川辻憂夜

25 件の小説
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川辻憂夜

名前変えました。川辻憂夜(ゆうや)です。 感想、ご希望等あればコメントお願いします! 辻村深月さん、綾辻行人さんのファンです。

責任感が強すぎる娘。

昔から責任感が強い方だった。 割り振られた仕事をきちんとこなし、他の人が終わっていなかったら自分がさり気なくやってあげる。そして、やるべき事をきちんとやらない人間を見ると心底腹が立っていた。他人に迷惑被る事が分からないのか、なぜ自分が楽を出来ればいいという思考になるのか、全く理解できなかった。 学生時代。友達も殆どおらず、陰キャの格付けだったのに、美化委員会に入っていた。美化委員の仕事は美化目標の設定、大掃除時の呼びかけ、文化祭や体育祭での片付け…。人気のない委員会だったが、別にこの仕事が嫌いではなかった。この仕事も責任感を持ってやっているつもりだった。 ある日、ある秋の日のこと。 その日、委員会を忘れて帰ってしまったのだ。 家に帰っておやつを食べている時、唐突に思い出したのだ。今日は委員会の日だと。 血の気が引ける、と言う言葉の意味を初めて理解したのはこの時だったと思う。とにかく焦ったのだ。もしかしたら理解できない人のが多いかもしれない。 どうしよう委員会をすっぽかした。しかも担当の先生は担任だ。誤魔化しが効かない。どうしよう。どうしようどうしよう… この時、美化委員会の人数は二人だったのだ。実際そこまで焦ることではなかった。次の日謝りに行けば問題ない。なんてことを思いつくことは無かった。 次の日、朝一番で先生の元に謝りに行った。次からは気をつけるようにと笑われながら言われた。随分朗らかな先生だったからかもしれないし、もしかしたら顔色が酷すぎたのかもしれない。 私は大人になった今でも、この時のことをふと思い出して胸を痛めるのだった。

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責任感が強すぎる娘。

夏フェス

地元で毎年行われる夏フェス。各地から有名なバンドが集まっていたこのフェスは、最近ではほんの数組しかプロチームはやって来ない。街の財政が危うくなってきてしまったからだ。物価が上がっている今の日本では、こんな辺鄙な地に気を遣ってはくれない。  この夏フェスは割と名が知れていたのだ。各地から沢山の人々が来る。そうすると屋台の売り上げが上がる。街としての収益も上がる。このフェスを無くすのは実に惜しい…そこで、役場の人間の代案が「一般人の飛び入り参加制度」だった。プロのバンドチームの発表が始まる前の余興として地元の人間が自分の得意なものを披露する。今ではほぼ、ジジイ供の喉自慢大会となっているが。  そんな訳で今では半分がただの地元の宴会のようになっている。ちなみに俺は飛び入り参加の枠に家の親父とその友人達が出ることになっているので、無理矢理連れ出されたのである。 プラプラと屋台を周りながら、時々バンドの方に目を向けていると、いくつかの舞台のうち、一番奥の方にひっそりと存在しているステージに、ギターを持つ少女が居た。よくよく見ると隣のクラスの女子だった。いつも一人でひっそり本を読んでいる彼女は男子の噂の的である。落ち着いた雰囲気を持つ女子は珍しいのだ。 その、落ち着いて目立たないイメージがついている彼女が、ステージに立ち、歌を歌っているのである(曲はゆるゆるとしたラブソングだったが)。 自然と足がそちらの方に動いていく。妙に惹かれるものがあった。あの子はどんな声で、どんな風に歌うのか、どんな演奏をするのか、近くで見てみたかった。 観客はさほど多くなかった。何故、この素晴らしいプレーに人が集まらないのか甚だ疑問だったが、これを知っているのは自分だけでいいとも思った。 とにかく素晴らしかった。彼女の演奏は。彼女自身が。 初めて、生き生きとしている姿を見た。 演奏がサビに入ると突然目が合った。刹那、ウインクをしたのだ。ファンサされたのだと気づくのに少し、時間を要した。 その瞬間、俺は恋に落ちた。

