけど今は聡太が第一優先なのっ!だから、」 「もういい加減にしてよっ!私がどれだけ紫のこと思ってるか知ってる?紫のために木嶋くんだって諦めようとしてるのに、なんなのよ!だったら私はこれからどうしたらいいのか教えてよ!湊と幸せになればいい?それで満足?」 「うっうっうっ泣」 「こんなんで満足できるなんて、羨ましいよ。」 私は走って逃げた。 湊から電話がかかってきたが無視した。 すると道端とサラリーマンにぶつかって転んでスマホを落としてしまった。水滴で通話ボタンがおささった。 −「はあ、なんで出ないんだ?あ,出た。もしもし?」 [君、大丈夫?…痛そうだけど。] 「この声誰?綾菜?もしもし?」 [痛い…。痛いよ…。] 「綾菜?どこが痛いんだ?大丈夫か?」 [痛いよおっ!すごく痛いよ!ああああっ!泣] 「外か?どこにいるっ?くそっ!」 −「綾菜!」 「湊…?どうして、」 「大丈夫かっ?」 「大丈夫だから、」 「大丈夫じゃないだろ!どうしていつも嘘つくんだ!?」 「つきたくてついてるわけじゃない!私紫と完全に終わったよっ。目も合わせられなくなっちゃったっ。」 「…。」 綾菜を抱きしめた。 「大丈夫だから。俺がそばにいるから。」
あの頃君に言えなかった言葉5
「……。」 『俺も好きだから。』 「ああくそっ!」 「うわどうしたの?」 「…いやなんでもない。…んっ?君確か尼崎の友達の。」 「紫ね。なんで誰も私の名前覚えてないのよ。」 「クラスが違うから。不快な気持ちにさせたなら謝るよ。」 「…THE委員長って感じね。」 「今日は尼崎と一緒じゃないの?」 「さっきまで一緒だったよ。でも見てあれ。」 「あれ?」 尼崎と湊がふざけ合っていた。 「最近妙に仲良いのよねあそこ。」 「……。」 「そんな怒んないでよシワが増えるよ!」 「なんだって!?」 「…はぁ、」 「何よため息なんかついて。」 「ううん。」 その時走ってきた男子生徒と紫がぶつかった。 「きゃぁっ!」 「ッ!」 倒れそうになったところを聡太が受け止めてくれた。 「だーかーらー!」 「……。」 「どこ見てんの?」 木嶋聡太が紫を受け止めてるところを見てしまった。 「…ぁ、」 「…行こう。」 「…、」 「ッ!ご、ごめん。」 「ううん。怪我は?」 「ない!…じゃあ行くね。ありがとう!」 「うん。」 −「ここは分配法則をしてー……」 あの時のことが気になりすぎて集中できない。 ねえ木嶋くん。木嶋くんにとって私はどんな存在?ただのクラスメイト?ただの委員会の仲間?ただの友達?それか…好きな人?…最後はないか。 「はぁ。」 「じゃあため息をついてぼーっとしてる尼崎。ここ解いてみろ。」 「ええっ!?もうなんで…、」 どうしよう。何もわからないよ。 「…わかりません。」 「はぁ、わからないならわからないなりに話し聞けよ。」 「…はい。」 −「尼崎。これ先生から。」 「……。」 「…尼崎?…寝てるのか。…気持ちよさそうだな。」 その時メモ帳が落ちてるのが見えた。 「これ尼崎のか。…きになるな。見てみようかな。…いや!ダメだ。人のものを勝手に覗くなんて。」 尼崎と目があった。 「…木嶋くん…?」 「あ、尼崎、これ先生から。」 「ああ、ありがとう。んー!はぁ。よく寝た。」 「じ、じゃあ僕行くね。」 「うんありがとう!」 「はぁ。」 「まーたため息ついてる。」 「紫?」 「なんかあったの?」 「別に,なんもないよ。」 「もしかして綾菜?」 「ち、ちがう!」 「…嘘つくの下手すぎ。何があったの?」 「なんもないよ。」 「…そ。あんた綾菜のこと好きなの?」 「はっ!?なにいきなり!」 「動揺しすぎでしょ。仮に綾菜のことが好きなら早く行動したほうがいいよ。鈴木湊に取られちゃうかもよ?いいの?とられて。」 「別に好きじゃないから。」 「…だったら、」 「?」 「いいの?綾菜のこと。」 「…うん。」 「…そう…。」 −「湊くん今日カラオケ行かない?」 「…。」 前まではあんなに大好きだった女の子も今では無関心になった。全部綾菜と出会ってからだ。綾菜以外の女の子が面白いと感じない。 「ちょっときて!」 「うわっ!なに?!」 「湊くん?」 −「なんだよ。なんだっけ名前。」 「紫よ!そんなに覚えづらい?!ってこんなことはどうでもよくて木嶋聡太のことだけど。」 「聡太?聡太がどうかした?」 「綾菜のこと好きじゃないんだって。」 「…ふーん。そっか。」 「そっかって、怪しいと思わないの?綾菜のこと絶対好きだったじゃんあれ!」 「まー聡太はそういう人だよ。好きかと思わせたら実は違う。人たらしってやつ?もちろん狙ってはないけど。」 「はぁ?」 「でも別に俺はどっちでもいいよ。てか、好きじゃない方が嬉しい。」 「…。」 「紫?だって嬉しいでしょ?」 「えっ?」 「だって好きじゃん。聡太のこと。」 「は!?好きなんてこと、」 「あの時、聡太がお前を受け止めた時恋におちたでしょ?」 「ば,バカじゃないの!?」 「俺はプレイボーイだからわかるんだ。恋に落ちた時の顔。」 「そ,それだけで落ちるほど軽い女じゃない。」 「あー!後あれだ。最初の方ずっと聡太見てたもんね。親友の代わりに聡太を調べてたけど調べてるうちに落ちちゃった。とかないの?」 「…。」 「うわ図星笑」 「お願い綾菜には言わないで!」 「だったらバレないようにしなよ。綾菜にバレないように好きになってバレないように仲を深めるんだ。ま,俺はそんなわざわざ綾菜が悲しくなるようなこと言わないけどね。…じゃ!」 「……ほんとにムカつくあいつ。」
