goth
18 件の小説Heart Rock
「はい、タオル。Tシャツは売り切れてた」 「ありがとー!これお金ね!チケット代とタオル代!」 「…タオル代だけでいいよ」 「どうしたの?あっ!もしかして気を遣ってる?いいの!ライブには行けなかったけどタオル手に入ったし、無理矢理ライブ行ってもらった感じだし!遠慮なく受け取って!」 「いや、そうじゃなくて…」 私にはチケット代を受け取れない理由が他にあった。 ライブ中 序盤 音の大きさにびっくりした様子を見せる祖母 中盤 楽しそうに手拍子をする祖母 終盤 他の観客と肩を組み横揺れをしている祖母 アンコール いぇーいと叫ぶ祖母 「一緒に行ったおばぁちゃんが思いのほか楽しんじゃってて…」 「えっ!?ライブおばあちゃん連れてったの?!」 「チケット代勿体ないからって…」 「しかも楽しんだって…結構激しい曲もあったでしょ?大丈夫だったの?」 祖母は耳が悪いぶん、ライブの大音量が聞こえやすくて嬉しいと言っていた。さらにあまり1人で外出もしない為か、歳柄にもなく羽目を外すのが楽しかったみたいだった。 「まぁ身体を痛めることは無かったし、良いとは思うんだけど…問題が他にあって…」 「何?」 「それが…」 自宅にて 「かーちゃん!うるせーよ!俺夜勤で昼寝なきゃいけないの!おーい!かーちゃん!」 ♫〜♪〜 「おーい!かーちゃんってば!音楽を大音量で流すのやめろって!おーい!せめてイヤホンを…」 ♪〜 「ばばぁコラ!聞いてんのか!」 「アンタ今日ご飯要らないんだね!わかりました!」 「どんな耳してんだよ…」 「ってな感じで…。私よりおばあちゃんの方があのバンドにどっぷりハマっちゃって…」 「それは…希美のお父さん…ご愁傷様です…。でも何でイヤホンしないの?」 「耳が痒くなるから嫌だって…」 「ご近所は大丈夫なの?」 「外には音漏れしてないから大丈夫。ただ玄関開けるとどうしても聞こえちゃうよね」 「何にせよ何とかしなきゃだね…なんかごめんね」 「謝らないでよ、むしろ…」 香菜は謝っているが、実際は感謝している。ライブ以来イキイキした祖母を見れるのは嬉しい事だ。
きっかけ2
「父さんその日夜勤だから無理だよ」 「えぇ、どうしよう…私も電車で行くしかないか…」 「ばぁちゃんに頼んでみろよ。お前と一緒なら運転しても大丈夫だろ」 一緒に住む祖母は免許は持っているが耳が遠い。検査を受けてみた所、運転に支障はないと診断されたが、1人で運転させないという家のルールがある。 「それだとおばあちゃんライブ終わるまで私の事待ってなきゃ行けなくなるじゃん」 「どうにか時間潰すでしょ。一回聞いてみたら?」 「何だか申し訳ないなぁ…」 「いいわよー、私暇だし」 「本当にいいの?すごく待つ事になるよ?」 「大丈夫よ、近くの喫茶店で本でも読んでるわ」 「ありがとうおばあちゃん!今度何時間でも肩叩いてあげる!」 「あらあら」 とりあえずは一安心。後はチケットとって当日を迎えるだけ。何だかんだ楽しみになってきた! 当日 「思ったより早く着いちゃったわ」 「大丈夫だよ、香菜ももう来てると思うし」 「そう?なら私は喫茶店に行こうかな…」 「うん!ありがとね!気をつけ……えぇっ!」 「どうしたの?」 「香菜、来れなくなったって…」 「あらまぁ!」 香菜に連絡をしようと携帯をみたら衝撃のメールが来ていた。 【ごめん!親にバレた!行けなくなった!TシャツのMサイズよろしく!あとタオルも!】 「えぇー…チケットどうすんの…」 「お金勿体ないし、1人で行ってきたら?」 「行くにしても香菜の分のチケットも私が持ってるの。それに知らないバンドのライブに1人で行く勇気が私には無いよ…」 「あら、それじゃあ…」 「え?」 祖母が何か閃いたって顔をし、これまた衝撃発言をした。 「私が着いていくわ。それなら怖く無いでしょう?」