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夏フェス

悪ニハ制裁ヲ

「おい、後は頼んだぞ」 「…」 「また無視かよ」 舌打ちしながら部下を見下ろす。 一週間前から俺の話を聞かない。聞かないというかひたすら無視を貫き通す。 「やってなかったら承知しないからな」 周りのやつは俺に汚いものを見るような視線を投げかけてくる。 こいつと周りのヤツらを鬱陶しく思いながも退社した。ふと、こいつの名前なんだっけな、と思った。 山手線の外回りに乗り込み、渋谷まで向かう。 スーツを着た大人どもにまみれながらも約束の東口前のカフェに入る。約束の十分前だったが、彼女はもう座っていた。 「悪ぃ、待たせたな。」 「いいのよ。時間前なんだから。」 「それじゃあもう行っていいか?」 「ご自由にどうぞ」 そして店を出た。 しばらく目的の場所まで二人連れ立って歩いていた。 途中、雨が降り出したと思ったら吹き荒れる様な嵐に変わった。今日は雨が降らないと天気予報で言われていたのにも関わらず。 「こんなんじゃ怪我しかねねぇな…おい、あのカラオケ入るぞ」 「分かったわよ」 そしてびしょびょになった俺たちはカラオケで雨宿りする事にした。 「おい、飲み物、何がいい?」 「烏龍茶で」 「即答かよ」 電話で烏龍茶とジンジャーエールとポテトを頼む。 なにか歌うでもなく、話すでもなく、ただ二人でひたすら飲み物を飲み、ポテトを食べ続けていた。 が、突然彼女が席を立つ。 「御手洗に」 「おう…」 ヒールをカツカツ鳴らしながら部屋を出た。 彼女が部屋を出て一分もしないうちに停電が起きた。恐怖は感じない。とにかく前が見えなくてウザイ。 それから十分程度待っても停電は直らないし、なんの放送もないし、あいつが帰ってこないから部屋を出た。 しばらく徘徊していると流石に鈍い俺でも気づいた。何かがおかしいと。正確には誰も居ないと。 停電しているのだ。十分間も。気になって外に出るのはおかしな話ではない。それなのに廊下に出てるのは自分一人だ。 それに、音という音が何も聞こえない。無音なのだ。自分の足音さえ響かない。 部屋に入る時、他の部屋にも人がいることを確認している。 急激に寒気がして、せめて誰か見つけようと部屋の扉を開けまくった。 すると、七つ目まで開けるとスーツを着た男が扉と反対方向を向いて座っていた。 やっと人を見つけた安心感から声をかけた。 「あのッ!」 男がこちらを見る。するとどうだ。彼は今日仕事を押し付けてきた部下ではないか! やれと言った仕事をやってないのはどういう事かと問いつめたかったが、今はそれどころではない。 「おい!どうなってるか知ってるか?!」 「どうなってるか?えぇ。知ってますとも。僕が犯人なんですから」 「は?」 「本当に全て忘れるんですね…あの人が言ってたことは本当なんだ。一週間前、ある『事件』が起こったんです…分かります?」 「なんだよ事件って…」 「僕の自殺ですよ」 少しの間が空く。その後俺の笑い声が響いた。 「お前何言ってんだ?お前はここにいるじゃねぇか。遂に妄想始めたのか?」 「まぁ、好きにしてください。僕がなんでここに居るのか。貴方への復讐ですよ。復讐。分かります?」 「何だよ復讐って。抜けたこと言ってんじゃねぇぞ」 「じゃあ僕の体に触れてみてください」 「お前いい加減に…」 いつもみたいにあいつの手を引っぱたいてやろうと思った。が、触れられなかった。正確には通り抜けた。 「…は?」 「ね?言ったでしょう?僕は幽霊になって貴方に逢いに来たんです。復讐の為に…面白いでしょう?死んでまで復讐するなんてなにかのネタになりそうですね…あ、少なくともこのカラオケ館からは逃げられませんよ?逃げても無駄ですからね?」 「ゔあああぁぁぁ」 「だから逃げても無駄って言ってるのに…」 とにかく走った。出口を目指して。一緒に来た彼女のことも忘れて。 しかし、周りは真っ暗で何も見えない。 そして気づいた。 非常出口の、設置されているはずのランプが、ひとつもついていない事に。