あの頃君に言えなかった言葉
「やっほ!」 「わっ!びっくりした。鈴木湊かあ。」 「なんだその反応!朝からこんな僕のかわいい顔見て幸せじゃないの?」 「どこがかわいいのよ。生意気そうな顔に見えるけど!?」 「可愛くないなぁ。」 「可愛くなくて結構です。」 「あ、そうだ。聞きたいことあったんだ。」 「聞きたいこと?」 「そう。昨日聡太と会った?」 「学校だからあったに決まってるでしょ?」 「ちがーう!放課後ね。」 「あー放課後?…会ったけど?」 「そのせいかな?聡太がすっごく今日笑顔なんだ。」 「…そうなの?でも私のせいでは…」 昨日は確かに最後の方すごく笑顔だった。 「私のせいって可能性…ある?」 「え?そうじゃないの?」 「ほんとにっ?嘘じゃない!?」 「うんほんと。」 「やったーっ!!」 湊の手を握った。 「ッ!」 「やったやったー!」 「……。」 「綾菜ー!トイレ!」 「あ、はーい!じゃあねっ。」 「湊くんおはよう!…顔赤くない?風邪?」 「嘘,赤い?うわ、最悪。」 −「あ、おい!そこの綾菜の友達のなんだっけ!」 「紫ね!そろそろ覚えたら?で、なに?」 「そう紫!…あのさ相談なんだけど。」 「相談?」 「うん、そのー、…1人の女の子に触られて顔が赤くなったのって…これ、恋だと思う?」 「女に慣れてないからじゃないの?」 「女の子には慣れてる!…慣れてなかったらこんなんになってない。しかも1人の女の子な!」 「ふーん。…それなら恋だね。」 「ま、まじで?」 「それ以外考えられない。で、その子の名前は?」 「教えねえわ!」 「チェっ、ケチ。話済んだなら私そろそろ行くよ。」 「あざーす。…ああ!もう最悪!この俺が、パーフェクトな俺が!壊れてくよぉー!」 −「じゃあ文化祭の出し物委員長副委員長中心で決めといて。」 「はい。じゃあなんか案ある人?」 「はい!メイド喫茶!」 「下心があるのでダメです。」 「あ!じゃあフォトスポットは?それならみんな自由行動だぜ。」 「それあり!ー 「じゃあフォトスポットでいい?何か他にもある?」 「ないでーす。」 「フォトスポットかぁ、制作が大変ね。」 −「あ!最悪水筒忘れちゃった。…買いに行こう。」 教室を出ると横に鈴木湊が立っていた。 「鈴木湊?なんでそこに立ってんの?」 「い、いや?別になんでもないけど。」 「あ、そ。」 「あ、おい!」 「なに?」 「ど、どっか行くのか?」 「水筒忘れたから自販機に。」 「お、奢ろうか?」 「なによいきなり。借りを作りたくないんだけど。」 「借りなんていらないよ。」 「あ、もしかしてあんた」 「な、なんだよ。」 「わたしになんかした?笑」 「は!?してないから!」 「冗談よ冗談。奢ってくれるんなら早く行こ。」 「ああ。」 −「ほんとに買ってくれるなんて。」 「優しいんで。」 「ていうかこれが180円なんて、高すぎ。」 「なに、お金ないの?」 「あるはあるけど、もうちょっと欲しいよね。」 「バイトしたら?紹介する?」 「えっ?いいの!?」 「知り合いが店長のところ。アイス屋さんだけど。」 「しますします!」 −3日後− 「木嶋くんそこの窓にこのチラシ貼ってくれる?新メニューの宣伝の。」 「あ、はい。わかりました。」 チラシを貼っていると尼崎が見えた。 「尼崎?」 窓を叩いて合図した。 尼崎はそれに気付きこっちを見た。 「木嶋くん!?」 窓を開けた。 「あ、そっか。ここでバイトしてるんだもんね。」 「尼崎どうしてここに?」 「今日から目の前のアイス屋さんで働くの!」 「ああ,あそこ?バイト始めるんだ。頑張ってね。」 「木嶋くんもね!」 「うん笑」 「じゃあね!」 「頑張ってね笑」 −「頑張ってね…だって!キャー!」 「なに?なんか嬉しいことあった?」 「別に?ていうかなんでここにいんの?」 「アイス食べに来ただけだよー。んーおいしい。おかわり!」 「おかわりって…アイス屋さんでそういうこと言わないけどね。」 「湊くん久しぶり!」 「叔父さん久しぶりー。」 「店長この人なんで店に入れるんですか?気が散りますよ!」 「お客さんだもん。我慢我慢。」 「そーだよ。我慢我慢。」 「うるさいな!」 「尼崎ちゃんもう上がりだよね?賄いとしてアイス食べていいよ。何がいい?」 「え!いいんですか?じゃあチョコミント!」 「ほいよ。」 「おいしいー!」 「ふふっ。口についてるよ。」 「え?」 湊の手が私の口に近づいた。 しかしその手を誰かが止めた。 「…木嶋くん!?」 「口くらい自分で拭けるだろ。」 「な,なんでいるんだよ。」 「バイトが終わったから。」 2人が私のことを見てくる。 「そんな見ないでよ。…見ないでってば!」 −3人で帰るのなんか気まずいな。 「…私こっちだから!」 「送ってくよ。」 「俺も。」 「…あー、ほんと?」 その時不良と肩がぶつかった。 「チッ、イッテェな。」 「あっごめんなさい。」 「どこ見て歩いてんだよ?」 「尼崎、行こう。」 「う、うん。」 「おい待てよ。」 手を掴まれた。 「尼崎に触るな。」 木嶋聡太が相手の手を取った。 「おい聡太。ここは一旦、」 不良の後ろから続々と不良が出てきた。 「なーにしてんの?」 「…ど、どうしよう。」 「聡太!綾菜!逃げんぞ!」 「う、うん!」 