炭酸ジュース

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炭酸ジュース

ぼちぼち小説書きます。 不定期更新。中学生。 BLも百合もどちらも好きです。

魔女のお茶会

夜の森の奥、誰も辿り着けないはずの場所に、そのお茶会は開かれていた。 月はやけに近く、空は深い藍色に沈んでいる。風はないのに、木々は時折ささやくように揺れた。 丸いテーブルには、白いクロス。けれどその白は、どこか古く、ほんのりと黄ばんでいる。 「いらっしゃい」 声をかけてきたのは、一人の魔女だった。黒い帽子に、長い裾のドレス。けれど顔はよく見えない。影に溶けてしまっているみたいだった。 気づけば、椅子に座っていた。 テーブルの上には、色とりどりのティーカップ。中の液体は、それぞれ違う色をしている。紅茶にしては奇妙すぎる色だった。 「好きなものを選んで」 魔女がそう言って、ゆっくりと指を動かす。 隣を見ると、他にも“客”がいた。 誰も口を開かない。ただ静かに、カップを見つめている。 ひとつ、手を伸ばした。 淡い青色の紅茶。表面がわずかに揺れて、まるでこちらを見ているような気がした。 「それは、“記憶”の味」 魔女が小さく笑う。 「飲めば、忘れたいことをひとつ消せるわ」 指が止まる。 忘れたいことなんて、いくらでもある。思い出したくない言葉、顔、後悔。 「でもね」 魔女は続ける。 「何を失うかは、選べない」 空気が少しだけ冷えた気がした。 別のカップに目を向ける。今度は、淡い金色。 「それは、“願い”の味。ひとつだけ、叶えてあげる」 「ただし、代わりに――」 言葉は途中で止まった。 けれど、続きを聞かなくても分かる気がした。ここでは、何も“ただ”では手に入らない。 周りの客の一人が、赤い紅茶を一気に飲み干した。 次の瞬間、その人は――椅子ごと、消えた。 音もなく、まるで最初からいなかったみたいに。 「お代は、ちゃんといただくわ」 魔女は穏やかに言う。 怖いはずなのに、なぜか立ち上がれない。ここから逃げようという考えが、頭に浮かばない。 まるで、この場所に“選ばれた”みたいに。 カップの中の液体が、ゆらりと揺れる。 どれを選ぶかで、何かが決まる。 戻れなくなる何かが。 「さあ」 魔女が微笑む。 「あなたは、どれにする?」

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魔女のお茶会

夏と泡沫。

暇だなぁ、とエアコンが効いた教室のなかで、夕夏は思う。 高校2年生の夏。 自分の指先を弄りながらぼーっとしている私の耳に、数学の先生が方程式を説明する声が耳を通る、が。 一ミリも理解できなかった。元より夕夏は勉強が大の苦手だ。そして教科が数学ときた。 二次方程式がこうだから次に素因数分解するなんて、理解できるはずがないのだ。 「……はぁ」 小さくため息をついたその瞬間。 「夕夏、また聞いてないでしょ」 隣から小声が飛んできた。 びくっと肩が跳ねる。 視線を横に向けると、そこには涼しげな顔でノートを取っている彼女涼花がいた。 黒髪のストレートに、無駄のない整った横顔。 成績優秀、真面目、そしてちょっとだけ意地悪。 「聞いてるし……」 「嘘。今ぜったい“帰ったら何食べよ”とか考えてた」 「え、なんで分かんの」 「当たってるじゃん」 くす、と涼花が笑う。 その笑い方が、なんだかずるいと思った。 ほんの少し口元が緩むだけなのに、目が優しく細くなるから。 「……なに」 「いや別に」 夕夏はぷいっと前を向く。 けれど、なんとなく頬が熱い。 「放課後、残る?」 「え?」 「数学。教えてあげる」 さらっと言う涼花に、夕夏は思わず目を瞬かせた。 「いや、いいよ別に……どうせ分かんないし」 「分かるまでやるの」 即答だった。 「え、スパルタ?」 「夕夏がバカなだけ」 「ひど」 むっとするけど、なぜか嫌じゃない。 むしろ、 「……じゃあ、ちょっとだけ」 気づけばそう答えていた。 「うん。ちょっとじゃ終わらせないけどね」 また、あの笑い方。 夕夏は小さく息をつく。 そして今度は、ほんの少しだけ嬉しそうに。 (……まあ、いっか) 窓の外では、蝉の声がじんわりと響いていた。

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夏と泡沫。

最期

学校は嫌いだ。 だって、皆んなと話を合わせなきゃいけない。 最近流行っているダンスも、食べ物も、全部、私からしたら、何が面白いんだろう?という感じだった。 だから、空気が読めない私は、あっという間に不登校児になった。 小学校までは良かった。友好関係も多分それなりに上手くはやれていたと思うし、実際、友達とも仲が良かった。 問題は中学校だ。中学生になってから、皆んな、それぞれの『グループ』に入る様になった。 他人と話が合わない私は、『グループ』にも入れず、話も合わず、1人で本を読んでいるしかなった。 そしてそのうち、不登校児になった。 時は残酷だ。時間に流されるがまま、大人になった。 でも、不登校児の私が、立派な大人になれる訳がなかった。 まず共感性がない。 話が合わない。 何を言われても、耐えて、耐えて、耐えて、耐えて、耐えて、耐えて、耐えて、耐えて、耐えて、耐えて、耐えて、 あ 体が重力に従って地へと堕ちようとしている。 びゅうびゅうと耳元で風がふいている。 コンクリートで作られた地面が、すぐそこに。 目を開けると、満月が淡く光っていた。 こんなことになるなら、せめて。 「もう、なんでもいいから、人生やし直したいな」 これが私の見た、最期。

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最期