きっかけ
「私そのバンドの曲知らないよ?」 「お願い!行けばハマるから!一緒に行こう!」 友人の香菜にライブに誘われたはいいが、バンド名を聞いた事があるだけで曲は知らない。私が産まれた頃結成されたバンドらしいが、親が聞いてなければ私も聴く機会が無かった。 「ねぇ本当にお願い!周りはバンド名すら知らない人ばっかりなの!1人で行けない理由もあるし…」 「まぁチケット代出してくれるならいいよ…でもなんで1人で行けないの?」 「親が少し厳しくてさ、ライブとかそういうの多分許してくれないんだよね。だからライブの日は友達と泊まりの勉強会って事にしようと思って!」 「それ大丈夫なの?バレた時怖いんじゃ…」 「お願い!希美には迷惑かからないようにするから!」 絶対迷惑被る気がする…。しかし普段勉強を教えてもらってる身分何か恩返しはしたいとは思っていたし…。 「そこまで言うなら…。ただ本当にバレないようにしてね!」 「やった!やった!ありがとう!」 正直不安しかないけど…。普段勉強や塾ばかりの香菜だ。息抜きも必要なのだろう。 「…それでなんだけど、もう一つお願いが…」 「まだあるの?今度は何?」 「チケットの申し込み、希美にお願いしたいの!」 チケット持ってる事がバレたら元も子もないからか。 「いいよ、売り切れだったとしても文句言わないでね」 「ごめんね、ワガママばかりで!」 「いいよ!そのかわり期待してるからね!ライブ!」 「それに関しては大丈夫!絶対楽しいしきっと好きになるから!」 この後私達は当日の事を打ち合わせし、ライブの1時間前に現地集合となった。 「私はグッズ買うから希美より先にいると思う!」 「それはいいけど、どうやって来るの?私は家族に送っていってもらうけど。香菜も迎えに行こうか?」 「それだと希美も早く来る事になっちゃうから大丈夫!電車で行くよ!」 「ならいいけど…」 帰ったら父さんに送り迎えお願いしなきゃ。
最終話
「ごめんね、期待外れで」 「片倉君が謝る事じゃないさ」 結果は入荷してすぐに売れてしまったとの事だった。でも… 「しかし外見によらず中は綺麗な店だったね。警察が来たとか伊達が流血事件起こしたとか聞いてたからもっと怪しい雰囲気だと思ってたよ」 「あぁそれね、あながち間違っちゃいないけど、真相は…」 片倉君の説明を要約すると ある日片倉君と伊達君が入店すると同時に万引き犯を発見 伊達君が咄嗟に押さえつける 抵抗した万引き犯の肘が伊達君に当たり鼻血が出る 通報をうけた警察が来る 犯人はその場で取り押さえられ、伊達君が取り調べを受ける 取り調べの際に危ない事をするなと警察に怒られる といった所だ。 「最後の俺が怒られた所は説明いらなくね?」 「そうだったんだ、2人とも偏見わ持っててごめん!【すいか】無かったのは残念だけど…それでも今は不思議と満足感があるんだ」 「何だそれ、宮本【すいか】諦めたのか?」 「諦めちゃいないよ、ただ焦る必要もないと思ってる」 「まぁそうだな、俺も目的は果たしたみたいなもんだし」 「そうだ!この際聞かせてもらうけど、佐々木にはいくつか質問がある!」 「なんなりと」 「まずは何故僕が【すいか】を欲しがっているのを知っていたのか」 「…宮本さ、自分の部屋を貰えて嬉しいのはわかるけどさ…」 「ん?」 「戸締りはちゃんとしような?その日、窓開けっぱで家族との会話聞こえてたよ。