逃げようとしたらリュックを不良に掴まれた。 「何逃げようとしてんの?あ?」 「尼崎!」 「さっきから黙ってれば強気になって……!」 「は?」 蹴りをお見舞いした。 「うっ!」 「あんた達!こんなことしていいと思ってるの!?その制服北高ね!通報してやるから!」 「はっ、上等だよ!」 「ああもうめんどくさい!聡太、やるぞ。」 「ああ。いくぞ。…尼崎に怪我をさせるなよ。」 「わかってるっつーの。」 「オラっ!」 殴り合いをしてると警察が来た。 「やばっ!行くぞ!」 「あ、ああ!」 私たちは走った。 「はぁっ、はぁっ、もう大丈夫よね?」 「多分。」 「尼崎なんでそんなに強いんだ?」 「そーだよ。男相手に勝ってた。」 「空手を習ってたの。お父さんが過保護だから。」 「だからか、蹴りが普通の人と違かった。」 「普通の人は蹴りなんてしません!もうこんな時間、私帰るね!バイバイ!」 「送ってくのに、」 「行っちゃったな。」 寂しそうに綾菜の方を見てた。 「…聡太?」 「ん?」 「…あー、まじか。聡太もかよ。」 「え?何がだよ。」 「好きだろ。綾菜のこと。」 「えっ?」 「…まぁこれは予想だからなんとも言えないんだけどさぁ、」 「……。」 「俺も好きだから。」 「はっ?」 「じゃーね。また明日。」
あの頃君に言えなかった言葉
「バド部の松島紫いるー?」 「います!どうしたんですか?」 「このボール届いたから部室まで運んどいて。」 「えー、ここまで運んだんなら先輩運んでくださいよー!」 「忙しいんで。じゃよろしく。」 「3年になったからってイキりやがって…。顔面にスマッシュしてやろうか。にしても重いな…。」 「重そうだね。手伝うよ。」 木嶋聡太!! 「いいよ!これくらい持てるし、」 「持てても前が見えないでしょ。」 「あ、ありがとう…。…綾菜、どう思う?」 「え?どうしたんだよいきなり。」 「いいから答えて。」 「まぁ、優しいよね。いい人だと思う。」 「でしょ?彼女にするならアリ?」 「さっきからどうしたんだ?」 「いいから答えるの!拒否権はないよ。」 「はぁ。…ナシではない。」 「ほんと!?」 「誤解されるから言っとくけど僕は人並みの才能が揃ってたら誰でもいいんだ。だからナシではないってだけ。」 「恋愛体質じゃないんだ。ちっ。」 −「えっ?」 「だーかーらー!昨日鈴木湊となんかあったの?って!」 「なんもないよ!」 「怪しい…。」 「神は信じてないけどこれだけは言える。神に誓って鈴木湊とは何もありませんでした!」 「そう。この2人はなんもなかったよ。」 「木嶋くんっ!?」 「なんで言い切れるのよー!」 「僕のバイト先にこの2人が来たけど、そんな雰囲気は全然なかった。ただの友達。だろ?」 「そ、そう!ただの友達よ!」 「なーんだ。なんもなかったのかぁ。」 「まーあの鈴木湊だし?」 「ありがとう木嶋くん。助かった。」 「大丈夫。…ほんとになんもないよね?」 「ないに決まってるでしょ!大体知り合ってまだ2日よ!」 「そんな怒んないでよ笑」 しまった。可愛く行こうって決めてたのに。 「はぁ。」 −「尼崎ー。これで一階の中庭の窓拭いてくれるか?」 「え?なんで私が、」 「副委員長だろ?頼んだぞ。」 「ちっ!」 −「あーほんとにこの学校は人使いが荒いなー。」 雑巾を絞って前を向いた。 「…木嶋聡太?」 木嶋聡太が窓越しにこちらを見ていた。 何か喋っているようだったが聞こえなかったから窓を開けた。 「どっどうしたの?」 「…手伝おうか?って。」 「いいの?」 「うん。こんなにあったら拭ききれないでしょ?」 「ありがとうっ笑」 「うん笑」 「副委員長になって、大正解!笑」 私たちは窓を拭き続けた。 「今日はありがとう。暗くなっちゃった。」 「どうせ暇だったし。僕がいて良かったね。君1人だったら夜明けまでかかってたかも。」 「ずっと思ってたんだけどさ、優しいよね。」 「え?」 「私が困ってる時にいつでもきてくれる。…ヒーローみたい。」 「僕がヒーロー?笑なんだか嬉しいよ。…僕がヒーローだとしたら尼崎はヒロインだ。」 「…ヒ、ヒロイン?ヒロインって、あのヒロイン!?」 「うん。」 「な、何言ってんのよ!やっぱり親友に似てあたまおかしいんじゃないの!?」 「湊?アイツよりはマシだろ。僕は断じて湊ににてない。」 「…そっくりよ!」 「まだ誰かいるのか?」 「しっ!」 警備員が巡回にきた。 「ど、どうしよう。訳を説明したらいけるかな?」 「あの警備員はめんどくさい。とりあえず隠れよう。」 「う、うん。」 「こっち!」 すぐ目の前にあった保健室に入った。 「大丈夫かな?」 「いるのはわかってんだぞー。早く出てこーい。」 保健室に光が当たった。 「まずいぞくる…!」 「ここだ!…いないのか?聞き間違いか?たしかに声がしたんだけどな…。」 「……。」 ベットの布団に2人で隠れていた。 顔が近い…! 「行ったかな?」 「…まだだ。」 「えっ?あ、足が痺れてきた…。」 「…よし行った。」 顔を少し動かせば唇が触れる距離だった。 「……。」 「……はっ!帰ろう!いててっ!」 「大丈夫?立てないの?」 「足が痺れて…。」 「…乗って。」 「え?でも私重いのに。」 「いいから。」 「ごめん…なさい。」 結局私はおぶってもらった。 −「高校生にもなったのに足が痺れておんぶしてもらうとか…情けない。」 「大丈夫だって。」 