はむすた
109 件の小説はむすた
森の奥でひまわりの種もぐもぐしてる、ハムスターです。 2025年7月31日 ログアウト ごくたまに、ちらっと見に来てます アイコン・(し)ょうじょめ~か~ さま 2022.11 ~ 2025、7
みなさまへ。第三弾
夏色さいだーさま もうノベリーでは会えないですが、メッセージを残しておきます。 私より年下で、コメント欄で声優さんのこととか話すときは話しやすいのに、作品になるとがらりと雰囲気が変わる。そんなところがすごくかっこよくて、好きでした。思春期の、病みとか爽やかさとか、アオハルって感じの作品に、読んでいて深く共感してときめきました。 また、余談ですが、はむすたはさいだーさんの作品でひらがなの可愛さにはっと気づきました。 これからも、いろいろがんばってください。応援しています。 つばめさん 主にオプチャの方で、ほんとうにお世話になりました。私が声劇のサンプルを送って、どきどきしていたとき、いちばん最初に感想をくれましたね。あの頃は、声優学校で心が折れかけていたので、暖かいお言葉が心に染みました。 また、ノベリーの方でも、心が暖まり、そして少し切なくなるような作品をたくさん書かれていて、作家さんとしてもとてもだいすきです。特に「グレートジャーニー」にはすごく感動いたしました。 これからも執筆活動がんばってください。応援しています。 湯呑さんへ いつも、不思議と引き込まれてしまう作品を生み出す湯呑さんを、ほんとうに尊敬しています。私は特にカナヱさんシリーズがだいすきで、いままで何度読み返したことか。湯呑さんの作品はキャラクターが生きているように感じるんです。 また、ノベリー内ではもちろん、声当て部でもお世話になりました。ネットのコミュニケーションに不慣れな私ですが、湯呑さんが作ってくださったあのオプチャはとても楽しかったです。作品の声劇をするときはいつでもお声がけいただきたいです。絶対聞きに行きます。 これまでありがとうございました。 ここに書ききれなかったノベリストの方々にも、深く感謝と尊敬を抱いております。 ノベリーのひとたちみんなが、はむすたはだいすきだ。 ほんとうにいままでありがとう!
みなさまへ。第二弾
史さんへ 紅の跡にコメントをくれた日を、いまでも覚えています。ちょうどあのとき、ノベリーで少し落ち込んでいたのですが、史さんのコメントでちょっと自信を持てたんです。ほんとうにありがとうございます。 いつも面白い作品をいっぱい書いていらっしゃる史さんを尊敬しています。特にあなたとぼちぼち。は、可愛いなと笑って、ときにほろりとして、ノベリーの中でも上位にはいるだいすきな作品です。あと、ギャル古事記にはたくさん笑わせていただきました。 これからも、執筆活動、応援しています。いままでお世話になりました。 旅するわぽんさん 私がノベリーで最初にファンになったのがまぽわぽんさんでした。きゅんきゅんほっこりする、可愛い恋愛小説をたくさん書かれていて、恋愛小説だいすきな私は一目惚れしてしまいました。はむすたのまとまりの無いコメントにも、いつも優しく返信してくれてうれしかったです。 一度ここを離れてしまうと知ったときはちょっと泣きましたが、また戻ってきてくれてしあわせでした。 またまぽわぽんさんの小説をちょくちょく読みに来るかもです。これからも執筆活動がんばってください。応援しています。 はるきちさんへ はるきちさんがノベリーを去ってまだ1ヶ月なのに、もうすでに寂しいです。 いつも暖かいコメントや、クスッと笑えるストーリーでノベリーの雰囲気を優しくしてくれて、勝手にノベリーのママのようだなって思っていました。 また、はるきちさんの書く作品やエッセイも魅力的で、私は特に蛙を踏んでしまったお話が好きです。はるきちさんの作品って、元気ないときに無性に読みたくなるんですよね…。 またはるきちさんにどこかで出会えますように。いままでありがとうございました。
みなさまへ。第一弾