サザンが好きなお姉さんの誕生日プレゼントだろ?」 「……」 その日、確かに窓を閉めたのは夜だった気がする…恥ずかしい… 「…質問を続ける!お金が貰えるわけではないと知って、何故カフェの手伝いを続ける?」 「…」 余裕を見せていた佐々木が黙った。 「続けて何故【すいか】を手に入れる事が僕と佐々木、共通の目的になっていたんだ?」 「なんか取り調べみてーだな」 「確かに。もう喧嘩はよしてくれよ」 もちろん喧嘩をするつもりは無い、が、これからの付き合いでモヤモヤしたままも嫌だ。 「答えを聞くまで帰すつもりはないぞ!」 「…恥ずかしくて言いたく無かったが…本気なんだな。仕方ない」 溜め息をしたのち佐々木の口が開いた。 「宮本と仲良くなりたかったんだよ」 「…自分で言うのも何だが何故僕なんだ?僕と仲良くなって何のメリットがある?」 「言ってて悲くねーのかなコイツ」 「伊達、静かに!茶々を入れるな!」 「何怒ってんだよ片倉…」 「お近づきになりたかったんだよ…」 「お近づき?」 「一目惚れしたんだよ!」 「よしっ!よしっ!」 何故か片倉君がガッツポーズをしている。 「宮本のお姉さんに!」 「チッ…」 何故か片倉君が舌打ちをする。そしてその舌打ちに伊達君が少し怯える。 「宮本と友達になり、宮本とカフェの手伝いをし、【すいか】を手に入れる事で俺と宮本からのプレゼントって事になんねーかなーって…」 「なんねーよ、舐めんな」 何故片倉君がキレる。なんなんだ。そしてイチイチ怒る片倉君にビビる伊達君はなんなんだ。 「そういう事ね、いいよ。無事【すいか】手に入ったら2人のプレゼントって事にしても」 「マジで!?よっしゃ!」 「手に入ってから喜ぼうよ」 「もう帰ろーぜー…」 「そうしよう、片倉君も伊達君も付き合わせてごめんね」 「気にしないでよ、これで俺達も友達だろ?」 「そうだね!」 【すいか】を求める事で友達が増えた。 少し嬉しくなった。
仲直り3
「伊達君!もっと急いで!」 「はぁはぁ、おまっ、…坂道くらいっ…降りろボケェ…」 「でも何で佐々木が僕を探してるの?片倉君と一緒に溜まり場に居る理由は?」 「はぁはぁ、理由なんて…知るか…」 今思うと怪しいな…。佐々木の名前で釣って僕に何かする気じゃないだろうか。まんまと釣られたんだけど…。 「あっ!見えてきた!後は自分で走るよ!」 「はぁはぁ、そうして…」 佐々木と片倉君の姿が見えた!とりあえずはボコられてる様子はない! 「あっ!宮本!」 「佐々木!」 「やぁ宮本君、こんにちは。伊達は?」 「後ろの方で死にかけてるよ!そんな事より佐々木!何やってんだこんな所で!助けにきたよ!」 「助けにきた?何言ってんだ?まぁいいや!宮本!朗報だ!」 「そんな事って何だよぉ…頑張って連れてきたのに…」 後ろからフラフラ状態で伊達が歩いてきた。 「伊達が弱ってる…。お疲れ様」 「片倉ぁ…俺疲れたよ…」 疲れたせいか性格が変わってる伊達を横目に佐々木に問いかける。 「朗報?」 「あぁ!この溜まり場こそが例のCDショップだったんだ!」 「え?このスプレーの落書きがお店?」 「それについては俺から説明するよ」 片倉君が割って入ってきた。 「このスプレーの落書きは店の名前だよ。hangout、日本語でたまり場だね。僕の親戚の店なんだ」 やべっ…落書きって言っちゃった。 「学校のパソコン、先生にお願いしたら先生の監視ありならっていう事で放課後使わせて貰えたんだ、それで【サザンオールスターズ すいか】で調べていたら丁度先生と話してた片倉がそれを見てて…」 「それだったら俺の親戚の店にあるかもって思って声かけたんだ」 佐々木、あれから探してくれてたのか…。 