「重くない?」 「重くないよ。」 「ほんとに?」 「…ほんと。」 「うそだ!間があったよ今!」 「はははっ笑からかっただけだよ。あ,そうだ。お腹空いてない?」 「お腹?…空いた。」 「桃がなってる木が近くにあるんだ。行こう。」 「桃!?大好きよ!」 −「わぁー!ほんとだ!ももがたくさん!」 「とってみて。僕がおぶったままでいてあげるから。」 「よいしょっ。うーん!とれた!すごいいっぱいあるね。」 「だろ?桃がなるのに3年かかった。」 「えっ!?これ木嶋くんが植えたの?」 「うん。3年前に父親と植えたんだ。前久しぶりに見にきたら桃がたくさんなってた。」 「そうなんだ…。もう食べた?」 「食べてないよ。」 「じゃあ木嶋くんが最初に食べるべきだよ。」 「そうかな。」 「そうよ。ほら食べて。」 「…甘い。」 「美味しいそうに見えない!美味しい時はねこうやって笑顔になるものだよ!」 「こう?」 「そう!もっと美味しく感じるでしょ?」 「うん笑」 −「はぁたべすぎた。桃が夕ご飯なんて初めて。」 「はいこれ。余った桃。」 「…ありがとう。いいの?」 「いいんだ。1人じゃ食べきれないし。」 「1人?」 「お父さんは単身赴任して母親は離婚済み。1人で住んでる。…ごめん、こんな話して。」 「…寂しいでしょ。」 「え?」 「1人でご飯食べるの寂しくない?私、中学生の時だけど家族が全員出かけてて1人でご飯を食べたことがあるの。いつもご飯を食べる時私の話をみんな聞いてくれてお父さんがそれを茶化すのがいつものルーティンだったのにその日だけ私1人でレンジでチンしたご飯を食べて、なんだか寂しくて泣いちゃったことがあるの。」 「……。」 「だから、寂しいって思ったらいつでもうちきていいからね!ご飯はお父さんがいっぱい食べるからたくさんあるの。…何笑ってるの?」 「ううん笑なんだかすごくいま変な気持ちだ笑」 「えっ?笑どういうことよ。」 「ありがとう尼崎。君のおかげで疲れが吹っ飛んだ。」 「よくわかんないけど、よかった!笑」 −「送ってくれてありがとう、…じゃあまた、学校で。」 「…ああ。」
あの頃君に言えなかった言葉2話
昼休み売店に行くと木嶋聡太が友達といた。 「あ!木嶋聡太!隣にいるのは誰?」 「あ、あれうちのクラスの鈴木湊。仲良いんだ。」 「メモしないと!」 「…思ったより本気だね?」 「そりゃもちろん。彼氏を作ってenjoyしたいですから。部活は?入ってないの?」 「入ってないと思うけど。」 「ふーん。」 「鈴木湊噂によると元カノが多いらしい。木嶋聡太に告白した人を全部喰ってるんじゃ?」 「ありえるわね。…あんまいい印象じゃない。食べ終わったから食器下げに行こ。」 「うん。」 誰かと肩がぶつかった。 「あ、ごめんなさい!」 相手の顔を見ると鈴木湊だった。 「うわ!大丈夫?ごめん!汚れちゃった。」 うどんの汁がこぼれて私の制服が汚れてしまった。 「えっ、ああ全然大丈夫!!少しだし。」 「悪いよ。…尼崎綾菜ね。」 「尼崎、大丈夫か?」 「うんっ、大丈夫!冷めてるし、私行くね。」 「鈴木ったら…。」 −「はぁ、取れるかな?」 「擦らないで。あ,私部活あるから行くね。」 「うん。頑張って!」 「はーい。」 「…あの鈴木湊め…。ちゃんと前見なさいよ!」 「尼崎?」 「木嶋くんっ!?」 「それ、まだ取れてないの?」 「ああ、うん。でも少し取れたしあとはクリーニング出そうかな。」 「クリーニング代請求しようか?」 「全然大丈夫。あははは…。」 「それ貸して。」 制服を取られた。 「えっ?」 「中性洗剤を使うとよく落ちるから。家庭科室に。」 「そこまでしなくていいよ!」 「早く行こう。落ちなくなる。」 「…強引なタイプなのね。」 [・強引要素あり!] −「はくしゅんっ!」 「…ワイシャツだけだと寒いでしょ?」 「ううん!大丈夫よこのくらい。」 「これ着て。」 木嶋聡太が羽織ってたブレザーを私に着せてくれた。 「え?でもそしたら木嶋くんが寒くなるよ。」 「暑がりなんだ。…うん、これで落ちた。」 「ほんとだ。ありがとう!でもこのブレザーは悪いから返すよ。ありがとうね!濡れてるけど下の方だしこれ着て帰る。じゃあね!!」 「……良い人だな。」 −「敵が車に乗ったぞ!」 「おい。」 湊のつけていたヘッドホンを取った。 「おい!今いいとこだったのに…。」 「明日謝れよ?」 「え?なにが?」 「尼崎に。お前のせいで濡れた制服で帰った。」 「あー謝る謝る。だからヘッドホン返して。」 「はあ。はい。」 「ごめんごめん。さっそく続きやろ。」 「ほんとに反省してるのか…?」 −翌日− 「それで担任がさー、」 「やっほ」 「うわ!…あ!鈴木湊!」 「お前には用ないよ。尼崎綾菜に用が。」 「な、なに?」 −「昨日はごめんね!前を見てなかったんだ。」 「ああ、そのこと?それならもう気にしてない。」 「その前までは気にしてたの?」 何よこいつ。 「ち、ちょっとよ!」 「ふーん。ちょっと…ね。あ!お詫びに放課後カフェ行かない?奢るよ。」 「結構です!私は忙しいの!」 「何あるの?」 「それは…えーと、」 「ないんじゃん笑決まりね。帰り待ってるから!」 「ちょっと!まだ行くって言ってない!…行っちゃった。親友に似て強引なのね。」 [・親友も強引なタイプ💢] −「尼崎。これ。」 「木嶋くんっ?何これ。」 「先生が渡せって。」 