めんま

8 件の小説
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めんま

女子中学生の小説

あの夏への帽子

昔貸してもらった帽子を今日は返しに行く。 小5のとき家族で沖縄に行った時に地元の男の子と仲良くなった。帰り際男の子との別れが寂しくて泣いてしまったから男の子が私に帽子を貸してくれた。 「この帽子返しに来て。そしたらまた会えるよ。」 だから今日は男の子との7年ぶりの再会の日でもある。 あの日から男の子には会っていない。手紙も中学受験をする時にお互い忙しくてやめてしまった。 あれから7年経った今スマホという便利なものがあるから彼に電話してみればいいだけの話なんだけど、なんだか電話はしたくない気分だった。 男の子が私のことを覚えてなかったらどうしよう、そんな不安がよぎりながら足を進める。どんどんコンクリートから砂の道になり見覚えのある街に出た。 街に入って中心部のお土産屋さんが彼の家。子供たちの声、蝉の声が私の緊張を頂点まで上げさせた。 決心して足を踏み入れる。 「すみませーん。」 おばあちゃんがでてきた。私が手に持つ帽子を見て気づいたのか彼の名前を呼ぶ。 「京介ー、京介来て」 「ばーちゃんなにー?」 聞き覚えのある声より倍くらい低くなった彼の声。 彼は私を覚えてくれていた。 「明日夏?明日夏だよな!久しぶりー」 「京介覚えてくれてたんだね」 7年前に戻ったような気分だった。 ずっと待ってた、彼から私の名前を呼んでもらえることを。 またあの夏が始まることを。

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あの夏への帽子

創作日記{2}

今日いつもご贔屓にして下さっているお客様がいらっしゃいました。そのお客様とは私が生まれるずっと前からの関係なので、私のことを可愛がってくださいます。 調理長の笹川さんは、今日いつもの倍の力を使って新メニューを開発しました。夏なので寒天の中に素麺を入れたそうです。笹川さんは桜街の中でも有名な調理人さん。 明日は大おばあちゃんと一緒に新しいお着物を見ようと言われました。呉服屋さんのてっちゃんが来てくれるとか。なので明日は1日お店に顔を出さないお休みの日。 季節屋で貰った入浴剤を使ってお風呂に入ってきます。 おやすみなさい。

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創作日記{2}

創作日記{1}

梅雨が明けたので季節屋へ足を運びました。師匠と1度来てから何度も足を運び、今では常連です! 季節屋で大おばあちゃんと番代さんへの差し入れを買いました。 梅雨が明けてからは商品がガラッと変わったので新商品の向日葵琥珀と貝殻ミストを買いました。 季節屋は私の家とは昔からの繋がりのがあって私の家の店では、季節屋の芳香剤など色々なものを置かせてもらっています。 今では私が毎月芳香剤を取りに行く係になりました。季節屋のももちゃんとも仲良くなれて嬉しい! 明日は常連さんがいらっしゃるそうなので笑顔で迎えられるよう早めにお休み頂きます。

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創作日記{1}

私が死にたいと思った日(実話)

母が怪我をして私が家事をしてた。 最初は苦じゃなかったけど、勉強時間もなくなって焦りが出た。 嫌いな勉強もやらないといけない、嫌いな妹の面倒も見ないといけない。 すごくストレスになっていった。 ある日もう嫌になって妹と母に当たった。 その時母はこう言った 「別に頼んでたわけじゃないでしょ」って ごめんねって言われるのを少し期待してた。 責められるなんて思ってなかった。 もう嫌になった。 この時初めて“死にたい”と思った

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あなたへ贈る

先生は言った。 「簡単に死にたいと言っては行けません」と…。 入道雲が街に覆い被さる季節に従姉妹が死にました。理由は人間関係に悩んだ末の自殺だそうです。 人は自殺と聞くと否定的な意見を持ちます。私は否定するのではなくむしろ受け入れました。 だって人の生と死は真反対のようで一緒だから。 生きたいという人がいるように、当たり前に死にたいと思う人も居ると思うから。 先生、死にたいと思うことはいけないことですか?

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あなたへ贈る

夜の琴の音

夜、皆が寝た後一人音楽を聴く。 歌詞は無い。 昔の日本を思わせる琴などで奏でられた音楽。 何故か懐かしく自然と涙が出る。 昔の人も同じ気持ちだったのだろうか。 そうだったらいいな。

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夜の琴の音

僕は逃げる

この街は異常だ。 私たち15人が生きた証をここに残す。 ベラ 「リーン リーン」 今日も朝からベルが鳴る。何度ならない朝が来ることを願っただろう。このベルが鳴る時、必ずこの街には“あいつ”が出るんだ。 僕は妹であるベラが書いた楽しさの欠けらも無い日々が書かれた日記を鞄に詰めて家を出る。唯一のベラが生きた印だから。 自分の無力さに嫌気がさす。たが、どう足掻こうが“あいつ”を倒すことは出来ない、同時にベラも生き返らない。 僕が生きていていいのだろうか。 そんなことを考えながらもこわばる体で街を全速力でかけ、本能のままシェルターに逃げる。 僕はこの街からも、こんな屑な自分からも逃げることは出来ないのだ。

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僕は逃げる

少女の想い

 私は人のお葬式が好きだ。 人の死が好きとか、人の悲しむ顔が好きという訳ではない。    好きになったきっかけは4歳の頃祖父が死んだ時。祖父は祖母や叔母には嫌われていたし、町内会でも仲がいい人の名前は聞いたことがなかった。ぶっきらぼうで無口、唯一の話し相手は祖父が名付けた野良猫のあめ。そんな祖父だけど私は大好きだった。  祖父の最後は病室での淋しいものだった。祖母や母が見舞いから帰った1時間後くらいに容体が悪化し、次の日の早朝には息を引き取った。当時幼い私は人の死というものに触れさせてもらえず家で寝ていた。  祖父のお通夜が始まった。 この時やっと私は祖父の死を理解し、泣き崩れた。悲しみと同時に居心地の良さを感じた。普段は祖父の愚痴などを吐く人が涙を流し、いい思い出だけを口にしたから。心の底から悲しんだのかどうかは私には分からないこと。でもその時私はここで泣いているやつよりも祖父へ寄り添えた自信があった。  昔から私は大人のストレスの吐口だった。街で数少ない子供で告げ口もしないと勝手に思っていたんだろう。日々祖父へ対する愚痴、時には自分の責任を祖父へ転換する話を自慢げに語られたこともあった。私からすると毎日毎日大好きな人を侮辱され悔しかった。    ある日祖父がポロッと本音を漏らしたことがあった。 「あんず、じいちゃんは嫌われ者だけどな、お前はこうなるなよ。死ぬ時見送ってくれる人が居ないってのはきっと寂しい。お前はじいちゃんに見せてくれるその笑顔他の人にも振り撒いて好かれる人間になれ。」 祖父は好きで一人になったわけじゃない。人への思いやりを正しく受け取ってもらえなかった。受け取れるほどの頭のいい大人がいなかった。  そんな大人達に振りまく笑顔なんて無い。じいちゃんだけに見せる笑顔で十分だ。  今日も私はじいちゃんの仏壇に座り普段使わない表情筋をこれでもかと使いにっこり笑う。 「じいちゃん、今日も行ってきます。」  これは普天間あんずの心の奥に秘めた祖父への想い。日記のようなもの。今日も祖父にこの想いは届くことはなく、普天間あんずの心の奥に秘められたままだった。

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少女の想い