「その事なんだけど…あの時はごめん!佐々木の言う通り、僕佐々木にばかり頼ってた!」 「もういいよ、俺こそキツい言い方してごめん!」 案外仲直りなんてあっけないものだな、でも心がスッキリした。もっと早くに謝れば良かった。 「片倉君もありがとう。正直片倉君もこの店も近寄り難かったから、佐々木に声をかけてくれてなきゃここまで辿り着けなかったよ」 「僕にお礼なんていいよ、店の貢献にもなるしね」 「俺にお礼は…俺すげー頑張ったと思うんだけど…」 「さぁ、早速宮本君達の目的【すいか】があるか確かめに行こう!」
仲直り2
「はぁはぁ、僕は今何処にいるんだ…」 引っ越してからというものの基本学校とカフェしか行かない僕は、一回しか通っていない道なんて覚えていなかった。もっと外に出歩けば良かった…。道を覚えるのも、体力をつけるのにも…。 「とりあえず一旦家に戻って自転車を…あ、そもそも家に戻る道がわからない…」 遂にやるしかないのか…最終手段のあの技を!禁断のあの技を! よし!あの人に道を…いや、あの人は急いでいるかもしれない、心なしか早歩きだし…。 次はあの人!…買い物帰りかな?荷物が重そうだ…、早く帰りたいだろうから声をかけると申し訳ない…。 「くっ、万事休すか…」 「1人で何やってんだお前」 「うわぁっ!びっくりした!って伊達!…君!」 必殺の【道を聞く】が不発に終わったところで会いたくない奴に声をかけられてしまった。 「あ?誰だお前」 「え?いやこの間会ったじゃん。佐々木と一緒にいた宮本です」 「そうだっけ?って宮本!宮本じゃねぇか!」 なんて失礼な奴だ。人の名前くらい覚えていて欲しいもんだ。 「丁度良かった宮本!お前を探してたんだよ!」 「何で僕を?正直それどころじゃないっていうか…」 「知るか!片倉…いや、佐々木がお前を呼んでんだよ!」 佐々木が僕を?しかしこれは…。 「僕も佐々木を探してたんだ!佐々木は今何処にいるの?」 「溜まり場だよ!後ろに乗れ!連れてってやる!」 「え、いいよ自分で行くから。それに自転車の二人乗りは…」 「片倉に連れて来いって言われてんだよ!いいから乗れ!道わかんねぇんだろ!?」 バレてた!恥ずかしい! 「…わかった!ただし安全運転でお願いします!」 「よっしゃ!かっ飛ばすぜぇええ!」 人の話を聞いてほしい!
仲直り
「探すって言ったって…どこに行けば…」 佐々木の家のチャイムを鳴らしてみたが反応はなかった。 「とりあえず学校に戻って…」 「あ、宮本君!丁度良かった!」 「え?あ、隣の席の…えーと…」 「真田です!いい加減覚えようか!」 「あ、すいません…」 クラスメイトに説教されてしまった。まぁ百パー僕が悪いんだが。 「そんなことより!宮本君って佐々木君と仲良かったよね!」 「いや、仲がいいかって言われたら…。僕らって仲良いのかな?」 「え?だって宮本君クラスで佐々木君としか喋らないじゃん」 そんな事は…ある…悲しい事に。 「仲いいとして、佐々木がどうしたの?」 「今さっき◯◯っていう散髪屋から出たら佐々木君と隣のクラスのヤンキー2人が溜まり場にいたの!大丈夫かな!?」 マジか…よりによってあの2人、しかも溜まり場かよ… 「ありがとう!行ってみるよ!」 「気をつけてね!ボコられないようにね!」 なんて事言うんだこの人…。ボコられる理由なんてないが、理屈無しで殴ってくるのがヤンキーだからなぁ…、行きたくない… けど 佐々木も同じ目に…と思うと 「行くしかないよなぁ!」 初めてかもしれない。僕が他人と仲直りしたい、ましてや心配をするなんて。溜まり場に行くのは正直怖いし、ヤンキーと関わるなんて絶対に嫌だけど… だけど… 不思議と胸が高まる、勇気が湧いてくる。人を想う気持ちがこんなにも僕自身を動かすなんて。 不思議だ… そして… 「ここ何処だ…」 道に迷った。