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悪ニハ制裁ヲ

お酒のチカラ。

遠山傑(とおやますぐる)二十六歳。 彼女を失うピンチかもしれません。 仕事の帰り道。友達と飲みに行っている彼女、西村朱里を迎えに行く。 彼女とは高校生からの付き合いで出会ってかれこれ九年程。 傑は朱里にプロポーズを考えていた。勿論、結婚のである。 仕事が軌道に乗るまで、と言い続け朱里を待たせ続けた傑。ようやく仕事に目処がついてきた。 いつ指輪を買いに行こうか、どこでプロポーズしようか、どんなシュチュエーションがいいか、ニマニマしそうになるのを必死にこらえながら朱里を迎えに行っていた。 朱里と友達二人は半個室の様なところで女子会を開いていた。 話の内容を聞こうと思えば聞ける距離だ。 さて、お話は冒頭部分に戻り。 声を掛けようとすると朱里が大きな声で喋っていた。(朱里はアルコールに弱い) 「だからさぁ、一方的に好き好き言われてもこっちが好きじゃない奴と結婚なんかしてもぉ、きっと虚しいだけじゃん。だからぁ、私はぜぇったいに私が好きな人と結婚したいわけぇ。わかるぅ?」 …らしい。 え?それって俺? 確かに俺は朱里に対して常日頃から好き好き言って愛情表現しているから、何も問題ないと思ってるんだけど… そういえば朱里に好きって言われたことあったっけ? あれ?大丈夫? 俺、フラれる? ドキドキしながら突っ立っていると、朱里の友達が話し出した。 「それじゃあ何?傑君じゃ不満なの?」 さあ、どう答える朱里!返答によっては俺の心はへし折れる! 「なんでぇ?わたし、傑好きー。だから傑と結婚したいー」 するともう一人の友達が言った。 「だそうですよ。盗み聞きしてる傑さん!良かったですね。さぁ、早く酔っ払いを回収してください!」 「え?バレてたの?」 と言いながら顔を出してみる。まさかバレてたとは。 「何となくですよ…プロポーズ、そろそろするんでしょう?頑張ってくださいね」 「ははは。ありがとう…さぁ、朱里帰るよ」 すると虚ろな瞳でこちらをみる。かわよ。 「あー、傑だー、なんでいるのー?」 「お前の回収だよ。どうせ酔ってんだろうと思ってな」 「へへへー。」 と、言いながら寝やがった。しょうがない奴だ 「すいません。ありがとうございました。お金置いときますんで。それじゃあ」 「はぁい。おやすみなさい」 その日の帰り道。俺は行きよりもいそいそと朱里と共に帰っていた。

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お酒のチカラ。

思い出のラムネ瓶。

大学生最後の夏。 祖父母の家に遊びに行った。 海岸線沿いを歩いていると懐かしい売店を見つけた。 俺はあの日に思いを馳せた。 小学生最後の夏休み。 俺は一週間、祖父母の家に滞在していた。都会から離れた小さな島。全く行きたくなかった。 小学生最後。友達と遊んでいたかったし、六年生になっても祖父母の家に行くなんて馬鹿馬鹿しいとさえ思っていた。 今思えば、思春期真っ只中だった俺。家族で祖父母の家に行くことを恥ずかしいと思い込み、そんな自分に酔っていた。今で言う中二病ってやつ。 そんな事はさておき。 持って行ったゲームにも飽きてきた頃。確か六日目だったと思う。 折角来たくもないところに来たのだ。どうせならいつも見えないところ…海にでも行こうかと思い立った。 父も母も忙しかったし、一人で海に向かった。 近くの売店でラムネを買って。 都会に住んでいると、ラムネというもの自体が珍しかった。ペットボトルが売ってるし、わざわざラムネを買う必要は無いからだ。 そんなこんなでラムネを片手に浜辺をプラプラしていた。 小さなベンチがあったのでそのに腰を掛けた。砂まみれな上に潮でベタついたそのベンチはとても綺麗とはいえなかったが…。 買ったラムネを開ける。飲んでみるがもう既に温くなっているし、中のビー玉が引っかかって飲みにくい。喉は渇いていたがこのラムネを飲む気にはなれなかった。 ふと、海の方に目をやると一人の少女がいた。白いワンピースに麦わら帽子。裸足で歩いていた。存在感がある少女だった。今まで気付かなかったのが、不思議なくらい。 綺麗な海と可愛らしい少女。見とれたのは言うまでもない。 暫くすると、こちらに彼女が近づいてきた。 「そのラムネ。要らないならくれない?」 初めてきちんと顔を見た。それはそれは綺麗な顔立ちをしていた。ポってりとした唇、高い鼻、真っ黒な目…「綺麗」をら具現化した様な子だった。 「聞いてるの?ラムネ。頂戴って言ってるの」 ラムネが欲しいらしい。自分で買えばいいのに… 「これでいいのか?新しいの買ってやるけど…」 「それがいいの。それを頂戴。それと私は貴方よりずっと年上よ。」 「あ、そう…ドウゾ。」 渡すとお礼も無しにラムネを一気飲みしだした。わずか数秒後には中味は無くなっていた。 ぽかんと彼女を眺めていると、近くに落ちてた大きめの石を、飲みきったラムネ瓶に投げつけた。勿論、瓶はバラバラに砕けた。 その、バラバラになった瓶の残骸からひとつ、ビー玉を取り出した。 「ありがとう。助かったわ。さよなら。私の恩人」 そして彼女の姿は見えなくなった。煙に巻かれるように、消えた。 俺は、ラムネ瓶を見るとこの日のことを思い出す。 彼女は一体何者で、何がしたかったのか。 今でも分からないままである。

