Weiß
5 件の小説Weiß
成人済み@大体読み専 作品は手紙などをモチーフにしたものが多いかと思われます ※全てフィクションです さり気なくフォローや♥を押します 内容はしっかりと読んでいます 反応が早いときは暇で仕方が無い時です、大体は
星
夜中、ふと窓の外を見てみると、一つの星が他の星と比べて一際輝いて見えた。 輝いて見えていたのは乙女座の一等星、『スピカ』という星。 俺の友人にも、スピカという名前の人物が居た。 そのスピカという人物は皆に優しく、明るく振る舞う元気な人だった。スピカは「将来、俺は宇宙飛行士になる」という大きな目標を抱えていた。理由を尋ねてみると、それは単純なものだった。ただ、「自分と同じ名前の星に行きたいから」という、ごく普通で単純な。 だがスピカはその青い瞳をキラキラと輝かせ、その夢を諦めなかった。 そんなスピカに事件が起きた。 あの元気だったスピカに病気が見つかったのだという。 すぐに俺とスピカの友人たちはその病室に向かった。 そこに居たスピカは笑顔を見せていたが、その笑顔は何処と無く、ぎこちないもののように見えた。俺と周りに居た奴らはそんなスピカの状態に酷く悲しんだ。 スピカの病気は詳しく教えてもらうことは出来なかったが、近いうちにこの世から居なくなってしまうということは、見舞いに来る度に感じるようになっていった。 「俺、宇宙飛行士になるの諦めるよ」 ある日突然、スピカはそう口に出した。 俺は物凄く驚いた、あの将来の夢をずっと諦めずに努力したスピカが弱音を口に出したことに。 その時、俺はただスピカの手をそっと握ることしか出来なかった。 ついにスピカとお別れの時期が近づいてきた。 スピカは静かに息を引き取った。 俺も、俺の周りを囲んでスピカを見守っていたスピカの友人も、全員が涙を流していた。 スピカは最後に 「俺、星にずっと居るよ。君たちを見守れる、春の大三角のスピカに」 だから俺のことを思い出してくれ、と寂しそうに笑いながら。 そんなスピカに俺は言った。 あぁ、絶対に忘れないからな。 あの日から春が来る度に、 スピカという友人を忘れたことは無い。
メッセージボトル
俺は仕事帰りに浜辺に寄った。 理由は分からない、ただ急に寄ってみたくなったのだ。 海のしょっぱいような、苦いような。 そんな香りがする浜辺を一人で歩いていると、ふと一つの小瓶が落ちているのを見つけた。 その小瓶には見知らぬ薄いピンク色の花が貼ってある栞と、一枚の紙が入っていた。俺はその小瓶を開けても良いのか不安になりながらも、興味本位で開けずにはいられず瓶の蓋を開けてしまった。中に入っている紙を取り出し、広げてみると、それは手紙のようだった。 他の国の言葉なのか、俺の知らない文字でそれは書かれていた。 スマートフォンで写真を撮り、翻訳をする。 最新の機械は便利なものだ。 翻訳した内容が画面に映し出される。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー どこか、知らない国の人へ。 この小瓶は届いているのでしょうか。 貴方の国には『桜』という花はありますか? 私の国にはもう桜は咲いておりません。 『桜』は私が住んでいるここ、 日本という国に昔咲いていた花なんです。 薄い桃色の花で、甘いような香りがする、 そんな可愛らしい花。 その栞は私が幼少期時代の頃、保存したもので、 私の家には桜の栞や装飾品が沢山売ってあります。 勿論、桜の種も。 ですが日本では その花を育てられる環境はもうどこにもありません。 ですから他国の人はもう桜という花を知らないことでしょう。 もう五十年も経ちますから。 その瓶に入っている栞を手紙を読んでいる、 そこの貴方に差し上げます。 他国の人が、今はもう若者たちに知られていない、 儚く、そして美しい花を知れる機会になれば。 私はそれだけで嬉しいのです。 桜の木の種も貴方にあげましょう。 その桜の種をそこの貴方がどこか、 その国のところに植えて下さい。 いつか私が生きている内に、 見られると嬉しいのですが…… 流石に無理でしょうかね。 では、また会えましたら。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 俺は手紙を読んだ後、その花のことを知り合いの政治家たちに伝えた。