馬鹿達
「今日も佐々木君来ないの?」 喧嘩してから佐々木はカフェの手伝いに3回連続で来ていない。 「知りません、忙しいんじゃないですかね」 「おやおやぁ?もしかして何かあった?」 「千代さん何でニヤニヤしてんですか。そんなことよりもうそろそろオープン出来る感じですか?」 本格的にカフェを運営出来る準備は整っているように見える。お小遣いもだいぶ貯まってきた。 「そうだね!この間店の看板も発注したし、お手伝いが終わる日も近いよ」 「え、いつの間に発注したの?店の名前私知らないんだけど」 「サプライズさ!聞く?聞いちゃう?」 マスターのテンションが高い。紙にスラスラと店名を書きだした。 「その名もハートロックカフェ!良い名前でしょ!」 「親父…ハードロックカフェをパクったろ」 「こら千代!人聞きの悪い!」 「心に鍵を…僕にピッタリな名前だ」 「ん?違うぞ宮本君。コレは心揺さぶるって意味だね」 「え、でも…」 「あっ!クソボケ親父!英語の勉強し直せ!」 マスターが提示した紙には【Heart lock cafe】と達筆に書かれていた。 正しくは【Heart rock cafe】LとRが違う。 「えっ!?、きゃ、キャンセルしなきゃ!」 「慌てふためく親父はほっといて、佐々木君と何があったのか聞かせてよ」 「特に何もないですよ、ただ…」 説明中 「実に馬鹿だな君達は」 「まぁ、そうですよね…」 「親父も含めて」 「え?」 「まぁ、そうですよね…」 「え?」 千代さんの言う通りだ。あの日家に帰って冷静に考えると、目的は解らないにしろ手伝ってくれてたのは確かだし、何だったら自らの目的に対して僕自身は何もしていなかった。 「佐々木君探しに行きなよ」 「いいですよ今更。もう1人でどうにかするって言ってあるし…」 「私はね、行けって言ったの。宮本君が1人でやるのはどうだっていいけど、とりあえずは仲直りして来い。コレは命令。」 「でも手伝いが…」 「いいから行けって言ってんだよ!何度も言わせんじゃねぇ!」 「いかん!千代が荒ぶり出した!此処は何とかするから宮本君は行きなさい!」 「すいません!行ってきます!」 確かに謝罪はしなきゃな、ここはお言葉に甘えるとしよう。 あと千代さん口悪っ!
ストレス
「宮本!今日ようやくパソコン使えるぞ!」 「あぁ、有意義に使わせてもらおう!」 この学校では昼休みの間生徒が自由に使えるパソコンがある。パソコンは使い方を間違えれば危険なサイトやウイルスに感染するといったリスクがある為、たとえ自宅にパソコンがあっても『中学生にはまだ早い』といった理由で使わせてもらえないのがほとんどであった。 「しかし長かったな。佐々木が予約してから1ヶ月たってるぞ」 「まぁ良いじゃないか、ウチも宮本ん家もそもそもパソコン無いんだから、使えるだけありがたいと思おう」 「そうだな、昼休みが待ち遠しいよ」 昼休み 「何これ」 「使用中止って俺には見える」 「そんな事は見ればわかるんだよ!僕を馬鹿にしてんのか!」 「落ち着けよ宮本、俺に怒鳴ったってわかんねぇよ!先生に聞いてみよう!」 どうやら前日にパソコンを使った生徒が悪知恵を使って学校側が設定しているセキュリティを解除したらしい。そうなると危険なサイト等が回覧出来るようになってしまう為、しばらく利用禁止にするとの事だ。 