特にお世話になった、みなさまへ——。 (お名前出してごめんなさい、嫌でしたらコメントで教えてくれたら消します) (あだ名で書かせていただく方もいます、ごめんね) になっちへ。 ノベリー始めたころから、ずっと交流がありましたね。 になっちの紡ぐ、月光やクラシックの似合う、静謐な世界がすきだよ。 になっちの作品の更新をずっと心待ちにして、「あ、新作ある!」って喜んでたの。 そして、毎回想像を超えてくる素敵な作品に出逢えて……本当に、同い年とは思えないほど世界観が完成していて、作家としてすごく尊敬できます。 ずっとファンでいる、って言ってくれたことも、執筆の励みになってたよ。 ハリポタ語るのとか、楽しかったね。今までいっぱいおしゃべりしたね。いつかになっちとはリアルでも喋ってみたいなぁ。 本当に大好きです。いままでありがとう。 私も、ノベリーを離れたって、ずっとになっちのファンです。 また作品読みにくるね。 四季人さまへ。 いつも丁寧に、執筆のいろはを教えてくれました。 作品にくれるアドバイスも、厳しくなく、でも適切で、すごくありがたかったです。 きっと、四季人さまの教えがなかったら、私はまともなストーリーを作れなかったと思います。 またいつか、四季人さまの魅力的な作品を読みに来ます。 四季人さまが書く百合が、特に大好きでした。 あと、猫文も、先輩とゲームするお話も……あぁ、好きなのがありすぎます。 四季人さまの素敵(という一言で表してしまうのは全く足りない気がしますが)な作品をたくさん読めて幸せでした。 成人したら読みに行くと約束した作品も、絶対に忘れないです。 今はもう、このメッセージは届かないかもしれないけれど……。 ほんとうにありがとうございました。 あーちゃんへ。 またあなたと喋りたいです。 本当はあーちゃんがここに戻ってくるのを待とうと思ってたんだけど……。 ごめんね、待てなかったの。 またあーちゃんの、不思議な世界観と魅力を味わいたいです。全部の作品が、すごくかっこよくって、好きでした。そんな大好きなあーちゃんの作品にはむすたが出てきたときは、もう狂喜乱舞だったよ。 もっといろんな作品も見てみたいです。 コラボも、まだ途中だったよね、いつか続きを書こうね。 だいすきだよ、短い間だったけどありがとう。 市丸あやさまへ 勝手に、はむすたのお姉ちゃんのように思っていました。 小説のこと、化粧品のこと、優しく教えてくれてありがとうございました。 頼りになるなぁ、素敵な人だなぁ、って憧れでした。 死花の完結おめでとうございます。すべて、堪能させていただきました。 あやさんの書く、繊細な恋模様、愛のあまりの激情、すごく好きです。 そして私はこれからもずっと真嗣さんを推していきます……💗 また、ブルースターをつづる、の方に以前感想をくれたとき、とても励みになりました。 コミケの話も、叶いはしませんでしたが、自分の作品がもっと人の目に……!と思うだけで執筆のモチベが上がりましたし、すごく嬉しかったです。 私の作品のシリーズは、もうネットには出さないけれど、満足するまで書いて完結させるつもりです。 今まで本当にお世話になりました。 海月さまへ 私、人に見せるイラストを描くのが初めてだったんです、あの曲のサムネで。 すごくどきどきしていたし、下手かも……と自信を無くしていましたが、海月さまのかっこよく聞いていて引き込まれる音楽と合わさると、何だか自分のイラストも好きになれました。あんなに凄い曲を高校生で作れるなんて、尊敬します。 また、プロセカの企画の方でもお世話になりました。うちの輪虎は、海月さまのキャラとかかわりが深く、だからサイドストーリーで関係性を描くのがとても楽しかったです。もっと書きたかったなぁ、プロセカの企画作品。 海月さんの書く作品は、どれも設定から面白くて、人のこころを丁寧に描いているところが好きでした。ログアウトしても、また読みに来ようかな。 これからも、執筆・作曲ともに頑張ってくださいね。応援しています。
今までありがとう。