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思い出のラムネ瓶。

「桜が綺麗ですね」

「桜が綺麗ですね」 そう、言ってみた。 彼女がこの言葉の意味を知っているかは分からないが。 桜の木の下に立つ着物姿の彼女が泣きそうな顔をしながら微笑んだ。 「俺が生きていられたら、この夜桜を見に、此処で、この日、この時間に逢いましょう。ただ、僕が帰って来なかったら、貴女は僕のことを忘れてください。」 彼女はまた目に涙を溜めながら言った。 「貴方は絶対帰ってきます」 俺は微笑んで彼女の額に接吻した。 俺は、つい先日、臨時召集令状が届いたのだ。 まあ、兵隊としてこの太平洋戦争の前線に立たなければならない。 喘息を持っている為、今までは召集されなかった。 しかし、戦争が始まって三年。 俺まで召集されるようになったという事は相当日本が不利なんだろう(そんな事死んでも口に出せないが)。 俺は、ちょっとしたら彼女と結婚するつもりだった。 彼女が幸せになるなら別に俺はどうなってもいいが、矢張り、隣に立つのは俺がいい。 そう、未練タラタラのまま、指定された汽車に乗り込んだ。 戦争が終わった。俺が現地、鹿児島について一年と四ヶ月後のことだった。 初めのうちは前線で兵士として動いていたけれど、爆発に巻き込まれ、片足をら吹っ飛ばされ、戦闘不能となった。因みに今は義足である。 それから暫くは負傷した兵士の看護に徹していた。 しかし、1945年、8月15日。日本が戦争に負けたとの放送が流れた。 心底ほっとした、というのが第一の感想だった。 これからは命の危機に脅かされずに生きて行ける。彼女にもまた会える… が、彼女がもう俺のことを忘れているかもしれないと思うとそれもまた不安に押し潰されそうになるのだが… そして間もなくして俺は地元に帰された。 俺には父も母も居ないので、迎えに来てくれる者は誰も居なかった。 彼女の姿を探したがいる訳もなく。 ちょっぴり落胆したのは俺だけの秘密である。 その夜、ふと、あの桜を見に行きたくなった。 いや、別に期待してるわけじゃない。別に期待なんて… 知らぬ間に自分に言い聞かせていた。 今は夏なので薄桃色の花びらはつけていなかったが、今も確りそこに立っていた。 が、驚いたのはそこじゃない。 木の下に彼女が居たからである。 「なんで…?」 「お帰りなさい。遅かったじゃない」 ふっと、息を零してからこう言った。 「ここで、待っててって言ったの貴方じゃない。まあ、日にちは違うけど…真逆もう忘れたの?」 込み上げてきたものが抑えられる訳もなく。頬に熱いものを感じながら言った。 「ありがとう」 それから二人は暫く泣きながら抱き合っていました。 その後、無事に婚姻まで漕ぎ着けた二人は幸せに暮らしましたとさ。

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「桜が綺麗ですね」

一色の愛。

大嫌いだ。 『紫陽花』 これは私にとって呪いの花。 紫陽花の花言葉は「辛抱強い愛」と『浮気』。 元々私は紫陽花が大好きだった。 彼氏にもその話をしたら、誕生日には小さな紫陽花の植木鉢をくれた。 でもその彼が浮気したのは言うまでも無い。 「浮気」という花言葉の由来は紫陽花の色が少しずつ変化しているから。 そんな花を好きだから、いつもいつも浮気野郎に引っかかるのかも知れない。