「あ、ありがとう!」 「体調は?悪くない?」 「全然大丈夫。」 「湊、謝ったか?」 「ああ、謝られたよ。お詫びに今日一緒にカフェ行くの。」 「どこの?」 「ど、どこの?それはまだわからないけど。」 「僕がバイトしてるカフェがあるからそこに来て。割引してあげる。」 「えっうん!いいの?」 「ああ。特別ね。じゃあ。」 「…特…別…!」 [・カフェでバイトをしてる☕️] −「あ、きた。」 「早く行くよ!」 「どこに?」 「カフェに決まってんでしょ。木嶋くんが働いてるからそこに来いって。」 「聡太が?珍しい。そういうの嫌がる人なのに。」 『特別ね。』 「…ふふっ笑」 「なんかいいことあった?」 「教えなーい。」 「…ふーん。」 −「聡太ー!きたぞ。」 「お、きた?好きな席座って。」 バイト着かっこいい! 「何頼む?」 「全部美味しそう!迷っちゃう…。」 「全部頼んだらいい。俺の奢りだから。」 「ほんと!?木嶋くん!」 「決まった?」 「オレンジジュースとペペロンチーノとケーキとピザとプリン!!お願い!!」 「ははっ笑わかったよ。少し待ってて。」 「あっ、」 何かわいげないことしてるのよ私! 「はぁ。」 「気分の移り変わりが激しいね。どうしたの?」 「木嶋くん暴飲暴食する人は嫌いよね…。」 「…いや?嫌いじゃないと思うけど。」 「…ほんとっ!?好きなの?」 「好きっていうか、嫌いではないと思うってだけ。」 [・いっぱい食べる人は嫌いじゃない!] 「ふふっ笑」 「何書いてるの?」 メモを取られた。 「あっ!ちょっと!返して!」 「…なんだこれ?まさかこれ全部アイツの情報?」 「みっみないでよ!」 「好きなのか?笑」 「す、好きじゃない!」 「ふーん。…聡太の情報もっと知りたい?」 「知りたい!」 「好きじゃん笑…何から聞きたい?」 「好きなタイプ!」 「うーん…特にないと思うけど?ー 「えー?じゃあ好きな女優は?」 「いない。」 「…嫌いなタイプは?」 「人並みだったらいいと思うけど。」 「もう!全然当てになんないわよ!役立たず!」 「アイツは恋愛なんかしたことないからわからないよ!」 「はーあ。結構溜まってきたのになぁ。」 「そんな付き合いたいの?」 「そりゃ高校生だから彼氏と一緒に何かしたいよ。」 「だったら俺としない?」 「はいはいそんな冗談は言わないないで情報全部教えなさーい。」 「ちぇっ。」 「こちらペペロンチーノです。」 「あ!きた!」 「こんなにいっぱい食べ切れるの?」 「…無理だったら鈴木湊に食べてもらう!」 「残飯処理かよ俺。」 −「はー!食べた食べた!」 「全部食べたのすごすぎ…。」 「家族の中で私が1番食べるのよ!お父さんが少食で残したご飯はいつも私が食べてるの。お父さんったら少食がすぎるのよ。お姉ちゃんが残した料理もいつも私が…喋りすぎちゃった?」 「ううん笑もっと聞かせて?」 「...もうない!」 「口になんかついてるよ。」 「え?」 鈴木湊の親指が私の口元に触れそうになっあ。 「くっ、口についた汚れくらい自分で落とせる!」 「せっかくモテモテの僕がイケイケな行動に出ようと思ったのに。」 「結構です!私そろそろ帰るね。何円?」 「ううん。おれが奢るって話だったじゃん。だからお金はいりませーん。」 「…そう?いっぱい食べちゃったのに。」 「うん。確かに。」 「ま、ありがとう!今度は私が何か奢るね。」 「それってデートの誘い?」 「…バカなの!?かえる!」 「帰っちゃった。」 「…帰ったのか?」 「うん。俺がカッコ良すぎたかな?」 「…あまり尼崎をからかうなよ。」 「…珍しいね。そんなこというなんて。もしかしてー好き?」 「アホなのか?食ったら早く帰れ。」 「はいはい。」
あの頃君に言えなかった言葉1話
「今日から高校生とかやばすぎない!?」 「高校で彼氏作るぞ!」 そう今年入学する通りすがりの女子生徒が言っていた。 「ねえ今の聞いた?」 「え?なにが?」 「今の一年生、高校で彼氏作るぞ!って。」 「ああ、なんか言ってたね。」 「私も去年そう思ってドキドキしてたけどさー彼氏なんてできなかったよ!?ていうか好きな人すらできなかった。」 「それはわかる。漫画で見るような王子様とかもいないよね。」 「もう半分諦めてるよ…。」 「ま!そう言わずにさ新しいクラスで探そ?」 「うん…。紫とクラス離れたの最悪だよ。」 −「今日から2年4組の担任になる菊池啓太です!」 「…先生はないよなぁ。」 「それじゃあ自己紹介を出席番号順でしてください!」 クラスメイトが次々と自己紹介をしていった。 「はいじゃあ次。」 「木嶋聡太です。よろしくお願いします。」 「……。」 完全に私のタイプだった。 「かっこいい…。」 −「ええ!?もう好きな人できたの!?」 「好きっていうか、気になってるだけ!」 「絶対好きでしょ!ねえ綾菜。それなんていうか知ってる?」 「え?」 「一目惚れよ!」 「一目惚れ…?」 「一目見ただけで好きになったんでしょ?だったらそれはもう一目惚れしかないわよ!今までの自分の恋愛を思い出してみて。」 「私の恋愛?」 「そう。まず中学2年生の時あんたが両片思いだったのに告白をしないから後から告白してきた3組の女に取られたのを覚えてる?」 「ああ、せっかく忘れてたのに...。」 「それと3年生の時塾にいる高校2年生の男子を好きになって酷い恋愛をしたの覚えてる?」 