描写が、すきです。 はるかぜが髪を揺らす。 ゆうやけが頬を染める。 そんな描写を丁寧に織りかさね、 空間をつくる。 空間の上で、恋をする、喜ぶ、喧嘩する。 そういうことを創るのが、 ほんとうにすきなのです。 でも。いや、だからこそ。 今のここで私は、自分のすきな空間を描けない。 ひとに自分の作品を知ってもらいづらくなった。 他のかたの作品を見つけづらくなった。 そんなことだけど、 積み重なっちゃえば。 私は、描けないのです。 よわい人間なので。 はむすたは、7月31日の午前九時、 ノベリーでの活動を終了します。 参加途中の企画もあったのに、申し訳ない。 本当に、あやまります。 今まで、皆様に支えられてきた作品たちは、 消しません。 ずっと、残しておこうと思います。 今まで、本当にありがとうございました。 ノベリーが、このあったかい場所が、だいすきです。 また、特にお世話になったみなさまに残りの数日でぼちぼちメッセージを書いていくので、 ぜひ目を通していただけたらと思います。
ブルースターをつづる キャラ紹介①
第一弾では、登場回数の多いこちらの四人をご紹介。 春川椎菜(はるかわ しいな) ・高校一年生の女の子。 ・過去にあった出来事により、男性に対してトラウマを持っている。 だが、律希に購買で転びかけたところを助けてもらったことをきっかけに、律希、そしてその友人の歩人に対して、少しずつ心を開き始めている。 ・瑠美に対しては強いあこがれを持っていて、綺麗で優しいかっこいいお姉さん、という印象を持っているが、最近はドジでかわいい面も多いことに気付いている。 ・五歳の妹、よつばのことをとても可愛がっており、少々姉バカである。 ・性格はシャイでひかえめ、甘え下手。天然なように見えて、意外としっかりしている。 ・成績は学年180人中25,6位と上位である。 ・外見の特徴としては、ふわふわ天パの茶髪ロングヘアー、小柄で華奢。本人は、痩せているせいで胸が絶壁なことがコンプレックス。 及川律希(おいかわ りつき) ・高校三年生の男の子。 ・常にパーカーに黒マスクで、とても寡黙で声が低い。だから怖がられやすいが、本当は優しく誠実なひと。顔を隠しているのには、何か事情があるようで……? ・瑠美、歩人とは幼稚園の頃からの幼馴染で、本人は腐れ縁と言うが、仲が良い。この二人に対しては、どうやら素顔も見せられているようだ。 ・照れ屋で、照れ隠しで口調が荒くなってしまうが、そのたびに「あ、言いすぎた……」と反省している可愛い面も。 ・椎菜曰く、瞳が超絶、綺麗。色は少し特徴的な青っぽい黒。髪の毛は真っ黒。 ・一人っ子で母子家庭。 ・成績は学年の真ん中ぐらい。数学はとても得意だが、国語が苦手すぎて、結局いつも総合順位は微妙。 麻木瑠美(あさぎ るみ) ・高校三年生の女の子。 ・中学三年生の頃から人気ティーンズ雑誌の読者モデルをやっていて、とても綺麗なスタイルと顔で人気が出ている。最近は少しずつドラマなどの仕事も増えてきている。 ・とてもモテるが、売れ始めのタレントに恋愛はご法度。そのうえ元々恋愛にあまり興味がなく、なので恋人がいたことはない。ちなみに、モテるゆえのトラブルを避けるべく、女子たちの恋愛をサポートする姉御的な立場をクラスで死守している。 ・律希をからかうのが好きな毒舌女子だが、歩人に対しては少しあたりが弱い。なぜなら、歩人が瑠美をおひめさま扱いするのに照れてしまい、毒舌どころじゃなくなってしまうから。 ・成績は優秀。定期的に歩人に教わったりもしている。科学と英語は特に好きで、先生からも気にいられている。 ・身長は165㎝、スリーサイズはC65(80,57,84)とかなり細い、女子たちの憧れスタイル。脂肪がつきやすい体質なので、かなり努力してスタイルを保っている。 (スリーサイズ書いたのはモデル設定があるから。ほかの子たちのやつは秘密よっ) 瀬川歩人(せがわ あゆと) ・高校三年生の男の子。 ・椎菜たちの学校の生徒会長を務めていて、砂糖顔の王道イケメン。