「何でこのタイミングなんだよ…せっかく【すいか】の在処を検索出来ると思ったのに…どっかの馬鹿のせいで…」 「口が悪いな宮本。まぁしょうがないよ」 「しょうがないって何だよ、この間のCDショップもダメで学校のパソコンもダメ。隣町のCDショップにも無い!しょうがないって言うなら次の案を出せよ!」 「何だよその言い方、そもそも俺ばっかり案を出してんじゃん!パソコンの予約も俺だし!【すいか】が欲しいのはお前だろ?ちょっとは自分で考えろよ!」 「『僕達の目的』って言ったのは佐々木だろ!もう良いよ、後は自分でどうにかする!」 「勝手にしろ!付き合ってられるか!」 そうだよ、協力なんて最初から要らなかったんだ、何で隠し事ばかりの奴なんかを頼りにしてたんだ。
溜まり場
「本当にこの辺なのか?」 「多分…他のクラスのやつが話してるの聞いたんだ。◯◯散髪店近くのCDショップにお宝があるって…」 それにしたってこんな狭くて暗い道に店なんてあるんだろうか、まぁ散髪店は実際にあるけど…。 「お、佐々木じゃん。こんな所で何してんの?」 声の方を見ると明らかにコチラを睨んでいるヤツと、ロン毛のイケメンが立っていた。 「誰コイツら」 「隣のクラスの佐々木だよ、元バスケ部の」 「知らねぇ」 「隣の子は転校生だよね。初めまして、片倉です。こっちのガラ悪いのは伊達。」 急に自己紹介が始まった。まいったな、たとえ2人相手だとしても緊張してしまう。上手く話せるだろうか…。 いや、そもそもこんな怪しい風貌の奴らに名乗る必要があるのだろうか。出来れば関わりたくない。 「片倉君久しぶり。伊達君は喋るの初めましてだよね。佐々木です。こっちの小さいのは宮本。転校してきたばかりだから色々道を教えてたんだ。もう帰る所だよ。」 勝手に紹介しやがった。しかしまだ帰る気も無かったんだが、この会話…さては。 「佐々木もう行こう。門限が…」 「そうだな、それじゃあね片倉君、伊達君」 やはり関わらない方が良いっぽいな。あの誰とでも気さくに話す佐々木が明らかに避けようとしている。 「それは呼び止めてすまなかったね。またね。佐々木、宮本君」 「ふぅ、怖かった。サンキュー宮本、空気読んでくれて」 「いや、馴れ馴れしい佐々木が『君』付けするくらいだ、あの2人がどういう人達が知らないけど、何かしら苦手意識があるのは明確だよ」 「え、俺って馴れ馴れしいの?」 自覚なかったんだ。そういう所だぞ佐々木。 「片倉君は部活が一緒だったんだ、バスケ部。俺は遊びたくて部活辞めたし、片倉君も家の手伝いかなんかで辞めたって聞いたな」 辞める理由を聞くと佐々木よりロン毛の片倉って人の方がマトモっぽいな… 「しかし厄介な事になったな。あの2人、溜まり場に出入りしてんだな」 「溜まり場?」 「さっきCDショップ探してる時、スプレーで落書きされてる扉あったろ?」 確かにあったな。明らかにヤンキーが集まりそうな場所が。 「あそこが溜まり場って言われてる所で、いい噂を聞かない場所なんだ」 「成る程、でもあの2人が溜まり場に出入りしてようが僕達には関係ないんじゃないか?」 「そうも言ってられないんだよ。問題は伊達の方だ。アイツ噂では溜まり場で警察沙汰起こしてるらしい、それも流血系の」 まぁ確かにそんな奴がウロウロしている所にいるのは危ないか。しかしどうする?せめて【すいか】があるかだけでも知りたいのだが… 「確かに距離は置きたいな。しかし何でそんな危険人物と片倉君は一緒に居るんだろうか」 「そこなんだよ。そもそも家の手伝いってのも怪しいもんだ。本当は伊達絡みなんじゃないかと思ってる」 何にせよ此処には来ないようにして別の手がかりを探るしか無いか…