俺は一応顔は広い方で、政治家など有名人とちょっとした知り合いなのだ。 一部の政治家は知らん顔をしてちっとも話を聞いてくれなかったが、大体の人たちは俺の話を真剣に聞いてくれた。そしてその『桜』という花の種を一つの小さな公園に植えることになったのだ。 この手紙を書いた本人にもう一度桜を見せてみたいものだが、そう後は長くないのだろう。 手紙に書かれていた文字は、ところどころガタガタで、文字を書く力さえも少ないように見えた。 それでも良い、俺はその人に桜を見せたい。 __天国からでも良いから。 そう願いながら、俺はその桜の種を植えた。 十年経った今では その公園は世界で一番有名で、たった一つの 『桜』の木が沢山生え、一面桃色の花弁が埋め尽くす 小さな楽園となった。
いじり
小学校の時の俺は人をいじることが好きだった、理由はまわりの皆も相手自身も笑ってくれるから。 ある日俺は一人の女子に目をつけた。 そいつは髪がモサモサで眼鏡をかけている、所謂陰キャそのものだった。 俺はそいつをいじってみた。 けどまわりの皆は笑っているくせに、そいつだけは笑わず、眼鏡越しに俺を睨みつけるだけだった。 そいつを笑わせてみようと、俺なりに色々してみた。黒板消しが落ちてくるように仕掛けてみたり、虫を沢山そいつの引き出しの中に入れたりしてみた。 そんな俺を「流石にやりすぎ」だと言って止めてくるやつが出てくるようになってきた頃、周りにいるクラスの奴らは俺から距離を取るようになっていた。 ただ俺は笑わせてみたかっただけなのに。 誤解だと言ってみても、皆俺のことを信じてはくれなかった。 いや、事実だったから皆俺を庇えなかった。 ついには担任に見つかり、親にも連絡された。 あーあ、俺はただ 笑わせてみたかっただけなのに。 子供の頃の俺はそう思うしか選択肢はなかった。 今思うと、少しやりすぎだと思う。 完全に俺が悪いと思っているわけではない、ただ。 周りの人間があの時、すぐに俺を止めていたらああはならなかったのに、と他人に責任を押し付けてしまうんだ。
溺れる
海で溺れる。 足に足枷がついたかのように引っ張られていく。 魚たちはそれを不思議そうに眺める。 愛に溺れる。 自分の心と君の心を繋ぐ重い鎖が沈むような。 君以外の人は俺を気味が悪そうに見てくる。 酒に溺れる。 他人のことなんてお構いなし、自分の欲望のままに。 社会はそれを認めてはくれないらしい。 夢に溺れる。 本当は見たくないというのに、勝手に見てしまう。 俺はそれに抗おうとしてまた沈む。 溺れる、何に溺れる? 海のように深かったら何でも溺れるのか? 愛のように素敵なものだったら溺れるのか? 酒のように楽にしてくれるものなら溺れるのか? 夢のように離してくれないものなら溺れるっていうのか。 溺れる、溺れる。 君に溺れる。
風船
ある日俺は風船を見つけた。 相当風に飛ばされてきたのか、もうクタクタになっている風船を。 風船に繋がれている白く細い紐に、手紙が括り付けられていた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー パパへ おげんきですか? てんごくはいいところですか? わたしはパパがいなくなって、 ものすごくかなしいです。 ママもパパがいなくなって、 いつもないてたよ。 でもないててもしかたがないって、 ママはえがおでわたしにわらったの。 パパ、いつかえってくるの? ママにきいたら、 パパはもうかえってこないって。 わたしはパパのことまってるよ! パパがかえってくるまでに、 たくさんおべんきょうして、 パパとママみたいな、りっぱなおとなに なるんだ! わたし、がんばるから、 てんごくでみまもっててね。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー これを読んで俺は泣いてしまった。 この手紙は、幼児が一生懸命お父さんに書いた手紙だった。 手紙の字は所々滲んでいて、この子も泣いてしまったんだろうと感じる。 その後、俺はまた風船にその手紙を括り付けた。 そしてお父さんに届くよう、一生懸命願うのだった。