成績も、テスト順位が一桁などとても優秀であるため、生徒たちや教師からの人望も厚い。 ・陸上部で、長距離と走り幅跳びを専門としており、そちらの方もいろいろな賞を取っている。 ・ここまで読むと完璧超人のように思えるが、実はそうでもない。音楽や芸術のセンスは皆無、瑠美のことになると周りが見えなくなるなど、人間らしい部分も仲良くなると見えてくる。 ・実家は和菓子屋で、その影響で料理やお菓子作りが好き。だが、店を継ぐ気はなく、将来は学校教師になりたい。 ・14年間の片想いを瑠美にしている。 この片想い歴からも分かると思うが、超一途で愛が重く、付き合ったら一番ヤンデレになるタイプのやつ。 ・なんでもそつなくこなし人当たりも良いが、実は頭の中では嫌いな人に毒づいていたり、キレかけている。たまに目が怖い。 ・身長は177㎝と長身で、自身と7㎝差の律希の頭をなでなでして「ちっちゃくてかわいいね~」などと揶揄っている、なかなかの性格の持ち主。 ・黒髪センター分け。普段はコンタクトレンズ、オフの日は眼鏡。 以上です、他にも知りたいことあったら聞いてくださいね。 みなさんのお気に入りのキャラはどの子ですか? はむすたは、みんな大好きですが、しいていうなら歩人くん。 歩人くんのこと結構ひどく書いてますが、私はそんなところが好きなんですよね。
はむすたるーむ ふぁいぶ
か「」く「」し「」ご「」と「 を観てきました。 元々原作の大ファンだったので、原作片手にワクワクドキドキしながら見てきたら、想像以上に良かったです……。 普段自分のスタンスとして、実写映画を見るときは、原作と違う作品として楽しむ、というのがあるんですね。なぜなら、原作はあくまでも小説で、映像で可視化されることによって違うと感じることも多いだろうし、そもそも自分が想像していたキャラと全く同じ顔の人っていないし。 でも、か「」く「」し「」ご「」と「 は、もちろん原作と全くいっしょではないし、設定がいくつか違うところもあるんですが、すごく原作へのリスペクトを感じる映画でした。ちゃんとリンクすべきところはしている、キャラたちもちゃんと原作で出会ったあの子たち。 私の推しはパラちゃんなんですが、パラちゃんの実写化もめちゃくちゃ良かったですね。演技が説得力あって、パラの強さと弱さみたいなのをよく伝えてくれる演技だったから、すごいなぁって。 特典も豪華でしたね。対談に、描きおろしの原作の続編小説。最高ですよね。 住野よるさんの作品を、これからもずっと追っていきたい。 めっちゃ強く、そう感じました。 詳しい感想は書きすぎるとネタバレになっちゃうからこの辺で。 か「」く「」し「」ご「」と「 オススメです!!
猫のみちしるべ、終点は。
思えば、恋のきっかけなんて、いつも些細なことだった。 初恋は幼稚園、なわとびを教えてくれた二歳上の少女。 次は小学二年生、隣の席で消しゴムを貸してくれた女の子。 そして、中二の時に落ちた三度目の恋——これが現在進行形のやつ。 三度目といえど、恋への慣れはなく。 四年弱、セサミへの想いを不器用に抱きつづけている。 抱き方も合ってるか分かんないまま、ずっと。 セサミへの恋に気付いたあの日は。 すごく暑い日だった……気がする。 * * * * * * * * * * 終業式の日、俺はいつも通りカイトと帰ろうと思って、彼が待つはずの校門に向かおうとしていた。 そしたら、猫を見つけてしまったのだ。 真っ黒で毛並みの綺麗なやつ。 俺は、吸い寄せられるようにそいつに近寄っていった。 「あんた、そんなとこで何やってんの」 じりじりと距離を詰め――逃げなかったから、撫でてみようと思った。 もう一歩、あと一歩……。 「あ、馬鹿!」 ふいに黒猫に、手に持っていたパスケースを盗まれた。 「ちょっ、待ってよ」 すばしこい黒猫の後を追っていくと、奴は学校の裏庭に入っていった。 終業式の裏庭なんて、人が告白してるかもしれないのに、野暮なやつだ。 裏庭には、誰もいないように見えた。 黒猫は、ちらりと俺を横目で見て、優雅に端の低木の方へ歩いていった。 