『す、好きです!付き合ってください!』 『うん。いいよ。』 「付き合えたと思ったら…」 『そ、その女の人は誰?』 『彼女だよ?』 『わ、私は?』 『もちろん好きだよ!みんな同じくらい好きだから5人とも付き合ってるんだ。」 『5人っ!?』 「せっかく忘れてたのに…。それが原因で模試の点数も悪くなったのを覚えてる。」 「だから!今回の恋愛はそうならないようにうまくするのよ。わかった?」 「…わかったよ。」 「とにかく、私がその木村聡太?のことを調べてあげる。」 「なんかいつも以上に本気だね。」 「このまんま彼氏ができないまま高校生活を謳歌するの?!」 「そりゃ1人くらいは作りたいけど…」 「でしょ?だから私が協力してあげるの。」 「あ、ありがとうございまーす。」 −「にしてもどうやって落とせっていうのよ。」 「じゃあまず委員長と副委員長決めます。やりたい人?」 「はい。」 木嶋聡太が手を挙げた。 「お、委員長キャラなのね?なおさら完璧。」 「木嶋か!頼んだぞ。副委員長やりたい人ー?…いないか。」 「副委員長なんてめんどくさいよ、…ん?」 副委員長になったら木村聡太と2人きりになれるのでは? 「やるしかない!はい!私がやります!」 「尼崎が!?あの尼崎が!?」 −「副委員長になったの!?やるじゃん。」 「でしょ?関わる機会が増えると思ってね。あ!それで分かったことは?」 「たーくさんあるよ。メモに書いたから見てみな。」 「流石紫!」 −[・彼女はいない!] 「女好きなタイプでもなさそうね。」 「ポスター作りを委員長と副委員長。放課後やってくれ。」 「きた。きた!これで一気に落とすわよ。」 −放課後− 「木嶋くん。よろしくね。」 [・清楚系がタイプ!] 『うるさい姿は見せないのよ。わかった?うるさい姿は少し仲が深まってから出すの。』 「ああ、よろしく。」 「何気に話すの初めてだよね。前は何組だったの?」 「2組だったよ。尼崎さんは?」 「6組!クラスが遠いいから全然見なかったのね。」 「そうだね。」 「意外と話しやすいのね。」 「画用紙を持ってくるけど何色がいい?」 「私も行くよ。」 −「青か緑じゃない?」 「そうだね。」 いつみても顔が綺麗。ほんとに彼女がいないの? 「…顔に何かついてる?」 やばい。見すぎた。 「ううん!何もついてないよ…。」 「じゃあ戻ろう。」 −「すごくいい感じじゃない?見てこれ。」 「すごく上手。なんでこんな上手く描けるの?」 「昔から絵だけは得意なの。」 LINEが来てスマホの電源が入った。 「その待ち受け自分の犬?」 「そう。小学3年生の時に飼ったの。名前はベル。」 「僕も犬飼ってる!」 「そうなの!犬種は?」 「ゴールデンレトリバーだよ。名前はちょこ。」 「そうなんだ!女の子?」 「ああ。お菓子をねだってるところとかすごく可愛いんだ笑」 「愛犬家なのね…。」 [・愛犬家!] 「ふふっ笑」 −「じゃあまた明日。バイバイ。」 「うん!またね。」 その時紫から電話が来た。 「もしもし?」 【もう終わった!?】 「うん。終わったけど。」 【なんか進展あった!?】 「進展っていうか…話は盛り上がったけど。あ!そうだ。あっちはかなりの愛犬家よ。犬の話をするとずーっと笑顔なの。」 【かわいい一面もあるんだー。私も分かったことがあるよ。】 「え?なに?」 【元カノが1人もいない。あんなにかっこいいのになんでだろう?】 「えっ?1人も?あの顔で?」 【うん。私の友達中学生の頃から一緒だったらしいけどつきあったことないしいよ。】 「なんでだろ?理想が高いのかな?」 【そうじゃない?私ご飯だから切るね。】 「はーい。じゃあね。…理想が高いのはきっと苦労するわね。」
走れ、愛すべき人よ
「晴樹さん!長谷川さんきてますよ。」 「なんだって!?」 「あ、これ。カメラ忘れてましたよ。」 「あ!これ!晴樹がめっちゃ探してたやつ!」 「余計なこと言うなっ!」 「では私はこれでっ、」 「…どうしたんだ?」 −「ここのお店美味しいな。そう思わない?」 「……。」 「絵麻?もしかして口に合わない?」 「えっ?あ、ううん!すごく美味しい!」 「よかった。今日署にさ小学生くらいの子供が来て、すっげー可愛くて、守ってあげたいなーって思ったんだよね。」 『私が守ってあげる!』 「えっ?」 「え?どうした?」 「ううん。なんでもない。」 何よ。この気持ち。 『俺、考えたんだ。もし絵麻が死んじゃっても絶対他の女に振り向かないって。』 『絵麻、好きだ。』 『大好き!』 『いるのよっ!なんで助けたのよ!こんな辛い思いするなら助けてくれなくて良かった!出てってよ!どっか行ってよ!こんなことになるなら死ねば良かったっ!あんたのせいよ!全部あんたのせいだからっ!』 「…ッ!」 「絵麻っ?なんで泣いてるんだ?大丈夫かっ?」 「私っ、なんでっ?最近なんですぐ涙が出るのよ、」 「絵麻っ?どうしたっ?!」 「ああ、ムカつくッ!」 『泣くな。俺がいる。ここに、俺がいる。生きてる。』 「私行かないとっ!」 「どこにだっ?」 「…そうよ。どこに行くのよ。ごめんっ。気にしないでっ。」 「…。」 −「絵麻、カメラの中見たのか?」 『高校の時話してないですよね?』 「……ッ、」 『あそこ復縁するんじゃないのか?』 「……クソっ!」 俺は急いで家を出た。 −「絵麻、泣いてるのはなんでだ?」 「…ッ…」 『泣くな。』 