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8 件の小説叶わないもの(8)完
翌日の昼休み。綺羅くんに昨日呼び出された場所へ辿り着く。入学してから一度も来たことがなかったので、初めての屋上はワクワクする。お弁当を食べている人などがたくさんいて、結構にぎやか。周りをキョロキョロしていると、『美桜』という声が聞こえた。声の主はもちろん綺羅くん。 『ごめん、お昼の時間もらっちゃって』 「全然大丈夫だよ!どうしたの?」 『美桜、俺は美桜のことが好きです。俺と付き合ってくれませんか。』 「…え?えっと、ほんとに?」 『本当、嘘なんかついてない』 私はこの時、驚きと混乱でいっぱいだった。好きなに告白してもらえた。とてもうれしくて仕方がない。ただ、 「本当に美桜で良いの?綺羅くんも知っていると思うけど、美桜わがままだし迷惑かけちゃうよ?」 好きだからこそ不安だった。好きな人に迷惑をかけちゃうかもしれないことが怖かった。 『迷惑なわけない。俺は美桜がいい』 綺羅くんはそう言ってくれた。 「ありがとう。よろこんで」 ずっと心にしまっておこうと思っていた想い。 叶わないと思っていた恋。 努力は無駄なんかじゃない。そう確信できた恋。 これからは二人で色々なことを乗り越えていこう。 完
叶わないもの(7)
それから一ヶ月が経った。席替えをしてしまったため、綺羅くんとも光輝くんとも席が離れてしまった。綺羅くんへの想いを自覚してからというもの、彼への好きな気持ちが大きくなるばかりで少し困っている。思わせぶりない態度ばかり取られてしまい、正直にいうとつらい。ただ、LINEの着信音が鳴ると綺羅くんからかと思い期待する。そして違う人からの着信で落ち込む。これの繰り返し。だから期待しないように最近はしている。 今日は日曜日。何もすることがなくてゴロゴロとしていると、 ブーブー LINEの着信音が鳴る。誰かと思って見てみると、画面には【綺羅】の文字が。彼はLINEをあまりしない人なので、向こうからLINEを送ってくるなんて珍しいなと思っていると 『明日昼休みになったらすぐに屋上にきてほしい』 『できるだけ、というか1人できてはしい』 と書いてあった。!?!?。これは、と期待をするが、そんなわけがないと冷静になる。多分何かの相談だろうな、と思いその日は眠りについた。
叶わないもの(6)
綺羅くんと光輝くんと私の3人LINEグループがある。そこで恋バナになり、「2人とも好きな人いるの?」と聞いた。光輝くんは『いないんだよねー』と返信がきた。少し遅れて綺羅くんが『曖昧なんだよね』って返ってきた。へー綺羅くんって気になる人いるんだ、と思ったらモヤっとした気がした。その後も話していたがどうにも気になってしかたがない。そこで気づいた。入学から二ヶ月半くらい経ち、綺羅くんと初めて話した時から二ヶ月くらいが経った。その間、私は綺羅くんを好きと認めたくなったから、綺羅くんは推しだと言っていたのだと。そう。この日初めて私は綺羅くんのことが好きだと自覚したのだ。
叶わないもの(5)
今日は、いわば学年レクレーションのようなものであるクラスマッチがある。一学年のクラス対抗で行われる。午前はバレーボールかバスケットボール、午後はドッジボールかサッカーをやる。私はバレーとドッジに出る予定だ。ついでに、綺羅くんと光輝くんと3人で同じ種目を選んだ。 午前種目のバレーボール。私は高校では帰宅部だが、中学のときはバレー部だったため一応経験者ではある。また、私のクラスは経験者が私しかいないため、私はセッターをやることになった。男子と同じコートにいると自分の背が低く感じてつらい。そこまで小柄でもないんだけどなぁ、。 相手がサーブを打つ。自チームがレシーブをあげる。私がレフトにトスをあげる。それを綺羅くんが打つ。あれ?意外にもうちのクラス上手かもしれない。スパイクを決めた綺羅くんとハイタッチをする。コロナ禍ではあるが、今日は競技中のみマスクを着用しなくても良いと許可が出ている。入学してからというもの、マスク生活のためちゃんと顔を見たことがなかったが、綺羅くんがイケメン。やばい。笑顔の破壊力えげつない。そんな私の驚きもよそに試合は進んでいき、初戦勝利を飾った。 何試合か終わった後、私たちの試合が入っていない時間、つまり自由時間があった。その時間、私は綺羅くんと光輝くんとパスをすることした。綺羅くんがちょっとイヤイヤだったので、ボールを取りに行くのに一緒に連れて行こうと思った。左手で綺羅くんの右手を掴み連れて行こうとすると、綺羅くんの右腕が少し上に上がった。嫌だったかなと思い左手を離すと、『左はダメ』と綺羅くんが言った。最初は意味がわからなかった。それを察したように綺羅くんが『さっきの試合でレシーブ乱れたやつをカバーしたときに左手痛めたでしょ。