しまモク

4 件の小説
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しまモク

過去の自作のなかでお気に入りのやつを載せてみようと思います。よろしくお願いします。

『苦労』×『絶望』で書く140字小説 【必ず】

「もう抜け出し済だよ」 捕らえた筈の敵の意外な行動。 刹那、女が飛び掛かる。躱した男は女の首筋に手刀を叩き込んだ。 落ちた女を受け止め男はスマホを取り出す。 「もしもし。あぁ、無事だ…何?わかった」 ピッ。 「苦労したぜ…。待ってろよ地獄見せてやる」 男は踵を返した。 ある男に絶望を与える為に。

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冬のはじまり 『不思議』×『坂道』で創る140字小説

どんなに仲がいいと思っていても、離れてしまえば一瞬だ。僕らの関係もちょうどそうで。何があったかと言われても何もなかった。だからこそ疎遠になったのだろう。不思議だ。ほんの少し前まで君と一緒に歩いていたこの坂道は、こんなに急勾配だったかな。君のいない左隣を冬の始まりの風が吹いた。

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冬のはじまり 『不思議』×『坂道』で創る140字小説

夏休みがはじまる

「あの」 朝から眺め続けた黒髪に声をかけた。 喉から声を絞り出す。 「夏休み、花火大会行かない?」 すぐに 「いいよ。皆も誘うね」と返された。 素早く手を掴む。 「や。2人で」 君は少し驚いたように睫毛を上下させ、控えめに頷いた。 気のせいかな。一瞬頬が赤らんだような。 明日から夏休みが始まる。

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夏休みがはじまる

或る夏の日 【140字小説】

「起きた?まだ寝てるから」 言いながら妻が人差し指を唇にあてる。 隣で眠る息子を見やった。 久しぶりの海にはしゃぎ疲れたのだろう。カエルのようなポーズで眠りこけていた。 机の上に置かれた西瓜を口にした。甘みが広がり、喉の渇きを自覚する。 チリンと窓際の風鈴が鳴った。 そろそろ夏も終わる。

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或る夏の日 【140字小説】