「いい加減パスケース返せって、猫」 今度は逃げられないように、そろり、そろりと歩み寄る。 そして、猫が低木の前で立ち止まった。 ——今だ! 俺は一気に距離をつめ、猫からパスケースを奪い返した。 「人間をなめたらだめだかんな~」 べぇ、と黒猫に舌を出すと、そいつは背を向けて歩いて行った。 反省の様子なし——猫だからいっか。 俺も帰ろう、と低木に背を向けた、その時。 わずかに、衣擦れの音が聞こえた。 低木の裏に、誰かいるようだ。 誰がいるのか見ようとして、ためらって、助けを求めているかだけ確認することにした。 「あの、誰かいるんすか?」 声をかける。 ……返事なし。 「覗いていいっすかー。いいですねー。」 なんとなく気になってしまったので、勝手に了承を得たことにして、低木の裏へ回る。 すると、そこには。 「……エンの馬鹿、なんで来たの」 「……セサミ?」 よく知った奴がいた。 カイトの幼馴染の一人で、俺ともたまに喋る女子。 目つき悪めな子で、最初は俺の子と嫌ってるのかと思ってたけど、数か月経って通常運転だと気づいた。 「セサミ、なんでここに」 「あっち行け」 「えー、ひどいっすね」 ぷぅ、と頬を膨らませると、返事は返ってこなかった。 なにか様子がおかしい。 普段のセサミは、口は悪いけど、普通に喋ってくれる奴だ。 それが、こんな風に黙り込むなんて。 もしかして体調でも悪いのだろうかと、セサミの前にしゃがみこむと…… 「……セサミ」 彼女は、静かに泣いていた。 「どっか痛い?」 「……ほっといて」 「深く干渉しないんで、大丈夫っす」 そう言って、静かに彼女の答えを待つ。 人が泣いているのはニガテだ、特に仲いい奴だと。 こういう時、自分には何ができるか分からない。だから、せめて、そばにいるだけでも。 できるだけ泣き顔を見ないように、目を逸らしていると、セサミの息遣いが聞こえた。 「……痛い」 「絆創膏、いる?」 もってないけど、と付け足すと、セサミは小さくつぶやいた。 「……こころが、痛い」 「そーすか」 再び、沈黙。 彼女の声を、待つ。 蝉の声がうるさかった。 「……カイトが、ミィとあそびに行くんだって」 「夏休み中?」 「そう」 それが泣くことにどう繋がるのか分からないが、とりあえず相槌を打つ。 次のセサミの声は、すこし、ふるえていた。 「二人でいくんだって」 「ふむ」 俺は、カイトのミィへの恋心をとっくに知っていた。 でも、いや、だからかもしれない……。 「エン、それってデート……だよね」 今まで、静かにセサミがカイトに向けている恋情に、気づきもしなかった。 「セサミはカイトのこと……」 「馬鹿みたいでしょ、あいつが誰を好きかなんて……」 とっくの昔に、知ってるのに。 そうつぶやく声は、濡れていた。 どうすればいいのか分からなかった。 こんな複雑な恋を目の当たりにするのが、初めてで。 だから、とりあえず立ち上がった。 ダッシュして自販機に向かい、カルピスを二本購入する。 なんで俺が人のために走っているんだろう。 ほんの少し、疑問に思った。 そして、また裏庭に戻った。 もう帰っちゃったかな、と思ったが、セサミはまだそこにいた。 「セサミ」 「……帰ったのかと思った」 「要りますか?」 カルピスを彼女の濡れた頬にあてた。 「暑いんで、冷たいもの飲んだ方がいいっすよ」 セサミは、ペットボトルの冷たさに少しびくりとしてから、それを受け取った。 「……ありがと」 「いや、別に」 泣いている彼女にできることが、好きな飲み物を買ってくることくらいしか、思いつかなかった。 「……うん、美味しい」 ぽつりと、セサミが言う。 彼女の前に自分も座って、カルピスを飲んだ。 そっとセサミを窺うと、もう涙は止まっていて、ほっとする。 そんな風に、安心して、油断してたからだろうか。 もしくは、暑さで頭がぼうっとしていたのかもしれない。 俺は、いとも簡単に落ちてしまった。 「ありがと、エン」 笑顔のセサミに、落ちてしまった。 瞬間、手のひらの、ペットボトルの冷たさを、感じなくなった。 