『絶対に死なせないから!』 「うわああああんっ!泣」 「絵麻っ!?」 「…絵麻。外に出よう。」 −「……ッ、」 「ごめんなさいっ。」 「絵麻、ずっと好きだった。でも、今お前の中には違う人がいるんだろっ?」 「…ッ私凪のことがっ、」 「無理するな。行け。」 「えっ?」 「走れっ!」 『走れ、愛すべき人よ。』 「はっ!…凪っ、」 「走れ!長谷川絵麻ッ!」 「ッ!うんっ!」 全部思い出した。 あの記憶は全部私。 私は晴樹を救うためにタイムリープしてきた。 「晴樹ーーッッッ!」 私は晴樹の恋人っ! 事故で右足が動かなくなった! 「井上さんっ!?どうされました?」 「長谷川絵麻はどこですかっ?!」 「もう帰りましたけど…。」 「クソッッッ!!」 「えぇ!?」 絵麻、どこだ。 伝えたい。愛してるって。 「どこなんだっ!」 『大丈夫ですか?濡れてたので放って置けなくて。』 「絵麻ーッッッ!はぁっ、はぁっ、…いないよな。」 その時誰かが俺の手を握った。 「!?」 「はぁっ、はぁっ、」 なんで絵麻が?! 「大丈夫?笑」 絵麻は俺を抱きしめた。
走れ、愛すべき人よ
「長谷川さん。井上さん楽曲できたらしいから後で聞いといて。」 「はい!」 その時電話が鳴った。 「もしもし?」 【もしもし?絵麻?】 「凪?どうしたの?」 【夜ご飯食べに行かない?】 「夜ご飯?なんで?別にいいけど。」 【よしじゃあ決まりね!!バイバイ!】 「…なんなの?そうだ主題歌聞かないと。」 ♪ やまないことを願いました 初めて君が僕の元にきたあの日に 少しだけ降る そんな雨でないことを 僕は強く願ってきました♪ 「……。」 ♪ 君は贈り物です 空がくれた 寂しい世界の中で 君を守ってあげます♪ 「……あれ、涙が。なんで?」 『絵麻、好きだ。』 「なによこの記憶。…疲れてるのかなっ?」 −夜− 「絵麻。」 「あ!凪!行こ。」 「どこ行く?」 「うーんイタリアンは?」 「あり!」 −「ストップ!車を止めろ!」 「うわっ!びっくりした!どうしたんすか晴樹さん。」 「あの男は誰だ?」 「ああ、あの長谷川さん?それがどうしたんすか?」 「男と一緒にいるだろ!おい健!アイツ知ってるか!?」 「何ってあそこ高校時代付き合ってたろ。復縁したのか?にしても相変わらず凪はかっこいいな。」 「ダメだダメだ!!」 「長谷川絵麻のこと好きなのか?あ?」 「…好きだったら何が悪い!」 「えっ?」 「ほんとですか?」 「まずいぞ。…凪と付き合っちまう。…そうしたのは、俺か。」 [なんで来たのよ!] [別れた後もお前のことが忘れられなくて。] [待ったでしょ?こんな寒い中どれだけ待ったのよ!] [あの木から葉っぱが3000枚落ちるくらい!] [もう、バカ!] [好きだ!絵麻!] [私も好き!] 「ああ、もう終わりだぁ。」 「そんなに好きならガツガツ行けよ!」 「もう何もする気力出ない。早く行こう…。」 −「このスパゲッティ美味しそう!早く食べよう!」 「うん笑」 「なんで笑ってるの?」 「…いや笑なんでもない。食べよう。」 「うん!美味しい!」 それから凪と毎晩ご飯を食べに行くことがルーティンになっていった。 『晴樹ー!!!』 『絵麻!』 『ご飯食べた?』 『ううんまだ。』 『じゃあどっか食べに行こ!』 「…夢?井上さんと付き合ってる夢見ちゃった。…あれ、なんで泣いてるんだろう。」 −「絵麻!撮影地取材いくよ!」 「はーい!遊園地だっけ?」 「そう。私たちの地元らしいよ。」 「へぇー。行ったことないや。」 −「意外と広いわね。ちょうどいい感じ。」 「ね。いい感じ。あそことかスペースあるよ。そこの観覧車夜になったらライトアップされるみたい。」 「ばっちりね。」 「晴樹ー!!!」 「ッ!?」 私? 「絵麻?」 「…気のせいか。」 「どうしたの?」 「ううん!なんでもない。」 なぜか最近変な夢をよく見る。 それも実際にあったかのように。 「…。」 「チーズドック美味しい!」 「一口ちょうだい!」 「…。」 −「それでここの撮影のところでは、」 「はい。わかりました。」 絵麻に見られてるような気がする。 「……。」 「これで以上です!長谷川、出口までお見送りしてやれ。」 「はい。」 よっしゃ! 「…あのー井上さん。変な人だと思われてしまうかもしれませんが。」 「なんですか?」 「私たち高校の時話したことないですよね?」 「…ないです。」 「ですよね。すみません。…それではお気をつけて、」 「……。」 −「あ、戻ってきた。井上さんこのカメラ忘れちゃったみたい。明日でもいいから届けてくれない?」 「なんで私が?」 「お願い!みんな忙しいの!」 「…わかりました。」 −「にしてもカメラ?なんで持ってきたんだろう。にしてもこのカメラなんか見覚えあるような、、。少しだけ見てもいいよね。」 フォルダのサムネにはどれも私に似てる人がいた。 「うわ、すごく私に似てる。…これ私じゃない?」 【今日は遊園地にきましたー!こっち向いて!】 【カメラ?】 【そう。】 【見てー。ニモだよこれ。かわいい。】 【ドリーは?】 【ドリーはこれじゃない?】 「……これ私?でもこんな記憶ないよ。でもどうして、懐かしいって思うの?私。だめよ。これは見たらダメ。…見なかったことにするのよ。なんで泣いてんのよ私。……これは私じゃない。私によく似た誰かよ。だってこんな記憶ないものっ!明日ちゃんと返そう。」