そのあと少し左手痛そうにしてたから。』と言った。確かに私は左手を先ほどの試合で痛めた。ただ誰にもバレていないと思っていたので正直驚いたが、「ありがとう」と言ってそのままボールを取りに行った。その後、試合では勝利を重ね、バレーボールの部を優勝することができた。 午後にあったドッジボールでは、綺羅くんが逃げるわ逃げるわで、最後の1人になっても逃げ続けていて、「すご!」と思っていた。また、女子に投げる時は優しく投げているところから綺羅くんの優しさが出ていて、「この人隠れファン増やしたんじゃないかな」っと思ったりもしていた。 その日、綺羅くんと初のツーショットを撮れて私はとても満足だった。なぜ初かって?それは綺羅くんが写真嫌いだから。光輝くんとの写真はたくさんあるのに、綺羅くんとの写真は今まで一つもなかったのだ。私にとってとても幸せな一日であり、とても濃い一日を過ごすことができた。 ついでに、今日は光輝くんは違う男友達と行動していたため、一緒にいた時間はほとんどなかった。 この時、すでに恋に落ちていたことを私はのちに知る。
叶わないもの(4)
クラスの席順は今のところ出席番号順。綺羅くんは私の後ろの席。その綺羅くんの左斜め後ろの席にいる光輝くん。最近はこの2人と私の3人で話すことが増えた。光輝くんは天然といえば聞こえはいいがいわゆる馬鹿。私はいつもツッコミ役。そして綺羅くんは光輝くんとふざけたり、一緒にツッコミ役になったりする。この2人といる時間が私にとってかけがえのないものとなっている。 ある日、綺羅くんがいなくて光輝くんと2人の時に光輝くんが『美桜って好きな人いるのー?』と聞いてきた。すかさず「いないよー」と返す。『綺羅は?』なぜだろう。最近この質問をいろいろな人にされる。「綺羅くんは推しかな」これは私がその度に答えるいつもの回答。『そっかー』そう言いながら光輝くんはどこかに行ってしまった。 私は最近好きな人がいるのかどうかが曖昧でわからない。確かに綺羅くんは友達としてとても好き。ただ好きになるのが怖い。だから自分自身に「綺羅くんは推しなのだ」と言い聞かせている。「綺羅くんを好きになったら負けだ」と。
叶わないもの(3)
入学して2週間後。 今は情報の授業。パソコン室でパソコンを使った授業を今日はやっている。これは私にとって苦痛でしかない。理由?それは、、私はパソコンができないから。タイピングとか全くできないの。 そして今も大ピンチ。先生にこのサイトにログインしなさいって言われてみんな先生からもらったログインパスワードでやってるんだけど、何回やっても私だけ入れない。どうしよう。と思っていると、『どうしたの?』という声が隣からした。 パソコン室は机一つにつき二人づつ名前の順で座る。私は23番だから、24番の人と同じ机になる。その24番の人の名前は綺羅くんという男子。話すのはこれが初めてでとても緊張する。 「何回もログインやってるんだけど入れないんだよね」 『マジ?もう一回やってみ?』 そして綺羅くんと共にもう一度挑戦するものの、結果は同じだった。 『うわ、ほんとだ。』 「先生に言った方がいいよね」 『うん、そうかも』 となって私は「先生」と呼んだのだが、一向に声が届かない。そしたら 『先生』と綺羅くんが先生を呼んでくれたのだ。先生は気づき、こっちに来てくれて事情を話し、先生と共にやったのだが出来なかった。 授業終わり、友達に「なにー?なにがあったのー?」みたいに聞かれ、説明をしながらゆっくり歩いていた。そしたら綺羅くんが綺羅くんの友達と共に先生に話しかけていた。その話の内容が微かに聞こえてきたのだが、どうやら私のログインのことについて話しているらしい。先生の伝えたログインがずれていたのではないかなどと先生に言ってくれていたのだ。しかし、この後は校舎の掃除をしなくてはいけなくて時間がなくて、残念ながら話の続きを聞くことはできなかった。なんて優しい人なんだろう。そう思いながら友達と自分の教室へと戻った。 これが私と綺羅くんの最初のお話。
叶わないもの(2)
新高校一年生の私、美桜。今日は入学式。私の学校は一学年七クラス。そのうち一年生の間は進学クラスが一クラスある。基本、学年の成績上位の人が集まっているクラスであるAクラスが、私のクラスらしい。うん、。早くも大問題。知り合い一人しかいないに加え、その相手は男子なのだ。女子の友達がいないのは正直言ってキツい…。 と思っていたのだが、私のクラスの人達は優しい人達が多く、入学初日に友達がたくさんできた。それからというもの、休み時間やお昼、移動教室のときは、友達たちと一緒にいる時間が多く、とても充実した日々を送っていた。
叶わないもの
誰かが恋に落ちる 片想いから両想いへ変わる それぞれのこれからのために別れる それが当たり前のように起きる世の中で 「好きな人なんかいない」 今日も私は自分にそう言い聞かせる。