心臓が、わずかに揺れる。 セサミの笑顔はレアで、だから嬉しかった。 そして、それ以上に…… 好き。 セサミが好きだと、強く思ってしまった。 でも、恋にも何にも気づかなかったふりをして。 「そろそろ帰りましょうか」 「うん」 カイトは先に帰ってしまったようだったので、ふたりで帰路につく。 他愛ない話を交わしながら、のんびりと歩いた。 彼女の話し方も、表情も、今まで以上に可愛くて。 やっぱり、これは、そういうことなのだろう。 ただ猫を追いかけていったら、終点は恋のおとしあなだった……なんて。 カイトに話したら、笑って面白がるだろうか。 恋なんて面倒なだけなのに、 なんで何度も繰り返してしまうのだろうか。 「ま、こういうのは理屈じゃないか」 「なんか言った?」 「いえ、何も」 蝉の声は、やっぱりまだうるさかったけど。 この帰り道が一生続いてしまえばいい、と思った。
ブルースターをつづる 序章⑦
歩人先輩と駅で別れ、いつも通りほんの少し早足で歩く帰宅路。 なんとなく、歩人先輩のことを思い出していた。 身近な人のむき出しな恋を見るのは久しぶりで、なんだかどきどきした。 そして、思ってしまったのだ。 自分もいつか。 いつか、恋を——。 男性が怖いのに、矛盾している気もするけど。 澄んだ空気の中で、小さな花が目にとまった。 その花を、私は知っている。 ——幸福な愛、初恋。 愛らしいブルースターが、花壇に揺れていた。 花言葉は、いまの自分には、まだ遠すぎるけれど。 いつか、ひとが怖くないと思える日が来たら。 叶わなくても、思い続けられるような恋に出逢ったら。 その時、この花言葉の意味を、本当に知るのかもしれない。 ——ほんの少しだけ、そう思った。
ブルースターをつづる 序章⑥
放課後、校門に向かうと、歩人が微笑んで手を振ってくれていた。 「椎菜ちゃん、帰ろう」 「歩人先輩!」 歩人の方に早足で向かう。 その時、椎菜は気づいた。 背中に突き刺さる殺気に。 振り返らないでも、分かる。 (とんでもない量の女子を、敵に回した気がする……) 歩人は、成績優秀で顔も良く、陸上部ではエース、さらに生徒会長。 これでモテないはずがない。 律希曰く、去年のバレンタインデーには貰ったチョコを食べきれず、律希と瑠美にも分けていたそうだ。 確かに、歩人先輩と二人きりだと、恨まれそうだ。 (どうしよう、ただ瑠美先輩を通じて少し仲良くなっただけなのになぁ) この状況を切り抜ける方法が浮かばない。 このまま歩き続ければ、やばいことになるかも。 椎菜は足を止めた。 (前に進めば女子たちに殺される、でも行かなきゃ歩人先輩を待たせちゃう) うーん、と葛藤。 すると、歩人が一言、呼びかけてきた。 しかもかなり大きな声で。 「それで、生徒会の仕事の件なんだけどさ!」 一瞬で女の子たちの眼光が柔らかくなった。 ——歩人先輩さすがすぎる! 椎菜は思わず心の中で拍手を送った。 背後の殺気が消え、 「なぁんだ、生徒会の子か」 「歩人くんの仕事仲間なのね」 「びっくりした~」 などと、ざわつく声が聞こえた。 とっさに機転を利かせてくれた先輩に心の底から感謝し、急いで先輩に駆け寄った。 校門を出るまでは先輩に話を合わせ、 「書類まとめておかなきゃですよね」 とそれっぽくしておいた。 校門を出てしばらくして、ようやく一息つく。 「本当にありがとうございました、先輩」 「全然。何なら本当に生徒会入る?」 「遠慮しておきます……」 椎菜が苦笑すると、歩人は冗談っぽく首をすくめ、 「残念。向いてると思うのに」 と言ってくれた。 「私は瑠美さんみたいに人付き合いできないので」 瑠美なら、生徒会もできそうだと思いながら言ってみる。 歩人はふわりと目を細め、柔らかく微笑んだ。 「瑠美と仕事できたら嬉しいけど、モデルが忙しそうだからね」 歩人の優しい表情に、「瑠美」と言う声に、なんだか椎菜はどきりとした。 いつも歩人は、瑠美のことを話すとき、表情が柔らかくなる。 