goth
7 件の小説条件
「さて、そろそろ本題に入ります」 マスターが物静かに喋り出す。 「はい、よろしくお願いします」 母も背筋を伸ばし聞く姿勢をとる。 「おかわり下さい」 父が空気をぶち壊す。 「それではあちらの席でおかわりお出ししますね、移動をお願いします」 千代さんが空気を読む。 「まずココは元々私の父が経営していたレコードショップになります、しかしながらこのご時世、レコードの需要がなくなり店じまいを余儀なくされました」 「なるほど」 「そこで私の念願であったカフェをココでオープンしようと思い、今に至ります」 そこまでは僕も知っている。 「そこで私は綺麗なカフェというより、手作り感のある親しみやすいカフェを目指したいと思っており……」 「素直に業者を雇うお金が無いって言えばいいのに…」 千代さんがボソッと呟いたのは僕だけにしか聞こえてない様だ…。 「なるほど、地域の方々にオープンを手伝ってもらう事で、みんなが馴染みのある店にしたいと…」 あ、母が良いように捉えた。 「そうです!まさにその通り!」 マスターのテンションが少し上がった。 「では地域の方々にお願いしてみては?」 「それもそうなのですが…」 マスターのテンションが少し下がった。 「というよりウチのお爺ちゃんがかなりの頑固者で、経営が上手くいかなかった事を恥と感じてて、地域の方々の手は借りず自分で何とかしてみろ!手伝って貰うのは自分では何も出来ないと言っているみたいなもんだ!っていうのが遺言です」 遺言… 「あ、死んでないです」 おい、千代さん! 「では何故ウチの息子、そして佐々木君を?」 「中学生ならアルバイトじゃないからお金払わなくて良いし、何だったら私の友達として家に遊びに来たっていう名目に出来るからです!」 千代さん、さっきからズバズバ言い過ぎな気が… 納得いくのかコレで…。 まぁ、納得いかない方が僕にとっては好都合なんだけれど…。 「友達…」 その言葉を聞いて母が固まる。コレは…。 「分かりました。では息子とお友達になっていただけるという条件であるのなら協力しましょう!」 クソッ!良い母親! 「勿論中学2年生は受験も控えた大事な時期、学問に差し支えの無い様配慮はいたしますし、見返りも考えております」 「ほほぅ?その見返りとは?」 急に父が反応する、恥ずかしいな…。 「コーヒーチケット10杯分です!」 やっぱりなんか安っぽいな…。 「分かりました!息子をお貸ししましょう!」 決定打がコーヒーとは…、何も考えてないんだろうなぁこの人。 そう言えば… 「手伝うのは良いとして、僕にとって見返りが無いのですが…、僕コーヒー飲めないですし」 「あら、何言ってるの!お友達になっていただけるのよ?こんなに素晴らしい事ないじゃない!」 『友達なんていらない!一人で過ごすのも苦じゃない!』 なんて言ったら場が冷めるだろうから言わないでおこう…。 「納得いってないって顔ね、ならお手伝いの日は臨時お小遣いあげるわ。お友達と遊ぶにもお金は少なからず必要だものね」 『やらせていただきます!』
バトル勃発
「母さん、明後日の日曜何か用事あったりする?」 マスターに保護者を連れてくる様言われ、とりあえず声をかけるが、僕自身は正直乗り気では無い。 お小遣いが貰えないとわかった以上、お手伝いをする意味が無いからだ。 しかしカフェがオープンした際、両親が利用するかもしれないと考えた時、気まずい。 「空いてるけど、どうしたの?」 「いらっしゃい、宮本さん」 「こんにちは、立花さん。先日は息子がお邪魔したみたいで…」 「お邪魔なんてとんでもないですよ、こちらこそお忙しい中ご足労いただきありがとうございます」 まだオープンするには散らかっている店内の中でもかろうじて機能しそうなカウンターに案内され、両親と僕が席に着く。 母だけでも良かったのに、まさか父まで来るとは。 「コーヒーは飲めますか?」 あ、ちゃんと聞いた。 「あ、お構いなく」 「良いんですか?実は私、コーヒーにはうるさくて…」 「お父さん!余計な事言わないで!」 おぉ!父がちょっとカッコいい事言った!中学2年生の心が揺さぶられた! 「はは、お手柔らかに…」 心なしかマスターの目が鋭くなった気がする!コレはバトルが始まるのか?コーヒーバトルが! 漫画みたいで楽しい! 「どうぞ召し上がってください」 「いただきます……コレは…」 父が静かに目を閉じ、風味を楽しんだ素振りを見せ、答える。 「コピ・ルアクですな?」 「あ、違います」 帰ってくんねぇかなオヤジ。
