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12 件の小説①
「僕が死んでも普通に生活を送って、全く後を追ってこなさそうな貴方が好きです。」 「今の俺ならきっとそうする。だけどこの先の俺がずっとお前が好きだという俺でいられる保証はないよ」 「僕といることで強い貴方がそう変わってしまったら、それはそれで嬉しいです…長生きします、いやしましょうね」 「言っとくけど年齢を考えたら普通に考えて先に死ぬのは俺だからな」 「ははっ、一回り違いますからね…辛いなぁ」
日記みたいなもの《7》
自分の空気の読めなさ具合に恥ずかしくなる、そんな日だった。 周りは大人だ、誰一人として否定せはずにこやかでさりげなく注意してくれる人もいた。 みんな同い年なのにこの差はなんだろう。 このまま社会に私は出て良いのだろうか。 考えるだけでどうせ行動には移さない。 そんな私は間違っている。
日記みたいなもの《6》
自分で初めてネットから小物を買ってみた 同年代の子と比べたら遅いくらいだろう 今までも使いたいと思うことがあったが、母親があまり良い反応をしないことは目に見えていたので避けていた。 だが流石にもう何か言われるような年齢でもないと思い買ってみた。 「無駄遣いして…」と言われた。 今まで想像してた通りの母の反応に現実もこんなものかとがっかりした。 貴女だってネットで買い物するのに何が不満なんだろう。自分はノーカンなんですか?
日記みたいなもの(5)
この時期は自分が嫌になる。 コミュニケーションが上手くとれないなりに頑張ったつもり、でもつもりだ。 1年が終わる頃にはやっぱり周りと馴染めず、最初にできた友人ひとりを除いてはほとんど話せなくなってしまう。(必ず1番最初に話した子とは友達になんの。ちょっと面白い。) この唯一話せる友人もそろそろ私の接し方には本格的に困ってきただろうな〜と空気は読めない方だけど流石に勘付いたりする。 そしてだいたい2年もしないうちに疎遠になる。あれ、あの子と友達だったっけ?ってくらいの距離になるよ。ほんとあっという間なんだから。それもいつものこと。 そしてまた、優しい誰かに話しかけられるのを願いつつ、また自分を嫌いになる。 変わんないね、私
呪いにかかった幼馴染へ
『今、私と最初に目があった人は 私を好きになるわ』 「んんん??」 『呪いなの』 幼馴染である彼女の言葉はなかなかすぐに飲み込めるものではなかった。 いつもなら誰よりも早く教室に訪れて本を読んでいるはずの幼馴染は両手で本を開かず目を押さえている。どうしたんだと今日は2番乗りだった僕が声をかければその姿勢のままこういったのだ。ポカンと口を開けたまま机の上にある怪しげな黒い本の存在に気づく。…なるほど。 『信じてないの?私、嘘をついたこと ないでしょ』 「まあ、そうだね。君は嘘はつかない。 …なら、これからどうするんだい?」 『呪いは目を合わせる以外では 絶対に解けないわ、決まっているの』 「そう、なら仕方ない。誰か好きな人は いないのかい?」 『…時期によって変わるのよ。』 「へえ、そんなに好きになりやすい 人だったんだね、知らなかったよ」 『最近はね、一周回って芥川龍之介』 「、、聞いた僕が馬鹿だった」 肩を落として深いため息を吐いた僕に彼女は口元を歪める。他にいないわよ、なんて呟いて。 「もっと身近にはいないのかい?」 『いない』 「じゃあ、人間以外の動物は? 猫、好きだっただろう」 『好きだけれど、猫に嫁入りは したくないわ。せめて人がいい』 「ははっ、まさか。種が違うんだから それはないさ」 『“好き”って強力な力があるのよ』 譲らないらしい、目元は両手で塞がれているので見えないはずなのに、大きな瞳を鋭くして睨んでいるのが容易に想像できた。はぁ、と2度目のため息が出る。 「はいはい、じゃあ僕にすれば? 今誰とも付き合っていないし仲の良い 幼馴染だ、悪くはないだろ」 『あなたは良い人。でも周りは嫌よ。 