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一色の愛。

毒親。

毒親。 それに明確な定義は無い。 いや、検索すれば意味は出てくる。 「子供の毒になる親」 これが、毒親の意味らしい。 私には妹がいる。 この子は今、中学受験に向けて勉強を頑張っている。 私の時よりもずっと頑張ってるし、量もこなしている。 でも私の方が成績が良かった。 そんな私と妹を母は比べる。 「あの子は出来たのに、」と。 そして私は妹に勉強を教える。 その時に私は自分と妹を比べる。 「私は出来てたのに、」と。 そんな中で妹は勉強をする。 母と私の重圧に耐えながら。 もし、私の母が毒親に分類されるのなら、私も『毒姉』かもしれない。 私は、時々自分が怖くなる。

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毒親。

愛と呪い。

「夏海ー。元気出せよー。」 俺の声なんか届いていないようで、彼女はひたすら東京の街を進んでいく。 「まだ無視するのー?いい加減構ってよー。」 それでも彼女は歩き続ける。花束を抱えて。 『大丈夫』 何度彼女と自分にその言葉をかけ続けただろう。もう夏海が自分と関わってくれないことも、俺が夏海に関わってやれないことも、一緒にいられないことも分かってる。大丈夫。彼女は別の道を歩んでゆける。俺達は一緒に同じ時を過ごせなくても生きていける。 俺と夏海が出逢ったのは確か高校の入学式の日。たまたま同じクラスでたまたま隣の席だったから俺が声をかけた。綺麗な子だと思って。髪はハーフアップで、身長は多分百六十センチちょっとでちょっぴり高め。彼女の瞳は黒かったけど、透き通っているように見えた。 初めて声をかけた時、少し顔を赤くして優しく微笑んだ。多分最初に惹かれたのはその顔を見た時だと思う。 それから一年間同じクラスで過ごして、徐々に彼女を好きになっていった。 結局、なかなか告白出来なかったけど最後卒業式の日に告白。オーケーを貰ってそれから付き合い始た。 大学は違かったから毎日会う訳には行かなかったけど、順調にお付き合いを続けていた。 それからも社会人一緒にいた俺達は、夏海が二十五歳になった年にちょっといいお店でプロポーズ。夏海も物凄く喜んでくれた。 今も俺と夏海の指には婚約指輪が嵌っている。 懐かしさに浸りながらやっぱりまだ夏海の背中を追い続ける。 少し痩せたように見えるのは気のせいだと思いたい。 「夏海さ、ちゃんと食べてる?ダメだよちゃんと食べないと。今まであんなに欲張りだったのに。いつからそんなんになっちゃったの?」 幾ら話し掛けても相手にされないけど、それでも彼女の背中を追いかける。 暫くすると丘の上にあるお寺に着いた。 『名島家之墓』って書かれたお墓の前で止まった。 するとずっと持っていた花束と線香り供え、しゃがんで手を合わせてる。手を下ろしてもそのまましゃがみ続けてるから正面に向かって彼女の見てみると目が赤かくなってた。 「夏海、泣きそうなの?もう今まで散々泣いてたじゃない。」 自分の声も震えてることさえ気づかなかった。すると夏海は突然立ち上がり、来た道を戻ろうとした。 もう堪えきれなかった俺の体は彼女の背中に抱きついていた。 夏海が歩みを止め、振り返る。 「慶太、くん?」 「夏海、俺のことは忘れるんだ。それで幸せになって。行きたいって言ってたハワイに行って、書いてみたい言ってた小説も書いて、それから君を支えてくれる人を探して、幸せになって。賑やかな家庭を作りたいんでしょ?俺の事はもういいから。」 頬が熱い気がする。もう、俺にそんな感覚は無いのかもしれないけど、熱いんじゃないかと思う。 「夏海、これは俺からの呪いだよ。もう、明日にはここにいれないから。この呪いが、俺からの最期のプレゼントだ。」 夏海が泣いた。俺は泣き止むまでずっとそばに居た。 翌日、彼が死んでから五十日目のその日、名島慶太この世の何処にも存在していなかった。