瑠美のペースを見て歩くし、他の人より特別優しくする。 端から見ていると、まるで姫と騎士のようで。 (前々から思ってたけど、歩人先輩ってたぶん……) 「好き、なのかな」 「えっ?」 しまった、と口を抑えたがもう遅い。 つい、言葉がこぼれてしまった。 怪訝そうな顔をする歩人に、これはもう誤魔化しきれそうにない、と諦めた。 「先輩、瑠美先輩の事が、もしかして……って思って」 なんとなく恥ずかしくなって、歩人の様子をそっとうかがう。 歩人はひとつ息をついた。 「そんなにわかりやすいかな、俺」 「はい、わりと……」 正直に答えると、歩人は照れたように笑う。 「律希にもバレてないのに」 それは律希先輩が鈍感なのでは、と心の中で思わずツッコんだ。 歩人はしばらく黙り込んだ後、ぽつり、つぶやいた。 「十四年間も、こじらせてる」 歩人と瑠美と律希は、家が近所で、幼稚園の頃からよく遊んでいた、と前に聞いた。 それにしても、十四年間……。 四歳くらいから今まで、ずっと、片思いだというのか。 椎菜は恋愛経験がない。 そんなに長い間ひとりを想うということが、想像もつかない。 けれど、いつもと違った歩人の話し方で、きっとすごく切ない恋なのだろう、と分かってしまった。 「一途、ですね」 身近な人の恋を目の当たりにすると、胸がじんわり温かくなる。 まるで、その人の恋が、透けて見えるみたいに。 (私までどきどきしちゃうなぁ) 普段は口数の多い歩人だが、今日の帰り道は、ぽつり、ぽつりと言葉少なに瑠美の話をしてくれた。 とても綺麗なひとだから、心配でつい過保護になってしまうこと。 モデルに学業にといっぱいいっぱいな彼女に、自分の恋心まで背負わせたくないから、恋は伝えられないということ。 本当は泣き虫なのに涙を隠すところは瑠美らしいが、自分には頼ってほしいこと。 髪の毛を水色に染めた姿は美しいけど、黒髪の頃も素敵だったこと。 言葉が途切れ、遠い目で夕焼けを見つめる瞳。 ——瑠美のことを、想っているのだろうか。 (きっと。この人は、これからもずっと想い続けてる) 思うだけで何もしないのは臆病だという人も、いるかもしれない。 でも、少なくとも椎菜は、モデルと学業でいっぱいいっぱいな彼女への気遣いなのだろうと、素敵に感じた。 瑠美の笑顔を守るために、何も言わずに見守り続けてる。 (すごいな。私には何もできないけれど、でも。 歩人先輩と、瑠美先輩が……いつか、幸せになれたらいいな) ひそかに、胸の中で祈った。
ブルースターをつづる 序章⑤
それからは、瑠美や律希と一緒に帰ることが多くなった。 ふたりの友人であり、学校の生徒会長を務める歩人も、ときどき一緒になる。 色々な話をした。 瑠美のモデルの話を聞いたり、歩人の実家の和菓子屋について聞いたり。 たまに椎菜も、よつばのことなどを話した。 (瑠美さんはお姉ちゃんみたいだし、律希先輩や歩人先輩も、異性だけど怖くない。今日はどんな話をしようかな……) ほんの少しずつではあるが、三人に対して心をひらけている自分を、椎菜は嬉しく思っていた。 ある日、移動教室で椎菜が廊下を歩いていると、スカートのポケットが微かに振動した。 どうやらスマホに通知が入ったようだ。椎菜がポケットからスマホを取り出し、見てみると、瑠美からラインが入っていた。 〈椎菜ちゃん!ごめんね、今日私予定入っちゃったから、一緒に帰れないの。律樹も今日は学校来てないし……歩人と二人で帰ってくれる?〉 ざっと目を通して、了解です、とスタンプを送りつつも、椎菜は少し不安になっていた。 三人と出会ってから一か月ほど。 律希はたまに学校をサボるし、瑠美がモデルの撮影や部活の助っ人で忙しい時もある。 それでも、それが重なることはなかった。 つまり、歩人と二人きりになるのは初めてなのだ。 (えぇ、なに話せばいいの⁉ わかんないよ……) 歩人が温厚で優しいというのは十分わかっていたが、それでも緊張してしまう。 それに、こんなことを思うのは良くないけど……。 ——【あの人】と、同じ性別なんだ。歩人先輩も、律樹先輩も。