昨日もわざわざ別のクラスの子達が あなた目的で来ていたのを見たわ。 目立つ人とは無理。』 「それは言うと思ったよ」 『こんなパッとしない女と目があった くらいで好きにならなくちゃいけない なんて可哀想ね』 乾いたような笑みを浮かべる。 なんて自己評価の低い子だろうといつも思う。僕の周りは見えているのに、自分に向けられている多くの視線には気付こうとしない。気づいたところで、マイナスな方に捉えるだろうけれど。 ああ、そうだ。そんな君にはぴったりの相手がいる。 「じゃあ、そんな君に相応しい相手を 紹介するよ。」 『本当に?』 「僕も君に嘘はつかないだろ」 『そうね、信じるわ』 「じゃあ、5秒心の中で,数えたら ゆっくり両手を離して」 コクンと小さな頭が頷く。 『(いち、に、さん、し、ご)』 両手を離して見えたのは、冴えない私の顔だった。スマホの内カメラを使って私の顔を写しているらしい。写る自分に目が離せなくなった。 「君は自分を好きになればいいよ」 彼女は自分に夢中なのか、返事はない。嘘だとは思っていなかったが様子をみるに呪いは本当のことのようだ。 自分を好きになれば自然と自信もつくだろう。うまくいって良かった。 今なら、信じてくれるだろう。 聞こえているかは別だけれど。 「ねえ、僕は、君をずっと前から 好きだったよ」
君の薬指が輝いた日(三)
「お久しぶりです。」 喪服でも手足が長いだけでこんなにも映えるのか、と久々に会った彼の弟を見て密かに驚いた。数秒反応が遅れて久しく呼んでいなかった弟くんの名前を言うと、覚えていてくれたんですねと白い歯を見せて笑顔を浮かべる。どうしても彼の笑顔と重なって気持ちが重い。 今日は彼の葬式に来ていた。 表向きは彼の古くからの友人として。 彼と一回り以上離れていて溺愛されていた弟くんだけが俺達の関係にきずいている、と思う。知らされた時刻より早い時刻に来て良かった。まだ人は自分以外には来ていないようだ。 『久しぶり、なかなか顔を合わせる 機会がなかったね』 「俺は会いに行きたかったんですけど、 兄さんが会わせてくれなかったから… こうやってまた貴方と会えたのも、 兄さんのおかげですけどね。」 しゅんとした表情で視線を奥にある彼の遺影に移す姿につい頭を撫でてしまった。驚いた顔をして俺に顔を向ける。いくら歳が離れているからといって相手も立派な大人である。申し訳ない気持ちになってごめん、と手を離した。 「いえ、ありがとうございます。 やっぱりあなたは優しいなぁ。」 『そんな事ないよ。大袈裟だな。』 「ぜんぜん大袈裟じゃないです。 俺、今でも兄さんより早く貴方と 出会いたかったって思いますよ。」 『…前もよく言ってたな。』 「言い過ぎて、貴方に会わせてくれなく なりました。」 『ははっ、まさか。』 この冗談を言う時だけ真顔になるものだから反応に困る。 「顔、最後に見てやってください。」 『ああ、うん。そうするよ。』 「誰も人が入ってこないように見張っ ときますから。」 そこまでしなくてもいいと言うより先に足早に出ていってしまった。 1人残されてしまう。俺が来てからも誰一人として人が現れなかったあたり、もしかしたら相当弟くんに気を使われているのかもしれない。心の中でまた謝り気遣いに感謝ながら彼の眠る棺桶に足を向けた。 綺麗な顔だなと悔しいが思う。 化粧が施されている彼の顔色は良く、 名前を呼んだら目を覚ましそうだ。 なんとなく名前を呼んでみたが返事はない。彼の声を、もう忘れてしまいそうだ。 『…良い弟を持ったな。』 『約束通り指輪、持ってきた。』 どこに置こうかここに来るまで迷った。いや、今も迷っている。 健康だった頃より幾分か細くなった彼の手が目に入った。この手が俺に触れることはないのか…と無意識のうちに手を取る。硬くて冷たい手。俺の知っている手より随分と細くなったなぁと込み上げてくるのを誤魔化すように笑う。 ああ、これだけ細ければ薬指に嵌められそうだ なんて、ふと浮かんだ瞬間にヒュと喉が鳴った。 “まさか、そんなまさか” 震える手で彼から贈られた指輪を彼の薬指に通してみる。 健康だった頃は第一関節で止まるくらいだったそれは彼の指に当たり前かのように収まったのだった。 憎いほど白く輝いて見える。 『…なんだよ、やっぱり結婚指輪 だったんじゃないか。』 今更、こんな重いものを残しやがって。 流れてくる涙を誰にも見られたくなくて 彼の首元にあるはずのもうひとつの指輪を取るのを一旦諦めて外に飛び出した。 それが、ダメだったのかもしれない。 火の熱に溶けてしまったのか、それともどこかで落ちてしまったのか彼の遺骨には俺が薬指に嵌めた指輪しか残っていなかった。
日記みたいな物 (4)
私は大勢の人前と改まった場面での発言にどうも人より緊張しやすいらしい。 物心がついた時からこの緊張感に勝てた日がない。周りはいずれよくなるからと私に言っていたけれど、そして私もそうだと信じていたけれどよくなるどころか悪化する一方だ。初めは物凄い緊張感によって声が小さくなったり頭が真っ白になる症状がほとんどだった。だが今は声は前より張れるようになったが、手足の震え、後半になるにつれての急激な滑舌の悪さ、といった症状も目立ってきた。周りの目もそろそろ冷たくなってきている。私は今のところ受けたことがないので病気と診断はされていない。だけれど、グレーゾーンにはいると思う。私と近い周りの人達のなんとなく勘づいているような扱いをする時がある。その扱いをされた時が怖い。 『普通にすればいいの。緊張なんて しなくていいから。』 うんざりするほど聞いた言葉だとしても何回だって傷つく。その普通が私には一生かかっても無理だと気持ちが沈んでしまうのだ。そして同時に私はきっと普通にできると、まだ病気とまでは思っていないんだなと安心してしまう瞬間でもある。 私だってみんなと同じがいい。
日記みたいな物 3
私はクッキーが好きだ。 その中でも家族や友人が作ってくれる手作りのクッキーには目がない。もちろん美味しいクッキーが食べたいが、市販のクッキーに比べて焼き過ぎたり、形が歪だったりする手作りのクッキーを見ていると笑みが溢れてくる。その人が一生懸命に作る姿が想像できるからだ。美味しいとか不味いとか関係なしに幸せな味がする。
日記みたいなもの 2
自分は人の名前を覚えるのが遅い。 名前が浮かばなくて困る事はあるけれども周りの優しい誰かが教えてくれるから大きな失敗をしたことは今のところない。甘えだとは分かっているが、この話をすると笑ってくれる人もいるので重く考えたことはなかった。そう、面白いねと笑ってくれる人はいい。注意してきたり軽くイジってくる人も、まあ事実だから笑って流せる。ただ、イジり慣れてない人がイジ(りのつもり)ってくるのは嫌な気分しか残らない。私の学友がまさにそうだ。普段真面目な彼女が心を許してくれている証拠だと最初は嬉しいとも思った。だけれど、彼女の言い方はキツくてイジリになっていない、それでいて顔はニヤニヤとしている。楽しくイジっているつもりなんだろう、チラチラと私の顔を伺う様子は見てると無性に腹が立って仕方ない。だからって、同じくイジり慣れていない私が彼女に何も言った事がない、とは言えないから寸前のところで言い返すのをやめた。 彼女を傷つける言葉くらい私もたくさんもっている 彼女に教えてあげるつもりはない。 いつか彼女自身で気づいて欲しいから。 その時に芽生えるであろう罪悪感は今まで私が出会った中でいちばん真面目な彼女にどれほど深くのしかかるだろう。 気づかなかったら私は彼女が嫌いなまま、それだけの話なのである。
日記みたいな物
あなたとの関係を私は“友達”と表現した。 なんてことのない、いつものやり取りの冗談の中に“友達”という単語を入れただけだ。笑顔のスタンプで流され次の話題に移って終わった。 今更、年齢的に“親友”なんて軽く言うはずがないから、普通といえば普通なのだろうけど、聞いたあなたが少しでも不快だったり、 不安になってくれたらいいなって黒い自分がいた。