すれ違い
「しかし助かるよ宮本君!正直全然作業が進んでなくてさ!」 「いや、あの、まだやると決めた訳じゃ…」 「そうだぞ千代。まだ宮本君のご両親に承諾を得て無いんだから」 …両親の承諾?何のことだ? 「不思議そうな顔をしているという事はやっぱりまだお話ししてないんだね」 そりゃあロクに説明も受けてないし、そもそも強引に連れてこられたみたいなもんだし。 「お手伝いの内容は聞いているかな?」 「はい!説明しました!」 君が答えるな、佐々木。 「まぁ少しは…。オープンの手伝いをするとお小遣いが貰えるとは聞いてます」 「うんうん」 佐々木が大きく頷く。 「え?」 「え?」 「え?違うんですか?」 マスターと千代さんが不思議そうに顔を見合わせている…。 「お小遣いをあげるとは…言ってないけど…」 「私も…お小遣い貰ってない…」 どういう事だ、佐々木。僕を含め三人で佐々木を見る。 「え?だって手伝いをしたら良い物あげるってオーナーが…」 そこはマスターって言ってやれよ…。 「いや、良い物って…、オープンしたらコーヒーチケットをあげるつもりだったんだけど…」 「え?」 「え?」 今度は佐々木と僕が顔を見合わせる。 「別に…いらないです」 「俺も…コーヒー好きじゃないし…」 「はい!ストップ!双方静まれ!」 別にうるさくしてない。千代さんが一番声デカい。 「まず佐々木!話をちゃんと聞け!良い物が全てお金な訳ないだろ!というかそれじゃアルバイトだし!」 「次にオヤジ!たかがコーヒーチケットで中学生をコキ使おうとしてたのか!タダ働きみたいなもんじゃん!小遣いくれ!」 「最後に宮本!お金に釣られるな!そんな怪しい話を信じるな!」 いつのまにか呼び捨てなのは置いといて、千代さんの言う通りです… 「バカどもがぁあぁあぁっ!」 「いかん!千代が荒ぶっている!コレを飲むんだ千代!」 マスターが一杯のコーヒーを差し出した。 「ふぅ…」 落ち着いた。マスターのコーヒーすげぇ!そして荒ぶった千代さん口悪っ!
紹介
「制服、汚れるだろうから着替えてきなよ。俺も着替えるから」 まさか家が隣だとは… 「片付けの前にお隣に挨拶しなきゃ、お父さん菓子折り出して!ほら、あんた達も行くよ!」 「僕はいいよ、片付けしてる」 テキパキと物事をこなす母を横目に、念願の自室を手に入れテンション爆上がりの僕は答える。 「あんたってばいっつも……まぁいいわ、お姉ちゃんは行くでしょ?準備して!」 思い返せばあの時、佐々木の家に行ってたのか… 「何で学校のジャージなんだよ!まぁ一目で名前分かるからいいか!」 「そもそも今日は様子を伺うだけのつもりなんだけど…」 「様子も何も学校で説明したじゃん!ほら、早く行こう」 あれで全てを話したつもりか。まだやるなんて一言も言ってないのに…。 「こんにちはー!今日は友達連れて来ましたー!」 「こんにちは、佐々木君」 店主らしき男性が佐々木に挨拶を返す。 「佐々木ー!よく来たー!そして貴重な人員確保良くやった!」 物腰柔らかそうな店主とは違い、テンション高めな女性も出て来た。 「…こんにちは、佐々木君の紹介で来た宮本です」 「宮本君、こんにちは。もしかしてこの間引っ越しされた宮本さんの息子さんかな?」 「あ、そうです…、僕だけ挨拶行けなくてすみませんでした」 ここにも来てたのか。 「ホントだよ!宮本のお母さんから同級生がいるって聞いてたから良かったものの!」 何が良かったのか分からないが佐々木、うるさい。 「はいはい、それはごめんなさいね」 「改めまして宮本君、マスターの立花です。これからよろしくね」 「何マスターなんてカッコつけてるのお父さん、まだオープンもしてないのに!あ、宮本君よろしくね!このオッサンの娘の千代です!」 親子だったのか…。テンション違いすぎて分からなかった。 「俺!佐々木!よろしくな!」 佐々木、うるさい。
目的2