走れ、愛すべき人よ
「晴樹さんですよね?」 「そうですけど、誰ですか?」 「酷いなぁ。覚えてないんですか?バラエティの時共演した姫花ですよぉ!」 「覚えてません。」 「意外と冷たい人なんですねぇ。でもそこも好き!」 「好き?」 「いきなりですけど彼女っていますかあ?」 「…いませんが。」 「ほんとですか!?じゃあ立候補します!晴樹さんの彼女に!」 「ダメです。」 「なんでっ!?」 「彼女にしたくないから。」 「えっ!?姫花だよ!?」 「鈴木さん!行く時間ですよ!」 「苗字で呼ぶな!じゃあ晴樹さん姫花そろそろ行かなきゃダメだから行きますね?ちゃんとインスタのフォロー返してくださいよー!!」 「…おい。」 「はい?」 「あの女共演NGにしといて。」 「うっす。」 −「絵麻残業?」 「うん。なかなかおわんなくて。」 「新しい映画作ってんだっけ?」 「そう。台本作ったの私だから微調整とか色々しないと。」 「大変ね。頑張って。じゃあお先に失礼!」 「お疲れ様ー。…はぁ!ラストスパート!頑張るぞ。」 「長谷川さん。」 「はい?」 「この映画のことなんだけど主題歌井上さんに歌ってもらうってどう?」 「いいですね!賛成です!」 −3日後− 「それで主題歌を井上さんに作ってもらいたいなという風に考えておりまして...。どうですかっ?」 絵麻が言うならやるしかない。 「いいですよ。やりましょう。」 「ホントですかっ?ありがとうございます!一応イメージは静かで…」 無意識に絵麻のことを見てしまう。 「井上さん?聞いてます?」 「あっ、聞いてますが?」 −「…静かな楽曲か、難しいな。」 『・・・・君はプレゼントです、天が授けた独りの世界の中で君を守るよ、』 「……。」 −「絵麻?」 「…凪?」 「ここで働いてるの?」 「…なんでここに?」 「仕事の帰りだよ。ちょっとお茶しない?」 「……。」 −「仕事はどう?」 「まあ残業ばっかりだけど給料はいいからやってる。」 「絵麻らしいな。」 「そっちは?どう?」 「まあまあって感じ。部署が一緒の女に口説かれて困っちゃうよー。」 「付き合えば?」 「いやだね。」 「あ、そうだ。仕事で井上晴樹と一緒になったの。覚えてる?」 「覚えてるよ。あの陸上のだろ?すごかったもんな。」 「全然覚えてないや。」 「アイツの人生勝ち組だよな。羨ましい。」 「本人にしかわかんないけどね。てかまだインスタやってるの?」 「いや?もう消したよ。もしかして見たい?しょうがないな。顔見たい時はいつでも顔写真送ってあげるから言ってね。」 「写真フォルダがトラウマになりそうよ!私そろそろ帰らないと。今車車検に出してるから終電無くなっちゃう。」 「なら送ってあげるよ。その方が楽でしょ?」 「車持ってるの?!」 「当たり前だろ?ほら来い。」 「いい車持ってるのね。」 −「できた。題名は、夕立。」
走れ、愛すべき人よ
「今回の打ち合わせは映画の打ち合わせなんで適当に相槌打っといてください。」 「はいはい。」 「井上晴樹さん入られます!」 「よろしくお願いします。」 「こんにちは今回担当させて頂く佐藤です!よろしくお願いします!」 「…よろしくお願いします。」 「すみませんあと1人いるのですが渋滞しているらしく…。まだかな。」 「すみませんっ遅れました!」 「きた!」 絵麻? 「遅れてしまい申し訳ありません!台本を担当させて頂きます長谷川絵麻です!よろしくお願いします!」 「前にも…会いましたよね。」 「あっ!あの時の!あの時はありがとうございました!」 涙が出そうになったがなんとか堪えた。 「2人知り合いなの?だったら話も上手くまとまりそうね。」 −「うわ、雨だ。」 「もう仕事は終わりか?」 「はい!」 「寄るところがあるから先帰っててくれ。」 「え!いいんですか!ありがとうございまーす。」 「…にしても雨がすごいな。」 その時急に雨が止んだ。 「えっ?」 「大丈夫ですか?すごい雨ですけど。」 傘を差し出してくれたのは絵麻だった。 「絵…長谷川さん?なんでここに、」 「ここ帰り道なんです。歩いてたら傘も刺していない井上さんがいたものだから放って置けなくて。」 「あれ井上晴樹じゃない?」 「絶対そう!サイン貰おうかな?」 「一旦カフェかどこか行きましょう。人に見られちゃう。」 −「こちらホットコーヒーです。」 「ありがとうございます。」 「…ありがとうございます。入れてくれて。」 「ああ、いいんです。」 「同じ高校と大学でしたよね。」 「えっ?そうなんですか?」 「もしかして知りませんでした?」 「もしかして私のこと知ってました?」 「はい。…柳楽凪と付き合ってたでしょ。」 「えっ!?そんなことまで知ってたんですか?」 「みんな知ってましたよ。今は?」 「別れましたよ!5年前に。あっちが警察になるから仕事に集中したいとか言って振られた身です。」 え?5年前?ということは7年間も付き合ったのか?あっちも本気だったんだな。 「でももう未練はありません。吹っ切れました。」 よしっ! 「そ,そうなんですか?」 「はい。あ!雨止みましたよ!今のうちに帰りましょうっ!」 「えっ?あっはい。」 もう少しいたかったな。 「タクシーきましたよっ!お気をつけて。」 「そちらこそ。」 「はーい。」 当たり前だけど俺のことは1つも覚えてなかった。 奇跡が起こるかもと迂闊なことを考えていた。 バカだった。