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愛と呪い。

鈍感恋愛ストーリー。

二月十四日。 バレンタインはキリスト教のお祝いで主に欧米でカップルが愛を祝う日らしい。 しかし。 この日は告白しようと奮起する女子、女子からチョコを貰いたくてソワソワする男子が大量発生する日だ。 もちろん私もそのうちの一人だ。 川瀬仁君。 川瀬君は一年の時から同じクラスで私が一年の時からずーっと片思いしている相手。彼はとにかく優しいのだ。一年生の時、移動教室で迷っていたら話したことの無い川瀬君が声を掛けてくれたのである。恥ずかしながら、当時私は友達もおらずぼっち組だったのだ。 こんな事で落ちるなんてチョロい女だと思った人も居るのではないだろうか? 簡単に言えば、私は今までクズ男にしか出会ったことがなかった。男子に優しくされたのはこれがはじめてだった。(まぁ、何より川瀬君はイケメンなのだが。) まぁ、要するに私は彼にチョコを渡したいのだ!! 手作りのガトーショコラを作り(市販のものにするか手作りにするかも悩みまくったのだ。)そこに自分が彼に好意を持っているという事を書いた手紙を付け、休み時間に彼の机に入れておく。(川瀬君は帰る前に必ず机の中を確認することは調査済みだ) これが私が、未来(みく)と考えに考えた作戦(?)だ。 さて、休み時間。 相談に乗ってくれた未来に一言伝え、ガトーショコラ達が入った紙袋を川瀬の机にイン。 とりあえずこれで完璧だ。 あとは彼がどうしてくるかだが…。 一週間がたった。 彼からはなんのアクションもない。 未来にそれを伝えると返答が。 「言うか言わないか悩んだんだけど、川瀬君、美奈が飴食べれるかって聞いてきたんだから安心しなさいよ。」 「は?なんで飴?」 「全く鈍いわね。頭いい人程恋愛事に鈍いっていう私の持論は正しいのね。それじゃあホワイトデーの後に調べてみなさい。『ホワイトデー お返し 意味』ってね。はい、この話はおしまい。早くお弁当食べるわよ。」 「ホワイトデーの後じゃないとダメ?」 「だめよ!それだけはダメ。絶対。」 ふむ。彼女がここまで言うということは裏があるらしい。ホワイトデー終わったら調べるとしよう。 三週間後。 バレンタイン程ではないがやはり多少のソワソワ感が漂っている。私もソワソワしていないと言えば嘘になるが… さて、自分の席に着くカバンから教科書を抜き机に入れようとすると手に何かが掠った。見てみると折り畳まれた紙が。広げてみると 『放課後、教室に残ってください。』 という文字。間違えない。この綺麗な字は川瀬君だ。 バレンタインのお返しということか。 私の中でワクワクと不安が戦っている。ともかく未来に伝えねば。 時は経ち休み時間。 手紙の事を未来に伝えると 「あら良かったじゃない♡心配する事は無いわ。心して行きなさい♡」 「なんか未来喋り方キモイんだけど」 「いいじゃない〜。私はこれを小説にしたいわ。鈍感同士の恋愛ストーリー。」 なにそれ 「今から心臓が破裂しそうなんだけど。」 「だから安心しなさいって言ってるでしょう。早くお弁当食べるわよ。」 私は緊張で味がしないお弁当を食べた。 放課後。 私は教室に残った。 何かの力が働いたのか教室には誰もいなくなり、私と川瀬君の二人きりなのである。 気まず過ぎる沈黙が流れる。すると彼が口を開いた。 「あの、これ、バレンタインのお返し。中身は家に帰ってから見てね。」 と言いながら小さくお洒落な紙袋を向ける。私はそれを受け取る。 「うん。ありがとう。」 「そ、それじゃあ。」 「うん。また明日。」 私はこの時また明日と言ったのは良くなかったと知ることになる。 帰宅後 家 制服を着替え、自分の部屋に入る。 彼から貰った紙袋を開けると中には綺麗に包まれたカラフルな飴が入った瓶が。なんて可愛い。思わず写真を撮る。 そして中には紙が。 『俺のラインのIDです。まだ俺に気があってくれてるなら連絡ください。』 頭の回路がショートした。理解が追いつかない。混乱している時、未来の言葉を思い出し、『ホワイトデー お返し 意味』と調べる。すると驚いた。飴は『あなたが好きです。』という意味らしい。 私と川瀬君は両思いだった…? とにかくラインを開き、彼のIDを打ち込む。未来が言ったのはこういう意味だったのか。 嬉しさで何度も打ち間違えたが川瀬君を見つけ、連絡を入れる。 『片山美奈です。』 おっと、既読が早い。 『川瀬仁です。片山はバレンタインのお返しの意味しってる?』 『さっき調べました。』 『じゃあ俺達付き合おう。』 私は喜びを噛み締めながら 『はい。』 と送る。 私の恋の始まりだ。

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鈍感恋愛ストーリー。