放課後になり、外ではサッカー部の練習する声が聞こえてくる。運動は苦手だ、というより協調性の無い僕にとってチームプレイなんて出来るはずもなかった。 「いやー青春してるって感じがしていいよねー」 「何オッサンみたいな事言ってんの?そんなに羨ましいなら部活入れば?」 いつの間にか隣にいた佐々木に悪態をつく。 「いやー放課後はアルバイト的な事してるからなー」 「へーどうでもいいー。それより俺の欲しい物を当てる事が出来た理由が気になるー」 「まぁまぁそう焦んなって。それより【すいか】を買うのにもお金いるだろ?さっき言ったアルバイト的なヤツ紹介してやるよ」 コイツホントに教える気あるのか?ただ僕と喋りたいだけな気がしてきた。しかし見た感じ友達が多そうな佐々木がなぜ僕と?クソッ、謎が増えてしまった。 「さっきはあえて突っ込まなかったけど、中学生がアルバイト出来るわけないじゃん」 「だからアルバイト的なって言ったろ?要はお手伝いしてお小遣い貰う様なもんだよ」 確かに佐々木の言う通り、僕が求めている【すいか】を買うにはお金が必要だ。しかも明確な金額が分からない。新品は手に入らないだろうし、中古となってもプレミアがついてる可能性がある。 しかし、お手伝いって… 「怪しそう…」 「あ、いやホント全然怪しくないって!ほら、家の近くに潰れたレコードショップあるだろ?そこの片付けだよ」 「あぁ、アレ元々はレコードショップだったんだ、知らなかった」 「そそ、ソコの店主さんが新しくカフェを始めたいらしくて、片付けの手伝いを出来る人手を探しているんだ。そしたら丁度お金を求めている宮本がいたって訳。」 いつのまにか呼び捨て…こうやって人との距離を詰めていくのか…。じゃなくて 「それが佐々木の目的だったのか」 「御名答。というわけでこの後用事無いでしょ、ついてきて」 「勝手に用事無いって決めないでよ、無いけど」 佐々木の思い通りなのが腹ただしいが、お金が必要なのも事実。行くだけ行ってみるか。 「よし!なら先に下駄箱で待ってるから!早く来いよ!」 ………あれ?そういえば何で僕の家知ってんだ? 謎が一つ消えて、一つ増えた。
目的
「宮本君、ちょっと待ってよ!」 「うるさい、話しかけないで。全然会話した事ない人に一発で欲しい物を当てられる気持ち悪さ、分からないかな」 「あ、やっぱり当たってたんだ」 ドンピシャで当てられた悔しさと恥ずかしさ、あと気味の悪さを感じ、席を離れた。が、佐々木はしつこくついてくる。 「話はまだ終わってないだろ?」 「君は僕の欲しい物を見事に当てた。それで話は終わりです。さようなら」 「さようならって、帰るつもり?まだ午後の授業あるよ?」 いちいちムカつくなこの人。 「帰るつもりは無いけど、君がまだ話かけてくるのであれば、その選択肢を選ぶかもね」 「でもさ、気にならない?一発で当てる事が出来た理由」 それは確かに気になる。面倒くさいがこのまま知らずに生きていく方が気持ち悪いだろう。 「なら教えてもらおうか、なぜ僕の…」 「あ、昼休みが終わる、席に付かなきゃ。またね」 いちいちムカつくなこの人。
僕達の欲しい物
「俺の欲しい物当ててみて」 昼休みの教室、給食を食べ終え1人うたた寝をキメこもうとする最中、不意に話しかけられた。 「…誰?」 「誰?って、同じクラスだろ!?」 …わからない 「佐々木だよ!佐々木!転校してきて2週間も経つんだからいい加減覚えてくれよ!」 ……わからん 「はいはい、失礼しました。んで、その佐々木君が何の様?」 「おいおい、せっかく1人寂しそうにしてる奴に話しかけてやったんだ、その態度はどうなん?」 ………知るか、何だこいつ しかし確かに態度が悪かったのは否めない。反省しなければ。せっかく話しかけてきてくれたんだ、愛想良くしなければ。 「んでその佐々木君が寂しそうに見える友達のいなさそうな僕に何の様?」 「感じ悪いなぁ…まぁいいや、俺の好きな物当ててみて」 「え、興味無い…」 「じゃあ逆に宮本君の欲しい物当ててあげようか」 めんどくさいな、この人。初めて喋るのに当たるわけないだろう。ましてや友達のいない僕である。僕の情報を知る人物は家族くらいだ。 「じゃあどうぞ、当ててみて。ちなみにお金っていう安易な答えを出したら今後君と話す事はないだろう」 「お金欲しくないの?」 「欲しいに決まっているだろう、お金があれば僕の欲しい物が手に入るんだから。僕が言いたいのはそういった大雑把で具体性のない…」 「あぁ、分かった!分かった!ごめん!ごめん!」 …腹立つなコイツ 「じゃあ改めて、君の欲しいものはズバリ!」 「ズバリ?」 「すいか」 ………当たってる。